説明

熱電対

【課題】熱電対を取り外すことなく、保護管の腐食及び磨耗を確認できる熱電対を提供する。
【解決手段】熱電対10は、温度センサ1を保護する内部が中空の長尺の保護管2と管継手3を備える。保護管2は、温度検出部1aが先端部に位置するように、温度センサ1を収容する。管継手3は、保護管2と接続し、保護管2の内部と連通する貫通穴34を中心部に有する。保護管2の内部は、温度センサ1の外径より大きい内径を有し、管継手3は、外部に面して開口し、貫通穴34に連通して、保護管2の内部の圧力を検査可能な検査孔3aを有する。磨耗により保護管2に穴が貫通した場合に、保護管2の内部圧力が大気圧より高くなるので、熱電対10を取り外すことなく、保護管2の内部に連通する検査孔3aから検査できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対に関する。特に、石炭を燃料とする火力発電所などにおいて、粉塵を含む排ガスなどの熱流体の温度を測定するために好適な熱電対の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、石炭を燃料とする火力発電所の構成の一例を示す配置図である。図4を参照すると、火力発電所Psは、ボイラ81、タービン82、発電機83、及び復水器84を備えている。ボイラ81の内部には、過熱器81aを配置している。過熱器81aは、ボイラ81に接続している。そして、ボイラ81で加熱された過熱蒸気がタービン82に供給される。
【0003】
図4を参照すると、タービン82は、過熱器81aから供給された過熱蒸気が内部の羽根車に吹き付けられて、この羽根車が回転する。そして、タービン82に連結した発電機83を動かし、発電できる。なお、発電機83には、励磁機83aを連結している。発電機83で発生した電気は、変圧器83b、開閉所83c、送電鉄塔83dを経て外部に送電される。
【0004】
図4を参照すると、タービン82を駆動した後の蒸気は、復水器84に供給されて、冷却及び凝縮される。復水器84には、この蒸気を冷却及び凝縮するために、海水が取水されて供給され、復水器84の内部を循環した後に、海に放水される。そして、凝縮された水(純水)は、再び過熱器81aに供給される。なお、復水器84には、純水を補給するために純水タンク84aを接続している。
【0005】
又、図4を参照すると、火力発電所Psは、バンカ91と微粉炭機92を備えている。バンカ91には、図示しない石炭サイロから運炭設備によって石炭が供給される。この石炭は、微粉炭機92に供給され、微粉炭になるまで粉砕される。そして、この微粉炭がボイラ81の火炉80に供給され、燃焼される。
【0006】
一方、図4を参照すると、ボイラ81で燃焼後の排ガスは、排気通風路93を経て、一部の排ガスが空気と混合されて、火炉80に循環される。又、大部分の排ガスは、集塵機94から煙突95を経て、大気に排出される。そして、排気通風路93を流動する排ガスの温度を測定するための熱電対7を排気通風路93に設けている。なお、図4において、脱硫装置などは、図示を省略している。
【0007】
図5は、排気通風路93の一部に設置された熱電対の一例を示す斜視図である。図5に示された熱電対7は、後述する端子箱付ねじ込みタイプの熱電対であって、熱電対7の先端部を排気通風路93の内部に突出するように配置している。
【0008】
図5を参照すると、排気通風路93の外壁には、熱電対7を保持するための取付け板93aを固定している。そして、熱電対7の基端部側に設けた接続ねじ部72b(図6参照)を回転することにより、熱電対7を取付け板93aから取り外すことができる。
【0009】
図6は、従来技術による熱電対7の構成を示す正面図であり、要部を断面図で示している。図6を参照すると、熱電対7は、比較的細径の温度センサ71、長尺の保護管72、及びニップル73を備えている。温度センサ71は、異種金属線を内装し、その先端部には、これらの異種金属線を接合した温度検出部71aを有している。
【0010】
図6を参照すると、保護管72は、温度センサ71を挿入して、温度検出部71aが先端部に位置するように、中心部に挿入穴72aを穿設している。保護管72は、温度検出部71aを保護するために、挿入穴72aを貫通することなく閉塞している。又、保護管72は、接続ねじ部72bを基端部に有している。
【0011】
図6を参照すると、接続ねじ部72bは、六角柱状の頭部721とテーパ雄ねじ部722を形成している。頭部721をスパナなどの工具で回転して、テーパ雄ねじ部722を取付け板93a(図5参照)に設けたテーパ雌ねじ部(図示せず)に螺合することにより、排気通風路93の内部の排ガスが外に漏れないように密封できる。
【0012】
