説明

熱間等方圧加圧装置及び加圧方法

【課題】熱間等方圧加圧装置において、圧下量をシーリング材などによっては制限されることがないようにし、シーリング材の交換に伴うコスト面や手数面の問題を解消し、圧媒の漏洩に関する問題を解消し、更にはプランジャ外周部に設けるリング状のパッキンとは異なって構造の複雑化や摺動抵抗の過大化などに伴う欠点を払拭できるようにする。
【解決手段】高圧容器2とこの上方に分離して設けられた増圧機部3とを有し、高圧容器2には有底の処理室5が設けられ、増圧機部3には、処理室5内に圧下を加えるプランジャ20が上下動可能に設けられ、高圧容器2の上部結合面2aと増圧機部3の下部結合面3aとの相互間に、これら両者の結合により押圧されて高圧容器2における処理室5の上部開放部まわりをシールするリング状パッキン12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧加圧装置及び加圧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合金鋳物などの処理物から鋳造欠陥除去などを行ったり、耐火物焼結体内部の気孔を除去したり、あるいは金属製の容器(カプセル)中に封入された樹脂などの粉末を成型固化させるために、熱間等方圧加圧方法(HIP)を施すことが有用であることがよく知られている。また、圧媒に高温液体(溶融塩など)を用いて合金鋳物(処理物)の機械的性質を改善しながら操業サイクルタイムの短縮を図り、これによって経費節減を可能にした熱間等方圧加圧装置も知られている(特許文献1、3等参照)。
また等方性の圧力を第1、第2液圧伝達媒体(溶融塩など)を介して処理物に印加させる高温等方圧縮プロセスの報告がある。適切な温度に圧力容器内で加熱された溶融塩中に、予熱済みの溶融塩と処理物とを収蔵した同じく予熱済み容器を納置するものである(例えば特許文献2等参照)。
【0003】
ところで、これら公知の熱間等方圧加圧装置において、高圧容器に設けられた処理室に対し、その上部開放部をシート状のシーリング材によって閉鎖し、処理室からの圧媒の漏洩を防止(シール)することがある。このシーリング材は変形可能な材料で形成されており、処理室内の圧媒及び処理物に対して圧下を加えるうえでその上方からプランジャを押し込むに際し、このプランジャの外形に沿うように凹形に変形するようになっている。
なお、このようなシート状のシーリング材とは異なり、プランジャ外径を処理室の内径と略同等としたうえでこのプランジャの外周部にリング状のパッキンを設ける構造もあった(例えば、特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開2001−262295号公報(靭性材製のシート状シーリング材に関しては図1)
【特許文献2】特許第2761573号公報(プランジャ外周部のリング状パッキンに関しては図1、軟鋼製のシートに関しては図4)
【特許文献3】特公昭46−20486号公報(耐火物ボデーのアイソスタチックホットプレス方法)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように処理室の上部開放部に対し、これを変形可能なシート状のシーリング材で閉鎖する構造では、このシーリング材の凹形変形量に限度があるので、自ずとプランジャの圧下量、即ち、処理室内の処理物に対する加圧量(圧媒の圧縮量)にも制限が設けられるという難点があった。また、このシーリング材は再使用ができないことから、圧媒の噴出を防止するためには処理を繰り返すごとに毎回、このシーリング材を交換する必要がある。そのためランニングコストの面及び手数の面で不利であった。
のみならず、このシーリング材では変形状態で座屈を起こしていることがあり、処理室の上部開放部を開放する際に残圧によって破損し、圧媒の噴出などを招来するおそれがあった。
【0005】
なお、プランジャが直接にこのシーリング材に当接するために処理室側からプランジャへ熱が奪われ、処理室側での温度制御が面倒になるということもあった。
