説明

熱電変換モジュール

【課題】複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされた素子を利用しているにもかかわらず、衝撃や振動が伝わっても、隣り合う粒子同士の接合箇所が破断するのを抑制可能な熱電変換モジュールを提供すること。
【解決手段】熱電変換モジュール1において、p型素子11及びn型素子12は、いずれも複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされている。複数のp型素子11と複数のn型素子12との間には、それらの素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部16が設けられている。個々のp型素子11及びn型素子12の構造は、くびれ部分で破断しやすい脆弱な構造となっているが、補強部16によってくびれ部分での破断が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼーベック効果による熱電発電やペルチェ効果による熱電冷却(電子冷却)を行うために利用される熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電発電や熱電冷却を行うために利用される熱電変換モジュールの一例として、例えば、p型熱電材料からなる複数のp型素子とn型熱電材料からなる複数のn型素子が二次元的に配列された構造とされた面状の熱電変換モジュールが知られている。このような面状の熱電変換モジュールにおいて、モジュールの表裏両面には、複数の電極が設けられ、各電極を介して一つのp型素子と一つのn型素子が電気的に接続されることにより、複数のp型素子と複数のn型素子が交互に直列接続されている。
【0003】
このような熱電変換モジュールの表面側と裏面側に温度差(温度勾配)を与えると、p型素子では低温側が高電位、高温側が低電位となる一方、n型素子では高温側が高電位、低温側が低電位となる。その結果、低温側ではp型素子からn型素子へと電流が流れ、高温側ではn型素子からp型素子へと電流が流れる。
【0004】
ところで、上述のようなp型素子やn型素子は、従来、p型熱電材料やn型熱電材料と同一組成の原料組成物を加熱して熔解又は焼結したものから、機械的加工(切削加工)によってブロック状の成形体を切り出し、それらを基板上に配列して直列に接続していた。しかし、熱電材料には機械的強度の低いものが多いため、微細な精密加工は難しく、小型化薄型化を図ることは困難であった。また、成形体の切り出し加工では、歩留まりが低くなるという問題もあった。
【0005】
また、熱伝導性に優れる熱電材料を利用する場合、ブロック状に切り出された素子を利用すると、熱電変換モジュールの表裏に大きな温度差を与えても、素子の内部を熱が伝わりやすいため、素子の両端間では十分な温度差が発現しないという問題があった。
【0006】
このような諸問題に対し、素子の形状を工夫することにより、素子両端間で大きな温度差を発現させることができ、熱電発電モジュールの小型化をも実現可能な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この特許文献1に記載の技術においては、p型あるいはn型の素子の少なくとも一方の素子の形状が球を複数組み合わせた形状とされており、隣り合う位置にある球と球との接合部分に、断面積が最も小さくなるくびれ部分が形成されている。このような素子を利用すれば、くびれ部分で熱流束が滞るため、ブロック状に切り出された素子よりも素子両端間で熱が伝わりにくくなり、素子両端間の温度差が大きくなるので、熱電変換モジュールの熱電変換性能を向上させることができる。
【0008】
また、このように個々の素子の性能(起電力)が向上すれば、より小型の素子でも必要な性能を確保できるので、熱電変換モジュールの軽量化、薄型化、小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4524382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような、球を複数組み合わせた形状とされた素子(p型素子又はn型素子)には上述のようなくびれ部分があるため、ブロック状に切り出された素子に比べると、くびれ部分での機械的強度を確保することが難しく、素子の構造が脆弱になりやすいという点で、未だ改良の余地が残されていた。
【0011】
そのため、素子がくびれ部分で破断するのを避けるには、熱電変換モジュールに過大な衝撃や振動が伝わらない用途でしか、熱電変換モジュールを利用できず、その用途が限られてしまう、という問題があった。
【0012】
より具体的な例を挙げれば、例えば、熱電変換モジュールを自動車などに搭載する場合、自動車の走行中には相応の衝撃や振動が熱電変換モジュールに加わるおそれがある。そのため、そのような衝撃や振動によって素子の破断を招くおそれがあれば、そのような素子を採用した熱電変換モジュールを自動車に搭載する用途で使用することは難しいことになる。
【0013】
