説明

熱電子放出素子

【課題】本発明は、熱電子放出装置に関し、特にカーボンナノチューブを含む熱電子放出装置関する。
【解決手段】本発明の熱電子放出装置は、基板と、絶縁性基板と、前記絶縁性基板に形成された複数の格子と、を含む。各々の前記格子が、該格子の周辺に設置された四つの電極引き出し線と、熱電子放出ユニットと、を含む。前記熱電子放出ユニットが、二つの電極及び熱電子放出素子を含む。前記二つの電極が前記熱電子放出素子と電気的に接続されている。前記熱電子放出素子がカーボンナノチューブ構造体を含む。前記カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電子放出素子に関し、特にカーボンナノチューブを利用した熱電子放出素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは1991年に発見された新しい一次元ナノ材料となるものである。カーボンナノチューブは高引張強さ及び高熱安定性を有し、また、異なる螺旋構造により、金属にも半導体にもなる。カーボンナノチューブは、理想的な一次元構造を有し、優れた力学機能、電気機能及び熱学機能などを有するので、材料科学、化学、物理などの科学領域、例えば、フィールドエミッタ(field emitter)を応用した平面ディスプレイ、単一電子デバイス、(single−electron device)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)のプローブ、熱センサー、光センサー、フィルターなどに広く応用されている。
【0003】
現在、電子放出装置には、電界放出装置及び熱電子放出装置の二種がある。電界放出装置は、絶縁性基板及び該基板に設置された複数の格子を含む。各々の格子の周辺に、四本の電極引き出し線が配置されている。ここで、第一電極引き出し線と第二電極引き出し線とは平行に配列され、第三電極引き出し線と第四電極引き出し線とは平行に配列されている。前記第一電極引き出し線及び第二電極引き出し線は、それぞれ第三電極引き出し線及び第四電極引き出し線と絶縁的に設置されている。
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱電子放出装置は、一般に、複数の熱電子放出ユニットを含む。各々の前記熱電子放出ユニットは、熱電子放出素子及び二つの電極を備えている。ここで、前記熱電子放出素子は、前記二つの電極に電気的に接続されるように、前記二つの電極の間に設置されている。従来、前記熱電子放出素子は、金属、アルカリ土類金属炭酸塩、硼化物などのいずれか一種からなるので、複数の前記熱電子放出素子を組み立てることは難しい。又、複数の前記熱電子放出素子を組み立てて設置した熱電子放出装置は、均一の電子放出を実現することができない。また、前記熱電子放出素子の寸法が大きいので、小型電子設備に応用できないという課題がある。また、アルカリ土類金属炭酸塩、硼化物の抵抗率が高いので、前記熱電子放出素子は、電力消費が高く、高電流密度及び高輝度を有する表示装置に利用できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱電子放出装置は、基板と、絶縁性基板と、前記絶縁性基板に形成された複数の格子と、を含む。各々の前記格子が、該格子の周辺に設置された四つの電極引き出し線と、熱電子放出ユニットと、を含む。前記熱電子放出ユニットが、二つの電極及び熱電子放出素子を含む。前記二つの電極が前記熱電子放出素子と電気的に接続されている。前記熱電子放出素子がカーボンナノチューブ構造体を含む。前記カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。
【0006】
前記熱電子放出素子が、前記二つの電極に設置されている。前記熱電子放出素子が、前記絶縁性基板に対して懸架されて設置されている。
【0007】
前記四つの電極引き出し線において、二つの前記電極引き出し線が第一方向に対して、平行に配列されていて、もう二つの前記電極引き出し線が第二方向に対して、平行に配列されている。
【0008】
前記二つの電極において、一つの前記電極が、第一方向に対して配列された一つの前記電極引き出し線に電気的に接続されていて、もう一つの前記電極が、第二方向に対して配列された一つの前記電極引き出し線に電気的に接続されている。
【0009】
単一の前記格子に対応して、前記絶縁性基板に一つの溝が設置されている。
【0010】
前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤが、相互に平行に配列されている。
【0011】
前記カーボンナノチューブ構造体において、各々の前記カーボンナノチューブワイヤの一つの端部が、一つの電極に電気的に接続され、各々の前記カーボンナノチューブワイヤのもう一つの端部が、もう一つの電極に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
従来の技術と比べて、本発明は次の優れた点を有する。第一に、本発明の製造方法において、カーボンナノチューブ構造体の製造方法が簡単であるので、本発明の熱電子放出装置のコストが低い。第二に、本発明の熱電子放出装置に利用するカーボンナノチューブ構造体において、カーボンナノチューブが均一的に配列されるので、該熱電子放出装置が均一及び安定的に熱電子を放出することができる。第三に、前記カーボンナノチューブ構造体及び前記基板は分離して設置されていて、前記カーボンナノチューブ構造体を加熱するために与えられたエネルギーが、空気に伝送されないので、前記熱電子放出素子の熱電子放出性能が優れる。第四に、前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが小さく、抵抗率が低いので、前記カーボンナノチューブ構造体を利用した熱電子放出装置が、低い熱パワーで熱電子を放出でき、高電流密度と高輝度を有する表示装置及び論理回路に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1を参照すると、本実施形態の熱電子放出装置200は、絶縁性基板202と、該絶縁性基板202に形成された少なくとも一つの格子214と、を含む。前記絶縁性基板202の材料は、セラミック、ガラス、樹脂及び石英のいずれか一種である。前記絶縁性基板202は、厚さが1mm以上、長さ及び幅が1cm以上であるように設けられている。
