説明

熱間等方圧加圧方法及び熱間等方圧加圧装置

【課題】容易な構成で多段状に配備された各段の処理室の均熱性を維持することが可能である熱間等方圧加圧方法を提供する。
【解決手段】高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器2と、該高圧容器2内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段3とを備え、高圧容器2の内部には、被処理品Tを収容すべき処理室4を多段状に備えた処理部5が配備され、圧媒により各処理室4に収容された被処理品Tを高温高圧処理する熱間等方圧加圧方法において、強制流動手段3によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室4に供給する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温・高圧の圧力媒体を充填した高圧容器内にて被処理品を高温高圧処理する熱間等方圧加圧方法及び熱間等方圧加圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱間等方圧加圧装置においては、圧力媒体としてAr等の不活性ガスを採用するものが知られており、この種の不活性ガスを例えば98MPa(1000Kgf/cm)以上の高圧、且つ、1000℃以上の高温に維持した高温・高圧のガス雰囲気下で、粉末成型体の焼結や、同種・異種材料の拡散接合等の高温高圧処理(熱間等方圧加圧処理)が行われる。
例えばArガスを上述の如く高温・高圧に維持した場合、その密度は水の約30%、粘性係数は水の約15%程度まで上昇する。また、Arは熱膨張係数が大きい。従って、Arガスを熱間等方圧加圧装置の圧力媒体ガス(以下、圧媒ガス)として高圧容器内に充填した場合、該高圧容器内には圧媒ガスによる激しい自然対流が発生する(詳細は文献:日本工業新聞社「等方加圧技術〜HIP・CIP技術と素材開発への応用〜」小泉光恵、西原正夫編著、94頁〜113頁を参照)。
【0003】
この様な現象によって、高圧容器の内部にて上下方向に数百度(100℃〜1000℃)の温度勾配が発生する場合もあることが確認されている。このため、多数の被処理品を一度に処理すべく高圧容器内の処理部に上下方向多段状に複数の被処理品を収容して高温高圧処理を行った場合、上述の如き温度勾配の発生によって処理後の被処理品の品質にばらつきが生じる虞がある。
そこで、この種の熱間等方圧加圧装置においては、処理後の被処理品の品質を処理部内での上下方向の処理位置に拘わらず一定のものとするために、処理部内の上下方向の均熱性を如何に維持するかが大きな問題となっている。
【0004】
かかる問題を解決すべく、特許文献1(特開2004−085134号公報)には、圧媒ガスを充填可能な高圧容器内に、処理品を収容すべき処理室を上下方向多段状に備えた処理部を備え、該処理部の下方に、圧媒ガス攪拌用のファンが配備された熱間等方圧加圧装置が提案されている。
該熱間等方圧加圧装置においては、ファンを高速回転させることにより、例えば処理部の内部を下降して該処理部の外部側方を上昇する圧媒ガス循環路がケーシング内に形成され、これによって、処理部内の温度勾配の発生が抑制されるとされている。
【特許文献1】特開2004−085134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、該熱間等方圧加圧装置においては、各段の処理室が各処理室の上下を仕切る仕切り板に開設された複数のガス挿通孔によって直列に連結されている。従って、ファンによって処理部の上方から下方に向けて圧媒ガスを流動させた場合、圧媒ガスは、最上段の処理室から順に下方の処理室に流入し、各処理室にて被処理品と圧媒ガスとの間で熱交換が行われる。このため、最上段と最下段の処理室では、流入する圧媒ガスの有する熱量に大きな差が生じることとなり、これによって、処理部内の上下方向の均熱性を維持することが困難である問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、容易な構成で多段状に配備された各段の処理室の均熱性を維持することが可能である熱間等方圧加圧方法を提供するようにしたものである。