また、例えば、熱電変換モジュールを携帯機器などに搭載する場合でも、携帯機器を落としたりどこかにぶつけたりしたときに相応の衝撃が加わるおそれがある。そのため、そのような衝撃によって素子の破断を招くおそれがあれば、そのような素子を採用した熱電変換モジュールを携帯機器に搭載する用途で使用することは難しいことになる。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされた素子を利用しているにもかかわらず、衝撃や振動が伝わっても、隣り合う粒子同士の接合箇所が破断するのを抑制可能な熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の熱電変換モジュールは、それぞれがp型熱電材料からなる複数のp型素子とそれぞれがn型熱電材料からなる複数のn型素子が、間隔を空けた状態で並列に配置されて、前記p型素子及び前記n型素子の一端側では一つの前記p型素子と一つの前記n型素子が電気的に接続されるとともに、前記p型素子及び前記n型素子の他端側では前記一端側で電気的に接続された素子とは異なる素子間で一つの前記p型素子と一つの前記n型素子が電気的に接続されることにより、いくつかの前記p型素子といくつかの前記n型素子が交互に直列接続された構造が、1組以上形成されており、前記複数のp型素子及び前記複数のn型素子のうち、一つ以上の素子は、複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされており、しかも、複数の前記p型素子と複数の前記n型素子との間には、当該素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この熱電変換モジュールにおいて、複数のp型素子と複数のn型素子との間には、素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部が設けられ、この補強部を設けることで、同等な補強部相当物が設けられていないものに比べ、隣り合う粒子同士の接合箇所が破断するのを抑制している。
【0017】
より具体的には、この熱電変換モジュールでは、補強部となる樹脂組成物が素子間に充填されて、各素子が樹脂組成物中に埋没した状態になっている。そのため、熱電変換モジュールに衝撃や振動が伝わったことに起因して、熱電変換モジュールの各部に応力が作用しても、その応力が各素子に過度に集中することはなく、補強部にも分散する。
【0018】
したがって、補強部相当物が設けられていない場合に比べ、同程度の衝撃や振動が伝わったとしても、個々の素子に作用する応力を低減でき、隣り合う粒子同士の接合箇所が破断するのを抑制することができる。
【0019】
なお、このような補強部を形成する樹脂組成物については、隣り合う粒子同士の接合箇所が破断するのを抑制可能な樹脂組成物であれば、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂いずれを利用することもできる。ただし、素子間に充填する都合上、充填時には、各素子に過大な負荷をかけることなく充填可能な程度の流動性を有するものが好ましく、例えば粘度が500mPa・s〜500Pa・s程度の樹脂組成物が好ましい。一方、充填後には、補強部として機能する程度の硬さを呈する樹脂組成物が好ましい。
【0020】
そのような樹脂組成物の代表的な例を挙げれば、例えば、熱硬化性樹脂であれば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂などを挙げることができる。また、熱可塑性樹脂であれば、スチレン系エラストマーなどを挙げることができる。中でも、衝撃や振動を吸収ないし減衰させる特性を有する樹脂組成物であると、素子にかかる負荷を単に分散させるだけではなく、効果的に低減できるので、その点で、シリコーン樹脂やスチレン系エラストマーは特に好ましい。
【0021】
また、前記補強部は、少なくとも一層の断熱層を備えると好ましい。このような断熱層が設けられていれば、熱電変換モジュールの表裏両面の間に断熱層が介在する構造となるので、熱電変換モジュールの表裏両面に温度差が生じやすくなり、各素子の起電力を向上させることができる。
【0022】
断熱層を設けるに当たっては、補強部全体が一層の断熱層として構成されていてもよいし、補強部を複数の層が積層された積層構造として、それら複数の層のうち、一層以上が断熱層として構成されていてもよい。
【0023】
また、断熱層を形成する樹脂組成物については、所期の断熱作用がある層を形成できれば特に限定されないが、一例としては、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満程度の断熱層を形成可能な樹脂組成物であると好ましい。
【0024】
より具体的な一例としては、前記断熱層は、中空粒子を含有する樹脂組成物によって形成されていると好ましい。このような中空粒子を含有する樹脂組成物であれば、中空粒子によって形成される中空部が断熱効果を発揮するので、マトリクス樹脂を選定する際にマトリクス樹脂そのものの熱伝導性を過度に考慮しなくても、所期の断熱層を容易に形成することができる。
【0025】
また、前記補強部は、前記断熱層に加えて、少なくとも一層の熱伝導層を備え、前記熱伝導層は、前記p型素子及び前記n型素子の一端又は他端に接する位置に設けられていると好ましい。
【0026】
