説明

熱電対の延長ワイヤ

熱伝対装置が提供される。熱伝対装置は、正側リード及び負側リードを有する熱電対を含む。第1接点位置で正側リードに正側ワイヤの第1端部が連結され、正側ワイヤの第2端部が第2接点に連結される。第3接点位置で負側リードに負側ワイヤの体1端部が連結され、負側ワイヤの第2端部が第4接点に連結される。第2接点及び第4接点は基準接点を構成する。正側ワイヤ及び負側ワイヤの少なくとも一方における熱伝導度及び太さの少なくとも一方が、第1接点から基準接点への熱流と、第3接点から基準接点への熱流との間の差が所定量未満となるように管理されるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は米国特許法119条による米国仮出願特許第60/982,292号に基づく優先権を主張するものである。当該文献の記載内容はここに引用することにより本明細書中に含まれるものとする。
本発明は高温測定用の熱電対に関する。
【背景技術】
【0002】
高温測定用の熱電対は一般に、プラチナやプラチナの合金の如き貴金属製である。熱電対として最も一般的なものは、(1)プラチナ及び13%ロジウム製の正側リードと、プラチナ製の負側リードとを備えるタイプR熱電対と、(2)プラチナ及び10%ロジウム製の正側リードと、プラチナ製負側リードとを備えるタイプS熱電対とである。
貴金属製熱電対は高コストであるのが欠点である。コストはプラチナ及びプラチナ/ロジウム熱電対のワイヤ長に正比例する。
【0003】
工業環境では基準接点を配置する機器は代表的には熱電対から遠ざけて配置される。詳しくは、溶湯測温では熱電対からの起電出力を測定する機器は代表的には熱電対の基準接点から非常に遠い、例えば約30m(100フィート)離れた位置に配置される。貴金属製の熱電対を基準接点から30m(100フィート)あるいはそれ以上に延長する必要経費は法外なものとなろう。熱電対を、例えば代表的には溶湯測温においてそうである如く、一回もしくは数回しか使用しない場合、貴金属製熱電対を基準接点から30m(100フィート)あるいはそれ以上延長して使用する場合は更に高く付くことになる。
【0004】
溶湯測温を貴金属製熱電対で行う測温装置では、一般に、熱電対を遠方の測定用機器に接続するずっと安価な金属/金属合金製の連結用ワイヤを、しばしばセンサまたはプローブと参照される連結装置内に取り付けて貴金属製熱電対長を短くする。そうした連結用ワイヤは一般に延長ワイヤと参照される。
【0005】
延長ワイヤは、熱電対を遠方の機器に連結するために使用され得、その間、当該延長ワイヤの、(1)動作温度範囲における熱電特性を、延長ワイヤを装着する貴金属製熱電対のそれと実質的に同じになるよう選択すること、(2)熱電対の正側リードと正側延長ワイヤとの接点温度を、熱電対の負側リードと負側延長ワイヤとの接点温度と同じに維持すること、により、大抵の用途において受け入れ可能な測定精度を維持し得る。当該条件下では、基準接点での測定電圧は、熱電対の各リードと延長ワイヤとの連結位置に形成される接点の温度とは無関係に、測温接点と基準接点との間の温度差のみの関数であることが理想である。従来、貴金属製熱電対の正側リードに接続する延長ワイヤは純銅製とされ、負側リードに接続する延長ワイヤは銅ニッケル合金製とされていた。あるタイプの延長ワイヤ用に特定タイプの材料を選択して当該延長ワイヤの熱電特性を貴金属製熱電対のそれと一致させ、かくして熱電対と延長ワイヤとの間の熱電特性不一致に基づくエラーを最小化することが、米国特許第3,926,681号及び同第4,002,500号に記載される。熱電対と延長ワイヤとの接点での、熱電対要素に対する延長ワイヤの熱電特性不一致による温度差に基づく測定エラーについては、“Manual on the Use of Thermocouples in Temperature Measurement”、ASTM Pub.470B,1981,第27〜35頁に議論されている。
【0006】
