説明

熱電変換材料

【課題】300〜600℃において優れた熱電変換性能を有する高性能なp−型熱電変換材料を提供する。
【解決手段】熱電変換材料が、一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z+w≦4、0≦w≦0.5)で表される構造を有し、REはLaおよびCeのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに、あるいは電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換できる熱電変換素子に使用される熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減が世界的規模で推進される傾向にある。エネルギーの効率的利用促進の一環として、熱機関などから発生する廃熱を回収し、電気へ変換する技術が盛んに研究開発されている。熱電変換材料は熱を電気に直接変換する、あるいは電気を印加して加熱・冷却できる材料である。熱電変換素子を使用すれば、従来あまり利用されていなかった排熱を電気に変換してエネルギーを有効に活用することができる。
【0003】
熱電変換材料の性質は、性能指数Zによって評価される。性能指数Zとは、ゼーベック係数S、熱伝導率κおよび電気抵抗率ρを用いた以下の式(1)によって表される。
Z=S/(κρ) ・・・式(1)
また、熱電変換材料の性質は、性能指数Zと温度Tとの積によって評価されることがある。この場合には、式(1)の両辺に温度T(ここで、Tは絶対温度)を乗じて以下の式(2)とする。
ZT=ST/(κρ) ・・・式(2)
式(2)に示したZTは無次元性能指数と呼ばれ、熱電変換材料の性能を示す指標になる。熱電変換材料は、このZTの値が大きいほど、その温度Tにおける熱電性能が高いことになる。式(1)および式(2)から、優れた熱電変換材料とは、無次元性能指数ZTの値を大きくできる材料、すなわちゼーベック係数Sが大きく、熱伝導率κおよび電気抵抗率ρが小さい材料である。
【0004】
また、電気的な観点から熱電変換材料の性能を評価する場合、次式(3)で表される出力因子Pを用いる場合がある。
P=S/ρ ・・・式(3)
【0005】
熱電変換材料の最大変換効率ηmaxは、以下の式(4)で表される。
ηmax={(T−T)/T}{(M−1)/(M+(T/T))}
・・・式(4)
式(4)のMは、以下の式(5)によって表される。ここでTは熱電変換材料の高温端の温度、Tは低温端の温度である。
M={1+Z(T+T)/2}0.5 ・・・式(5)
【0006】
上記の式(1)〜(5)から、熱電変換材料の熱電変換効率は、性能指数および高温端と低温端との温度差が大きいほど、向上することが分かる。
【0007】
現在までに研究されてきた熱電変換材料には、BiTe系、PbTe系、GeTe−AgSbTe系、SiGe系、FeSi系、ZnSb系、BC系、スクッテルダイト構造を有するLaFeCoSb12(0<x≦1)およびYbCoSb12(0<y≦1)系材料、NaCo、CaCo、BiSrCo系酸化物などがある。
【0008】
上記の熱電変換材料の中で実用化されているのはBiTe系のみである。BiTe系熱電変換素子は、主として、低温域での用途開発がなされているが、熱電変換効率が10%未満と低いので、スペースユーティリティーが小さいペルチェ素子などに用途が限られている。
【0009】
また、1996年に報告されたZnSb熱電変換材料は、p−型で無次元性能指数ZT=1という高い熱電性能を有する。しかしながら、400℃以上の温度に達した場合、固相変態して熱電性能が低下するという欠点があり、用途が400℃以下の範囲に限られる。
【0010】
10年ほど前から、「Phonon Glass and Electron Crystal」というコンセプトに基づき、ラットリング効果を利用した充填スクッテルダイト熱電変換材料の開発がなされてきた。その結果、300〜600℃の中温域で使用可能なLa(Ce)−Fe−Sb系熱電変換材料、特にp−型La(Fe、Co)Sb12、Ce(Fe、Co)Sb12(0<x≦1)熱電変換材料が開発され、その熱電性能の無次元性能指数ZTは比較的高い値を示している(特許文献1)。p−型CeFeSb12熱電材料の無次元性能指数(ZT)はラットリング効果による熱伝導率の低減が図られていることから、特許文献1によれば、450℃で1.4に達しているとされている。しかしながら、本発明者による追試実験では約0.5〜0.6であった。さらに、LaFeCoSb12(0.7≦x≦0.9)の無次元性能指数ZTの最大値は本発明者による追試実験では約0.5であった。
【0011】
特に、特許文献1におけるp−型CeFeSb12熱電材料の熱伝導率の値は450℃で2.3W/Kであるのに対し、本発明者による追試では3.7W/Kであった。実際のp−型La(Fe、Co)Sb12、Ce(Fe、Co)Sb12(0<x≦1)熱電変換材料の無次元性能指数ZTが低い原因は、これら熱電変換材料の熱伝導率がまだ高いことにあると考えられる。
【0012】
【特許文献1】特開2000−252526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
高い熱電変換効率を示す熱電変換素子を作るためには、p−型、n−型共に高い無次元性能指数を有し、かつ熱的に安定であることが要求される。しかしながら、従来の材料はこの要求を両方とも満たすことは困難であった。
【0014】
本発明は、上記の点に鑑み、300〜600℃の温度範囲で材料的に安定であり、従来の熱電変換材料よりも熱電性能が高い熱電変換材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明によれば、一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z+w≦4、0≦w≦0.5)で表される構造を有し、REはLaおよびCeのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする熱電変換材料が提供される。