このような構造を採用すれば、熱電変換モジュールの表裏両面のうち、高温側となる位置に熱伝導層がある場合には、素子端部の加熱を促すことができ、一方、低温側となる位置に熱伝導層がある場合には、素子端部からの放熱を促すことができる。したがって、高温側及び低温側のうち、いずれか一方に熱伝導層がある場合、又は両方に熱伝導層がある場合、どの場合においても、熱電変換モジュールの表裏両面には温度差が生じやすくなり、各素子の起電力を向上させることができる。
【0027】
なお、熱伝導層を形成する樹脂組成物については、所期の熱伝導作用がある層を形成できれば特に限定されないが、一例としては、熱伝導率が0.8W/(m・K)以上程度の熱伝導層を形成可能な樹脂組成物であると好ましい。
【0028】
さらに、前記補強部は、粘着性のある樹脂組成物によって形成されており、当該補強部表面の粘着性を利用して、前記p型素子及び前記n型素子の一端側から熱を奪う放熱部材が貼り付けられていると好ましい。
【0029】
このような構造を採用すれば、放熱部材によって熱を放出させることができるので、熱電変換モジュールの表裏両面には温度差が生じやすくなり、各素子の起電力を向上させることができる。しかも、このような放熱部材を設けるに当たっては、補強部表面の粘着性を利用して放熱部材が貼り付けられているので、補強部とは別の粘着剤や粘着テープなどを利用しなくても放熱部材を貼り付けることができる。したがって、別の粘着剤や粘着テープなどが不要な分だけ余計なコストがかからないのはもちろんのこと、別の粘着剤や粘着テープなどによって各素子や補強部から放熱部材への熱移動が阻害されることもなく、効率よく放熱を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は事例1,2として例示する熱電変換モジュールの縦断面図、(b)は事例3,4,5として例示する熱電変換モジュールの縦断面図。
【図2】(a)は事例6,7として例示する熱電変換モジュールの縦断面図、(b)は事例8として例示する熱電変換モジュールの縦断面図、(c)は事例9として例示する熱電変換モジュールの縦断面図。
【図3】事例10として例示する熱電変換モジュールの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの具体的な事例を挙げて説明する。
〔1〕事例1
図1(a)に示すように、熱電変換モジュール1は、それぞれがp型熱電材料(本事例ではFe20.9Ti0.1Al)からなる複数のp型素子11と、それぞれがn型熱電材料(本事例ではFe2VAl0.9Si0.1)からなる複数のn型素子12とを備え、これらp型素子11及びn型素子12が互いに間隔を空けた状態で並列に配置されている。
【0032】
これらp型素子11及びn型素子12は、各素子の一端側(図1(a)中に示す低温側)において、一つのp型素子11と一つのn型素子12が電極13を介して電気的に接続されている。また、各素子の他端側(図1(a)中に示す高温側)においては、一端側で電極13を介して電気的に接続された素子とは異なる素子間で、一つのp型素子11と一つのn型素子12が電極14を介して電気的に接続されている。電極14は、基板15の表面に形成されている。
【0033】
また、図1(a)には表れないが、p型素子11及びn型素子12は、図1(a)が描かれた紙面に垂直な方向にも配列されている。そして、それら図1(a)に表れないp型素子11及びn型素子12も含め、熱電変換モジュール1内にある複数のp型素子11と複数のn型素子12すべてが交互に直列接続されている。
【0034】
また、この熱電変換モジュール1において、p型素子11及びn型素子12は、いずれも複数(図1(a)では四つ)の粒子(図1(a)では球状粒子、直径500μm)を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされている。
【0035】
さらに、複数のp型素子11と複数のn型素子12との間には、それらの素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部16が設けられている。この補強部16は、シリコーン樹脂系ポッティング材によって形成されたものである。本事例においては、二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B)を50:50の重量比で配合した樹脂組成物(粘度:500mPa・s)にて、基板15上の素子11,12をポッティングすることにより、補強部16を形成した。
【0036】
以上のように構成された熱電変換モジュール1によれば、p型素子11及びn型素子12が、複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされているので、ブロック状に切り出された素子よりも素子両端間で熱が伝わりにくくなり、素子両端間の温度差が大きくなるので、熱電変換モジュール1の熱電変換性能を向上させることができる。また、このように個々の素子の性能(起電力)が向上すれば、より小型の素子でも必要な性能を確保できるので、熱電変換モジュール1の軽量化、薄型化、小型化を図ることができる。
【0037】
しかも、個々のp型素子11及びn型素子12の構造は、上記のようなくびれ部分のある構造となっているので、ブロック状に切り出された素子に比べ、くびれ部分で破断しやすい脆弱な構造となっているが、複数のp型素子11と複数のn型素子12との間には、素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部16が設けられているので、補強部16によってくびれ部分での破断が抑制される。