上述した如く、熱電対と延長ワイヤとにおける正側及び負側における各接点(以下、中間接点とも称する)間に生ずる温度差により、熱電対起電力の測定エラーが発生する。正側の中間接点からの、相当するより低温の基準接点への熱流量と、負側の中間接点からの、相当するもっと低温の基準接点への熱流量との間に差が生じることで温度差が生じ得る点は従来技術では議論されていない。熱流量差があると両接点の受容熱入力が等しい条件下では一方の接点温度が明らかに低下する。この温度差は、熱電対、詳しくは、熱を漸進的に取得する高温環境への中間接点の露呈時間に比例して拡大する。
貴金属製熱電対による測温精度を高め、詳しくは、溶湯測温精度を高めることで工業上の経済性が得られよう。従って、熱電対と延長ワイヤとの接点からの熱流量差を熱電対延長ワイヤを介して低減させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国仮出願特許第60/982292号明細書
【特許文献2】米国特許第3926681号明細書
【特許文献3】米国特許第4002500号明細書
【特許文献4】英国特許第719026号明細書
【特許文献5】米国特許第2993944号明細書
【特許文献6】米国特許第2999121号明細書
【特許文献7】米国特許第3298874号明細書
【特許文献8】米国特許第4229230号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Manual on the Use of Thermocouples in Temperature Measurement”、ASTM Pub.470B,1981,第27〜35頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
貴金属製熱電対の測温精度を高め、詳しくは、溶湯測温精度を高めることで、工業上の経済性が得られ、熱電対と延長ワイヤとの接点からの熱流量差を、熱電対延長ワイヤを介して低減させる熱電対延長ワイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、正側及び負側の各リードを有する熱電対を含む熱電対装置が提供される。正側リードに第1接点位置で正側ワイヤの第1端部が接続され、第2端部が第2接点に接続される。負側リードに第3接点位置で負側ワイヤの第1端部が接続され、第2端部が第4接点に接続される。第2接点及び第4接点は基準接点を構成する。正側ワイヤ及び負側ワイヤの少なくとも一方における熱伝導度及び直径の少なくとも一方が、第1接点から基準接点への熱流量と、第3接点から基準接点への熱流量との熱流量差が所定量未満となるよう管理されるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、熱電対A、B、Cの概略ダイヤグラム図である。
【図2】図2は、熱電対回路の概略ダイヤグラム図である。
【図3】図3は、熱電対回路の起電力対温度のプロット図である。
【図4】図4は、既知の温度センサのダイヤグラム図である。
【図5a】図5aは、本発明の第1実施例のダイヤグラム図である。
【図5b】図5bは、本発明の第2実施例のダイヤグラム図である。
【図5c】図5cは、本発明の第3実施例のダイヤグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照するに、熱電特性が同じである2つの熱電対が示される。TR=0℃(32°F)の基準接点及び、ある中間温度の測温接点IIを持つ第1熱電対Aと、中間温度の基準接点II及び測温用の測温接点TMを持つ第2熱電対Bとの組み合わせは、TR=0℃(32°F)の基準接点及び被測定温度、即ち、emfA+emfB=emfC(ここで、emfは単数または複数の熱電対の発生する起電力とする)の測温接点TMを持つ単独の熱電対と等価のものである。略記すれば、仮に1つの基準温度に対する熱電対のemfに対する温度の関係を知れば、任意のその他の基準温度下に発生するemfを予測できる。
【0013】