一方、プランジャ外周部にリング状のパッキンを設けるものの場合、実際にはこれのシール性を確実にするために複雑な構造が必要で、その分、プランジャの摺動抵抗が大きくなって様々な不具合を招来することになっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、圧下量をシーリング材などによっては制限されることがないようにでき、シーリング材の交換に伴うコスト面、手数面の問題を解消し、圧媒の漏洩に関する問題を解消し、更にはプランジャ外周部に設けるリング状のパッキンとは異なって構造の複雑化や摺動抵抗の過大化などに伴う欠点を払拭できるようにした熱間等方圧加圧装置及び加圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る熱間等方圧加圧装置は、高圧容器とこの高圧容器の上方でこの高圧容器とは分離されて設けられた増圧機部とを有し、高圧容器には、処理物を圧媒で取り囲んだ状態に収容可能にした有底の処理室が設けられ、増圧機部には、高圧容器の処理室内に収容された圧媒乃至処理物に圧下を加えるプランジャが上下動可能に設けられたものである。そして、高圧容器の上部結合面とこれに対向する増圧機部の下部結合面との相互間に、これら両者の結合により押圧されて高圧容器における処理室の上部開放部まわりをシールするリング状パッキンが設けられている。
【0007】
このように処理室の上部開放部まわりをリング状のパッキンでシールする構成であり、従来とは異なってこの上部開放部をシート状のシーリング材で閉鎖するのではないので、従来、このシート状シーリング材によって起こっていた種々様々な欠点は全て解消されるに至る。
すなわち、圧下量をシーリング材などによっては制限されることはなく、シーリング材の交換に伴うコスト面、手数面の問題はなく、圧媒の漏洩に関する様々な問題も解消されている。
【0008】
増圧機部は、プランジャに対して圧下力を加える加圧駆動部を有したものとし、この加圧駆動部はプランジャに連結されたピストンとこのピストンを上下動させるシリンダ部とを有したものとすることができる。
この場合、ピストンの外径をD、プランジャの外径をd、高圧容器における処理室の内径をHとおくとき、d<H<Dとするのが好適である。このようにすることで、加圧駆動部を高圧容器より小型に抑え、増圧機部の小型化が可能になる。そしてそのうえでプランジャによる圧下力を十分に増強することもできるという利点がある。
【0009】
増圧機部には、高圧容器側とは独立して温度制御可能な加熱手段を設けておくのが好適である。このようにすることで、増圧機部側で熱損失の小さな構成を採用した場合などに、安定操業時にはこの増圧機部側での加熱を抑え、ランニングコストの軽減に有益となる。
高圧容器に、その処理室内を処理温度に加熱する加熱手段が設けられているものとして、上記のように増圧機部に加熱手段を設ける場合、この増圧機部の加熱手段は、高圧容器の加熱手段よりも低温度を保持すべく制御可能にするのが好適である。
【0010】
このようにすることで、この増圧機部でプランジャまわりで使用するパッキン類が担うシール温度を抑え、場合によってはこのパッキン類として軟質パッキンを選択することができる。
高圧容器に対し、処理室の上部開放部まわりにこの処理室内から漏洩した圧媒を受ける圧媒溜め部を設けておき、且つこの圧媒溜め部に対し、圧媒の流入を検出する漏れ検知手段を設けておくと好適である。
このようにすると、処理室から圧媒の漏洩があった場合にそれを迅速に検出して直ちに処理を中止させることができる。
【0011】
増圧機部に対しても、高圧容器内と連通するようになる部分があるときにはこの高圧容器側から漏洩した圧媒を受ける圧媒溜め部を設けておき、且つこの圧媒溜め部に対し、圧媒の流入を検出する漏れ検知手段を設けておけばよい。
増圧機部は、プランジャの上下動領域を取り囲む増圧容器を有したものとするのが好適である。この場合、この増圧容器の下面部には、その容器内部と連通した下部開放部を閉鎖してプランジャの上下動領域内へ圧媒を封入させるパッキンを設けることができる。このパッキンには、プランジャが高圧容器の処理室へ向けて進退動される動きに伴って圧媒の加圧流動で処理室内へ向けて伸縮する有底の伸縮部を設けるものとする。