【0038】
したがって、このような補強部16相当の構成を備えていないものに比べ、耐衝撃性及び振動特性が向上し、この熱電変換モジュール1であれば、車載用途やモバイル機器等の用途においても使用することができるようになる。
【0039】
さらに、補強部16が設けられていることにより、補強部16が低温側と高温側との間で熱移動を妨げる断熱材として機能し、p型素子11やn型素子12から放射される熱を補強部16によって遮断することができる。また、素子間の隙間が補強部16で埋められていれば、対流によって低温側へ熱が伝わることもない。よって、補強部16がない場合以上に、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくすることができ、より高性能な熱電変換モジュール1とすることができる。
【0040】
〔2〕事例2
事例2として説明する熱電変換モジュール1は、構造的には事例1で示した熱電変換モジュール1と同等のものである。ただし、補強部16を形成する樹脂組成物として、二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B)の配合比を40:60の重量比で配合した樹脂組成物(粘度:500mPa・s)に変更した。この補強部16の硬さは、アスカーC硬度が10であった。
【0041】
このような熱電変換モジュール1でも、上記事例1同様、p型素子11及びn型素子12は、複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされているので、素子両端間の温度差が大きくなり、熱電変換モジュールの熱電変換性能を向上させることができる。
【0042】
また、複数のp型素子11と複数のn型素子12との間には、素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部16が設けられているので、補強部16によってくびれ部分での破断を抑制でき、車載用途やモバイル機器等の用途においても使用することができるようになる。
【0043】
さらに、補強部16が設けられていることにより、補強部16が低温側と高温側との間で熱移動を妨げる断熱材として機能するので、補強部16がない場合以上に、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくすることができ、より高性能な熱電変換モジュール1とすることができる。
【0044】
〔3〕事例3
事例3として説明する熱電変換モジュール21は、図1(b)に示すように、補強部23の微視的構造が、マトリクス23a中に無数の中空部23bを有する構造とされている点で、上述の事例1,2とは相違するものである。
【0045】
本事例において、補強部23を形成する樹脂組成物としては、事例1と同様の二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B、配合比を50:50(重量比))100重量部に対し、中空粒子(日本フィライト株式会社製 Fillite200−7、直径5〜150μm)90重量部を配合した樹脂組成物(粘度:50Pa・s)を利用した。この補強部23の硬さは、アスカーC硬度が30であった。
【0046】
このような熱電変換モジュール1でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、補強部23には、中空粒子を配合することによって形成された中空部23bが形成されているので、事例1,2以上に補強部23の断熱層としての性能が向上する。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0047】
〔4〕事例4
事例4として説明する熱電変換モジュール21は、構造的には事例3で示した熱電変換モジュール21と同等のものである。ただし、補強部23を形成する樹脂組成物として、二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B)の配合比を40:60の重量比に変更し、このシリコーンゲル100重量部に対し、中空粒子(日本フィライト株式会社製 Fillite200−7)90重量部を配合した(粘度:50Pa・s)。この補強部23の硬さは、アスカーC硬度が60であった。
【0048】
このような熱電変換モジュール21でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、補強部23には、中空粒子を配合することによって形成された中空部23bが形成されているので、上記事例3同様、事例1,2以上に補強部23の断熱層としての性能が向上する。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0049】
〔5〕事例5
事例5として説明する熱電変換モジュール21は、構造的には事例3,4で示した熱電変換モジュール21と同等のものである。ただし、補強部23を形成する樹脂組成物として、二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B)に代えて、ウレタン樹脂(サンユレック株式会社製 SU−3001)を使用し、このウレタン樹脂1000重量部に対し、中空粒子(日本フィライト株式会社製 Fillite200−7)50重量部を配合した(粘度:100Pa・s)。この補強部23の硬さは、アスカーC硬度が80であった。