【0015】
単一の前記格子214は、第一電極引き出し線204aと、第二電極引き出し線204bと、第三電極引き出し線206aと、第四電極引き出し線206bと、で囲まれて成る領域である。ここで、前記第一電極引き出し線204a及び第二電極引き出し線204bは第一方向に対向して、平行に配列され、前記第三電極引き出し線206a及び第四電極引き出し線206bは第二方向に対向して、平行に配列されている。ここで、第一方向は、前記第一電極引き出し線204aから第二電極引き出し線204bまで進む方向である。第二方向は、前記第三電極引き出し線206aから第四電極引き出し線206bまで進む方向である。前記第一方向と前記第二方向と交叉して成す角度は、10°〜90°である。前記第一電極引き出し線204aと前記第三電極引き出し線206aとが交叉した領域に、前記第一電極引き出し線204a及び前記第三電極引き出し線206aで挟まれるように絶縁部216を設置する。また、前記第二電極引き出し線204bと前記第四電極引き出し線206bとが交叉した領域に、前記第二電極引き出し線204b及び前記第四電極引き出し線206bで挟まれるように絶縁部216を設置する。このように設置すれば、第一電極引き出し線204aと、第二電極引き出し線204bと、第三電極引き出し線206aと、第四電極引き出し線206bと、をそれぞれ絶縁に配列することができる。
【0016】
前記複数の格子214は複数の列及び行によって配列されている。単一の前記格子214において、一つの熱電子放出ユニット220が設置されている。単一の前記熱電子放出ユニット220は、第一電極210と、第二電極212と、熱電子放出素子208と、を備える。前記第一電極210及び第二電極212は、所定の距離で分離して、前記熱電子放出素子208と電気的に接触するように設置されている。前記第一電極210及び第二電極212は前記熱電子放出素子208及び前記絶縁性基板202の間に設置されるので、前記熱電子放出素子208は前記絶縁性基板202の片側に対向して懸架されて設置されている。前記第一電極210は、前記第一電極引き出し線204a又は第二電極引き出し線204bに電気的に接続されていて、前記第二電極212は前記第三電極引き出し線206a及び第四電極引き出し線206bに電気的に接続されている。
【0017】
前記絶縁性基板202に、単一の前記格子214に対応して一つの溝218が設置されている。前記複数の溝218は、寸法が同じであり、均一に前記絶縁性基板202に分布されている。実際の要求に対応して、前記溝218の形状は正方形、矩形又は三角形などの形状でよい。前記溝218は前記基板202及び前記熱電子放出素子208の間に形成されているので、前記熱電子放出素子208の一部が前記基板202に対して懸架されて設置されている。本発明の熱電子放出素子208が全て前記基板202と接触しないように設置されているので、前記熱電子放出素子208に提供されたエネルギーの極少の部分が、前記絶縁性基板202に伝送され、本発明の熱電子放出装置200の熱電子放出の特性が高くなる。
【0018】
前記四つの電極引き出し線204a、204b、206a、206bは、線状又は膜形に形成されている。本実施形態において、前記四つの電極引き出し線204a、204b、206a、206bは、それぞれ膜形に形成され、幅が30μm〜1mm、厚さが5μm〜1mmである。隣接する前記電極引き出し線間の距離は、300μm〜5mmである。本実施形態において、前記四つの電極引き出し線204a、204b、206a、206bは、スクリーン印刷法により導電性ペーストを前記基板202に印刷することで得られる。該導電性ペーストは、金属粉末、低融点ガラス粉末及び接着剤を含む。前記金属粉末は、銀粉末である。前記接着剤はエチレン樹脂などのファイバー樹脂又はテルピネオールである。前記導電性ペーストと前記金属粉末の重量比は、50%〜90%である。前記導電性ペーストと前記低融点ガラスの重量比は、2%〜10%である。前記導電性ペーストと前記接着剤の重量比は、10%〜40%である。
【0019】
前記第一電極210及び第二電極212は、線状又は膜形に形成されている。本実施形態において、前記第一電極210及び第二電極212は、それぞれ膜形に形成されている。前記第一電極210及び第二電極212の寸法は前記格子214の寸法によって決定されている。前記第一電極210及び第二電極212は、長さが30μm〜1mm、幅が30μm〜1mm、厚さが5μm〜1mmであるように設けられている。前記第一電極210及び第二電極212の間の距離は、50μm〜1mmである。本実施形態において、前記第一電極210及び第二電極212は、長さが60μm、幅が40μm、厚さが25μmであるように設けられている。本実施形態において、前記第一電極210及び第二電極212は、スクリーン印刷法により導電性ペーストを前記基板202に印刷することで得られる。該導電性ペーストの成分は、前記電極引き出し線の成分と同じである。
【0020】
前記熱電子放出素子208は、シリコン、グラファイト、石英、カーボンナノチューブ、金属又はその合金のいずれか一種又は多種を含む。本実施形態において、前記熱電子放出素子208は、カーボンナノチューブ構造体を含む。前記熱電子放出素子208は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。図2を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブワイヤは、端と端が分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は0.5nm〜100μmである。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0021】