実際は、一対の熱電対Bにおけるそれと同じ熱電特性を持つが材質の異なる一対の延長ワイヤAを、完全な熱電対Cで測定可能な正味のemfに影響を与えることなく、熱電対回路に挿通し得る(例えば、TRとIIとの間で)。
ハウジング内の熱電対に接続する延長ワイヤを使用し、測温接点での温度が約1371.1℃(2500°F)を超え得る工業用途の多くでは、中間接点はハウジング内に設置されるため、当該中間接点の温度は約204.4℃(400°F)を超えず、同様に、測定機器位置に配置した基準接点は0℃(32°F)以下には下がらない。従って、延長ワイヤの動作温度範囲は限定されるため、工業用途では貴金属製熱電対よりずっと安価な材料製の延長ワイヤを使用して熱電対を基準接点まで延長させている。精度低下防止上、0℃〜204.4℃(32〜400°F)の任意の温度範囲で2本の延長ワイヤ同士間に生じる起電力、即ち、emfの差が、2本の貴金属製熱電対リード同士間に生じるemfの差と、その極性及び大きさにおいて共に実質的に等しくなるよう延長ワイヤと貴金属製熱電対との熱電特性を一致させるのが理想である。
【0014】
図2にはタイプS及びタイプRの各熱電対回路での延長ワイヤ(Px、Nx)の使用例が示される。貴金属製熱電対P、Nが中間接点TIに接続され、延長ワイヤPx、Nxが、中間接点TIと、基準接点TRとの間に介挿されている。この熱電対アセンブリの出力は、例えば以下の如く、全接点の各先端位置での各温度間の電圧を合算することで算出され得る。
【数1】

ここで、EPXは接点TI及びTR間のemfに等しく、
Pは接点TM及びTI間のemfに等しく、
Nは接点TI及びTM間のemfに等しく、
NXは接点TR及びTI間のemfに等しいものとする。
【0015】
熱電対による測温上、延長ワイヤの熱電特性(emf)の不一致を原因として生じる以外のエラー源が存在することが分かった。これらのエラーを低減させれば、延長ワイヤと熱電対とのemf特性を一致させる場合に勝る大きな恩恵が得られよう。本発明の課題ともするそれらのエラーの1つは、各熱電対リードを各延長ワイヤに接続する接点間に温度差がある場合は、各温度における熱電emfを正確に一致させた場合でさえも発生した。
図2の実施例は
【数2】

とする。
【0016】
図3には、各熱電対リードP及びN及び相当する延長ワイヤPX及びNXの正側(P)及び負側(N)における温度の、emfに関するプロット図(“Manual on the Use of Thermocouples in Temperature Measurement”,ASTM Pub.470B,1981,第34頁を参照されたい)が示される。延長ワイヤの動作範囲内での任意温度Tにおける関係は以下の式の如くである。
熱電対出力=延長ワイヤ対の出力;
【数3】

書き換えると;
【数4】

2つの接点、即ち、PをPXに接続する接点TPと、NをNXに接続する接点TNとの間に温度差がある、即ち、TP≠TNであると、2つの接点を横断するある程度の所望されざるemfが発生する。
【数5】

【0017】
P≠TNの場合、記号ΔEは、エラーの正負側偏倚に拘わらずTP≠TNの程度と、P及びNに対するPX及びNXにおけるemfとの関係次第のものとなる。
市販の熱電対アセンブリに固有の条件、即ちTP≠TNであることによりエラーが発生する理由は幾つかある。熱電対アセンブリにおいてTP≠TNであると、エラーは延長ワイヤが貴金属製熱電対リードと比較して不相応に長い場合に生じ易くなることが分かった。当該状況は、プラチナベース金属のコストを延長ワイヤのそれと比較した結果として、貴金属製熱電対を可能な限り短くしたプラチナベースの貴金属製熱電対装置では極めて一般的なものである。
【0018】
P≠TNである熱電対アセンブリでは、延長ワイヤと貴金属製熱電対リードとの各直径が不一致であるとエラーが増大することが分かった。この点は、例えば、英国特許第719026号、米国特許第2,993,944号、同第2,999,121号、同第3,298,874号に記載される形式の使い捨て式熱電対装置において明示される。