【0050】
このような熱電変換モジュール21でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、補強部23には、中空粒子を配合することによって形成された中空部23bが形成されているので、上記事例3,4同様、事例1,2以上に補強部23の断熱層としての性能が向上する。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0051】
〔6〕事例6
事例6として説明する熱電変換モジュール31は、図2(a)に示すように、補強部33の構造が、断熱層33aと熱伝導層33bの積層構造とされている点で、上述の事例1〜5とは相違するものである。
【0052】
本事例において、断熱層33aを形成する樹脂組成物としては、事例1と同様の二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B、配合比を50:50(重量比))を使用した。一方、熱伝導層33bを形成する樹脂組成物としては、事例1と同様の二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B、配合比を50:50(重量比))100重量部に対し、アルミナ(昭和電工株式会社製 AS−10)300重量部を配合した樹脂組成物(粘度:50Pa・s)を利用した。熱伝導層33bの硬さは、アスカーC硬度が20であった。
【0053】
このような熱電変換モジュール31でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、p型素子11やn型素子12の低温側端部に熱伝導層33bが設けてあるので、事例1〜5以上にp型素子11やn型素子12の低温側端部の放熱を促すことができる。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0054】
〔7〕事例7
事例7として説明する熱電変換モジュール31は、構造的には事例6で示した熱電変換モジュール31と同等のものである。ただし、補強部33を形成する樹脂組成物として、
二液型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SE1885A、SE1885B、配合比を50:50(重量比))100重量部に対し、アルミナ(昭和電工株式会社製 AS−10)500重量部を配合したものを使用した(粘度:500Pa・s)。熱伝導層33bの硬さは、アスカーC硬度が50であった。
【0055】
このような熱電変換モジュール31でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、p型素子11やn型素子12の低温側端部に熱伝導層33bが設けてあるので、事例6同様、事例1〜5以上にp型素子11やn型素子12の低温側端部の放熱を促すことができる。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0056】
〔8〕事例8
事例8として説明する熱電変換モジュール41は、図2(b)に示すように、補強部43の構造が、断熱層43aと熱伝導層43bの積層構造とされている点で、上述の事例1〜5とは相違する。また、熱伝導層43bが断熱層43aよりも高温側に設けてある点で、事例6,7とも相違する。なお、断熱層43a及び熱伝導層43bそれぞれを形成する樹脂組成物については、事例6と同じものを使用した。
【0057】
このような熱電変換モジュール41でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、p型素子11やn型素子12の高温側端部に熱伝導層43bが設けてあるので、事例1〜5以上にp型素子11やn型素子12の高温側端部の加熱を促すことができる。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0058】
〔9〕事例9
事例9として説明する熱電変換モジュール51は、図2(c)に示すように、補強部53の構造が、断熱層53aとその両側にある熱伝導層53b,53cの三層構造とされている点で、上述の事例1〜8とは相違する。なお、断熱層53a及び熱伝導層53b,53cそれぞれを形成する樹脂組成物については、事例6と同じものを使用した。
【0059】
このような熱電変換モジュール51でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、p型素子11やn型素子12の低温側端部に熱伝導層53bが設けてあるので、事例6,7同様、事例1〜5以上にp型素子11やn型素子12の低温側端部の放熱を促すことができる。しかも、事例8同様、p型素子11やn型素子12の高温側端部にも熱伝導層53cが設けてあるので、事例1〜7以上にp型素子11やn型素子12の高温側端部の加熱を促すことができる。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0060】
〔10〕事例10