又、図6を参照すると、接続ねじ部72bは、テーパ雌ねじ部723を中心部に形成している。テーパ雌ねじ部723は、後述するテーパ雄ねじ部732を気密可能に接続できる。又、テーパ雌ねじ部723は、挿入穴72aに連通している。
【0013】
図6を参照すると、ニップル73は、接続ねじ部73aを先端部に有している。接続ねじ部73aは、六角柱状の頭部731とテーパ雄ねじ部732を形成している。頭部731をスパナなどの工具で回転して、テーパ雄ねじ部732をテーパ雌ねじ部723に螺合することにより、ニップル73を保護管72に接続すると共に、接続ねじ部72bを密封できる。又、頭部731をスパナなどの工具で回転して、保護管72とニップル73を分離できる。そして、保護管72から温度センサ71を引き抜くことができる。
【0014】
又、図6を参照すると、ニップル73は、端子箱73bを基端部に有している。端子箱73bは、温度センサ71となる異種金属線と補償導線7wとを内部で接続している。そして、端子箱73bは、温度検出部71aでの温度検出信号を伝える信号線となる補償導線7wを延出している。例えば、この補償導線7wは、図示しない集中監視盤に接続されている。
【0015】
図4から図6を参照して、保護管72は、排気通風路93の排ガスが流れる方向(流路)と直交するように、配置されている。又、保護管72は、通常、耐熱性のステンレスを使用している。しかし、前記の排ガスには、煤塵や微粉炭が含まれており、これらの粒子が保護管72に激突するので、保護管72の特定部位が損傷し、温度センサ71に至るまで穴が開くというケースも考えられた。つまり、従来の保護管は、耐用期間が短いという不具合があった。
【0016】
このような不具合を解消するため、熱伝導性能が低減することなく、耐用期間が大幅に延長できる熱電対用の保護管が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
特許文献1による保護管は、耐熱合金を基体とする熱電対用の保護管であって、この保護管の少なくとも高度の高温耐蝕・耐磨耗性を要求される部位がコバルト系の合金製の基体で形成されると共に、この基体の表面に耐熱塗料で封孔処理された炭化タングステン(WC)系溶射被膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−201403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1による保護管は、耐用期間を大幅に延長できるという利点があるが、この耐用期間は、排ガスの温度や流量などの諸条件によって異なっている。このため、石炭を燃料とする火力発電所などでは、保護管72の磨耗を確認するために(図6参照)、定期的又は不定期に保護管72の外観を検査している。
【0020】
この場合、図4を参照すると、ボイラ81の稼動を停止して(火力発電所の操業を停止して)、排気通風路93の側壁から熱電対7を取り外す必要があるので(図5参照)、不便であるという問題があった。排気通風路93の側壁から熱電対7を取り外すことなく、保護管72の磨耗を判断できると便利である。
【0021】
又、図5又は図6を参照すると、保護管72を取り外して、保護管72の外観を目視で確認した結果、磨耗により保護管72に穴が貫通していない場合であっても、使用中に保護管72にこの穴が貫通する心配があることから、保護管72を新品に交換していた。つまり、結果的に耐用期間を短縮させていたという問題がある。
【0022】
更に、図5又は図6を参照すると、温度センサ71の異常を検知したときも、磨耗により保護管72に穴が開き、これに起因して、温度センサ71を損傷したのであるか、又、温度センサ71自身の故障によるものであるかは、排気通風路93の側壁から熱電対7を取り外すまで判断できないという、不便な問題があった。排気通風路93の側壁から熱電対7を取り外すことなく、温度センサ71の異常の原因を判断できれば、便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0023】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、排気通風路などの側壁から熱電対を取り外すことなく、保護管の腐食及び磨耗の進行を確認でき、又は温度センサの異常の原因を判断できる熱電対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者は、ボイラが稼動中の排気通風路などの内部圧力は、大気圧より高いことに着目して、保護管の内部に連通する検査孔を外部に開口するように熱電対に設け、検査孔を介して保護管の内部圧力を検査することにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな熱電対を発明するに至った。
【0025】