【0012】
このようにすると、プランジャを高圧容器の処理室へ向けて進出(下降)させるときに、このプランジャ自体ではなく、プランジャが圧媒を介してパッキンの伸縮部を伸張させ、この伸縮部が高圧容器の処理室内に侵入してこの処理室内の圧媒を圧縮するようになる。すなわち、プランジャによって処理室内の圧媒から温度が奪われるという問題が解消乃至軽減化される。
一方、本発明に係る熱間等方圧加圧方法では、有底の処理室が設けられた高圧容器に対してその処理室へ所定温度に加熱した処理物及び圧媒を収容して処理物が圧媒で取り囲まれた状態にし、処理室の上部開放部まわりにリング状パッキンを設けたうえでこの高圧容器の上部結合面とこの高圧容器の上方に設けられた増圧機部の下部結合面とを結合し、これら両者の結合間で上記リング状パッキンを押圧することでシール性を得る。
【0013】
そして、高圧容器側に比べて増圧機部側を低温度に加熱制御しつつ、増圧機部に設けられたプランジャを下降させて高圧容器における処理室内の圧媒乃至処理物に圧下を加える。
増圧機部のプランジャによって高圧容器における処理室内の圧媒乃至処理物に圧下を加える過程で、処理室から圧媒が漏洩するか否かを監視し、圧媒漏洩を検出したときには高圧容器と増圧機部との結合を解いて処理室を開放させるようにすればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る熱間等方圧加圧装置及び加圧方法では、圧下量をシーリング材などによっては制限されることがないようにでき、シーリング材の交換に伴うコスト面や手数面での問題も解消され、また圧媒の漏洩に関する問題も解消され、更にはプランジャ外周部にリング状のパッキンを設けることに起因していた構造の複雑化や摺動抵抗の過大化などの全ての欠点を払拭できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2は、本発明に係る熱間等方圧加圧装置1の第1実施形態を示している。この第1実施形態の加圧装置1は、高圧容器2と、この高圧容器2の上方に設けられた増圧機部3とを有している。これら高圧容器2と増圧機部3とは分離されている。
高圧容器2は、有底の処理室5を形成させてそのまわりを必要厚さを有する周壁6で取り囲む構造になっている。この処理室5内には、鋳造品や粉末冶金製品などの処理物7と共に高温化された液体の圧媒8が収容され、これによって処理物7はそのまわりが圧媒8によって取り囲まれた状態になる。圧媒8には例えば亜硝酸ナトリウム等の溶融塩やシリコン油などが用いられる。溶融塩の場合、200℃程度を超えて高温化されることで液化される。
【0016】
この高圧容器2において周壁5のまわりには加熱手段9が設けられている。この加熱手段9は、例えば電気ヒータ13とその外側を覆う断熱体14とを有して形成されており、処理室5内の処理物7及び圧媒8を所定温度に加熱し、また保温可能となっている。
また、高圧容器2に設けられる加熱手段9は、必ずしも処理物7や圧媒8を処理温度まで加熱しなければならないものではなく、その後に受ける圧下による熱影響や、処理の繰り返しに伴う周壁6の残熱吸収などを見越して、その分、低温にしておくことも可能である。
【0017】
高圧容器2の上面には、処理室5の上部開放部10まわりを一段低く凹ませるかたちで圧媒溜め部11が設けられている。すなわち、この圧媒溜め部11の内部底面に処理室5の上部開放部10が開口形成されていることになる。この圧媒溜め部11の内部底面は、高圧容器2と増圧機部3とが結合する際には、この高圧容器2として増圧機部3へ向けた上部結合面2aを形成することになる。
そして、この処理室5の上部開放部10のまわりを包囲するようにしてリング状パッキン12が設けられている。このリング状パッキン12は、軟質金属を素材として形成されたものであって、高圧容器2の上部結合面2aに設けられたリング形の凹溝に半没状態で嵌め入れられ、位置ズレしないようになっている。
【0018】