【0016】
本発明において、結晶格子内にREとAEを混在させることでフォノン散乱を強く起こすことができる。さらに好ましくは結晶格子内にFeとCoとを、およびREとAEとを同時に混在させることによってより強いフォノン散乱を起こすことができる。このフォノン散乱が熱伝導率κを低下させるので、式(2)より無次元性能指数ZTの値を大きくすることが可能である。
【0017】
さらに、本発明では、REAEFe4−(z+w)CoSb12中のz量、すなわちFe及びCoの量を調整することによって、出力因子P(=S/ρ)の値を大きくすることも可能である。この効果により無次元性能指数ZTの値をより一層大きくすることができる。
【0018】
また、本発明によれば、上記一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12中におけるwが、0より大きい熱電変換材料が提供される。
【0019】
元素Feまたは元素Coの少なくとも一部を元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種の元素で置換することにより、熱伝導率κをさらに低下させることができ、熱電変換材料の熱電性能を表す無次元性能指数ZTの値をさらに大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱電変換材料を用いることにより、300〜600℃の中温領域で高い熱電性能を有し、変換効率の高い熱電変換素子を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の熱電変換材料は、一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z+w≦4、0≦w≦0.5)で表される構造を有し、REはLaおよびCeのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。本発明において、Z>0とし、RE−AE−Fe−Co−M-Sb系熱電変換材料とすることが好ましい。
【0022】
本発明のp−型熱電変換材料は、充填スクッテルダイト構造を有する。このような構造を有する熱電変換材料は、溶解法、急冷凝固法、メカニカルアロイング法(ボールミル法)、または単結晶育成法などと、ホットプレス法、加熱焼結法、放電プラズマ焼結法、または熱処理法などを組み合わせることによって作製することができる。しかしながら、本発明の熱電変換材料が得られる限り、製法としては特に上記に限定されない。
以下、具体的な合成プロセスの例について説明する。
【0023】
本発明のp−型熱電変換材料の合成プロセスとして、溶解法と放電プラズマ焼結法とを組み合わせた例について説明する。所定の比率で高純度金属の原料をアルミナ坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解する。30分保持した後、室温まで冷却することによりインゴットを得る。このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れる。真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、50MPa〜60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で500℃〜700℃の温度まで加熱する。5〜15分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料が得られる。
【0024】
次に、本発明のp−型熱電変換材料の合成プロセスとして、溶解法と熱処理法とを組み合わせた例について説明する。所定の比率にて高純度金属の原料をアルミナ坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気加熱により1100℃で加熱溶解させる。5時間保持した後、700℃で36時間、さらに550℃で12時間保持する。その後室温まで冷却することにより、目的の熱電変換材料が得られる。
【0025】
さらに、本発明のp−型熱電変換材料の合成プロセスとして、メカニカルアロイング法と放電プラズマ焼結法とを組み合わせた製法の例を挙げて説明する。不活性ガス雰囲気中において、所定の比率で高純度金属粉末をアルミナ容器の中に入れ、アルミナボールによるメカニカルアロイングを6時間行うことにより粉末の原料を得る。この粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中、50MPa〜60MPaの圧力の下で、パルス大電流をかけながら100℃/分の速度で500℃〜700℃の温度まで加熱する。5〜15分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料が得られる。
【0026】
上記のいずれの製法において得られた熱電変換材料も充填スクッテルダイト構造、すなわち化学式MSb12(M:金属、0<x≦1、T:遷移金属)を有することが粉末X線回折によって確認されている。そして、そのゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κと温度との関係を測定し、各温度での無次元性能指数ZTを算出した。その結果、温度の上昇と共にZTが大きくなり、300℃〜600℃の温度範囲でZTが0.7〜0.9に達した。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0028】
[実施例1]
本実施例では、La0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料の合成法およびその熱電性能について述べる。
【0029】