事例10は、図3に示すように、事例1として説明した熱電変換モジュール1に対して、放熱部材61(金属製の放熱フィン)を取り付けたものである。この放熱部材61は、補強部16の表面に生じる粘着性を利用して、補強部16に対して貼り付けられている。
【0061】
このような熱電変換モジュール51でも、上記事例1,2同様の作用、効果を奏するのはもちろんのこと、放熱部材61が設けてあるので、事例1以上にp型素子11やn型素子12の低温側端部の放熱を促すことができる。したがって、p型素子11やn型素子12の両端間の温度差を大きくする効果が、より一層向上し、より高性能な熱電変換モジュールとすることができる。
【0062】
また、補強部16表面の粘着性を利用して放熱部材61が貼り付けられているので、補強部16とは別の粘着剤や粘着テープなどを利用しなくても放熱部材61を貼り付けることができる。したがって、別の粘着剤や粘着テープなどが不要な分だけ余計なコストがかからないのはもちろんのこと、別の粘着剤や粘着テープなどによって放熱部材61への熱移動が阻害されることもなく、効率よく放熱を促すことができる。
【0063】
〔11〕その他の事例
以上、本発明の実施形態について、いくつかの事例を挙げて説明したが、本発明は上記の具体的な事例に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0064】
例えば、上記事例では、p型熱電材料、n型熱電材料として、特定の組成比のFe2VAl系熱電材料を例示したが、この組成比は一例であり、p型又はn型熱電材料としての性能を維持できる範囲内で、適宜組成比を変更してもかまわない。また、上記実施形態では、Fe2VAl系熱電材料に第4元素としてSiを添加する例を示したが、これもp型又はn型熱電材料としての性能を維持できる範囲内で、任意の第4元素を添加することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、Fe2VAl系熱電材料を例示したが、他の熱電材料を利用してもよい。そのような熱電材料としては、例えば、Bi−Te系熱電材料、Mg−Si系熱電材料、Mn−Si系熱電材料、Fe−Si系熱電材料、Si−Ge系熱電材料、Pb−Te系熱電材料など、各種合金系の熱電材料を挙げることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,21,31,41,51・・・熱電変換モジュール、11・・・p型素子、12・・・n型素子、13,14・・・電極、15・・・基板、16,23,33,43,53・・・補強部、23b・・・中空部、33a,43a,53a・・・断熱層、33b,43b,53b,53c・・・熱伝導層、61・・・放熱部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがp型熱電材料からなる複数のp型素子とそれぞれがn型熱電材料からなる複数のn型素子が、間隔を空けた状態で並列に配置されて、前記p型素子及び前記n型素子の一端側では一つの前記p型素子と一つの前記n型素子が電気的に接続されるとともに、前記p型素子及び前記n型素子の他端側では前記一端側で電気的に接続された素子とは異なる素子間で一つの前記p型素子と一つの前記n型素子が電気的に接続されることにより、いくつかの前記p型素子といくつかの前記n型素子が交互に直列接続された構造が、1組以上形成されており、
前記複数のp型素子及び前記複数のn型素子のうち、一つ以上の素子は、複数の粒子を一列に並べて隣り合う粒子同士を接合した構造とされており、
しかも、複数の前記p型素子と複数の前記n型素子との間には、当該素子間に充填された樹脂組成物によって形成された補強部が設けられている
ことを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記補強部は、少なくとも一層の断熱層を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記断熱層は、中空粒子を含有する樹脂組成物によって形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記補強部は、前記断熱層に加えて、少なくとも一層の熱伝導層を備え、
前記熱伝導層は、前記p型素子及び前記n型素子の一端又は他端に接する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記補強部は、熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂のいずれか、若しくは、熱可塑性樹脂をマトリクスとする樹脂組成物によって形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記補強部は、粘着性のある樹脂組成物によって形成されており、
当該補強部表面の粘着性を利用して、前記p型素子及び前記n型素子の一端側から熱を奪う放熱部材が貼り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110157(P2013−110157A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251711(P2011−251711)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)