上記圧媒溜め部11には漏れ検知手段15が設けられている。この漏れ検知手段15は、圧媒溜め部11内のどこにも接触しない状態で、且つ上部結合面2aに近接させて電極16を設けると共に、この電極16とアース側との間で通電を監視できるようにしたものである。すなわち、圧媒溜め部11内に圧媒8が漏れ出して電極16が絶縁破壊されたときに通電が検出されるので、これをもって圧媒8の漏洩を検出したものと判定する。
これに対して増圧機部3は、高圧容器2の処理室5内へ向けて上下動可能なプランジャ20を有している。このプランジャ20の上下動領域は、そのまわりを必要厚さを有する周壁21で取り囲まれ、この周壁21によって増圧容器22が形成される構造になっている。この増圧容器22は加圧クロスヘッド23の下面に固定されている。
【0019】
また加圧クロスヘッド23は油圧シリンダ等の流体アクチュエータ25により昇降可能とされ、この昇降によって高圧容器2の上部結合面2aに増圧容器22の下面が当接したり離反したりするようになっている。すなわち、この増圧容器22の下面が、増圧機部3として高圧容器2へ向けた下部結合面3aを形成していることになる。
プランジャ20は、その上部側に設けられた加圧駆動部27によって圧下力が加えられるようになっている。この加圧駆動部27は、ピストン28とこのピストン28を上下動させるシリンダ部29とを有し、ピストン28が筒形をした加圧ステム30と連結され、この加圧ステム30内にピストンロッド31がガタツキなく内挿され、このピストンロッド31の下端部がプランジャ20と連結されている。
【0020】
加圧ステム30内のピストンロッド31は、ピストンロッド31の上端部に設けられた締め付け手段35の引上力とバネ36の圧縮力とのバランスにより、適度な引上状態が維持されている。また、ピストンロッド31の下端部にはマイタリングパッキン33が設けられており、このマイタリングパッキン33が軸方向圧縮することに伴って径大化し、ピストンロッド31の外周面と増圧容器22の内周面との間の気密性が高められる構造である。
ピストン28の外径をD、プランジャ20の外径をd、そして高圧容器2における処理室5の内径をHとおくとき、d<H<Dの関係が成り立つようになっている。そのため、加圧駆動部27は高圧容器2より小型であるにも拘わらず、プランジャに20には十分な圧下力が得られる。
【0021】
この増圧機部3には、増圧容器22の周壁21のまわりに加熱手段38が設けられている。この加熱手段38は、例えば電気ヒータ39とその外側を覆う断熱体40とを有して形成されており、増圧容器22を所定温度に加熱し、また保温可能となっている。この加熱手段38は、高圧容器2に設けられた加熱手段9とは独立して温度制御可能になっている。この加熱手段38は、高圧容器2の加熱手段9よりも低温度を保持すべく電気的に制御される。
増圧容器22の上面には、加圧ステム30が挿通されている部分の上部開放部まわりを一段低く凹ませるかたちで圧媒溜め部42が設けられている。この圧媒溜め部42には漏れ検知手段43が設けられている。
【0022】
この漏れ検知手段43は、圧媒溜め部42内のどこにも接触しない状態で、且つこの圧媒溜め部42内の底面に近接させて電極44を設けると共に、この電極44とアース側との間で通電を監視できるようにしたものである。すなわち、圧媒溜め部42内に圧媒8が漏れ出して電極44が絶縁破壊されたときに通電が検出されるので、これをもって圧媒8の漏洩を検出したものと判定する。
次に、この熱間等方圧加圧装置1を用いて行う熱間等方圧加圧方法を説明する。
高圧容器2は、予め処理室5の上部開放部10を断熱カバー(図示略)によって閉鎖しておき、加熱手段9によって加熱しておく。本実施形態では450℃〜550℃になるようにした。そしてこの断熱カバーを取り除き、高圧容器2の処理室5へ処理物7及び圧媒8を収容する(図2(a))。
【0023】
このとき処理物7や圧媒8は、この高圧容器2とは別所に設けられた予熱装置(図示略)によって予備加熱させてから、高圧容器2まで移載するのが好適である。なお、処理室5に対する処理物7及び圧媒8の収容は同時でも別々でもよいし、別々とする場合の先後関係も特に限定されるものではない。