P≠TNである熱電対アセンブリでは、温度回路の中間にあって熱電対回路の各パーツを瞬時断続する手段を提供する、延長ワイヤ材料からなる導体同士間でワイヤの物理径が一致していないとエラーが増大することが分かった。米国特許第4,229,230号には連結用部材のそうした非対称性が例示される。本発明により解決される問題を説明する上で、一次元安定伝熱則について略記する。
【0019】
上述したemfの作用とは別に、高温の中間接点から低温の基準接点に向かう延長ワイヤPX及びNXにおける熱流量差が、熱電対回路での延長ワイヤ使用に関する測温上の他のエラー源となる。熱流量差があると、正負各側の中間接点間での熱伝導度が無限ではない場合に正負各側の中間接点同士間に温度差が生じる。
【0020】
延長ワイヤの如き胴部内に温度勾配が存在すると、熱エネルギーは高温部分から低温部分に移動する。この現象は熱伝導として既知であり、フーリエの法則により説明される。一次熱流量は以下の式で表される。
【数6】

ここで、熱流量束(ワット/m2)は所定温度プロファイルTに依存し、熱伝導率k(ワット/m−ケルビン)は、伝導方向に直交する単位面積当たりの伝熱速度である。マイナス記号は熱が温度勾配を降下することの表記である。
【0021】
ワット値での測定熱流量が定義断面積Aを通るものとした場合の式は以下の如きである。
材料厚Δxを通過する熱流量式は、
【数7】

となる。
ここで、T1及びT2は胴部の2つの境界位置での各温度である。
伝熱に関する以上の点を理解すれば、延長ワイヤの伝導度の相違が実際の温度エラーを引き起こす理由が分かる。
【0022】
例えば、貴金属製熱電対装置の多くでは、測温接点を持つ貴金属製熱電対を、銅や銅−ニッケル製の延長ワイヤ対を、基準接点を持つ測定機器に中間接点で接続させる。中間接点及び基準接点は、正負各側の中間接点を実質的に同温度に維持する構造に設計される。しかしながら、正負各側の中間接点を電気的に隔離させる必要上、各中間接点同士間の熱伝導度は有限であるため、正負各側の中間接点は全く同じ温度には維持され得ない。
【0023】
貴金属製熱電対の正側リードの延長ワイヤとして国内及び国際的な標準化機構が指定する銅製ワイヤの、約20℃(68°F)における熱伝導率kは約390W(mK)であり、負側リード延長用の銅−ニッケル製延長ワイヤのそれは約85W(mK)である。2本の各延長ワイヤの高温側端部への熱入力を同値に維持し且つ各延長ワイヤの断面積を同じにすると、延長ワイヤの高伝導度の高温側端部の温度は、低温側端部(基準接点)に向かう際の伝熱損失によって次第に低伝導度の延長ワイヤよりも低温化され、高伝導度の延長ワイヤの低温側端部に向かう熱流量が相当量増大することで、当該低温側端部の温度が、低伝導度の延長ワイヤのそれよりも若干高くなる。この効果は、一般に各ワイヤの周囲に配置されて各ワイヤを周囲熱交換環境から分離し且つ電気的隔離を促進する熱及び電気的絶縁体により増長される。各ワイヤの高温側端部に熱が継続的に入力すると、分離された各ワイヤの高温側及び低温側の各端部間の延長ワイヤに沿った温度勾配が徐々に非類似化し、かくして図3を参照して説明した如き測温上の大きなエラーが生じる。
【0024】
延長ワイヤにおける熱流量はワイヤの熱伝導率及び直径の関数である。従って、各延長ワイヤにおける熱流量を、ワイヤに関する特定直径及び各ワイヤまたは両ワイヤの特定熱伝導率を選択することで管理し得る。実際上、貴金属製熱電対装置の場合、各延長ワイヤ通路での熱流量を等価とするに十分な程度において、貴金属製熱電対で従来から使用される銅製の延長ワイヤ及び銅−ニッケル合金製の延長ワイヤの直径を夫々単に増減させるのは非実用的であることが分かった。なぜなら、細い銅製ワイヤは破損し易く及びまたは太い銅−ニッケル合金製ワイヤは受け入れざる程に高価なためである。結局、受け入れ可能な直径範囲及び伝熱特性の範囲内で熱伝導率に基づく熱等価を提供する如き代替延長ワイヤ材料を選択することが望ましい。
【0025】