前記熱電子放出素子208は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、前記カーボンナノチューブワイヤの端部が前記第一電極210に電気的に接続され、もう一つの端部が前記第二電極212に電気的に接続されている。
【0022】
別の実施形態として、該カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。図4及び図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で端と端が接続された複数のカーボンナノチューブセグメント143を含む。各々のカーボンナノチューブセグメント143は、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。前記カーボンナノチューブフィルムの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0023】
単一のカーボンナノチューブフィルムは、所定の方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。本実施形態において、前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記第一電極210から第二電極212まで進む方向に対して、平行に配列されている。
【0024】
前記熱電子放出素子208は、少なくとも二枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムが分子間力で結合されている。ここで、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、0°〜90°の角度を成す。
【0025】
図3を参照すると、前記熱電子放出装置の製造方法は、絶縁性基板を提供する第一ステップと、該絶縁性基板に複数の格子を形成する第二ステップと、各々の格子に第一電極及び第二電極を設置する第三ステップと、カーボンナノチューブ構造体を設置する第四ステップと、前記カーボンナノチューブ構造体の余分な部分を除去して、前記第一電極及び前記第二電極の間に前記カーボンナノチューブ構造体を保持する第五ステップと、を含む。
【0026】
前記第一ステップにおいて、前記絶縁性基板の材料は、セラミック、ガラス、樹脂及び石英のいずれか一種である。本実施形態において、前記絶縁性基板はガラスからなる。さらに、本ステップにおいて、前記絶縁性基板に予め均一に複数の溝を形成することができる。
【0027】
前記第二ステップは、第一電極引き出し線及び第二電極引き出し線を平行に前記絶縁性基板に配列させる第一サブステップと、前記第一電極引き出し線及び第二電極引き出し線に絶縁部を設置する第二サブステップと、第三電極引き出し線及び第四電極引き出し線を平行に前記絶縁性基板に配列させる第三サブステップと、を含む。前記絶縁部を設置することにより、前記第一電極引き出し線及び第二電極引き出し線と、第三電極引き出し線及び第四電極引き出し線と、が交叉した領域を絶縁状態に保持させることができる。前記第一乃至第四電極引き出し線はそれぞれ外部の回路に電気的に接続されている。前記第一電極引き出し線及び第二電極引き出し線と、第三電極引き出し線及び第四電極引き出し線と、を交叉して設置させることにより、格子を形成することができる。上述より、複数の前記第一乃至第四電極引き出し線を設置することにより、複数の格子を形成することができる。
【0028】
前記第一ステップにおいて複数の前記溝を形成せず、前記第二ステップにおいて複数の前記溝を形成することができる。
【0029】
前記第三ステップにおいて、各々の前記格子において、前記第一電極を前記第一電極引き出し線に電気的に接続させ、前記第二電極を前記第二電極引き出し線に電気的に接続させている。前記第一電極及び前記第二電極はスクリーン印刷法、蒸着法又はスパッタリング法により形成される。本実施形態において、スクリーン印刷法により前記第一電極及び第二電極を形成する。前記第一電極及び第二電極は、所定の距離で分離して設置されている。
【0030】
前記第四ステップは、カーボンナノチューブ構造体を製造して、前記絶縁性基板に設置する第一サブステップと、前記カーボンナノチューブ構造体を前記第一電極及び第二電極に設置する第二サブステップと、を含む。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、前記カーボンナノチューブワイヤは次の工程により製造される。
【0031】
第一工程では、カーボンナノチューブアレイを提供する。前記カーボンナノチューブは超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)であることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、化学気相成長(CVD)法により前記カーボンナノチューブアレイを成長させる。まず、基材を提供する。該基材としては、P型又はN型のシリコン基材、又は表面に酸化物が形成されたシリコン基材が利用される。本実施形態において、厚さが4インチのシリコン基材を提供する。次に、前記基材の表面に触媒層を蒸着させる。該触媒層は、Fe、Co、Ni又はそれらの合金である。次に、前記触媒層が蒸着された前記基材を、700〜900℃、空気雰囲気において30〜90分間アニーリングする。最後に、前記基材を反応装置内に置いて、保護ガスを導入すると同時に前記基材を500〜700℃に加熱して、5〜30分間カーボンを含むガスを導入する。
【0033】