原料として、純金属La、Ba、Fe、Co、Sbをそれぞれ所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れた。アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解し、30分保持した。その後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。これをさらに700℃で48時間真空熱処理をした。その後、このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れた。アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料を得た。なお、放電プラズマ焼結処理後に、再度600℃で48時間の真空熱処理を行うことがより望ましい。
【0030】
作製した材料は粉末X線回折で生成相を同定した。また熱電性能評価装置(アルバック理工株式会社製 熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用いて室温〜600℃の温度範囲でのゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κを測定し、出力因子Pおよび無次元性能指数ZTを算出した。
【0031】
図1〜図4は、本実施例で得られたLa0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κおよび無次元性能指数ZTと温度との関係をそれぞれ示す。なお、粉末X線回折によりこの材料において第2相のピークは認められなかった。図1および図2に示すように、温度の上昇につれてゼーベック係数および電気抵抗率が大きくなった。図1〜図3の結果より、図4の無次元性能指数ZTは温度の上昇に伴い大きく推移して、300℃以上の温度で0.7以上、400℃以上の温度で0.8以上、500℃以上の温度で最大値0.9に達した。
【0032】
[比較例1]
本比較例では、熱電変換材料REAEFe4−zCoSb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種)において、0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1の組成範囲を逸脱した場合における、La0.3FeCoSb12、Ce0.3FeCoSb12、およびLa0.7Ba0.6FeCoSb12の各熱電変換材料について述べる。
【0033】
原料となる純金属La、Ce、Ba、Fe、Co、Sbを所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れた。アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解し、30分保持した。その後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。これをさらに700℃で48時間真空熱処理をした。このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れた。アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的のLa0.3FeCoSb12、Ce0.3FeCoSb12、およびLa0.7Ba0.6FeCoSb12の各熱電変換材料を得た。
【0034】
それぞれ作製した材料を粉末X線回折によって分析したところ、すべての材料においてSb相、FeSb相などのピークが確認された。
【0035】
実施例1のLa0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料では第2相のピークは認められなかった。そこで、La量、Ce量あるいは(La+Ce)量、すなわち本発明に係る一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種)におけるx量と第2相のピークが表れる範囲の関係をより詳細に調べた。その結果、いずれにおいてもx<0.5において第2相のピークが表れることが判明した。第2相が認められると出力因子Pが小さくなり、また熱伝導率κは大きくなって熱電性能が低下する。したがって、x≧0.5が望ましい。
【0036】
また、Ca量、Sr量、Ba量、(Ca+Sr)量、(Ca+Ba)量、(Sr+Ba)量、および(Ca+Sr+Ba)量、すなわち一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種)におけるy量と第2相のピークが表れる範囲の関係をより詳細に調べたところ、いずれにおいてもy>0.5において第2相ピークが表れることが判明した。したがって、y≦0.5であることが望ましい。
【0037】
[比較例2]
本比較例では、La0.7FeSb12熱電変換材料の溶製法およびその熱電性能について述べる。
【0038】
純金属La、Fe、およびSbの原料を所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れた。アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解し、30分保持した。その後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れた。アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料を得た。
【0039】
作製したLa0.7FeSb12熱電変換材料は粉末X線回折によって第2相のピークが認められなかった。さらに熱電性能評価装置(熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用いて室温〜600℃の温度範囲でのゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κを測定し、無次元性能指数ZTを算出した。これらの結果を図5〜図8に示す。図8に示すように無次元性能指数ZTは室温〜600℃の温度範囲で最大0.5であった。
【0040】
実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1のLa0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料は、比較例2の従来高い熱電性能を有するLa0.7FeSb12熱電変換材料に比べ、さらにLaとBaおよびFeとCoの共存によって出力因子Pが大きく、また熱伝導率が小さくなった。したがって、実施例1の熱電変換材料は、より一層高い熱電特性を示した。特に、比較例2のLa0.7FeSb12熱電変換材料における熱伝導率の最小値は2.9W/mKであったが、図3に示すように実施例1のそれは2.1W/mKであった。したがって、比較例2のLa0.7FeSb12熱電変換材料における無次元性能指数は500℃で最大0.5であるが、実施例1のLa0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料における無次元性能指数の最大値は500℃で0.9に達している。
【0041】
[実施例2]
本実施例では、本発明に係るLa0.8Sr0.02FeCoSb12熱電変換材料の合成法およびその熱電性能について述べる。
【0042】
原料として、純金属La、Sr、Fe、Co、およびSbをそれぞれ所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れ、アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解し、30分保持した。その後、室温まで冷却することによりインゴットを得る。これをさらに700℃で48時間真空熱処理をした。その後このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料を得た。なお、放電プラズマ焼結処理後に再度600℃で48時間の真空熱処理を行うことがより望ましい。
【0043】
作製したLa0.8Sr0.02FeCoSb12熱電変換材料について粉末X線回折を行った結果、第2相のピークは認められなかった。さらに、熱電性能評価装置(熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用いて室温〜600℃の温度範囲で無次元性能指数ZTを算出したところ、無次元性能指数ZTは400〜600℃の温度範囲で最大0.7に達した。
【0044】
[実施例3]
本実施例では、本発明に係るLa0.4Ce0.3Ba0.04FeCoSb12熱電変換材料の合成法およびその熱電性能について述べる。
【0045】
原料として、純金属La、Ce、Ba、Fe、Co、およびSbをそれぞれ所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れ、アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解した。30分保持した後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。これをさらに700℃で48時間真空熱処理をした。その後このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料を得た。なお、放電プラズマ焼結処理後に再度600℃で48時間の真空熱処理を行うことがより望ましい。
【0046】
作製したLa0.4Ce0.3Ba0.04FeCoSb12熱電変換材料は粉末X線回折によって第2相のピークは認められなかった。さらに熱電性能評価装置(熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用いて室温〜600℃の温度範囲で無次元性能指数ZTを算出したところ、無次元性能指数ZTは400〜600℃の温度範囲で最大0.7に達した。
【0047】
[実施例4]
本実施例では、本発明に係るLa0.7Ca0.04Ba0.04FeCoSb12熱電変換材料の合成法およびその熱電性能について述べる。
【0048】
原料として、純金属La、Ca、Ba、Fe、Co、Sbをそれぞれ所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れ、アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解した。30分保持した後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。これをさらに700℃で48時間真空熱処理をした。その後このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的の熱電変換材料を得た。なお、放電プラズマ焼結処理後に再度600℃で48時間の真空熱処理を行うことがより望ましい。
【0049】
作製したLa0.7Ca0.04Ba0.04FeCoSb12熱電変換材料について熱電性能評価装置(熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用いて室温〜600℃の温度範囲で無次元性能指数ZTを算出した。無次元性能指数ZTは400〜600℃の温度範囲で最大0.8に達した。
【0050】
さらに、REAEFe4−(z+w)CoSb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種)において、Feを置換するCoの一部をさらにRu、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群より選択される少なくとも一種で置換した場合、これらの元素がFeの格子サイトに取り込まれ、異なる元素の混在によるフォノン散乱が引き起こされる。その結果、熱伝導率の値は置換前より小さくなり、熱電性能がさらに向上する。以下に実施例を用いて具体的に説明する。
【0051】
[実施例5]
本実施例では、La0.8Sr0.02FeCo0.95Rh0.05Sb12熱電変換材料の合成法およびその熱電性能について述べる。
【0052】
原料として純金属La、Sr、Fe、Co、Rh、およびSbをそれぞれ所定量秤量し、アルミナ坩堝に入れ、アルゴンガス雰囲気中において、高周波溶解によって1100℃に加熱溶解した。30分保持した後、室温まで冷却することによりインゴットを得た。このインゴットを粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、アルゴンガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス大電流をかけながら、100℃/分の速度で600℃まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することによって目的のLa0.8Sr0.02FeCo0.95Rh0.05Sb12熱電変換材料を得た。
【0053】
作製した材料を熱電性能評価装置(熱電能測定装置ZEM−2およびレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)によって室温〜600℃の温度範囲でのゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定した。その結果、実施例2で得られたLa0.8Sr0.02FeCoSb12熱電変換材料と比べるとゼーベック係数、電気抵抗率はあまり変わらないが、熱伝導率が小さくなった。例えば、480℃において、RhでCoを置換していない実施例2で得られた熱電変換材料のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率は、それぞれ162μV/K、9.5×10−6Ωm、2.8W/mKであったが、置換後のLa0.8Sr0.02FeCo0.95Rh0.05Sb12熱電変換材料においては、それぞれ160μV/K、9.3×10−6Ωm、2.3W/mKとなり、熱伝導率の値が約18%小さくなった。その結果、実施例2で得られた熱電変換材料の無次元性能指数ZTの最大値は0.7であったが、本実施例で得られたZTの最大値は0.9となった。これは、REAEFe4−(z+w)CoSb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、AEはCa、Sr、Baから選択される少なくとも一種、およびMは元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種)において、Feを置換するCoの一部をさらにRu、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtから選択される少なくとも一種で置換することによって熱電性能を向上できることを示している。
【0054】
以上、実施の形態および実施例を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲においてあらゆる変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】La0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料におけるゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
【図2】La0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料における電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【図3】La0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料における熱伝導率の温度依存性を示す図である。
【図4】La0.7Ba0.07FeCoSb12熱電変換材料における無次元性能指数ZTの温度依存性を示す図である。
【図5】La0.7FeSb12熱電変換材料におけるゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
【図6】La0.7FeSb12熱電変換材料における電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【図7】La0.7FeSb12熱電変換材料における熱伝導率の温度依存性を示す図である。
【図8】La0.7FeSb12熱電変換材料における無次元性能指数ZTの温度依存性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12(0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z+w≦4、0≦w≦0.5)で表される構造を有し、REはLaおよびCeのうち少なくとも一種、AEはCa、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種、およびMはRu、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする熱電変換材料。
【請求項2】
前記一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12中におけるwが、0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項3】
前記一般式REAEFe4−(z+w)CoSb12中におけるwが、0であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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