高圧容器2に設けられた加熱手段9により処理室5内の処理物7乃至圧媒8を加熱してこれらを所定温度にする。圧媒8は所定温度に達することで液化するが、この液化によって処理物7は圧媒8で取り囲まれた状態になる。また、増圧機部3に設けられた加熱手段38で増圧機部3側も加熱する。このとき、高圧容器2側に比べて増圧機部3側を低温度に加熱制御する。
【0024】
増圧機部3に設けられた流体アクチュエータ25を作動させることで高圧容器2の上部結合面2aとこの高圧容器2の上方に設けられた増圧機部3の下部結合面3aとを結合させる(図2(b)、図2(c))。
このとき、処理室5の上部開放部10まわりにはリング状のパッキン12が設けられているので、このリング状パッキン12が押圧されて高圧容器2の上部結合面2aと増圧機部3の下部結合面3aとの結合間は気密にシールされる。
また、このとき増圧機部3は加熱手段38によって加熱されているため、増圧容器22が高圧容器2に当接することによってもこの高圧容器2から増圧容器22へといたずらに熱が奪われることはなく、処理室5内の処理物7乃至圧媒8が温度低下を起こすことは防止される。
【0025】
この状態で増圧機部3に設けられた加圧駆動部27を作動させ、プランジャ20を下降させて高圧容器2における処理室5内の処理物7乃至圧媒8に圧下を加える。本実施形態では100MPa〜200MPa程度の圧下量とした。このとき高圧容器2における処理室5の上部開放部10は、従来とは異なってシート状のシーリング材で閉鎖されているのではないので、プランジャ20の圧下量はシーリング材で制限されることはない(図2(d))。
なお、万が一、この圧下中に処理室5から圧媒溜め部11に圧媒8の漏洩があった場合には、これを漏れ検知手段15がいち早く検出し、また増圧機部3の増圧容器22から圧媒溜め部42に圧媒8の漏洩があった場合には、これを漏れ検知手段43がいち早く検出するので、これらいずれかの検出があった時点で直ちに処理を中止させ、高圧容器2の上部結合面2aと増圧機部3の下部結合面3aとの結合を解除させる。これにより、高圧容器2における処理室5の上部開放部10を開放させて圧力を抜く。
【0026】
このようにして熱間等方圧加圧処理が終了した後は、増圧機部3の加圧駆動部27を上昇動作させてプランジャ20を高圧容器2の処理室5から引き上げ、次に増圧機部3の流体アクチュエータ25を上昇動作させて、高圧容器2の上部結合面2aとこの高圧容器2の上方に設けられた増圧機部3の下部結合面3aとの結合を解除させる。
高圧容器2における処理室5の上部開放部10まわりに残るリング状パッキン12は、押圧力が解除されても塑性変形などは起こしておらず、その後も繰り返し、熱間等方圧加圧処理に使用できる状態にある。すなわち、処理のたびにいちいちこのリング状パッキン12を交換する手間もコストも必要なく、従って当然に、このような交換に伴う圧媒8の飛び散りといった不具合も生じない。
【0027】
また仮にこのリング状パッキン12の交換が必要になったとしても、その交換作業は高圧容器2の上部結合面2a上での乗せ換えだけで済むものであり、何ら分解や組み立ての煩わしさを必要とせず、極めて簡単であると共に迅速且つ安全に行える。
図3及び図4は、本発明に係る熱間等方圧加圧装置1の第2実施形態を示している。この第2実施形態の加圧装置1が、上記した第1実施形態と最も異なっているところは、増圧機部3の増圧容器22にも圧媒50が封入されている点にある。なお、この第2実施形態では、高圧容器2側の漏れ検知手段15や、増圧機部3側の漏れ検知手段43を省略して示した。
【0028】
増圧機部3の下面部には、増圧容器22においてその容器内部(プランジャ20が上下動する領域)と連通した下部開放部を閉鎖する状態でパッキン51が設けられている。従って、このパッキン51を設けることで増圧容器22の容器内部には、プランジャ20の上下動領域を取り囲むように形成された空間が閉塞空間とされることになる。
そしてこの増圧容器22の容器内に形成される閉塞空間には、流動性に優れたセラミックパウダーなどから成る圧媒50が封入されている。すなわち、プランジャ20はその上下動がこの圧媒50中で行われ、圧下動作時(下降時)には圧媒50に対して圧縮作用が負荷されるようになる。