これにより、高さが200〜400μmの超配列カーボンナノチューブアレイが形成される。前記超配列カーボンナノチューブアレイは、相互に平行で基材に垂直に成長する複数のカーボンナノチューブからなる。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、該カーボンナノチューブの直径は0.5nm〜50nmである。該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、該二層カーボンナノチューブの直径は1nm〜50nmである。該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、該多層カーボンナノチューブの直径は1.5nm〜50nmである。
【0034】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスは、エチレン、メタン、アセチレン、エタン、またはその混合物などの炭化水素であり、保護ガスは窒素やアンモニアなどの不活性ガスである。勿論、前記カーボンナノチューブアレイは、アーク放電法又はレーザー蒸発法でも得られる。前記方法により、前記超配列カーボンナノチューブアレイにアモルファスカーボン又は触媒剤である金属粒子などの不純物が残らず、純粋なカーボンナノチューブアレイが得られる。
【0035】
第二工程では、前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ予備成形体(カーボンナノチューブフィルム)を引き出す。
【0036】
まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。本実施形態において、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続的なカーボンナノチューブ予備成形体(例えば、カーボンナノチューブフィルム)を形成する。
【0037】
前記カーボンナノチューブを引き出すために利用される工具は、接着テープ、ペンチ、ピンセットなどのいずれか一種である。前記工具を前記カーボンナノチューブアレイに接触させると、複数のカーボンナノチューブが前記工具に固定される。この後、前記カーボンナノチューブが固定された前記工具を移動させて、前記複数のカーボンナノチューブを同時に前記カーボンナノチューブアレイから引き出すことができる。前記カーボンナノチューブを引き出す方向は、前記カーボンナノチューブアレイの成長方向に垂直に設けられている。
【0038】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続的なカーボンナノチューブ予備成形体が形成される。図4及び図5を参照すると、単一のカーボンナノチューブセグメント143は、長さが同じ複数のカーボンナノチューブ145を含む。該複数のカーボンナノチューブ145は、相互に平行に並列し、分子間力で接合されるように配列されている。前記カーボンナノチューブ予備成形体は複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。前記カーボンナノチューブ予備成形体のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブフィルムを引く方向に平行に並列されている。前記カーボンナノチューブ予備成形体は、均一な導電性及び均一な厚さを有する。このカーボンナノチューブ予備成形体の製造方法は、高効率で簡単であり、工業的に実用される。
【0039】
前記カーボンナノチューブ予備成形体の幅は前記基材の幅により決定され、前記カーボンナノチューブフィルムの長さは基材の寸法に限定されず、必要に応じて製造されることができる。前記カーボンナノチューブ予備成形体の幅は0.01cm〜10cmに設けられ、厚さは0.5〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径が0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径が1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径が1.5nm〜50nmに設定される。
【0040】
第三工程では、前記カーボンナノチューブ予備成形体を有機溶剤で処理し、又は機械加工してカーボンナノチューブワイヤを形成する。前記カーボンナノチューブ予備成形体を前記有機溶剤に浸漬させて、前記有機溶剤を蒸発させた後、前記カーボンナノチューブ予備成形体が縮んで、カーボンナノチューブワイヤが形成される。該カーボンナノチューブワイヤは前記カーボンナノチューブ予備成形体と比べて、比表面積及び直径が減少するので、強度及び靱性を高めることができる。前記有機溶剤は、メタノール、アルコール、アセトン又はこれらの内の二種の混合物である。前記カーボンナノチューブワイヤの直径は0.5nm〜100μmである。
【0041】
さらに、前記第三工程において、前記カーボンナノチューブ予備成形体を機械加工(例えば、紡糸工程)して、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成することもできる。詳しく説明すると、まず、前記カーボンナノチューブ予備成形体を紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブ予備成形体を回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0042】
前記第四ステップにおいて、前記カーボンナノチューブワイヤの一つの端部を前記第一電極に電気的に接続し、前記カーボンナノチューブワイヤのもう一つの端部を前記第二電極に電気的に接続するように、複数の前記カーボンナノチューブワイヤを前記第一電極及び第二電極の間に設置する。本実施形態において、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは、所定の距離で分離して、相互に平行に配列されている。勿論、前記複数のカーボンナノチューブワイヤが平行せずに配列することもできる。前記少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを利用して、カーボンナノチューブ構造体を製造することができる。