また、本発明は、上記問題点に鑑み、容易な構成で多段状に配備された各段の処理室の均熱性を維持することが可能である熱間等方圧加圧装置を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、次の手段を講じた。即ち、高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器と、該高圧容器内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段とを備え、前記高圧容器の内部には、被処理品を収容すべき処理室を多段状に備えた処理部が配備され、前記圧媒により各処理室に収容された被処理品を高温高圧処理する熱間等方圧加圧方法において、前記強制流動手段によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室に供給する工程を有している。
この構成によれば、一定量の圧媒が各処理室に供給される前に一時的に貯留されることにより、貯留された圧媒は一定の熱量(温度)及び流速に維持され、該圧媒の一部が各処理室に供給されることにより、各処理室には、一定の熱量を有する圧媒が略同一の流速で流入することとなる。従って、圧媒の性状に拘わらず各処理室に流入する熱量は略一定となり、これによって、各処理室の均熱性が維持されるのである。
【0008】
また、本発明は、前記目的を達成するために、次の手段を講じた。即ち、高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器と、該高圧容器内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段とを備え、前記高圧容器の内部には、被処理品を収容すべき処理室を多段状に備えた処理部が配備され、前記圧媒により各処理室に収容された被処理品を高温高圧処理する熱間等方圧加圧装置において、前記強制流動手段によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室に供給する圧媒供給ヘッダ部を有している。
この構成によれば、一定量の圧媒が各処理室に供給される前に圧媒供給ヘッダ部に一時的に貯留されることにより、貯留された圧媒は該圧媒供給ヘッダ部にて一定の熱量(温度)及び流速に維持され、該圧媒の一部が各処理室に供給されることにより、各処理室には、一定の熱量を有する圧媒が略同一の流速で流入することとなる。従って、圧媒の性状に拘わらず各処理室に流入する熱量は略一定となり、これによって、各処理室の均熱性が維持されるのである。
【0009】
また、前記圧媒供給ヘッダ部は、圧媒を貯留するための圧媒貯留室と、該圧媒貯留室に圧媒を流入させるための流入部と、該圧媒貯留室を各段の処理室に並列に連通する連通手段とを備えていることが好ましい。
この構成によれば、流入部を通じて圧媒貯留室に流入する圧媒が直ちに連通手段を通じて各処理室に供給されることはなく、先ず、該圧媒貯留室に蓄えられる。これによって、各処理室に供給されるべき圧媒は一定量の熱量及び流速に保たれる。また、圧媒貯留室と各処理室とを並列に連通する連通手段を通じて各処理室に圧媒貯留室の圧媒が供給されることにより、各処理室には略同量の圧媒が供給されるのである。
【0010】
また、前記連通手段は、前記圧媒貯留室の圧媒を各処理室に供給するための供給孔を備え、各供給孔は、それぞれ同一の大きさに形成されていることが好ましい。
この構成によれば、各供給孔を通じて処理室に供給される圧媒の流速は、圧媒貯留室に貯留される圧媒の性状に拘わらず略同一となる。
また、前記処理部には、前記圧媒供給ヘッダ部が設けられると共に、各処理室に供給された圧媒を回収する圧媒回収部が設けられ、該圧媒回収部は、回収した圧媒を前記処理部の外方に排出する排出部を備えていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、処理部内には、圧媒を圧媒供給ヘッダ部から圧媒回収部に向けて一方向に向けて流動させる流路が形成され、圧媒は、かかる流路を通過してスムーズに処理部内を流動する。従って、各処理室での圧媒の滞留や、処理部内での圧媒の逆流等によって処理部内の圧媒の流れに偏りが生じることはなく、処理部内は、各処理室内の圧媒の均質な流動によって均熱状態に保たれるのである。