【0029】
パッキン51には、その略中央部に伸縮部55が設けられている。この伸縮部55は円筒形状に下方突出したかたちで、円筒形の外周壁部がベローズ構造になっており、プランジャ20の進退方向に合わせた伸び縮みが自在になっている。またこの伸縮部55は底部56が設けられた有底構造(容器構造)になっている。それは恰も、蛇腹ポンプのようなものである。この伸縮部55は、高圧容器2の処理室5内に侵入可能な大きさに形成されている。
パッキン51における少なくともこのベローズ構造の外周壁部は、耐熱金属製となっている。勿論、プランジャ20の圧下動作時に生じる圧媒52の圧縮力に絶えるだけの耐圧性も備えている。
【0030】
すなわち、加圧駆動部27によってプランジャ20が圧下動作(下降)すると、増圧容器22内に封入された圧媒52が圧縮され、パッキン51の伸縮部55が下方へ突出するようになり、この伸縮部55が高圧容器2の処理室5内へ侵入することによって、処理室5内の圧媒8乃至処理物7が圧下されるようになる。
このような構成であるから、プランジャ20は処理室5内の圧媒8と直接的に接触するものではなく、結果、圧下中に圧媒8や処理物7から温度が奪われてしまうという問題はなくなる。むしろ、高圧容器2(処理室5)の上部が増圧機部3により覆われていることによる断熱効果が得られ、好適となる。
【0031】
その他の装置構成や、この熱間等方圧加圧装置1を用いた熱間等方圧加圧方法の流れ、更にはそれから得られる作用効果については、上記した第1実施形態の場合と略同様である。
ところで、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、リング状パッキン12は、高圧容器2の上部結合面2aとこれに対向する増圧機部3の下部結合面3aとの相互間に、これら両者の結合により押圧される状態で設けられればよいので、高圧容器2側、増圧機部3側のいずれに保持させてもよい。場合によっては、リング径を異ならせて高圧容器2側及び増圧機部3側の両者に設けておき、両者の結合時に同心円的な位置関係となるようにしてもよい。
【0032】
またこのリング状パッキン12の材質は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る熱間等方圧加圧装置の第1実施形態を示した正面断面図である。
【図2】第1実施形態の熱間等方圧加圧装置による熱間等方圧加圧方向を段階的に分解して示した正面断面図である。
【図3】本発明に係る熱間等方圧加圧装置の第2実施形態を示した正面断面図である。
【図4】第2実施形態の熱間等方圧加圧装置による熱間等方圧加圧方向を段階的に分解して示した正面断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 熱間等方圧加圧装置
2 高圧容器
2a 上部結合面
3 増圧機部
3a 下部結合面
5 処理室
7 処理物
8 圧媒
9 加熱手段
10 上部開放部
11 圧媒溜め部
12 リング状パッキン
15 漏れ検知手段
20 プランジャ
22 増圧容器
27 加圧駆動部
28 ピストン
29 シリンダ部
38 加熱手段
42 圧媒溜め部
43 漏れ検知手段
51 パッキン
55 伸縮部
56 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧容器(2)とこの高圧容器(2)の上方でこの高圧容器(2)とは分離されて設けられた増圧機部(3)とを有し、高圧容器(2)には、処理物(7)を圧媒(8)で取り囲んだ状態に収容可能にした有底で且つ上部開放の処理室(5)が設けられ、増圧機部(3)には、高圧容器(2)の処理室(5)内に収容された圧媒(8)乃至処理物(7)に圧下を加えるプランジャ(20)が上下動可能に設けられ、高圧容器(2)の上部結合面(2a)とこれに対向する増圧機部(3)の下部結合面(3a)との相互間に、これら両者の結合により押圧されて高圧容器(2)における処理室(5)の上部開放部(10)まわりをシールするリング状パッキン(12)が設けられていることを特徴とする熱間等方圧加圧装置。