図4を参照するに、既知の熱電対装置10が例示され、測温接点16、正負各側の熱電対リード14a、14bを有する貴金属製熱電対14、を含むセンサ12と、基準接点26a、26bを含む測定機器28と、センサ12を測定機器28に連結する延長ワイヤ24a、24bと、を含んでいる。センサ12は、低温側接点18a、18bと、コネクタ接点22a、22bと、をも含む。連結ワイヤ20a、20bは正負各側の熱電対リード14a、14bをコネクタ接点22a、22bに連結する。延長ワイヤ24a、24bは連結ワイヤ20a、20bを基準接点26a、26bに連結する。
【0026】
図4の既知の熱電対装置10の場合、連結ワイヤ20aと延長ワイヤ24aとは熱電対14の正側リード14aに接続され、従来通り銅(Cu)製とされ、約20℃(68°F)でのその公称熱伝導率は略390W/(mK)である。熱電対14の負側リード14bに接続する連結ワイヤ20bと延長ワイヤ24bとは銅−ニッケル合金(CuNi)製であり、約20℃(68°F)でのその公称熱伝導率は85W/(mK)である。連結ワイヤ20b及び延長ワイヤ24bが、理想的には同じ伝熱特性を有し、連結ワイヤ20a及び延長ワイヤ24aの伝熱特性が同じであることから、当該熱電対装置による測温は、接点18b及び26b間に、また同様に接点18a及び26a間に単一の導体を有するそれと同様のものとなる。しかしながら、既知の装置では、先に議論した如く、正側の連結ワイヤ20a及び延長ワイヤ24aを通しての基準接点26aへの熱流量は、各延長/連結ワイヤの熱伝導度及び放熱性にどうしても差があることから、負側の連結ワイヤ20b及び延長ワイヤ24bを通しての参照接点26bへの熱流量とは相違する。熱流量差は接点18a、18b位置で生じるemfの差に基づいて発生し得る。
【0027】
図5aを参照するに、本発明の好ましい第1実施例が示される。本第1実施例は延長ワイヤ24aとは異なるセグメントとしての正側の延長ワイヤ24a’を有し、その他の部分は特に断りの無い限り図4に示す既知の装置と同じである。本第1実施例では、延長ワイヤ24a’用に好ましい材料は銅及びマンガン合金(CuMn)であり、約20℃(68°F)でのその公称熱伝導率は155W/(mK)であるが、0℃〜204.4℃(32〜400°F)の温度範囲内で145及び190W/(mK)の間を可変である。延長ワイヤ24a’のマンガンの割合は1%±0.35%であることが好ましい。本第1実施例では、延長ワイヤ24a’、24bの熱伝導度及びまたは直径は、各低温側接点18a、18bから測温接点26a、26bへの熱流量が、接点18aから基準接点26aへの熱流量と、接点18bから基準接点26bへの熱流量との差を所定量未満とし且つ好ましくは実質的に等量となるように管理する目的で選択される。
【0028】
図5bを参照するに、本発明の好ましい第2実施例が示される。本第2実施例は連結ワイヤ20aとは異なる正側の連結ワイヤ20a’を有し、その他の部分は特に断りの無い限り図4に示す既知の装置と同じである。本第2実施例では、低熱伝導度の連結ワイヤ20a’が伝熱防止体として作用する。本第2実施例では、連結ワイヤ20a’用として好ましい材料は銅及びマンガン合金(CuMn)であり、その公称熱伝導率は155W/(mK)であるが、0℃〜204.4℃(32〜400°F)の温度範囲内で140及び190W/(mK)の間を可変である。連結ワイヤ20a’のマンガンの割合は1%±0.35%であることが好ましい。本第2実施例では、連結ワイヤ20a’、20bの熱伝導度及びまたは直径は、各低温側接点18a、18bから連結ワイヤ20a’、20bを通しての延長ワイヤ24a、24bへの熱流量が、好ましくは、しかし必ずしもそうでなくて良いが、Cu/CuNi製の延長ワイヤ24a、24bを基準接点26a、26bに連結した場合に実質的に等量となるように管理する目的で選択される。連結ワイヤ20a’、20bはセンサ12の内部に例示したが、センサ12の外側であっても良い。
【0029】