また、前記処理部は、前記複数の処理室を上下方向多段状に形成する処理棚と、該処理棚の外周部及び底部を包囲する有底状の処理筒とから構成され、前記圧媒供給ヘッダ部と前記圧媒回収部の内、何れか一方は前記処理棚の中央部に上下方向に延伸して設けられ、他方は前記処理筒の内周面に沿って設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、各処理室の中央部と外方の内、一方に圧媒供給ヘッダ部が、他方に圧媒回収部がそれぞれ隣接して配備されており、装置全体の小型化が図られる。また、圧媒供給ヘッダ部から各処理室に流入した圧媒は、圧媒回収部に向けて各処理室内を中央部から外方に向けて流動し、各処理室内にて圧媒の滞留や逆流が生じることはなく、処理室内の温度状態に偏りが生じることはない。
また、前記高圧容器内には、前記処理部と、前記圧媒強制流動手段と、圧媒を加熱する圧媒加熱手段とが配備され、前記圧媒強制流動手段は、前記圧媒回収部から排出された圧媒を前記圧媒供給ヘッダ部に向けて流動させるものであり、前記圧媒加熱手段は、前記圧媒回収部から前記圧媒供給ヘッダ部に向けて流動する圧媒を加熱するものであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、処理部内の被処理品との熱交換により低温となって処理部外に排出された圧媒は、強制流動手段によって処理部外を圧媒回収部から圧媒供給ヘッダ部に向けて流動し、また、処理部外を流動中に圧媒加熱手段で加熱されることとなり、これによって、高圧容器内にて圧媒を循環させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱間等方圧加圧方法によれば、容易な構成で多段状に配備された各段の処理室の均熱性を維持することが可能である。
また、本発明の熱間等方圧加圧装置によれば、容易な構成で多段状に配備された各段の処理室の均熱性を維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1〜図6は本発明に係る第1の実施の形態を示しており、図1は、本発明に係る熱間等方圧加圧装置1の本体部分を示している。
なお、本発明においては、圧媒として不活性ガスからなる圧媒ガスを用いている。
図1に示す如く、本発明の熱間等方圧加圧装置1は、高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器2と、該高圧容器2内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段3とを備え、高圧容器2の内部には、被処理品Tを収容すべき処理室4を多段状に備えた処理部5が配備されており、前記圧媒により各処理室4に収容された被処理品Tが高温高圧処理(熱間等方圧加圧処理)される。
【0016】
高圧容器2内には、処理部5と、強制流動手段3と、圧媒を加熱する加熱手段6が配備され、強制流動手段3は、後述する圧媒回収部41から排出された圧媒を後述の圧媒供給ヘッダ部40に向けて流動させるものであり、加熱手段6は、圧媒回収部41から圧媒供給ヘッダ部40に向けて流動する圧媒を加熱するものである。また、高圧容器内2には、処理部5の外周部及び上方を覆う断熱構造体7が配備されている。
高圧容器2は、上下方向の軸心を有し且つ上下開口状の高圧円筒10と、該高圧円筒10の上端開口を閉塞する上蓋11と、高圧円筒10の下端開口を閉塞する下蓋12とから構成され、高圧容器2の圧媒の圧力によって上蓋11及び下蓋12に作用する荷重は窓枠状のプレスフレーム(図示省略)によって支持される。
【0017】
下蓋12には、高圧容器2の内部に複数種の圧媒を供給するための複数本(本実施の形態においては2本)の圧媒供給管13が配備され、上蓋11には、高圧容器2の内部の圧媒を高圧容器2の外部に排出するための圧媒排出管14が配備されている。
また、下蓋12は昇降自在に支持され、高圧容器2の下端開口を開閉自在に閉塞している。
前記強制流動手段3及び加熱手段6は下蓋12に取付固定されている。
強制流動手段3は、圧媒を強制的に循環させるべく高速回転可能なファン16と、該ファン16の回転中心から下方に伸びる軸部材17と、該軸部材17の下端部に連接されたモータ18とから構成されており、該強制流動手段3は、軸部材17を高圧容器2の軸心に一致させて配備されている。
【0018】
また、モータ18は、下蓋12の上面から下方に形成された凹部12aに収容されている。該凹部12aから突出するモータ18の部分は、下蓋12の上面に配備された断熱部材19によって周囲を包囲されており、該断熱部材19の上面には、圧媒が下蓋12のモータ収容空間に流入するのを防止すると共に断熱部材19への伝熱を防止する隔壁20が配備されている。
