説明

熱音響装置用スタックおよび熱音響装置用スタックの製造方法

【課題】小型化に伴ってより高い周波数でも低温度差で自励振動できる熱音響装置用スタックおよび熱音響装置用スタックの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔301aが形成されたスタック3は、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管301を稠密に配設することにより形成される。これにより、スタック3の長さを短くしても温度勾配をスケーリング(比例縮小)することが可能となるので、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。結果として、小型化に伴って必要となるより高い周波数での自励振動を温度差が低い場合にも実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響効果を用いて管内の流体に温度勾配を与えて振動させたり、流体に与えた振動から温度勾配を得る熱音響装置に用いる熱音響装置用スタックおよび熱音響装置用スタックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細い流路の中にある作業流体に対して、ある臨界値以上の温度勾配を与えると、流路の壁と作業流体との熱交換によって「熱音響自励振動」と呼ばれる振動現象が現れることが知られている。このような熱音響現象は、作業流体に温度勾配を与えて熱から流体振動(音波)を行う熱音響原動機(熱音響エンジン)や、流体振動(音波)から温度勾配を生じさせる熱音響ヒートポンプといった熱音響装置に利用されている。また、この熱音響装置を基本要素として、熱音響原動機により生ずる音波を、すなわち機械的振動から電力へとエネルギー変換を行う熱音響発電機や、流体振動(音波)によって生じた温度勾配を介して加熱または冷却するというエネルギー変換を行う熱音響冷却装置について、現在盛んに研究開発がされている(例えば、非特許文献1,2参照。)。
【0003】
例えば、非特許文献1には、熱音響自励振動を利用した装置として、熱音響エンジンが開示されている。図10に示す熱音響エンジン100は、作業流体110を封入した管101と、この管101内部に設けられ小さな流路を有するスタック(蓄熱器)102と、管101内部においてスタック102をその管101の軸線方向の両側から挟むように設けられ、スタック102に温度勾配を与える高温側熱交換器103および低温側熱交換器104とを備えている。また、管101外部において、高温側熱交換器103の側には高温熱源105、低温側熱交換器104の側には低温熱源106が設けられている。このように、図10に示す熱音響エンジン100は、ガソリンエンジンなどに用いられるピストンやバルブなどの可動部品を有しておらず、管101内部に封入された作業流体110のみが動くものである。
【0004】
ここで、スタック102は、上述した流路となる管101の軸線方向に沿った多数の貫通孔102aを備えており、この貫通孔102a内部に流入した作業流体110と、その壁面102bと間で熱交換を行うことにより、蓄熱器、蓄冷器、再生器などとして機能する。このように、スタック102の役割は、作業流体110と熱的相互作用を行う壁面102bを提供することにあって、熱と振動のエネルギー変換はそのスタック102内部で行われる。そのエネルギー変換の効率を向上させるには、壁面102bを多く形成すればよいので、貫通孔102aの直径は後述するように1[mm]以下という小さな値に設定されている。このため、熱音響現象を用いた装置のスタックには、金網や金属製不織布などの金属製メッシュを積層させたものや貫通孔がハニカム状に形成されたセラミックスなどがよく用いられている。
【0005】
このような構造を有する熱音響エンジンは、管101の形状が異なる3種類の方式が提案されている。すなわち、図11Aに示すように、直線状の管の中に熱音響自励振動によって発生する定在波音波を利用する直管方式と、図11Bに示すように、ループ状の管の中に熱音響自励振動によって発生する進行波音波を利用するループ管方式と、図11Cに示すように、直線状とループ状の管を組み合わせた枝管付きループ管方式とが提案されている。これらのうち、図11Bに示すループ管方式は、熱から流体振動への変換効率が熱力学的な上限値(理想的なカルノー効率)に近いことが理論的に示されている。一方、図11Aに示す直管方式では、音圧と粒子速度とが位相差π/2だけずれた定在波が生じるため、不可逆的な熱交換による時間遅れが生じて波動によるエネルギー輸送量が非常に小さいので、熱から音波への変換効率が熱力学的な上限値と比べて低いとされている。
【0006】
上述した熱音響装置の応用分野として、工場からの排熱や自動車のエンジンからの排熱などの回収利用が挙げられているが、大規模設備を集約できる工場や発電所などからの排熱を回収するプラントでの応用を除けば、装置自体ができる限り小型であることが望ましい。また、排熱を熱源とするので、その排熱温度が比較的高温ではないことが多いので、できる限り低い温度の熱源で熱音響自励振動が起こることが望ましい。なお、低温熱源(ヒートシンク)の温度は、環境温度、すなわち室温を想定している。
【0007】
図11Bに示すようなループ管方式の場合、熱から音響への変換効率が高いものの、ループ状の管内を最低一波長分の長さの音波が進行しなければならないので、装置が大型になりやすい。例えば、ループ状の管の音響回路長をLとすると、1気圧、25[℃]前後での音速cが約340[m/sec]であるので、振動周波数νが100[Hz]程度の音波の場合、その進行波の波長λtは3.4[m]程度となる(例えば、非特許文献3参照。)。ループ状の管は最低一波長分の長さを必要とするので、必然的に管長が3.4[m]程度の大きな装置とならざるを得ない。そこで、振動周波数νを5倍の500[Hz]とすると、長さ68[cm]程度のループ管(L=λt=c/ν=34000[cm/sec]÷500[Hz]=68[cm])となり、30[cm]の直線状の管2本と4[cm]の半円状の管2本から構成されたやや小型の装置とすることができる。このように、管路長Lは熱音響装置の占有体積に影響を及ぼすので、管路長Lを短縮することにより熱音響装置の小型化の実現が可能となる。
【0008】
一方、図11Aに示すような直管方式の場合には、熱から音響への変換効率がループ管の理想効率には至らないものの、直管であるがゆえに小型化を容易に実現できる。これは、片側が閉ざされた直管内に励起される気柱共鳴定在波の波長λsが、管路長の4倍となるからである(λs=4L)。したがって、直管方式の場合には、大きさと占有面積のいずれも小さくすることが可能である。
【0009】