【0043】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブは不純物を含まず、該カーボンナノチューブの比表面積が大きいので、該カーボンナノチューブワイヤは強い接着性を有する。従って、該カーボンナノチューブワイヤは直接前記第一電極及び第二電極に固定することができる。また、該カーボンナノチューブワイヤは導電性接着剤でも前記第一電極及び第二電極に固定することができる。
【0044】
前記第五ステップにおいて、レーザー切断法又は電子線走査法を利用することができる。本実施形態において、レーザー切断法を利用する。前記第五ステップは、前記第一電極引き出し線に沿って、レーザービームで前記カーボンナノチューブ構造体を走査する第一サブステップと、前記第三電極引き出し線に沿って、レーザービームで前記カーボンナノチューブ構造体を走査する第二サブステップと、を含む。前記第一サブステップ及び第二サブステップにより、前記カーボンナノチューブ構造体の、前記第一電極及び第二電極の間に設置された部分以外を除去することができる。前記レーザービームのパワーは10W〜50Wであり、前記レーザービームの走査速度は10mm/秒〜5000mm/秒である。本実施形態において、前記レーザービームのパワーは30Wであり、前記レーザービームの走査速度は1000mm/秒である。
【0045】
前記第五ステップの第一サブステップにおいて、前記レーザービームの幅は、第三電極引き出し線に沿って配列された隣接する第一電極の間の距離と等しく、20μm〜500μmである。前記第五ステップの第二サブステップにおいて、前記レーザービームの幅は、第一電極引き出し線に沿って配列された隣接する第二電極の間の距離と等しく、20μm〜500μmである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る熱電子放出装置の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図3】本発明の実施形態に係る熱電子放出装置の製造方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図5】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブセグメントの模式図である。
【符号の説明】
【0047】
143 カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
200 熱電子放出装置
202 絶縁性基板
204a 第一電極引き出し線
204b 第二電極引き出し線
206a 第三電極引き出し線
206b 第四電極引き出し線
208 熱電子放出素子
210 第一電極
212 第二電極
214 格子
216 絶縁部
218 溝
220 熱電子放出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、絶縁性基板と、前記絶縁性基板に形成された複数の格子と、を含み、
各々の前記格子が、該格子の周辺に設置された四つの電極引き出し線と、熱電子放出ユニットと、を含み、
前記熱電子放出ユニットが、二つの電極及び熱電子放出素子を含み、
前記二つの電極が前記熱電子放出素子と電気的に接続されていて、
前記熱電子放出素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体が少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含むことを特徴とする熱電子放出装置。
【請求項2】
前記熱電子放出素子が、前記二つの電極に設置されていて、
前記熱電子放出素子が、前記絶縁性基板に対して懸架されて設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電子放出装置。
【請求項3】
前記四つの電極引き出し線において、
二つの前記電極引き出し線が第一方向に対して、平行に配列されていて、
もう二つの前記電極引き出し線が第二方向に対して、平行に配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電子放出装置。
【請求項4】
前記二つの電極において、
一つの前記電極が、第一方向に対して配列された一つの前記電極引き出し線に電気的に接続されていて、
もう一つの前記電極が、第二方向に対して配列された一つの前記電極引き出し線に電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電子放出装置。
【請求項5】
単一の前記格子に対応して、前記絶縁性基板に一つの溝が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電子放出装置。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤが、相互に平行に配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電子放出装置。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブ構造体において、
各々の前記カーボンナノチューブワイヤの一つの端部が、一つの電極に電気的に接続され、
各々の前記カーボンナノチューブワイヤのもう一つの端部が、もう一つの電極に電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電子放出装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−164124(P2009−164124A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328567(P2008−328567)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)