また、ファン16は、該ファン16の上方から圧媒を吸い込み、ファン16の回転軌跡の径外方向(水平方向)に圧媒を送り出すように構成されている。
【0019】
前記隔壁20の上面には、複数本の支持脚21がファン16の軸心に対して放射状に突設されると共に、処理部5の外周部を包囲する筒部材22が配備されている。
図1、図3及び図4に示す如く、該支持脚21及び筒部材22に前記加熱手段6となるヒータ6aがそれぞれ取り付けられており、これによって加熱手段6は、処理部5の外周部及び底部を包囲すると共にファン16の径外方向の周囲を覆って配備されることとなる。
断熱構造体7は、前記筒部材22及び処理部5を覆う円筒状の胴部23と、該胴部23の上端開口を閉塞して処理部5の上方を覆う上壁24とによって下端開口状に形成され、
該処理部5、ファン16及びヒータ6aを覆って配備されている。
【0020】
図1に示す如く、前記処理部5は、前記複数の処理室4を上下方向多段状に形成する処理棚25と、該処理棚25の外周部及び底部を包囲する有底状の処理筒26とから構成されている。
処理棚25は、被処理品Tを載置すべき複数の載置板27と、該複数の載置板27を上下方向多段状(本実施の形態においては5段)に支持する壁体28とを備えており、載置板27は、中央部に開口27aが開設された環状に形成されている。
壁体28は、載置板27の内周部を支持する内周壁29と、載置板27の外周部を支持する外周壁30とを有している。該内周壁29及び外周壁30によって載置板27を上下方向多段状に連接することにより、上下方向を載置板27、27に包囲されると共に径方向を内周壁29及び外周壁30に包囲された処理室4が多段状に形成されるのである。
【0021】
前記処理筒26は、前記複数本の支持脚21に支持された円板状の底板31と、上下端を開口した円筒状の整流筒32とから形成されており、底板31には、前記ファン16との対向位置となる中央部に挿通孔31aが開設されている。
図5に示す如く、本実施の形態においては、該整流筒32の下端部は溶接部32aを介して底板31の外周部に固着されているが、図6に示す如く、ボルト締結等の締結手段32bを介して底板31に連結されていても良い。
図3及び図4に示す如く、整流筒32の外周面と該外周面を包囲して配備される前記筒部材22との間には、圧媒を流通させるための流通路Rが設けられている。
【0022】
また、前記処理棚25は、その外周部と処理筒26(整流筒32)の内周面との間に一定の隙間Sを有して該処理筒26内に収容されている。
図1に示す如く、処理部5には、強制流動手段3によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室4に供給する圧媒供給ヘッダ部40が設けられると共に、各処理室4に供給された圧媒を回収する圧媒回収部41が設けられている。
本実施の形態においては、圧媒供給ヘッダ部40が処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられ、圧媒回収部41が処理筒26の内周面及び底面(底板31の上面)に沿って設けられている。
【0023】
圧媒供給ヘッダ部40は、処理棚25の最下段の載置板27の開口27aを閉塞し、各載置板27の内周部を内周壁29によって連接することにより、処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられている。
また、該圧媒供給ヘッダ部40は、圧媒を貯留するための圧媒貯留室42と、該圧媒貯留室42に圧媒を流入させるための流入部43と、該圧媒貯留室42を各段の処理室4に並列に連通する連通手段44とを備えている。
圧媒貯留室42は、処理棚25の内周壁29、載置板27の内周縁及び最下段の載置板27に包囲されて処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられており、流入部43は、最上段の載置板27の開口27aによって形成されている。
【0024】
また、連通手段44は、圧媒貯留室42の圧媒を各処理室4に供給するための供給孔4
5を備えている。各供給孔45は、処理棚25の各段の内周壁29に同数ずつ複数個形成されている。また、各供給孔45は、それぞれ略同一の大きさに形成されている。
圧媒回収部41は、処理棚25の最上段の載置板27の外周縁を処理筒26の内周面に隙間無く連接し、各載置板27の外周部を外周壁30によって連接することにより、処理筒26の内周面及び底面(底板31の上面)に沿って設けられている。