ところが、ループ管方式および直管方式のいずれの場合も、小型化しようとすればするほど、管路長Lを短縮しなければならないので、必然的に直管内またはループ管内に自励する音波(音響振動)の波長が短くなるため、高周波の定在波または進行波を励起しなければならない。作業流体110によって励起される音響振動が、管路長に応じた周波数からなる定在波または進行波を含むからである。したがって、作業流体110と貫通孔102aの壁面102bとの間のエネルギー交換を担うスタック102において、貫通孔102aの半径rで定まる熱緩和時間τ[sec]と、管路の長さL[m]とから定まる自励振動角周波数ω[rad/sec](=2πν[Hz])との関係が重要となる。すなわち、作業流体110と壁面102bとの間で熱交換が行われるには、作業流体110の熱伝導率κ[W/m・K]、密度ρ[kg/m3]および定圧比熱cp[kJ/kg・K]により定まる熱拡散係数α(=κ/ρcp)[m2/sec]、並びに、貫通孔102aの流路半径rから決まる熱緩和時間τ= r2/(2α)[sec]程度の相互作用時間が必要となる。振動角周波数ωが高く、ωτ≫1となる場合、壁面102bと作業流体110との熱交換はほとんど行われず、断熱過程となるので、貫通孔102a内を断熱音波が伝搬することとなる。一方、振動角周波数ωが低く、ωτ≪1となる場合、壁面102bと作業流体110との間で熱交換が十分に行われ、等温過程となる。非特許文献1によれば、熱音響自励振動が効率よく起こるのは、そのωτの値がほぼ1〜10の間にあるときである。非特許文献2に開示された熱音響理論によれば、図12A、図12Bに示すように、自励開始温度とωτとの関係は、最小値を有することが示されている。図12Aでは、自励開始温度を、高温熱源の絶対温度THと低温熱源の絶対温度TCとの温度比(TH/TC)により、またωτの代わりにその平方根を取ったr/δαによって示している。これは、下式(1)に基づくものである。なお、下式(1)において、δαは音波を担う作業流体110の熱境界層厚さを表している。
【0010】
ωτ=ω・(r2/2α)={r/(2α/ω)1/22=(r/δα2 ・・・(1)
【0011】
この式(1)からすると、熱音響自励振動により共鳴する管101の管路長(L=ループ管内の進行波の波長λt、または、4L=直管内の定在波の波長λs)から定まるω(=2πν=2πc/λ)に対して、自励開始温度比(TH/TC)が最小となる最適のωτの値があることがわかる。上述したように、管路長Lが短くなれば、ωが大きくなり、これに伴ってτが小さくなるので、スタック102の貫通孔102aの半径rも小さくなければならない。非特許文献2によれば、図12A,図12Bは管の長さLが30[mm]、管の径が10[mm]、スタックの長さが3[mm]であり、貫通孔102aの半径rを計算で求める設計パラメータとしたときの値を示している。また、作業流体110は大気圧(101[kPa])の窒素(ほぼ空気と同じ)とされ、低温熱源の温度TCが300[K](ほぼ室温の27℃)の場合を想定したものである。図12Aによれば、上記条件で計算された熱音響装置において自励開始温度が最も低くなるのは、r/δαが3程度のときである。このとき、この直管方式の熱音響装置内に定在波音波が励起され、定在波音波によるエネルギー変換がωτ=(r/δα2=1〜10で行われていることを意味している。この場合の最低自励開始温度比は1.4、高温熱源の温度THはおおよそ150℃=420[K]となり、自励振動の周波数は図12Bより3[kHz]となる。この周波数での熱境界層厚δαは0.048[mm]となり、r/δαの値が3の場合の条件を用いると、最適な貫通孔102aの直径が約0.144[mm]となる。これは極めて小さな値である。
【0012】
これらを踏まえた上で熱音響装置の小型化について検討すると、小型化することにより自励振動周波数が高周波になるので、ωτの値を1〜10程度に保つには、対応する熱緩和時間τを短くする必要がある。ところが、作業流体110の比熱、熱伝導率、密度といった熱物性値がさほど大きく変動しないので、τを短くするにはスタックの貫通孔102aの半径rを小さくしなければならない。そこで、想定しうる作業流体110と、この作業流体110に対応する熱境界層の厚さの概算値の関係を図13に示す。この図13は、1気圧の大気(空気)を作業流体とする構成であって、例えば自励振動周波数ωを400[Hz]と仮定した場合、波長λsが約85[cm]、管101の片側を閉じた直管の場合にはλs=4Lなので、管101の長さLは約21.3[cm]となるので、貫通孔102aの直径は0.789[mm]程度となる。このように、小型の熱音響装置を実現するには、直径1[mm]以下の貫通孔102aを多数備えたスタック102を設けなければならない。
【0013】
また、熱音響自励振動は、高温(温度TH)側熱交換器103と低温(温度TC)側熱交換器104との間に挟まれた長さLsのスタック102における温度勾配ΔT{=(TH−TC)/Ls}がある臨界値(ΔT)critを越えた際に起こることが知られている。したがって、ΔT > (ΔT)critを満足するように温度スケーリングを行うことによって、すなわち、スタックの長さLsを短くすることで、高温側熱交換器102の温度THをより低い温度へとスケールできると考えられる。
【0014】
実際、図14はスタックの長さと自励開始温度比の関係を示すものであるが、この図14に示すように、スタック102の長さLsを短くすることによって、自励開始温度比(TH/TC)を低下させることがある程度まで可能である。しかし、スタック長Lsをあまりにも短くすると、スタック102を構成する貫通孔102aとその支持部材(外周部)のうち、支持部材による直接熱伝導が高温側から低温側への熱流の大半を占有するようになり、熱から音響振動へのエネルギー変換が行われなくなる。すなわち、スタック102は作業流体110の動径方向(作業流体の流通方向に対して垂直な方向)には無限の熱伝導を有して一様温度になることが望まれるが、その流通方向である軸方向に対しては、定常的に線形な温度勾配が形成可能な程度に高い熱抵抗、すなわち熱絶縁性を備えている必要がある。
【0015】
上述した事項を踏まえると、小型かつ低温度で自励振動可能とする熱音響装置に必要とされるスタックが備えるべき諸性質が明らかとなる。すなわち、(1)直径が1[mm]以下の小さな貫通孔102aを多数備えていること、(2)作業流体110が振動する振動方向(貫通孔の軸方向)には温度勾配が生じるようにある程度熱伝導率が低いこと、(3)振動方向に直交するスタックの動径方向には熱交換がスムーズに行われるように、ある程度熱伝導性がよいことが挙げられる。
【0016】
このような性質を備えるべきスタック102として、従来では、上述したように、アルミニウム、アルミニウム合金、セラミックス等の伝熱体で形成された複数のプレートを軸方向に積層させたスタックや、セラミックス、焼結金属、金網、金属製不織布などのように熱容量の大きい素材からなり、軸方向に貫通する複数の貫通孔を備えたスタック、あるいは、微小の球状セラミックスなどを敷き詰めて貫通孔として作用する蛇行した導通路を形成するスタック、ハニカム形状のセラミックス、脱脂綿などの繊維材料を圧縮させ、これによって蛇行した導通路を形成したスタックなどが提案されている。一般に、高温側熱交換器の温度が700から800℃まで到達する場合には、スタックを構成する材料には耐熱性が要求される。このような温度範囲では、SUS304などの金属材料やコージライトなどのセラミックス材料が用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】上田 祐樹、「熱音響発電機」、電気学会誌、Vol. 128、No. 12、pp. 812-815、 (2008).