【請求項2】
前記増圧機部(3)は、プランジャ(20)に対して圧下力を加える加圧駆動部(27)を有しており、この加圧駆動部(27)はプランジャ(20)に連結されたピストン(28)とこのピストン(28)を上下動させるシリンダ部(29)とを有し、このピストン(28)の外径をD、プランジャ(20)の外径をd、高圧容器(2)における処理室(5)の内径をHとおくとき、d<H<Dとされていることを特徴とする請求項1記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項3】
前記増圧機部(3)には、高圧容器(2)側とは独立して温度制御可能な加熱手段(38)が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項4】
前記高圧容器(2)には処理室(5)内を処理温度に加熱する加熱手段(9)が設けられており、増圧機部(3)に設けられた加熱手段(38)は、高圧容器(2)の加熱手段(9)よりも低温度を保持すべく制御可能になっていることを特徴とする請求項3記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項5】
前記高圧容器(2)には、処理室(5)の上部開放部(10)まわりにこの処理室(5)内から漏洩した圧媒(8)を受ける圧媒溜め部(11)が設けられており、この圧媒溜め部(11)には圧媒(8)の流入を検出する漏れ検知手段(15)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項6】
前記増圧機部(3)において高圧容器(2)内と連通するようになる部分があるときには、この高圧容器(2)側から漏洩した圧媒(8)を受ける部分に対して圧媒溜め部(42)が設けられており、この圧媒溜め部(42)には圧媒(8)の流入を検出する漏れ検知手段(43)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項7】
前記増圧機部(3)は、プランジャ(20)の上下動領域を取り囲む増圧容器(22)が設けられており、この増圧容器(22)の下面部には容器内部と連通した下部開放部を閉鎖してプランジャ(20)の上下動領域内へ圧媒(8)を封入させるパッキン(51)が設けられ、このパッキン(51)にはプランジャ(20)が高圧容器(2)の処理室(5)へ向けて進退動される動きに伴って圧媒(8)の加圧流動で処理室(5)内へ向けて伸縮する有底の伸縮部(55)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項8】
有底の処理室(5)が設けられた高圧容器(2)に対してその処理室(5)へ所定温度に加熱した処理物(7)及び圧媒(8)を収容して処理物(7)が圧媒(8)で取り囲まれた状態にし、処理室(5)の上部開放部(10)まわりにリング状パッキン(12)を設けたうえでこの高圧容器(2)の上部結合面(2a)とこの高圧容器(2)の上方に設けられた増圧機部(3)の下部結合面(3a)とを結合し、これら両者の結合間で上記リング状パッキン(12)を押圧することでシール性を得、高圧容器(2)側に比べて増圧機部(3)側を低温度に加熱制御しつつ増圧機部(3)に設けられたプランジャ(20)を下降させて高圧容器(2)における処理室(5)内の圧媒(8)乃至処理物(7)に圧下を加えることを特徴とする熱間等方圧加圧方法。
【請求項9】
増圧機部(3)のプランジャ(20)によって高圧容器(2)における処理室(5)内の圧媒(8)乃至処理物(7)に圧下を加える過程で、処理室(5)から圧媒(8)が漏洩するか否かを監視し、圧媒漏洩を検出したときには高圧容器(2)と増圧機部(3)との結合を解いて処理室(5)を開放させることを特徴とする請求項8記載の熱間等方圧加圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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