圧媒回収部41は、各処理室4からの圧媒を回収する圧媒回収室46と、各処理室4と圧媒回収室46とを並列に連接する連通手段47とを備えている。
【0025】
圧媒回収室46は、処理筒26の内周面、外周壁30、載置板27の外周縁及び最上段の載置板27に包囲されて処理棚25の外周を包囲して上下方向に延伸して設けられている。
また、連通手段47は、各処理室4に供給された圧媒を圧媒回収室46に排出するための排出孔48を備えている。各排出孔48は、処理棚25の各段の外周壁30に同数ずつ複数個形成されている。また、各排出孔48は、それぞれ略同一の大きさに形成されている。
【0026】
また、該圧媒回収部41は、回収した圧媒を処理部5の外方に排出する排出部49を備え、本実施の形態において該排出部49は、底板31の挿通孔31aによって形成されている。
本発明の実施の形態は以上の構成からなるもので、処理部5の各処理室4内に被処理品Tを載置することにより、多数の被処理品Tが一度に処理部5内にて上下方向多段状に収容され、この状態で圧媒を高圧容器2内に充填して高温高圧処理が行われる。
また、本実施の形態において、最下段の載置台27は、処理筒26の底板31上面との間に被処理品Tを収容可能な間隔を有して内周壁29及び外周壁30に支持され、これによって底板31上面に処理品Tを載置することが可能となっているが、最下段の載置台27と底板31との間に上述の如き間隔を設けず、底板31上面に被処理品Tを載置しない構成であっても良い。
【0027】
図2に矢印で示す如く、ファン16を高速回転させることにより、高圧容器2の内部には、処理部5の処理筒26の外周面と筒部材22の内周面との間の流路Rを上昇して処理部5の上方の空間(断熱構造体7の上壁24の下部空間)に流れ込み、処理部5内を下降して底板31の開口部31aから処理室5の下方に排出される圧媒循環路が形成される。
ここで、ファン16の側方に位置する支持脚21及び処理筒26の外周面を覆う筒部材22にヒータ6aが配備されているため、処理部5から排出された低温の圧媒は、ファン16によって処理部5の下方から側方に回り込み、前記流路Rを上昇している間にヒータ6aによって加温されることとなり、これによって圧媒は、再び高温に維持されて処理部5の上方の空間に流れ込む。
【0028】
そして、該空間に充満した圧媒は、圧媒供給ヘッダ部40の流入部43(最上段の載置板27の開口27a)を通じて圧媒貯留室42に流入する。該圧媒貯留室42に流入した圧媒は、直ちに連通手段44の供給孔45を通じて各処理室に流入することはなく、一時的に圧媒貯留室42に貯留される。
また、圧媒貯留室42の下端部は最下段の載置板27によって塞がれているので、圧媒
貯留室42に流入した圧媒が各処理室4を経由することなく処理部5の外部に排出されることはない。
【0029】
ここで、圧媒が該圧媒貯留室42に一時的に貯留されることにより、圧媒貯留室42内は上下位置に拘わらず一定の温度に保たれる。即ち、圧媒貯留室42内の圧媒全体が一定の熱量に維持されるのである。
その後、圧媒貯留室42内の圧媒は、連通手段44の供給孔45を通じて各処理室4に供給される。このとき、各供給孔45は略同一の大きさに形成されているため、各処理室4には供給孔45を通じて略同じ流量の圧媒が供給されることとなり、これによって、各処理室4内には同量の熱量が供給されるのである。しかも、圧媒供給ヘッダ部40が各処理室4の中央部に形成され、圧媒回収部41が各処理室5の径外方向にて各処理室4を包囲して配備されているため、供給孔45を通じて各処理室4に供給される圧媒は、処理室4内を径外方向に向けて一方向に流動することとなり、これによって、各処理室4内での圧媒の滞留や逆流が発生することはない。
【0030】
そして、各処理室4に流入した圧媒は、被処理品Tとの間の熱交換によって高温状態から低温状態に変化し、各処理室4から圧媒回収部41の連通手段47の排出孔48を通じて圧媒回収室46に流れ込む。その後、圧媒は、ファン16による圧媒循環路に従って圧媒回収室46内を下降し、処理筒26の底板31に沿って該底板31上を径内方向に流動した後、圧媒回収部41の排出部49(底板31の挿通孔31a)から排出されて再びファン16に吸い込まれることとなるのである。
ここで、圧媒回収室46の上端部は、最上段の載置板27の外周部によって閉塞されているので、圧媒回収室46に流れ込んだ低温の圧媒が上昇して処理部5上方の空間に流れ込むことはない。
