説明

熱音響機関

【課題】熱源から導かれた熱を有効に回収することができる熱音響機関を提供する。
【解決手段】熱音響機関10は、ループ管11に第1、第2のスタック35,45が並列に設けられるとともに蓄熱体15が設けられている。そして、第1スタック35の中心35aから蓄熱体15の中心51aまでの回路長さL1aを第2スタック45の中心45aから蓄熱体15の中心51aまでの回路長さL2aと等しくした。さらに、第1スタック35および蓄熱体15を含む第1音響回路17の長さL1を、第2スタック45および蓄熱体51を含む第2音響回路18の長さL2と等しくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックに熱を伝えることによりスタックを発振させ、スタックの振動をループ管内の気体を介して蓄熱体に伝播して蓄熱体を冷却または加熱する熱音響機関に関する。
【背景技術】
【0002】
熱源の熱(排熱)を回収する装置として熱音響機関が知られている。この熱音響機関は、気体を封入した配管(ループ管)にスタックや蓄熱体が設けられている。
さらに、スタックの両端に高温側熱交換器および低温側熱交換器が設けられ、蓄熱体の両端に高温側熱交換器および低温側熱交換器が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この熱音響機関で熱源の熱を回収する際には、スタックに設けた高温側熱交換器を熱源の熱(排熱)で加熱するとともに、スタックに設けた低温側熱交換器を冷却し、蓄熱体の低温側熱交換器を冷却する。
スタックの高温側熱交換器を加熱するとともに低温側熱交換器を冷却することによりスタックに自励的に振動が発生する。
【0004】
スタックに発生した自励的な振動がループ管内の気体を介して蓄熱体側に伝播される。
ここで、蓄熱体の低温側熱交換器が冷却されている。これにより、スタックに発生した自励的な発振が蓄熱体側に伝播されることで高温側熱交換器を加熱して熱源の熱を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−88378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の熱音響機関は配管(ループ管)に1つのスタックが設けられている。このため、熱源の熱(排熱)を1つのスタックで効果的(十分)に音波に変換できないことが考えられる。
【0007】
一方、熱音響機関の熱源として種々の排熱(例えば、エンジンの排熱やボイラーの排熱)を利用することが考えられる。
よって、熱源から熱音響機関に供給(排熱)される熱は一様ではなく、さまざまな温度の熱が熱音響機関に導かれる。
このため、熱源から熱音響機関に伝えられる様々な温度の熱を有効に回収することは難しい。
【0008】
本発明は、熱源から導かれた熱を有効に回収することができる熱音響機関を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ループ管にスタックが設けられるとともに蓄熱体が設けられ、前記スタックに熱が伝えられることにより前記スタックが発振し、前記スタックの振動がループ管内の気体を介して前記蓄熱体に伝播され、前記蓄熱体が冷却または加熱される熱音響機関において、前記ループ管に前記スタックが複数個並列に設けられ、前記複数のスタックのうち各スタックの中心から前記蓄熱体の中心までの回路長さをそれぞれ等しくし、前記複数のスタックのうち各スタックおよび前記蓄熱体を含む各々の音響回路の長さを等しくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、ループ管に複数のスタックを設けた。よって、1つのスタックで音波に変換しきれなかった熱を他のスタックに導いて音波に変換することができる。
また、ループ管に複数のスタックを設けることで、複数種の熱源からスタックに熱を供給する場合、複数種の熱源の熱を各スタックに個別に導いて音波に変換することができる。
【0011】
さらに、複数のスタックのうち、各スタックおよび蓄熱体を含む各々の音響回路の長さを等しく設定した。
さらに、複数のスタックに備えた各スタックの中心から蓄熱体の中心までの回路長さをそれぞれ等しく設定した。
よって、熱源の熱を複数のスタックで音波に変換した際に、各スタックで変換した音波を減衰することなく合成させて蓄熱体に伝播させることができる。これにより、熱源の熱を蓄熱体で有効に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る熱音響機関(実施例1)を示す断面図である。
【図2】図1のループ管を説明する図である。
【図3】図1の蓄熱体に伝播する音波(圧力)について説明するグラフである。
【図4】本発明に係る熱音響機関(実施例2)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る熱音響機関10について説明する。