(1)本発明による熱電対は、粉塵を含む熱流体の温度を測定するために、この熱流体が流動する通風路を囲う側壁に取り付けた熱電対であって、温度検出部を先端部に有する長尺の温度センサと、前記温度検出部が先端部に位置するように前記温度センサを内部に収容し、この先端部が前記通風路の内部に突出するように基端部を前記側壁に取り付けた内部が中空の長尺の保護管と、この保護管の基端部に先端部が接続し、前記温度センサが挿通されると共に、前記保護管の内部と同軸状に連通する貫通穴を中心部に有する管継手と、この管継手の基端部に先端部が接続し、この先端部から前記温度センサを突出するように当該温度センサの基端部側を内装するニップルと、を備え、前記保護管の内部は、前記温度センサの外径より大きい内径を有し、前記管継手は、外部に面して開口し、前記保護管の内部に連通して、前記保護管の内部の圧力を検査可能な検査孔を有する。
【0026】
(2)本発明による熱電対は、前記温度センサを中心部に挿通すると共に、前記保護管の内壁と所定の間隙を有して、この間隙が前記貫通穴を介して前記検査孔に連通するように、前記保護管の内部に同軸状に配置される内部保護管を更に備えることが好ましい。
【0027】
(3)本発明による熱電対は、前記検査孔の開口を封止可能な栓を備えることが好ましい。
【0028】
(4)本発明による熱電対は、前記検査孔に接続して、前記保護管の内部の圧力と大気圧とを比較する比較検査器を更に備え、前記比較検査器は、内部が中空の透明管と、この透明管に収容されて軸方向に転動可能な軽量のボールと、このボールが脱落しないように前記透明管の一方の端部を封止すると共に、前記検査孔に接続して当該検査孔と前記透明管の内部を連通する第1連通孔を設ける第1ブッシングと、このボールが脱落しないように前記透明管の他方の端部を封止すると共に、大気と前記透明管の内部を連通する第2連通孔を設ける第2ブッシングと、を有し、前記透明管を水平状態に設置すると共に、前記ボールを前記透明管の中央部に配置して、当該ボールの挙動の有無を検査することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明による熱電対は、磨耗により保護管に穴が貫通した場合に、保護管の内部圧力は、通風路の内部圧力と略同一になる。この場合、保護管の内部圧力は、保護管の内部に連通する検査孔から検査できるので、通風路の側壁から熱電対を取り外すことなく、保護管の磨耗を判断できる。
【0030】
又、本発明による熱電対は、温度センサの異常を検知した場合に、保護管の内部に連通する検査孔を通じて、保護管の内部圧力を検査することにより、温度センサの異常の原因が保護管の磨耗によるものか、他の原因であるかを通風路の側壁から熱電対を取り外すことなく判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による熱電対の構成を示す正面図であり、要部を断面図で示している。
【図2】前記実施形態による熱電対の構成を示す斜視分解組立図であり、検査孔の開口を封止する栓を配置した状態図である。
【図3】前記実施形態による熱電対の構成を示す斜視分解組立図であり、検査孔に接続する比較検査器を配置した状態図である。
【図4】石炭を燃料とする火力発電所の構成の一例を示す配置図である。
【図5】排気通風路の一部に設置された熱電対の一例を示す斜視図である。
【図6】従来技術による熱電対の構成を示す正面図であり、要部を断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[熱電対の構成]
最初に、本発明の一実施形態による熱電対の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による熱電対の構成を示す正面図であり、要部を断面図で示している。
【0033】
図2は、前記実施形態による熱電対の構成を示す斜視分解組立図であり、検査孔の開口を封止する栓を配置した状態図である。図3は、前記実施形態による熱電対の構成を示す斜視分解組立図であり、検査孔に接続する比較検査器を配置した状態図である。なお、従来技術で使用した符号と同じ符号を有する構成品は、その作用を同一とするので、以下の説明では割愛する場合がある。
【0034】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による熱電対10は、比較的細径の長尺の温度センサ1、内部が中空の長尺の保護管2、管継手3、内部保護管4、及びニップル73を備えている。温度センサ1は、異種金属線を内装し、その先端部には、これらの異種金属線を接合した温度検出部1aを有している。
【0035】
図1を参照すると、保護管2は、温度検出部1aが先端部に位置するように、先端部の中心部に挿入穴2aを穿設している。保護管2は、温度検出部1aを保護するために、挿入穴2aを貫通することなく閉塞している。
【0036】