【0031】
本実施の形態によれば、処理部5の各処理室4には、同じ熱量を有する圧媒が略同じ流量で供給されるため、各処理室4は一定の熱量に維持されることとなり、これによって、各処理室4の互いの均熱状態は維持され、この結果、従来において数百度の温度差を有していた処理部5の上下方向の温度勾配が数度差に収められるのである。
また、処理部5は高圧容器2の内部から着脱自在であるので、処理部5を高圧容器2から取り出した状態で処理筒26内に載置板27及び壁体28を一段ずつ組み込んで処理棚25を形成すると同時に各処理室4に被処理品Tを収容することができ、被処理品Tを収容する作業が高圧容器2の外部にて容易に行われるのである。ここで、最下段の壁体28の内周壁29及び外周壁30の下端を底板31に連結すると、処理筒26と処理棚25とが一体となった製品搬送用のバケットが形成されることとなり、高温高圧処理過程の前後での処理部5の搬送が容易となる。
【0032】
図7に示すものは、本発明の第2の実施の形態である。
この実施の形態において、第1の実施の形態を示す図1と同じ図番を付したものは、基本的には図1と同じものであるので、ここでは説明を省略する。
この実施の形態においては、最上段の載置台27上に配備された環状の整流板50を介して最上段の載置台27の外周縁が処理筒26の内周面に隙間無く連設されている。
この実施の形態によれば、最上段の載置板27として最下段の載置板27を除く他段と同仕様の載置板27を採用することができ、処理棚25の低コスト化が図られるのである
。また、処理筒26が圧媒の加圧によって変形した場合にも、該変形に対応した整流板50を取り付けることにより最上段の載置台27の外周縁と処理筒26の内周面とを隙間無く連結して圧媒回収部41を形成することができ、上述の如き処理筒26の変形に容易に対応することが可能となる。
【0033】
図8に示すものは、本発明の第3の実施の形態である。
この実施の形態において、第1の実施の形態を示す図1と同じ図番を付したものは、基本的には図1と同じものであるので、ここでは説明を省略する。
この実施の形態においては、圧媒供給ヘッダ部140が前記処理筒26の内周面に沿って設けられており、圧媒回収部141が処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられている。
圧媒供給ヘッダ部140は、処理棚25の最下段の載置板27の外縁を処理筒26の内周面に隙間無く連接し、各載置板27の外周部を外周壁30によって連接することにより、処理筒26の内周面に沿って上下方向に延伸して設けられている。
【0034】
また、該圧媒供給ヘッダ部140は、圧媒を貯留するための圧媒貯留室142と、該圧媒貯留室142に圧媒を流入させるための流入部143と、該圧媒貯留室142を各段の処理室4に並列に連通する連通手段144とを備えている。
圧媒貯留室142は、最下段の載置板27の外縁を延伸して処理筒26の内周面に隙間無く連接し、各載置板27の外周部を外周壁30によって連接することにより、処理筒26の内周面と処理棚25の外周壁30及び載置板27の外周縁との間に設けられており、流入部143は、最上段の載置板27の外縁と処理筒26の内周面との間の隙間によって形成されている。
【0035】
また、連通手段144は、圧媒貯留室142に貯留された圧媒を各処理室4に供給するための供給孔145を備えている。各供給孔145は、処理棚25の各段の外周壁30に同数ずつ複数個形成されている。また、各供給孔145は、それぞれ略同一の大きさに形成されている。
圧媒回収部141は、処理棚25の最上段の載置板27の開口27aを閉塞し、各載置板27の内周部を内周壁29によって連接することにより、処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられている。
【0036】
また、圧媒回収部141は、各処理室4からの圧媒を回収する圧媒回収室146と、各処理室4と圧媒回収室146とを連接する連通手段147と、圧媒回収室146に回収した圧媒を処理部5の外方に排出する排出部149とを備えている。
圧媒回収室141は、処理棚25の内周壁29、載置板27の内周縁及び最上段の載置板27に包囲されて処理棚25の中央部に上下方向に延伸して設けられており、排出部149は、最下段の載置板27の開口27aと処理筒26の底板31の挿通孔31aを内周壁29を介して連接して形成されている。