【非特許文献2】上田 祐樹、「熱音響発電−熱音響現象の基礎−」、桑野博喜監修、「エネルギーハーベスティング技術の最新動向」(シーエムシー出版、2010年)、pp. 171-183 に所蔵。
【非特許文献3】坂本眞一、渡辺好章、「音と熱のコラボレーション−熱音響冷凍機実現に向けて−」、電子情報通信学会誌、Vol. 90, No. 11, pp. 993-337 (2007年11月)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、これまでに提案されているスタックでは、小型かつ低温度で自励振動可能な熱音響装置を実現することが困難であった。
【0019】
例えば、金属やセラミックス等の伝熱体のプレートを管の軸に略平行に複数積層するスタックの場合は、プレートの間に平面状壁の非常に狭い隙間を形成でき、軸方向に垂直な2つの方向のうち一方の方向(積層方向)には熱交換のための壁面を設けることができる。ところが、他方の方向では、熱交換を行うための壁面がないので、熱エネルギーから振動エネルギーへのエネルギー変換を行うことができない。また、金属プレートを用いた場合には、積層方向、すなわち軸方向の熱伝導率が高いので、スタックの長さLsを短くすることができない。
【0020】
また、金網や焼結金属などを積層したスタックの場合は、作業流体と熱交換を行う表面積を大きくすることができ、スタック中で熱交換する流体の経路も長くできる。特に金網の場合、個々の金網に関しては、単位面積当りの網目数を指定することも可能である。ところが、最終的に形成された貫通孔の径を明確に設定することができず、最適な直径の貫通孔を設けることが困難である。
【0021】
また、ハニカム形状のセラミックスを用いたスタックの場合は、例えば正方格子状など所定の断面形状の貫通孔を形成でき、かつ、その直径を1[mm]以下とすることが可能である。さらに、材料として用いられているコージライトは、熱伝導率が4[W/m・K]程度の値を有しているために自励開始温度を低温化できるので、金属などの伝熱体をスタック材料にする場合よりもスタックの長さLsを短くすることも可能である。ところが、一般に射出成型により多孔が形成されているので、貫通孔を高密度に形成することが困難である。具体的には、セル密度900[cpsi(cell per square inchi)]のもの(正方格子の一辺が約0.79[mm])が最小孔径であって、例えば1200[cpsi](正方格子の一辺が約0.72[mm])といったさらに高密度に貫通孔を形成することが困難である。また、射出成形により多孔を形成する場合、射出の際に高温で押し出された素材が成型用口金の孔内で密着して、目詰まりする可能性が高いので、製造が困難である。
【0022】
なお、熱音響装置が大型で、励起される自励振動音波の波長が長い場合には、その振動数も50〜100[Hz]の低周波帯域であるので、スタックとして効率的な貫通孔の直径は1[mm]〜5[mm]となる。この程度の直径の貫通孔であれば、金属ブロックに窄孔加工したり、セラミックスを射出成型したり、銅などの金属パイプを束ねるなどして、スタックを容易に形成できる。例えば、波長が3.4[m]、周波数100[Hz]程度の熱音響装置のスタックには、メッシュ間隔1[mm]程度の金属のメッシュやセル間隔が0.79[mm]程度のハニカム形状が用いられている。ところが、高周波の自励振動を起こすには、さらに小さな直径でかつ多数の貫通孔を備えたスタックを用意する必要がある。すなわち、熱音響装置の小型化に伴って、作業流体を1気圧の空気(あるいは窒素)とする場合、励起されるべき自励振動周波数が100[Hz](ループ管なら3.4[m]、直管なら85[cm])、500[Hz](ループ管なら68[cm]、直管なら17[cm])、1[kHz] (ループ管なら34[cm]、直管なら8.5[cm])と高周波化する。これに伴って、スタックに設けられる貫通孔に要求される孔径(直径)も、1.55[mm]、0.70[mm]、0.49[mm]と小さくなり、しかも同一断面積に孔径の逆2乗に比例した数だけ設ける必要が生じる。
【0023】
そこで、本願発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、小型化に伴ってより高い周波数でも低温度差で自励振動できる熱音響装置用スタックおよび熱音響装置用スタックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る熱音響装置用スタックは、一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、作業流体の熱音響自励振動によって貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックであって、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管が稠密に配設された構造体を備え、複数の細管は、複数の貫通孔を構成することを特徴とするものである。
【0025】
上記熱音響装置用スタックにおいて、細管は、ポリイミドおよびガラスの一方から構成されるようにしてもよい。
【0026】
また、上記熱音響装置用スタックにおいて、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなり、構造体の周囲に形成された外周部をさらに備え、この外周部は、貫通孔の軸線方向に垂直な方向における断面積が、当該垂直な方向における構造体および外周部の断面積の合計の10%以下であるようにしてもよい。
【0027】
また、上記熱音響装置用スタックにおいて、貫通孔は、正六角形、正三角形、正方形、および、長方形のうち何れか1つの断面形状を有するようにしてもよい。
【0028】
また、本発明に係る熱音響装置用スタックの製造方法は、一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、作業流体の熱音響自励振動によって貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に束ねた第1の構造体を形成する第1のステップと、第1の構造体を、管の内部形状に対応した内部空間を有する収納容器の内部に収容し、内部空間に溶融した熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料を流し込んで固化させる第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明に係る他の熱音響装置用スタックの製造方法は、一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、作業流体の熱音響自励振動によって貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に束ねた第1の構造体を形成する第1のステップと、第1の構造体を、紫外線を透過させる材料からなり、管の内部形状に対応した内部空間を有する収納容器の内部に収容し、内部空間に紫外線硬化樹脂を流し込む第2のステップと、収納容器に紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を固化させる第3のステップとを有することを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明に係る他の熱音響装置用スタックの製造方法は、一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、作業流体の熱音響自励振動によって貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に束ねた第1の構造体を形成する第1のステップと、第1の構造体を加熱して冷却することにより、隣接する細管同士を溶着させる第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明に係る他の熱音響装置用スタックの製造方法は、一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、作業流体の熱音響自励振動によって貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に束ねた第1の構造体を形成する第1のステップと、第1の構造体を加熱して冷却することにより、隣接する細管同士を溶着させた第2の構造体を形成する第2のステップと、細管の軸線方向における第2の構造体の一端を加熱し、当該一端を引っ張った後冷却することにより、第2の構造体を軸線方向に延伸させる第3のステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管が稠密に配設することにより、スタックの長さを短くしても温度勾配をスケーリング(比例縮小)することが可能となるので、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。