又、図1から図3を参照すると、保護管2は、内部保護管4を収容するために、収容穴2bを穿設している。内部保護管4は、中心部に貫通穴4aを有している。内部保護管4は、温度センサ1を貫通穴4aに挿通している。そして、内部保護管4は、温度検出部1aを先端縁から僅かに突出した状態で、収容穴2bに配置されている。
【0037】
又、図1を参照すると、内部保護管4は、収容穴2bと同軸状に配置されている。保護管2の内径は、内部保護管4の外径より大きく形成されている。そして、保護管2の内壁と内部保護管4の外壁とは、所定の間隙Mを有している。つまり、内部保護管4は、保護管2と所定の間隙Mを有して、収容穴2bに収容されている。
【0038】
図2又は図3を参照すると、内部保護管4は、フランジ4fを基端部に形成している。フランジ4fの外径は、収容穴2bの内径より大きく形成している。そして、収容穴2bの入口側に設けた段差にフランジ4fが当接して、内部保護管4の基端部側が保持されている(図1参照)。又、フランジ4fには、放射状に複数の切り欠き溝41を設けており、保護管2の内部(間隙M)と後述する貫通穴34と連通している(図1参照)。
【0039】
図1から図3を参照すると、保護管2は、接続ねじ部2cを基端部に有している。接続ねじ部2cは、六角柱状の頭部21とテーパ雄ねじ部22を形成している。頭部21をスパナなどの工具で回転して、テーパ雄ねじ部22を取付け板93a(図5参照)に設けたテーパ雌ねじ部(図示せず)に螺合することにより、排気通風路93の内部の排ガスが外に漏れないように密封できる。
【0040】
又、図1から図3を参照すると、接続ねじ部2cは、テーパ雌ねじ部23を中心部に形成している。テーパ雌ねじ部23は、後述するテーパ雄ねじ部32を気密可能に接続できる。又、テーパ雌ねじ部23は、収容穴2bに連通している。
【0041】
図1から図3を参照すると、管継手3は、一端側に六角柱状の頭部31を形成し、他端側にテーパ雄ねじ部32を形成している。頭部31をスパナなどの工具で回転して、テーパ雄ねじ部32を保護管2に設けたテーパ雌ねじ部23に螺合することにより、管継手3を保護管2に接続すると共に、保護管2の内部を密封できる。
【0042】
図2又は図3を参照すると、管継手3は、テーパ雌ねじ部33を一端側の中心部に形成している。テーパ雌ねじ部33は、ニップル73に形成したテーパ雄ねじ部732を気密可能に接続できる(図1参照)。
【0043】
図1を参照すると、管継手3は、貫通穴34を中心部に有している。貫通穴34は、テーパ雌ねじ部33に連通している。又、管継手3を保護管2に接続した状態では、貫通穴34は、保護管2の内部(間隙M)と同軸状に連通している。
【0044】
図1を参照すると、貫通穴34の内径は、温度センサ1の外径より十分に大きく形成されている。貫通穴34に温度センサ1を挿通した状態では、貫通穴34の内壁に検査孔3aが斜めに穿孔されている。そして、検査孔3aは、貫通穴34を介して保護管2の内部に連通すると共に、頭部31の表面(外部)に開口している。
【0045】
図1を参照すると、管継手3の頭部31には、検査孔3aを設けている。検査孔3aは、貫通穴34に連通している。そして、検査孔3aは、外部に面して開口している。図2を参照して、通常、検査孔3aは、その開口が栓5で封止されている。図3を参照して、比較検査器6を検査孔3aに接続して、保護管2の内部の圧力と大気圧とを比較できる。
【0046】
図3を参照すると、比較検査器6は、透明管61、軽量のボール62、第1ブッシング63、及び第2ブッシング64で構成されている。透明管61は、内部が中空になっている。ボール62は、透明管61に収容され、軸方向に転動できる。
【0047】
図3を参照すると、第1ブッシング63は、ボール62が脱落しないように、透明管61の一方の端部を封止している。又、第1ブッシング63は、第1連通孔63aを開口している。第1ブッシング63を検査孔3aに接続して、検査孔3aと透明管61の内部を連通できる。第2ブッシング64は、ボール62が脱落しないように、透明管61の他方の端部を封止している。又、第2ブッシング64は、第2連通孔64aを開口している。第2連通孔64aは、大気と透明管61の内部を連通している。
【0048】
[熱電対の作用]
次に、実施形態による熱電対10の作用及び効果を説明する。図1を参照して、粉塵を含む排ガスの磨耗により保護管2に穴が貫通した場合、保護管2の内部圧力は、排気通風路93の内部圧力と略同一になる(図4参照)。この場合、保護管2の内部圧力は、保護管2の内部に連通する検査孔3aから検査できるので、排気通風路93の側壁から熱電対10を取り外すことなく(図5参照)、保護管2の磨耗を判断できる。
【0049】
又、図1を参照すると、実施形態による熱電対10は、温度センサ1の異常を検知した場合に、保護管2の内部に連通する検査孔3aを通じて、保護管2の内部圧力を検査することにより、温度センサ1の異常の原因を保護管2の磨耗によるものか、他の原因であるかを排気通風路93の側壁から熱電対10を取り外すことなく判断できる。
【0050】
図3を参照して、例えば、保護管2の内部圧力は、比較検査器6を検査孔3aに接続して、大気圧と比較して検査できる。この場合、透明管61を水平状態に設置すると共に、ボール62を透明管61の中央部に配置しておく。そして、ボール62が第2ブッシング64に向かって移動した場合は、保護管2の内部圧力が大気圧より高いことが判り、磨耗により保護管2に穴が貫通していることが判る。一方、ボール62が静止しているときは、保護管2はまだ健全であることが判る。このように、比較検査器6は、ボール62の挙動の有無を検査することで、保護管2の穴あきの有無を判定できる。
【0051】
又、図1から図3を参照すると、実施形態による熱電対10は、保護管2の内部に同軸状に配置される内部保護管4を更に備えている。実施形態による熱電対10は、保護管2と内部保護管4とで、温度センサ1を二重に保護することにより、保護管2に穴あきが生じても、温度センサ1を内部保護管4で保護でき、温度センサ1の損傷などのリスクを低減できる。
【0052】
実施形態による熱電対10は、ボイラ81(図4参照)の稼動を停止することなく(火力発電所の操業を停止することなく)、保護管2の磨耗を判断できるので便利である。又、実施形態による熱電対10は、排気通風路93の側壁から熱電対10を取り外すことなく、温度センサ1の異常の原因を判断できるので、便利である。
【0053】
実施形態による熱電対10は、熱電対10を取り外すことなく、保護管2の穴あきを特定できるので、速やかに保護管2を交換することができる。又、実施形態による熱電対10は、保護管2の内部に更に内部保護管4を備えているので、従来のように頻繁に保護管を交換することを緩和できる。
【0054】
本発明による熱電対は、石炭を燃料とする火力発電所などにおいて、粉塵を含む排ガスなどの熱流体の温度を測定するために好適な構造を開示したが、本発明による熱電対の用途は、火力発電所に限定されない。本発明による熱電対は、コークス炉又は熱風炉などの高温大型炉に使用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 温度センサ
1a 温度検出部
2 保護管
3 管継手
3a 検査孔
10 熱電対
34 貫通穴
73 ニップル
93 排気通風路(通風路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵を含む熱流体の温度を測定するために、この熱流体が流動する通風路を囲う側壁に取り付けた熱電対であって、
温度検出部を先端部に有する長尺の温度センサと、
前記温度検出部が先端部に位置するように前記温度センサを内部に収容し、この先端部が前記通風路の内部に突出するように基端部を前記側壁に取り付けた内部が中空の長尺の保護管と、
この保護管の基端部に先端部が接続し、前記温度センサが挿通されると共に、前記保護管の内部と同軸状に連通する貫通穴を中心部に有する管継手と、
この管継手の基端部に先端部が接続し、この先端部から前記温度センサを突出するように当該温度センサの基端部側を内装するニップルと、を備え、
前記保護管の内部は、前記温度センサの外径より大きい内径を有し、
前記管継手は、外部に面して開口し、前記保護管の内部に連通して、前記保護管の内部の圧力を検査可能な検査孔を有する熱電対。
【請求項2】
前記温度センサを中心部に挿通すると共に、前記保護管の内壁と所定の間隙を有して、この間隙が前記貫通穴を介して前記検査孔に連通するように、前記保護管の内部に同軸状に配置される内部保護管を更に備える請求項1記載の熱電対。
【請求項3】
前記検査孔の開口を封止可能な栓を備える請求項1又は2記載の熱電対。
【請求項4】
前記検査孔に接続して、前記保護管の内部の圧力と大気圧とを比較する比較検査器を更に備え、
前記比較検査器は、
内部が中空の透明管と、
この透明管に収容されて軸方向に転動可能な軽量のボールと、
このボールが脱落しないように前記透明管の一方の端部を封止すると共に、前記検査孔に接続して当該検査孔と前記透明管の内部を連通する第1連通孔を設ける第1ブッシングと、
このボールが脱落しないように前記透明管の他方の端部を封止すると共に、大気と前記透明管の内部を連通する第2連通孔を設ける第2ブッシングと、を有し、
前記透明管を水平状態に設置すると共に、前記ボールを前記透明管の中央部に配置して、当該ボールの挙動の有無を検査する、請求項1から3のいずれかに記載の熱電対。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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