図1に示すように、熱音響機関10は、無端状に形成されたループ管11と、ループ管11内に収納されて外部から熱が供給される第1、第2の発振体(複数の発振体)12,13と、第1、第2の発振体12,13の振動(音波)がループ管11内の気体14を介して伝播される蓄熱体15とを備えたループ管型熱音響機関である。
【0015】
ループ管11は、ステンレス鋼からなる円形断面の管であり、窒素、ヘリウム、アルゴンやヘリウムおよびアルゴンの混合ガスなどの気体(不活性ガス)14が封入されている。
このループ管11は、略矩形枠状に形成された発振側ループ管21と、発振側ループ管21の両端部21a,21bに連通された蓄熱体側ループ管22とを備えている。
【0016】
発振側ループ管21は、所定間隔をおいて互いに平行に配置された第1、第2の発振側直線管24,25と、第1、第2の発振側直線管24,25の各一端部に連通された第1連結管26と、第1、第2の発振側直線管24,25の各他端部に連通された第2連結管27とを備えている。
【0017】
第1連結管26および第2連結管27は、所定間隔をおいて互いに平行(並列)に配置されている。
この発振側ループ管21は、中心線28を軸にして上下の配管21c,21dが線対称に形成されている。
【0018】
ここで、上配管21cは、第2発振側直線管25、第1連結管26の上半部および第2連結管27の上半部で形成されている。
下配管21dは、第1発振側直線管24、第1連結管26の下半部および第2連結管27の下半部で形成されている。
そして、上下の配管21c,21dは、それぞれの配管長さ寸法が等しく形成されている。
【0019】
第1発振側直線管24に第1発振体12を設け、第2発振側直線管25に第2発振体13を設けることで、第1、第2の発振体12,13が発振側ループ管21に並列に設けられている。
すなわち、第1、第2のスタック(複数のスタック)35,45が発振側ループ管21に並列に設けられている。
【0020】
蓄熱体側ループ管22は、第1発振側直線管24に対して所定間隔をおいて平行に配置された蓄熱体側直線管31と、蓄熱体側直線管31の一端部31aを第1連結管26の略中央に連結する第1L字管32と、蓄熱体側直線管31の他端部31bを第2連結管27の略中央に連結する第2L字管33とを備えている。
【0021】
この蓄熱体側ループ管22は、第1L字管32および第2L字管33が左右対称に形成されている。
第1L字管32は、第1連結管26の略中央に連結する端部32aが中心線28上に位置する。
第2L字管33は、第2連結管27の略中央に連結する端部33aが中心線28上に位置する。
そして、第1L字管32および第2L字管33は、それぞれの配管長さ寸法が等しく形成されている。
【0022】
第1発振体12は、第1発振側直線管24内において他端部24a寄りの第1部位24bに収納されている。
第1発振体12は、第1発振側直線管24内に収納された第1スタック(スタック)35と、第1スタック35の一端(両端の一方)に設けられた第1高温側熱交換器(熱交換器)36と、第1スタック35の他端(両端の他方)に設けられた第1低温側熱交換器(熱交換器)37とを備えている。
【0023】
第1スタック35は、第1発振側直線管24内において他端部24a寄りの第1部位24bに中心(スタックの中心)35aが位置するように設けられている。
この第1スタック35は、第1発振側直線管24内に多数枚の薄板が格子状やハニカム状などに微少間隔で設けられることにより、第1発振側直線管24内に対して平行に多数の微少通路が形成されている。
多数の薄板は、ステンレス鋼やセラミックスで形成された板材である。
【0024】
第1高温側熱交換器36は、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、第1熱源(例えば、内燃機関)41に連結されている。
この第1高温側熱交換器36は、第1熱源41の熱で高温に加熱されている。
【0025】
第1低温側熱交換器37は、第1高温側熱交換器36と同様に、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、冷却水供給源42に連結されている。
この第1低温側熱交換器37は、冷却水供給源42から供給された冷却水の水温で略25℃に冷却されている。
【0026】
第1発振体12は、第1高温側熱交換器36が第1熱源41の熱で高温に加熱されるとともに、第1低温側熱交換器37が冷却水で略25℃に冷却されることで、第1スタック35が発振するものである。
第1スタック35が発振することにより、第1スタック35の振動がループ管11内の気体を介して蓄熱体15に伝播される。
【0027】
第2発振体13は、第1発振体12と同じものである。
すなわち、第2発振体13は、第2発振側直線管25内において他端部25a寄りの第2部位25bに収納されている。
第2発振体13は、第2発振側直線管25内に収納された第2スタック(スタック)45と、第2スタック45の一端(両端の一方)に設けられた第2高温側熱交換器(熱交換器)46と、第2スタック45の他端(両端の一方)に設けられた第2低温側熱交換器(熱交換器)47とを備えている。
【0028】
第2スタック45は、第2発振側直線管25内において他端部25a寄りの第2部位25bに中心(スタックの中心)45aが位置するように設けられている。
この第2スタック45は、第2発振側直線管25内に多数枚の薄板が格子状やハニカム状などに微少間隔で設けられることにより、第2発振側直線管25内に対して平行に多数の微少通路が形成されている。
多数の薄板は、ステンレス鋼やセラミックスで形成された板材である。
【0029】
第2高温側熱交換器46は、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、第2熱源(例えば、内燃機関)43に連結されている。
この第2高温側熱交換器46は、第2熱源43の熱で高温に加熱されている。
【0030】
第2低温側熱交換器47は、第2高温側熱交換器46と同様に、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、冷却水供給源42に連結されている。
この第2低温側熱交換器47は、冷却水供給源42から供給された冷却水の水温で略25℃に冷却されている。
【0031】
第2発振体13は、第2高温側熱交換器46が第2熱源43の熱で高温に加熱されるとともに、第2低温側熱交換器47が冷却水で略25℃に冷却されることで、第2スタック45が発振するものである。
第2スタック45が発振することにより、第2スタック45の振動がループ管11内の気体を介して蓄熱体15に伝播される。
【0032】
ここで、前述したように、第1、第2の発振体12,13は、ループ管11に並列に設けられている。
また、第1発振体12は、第1スタック35の中心35aが第1部位24bに位置している。さらに、第2発振体13は、第2スタック45の中心45aが第2部位25bに位置している。
第1発振側直線管24の第1部位24bおよび第2発振側直線管25の第2部位25bは、第1、第2の発振側直線管24,25の長手方向に直交する同一直線49上に位置する。
【0033】
蓄熱体15は、蓄熱体側直線管31内において一端部31a寄りの部位31cに収納されている。
蓄熱体15は、蓄熱体側直線管31内に収納されたスタック51と、スタック51の一端(両端の一方)に設けられた高温側熱交換器52と、スタック51の他端(両端の他方)に設けられた低温側熱交換器53とを備えている。
【0034】
スタック51は、蓄熱体側直線管31内において一端部31a寄りの部位31cに中心51a(蓄熱体の中心)が位置するように設けられている。
このスタック51は、蓄熱体側直線管31内に多数枚の薄板が格子状やハニカム状などに微少間隔で設けられることにより、蓄熱体側直線管31内に対して平行に多数の微少通路が形成されている。
多数の薄板は、ステンレス鋼やセラミックスで形成された板材である。
【0035】
高温側熱交換器52は、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、貯湯槽55に連結されている。
この貯湯槽55は、第1、第2の発振体12,13から伝播された振動から得た熱を回収する槽である。
【0036】
低温側熱交換器53は、高温側熱交換器52と同様に、多数枚の薄肉金属板が微少間隔で配設されたもので、冷却水供給源42に連結されている。
この低温側熱交換器53は、冷却水供給源42から供給された冷却水の水温で略25℃に冷却されている。
【0037】
蓄熱体15は、低温側熱交換器53が冷却水の水温で略25℃に冷却された状態で、第2発振体13から振動(音波)が伝播されることにより、伝播された振動(音波)に基づいてスタック51が振動して高温側熱交換器52を加熱するものである。
【0038】
図2(a)に示すように、第1スタック35の中心35aからスタック51の中心51aまでの時計回り方向の回路長さがL1aに設定されている。
また、第1スタック35の中心35aからスタック51の中心51aまでの反計回り方向の回路長さがL1bに設定されている。
ここで、回路長さL1aは回路長さL1bに対して略等しく設定されている。すなわち、回路長さL1aおよび回路長さL1bはL1a≒L1bの関係が成立する。
【0039】
図2(b)に示すように、第2スタック45の中心45aからスタック51の中心51aまでの時計回り方向の回路長さがL2aに設定されている。
また、第2スタック45の中心45aからスタック51の中心51aまでの反計回り方向の回路長さがL2bに設定されている。
ここで、回路長さL2aは回路長さL2bに対して略等しく設定されている。すなわち、回路長さL2aおよび回路長さL2bは、L2a≒L2bの関係が成立する。
【0040】
さらに、図2(a)に示す回路長さL1aは、図2(b)に示す回路長さL2aと等しく設定されている。すなわち、回路長さL1aおよび回路長さL2aは、L1a=L2aの関係が成立する。
【0041】
さらに、図2(a),(b)に示すように、第1発振体12および蓄熱体15を含む第1音響回路17の長さ(以下「第1音響回路長さ」という)L1は(L1a+L1b)である。
第1音響回路17は、蓄熱体側ループ管22および発振側ループ管21の下配管21dで構成されている。
【0042】
また、第2発振体13および蓄熱体15を含む第2音響回路18の長さ(以下「第2音響回路長さ」という)L2は(L2a+L2b)である。
第2音響回路18は、蓄熱体側ループ管22および発振側ループ管21の上配管21cで構成されている。
【0043】
第1音響回路長さL1は第2音響回路長さL2と等しく設定されている。
すなわち、第1音響回路長さL1および第2音響回路長さL2は、L1=L2の関係が成立する。
【0044】
つぎに、熱音響機関10の貯湯槽55で第1、第2の熱源41,43の熱を回収する例を図1に基づいて説明する。
第1発振体12の第1高温側熱交換器36を第1熱源41の熱で高温に加熱するとともに、第1発振体12の第1低温側熱交換器37を冷却水供給源42の冷却水で略25℃に冷却する。
これにより、第1発振体12の第1スタック35が発振し、発振した振動(音波)がループ管11内の気体14を介して蓄熱体15に伝播する。
【0045】
また、第2発振体13の第2高温側熱交換器46を第2熱源43の熱で高温に加熱するとともに、第2発振体13の第2低温側熱交換器47を冷却水供給源42の冷却水で略25℃に冷却する。
これにより、第2発振体13の第2スタック45が発振し、発振した振動(音波)がループ管11内の気体14を介して蓄熱体15に伝播する。
【0046】
ここで、蓄熱体15の低温側熱交換器53は冷却水供給源42から供給された冷却水で略25℃に冷却されている。
よって、第1発振体12の第1スタック35や第2発振体13の第2スタック45から伝播された振動(音波)に基づいて蓄熱体15のスタック51が振動する。
蓄熱体15のスタック51が振動することにより、高温側熱交換器52を加熱し、加熱した高温側熱交換器52の熱を貯湯槽55で回収することができる。
【0047】
つぎに、蓄熱体15に伝播する音波(圧力)について図3のグラフに基づいて説明する。図3のグラフにおいて、縦軸はループ管11を伝播する音波の圧力振幅(kPa)を示し、横軸はスタック中心からの距離(mm)を示す。
図3は、ループ管11内の圧力を圧力センサ(図示せず)で測定した結果を示すグラフである。
具体的には、第1発振体12からループ管11に沿って時計回り方向に測定位置を移動しながら圧力センサでループ管11内の圧力を測定する。
【0048】
図3のグラフに示すように、第1発振体12の近傍部位24cで初期ピークP1の圧力が得られることが分かる。
さらに、第1発振体12から回路長さL1aだけ離れた部位31cで最大ピークP2の圧力が得られることが分かる。
【0049】
ここで、第1発振体12の近傍部位24cは、発振側ループ管21の第1発振側直線管24に位置する。第1発振体12の近傍部位24cは、第2発振体13の音波が合成されない部位である。
よって、第1発振体12の近傍部位24cの初期ピークP1は、第1発振体12のみの音波の圧力となるために比較的小さい。
【0050】
これに対して、第1発振体12から回路長さL1aだけ離れた部位31cは、蓄熱体側ループ管22の蓄熱体側直線管31に位置する。
ここで、回路長さL1aおよび回路長さL2a(図2(b)参照)はL1a=L2aの関係が成立している。さらに、第1音響回路長さL1(図2(a)参照)および第2音響回路長さL2(図2(b)参照)はL1=L2の関係が成立している。
【0051】
よって、第1発振体12から回路長さL1aだけ離れた部位31cを、第1、第2の発振体12,13の各音波を減衰することなく合成して活用できる部位とすることができる。
これにより、第1発振体12から回路長さL1aだけ離れた部位31cの最大ピークP2を初期ピークP1と比べて大きく確保できる。
【0052】
以上説明したように、実施例1の熱音響機関10によれば、ループ管11に複数の発振体として第1、第2の発振体12,13を設けた。
よって、複数種の熱源として第1熱源41および第2熱源43を備えた場合、第1熱源41の熱を第1発振体12に導き、かつ、第2熱源43の熱を第2発振体13に導くことができる。
【0053】
これにより、第1熱源41の熱を第1発振体12に導いて音波に変換するとともに、第2熱源43の熱を第2発振体13に導いて音波に変換することができる。
すなわち、第1、第2の熱源41,43の熱を第1、第2の発振体12,13に個別に導いて音波に変換することができる。
【0054】
ここで、回路長さL1aおよび回路長さL2aはL1a=L2aの関係が成立している。さらに、第1音響回路長さL1および第2音響回路長さL2はL1=L2の関係が成立している。
よって、第1、第2の熱源41,43の熱を第1、第2の発振体12,13で音波に変換した際に、第1、第2の発振体12,13で変換した音波を減衰することなく合成させて蓄熱体15に伝播させることができる。
これにより、第1、第2の熱源41,43の熱を蓄熱体15(熱音響機関10)で有効に回収することができる。
【0055】
つぎに、実施例2に係る熱音響機関60を図4に基づいて説明する。
なお、実施例2の熱音響機関60において実施例1の熱音響機関10と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
図4に示すように、熱音響機関60は、実施例1の第1熱源41および第2熱源43(すなわち、二つの熱源)に代えて1つの熱源(例えば、内燃機関)62を設けたもので、その他の構成は実施例1の熱音響機関10と同様である。
【0057】
熱源62は、第1高温側熱交換器36に連結されるとともに、第2高温側熱交換器46に連結されている。
第1高温側熱交換器36は、熱源62の熱で高温に加熱されている。
さらに、第2高温側熱交換器46は、熱源62の熱で高温に加熱されている。
【0058】
以上説明したように、実施例2の熱音響機関60によれば、ループ管11に複数の発振体として第1、第2の発振体12,13を設けた。そして、熱源62の熱を第1発振体12および第2発振体13に導くようにした。
【0059】
よって、熱源62の熱を1つの発振体(例えば、第1発振体)12で音波に変換しきれない場合に、音波に変換しきれない熱を他の発振体(例えば、第2発振体)13に導いて音波に変換することができる。
これにより、熱源62の熱を第1、第2の発振体12,13に導くことにより、効率よく音波に変換することができる。
【0060】
ここで、回路長さL1aおよび回路長さL2aはL1a=L2aの関係が成立している。さらに、第1音響回路長さL1および第2音響回路長さL2はL1=L2の関係が成立している。
よって、熱源62の熱を第1、第2の発振体12,13で音波に変換した際に、第1、第2の発振体12,13で変換した音波を減衰することなく合成させて蓄熱体15に伝播させることができる。
これにより、実施例2の熱音響機関60によれば、実施例1と同様に、熱源62の熱を蓄熱体15(熱音響機関60)で有効に回収することができる。
【0061】
なお、本発明に係る熱音響機関10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1,2では、ループ管11に複数の発振体として第1、第2のスタック35,45を二つ設けた例について説明したが、これに限らないで、複数のスタックの個数は適宜選択することができる。
【0062】
また、前記実施例1,2で示した熱音響機関10,60、ループ管11、第1、第2の発振体12,13、蓄熱体15、第1スタック35および第2スタック45などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、スタックの振動をループ管内の気体を介して蓄熱体に伝播し、伝播した振動で蓄熱体を冷却または加熱する熱音響機関への適用に好適である。
【符号の説明】
【0064】
10,60…熱音響機関、11…ループ管、14…気体、12,13…第1、第2の発振体、15…蓄熱体、35…第1スタック(スタック)、35a…第1スタックの中心(スタックの中心)、45…第2スタック(スタック)、45a…第2スタックの中心(スタックの中心)、51a…スタックの中心(蓄熱体の中心)、L1…第1発振体および蓄熱体を含む第1音響回路の長さ(音響回路の長さ)、L1a…第1スタックの中心からスタックの中心までの時計回り方向の回路長さ、L2…第2発振体および蓄熱体を含む第2音響回路の長さ(音響回路の長さ)、L2a…第2スタックの中心からスタックの中心までの時計回り方向の回路長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ管にスタックが設けられるとともに蓄熱体が設けられ、前記スタックに熱が伝えられることにより前記スタックが発振し、前記スタックの振動がループ管内の気体を介して前記蓄熱体に伝播され、前記蓄熱体が冷却または加熱される熱音響機関において、
前記ループ管に前記スタックが複数個並列に設けられ、
前記複数のスタックのうち各スタックの中心から前記蓄熱体の中心までの回路長さをそれぞれ等しくし、
前記複数のスタックのうち各スタックおよび前記蓄熱体を含む各々の音響回路の長さを等しくしたことを特徴とする熱音響機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231940(P2011−231940A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99823(P2010−99823)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)