結果として、小型化に伴って必要となるより高い周波数での自励振動を温度差が低い場合にも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る熱音響エンジンの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、熱音響エンジンにおけるスタックの構成を模式的に示す斜視図である。
【図3A】図3Aは、本実施の形態に係る熱音響エンジンにおけるスタックを流れる熱流を説明する図である。
【図3B】図3Bは、参考例のスタックを流れる熱流を説明する図である。
【図4】図4は、熱伝導がよい材料と悪い材料とを用いた際のωτと自励開始温度比との関係を示す図である。
【図5】図5は、スタックの構成材料とその物性値を示す図である。
【図6A】図6Aは、本発明の第1の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、本発明の第1の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図6C】図6Cは、本発明の第1の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第2の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、本発明の第2の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図7C】図7Cは、本発明の第2の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図7D】図7Dは、本発明の第2の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図8A】図8Aは、本発明の第3の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図8B】図8Bは、本発明の第3の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図8C】図8Cは、本発明の第3の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図9A】図9Aは、本発明の第4の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図9B】図9Bは、本発明の第4の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図9C】図9Cは、本発明の第4の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図9D】図9Dは、本発明の第4の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図9E】図9Eは、本発明の第4の実施の形態に係るスタックの製造方法を説明するための図である。
【図10】図10は、従来の熱音響エンジンの構成を模式的に示す断面図である。
【図11A】図11Aは、直管方式の熱音響エンジンを模式的に示す図である。
【図11B】図11Bは、ループ方式の熱音響エンジンを模式的に示す図である。
【図11C】図11Cは、枝管付きループ方式の熱音響エンジンを模式的に示す図である。
【図12A】図12Aは、自励開始温度比とωτとの関係を示す図である。
【図12B】図12Bは、自励開始周波数とωτとの関係を示す図である。
【図13】図13は、作業流体と熱境界層厚との関係を示す図である。
【図14】図14は、自励開始温度比とスタックの長さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、「スタック」とは、一般的には複数の部材を積層したものを指すが、本明細書においては、1つの部材から経営された熱音響装置用のエネルギー変換部材も「スタック」と呼ぶこととする。
【0035】
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係る第1の実施の形態について説明する。
【0036】
<熱音響エンジンの構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る熱音響装置用スタックを備えた熱音響エンジン1は、作業流体10を封入した管2と、この管2内部に設けられたスタック3と、管2内部においてスタック3をその管2の軸線方向の両側から挟むように設けられスタック3に温度勾配を与える高温側熱交換器4および低温側熱交換器5とを備えている。また、管2外部において、高温側熱交換器4の側には高温熱源6、低温側熱交換器5の側には低温熱源7が設けられている。このような熱音響エンジン1は、管1内に封入された作業流体10と、高温側熱交換器4から低温側熱交換器5へと流れる熱エネルギーの間で、エネルギー交換を行うものである。
【0037】
図2に示すように、スタック3は、例えばガラスやポリイミドなど熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなり、円筒状の管2の内部形状に対応した円柱の形状を有するものである。このようなスタック3は、多数の細管301が稠密に配設されることにより構成された略円筒状の中央部3aと、この中央部3aの周囲に位置する円筒状の外周部3bとから構成される。
【0038】
中央部3aは、スタック3の中心軸が含まれる位置に配置されており、軸線がその中心軸方向に沿った多数の細管301が稠密に配設されることにより形成される。各細管301は、例えばガラスやポリイミドなど熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなり、貫通孔301aを備えている。この貫通孔301aの孔径は、管2の長さ(共鳴周波数ω)と熱緩和時間τ(=r2/α、rは孔径、αは作業流体の物性値)がτω=1〜10となるように設定されている。また、貫通孔301aの間隔は、できるだけ稠密に形成するのが望ましい。これは、スタック3の空隙率が高いほど、熱と振動のエネルギー変換効率が向上するからである。具体的には、その間隔は0.15mm以下であるのが望ましい。そこで、そのような貫通孔301aを有する細管301が稠密に配設されることにより、スタック3には、多数の微細な貫通孔が狭いピッチで稠密に形成されることとなる。
【0039】
外周部3bは、例えばガラスやポリイミドなど熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなり、軸方向に対して垂直な方向の断面の面積が、貫通孔301aを含むスタック3のその垂直な方向の断面の総面積の10%以下とされる。
このようなスタック3は、貫通孔301aの延在方向が管2の軸線方向に沿った状態で、管2内部に配設されている。
【0040】