【0037】
また、連通手段147は、各処理室4に供給された圧媒を圧媒回収室146に排出するための排出孔148を備えている。各排出孔148は、処理棚25の各段の内周壁29に同数ずつ複数個形成されている。また、各排出孔148は、それぞれ略同一の大きさに形成されている。
本実施の形態においては、圧媒供給ヘッダ部140が各処理室4の径外方向にて各処理室4を包囲して配備され、圧媒回収部141が各処理室4の中央部に配備されているため、供給孔145を通じて各処理室4に供給される圧媒は、図中に矢印で示す如く、処理室4内を径内方向に向けて一方向に流動することとなり、これによって、各処理室4内での圧媒の滞留や逆流が発生することはないのである。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態に示したものに限定されるものではない。
例えば、圧媒貯留室42を形成すべく載置板27の開口27aを閉塞する場合、該開口27aを覆う蓋部材によって閉塞しても良い。
また、載置板27の形状は、多角形状や楕円形状等、処理筒26の内周面との間に所定の空隙を設けて配備できるものであれば、如何なる形状のものであってもよい。また、載置板27の強度を確保するために、各載置板27の裏面にリブ等の補強部材を取り付けてもよい。
【0039】
また、載置板27の開口27aを下段に向かうに連れて小さくすることも可能である。同様に、載置台27の外周縁と処理筒26の内周面との間の隙間の大きさを下段に向かうに連れて小さくすることも可能である。
また、載置板27の段数及び載置板27間の間隔は、被処理品Tの大きさに対応させて設定可能であり、5段以上の段数を設定することも可能である。
また、圧媒が処理部5内を下方から上方に上昇し、処理部5の外側方を下降する圧媒循環路を高圧容器2内に形成した場合にも、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0040】
また、別の観点からみれば、本発明は、各処理室4内に圧媒を略均等に流動させるための圧媒流路を処理部5を構成する処理棚25と処理筒26とによって形成することにある。
即ち、上記第1の実施の形態においては、処理棚25の最上段の載置板27の外縁を処理筒26に隙間無く連接すると共に、最下段の載置板27の開口27aを閉塞することによって、処理部5内に、最上段の載置板27の開口27aから処理筒26の底板31の挿通孔31aに向けて圧媒を一方向に流動させる圧媒流路が形成されるのである。これによって、圧媒は最上段の載置板27の開口27aのみから流入することとなり、処理部5に流入した圧媒が処理部5上方に漏れることはないのである。また、処理部5内に流入した圧媒が処理室4を経由することなく挿通孔31aから流出することはないのである。
【0041】
そして、処理部5内にて各処理室4が該圧媒流路に並列に連結されているので、処理部5に流入した圧媒は、各処理室4内を略同量の流量で径内方向から径外方向に向けて一方向に流動し、処理筒26の底板31上を径外方向から径内方向に向けて流動した後に、挿通孔31aから処理部5外に排出されるのである。
このように、処理部5内に各処理室4を並列に連結する圧媒流路が形成されることにより、各処理室4には、同じ熱量を有する圧媒が略同じ流量で供給されるため、各処理室4は一定の熱量に維持されることとなる。これによって各処理室4の互いの均熱状態は維持され、この結果、従来において数百度の温度差を有していた処理部5の上下方向の温度勾配が数度差に納められるのである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の熱間等方圧加圧装置の本体部分を正面から見た断面図である。
【図2】高圧容器内の圧媒循環路を示した断面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図5】整流筒の底板への取付状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】整流筒の底板への他の取付状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態の熱間等方圧加圧装置の本体部分を正面から見た断面図である。
【図8】本発明に係る第3の実施の形態の熱間等方圧加圧装置の本体部分を正面から見た断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 熱間等方圧加圧装置
2 高圧容器
3 強制流動手段
4 処理室
5 処理部
6 加熱手段
16 ファン
20 隔壁
21 支持脚
22 筒部材
25 処理棚
26 処理筒
27 載置板
27a開口
28 壁体
29 内周壁
30 外周壁
31 底板
32 整流筒
40 圧媒供給ヘッダ部
41 圧媒回収部
42 圧媒貯留室
43 流入部
44 連通手段
45 供給孔
46 圧媒回収室
47 連通手段
48 排出孔
49 排出部
50 整流板
140 圧媒供給ヘッダ部
141 圧媒回収部
142 圧媒貯留室
143 流入部
144 連通手段
145 供給孔
146 圧媒回収室
147 連通手段
148 排出孔
149 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器(2)と、該高圧容器(2)内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段(3)とを備え、前記高圧容器(2)の内部には、被処理品(T)を収容すべき処理室(4)を多段状に備えた処理部(5)が配備され、前記圧媒により各処理室(4)に収容された被処理品(T)を高温高圧処理する熱間等方圧加圧方法において、
前記強制流動手段(3)によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室(4)に供給する工程を有することを特徴とする熱間等方圧加圧方法。
【請求項2】
高温高圧の圧媒を充填可能な高圧容器(2)と、該高圧容器(2)内の圧媒を所定の方向に流動させるための強制流動手段(3)とを備え、前記高圧容器(2)の内部には、被処理品(T)を収容すべき処理室(4)を多段状に備えた処理部(5)が配備され、前記圧媒により各処理室(4)に収容された被処理品(T)を高温高圧処理する熱間等方圧加圧装置において、
前記強制流動手段(3)によって流動する圧媒を一時的に貯留し、貯留した圧媒を各段の処理室(4)に供給する圧媒供給ヘッダ部(40)を有することを特徴とする熱間等方圧加圧装置。
【請求項3】
前記圧媒供給ヘッダ部(40)は、圧媒を貯留するための圧媒貯留室(42)と、該圧媒貯留室(42)に圧媒を流入させるための流入部(43)と、該圧媒貯留室(42)を各段の処理室(4)に並列に連通する連通手段(44)とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項4】
前記連通手段(44)は、前記圧媒貯留室(42)の圧媒を各処理室(4)に供給するための供給孔(45)を備え、各供給孔(45)は、それぞれ同一の大きさに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項5】
前記処理部(5)には、前記圧媒供給ヘッダ部(40)が設けられると共に、各処理室(4)に供給された圧媒を回収する圧媒回収部(41)が設けられ、該圧媒回収部(41)は、回収した圧媒を前記処理部(5)の外方に排出する排出部(49)を備えていることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項6】
前記処理部(5)は、前記複数の処理室(4)を上下方向多段状に形成する処理棚(25)と、該処理棚(25)の外周部及び底部を包囲する有底状の処理筒(26)とから構成され、前記圧媒供給ヘッダ部(40)と前記圧媒回収部(41)の内、何れか一方は前記処理棚(25)の中央部に上下方向に延伸して設けられ、他方は前記処理筒(26)の内周面に沿って設けられていることを特徴とする請求項5に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項7】
前記高圧容器(2)内には、前記処理部(5)と、前記強制流動手段(3)と、圧媒を加熱する加熱手段(6)とが配備され、前記強制流動手段(3)は、前記圧媒回収部(41)から排出された圧媒を前記圧媒供給ヘッダ部(40)に向けて流動させるものであり、前記加熱手段(6)は、前記圧媒回収部(41)から前記圧媒供給ヘッダ部(40)に向けて流動する圧媒を加熱するものであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の熱間等方圧加圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate