説明

熱電変換素子

【課題】熱電性能と信頼性・耐久性を両立できる熱電変換素子を提供する。
【解決手段】軸方向の一端面と他端面の温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに変換するための柱状の熱電変換素子を、心材となる第1の熱電変換部と、前記第1の熱電変換部の周面に所定の厚さで形成された被覆層となる第2の熱電変換部とを有する構成とする。また、第1の熱電変換部をNaCo系酸化物で構成し、第2の熱電変換部をCaCo系酸化物で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに用いられる熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電変換素子のゼーベック効果又はペルチェ効果を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換する熱電変換モジュールが知られている。
一般的な熱電変換モジュールの構成を図1に示す。図1に示すように、熱電変換モジュール1は、p型半導体からなる熱電変換素子11とn型半導体からなる熱電変換素子12を金属電極13によって「π」型に接続した熱電素子対10を、多数集合させて電気的に直列に接続し、2枚の絶縁基板(例えばセラミックス基板)14、15で狭持した構成を有する。
【0003】
この平板状の熱電変換モジュール1を、一方の面(例えば絶縁基板14)が高温側、他方の面(例えば絶縁基板15)が低温側となるように配置して両面間に温度差を与えると、起電力が生じる。この電力は、熱電変換モジュール1に接続された電流リード16、17を介して取り出される。逆に、電流リード16、17を介して熱電変換モジュール1に電流を流すと、一方の面(例えば絶縁基板14)で発熱が生じ、他方の面(例えば絶縁基板15)で吸熱が生じる。
【0004】
熱電変換モジュール1に用いられる熱電変換素子11、12は、一端が高温(〜900℃程度)、他端が常温とされた状態で長時間使用されるため、熱電性能が高いことはもちろんのこと、高い信頼性と耐久性が要求される。
【0005】
熱電変換材料の性能評価には、下式(1)で表される無次元性能指数ZTが用いられる。無次元性能指数ZTが高いほど、熱電性能に優れた熱電変換材料となる。式(1)より、無次元性能指数ZTを高くするためには、ゼーベック定数Sが大きい(ゼーベック効果が大きい)こと、抵抗率ρが小さい(ジュール熱損失が小さい)こと、熱伝導率κが小さい(温度差が維持される)ことが望ましい。
【0006】
ZT=(S2/(ρ・κ))・T ・・・(1)
ZT:無次元性能指数
S:ゼーベック定数(V/K)
ρ:抵抗率(Ω・m)
κ:熱伝導率(W/m・K)
T:絶対温度(K)
【0007】
熱電変換材料には、大きく分けて金属系材料と酸化物系材料がある。金属系材料としては、ビスマス・テルル系材料、シリサイド系材料等が挙げられる。これらの金属系材料は、酸化物系材料に比較して無次元性能指数ZTが高いが、稀少元素・有毒元素を含むこと、600℃以上の高温大気中で酸化等による素子劣化が生じやすく使用環境が制限されること等、いくつかの欠点がある。
【0008】
一方、酸化物系材料は、金属系材料に比較して無次元性能指数ZTは低いが、873K(600℃)以上の高温で安定な物質が多い。なかでも単結晶の層状コバルト酸化物は、700〜1000K(427〜727℃)で無次元性能指数ZTが1を超えるため、高温大気中で使用可能な熱電変換材料として有望である。
【0009】
しかし、層状コバルト酸化物は異方性を有するため、物性値が結晶子の配向性に依存する。つまり、層状コバルト酸化物であっても、結晶子がランダムに配向した多結晶では、無次元性能指数ZTが数分の1に低下する。
そこで、本発明者等は、熱電変換材料として層状コバルト酸化物を用いることに着目して鋭意検討を重ね、層状コバルト酸化物の結晶子の配向性を向上させるべく、押出成形を利用して熱電変換素子を作製することを提案している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−245089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、層状コバルト酸化物としては、NaCo系酸化物(例えばNaCo24)、CaCo系酸化物(例えばCa3Co49)が挙げられる。何れも単結晶では、無次元性能指数ZTが955K(682℃)において1以上であり、優れた熱電性能を有する。
【0012】
特に、NaCo系酸化物は、多結晶でも無次元性能指数ZTが955K(982℃)において0.5〜0.7であり、熱電性能に優れる。しかしながら、Naを含むために湿気に弱く、大気中に放置しておくと表面が劣化して電極が剥離したり、材料自体に亀裂が入ったりするため安定性に欠ける。
一方、CaCo系酸化物は、NaCo系酸化物よりも大気中で安定であるが、異方性が高いために多結晶での無次元性能指数ZTは973〜1123K(700〜850℃
)において0.1〜0.3程度に留まる。また、特許文献1に記載の手法を利用した場合でも、無次元性能指数ZTは973〜1123K(700〜850℃)において0.1〜0.2程度であり、NaCo系酸化物よりも低い。
このように、単体の層状コバルト酸化物からなる熱電変換素子では、熱電性能と信頼性・耐久性を両立させることは困難となっている。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、熱電性能と信頼性・耐久性を両立できる熱電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る熱電変換素子は、軸方向の一端面と他端面の温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに変換するための柱状の熱電変換素子であって、
心材となる第1の熱電変換部と、前記第1の熱電変換部の周面に所定の厚さで形成された被覆層となる第2の熱電変換部とを有し、
前記第1の熱電変換部がNaCo系酸化物で構成され、
前記第2の熱電変換部がCaCo系酸化物で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、心材となる第1の熱電変換部は大気中で不安定であるが、大気中で安定な第2の熱電変換部で被覆されているので、直接大気中に曝されない。したがって、熱電変換素子の劣化は効果的に抑制される。
また、熱電性能の高いNaCo系酸化物で心材が構成されている上、被覆層となる第2の熱電変換部も熱電変換に寄与するため、高い熱電性能が確保される。
すなわち、本発明によれば、熱電性能と信頼性・耐久性を両立できる熱電変換素子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】熱電変換モジュールの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る熱電変換素子の構造を示す図である。
【図3】押出成形法を利用した熱電変換素子の作製方法について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態に係る熱電変換素子は、例えば軸方向の一端面と他端面の温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換モジュール1において、p型の熱電変換素子11として用いられるものである(図1参照)。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す図である。図2に示すように、熱電変換素子11は、円柱状の部材であり、心材となる第1の熱電変換部11Aと、第1の熱電変換部11Aの周面に所定の厚さで形成された被覆層となる第2の熱電変換部11Bとを有する。すなわち、熱電変換素子11は、異なる熱電変換材料を同心状に形成した二層構造を有する。
【0019】
第1の熱電変換部11Aは、大気中で不安定であるが、高い熱電性能(多結晶での無次元性能指数ZTが955K(682℃)において0.5〜0.7)を有するNaCo系酸化物で構成される。NaCo系酸化物とは、層状コバルト酸化物のうち、Naを含む物質であり、NaxCo24(1.0≦x≦2.0)で表される。NaCo系酸化物の中でもNaxCo24(1.0≦x≦1.4)が、第1の熱電変換部11Aとして好適である。Na原子のランダム欠損により、小さい熱伝導率を有するためである。また、この中でもNaCo24は、熱伝導率が最も小さい点で、さらに好適である。
【0020】
第2の熱電変換部11Bは、大気中で安定であるが、NaCo系酸化物に比較して熱電性能が低いCaCo系酸化物で構成される。CaCo系酸化物とは、層状コバルト酸化物のうち、Caを含む物質であり、Ca3-yyCo49(A:Bi、Sr、Mg、Gd、Y、K、Naのうちの一種又は二種の元素、0≦y≦0.6)で表される。CaCo系酸化物の中でもCa2.6Bi0.4Co49、Ca2.7Sr0.3Co49、Ca3Co49が、第2の熱電変換部11Bとして好適である。これらの材料は、焼結したときの密度が高く、抵抗値ρが小さくなる、すなわち熱電性能(無次元性能指数ZT)が高くなるためである。特に、Ca2.6Bi0.4Co49は、無次元性能指数ZTが973〜1123K(700〜850℃)において0.2〜0.3で最も高いので、最適といえる。
【0021】
第1の熱電変換部11Aの直径、及び第2の熱電変換部11Bの厚さは、熱電変換素子11に要求される熱電性能を満たすように設計される。熱電変換素子11の外径を一定とした場合、第1の熱電変換部11Aの直径が大きいほど(第2の熱電変換部11Bの厚さが薄いほど)、熱電性能が向上する。しかし、第1の熱電変換部11Aの直径が大きすぎると、第2の熱電変換部11Bの厚さが薄くなりすぎるため、第2の熱電変換部11Bによる大気中の安定性が損なわれる虞がある。
【0022】
そのため、第2の熱電変換部11Bの厚さは、150〜1100μmとするのが望ましい。第2の熱電変換部11Bの厚さを150μm以上とすることにより、熱電変換素子11の大気中での安定性が確保される。一方で、第2の熱電変換部11Bの厚さが厚くなりすぎると、大気中での安定性は過剰となり、熱電性能が相対的に低下することになるので、第2の熱電変換部11Bの厚さは1100μm以下とするのが望ましい。
【0023】
熱電変換素子11は、例えば押出成形法を利用して作製される。押出成形法では、押出方向に結晶子が配向するので、熱電変換素子11の軸方向(押出方向)の抵抗率ρが小さくなる。すなわち、押出成形法を利用することにより、高い熱電性能(無次元性能指数ZT)を有する熱電変換素子11を作製することができる。
また、押出成形法は、連続的に押出成形体を作製することができるので、量産性の観点からも好適である。さらには、押出成形体を押出方向に直交する方向で切り分けるだけで熱電変換素子11の完成品を得ることができるので、加工面からも好適である。
【0024】
具体的には、図3に示すように、第1の熱電変換部11Aを形成するための第1のダイス101と、第2の熱電変換部11Bを形成するための第2のダイス102とからなる二重ダイス100を備えた押出機により、熱電変換素子11を作製することができる。第1のダイス101に形成された貫通孔101aが第1の熱電変換部11Aの原料の流路となり、第1のダイス101と第2のダイス102で挟まれた空間102aが第2の熱電変換部11Bの原料の流路となる。
【0025】
熱電変換素子11を作製するに際し、まず、第1の熱電変換部11Aの原料として、NaCo系の原料粉末、結合材(例えば有機バインダー)、及び可塑剤(例えば水)を混練して、NaCo系混和物(コンパウンド)を生成する。また、第2の熱電変換部11Bの原料として、CaCo系の原料粉末、結合材(例えば有機バインダー)、及び可塑剤(例えば水)を混練して、CaCo系混和物(コンパウンド)を生成する。
【0026】
第1のダイス101の押出方向上流側からNaCo系混和物を導入し、所定の押出圧力で押し出すと、第1の熱電変換部11Aが押出成形される。第1の熱電変換部11Aの断面形状は、第1のダイス101の押出口101bの形状(例えば円形)とほぼ同一となる。
同様に、第2のダイス102の押出方向上流側からCaCo系混和物を導入し、所定の押出圧力で押し出す。すると、第1の熱電変換部11Aと第2のダイス102の押出口102bとのクリアランスからCaCo系混和物が押し出され、第1の熱電変換部11Aの周面に第2の熱電変換部11Bが所定の厚さで押出成形される。
NaCo系混和物、CaCo系混和物ともに粘土状なので、熱電変換素子11の押出成形体における両者の密着性は極めて良好である。
【0027】
そして、押出成形体から可塑剤である水を蒸発させ(乾燥工程)、有機バインダーを熱分解して気化させた後(脱脂工程)、高温で熱処理して焼結させる(焼結工程、例えば950℃×20時間)。第1の熱電変換部11A、第2の熱電変換部11Bともに層状コバルト酸化物で構成されているので、以上の工程(特に焼結工程)において両者の界面に歪み等が生じることもない。すなわち、熱電変換素子11の焼結成形体においては、第1の熱電変換部11Aと第2の熱電変換部11Bは良好に接合されており、極めて安定な状態となっている。
作製された熱電変換素子11の焼結成形体は、所定の長さ(例えば5mm)に切り分けられ、熱電変換モジュール1用として用いられる。
【0028】
このように、実施の形態の熱電変換素子11は、軸方向の一端面と他端面の温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに変換するための柱状の熱電変換素子であって、心材となる第1の熱電変換部11Aと、第1の熱電変換部11Aの周面に所定の厚さで形成された被覆層となる第2の熱電変換部11Bとを有する。そして、第1の熱電変換部11AがNaCo系酸化物で構成され、第2の熱電変換部11BがCaCo系酸化物で構成されている。
【0029】
熱電変換素子11において、心材となる第1の熱電変換部11Aは大気中で不安定であるが、大気中で安定な第2の熱電変換部11Bで被覆されているので、直接大気中に曝されない。このため、第1の熱電変換部11Aには、大気中での安定性は要求されない。したがって、熱電変換素子11の劣化は効果的に抑制される。
また、熱電性能の高いNaCo系酸化物で心材が構成されている上、被覆層となる第2の熱電変換部11Bも熱電変換に寄与するため、高い熱電性能が確保される。
すなわち、熱電変換素子11においては、熱電性能と信頼性・耐久性が両立される。
【0030】
[実施例]
実施例1〜3では、第1の熱電変換部11Aの原料粉末として、粒径:1〜3μmのNaCo24を用いた。また、第2の熱電変換部11Bの原料粉末として、粒径:5〜10μmのCa3Co49を用いた。
そして、上述した押出形成法を利用して熱電変換素子11を作製した。このとき、熱電変換素子11の外径は5.0mmで一定とし、第2の熱電変換部11Bの厚さを200μm(実施例1)、500μm(実施例2)、1000μm(実施例3)と変化させた。
実施例4〜6では、第1の熱電変換部11Aとして実施例1と同一の原料粉末を用い、第2の熱電変換部11Bの原料粉末として、粒径:5〜10μmのCa2.6Bi0.4Co49を用いて熱電変換素子11を作製した。
実施例7〜9では、第1の熱電変換部11Aとして実施例1と同一の原料粉末を用い、第2の熱電変換部11Bの原料粉末として、粒径:5〜10μmのCa2.7Sr0.3Co49を用いて熱電変換素子11を作製した。
【0031】
比較例1では、粒径:1〜3μmのNaCo24を用いて、実施例と同様の方法により、単体のNaCo系酸化物からなる熱電変換素子11を作製した。また、比較例2〜4では、粒径:5〜10μmのCa3Co49(比較例2)、Ca2.6Bi0.4Co49(比較例3)、Ca2.7Sr0.3Co49(比較例4)を用いて、同様の方法により、単体のCaCo系酸化物からなる熱電変換素子11を作製した。
【0032】
実施例1〜9、及び比較例1〜4の熱電変換素子11を用いて、図1に示す熱電変換モジュール1を作製し、それぞれの熱電性能を評価した。具体的には、熱電変換モジュール1の絶縁基板15側を水冷して室温に維持しつつ、絶縁基板14側を室温から900K(627℃)まで連続的に上昇させたときの、700K(427℃)及び900K(627℃)におけるゼーベック定数S、抵抗率ρ、熱伝導率κを測定し、無次元性能指数ZT(表1,2におけるZTの初期値(A))を算出した。その後、熱電変換モジュール1を室温大気中に放置して、絶縁基板14側が室温になるまで冷却した。
【0033】
上記測定後、さらに絶縁基板15側を水冷して室温に維持しつつ、絶縁基板14側を室温から950K(677℃)まで連続的に上昇させ、この状態で約5時間放置した。そして、熱電変換モジュール1を室温大気中に放置して絶縁基板14側が室温になるまで冷却することによって、室温から950K(677℃)の温度履歴を加え、これを10回繰り返した。
その後、上述と同一の方法で、室温から900K(627℃)まで連続的に上昇させたときたときの、700K(427℃)及び900K(627℃)におけるゼーベック定数S、抵抗率ρ、熱伝導率κを再度測定し、無次元性能指数ZT(表1,2におけるZTの熱履歴後の値(B))を算出して、熱履歴による影響を調べた。
【0034】
その結果を表1,2に示す。なお、無次元性能指数ZTの値(A、B)は、700K(427℃)においては0.20以上、900K(627℃)においては0.25以上であることが望ましく、ZTの変化量(C=(B−A)/A・100[%])の値は−20%以上であることが望ましい。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1に示すように、熱電変換素子11を第1の熱電変換部11A(内層)と第2の熱電変換部11B(外層)の二層構造とし、かつ第2の熱電変換部11B(外層)の厚さを150〜1100μmとすることにより、700K(427℃)及び900K(627℃)における無次元性能指数ZT(A,B)、及びZTの変化量(C)について、良好な結果が得られた(実施例1〜9)。
特に、第2の熱電変換部11B(外層)の厚さを300〜700μmとした場合、熱履歴後の無次元性能指数ZT(B)は初期値(A)に比較してほとんど変化せず(−3≦C≦3)、熱電性能の劣化が極めて小さい熱電変換素子11が得られた(実施例2,5,8)。
【0038】
一方、表2に示すように、熱電変換素子11をNaCo系酸化物のみの単層構造とした場合には、無次元性能指数ZTの初期値は良好な値となるものの、ZTの変化量Cが大きく、熱履歴を加えることで熱電性能が著しく劣化することが確認された(比較例1)。また、熱電変換素子11をCaCo系酸化物のみの単層構造とした場合には、無次元性能指数ZTは初期値(A)及び熱履歴後(B)の何れにおいても小さく、実用上問題があることが確認された(比較例2〜4)。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、熱電変換素子11は、円柱状ではなく、多角柱状であってもよい。また、第1の熱電変換部11Aと第2の熱電変換部11Bの一方を円柱状、他方を多角柱状としてもよい。
押出成形を利用する場合、製造工程における応力集中を防止できるため、熱電変換素子11を円柱状とするのが望ましい。一方、熱電変換素子11を多角柱状(特に四角柱)とすれば、熱電変換モジュール1における熱電変換素子11の占積率を高めることができる。
また、熱電変換素子11の製法としては、押出成形法以外に、ホットプレス法を利用することもできる。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 熱電変換モジュール
10 熱電素子対
11、12 熱電変換素子
11A 第1の熱電変換部
11B 第2の熱電変換部
13 金属電極
14、15 絶縁基板
16、17 電流リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端面と他端面の温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに変換するための柱状の熱電変換素子であって、
心材となる第1の熱電変換部と、前記第1の熱電変換部の周面に所定の厚さで形成された被覆層となる第2の熱電変換部とを有し、
前記第1の熱電変換部がNaCo系酸化物で構成され、
前記第2の熱電変換部がCaCo系酸化物で構成されていることを特徴とする熱電変換素子。
【請求項2】
前記第1の熱電変換部及び前記第2の熱電変換部が、押出成形により形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記NaCo系酸化物が、NaxCo24(1.0≦x≦2.0)であり、
前記CaCo系酸化物が、Ca3-yyCo49(0≦y≦0.6,A:Bi,Sr,Mg,Gd,Y,K,Naのうちの一種又は二種の元素)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記NaCo系酸化物が、NaxCo24(1.0≦x≦1.4)であることを特徴とする請求項3に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記NaCo系酸化物が、NaCo24であり、
前記CaCo系酸化物が、Ca2.6Bi0.4Co49、Ca2.7Sr0.3Co49、Ca3Co49の何れかであることを特徴とする請求項3又は4に記載の熱電変換素子。
【請求項6】
前記第2の熱電変換部の厚さが、150〜1100μmであることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項7】
前記第2の熱電変換部の厚さが、300〜700μmであることを特徴とする請求項6に記載の熱電変換素子。
【請求項8】
軸方向に垂直な断面形状が、略円形であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項9】
軸方向に垂直な断面形状が、略正方形又は略長方形であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の熱電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−65585(P2013−65585A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201740(P2011−201740)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】