ここで、外周部3bの断面の面積をスタック3の断面の総面積の10%以下とする理由について、図3A、図3Bを参照して説明する。図3Aは、断面の総面積に対する外周部3bの面積が10%以下である、本実施の形態におけるスタック3を流れる熱流を示す図、図3Bは、比較例であって、断面の総面積に対する外周部900bの面積が20%を超えるスタック900を流れる熱流を示す図である。なお、図3A,図3Bにおいて、スタック3およびスタック900の断面積は4.4[cm2]、スタック3の外周部3bの面積は0.4[cm2]、スタック900の外周部900bの面積は0.9[cm2]である。
【0041】
図3Bに示す外周部900bの断面積の割合が20%を超えるスタック900の場合、高温側から低温側にスタック900中を流れる熱流は、点線矢印b、cで示すように、主に貫通孔901が形成されていない外周部900bを流れる。これは、空隙率εで貫通孔901が形成された中央部900aには、高い熱伝導率κ1を有するスタック900の材料と極めて低い熱伝導率κ2を有する作業流体10が占有する領域が共存しており、この領域の平均熱伝導率<κ>av、が下式(2)で表されるように、貫通孔901が形成されていない外周部900bの熱伝導率κ1よりも小さくなるからである。すなわち、高温側熱交換器4から低温側熱交換器5へ流れる熱流のうち、大半が外周部900bを直接流れて貫通熱となるので、作業流体との貫通孔の壁面を介する熱交換が十分に行われず、熱エネルギーから作業流体の振動エネルギーへのエネルギー変換の観点からすると、熱損失が大きくなってしまう。
【0042】
<κ>av=(1−ε)κ1+εκ2 ・・・(2)
【0043】
一方、図3Aに示す外周部3bの断面積の割合が10%以下のスタック3の場合、そのスタック3を流れる熱流は、点線矢印aで示すように、外周部3bから漏れ出る量が少なく、その外周部3bと中央部3aとで均等な量となる。
【0044】
このように、スタックにおける外周部は、その面積が小さいければ小さいほど望ましい。ところが、従来では、製造過程においてスタックをハンドリングする際に破損してしまう場合があり、外周部の面積を小さくすることが困難であった。そこで、本発明では、後述する製造方法によってスタック3を製造することとした。これにより、外周部3bの断面積の割合を10%以下(0%を含む)とできるので、スタック3を流れる熱流は、外周部3bから漏れ出る量が少なくなり、その外周部3bと中央部3aとで均等な量となる。
【0045】
次に、スタック3の構成材料を熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料とする理由について、図4を参照して説明する。この図4は、貫通孔301aの孔径を異ならせたスタック3に熱伝導がよい材料と悪い材料とを用いた際のωτ(横軸)と自励開始温度比TH/TC(縦軸)との関係を示す図である。
【0046】
図4において点線で示す熱伝導がよい材料の場合、および、実線で示す熱伝導が悪い場合のいずれにおいても、貫通孔301aの孔径の縮小(τの減少)に伴って、自励開始温度比が低下している。これは、図12Aに示した理論的予測が示す傾向に一致している。また、貫通孔301aの孔径が同一の場合、熱伝導が悪い材料の方が自励開始温度比が低下していることがわかる。すなわち、熱伝導率が低い材料をスタック3の構成材料として用いることにより、全体的に自励開始温度比をさらに低下できることがわかる。
【0047】
そこで、本発明では、後述する製造方法によりスタック3を生成する。これにより、後述するように従来では微細な貫通孔を稠密に形成できなかった、ガラスやポリイミドなどの熱伝導率が数[W/m・K]という熱伝導率が低い材料により、微細な貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3を製造することができる。このように、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない熱伝導率を有する材料を用いるので、その材料として金属等を用いた場合と比較して、1,2桁ほど熱伝導率を小さくすることができる。これにより、スタック3の長さをより短くすることができる。上述したように、熱音響自励振動は、高温(温度TH)側熱交換器4と低温(温度TC)側熱交換器5との間に挟まれた長さLsのスタック3における温度勾配ΔT{=(TH−TC)/Ls}がある臨界値(ΔT)critを越えた際に起こるので、ΔT > (ΔT)critを満足するように温度スケーリングを行うことによって、さらに高温側熱交換器4の温度THをより低い温度にすることができる。
【0048】
<スタックの製造方法>
次に、本実施の形態に係るスタック3の製造方法について説明する。
【0049】
まず、スタック3の材料としては、ガラスやポリイミドなど、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない熱容量の大きな材料を用いる。図5に示すように、非特許文献3に記載されているハニセラムなどのセラミックス材料(コージライト)と比較して、ガラスの熱伝導率は約4分の1小さく、さらにポリイミドの熱伝導率は約13分の1である。
【0050】
しかしながら、ガラスやポリイミド等に多数の貫通孔を稠密に開孔することは困難であった。例えば、特定波長の光を吸収するガラスにレーザビームを照射して、その部分に貫通孔を形成する技術が存在するが、このようなレーザ加工法では、一つの貫通孔と隣接する貫通孔との間を充分離す必要がある。これは、レーザ加工によって生じる熱により、隣接する貫通孔間を隔てるガラス壁が溶融して変形してしまうためである。このため、従来のレーザ加工法では、多数の貫通孔を稠密に形成することができなかった。
【0051】
そこで、本実施の形態では、図6A〜図6Cに示すように、多数の細管301を束ねた後、管2に内接するように細管301の束の周囲を熱伝導率の低い材料で覆い、この端面を切削または研磨することで、設計した孔径の貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3を作成する。この詳細について以下に説明する。
【0052】
初めに、図6Aに示すように、細管301を多数用意する。本実施の形態において、細管301は、ガラスからなり、外径が0.9[mm]、内径が0.6[mm]、軸方向の長さが30[mm]の円筒形の細管を用意した。
【0053】
このような多数の細管301を軸線が互いに平行とした状態で、糸などにより稠密に束ねた構造体302を形成した後、図6Bに示すように、その構造体302を収納容器303の内部に収容する。ここで、収納容器303は、両端が閉鎖された円柱の形状を有し、径方向の断面が管2と同等の円柱状の内部空間を備えている。このような収納容器303には、収納容器303の軸線と各細管301の軸線とを平行とした状態で構造体302が収容される。
【0054】
なお、本実施の形態では、糸などによって多数の細管301を稠密に束ねた構造体302を形成する場合を例に説明するが、構造体302を形成せずに、細管301を直接収納容器303内部に配設するようにしてもよい。この場合には、できる限り多くの細管301を、収納容器303内部に稠密に配設すればよい。
【0055】
構造体302を収納容器303内に収納させると、例えば溶融ガラスなど、細管301を構成するガラスよりも融点の低いガラス304を、流動化させた上で収納容器303内に流し込む。これにより、細管301の束の周囲や隙間に、ガラス304が充填されることとなる。
【0056】
収納容器303内に流し込まれたガラス304が固化した後、このガラス304および多数の細管301からなる構造体を収納容器303から取り出し、軸方向に対して垂直な方向の両端面を切削または研磨することにより、各細管301の孔が露出した状態とするとともに、軸線方向の長さを所定の長さとする。これにより、図6Cに示すように、ガラスから構成され、微細な貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3が形成される。