図5cを参照するに、本発明の好ましい第3実施例が示される。本第3実施例は連結ワイヤ20aとは異なる連結ワイヤ20a’及び正側の延長ワイヤ24a’を有し、その他の部分は特に断りの無い限り図4に示す既知の装置と同じである。本第3実施例では、連結ワイヤ20a’及び延長ワイヤ24a’用として好ましい材料は銅及びマンガン合金であり、その公称熱伝導率は155W/(mK)であるが、0℃〜204.4℃(32〜400°F)の温度範囲内で145及び190W/(mK)の間を可変である。連結ワイヤ20a’及び延長ワイヤ24a’のマンガンの割合は1%±0.35%であることが好ましい。本第3実施例では、各接点位置で、連結ワイヤ20a’、20bと、各延長ワイヤ24a’、24bとの間が同一金属で連接される。連結ワイヤ20a’、24bの熱伝導度及びまたは直径は、各低温側接点18a、18bから測温接点26a、26bへの熱流量が、接点18aから基準接点26aへの熱流量及び接点18bから基準接点26bへの熱流量における各熱流量差を所定量未満とし且つ好ましくは実質的に等量となるように管理する目的で選択される。連結ワイヤ20a’及び延長ワイヤ24a’の一方または両方の直径を調節することで熱流量が制御され得ることから、各ワイヤの直径選択上の融通性がずっと大きくなる。
【0030】
本発明は貴金属熱電対及びCuNi合金製の負側の延長ワイヤを用いる熱電対装置に限定されるものではない。好ましい実施例で使用するCuMn合金を、従来の正側の延長ワイヤが非合金銅である任意の熱電対装置に等しく適用し得るものとする。そうした熱電対装置には、これに限定しないが、タイプB、K、Tの熱電対、のみならずタイプR及びタイプS熱電対を使用するものが含まれる。また、延長ワイヤの組成を選択することで延長ワイヤの熱流量を等価させる概念は、任意タイプの熱電対装置に適用し得るものであり、延長ワイヤ用に特に選択した任意材料に対して限定されるものではない。
【0031】
理想的には、低温の接点から各延長ワイヤを介して測温接点に発生する熱流量はエラー源完全排除のために等しくされるべきである。しかしながら、特には同じ熱電対を用いて連続的測定を実施する場合は、エラーを相当に低減させる上で熱流量を完全に等量化させる必要はない。また、本発明における経済性に関する利点は、貴金属製熱電対を用いる使い捨て型温度センサに対して特に適用性があり、中間接点から基準接点への熱量を等価させる概念は、延長ワイヤを通しての不等熱流量に基づくエラーにより測温エラーが生じる任意の熱電対装置において等しく適用し得るものである。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0032】
10 熱電対装置
12 センサ
14 貴金属製熱電対
14a 正側リード
14b 負側リード
16 測温接点
18a、18b 接点
20a、20b 連結ワイヤ
24a、24b 延長ワイヤ
26a、26b 測温接点
28 測定機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対装置であって、
測温接点で相互連結された正側リード及び負側リードを有する熱電対と、
正側リードに第1接点で第1端部を連結し、第2端部を第2接点に連結した少なくとも1つの正側ワイヤ及び、負側リードに第3接点で第1端部を連結し、第2端部を第4接点に連結した少なくとも1つの負側ワイヤを含み、
第2接点及び第4接点が基準接点を構成し、該基準接点の温度が測温接点の温度未満であり、少なくとも1つの正側ワイヤ及び少なくとも1つの負側ワイヤの少なくとも一方における熱伝導度及び直径の少なくとも一方を、第1接点から基準接点への熱流量と、第3接点から基準接点への熱流量とにおける熱流量差が所定量未満であるように管理されるよう選択した熱電対装置。
【請求項2】
少なくとも1つの正側ワイヤを通る熱流量と、少なくとも1つの負側ワイヤを通る熱流量とが実質的に等しい請求項1の熱電対装置。
【請求項3】
少なくとも1つの正側ワイヤが、正側連結ワイヤ及び正側延長ワイヤを含み、正側延長ワイヤが少なくとも1つの正側ワイヤを通る熱流量を管理する請求項1の熱電対装置。
【請求項4】