【0057】
これにより、設計通りの微細な孔径を有する貫通孔301aが稠密に形成された中央部3aと、設計通りの面積を有する外周部3bとを備えたスタック3を生成することができる。このようなスタック3を生成することにより、高温熱源から低温熱源へと流れる熱流が、中央部3aと外周部3bとで均等に流れるので、その熱流が外周部3bを貫通熱として直接伝わって、熱エネルギーから作業流体10の振動エネルギーへの変換に対して熱損失となるのを防ぐことができる。結果として、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管301を稠密に配設することにより、スタック3の長さを短くしても温度勾配をスケーリング(比例縮小)することが可能となるので、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。結果として、小型化に伴って必要となるより高い周波数での自励振動を温度差が低い場合にも実現することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、細管301がガラスから構成され、細管301の隙間や周辺部3bを構成するガラス304が細管301のガラスよりも融点が低いガラスから構成される場合を例に説明したが、それらを同一の材料で構成したり、ガラスとガラス以外の材料となど異なる材料から構成したりするようにしてもよい。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と、スタックの製造方法が異なるものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0061】
図5に示すように、非特許文献3に記載されているハニセラムなどのセラミックス材料(コージライト)と比較して、有機物の熱伝導率は約10分の1である。したがって、有機物をスタック3の構成材料として用いることが考えられる。
【0062】
しかしながら、有機物に多数の貫通孔を稠密に開孔ことは困難であった。例えば、有機系高分子にアスペクト比の高い貫通細孔を形成する場合、金属ドリルなどを用いて切削する方法があるが、一般的に有機系高分子は無機材料と比べて機械的性質が劣るために、貫通孔を稠密に形成しようとすると、貫通孔と貫通孔とを隔てる壁が貫通孔形成時に破壊されてしまう。このため、従来の切削加工法では、多数の貫通孔を稠密に形成することができなかった。
【0063】
そこで、本実施の形態では、図7A〜図7Dに示すように、有機系高分子材料からなる多数の細管401を束ねた後、管2に内接するように細管401の束の周囲を光硬化性樹脂で覆い、この端面を切削または研磨することで、設計した孔径の貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−1を作成する。この詳細について以下に説明する。
【0064】
初めに、図7Aに示すように、細管401を多数用意する。本実施の形態において、細管401は、熱可塑性ポリイミドからなり、外径が0.9[mm]、内径が0.6[mm]、軸方向の長さが30[mm]の円筒形の細管を用意した。
なお、本実施の形態では、細管401としてガラス転移温度が高い熱可塑性ポリイミドを用いた場合を例に説明するが、自励振動開始温度が低い熱音響装置を用いる場合には、ガラス転移温度が低い熱可塑性高分子を用いるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0065】
このような多数の細管401を軸線が互いに平行とした状態で束ねた構造体402を形成した後、図7Bに示すように、その構造体402を収納容器403の内部に収容する。
ここで、収納容器403は、両端が閉鎖された円柱の形状を有し、径方向の断面が管2と同等の円柱状の内部空間を備えている。また、収納容器403は、後述するように、内部に導入される光硬化性樹脂を硬化させるために紫外線が照射されるので、例えばガラスなど、365[nm]以下の波長の光を80%以上透過させる材料から構成される。また、収納容器403の内壁面には、例えばフッ素系シランカップリング剤などの光硬化性樹脂と親和性の低い剥離剤が、細管401を収容する前に予め塗布されている。このような収納容器403には、収納容器403の軸線と各細管401の軸線とを平行とした状態で構造体402が収容される。
【0066】
なお、本実施の形態においても、糸などによって多数の細管401を稠密に束ねた構造体402を形成する場合を例に説明するが、構造体402を形成せずに、細管401を直接収納容器303内部に配設するようにしてもよい。この場合には、できる限り多くの細管401を、収納容器403内部に稠密に配設すればよい。
【0067】
構造体402が収納容器403内部に収容されると、図7Bに示すように、光硬化性樹脂404を収納容器403内に流し込む。ここで、光硬化性樹脂404としては、細管401の間にもその光硬化性樹脂404が行き渡るように、粘度が1000[cps]以下の粘性が低い材料を用いるのが望ましい。これにより、細管401の束の周囲や隙間に、光硬化性樹脂404が充填されることとなる。本実施の形態において、光硬化性樹脂404として、例えば、SCR740(ディーメック(登録商標)社製)、GL−1001(グルーラボ(登録商標)社製)など、紫外線により硬化する光硬化性樹脂を用いた。
【0068】
光硬化性樹脂404を収納容器403内に流し込むと、図7Cに示すように、収納容器403に対して紫外線405を照射する。これにより、収納容器内の光硬化性樹脂404が硬化されることとなる。
【0069】
光硬化性樹脂404が硬化されると、この光硬化性樹脂404および多数の細管401からなる構造体を収納容器403から取り出し、軸方向に対して垂直な方向の両端面を切削または研磨することにより、各細管401の孔が露出した状態とするとともに、軸線方向の長さを所定の長さとする。これにより、図7Dに示すように、有機系高分子から構成され、微細な貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−1が形成される。
【0070】
これにより、設計通りの微細な孔径を有する貫通孔301aが稠密に形成された中央部3aと、設計通りの面積を有する外周部3bとを備えたスタック3−1を生成することができる。このようなスタック3−1を生成することにより、高温熱源から低温熱源へと流れる熱流が、中央部3aと外周部3bとで均等に流れるので、その熱流が外周部3bを貫通熱として直接伝わって、熱エネルギーから作業流体10の振動エネルギーへの変換に対して熱損失となるのを防ぐことができる。結果として、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。
【0071】
このような方法により製造したスタック3−1を、上述した第1の実施の形態における熱音響エンジンに用いることにより、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0072】
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係る第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と、スタックの製造方法が異なるものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0073】
第2の実施の形態でも説明したように、従来の切削加工法などでは、有機物に多数の貫通孔を稠密に形成することが困難であった。そこで、本実施の形態では、図8A〜図8Cに示すように、有機系高分子材料からなる多数の細管501を束ねた後、これらを熱融着させることで設計した孔径の貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−2を作成する。この詳細について以下に説明する。
【0074】
初めに、図8Aに示すような細管501を多数用意する。本実施の形態において、細管501は、熱可塑性ポリイミドからなり、外径が0.9[mm]、内径が0.6[mm]、軸方向の長さが30[mm]の円筒形の細管を用意した。
なお、本実施の形態では、細管501としてガラス転移温度が高い熱可塑性ポリイミドを用いた場合を例に説明するが、自励振動開始温度が低い熱音響装置を用いる場合には、ガラス転移温度が低い熱可塑性高分子を用いるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0075】
このような多数の細管501を軸線が互いに平行とした状態で糸などにより束ねた構造体502を形成した後、図8Bに示すように、一端が閉鎖され、径方向の断面が管2と同等の円柱状の収納容器503に、その構造体502を、細管501の軸線と収納容器503の軸線とを平行とした状態で収納する。このとき、収納容器503には、可能な限り多数の細管501が収納される。これにより、細管501は、隣り合う細管501と圧接した状態で、収納容器503に収納されることとなる。
【0076】
なお、本実施の形態では、糸などによって多数の細管501を稠密に束ねた構造体502を形成する場合を例に説明するが、構造体502を形成せずに、細管501を直接収納容器503に収納するようにしてもよい。この場合には、できる限り多くの細管501を、収納容器503に稠密に配設すればよい。
【0077】
構造体502が収納容器503に収納されると、この構造体をヒータなどにより細管501の軟化点付近まで加熱し、この状態を所定時間維持した後、冷却する。これにより、構造体502に含まれる細管501は、隣り合う細管501と圧接しているので、加熱した後に冷却されることにより、隣り合う細管501と溶着されることとなる。
【0078】
多数の細管501が溶着されると、この構造体502を収納容器503から取り出す。これにより、図8Cに示すように、有機系高分子から構成され、微細な貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−2が形成される。
【0079】
これにより、設計通りの微細な孔径を有する貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−2を生成することができる。このスタック3−2は、第1,第2の実施の形態で生成されるスタック3,3−1とは異なり、外周部3bが形成されないので、高温熱源から低温熱源へと流れる熱流が貫通孔301aが形成された領域のみを流れるため、その熱流が貫通熱として直接伝わって、熱エネルギーから作業流体10の振動エネルギーへの変換に対して熱損失となるのをより効果的に防ぐことができる。結果として、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。
【0080】
このような方法により製造したスタック3−2を、上述した第1の実施の形態における熱音響エンジンに用いることにより、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0081】
[第4の実施の形態]
次に、本発明に係る第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と、スタックの製造方法が異なるものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0082】
第1の実施の形態でも説明したように、従来のレーザ加工法などでは、有機物に多数の貫通孔を稠密に形成することが困難であった。そこで、本実施の形態では、図9A〜図9Eに示すように、ガラスからなる多数の細管601を束ねて熱融着した後、端部を加熱してその軸線方向に引っ張ることで、設計した孔径の貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−3を作成する。この詳細について以下に説明する。
【0083】
初めに、図9Aに示すような細管601を多数用意する。本実施の形態において、細管601は、ガラスからなり、外径が1.5[mm]、内径が1.1[mm]、軸方向の長さが10[mm]の円筒形の細管を用意した。
なお、本実施の形態では、最終的にスタック3−3に形成される貫通孔301aの径が、後述するように細管601の延伸比によって決定されるので、その延伸比によっては、内径が1[mm]以上や毛細管現象が発現しない程度の比較的大きな細管601を用いるようにしてもよい。
【0084】
このような多数の細管601を軸線が互いに平行とした状態で束ねた第1の構造体602を形成した後、図9Bに示すように、一端が閉鎖され、径方向の断面が管2と同等の円柱状の収納容器603に、その第1の構造体602を、細管601の軸線と収納容器603の軸線とを平行とした状態で収納する。このとき、収納容器603は、可能な限りの数量の細管601が収納される。これにより、細管601は、隣り合う細管601と圧接した状態で、収納容器603に収納されることとなる。
【0085】
なお、本実施の形態においても、糸などによって多数の細管601を稠密に束ねた構造体602を形成する場合を例に説明するが、構造体602を形成せずに、細管601を直接収納容器603に収納するようにしてもよい。この場合には、できる限り多くの細管601を、収納容器603に稠密に配設すればよい。
【0086】
第1の構造体602が収納容器603に収納されると、この構造体をヒータなどにより細管601の軟化点付近まで加熱し、この状態を所定時間維持した後、冷却する。これにより、細管601は、隣り合う細管601と圧接しているので、加熱した後に冷却されることにより、隣り合う細管601と溶着されることとなる。
【0087】
第1の構造体602に含まれる多数の細管601が溶着されると、その第1の構造体602を収納容器603から取り出す。そして、第1の構造体602の一方の端部をバーナなどにより軟化点以上まで加熱したのち、図9Cに示すように、その一方の端部を他方の端部から離間する方向に引っ張る。これにより、図9Dに示すように、細管601の軸線方向に延伸した第2の構造体604が生成される。この延伸した第2の構造体604における細管601の孔径は、第2の構造体604を延伸させればさせるほど、小さくなる。具体的には、その細管601の孔径は、細管601の半径方向における、第1の構造体602の外径と、第2の構造体604の外径との比に正比例する。したがって、第1の構造体602の一端を引っ張る距離を、細管601の半径方向におけるその第1の構造体602の径に応じて適宜設定することにより、所望とする貫通孔301aを形成することができる。
【0088】
延伸した第2の構造体604を形成すると、この第2構造体604を、ダイシングソーなどにより所定の長さに切断するとともに、その切断面を研磨する。これにより、図9Eに示すように、ガラスから構成され、微細な貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−3が形成される。
【0089】
これにより、設計通りの微細な孔径を有する貫通孔301aが稠密に形成されたスタック3−3を生成することができる。このスタック3−3は、第1,第2の実施の形態で生成されるスタック3,3−1とは異なり、外周部3bが形成されないので、高温熱源から低温熱源へと流れる熱流が貫通孔301aが形成された領域のみを流れるため、その熱流が貫通熱として直接伝わって、熱エネルギーから作業流体10の振動エネルギーへの変換に対して熱損失となるのをより効果的に防ぐことができる。結果として、臨界温度勾配を達成するのに必要な高温側熱交換器の温度を低くすることができる。
【0090】
このような方法により製造したスタック3−3を、上述した第1の実施の形態における熱音響エンジンに用いることにより、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0091】
なお、上述した各実施の形態では、細管が円筒から形成される場合を例に説明したが、細管の形状は円筒に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、楕円筒、正三角筒、四角筒、五角筒、六角形筒などにしてもよい。これに伴って、貫通孔301aの断面形状についても、例えば、正六角形、正五角形、正三角形、正方形、楕円形、長方形などにしてもよい。ここで、細管の断面形状を多角形にする場合には、各辺の長さは同一でなくてもよい。また、細管の形状は、全て同一でなくてもよい。そのように、細管の形状を適宜設定して、多数の細管を束ねることにより、スタックの貫通孔301aの内壁面を多数形成することが可能となるので、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0092】
また、上述した各実施の形態では、スタックが円柱の形状を有する場合を例に説明したが、スタック3の形状は円柱に限定されず、例えば、楕円柱、三角柱、角柱、五角柱、六角柱、八角柱など、中央部に貫通孔が形成可能な形状であるならば各種形状を適用することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、スタックの材料としてガラスやポリイミドなどを用いた場合を例に説明したが、上述した各実施の形態における製造方法により微細な貫通孔が稠密に形成されたスタックを形成できる熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料であるならば、各種材料を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、熱音響装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…熱音響エンジン、2…管、3,3−1〜3−3…スタック、3a…中央部、3b…外周部、4…高温側熱交換器、5…低温側熱交換器、6…高温熱源、7…低温熱源、301,401,501,601…細管、301a…貫通孔、302,402,502…構造体、303,403,503,603…収納容器、304…ガラス、403…光硬化性樹脂、405…紫外線、602…第1の構造体、604…第2の構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置されて、前記作業流体の熱音響自励振動によって前記貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと前記管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックであって、
熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管が稠密に配設された構造体を備え、
複数の前記細管は、複数の前記貫通孔を構成する
ことを特徴とする熱音響装置用スタック。
【請求項2】
前記細管は、ポリイミドおよびガラスの一方から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の熱音響装置用スタック。
【請求項3】
前記構造体の周囲に形成され、熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる外周部をさらに備え、
この外周部は、前記貫通孔の軸線方向に垂直な方向における断面積が、当該垂直な方向における前記構造体および前記外周部の断面積の合計の10%以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱音響装置用スタック。
【請求項4】
前記貫通孔は、正六角形、正三角形、正方形、および、長方形のうち何れか1つの断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱音響装置用スタック。
【請求項5】
一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、前記作業流体の熱音響自励振動によって前記貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと前記管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、
熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を、前記管の内部形状に対応した内部空間を有する収納容器の内部に稠密に収納する第1のステップと、
前記内部空間に溶融した熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料を流し込んで固化させる第2のステップと
を有することを特徴とする熱音響装置用スタックの製造方法。
【請求項6】
一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、前記作業流体の熱音響自励振動によって前記貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと前記管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、
熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を、紫外線を透過させる材料からなり、前記管の内部形状に対応した内部空間を有する収納容器の内部に稠密に収納する第1のステップと、
前記内部空間に紫外線硬化樹脂を流し込む第2のステップと、
前記収納容器に紫外線を照射して、前記紫外線硬化樹脂を固化させる第3のステップと
を有することを特徴とする熱音響装置用スタックの製造方法。
【請求項7】
一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、前記作業流体の熱音響自励振動によって前記貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと前記管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、
熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に配設した第1の構造体を形成する第1のステップと、
前記第1の構造体を加熱して冷却することにより、隣接する前記細管同士を溶着させる第2のステップと
を有することを特徴とする熱音響装置用スタックの製造方法。
【請求項8】
一方向に沿った複数の貫通孔を備え、管の内部に作業流体とともに配置され、前記作業流体の熱音響自励振動によって前記貫通孔に沿って流れる熱エネルギーと前記管内の作業流体の振動エネルギーとを変換する熱音響装置用スタックの製造方法であって、
熱伝導率が10[W/m・K]を超えない材料からなる複数の細管を稠密に配設した第1の構造体を形成する第1のステップと、
前記第1の構造体を加熱して冷却することにより、隣接する前記細管同士を溶着させた第2の構造体を形成する第2のステップと、
前記細管の軸線方向における前記第2の構造体の一端を加熱し、当該一端を引っ張った後冷却することにより、前記第2の構造体を前記軸線方向に延伸させる第3のステップと
を有することを特徴とする熱音響装置用スタックの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図9E】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−229892(P2012−229892A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99555(P2011−99555)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)