少なくとも1つの正側ワイヤが正側連結ワイヤ及び正側延長ワイヤを含み、正側連結ワイヤが少なくとも1つの正側ワイヤを通しての熱流量を管理する請求項1の熱電対装置。
【請求項5】
少なくとも1つの正側ワイヤが正側連結ワイヤ及び正側延長ワイヤを含み、正側連結ワイヤが非合金銅製とされ、正側延長ワイヤが銅−マンガン合金製とされる請求項1の熱電対装置。
【請求項6】
少なくとも1つの正側ワイヤが、正側連結ワイヤ及び正側延長ワイヤを含み、正側連結ワイヤが銅−マンガン合金製とされ、正側延長ワイヤが非合金銅製とされる請求項1の熱電対装置。
【請求項7】
少なくとも1つの正側ワイヤが正側連結ワイヤ及び正側延長ワイヤを含み、正側連結ワイヤが銅−マンガン合金製とされ、正側延長ワイヤが銅−マンガン合金とされる請求項1の熱電対装置。
【請求項8】
熱電対装置であって、
正側リード及び負側リードを有するタイプRまたはタイプS熱電対と、
0.65〜1.35パーセントのマンガン及びその他の銅から本来成り、タイプRまたはタイプS熱電対の正側リードに本来連結される正側ワイヤと、
を含む熱電対装置。
【請求項9】
正側ワイヤが熱電対の正側リードに直結される請求項7の熱電対装置。
【請求項10】
熱電対が、コネクタを有するセンサに収納され、正側ワイヤが該コネクタを介して熱電対の正側リードに連結される請求項7の熱電対装置。
【請求項11】
プラチナ/プラチナ−ロジウム製熱電対装置内で銅−ニッケル製熱電対の負側連結/延長ワイヤと共に使用するための、熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成であって、
熱電対装置の熱電対の正側リードが、プラチナ10パーセント含有ロジウム及びプラチナ13パーセント含有ロジウムから成る群から選択したプラチナ−ロジウム合金製とされ、熱電対の正側連結/延長ワイヤ組成が、マンガン0.65〜1.35重量パーセント及びその他の銅から本来成る熱電対の正側連結/延長ワイヤ組成。
【請求項12】
プラチナ/プラチナ−ロジウム製熱電対装置内で熱電対延長ワイヤとして使用するための熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成であって、
熱電対装置の熱電対における正側リードが、プラチナ10パーセント含有ロジウム及びプラチナ13パーセント含有ロジウムから成る群から選択したプラチナ−ロジウム合金であり、負側リードがプラチナ製であり、負側延長ワイヤが、公称、0.5〜1.5%のニッケル、0.25〜0.40%のマンガン、その他の銅、から成り、熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成が、0℃〜204.4℃(32〜400°F)の温度範囲に渡り100−250W(mK)の熱伝導度を有する熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成。
【請求項13】
0℃〜204.4℃(32〜400°F)の温度範囲に渡り145−190W(mK)の熱伝導度を有する請求項11の熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成。
【請求項14】
重量パーセントにおけるマンガン0.65〜1.35及びその他の銅から成る請求項11の熱電対の正側連結/延長ワイヤの組成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2011−501180(P2011−501180A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530578(P2010−530578)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002816
【国際公開番号】WO2009/053815
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium