説明

燃料の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法

【課題】 PTV計測による無重力乃至微小重力下での燃料液滴間の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを測定するための気流追跡装置、及び燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法を提供する。
【解決手段】 (a)ハウジング内又は仕切空間内に、(b)懸垂線を支持する懸垂線支持台と、(c)模擬液滴を生成するための液滴生成装置と、(d)トレーサ粒子雲を供給するためのトレーサ粒子供給装置と、(e)点火装置とを有し、かつ、(f)光学測定系と、(g)それらを制御するシーケンサ、を有する燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置であって、(d)トレーサ粒子供給装置が、トレーサ粒子中の粗大粒子を除去して、粒径の揃った粒子のみを供給するための(d1)トレーサ粒子選別手段を有するものである燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法に関し、特に、PTV計測による無重力乃至微小重力下での燃料の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを計測するための気流追跡装置、及び該装置を用いた燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法に関する。また、無重力乃至微小重力下での液体燃料の測定装置、及び該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス流動計測には従来よりレーザードップラー流速計や熱線風速計が用いられ、特定の1点における時間的変化が測定されてきた。しかし、一般の乱流場では種々の寸法をもつ乱れ渦が間歇的に発生し、その分布が時間と共に複雑に変化するので、実際上重要な乱流の空間構造を、限られた位置での時系列流速データに基いて推定することは困難である。そこで、近年、画像処理・解析技術の進歩と相俟って、流体中に浮遊させた多数のシード粒子のレーザーシー画像を記録・解析することにより、流速の空間分布を求めることが試みられるようになってきたが、この画像流速測定には、個々の微粒子の移動を追跡する粒子追跡流速法(PTV法;Particle Tracking Velocimetry;PTV法)と、微粒子群の動きを統計的に求める粒子画像流速法(Particle Image Velocimetry;PIV法)が行われている。うち、PIV法は、ゲッチンゲンのDeutsches Zentrum fur Luft und Raum‐fahrt (DLR)のMarkus Raffel, Christian E. Willert, Jeurgen Kompenhaus による名著(日本では、小林敏雄監修、岡本幸司、川橋正昭、西尾茂訳の「PIV−粒子画像流速測定法−の基礎と応用」が出版されている)がある。PIV法には、自己相関PIV計測と相互相関PIV計測が含まれ、いずれの場合も、露光時間が数100マイクロ秒単位で撮影された流跡画像の解析により流跡の始点と終点を決定して速度ベクトルを求める際、PTV法に比べてシード条件に課せられる制約が少なく実際的で、条件の設定が難かしい内燃機関のシリンダ内ガス流動計測にも利用できるとされている(非特許文献1)が、その基本になるのは、やはり、PTV法であって、シード条件に課せられる問題を克服し、かつ正確な測定ができるPTV技術が必要であり、かつ、そのようなPTV技術は、優れたPIV測定技術の開発を支える基礎的技術手段ともなり得る重要なものである。
【0003】
即ち、20世紀の最大の交通手段として用いられてきた車は、21世紀においてもしばらくその座を譲りそうになく、電気自動車や燃料電池車,ハイブリッド車,天然ガス車,メタノール車など多くの低公害車が検討、開発・運用されているが,普及するには時間を必要とし、このような現状から,最先端技術によるガソリン車やディーゼル車の排出ガス改善が急務の課題となっている。
また、液体燃料を霧化して燃焼させる噴霧燃焼は、ボイラや炉をはじめ、ディーゼル機関や液体ロケット機関、ガスタービンなどの燃焼器に広く用いられている燃焼方式である.エネルギー問題や環境問題が急務の課題となっている今日、噴霧燃焼の機構を解明することはこれらの燃焼器の性能向上に寄与し、燃料消費率の向上、有毒ガス排出の低減など、諸問題の解決に役立つと考えられる。燃焼の機構が明らかにされ、燃焼器の設計が理論的に行われるようになれば、開発期間の短縮や開発コストの低減など工業的にもおおいに役立つと考えられるが、噴霧燃焼は燃料微粒子,燃料蒸気および空気からなる極めて不均一な系で起こる現象である。噴霧燃焼を支配する因子は数多くあり、重要なものでは液滴直径や燃料組成、温度、ガス組成、圧力、液滴と周囲気体の相対運動などが挙げられる。また、蒸発・拡散・混合、それによって生じた混合気の燃焼が同時に進行し、かつ影響しあうので、噴霧燃焼現象をそのまま解析することは非常に困難である。したがって、従来それぞれの燃焼機器について個別に研究されることが多く、噴霧燃焼の一般的特性が把握されていないのが現状である。噴霧燃焼を解明するため、以下の二つのアプローチが考えられてきた。噴霧中の液滴の気化が極めて速やかで、かつ燃焼過程が比較的ゆっくり進行するような場合には、液滴の蒸発後に燃焼が開始すると考えられ、バーナー拡散火炎の燃焼に近いものとなる。バーナー拡散火炎と火炎の単純モデルとして用いた研究が数多く行われている。これとは逆に、噴霧中の液滴が比較的大きく、燃焼過程が比較的速やかに進行する場合には、燃焼末期まで液相の粒子が残存して蒸発過程と燃焼過程とが平行して進行する状態にあるであろうし、液滴の蒸発速度がその燃焼速度を律する大きな要因であると考えられる。この考えに基づき、噴霧燃焼の最小構成単位である単一燃料液滴を利用して液滴燃焼の研究が行なわれてきた。しかしながら、実際の噴霧燃焼では、空間に生成された多数の燃料液滴が互いに影響を及ぼしながら燃焼が進行する。そのため、単純に単一燃料液滴の研究で得られた知見を噴霧燃焼に拡張することには飛躍がある。燃料液滴列の液滴干渉や燃え広がりが挙動の研究で得られた知見が必要になる。
【0004】
そこで、従来公表されている関連技術を概観すると、小西らは、懸垂液滴を水平に配置した場合と鉛直に配置した場合について燃焼速度定数を測定し、液滴間隔との相互関係を求めるとともに、火炎の撮影を行った結果、液滴間の干渉効果について、1)燃焼速度定数は液滴間隔の増加に伴って単調に増加した後、単一液滴の場合の値に漸近し、2)燃焼速度定数の低下が認められるのは一つの火炎が液滴列全体を包む集団燃焼状態にあるときである旨の知見を報告(非特許文献2)している。
【0005】
また、三上らは、等直径・同一燃料の2 液滴を用いた燃焼実験を、通常重力場および微小重力場において行い、両者の比較より干渉燃焼に及ぼす重力の影響を調べた結果、通常重力場では火炎間の酸素不足が微小重力場ほどはなはだしくなく、また、二つの火炎が分離した形態で存在するとき、初期液滴間隔が小さいほど火炎に酸素を供給する自然対流の効果は強く、燃焼の初期を除くと、同じ無次元液滴直径に対する燃焼速度は、微小重力場では初期液滴間隔の減少とともに単調減少するのに対し,通常重力場ではある初期液滴間隔において最大となり、これにより、液滴の干渉燃焼に及ぼす重力の影響はある初期液滴間隔において最大となることがわかった旨報告(非特許文献3)している。
【0006】
吉田らは、石英糸の懸垂線を一列一直線上に10本並べ、高圧雰囲気中に燃料液滴を懸垂した後、微小重力場において第一番目の燃料液滴に点火し、火炎の燃え移りの観察および燃え広がり速度の計測を行った結果、火炎伝ぱには周囲圧力および液滴間隔によって、1)連続的に起る火炎伝ぱ、2)断続的に起る火炎伝ぱ、3)隣り合った2 液滴がほぼ同時に点火する断続的火炎伝ぱの3種類の伝ぱ機構が存在することが判明した旨報告(非特許文献4)すると共に、球対称熱伝導方程式を用いて火炎のまわりの温度分布を調べ、伝ぱ機構についての考察を行っている。
【0007】
また、角田らは,定圧燃焼容器に充填されたプロパン−空気希薄混合気中を伝播する層流火炎が石英糸により保持された燃料液滴列を通過する際の、燃料液滴の着火および燃焼挙動について調べ、実験により,燃料液滴の着火遅れは,燃料液滴初期直径の増加,燃料の標準沸点の上昇、希薄混合気の当量比の減少によって増加することが分かり、標準沸点の低い燃料液滴を通過する際、伝播火炎面はその進行方向に凸状に変形することが分かり、また、液滴間隔を変化させると、下流側の液滴の着火遅れを示す曲線は極小値をもつことがわかった旨発表(非特許文献5)している。
【0008】
梅村らは、点火された液滴の周りに作られる拡散火炎の成長過程を理論解析し、直線液滴列の群燃焼火炎先端部で起きる液滴間の火炎伝ぱ機構をあきらかにし、火炎伝ぱ速度を予測する式を導き、解析結果は、最近微小重力実験で測定された液滴間隔に対する依存性を良く予測し、提案した火炎伝ぱ機構の妥当性を裏付けている。同じ雰囲気条件の下で燃焼する孤立液滴で達成される最大火炎直径と同程度の液滴間隔を持った液滴列で最大火炎伝ぱ速度が実現され、その大きさは主に液滴の加熱時間によって支配されていることを発表し、液滴間隔の変化に伴って現れる3つのモードの火炎伝ぱ機構の違いについても考察(非特許文献6〜8)している。
【0009】
小林らは超臨界雰囲気でのデカン液滴列の燃え広がり実験を微小重力場で行い、雰囲気圧力5MPaまでは,微小重力場では圧力が増大するに従い燃え広がり速度は減少し、通常重力場においても雰囲気圧力が増大するに従い燃え広がり速度は単調に減少し、また,臨界圧力では燃え広がりが生じなかったが、しかし微小重力場では臨界圧力において燃焼している液滴が燃焼をしていない液滴を加熱して燃料蒸気を噴出することにより,燃え広がり速度は増大したこと、及び、燃料蒸気の噴出メカニズムを調べるために検証実験を行った結果,マランゴニ対流によって燃料蒸気が噴出していることが観察されたことを公表(非特許文献9)している。
【0010】
さらに、菊池らは燃料液滴直径1mmのデカン,初期周囲温度573 K の条件を用いて、予混合気の点火や予混合火炎の構成、燃え広がりを生じていない液滴の熱伝導の効果などを調べるために液滴の間隔、直径、雰囲気温度を変化させて液滴列の燃え広がりの数値計算を行った結果、液滴間隔が小さい場合、火炎前面は液滴の間の予混合層を伝わらず、液滴周囲を進行し、液滴間隔が比較的大きい場合、火炎前面は液滴の間の予混合層を通って伝わり、液滴間隔がさらに大きい場合、火炎は燃え広がりが生じていない液滴の予混合気に燃え広がる前に、燃え広がりが生じていない液滴で発生することを報告し、この過程は不連続な予混合火炎伝播の中間的な現象と考えられ、s/d に対して,火炎伝播速度の傾向は非特許文献9の実験結果と一致したと報告(非特許文献10)している。
【0011】
N. Rotii らは液滴を三列打ち上げ,液滴流をつくり端から点火をする実験を行い、液滴速度を一定にして、液滴直径、質量流量、液滴温度、液滴列間隔を変化させて燃え広がり観察を行った結果として、初期液滴温度が増大すると燃え広がり速度は増大し、質量流量を一定とした場合,液滴直径は燃え広がり速度に無関係であり、液滴速度を一定として、質量流量を増大させると燃え広がり速度は増大することを報告(非特許文献11)している。
【0012】
これらの研究は液滴間の燃え広がりについて調べてたものである。従来の燃料液滴列の燃焼に関する研究では、細い石英糸などの懸垂線を用いて燃料液滴を空間に固定させる方法が用いられてきた。しかしながら,懸垂線による液滴固定法では、燃焼によって生じる流れが液滴の移動、さらには液滴の移動が火炎燃え広がりに与える影響が調べられない。
【0013】
【非特許文献1】塩路昌宏、川那辺洋;燃料計測技術の進展 2−粒子画像流速測定法(PIV)によるガス流動計測―;「燃焼研究」第113号、第11−20頁(1998)
【非特許文献2】小西克ゆき(石川島はりま重工業), 河野通方(東大工), 飯沼一男(法政大工):燃料液滴列の燃焼における干渉効果,in Japanese, Journal of JSME,Vol.51, No.467,(1985), Page2218-2224
【非特許文献3】M. Mikami, H. Kato, J. Sato, and M. Kono,:燃料液滴の干渉燃焼に及ぼす重力の影響,in Japanese, Journal of JSME,B, 61, (1994), 373-379
【非特許文献4】吉田茂徳,原人志,岡島敏:無重力下での高圧雰囲気中における燃料液滴列の火炎伝ぱ,in Japanese,,Journal of JSME,B.55, (1989), Page1241-1246)
【非特許文献5】T. Kadota, R. Kohama, D. Segawa, and M. Tsue.:層流伝播火炎による燃料液滴列の着火,in Japanese,,Journal of JSME,B, 65, (1999), 303-309)
【非特許文献6】A.Umemura,in :微小重力下での直線燃料液滴列に沿った火炎伝播(第三報,火炎伝播のモデル計算),in Japanese, Journal of JSME,B, 68, (2002), 2636-2642
【非特許文献7】A. Umemura,:微小重力下での直線燃料液滴列に沿った火炎伝播(第二報,火炎伝播速度特性),in Japanese, Journal of JSME,B68, (2002), 2429-2436
【非特許文献8】A. Umemura,in: 「微小重力下での直線燃料液滴列に沿った火炎伝播」(第一報,液滴間火炎伝播様式のマップの作成),in Japanese, Journal of JSME,B, (2002), 68,2422-2428)
【非特許文献9】H. Kobayashi, J. Park, T. Iwahashi, and T. Niioka,:高圧雰囲気中のn-デカンの液滴列の火炎燃え広がり実験,The Proc. Combust. Inst.,29, (2002), 2603-2610)
【非特許文献10】M. Kikuchi, T. Arai, S. Yoda, T. Tsukamoto, A. Umemura, M. Uchida, M. Kakei, and T.Niioka:微小重力環境下,高温環境下での燃料液滴列の火炎伝播の数値計算に関する研究,The Proc. Combust. Inst.,29, (2002), 2611-2619)
【非特許文献11】N. Rotii, A. Kari, K. Anders, and A. Froiin,液滴近傍の流れの相互作用と液滴列火炎伝播の研究,The Proc. Combust. Inst. 26, (1996), 1697-1703
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、特定微粒子の挙動を簡単且つ正確に解析することができ、特に、PTV法により、近隣の同様な粒子との相関を考慮した特定微粒子の挙動を簡単且つ正確に解析することができ、極く粗大粒子を簡単に除去して均一な粒径の微粒子のみを被測定用マーカーに供して、PTV法特有のシード条件に課せられる制約を克服した燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び、該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、無重力乃至微小重力下での燃料液滴間の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを測定するのに適した液体燃料の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法を提供することにある。
本発明によれば、特に、PTV計測による無重力乃至微小重力下での燃料液滴間の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを測定するための新規かつ好適な気流追跡装置、及び該装置を用いた燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明においては、燃料液滴列の火炎燃え広がりにおける液滴の列方向移動に着目し,3燃料液滴列(固定―固定―列方向移動可能)という一次元の単純なモデルを用いて実験を行うべく、そのために適し、列方向移動を可能にする第三懸垂線に振り子機構を有する測定装置を鋭意検討の結果開発し、また、これを用い、通常重力場および微小重力場で火炎燃え広がり試験方法の実験の結果と燃え広がりによって生じる液滴周囲の流れをPTV(Particle Tracking Velocimetry;粒子追跡流速測定法)計測した結果に基いて、新規かつ優れた燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法を発明するに到った。
【0016】
而して、上記目的は、本発明の(1)「(a)ハウジング内又は仕切空間内に、(b)列状に複数の模擬懸垂液滴核が取り付けられた懸垂線を支持する懸垂線支持台と、(c)前記複数の模擬懸垂液滴核に液体燃料を供給して該模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜を形成することにより模擬液滴を生成するための液滴生成装置と、(d)少なくとも前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域にトレーサ粒子雲を供給するためのトレーサ粒子供給装置と、(e)点火装置とを有し、かつ、前記ハウジング若しくは仕切空間内に又は外に(f)光学測定系と、(g)それらを制御するシーケンサ、を有する燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置であって、前記(d)トレーサ粒子供給装置が、トレーサ粒子源からニューマチック供給するトレーサ粒子供給路の途中で、該トレーサ粒子中の粗大粒子を除去して、粒径の揃った粒子のみを前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域に供給するための(d1)トレーサ粒子選別手段を有するものであることを特徴とする燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置」により達成される。
【0017】
また、上記目的は、本発明の(2)「前記(a)ハウジング又は仕切空間を形成する材料が、光透過性材料であることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(3)「前記(b)懸垂線支持台は、点火装置に近い方から順に、第一固定懸垂液滴、第二固定懸垂液滴、第三移動懸垂液滴が取り付けられた懸垂線を支持するものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(4)「前記(b)懸垂線支持台に支持される懸垂線は、一部が前記複数の模擬懸垂液滴核のうちの一部を懸垂線支持台に振り子運動しないように支持し、その余の模擬懸垂液滴核を振り子運動可能に支持する炭化珪素の太さ20μm以下の細線であり、該複数の模擬懸垂液滴核の間隔は調節自在であることを特徴とする前記第(3)項に記載の測定装置」;
(5)「前記複数の模擬懸垂液滴核が直径30〜800μmのセラミック球で、前記懸垂線又は懸垂線支持台に架け替え可能であることを特徴とする前記第(3)項に記載の測定装置」;
(6)「前記(c)液滴生成装置が、空気スライドステージ,液体燃料容器、燃料送り装置、燃料供給管,黄銅細管及び調節装置から構成され,シーケンサによって電磁弁をON / OFF することにより、空気スライドステージの前進・後進が制御されるものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(7)「前記燃料送り装置は、前記燃料供給管から前記黄銅細管へ導かれた燃料を噴射するマイクロシリンジとこれに接続しボールねじを介して燃料を模擬懸垂液滴に送り出すボールを有することを前記第(6)項に記載の測定装置」;
(8)「前記(c)液滴生成装置に生成される模擬液滴が、直径150〜1600μmであることを前記第(1)項又は第(6)項のいずれかに記載の測定装置」;
(9)「前記(d)のトレーサ粒子供給装置が、体積平均粒径0.05〜12.0μmのシリカ粒子を貯蔵する粒子タンクと、粒子供給管と、粒子雲吐出管とを有し、該粒子雲吐出管には、エアータンクとレギュレータと、ソレノイドバルブと、流量コントローラとを介して粒子供給管に送気して粒子雲を形成するための送気管を有し、また、該粒子雲吐出管の先端は、前記燃料供給のための黄銅細管の直下に位置することを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(10)「前記(d1)トレーサ粒子選別手段の近傍に、さらに、粒度分布測定装置を有することを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(11)「前記(e)点火装置は、直流電源からの電圧をステップアップするための昇圧トランスを含む点火電力回路を有し、点火装置へのトリガー出力を点火装置と直結したときの点火装置からのノイズがシーケンサやその他の障害を避けるためのリレーを介してシーケンサにより制御される電気火花点火装置であることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(12)「前記(f)光学測定系が、レーザーフィルム照射手段と、ハイスピードビデオカメラ又はCCDアレイを有するCCDデジタルカメラとを有するものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」:
(13)「前記(g)シーケンサは、CPU ユニット,増設出力ユニット,電源ユニットから成り、スイッチボックスと共に制御装置を構成し、ステッピングモータ、電磁弁、点火装置および前記光学測定系を制御するものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」;
(14)「装置全体を覆うカプセルと、該カプセルを落下塔に引き揚げるためのカプセル揚場手段と、該カプセル揚場手段から該カプセルを切り離して該カプセルを自由落下させるためのカプセル切離手段と、落下した該カプセルを受け止めた際に衝撃力を緩衝させる緩衝手段とを有する微小重力付与手段をさらに有することを特徴とする前記第(1)項に記載の測定装置」により達成される。
【0018】
さらにまた、上記目的は、本発明の(15)「前記(1)項乃至第(14)項のいずれか1に記載の測定装置を用い、前記(f)光学測定系により送信された気流画像の情報をコネクタによりモニタ用と記録用に分岐し、モニタ画像を目視により確認しながら録画・記録し、記録された気流画像を、必要に応じて2値化し、該2値化画像データを、必要に応じてメモリに呼出自在に格納して強調、平均化及び/又は選択からなる画像情報処理を実行し、該2値化画像データをグラフ化することを特徴とする燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法」により達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定微粒子の挙動を簡単且つ正確に解析することができ、特に、PTV法により、近隣の同様な粒子との相関を考慮した特定微粒子の挙動を簡単且つ正確に解析することができ、極く粗大粒子を簡単に除去して均一な粒径の微粒子のみを被測定用マーカーに供して、PTV法特有のシード条件に課せられる制約を克服した燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び、該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法が提供される。
また、無重力乃至微小重力下での燃料液滴間の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを測定するのに適した液体燃料の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置、及び該装置を用いた燃料の火炎伝播モードの試験方法が提供される。そして、この技術は、特に、PTV計測による無重力乃至微小重力下での燃料液滴間の燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりを測定するのに適した新規かつ好適な気流追跡装置、及び該装置を用いた燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法である。
【0020】
以下、図面に基いて本発明を詳細に説明する。
[通常重力場]
本発明は、微小重力場で行うのに適しているが、当初、重力実験の困難さを考え、通常重力場で基礎的なデータを得た後,目的を絞って微小重力試験のための実験を行い、本発明を完成するに至った。したがってここでは、最初に、通常重力場で使用する実験装置を、本発明の基礎として説明する.
【0021】
[プロトタイプの測定装置]
本発明におけるプロトタイプの測定装置全体の概略を図1に示す.この装置は(a)ハウジング内又は仕切空間内に、(b)列状に複数の模擬懸垂液滴核が取り付けられた懸垂線を支持する懸垂線支持台と、(c)前記複数の模擬懸垂液滴核に液体燃料を供給して該模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜を形成することにより模擬液滴を生成するための液滴生成装置と、(d)少なくとも前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域にトレーサ粒子雲を供給するためのトレーサ粒子供給装置と、(e)点火装置とを有し、かつ、(f)前記ハウジング若しくは仕切空間内に又は外に光学測定系の高速度ビデオカメラ、(g)それらを制御するシーケンサ、を有する燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置であって、(d)前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域にトレーサ粒子雲を供給するためのトレーサ粒子供給装置は図示されていない。
【0022】
本発明の計測装置における炭化珪素の太さは、20μm以下の細線であることが好ましく、また、模擬懸垂液滴核が直径30〜800μmであることが好ましい。模擬懸垂液滴核の間隔は調節自在であり、模擬懸垂液滴核は、懸垂線又は懸垂線支持台に架け替え可能なものである。
燃料液滴は初期液滴直径d0=0.8mm±15%の範囲で同時に3個生成した。初期滴直径d0=0.3mmの液滴についても検討が行われた。点火装置には電気火花点火を用い,液滴に対する加熱の影響を最小限にする設定を行った。液滴生成装置は,エアースライドステージとそれを制御する流量調節弁より構成されている。図2に示すように、点火装置に近い方から第一固定懸垂液滴,第二固定懸垂液滴,第三移動懸垂液滴が取り付けられている。第一液滴は,火花点火による擾乱が現象に与える影響を抑制するために設けられている。点火する場合,第三液滴の振り子の振動が減衰してから行われる。第三懸垂線にY字の振り子が用いられている。光学測定装置は,バックライトとイメージインテンシファイア付き高速度カメラによって構成されており,液滴の輪郭像と火炎の自発光像を連続画像として記録することができる。外部の対流を遮断するため,中核部はアクリル板のハウジングで囲われている。
【0023】
[懸垂線]
第一懸垂線,第二懸垂線および第三Y 字懸垂線には耐熱性・強度・質量などを考慮し線径15μmの炭化珪素線が使用さあれている。図3に第三Y字懸垂線を示す。炭化珪素線をY字型に加工することにより列方向の移動のみに移動できるようにされている。また,懸垂線の支持部には振り子運動の抵抗にならないように輪を設け,支持部からの反力を最小限にしている.炭化珪素線の接合部には瞬間接着剤を用いて接合した。また,燃焼による熱を受けて瞬間接着剤が燃焼することを防ぐため,接合部はセラミックで覆われている。この例の装置においては、その際、接合部の質量が多くなって液滴移動を妨げないよう,直径約200μm の大きさで製作された。Y字懸垂線の長さは、振り子の周期を長くするためと液滴生成の容易さを考慮し30 mmとされている。懸垂線の先端には燃料液滴を支持するためにセラミック球が用いられている。セラミックの直径は計測に使用する液滴直径により変化させ,液滴直径0.8 mm の場合には約200μm,液滴直径0.3 mm の場合には約50μm のものが用いられている。
【0024】
[液滴生成装置]
図4には、この例の計測装置における液滴生成装置の概略を示す。この液滴生成装置は,空気スライドステージ、燃料供給管、黄銅細管、調節装置、から構成され、空気スライドステージの前進・後進の制御はシーケンサによって電磁弁をON / OFF することにより行われる。
【0025】
[マイクロシリンジ]
本装置では容量250 μ. のマイクロシリンジが用いられた。三本のマイクロシリンジはそれぞれ第一,第二および第三懸垂液滴に割り当てられ、燃料供給管により黄銅細管へ接続されている。マイクロシリンジ内の燃料はステッピングモータによりボールねじを介し押し出される。
【0026】
[燃料供給管から黄銅細管]
マイクロシリンジから押し出された燃料は、燃料供給管を通り黄銅細管より液滴として吐出される。この例の装置における燃料供給管は材料SUS304,内径0.4mm,外径0.6mmである。液滴を生成するため、先の細い管が必要であり細いほど小さな液滴を生成することができる。そこで黄銅細管として黄銅製,内径0.04 mm,外径0.1 mm の管がこの例では用いられている。黄銅細管と燃料供給管の接合には,黄銅細管を10mm ほど切り、燃料供給管の先端へ半田を用いて接合されている。
【0027】
[ステッピングモータおよびモータドライバ]
この例の計測装置で採用されたステッピングモータの仕様を表1に、モータドライバの仕様を表2に示す。シーケンサからの信号を受けたモータドライバは,ステッピングモータを駆動し、マイクロシリンジ内の燃料を一定量押し出す。
【0028】
【表1】



【0029】
【表2】



【0030】
[黄銅細間の調節装置]
図5の写真には、黄銅細管が示される。懸垂線に燃料液滴を生成するには、黄銅細管が懸垂線へわずかに触れている状態が必要である。そのため,懸垂線の先端と黄銅細管の微小な距離を調節するため,光学系の調節に用いられている装置を改良し使用している。
【0031】
[エアースライドステージ]
表3にエアースライドステージの仕様を示す。過去の装置では、ロータリーソレノイドを用いて黄銅細管を移動し、液滴の生成を行っていた。このような従来装置は、微調整が効かないこと、複数の燃料液滴を同時に生成することはできないこと、黄銅細管や懸垂線を破損する恐れがあることなどの問題があった。そこで、この例の装置では、エアースライドステージを用いて黄銅細管の移動を行うことにした。また、スピード調整バルブにより,ステージの前進・後進の移動速度が調整できようにされている。
【0032】
【表3】



【0033】
[点火装置]
本例の装置では点火装置に火花点火を用いており,点火装置は電極,火花発生回路およびDC12V のバッテリーで構成されている。電極には線径0.2 mm の白金線が用いられている。電極の火花間隔は約1 mm であり、電極の先端は懸垂線から約1 mm の位置に設置されている。点火は、通常、第一液滴に対してのみ行なわれる。
図6に点火回路を示す。この回路は一次コイルと二次コイルとが電磁的に結合している。一次側の断続器が続の状態で電流を流し、断続器を断の状態でこの電流を遮断する。断続器には並列にコンデンサが接続されているので、一次コイルの自己誘導とともに一つの電気振動回路を形成する。一次コイルの急激な電流変化に対応して二次コイルには高電圧が発生し、二次側に接続した火花間隙に放電が起こる。また、一次コイル側に可変抵抗を用いることにより、二次コイルの点火エネルギーの制御を行うことができ、この例では実際そのようになっている。これら2 つの回路をあわせて点火回路とし、電源には12 V のバッテリーが用いられている。
【0034】
[制御装置]
制御装置は、シーケンサとスイッチボックスから構成されている。この例の計測装置の場合、シーケンサが制御する装置は、ステッピングモータ、電磁弁、点火装置およびハイスピードカメラである。
【0035】
[シーケンサ]
シーケンサはCPU ユニット,増設出力ユニット,電源ユニットから構成されている。この例の装置の場合、CPU ユニットだけでは出力数が不足するため、増設出力ユニットが付加さあれている。シーケンサはモータドライバに対し、回転量を決定する。出力パルス数を回転速度に対応する周波数の信号で送り、ステッピングモータを動かす。この例で使用しているプログラムは、出力パルス数を10 パルス単位で変化させることができる。周波数は出力パルス数の10 分の1 に設定されている。パーソナルコンピュータをCPU ユニットに接続することによって、内部プログラムの書き換え・読み出し、プログラムのリアルタイムモニタリングおよびトリガー信号の出力などを行うことができる。またスイッチボックスにより、パルス出力等の設定値も変更することができる。CPU ユニットの仕様を表4 に示す。増設出力ユニットは点火装置,高速度カメラ,電磁弁にトリガー信号を出力している。
【0036】
【表4−1】



【0037】
【表4−2】



【0038】
〔スイッチボックス〕
図7には、スイッチボックスの概略,内部回路が示される。また表5には、この例の計測装置におけるシーケンサとの配線が示される。スイッチボックスは,シーケンサとの信号の入出力を行うケーブル,シーケンサにトリガーを送るスイッチ、各装置の状態や設定値を示すためのLED,各装置へ信号を送るための端子によって構成されている。
このスイッチボックスにより,ステッピングモータへの出力パルス数,運転周波数を容易に変化させることができる。さらに,LED を用いることによって、現在の状態が一目でわかり、計測時の操作を確実にすることが可能となっている。また、シーケンサからのパルス出力をピエゾ素子へ与えることにより、スイッチを押したときに音を発することができるようになっているため、誤操作の防止につながっている。
【0039】
【表5】



【0040】
さらに、点火装置へのトリガー出力を点火装置と直結してしまうと、点火装置からのノイズがシーケンサやその他の障害となるため、シーケンサと点火装置の間にリレーが設けられている。 この例の計測装置におけるスイッチボックスの使用法は以下のとおりである。本発明においてはこれは単なる1例であり、無論、他の態様のものにすることができる。
1. スイッチボックスでトリガー出力を行うためには,まずメインメニューを選択する.メインメニューでは『A』『B』『C』のボタンを選択することができる。それぞれのボタンは『1』 『2』 『3』のLED へ対応している。点灯しているランプに対応したボタンを押すと消灯する。
2. スイッチボックスでは、『1』『2』『3』のランプの点灯パターンにより、『A』『B』『C』以外のボタンのシーケンサへの命令を変えている。つまり、『1』のランプのみが点灯している場合に『OK』ボタンを押して起こる動作と、『1』と『2』のランプが点灯している場合に『OK』ボタンを押して起こる動作とは異なる。
3. 3つのランプの組み合わせによりメインメニューの設定は7つに分けられる。この例の装置で使用している点灯パターンは『1』のみ点灯、『1』『2』が点灯、『2』『3』が点灯、『3』のみが点灯の4つの設定である。4. ステッピングモータへ出力するパルス数を設定する場合は『3』のみが点灯している状
態にする。パルス数設定メニューでは、『X』『Y』『Z』ボタンにより、パルス数を決定する。『X』が10 の位,『Y』が100 の位,『Z』が1000 の位にそれぞれ対応しており、1回押すごとにその値が足されていく。たとえば,『X』を5 回、『Y』を2 回、『Z』を3 回押した場合のパルス数は3250 である。また、運転周波数はこの数値を共有しており、3250pps となる。
さらに、〈設定した値/10pps〉の値を起動停止周波数、〈設定した値/10pps〉を加減速時間とし台形制御を行っている。設定した値でのモータ動作は、『OK』ボタンを押すことにより開始される.
5. 『2』『3』のランプを点灯させるとステッピングモータ定速運転させることができる。このメニューでは,動き出したモータは『QUIT』ボタンを押さない限り止らない。定速運転メニューでは、サブメニューの選択を必要とする。サブメニューはメインメニューと同様で、対応するボタンのランプが『X』−『I』,『Y』−『II』,『Z』−『III』と変化しただけである。
サブメニューランプを点灯させることにより、モータの回転方向、回転速度が決まる。。回転方向を決めるのが『III』ランプである。このランプが消えていると正回転、点灯していると逆回転で運動する。回転速度を決定するのが『I』、『II』ランプである。『I』ランプが点灯の場合は低速回転、『II』ランプが点灯の場合は中速回転、『I』,『II』ランプがともに点灯している場合は高速回転でモータは運動する。また、モータが前進しすぎる場合、自動停止する安全装置が設置されている。
6. 『1』『2』のランプが点灯している場合には、計測を行うことができる。『X』『Y』『Z』『OK』のそれぞれが、『X』→電磁弁、『Y』→ステッピングモータ、『Z』→点火装置,『OK』→高速度カメラに対応しており、ボタンを押すたびにトリガーが出力される。ただし、電磁弁の場合、1度目でON、2度目でOFF となる。さらに安全のため、ステージが前進している場合には点火装置を作動させることはできない。
7. 『1』のランプが点灯している場合では、1つのボタンで測定を行うことができる。『OK』ボタンを押すごとに、ステージを前進→液滴を生成→ステージを後退→点火→高速度カメラへトリガー入力、を行う。この途中『QUIT』ボタンを押すことにより、測定をリセットすることができるほか、点火したにも関わらず液滴が燃焼しない場合に,カメラのトリガーを入れる前ならば、『X』ボタンで何度も点火装置にトリガーを送ることができる。
【0041】
[プログラム]
本装置例では、プログラム言語としてラダー言語が使用されている。ラダー言語のラダーとは「はしご」を意味し、デバイス間のつながりを感覚的に示す。また,プログラムの深い知識を必要としないユーザーでも簡単に使用できるよう工夫された言語である。ラダー作成のエディタは付属ソフトである「Ladder Builder 」を使用した。
図8には、計測で実際に使用した一部のプログラムが示される。
【0042】
[高速度カメラ]
現象を観察する手段として高速度カメラが好適に使用される。本装置例で採用された高速度カメラはナックイメージテクノロジー製のMEMRICAMciである。この高速度カメラの仕様を表6に示す.撮影速度は毎秒30 〜 2000 フレームであり、プリ/センター/ポスト・トリガーでの連続記録が可能である。また、カラーでのライブ撮影および録画が可能である。実際の計測例においては、撮影速度を毎秒1000 フレームに設定し、撮影された。高速度カメラに録画した画像は、実験終了後、ビデオテープレコーダーに記録し画像データとした。
【0043】
【表6】



【0044】
[イメージインテンシファイア]
この例の装置においては、高速度カメラのみの撮影では青炎の発光が弱いため、火炎の燃え広がり現象を撮影することができない。そこで、イメージインテンシファイア(I.I.)を高速度カメラに取り付けることにより光を増幅し、現象を撮影した。また、高速度カメラと同期をとるため、高速度カメラからのストロボ出力をI.I.へ入力した。
【0045】
図8には、この例の装置で実際に用いられたラダープログラムが示される。
また、高速度ビデオカメラの仕様として、I.I.は株式会社ナック製のILS を採用した。I.I.の仕様を表7および表8に示す。
【0046】
【表7】



【0047】
【表8】



【0048】
[レコーダ]
CCD カメラや高速度ビデオカメラよって撮影された映像は,ビデオカセットレコーダによって録画することができる。ビデオカセットレコーダに録画する際は、カメラより送られてきた信号をコネクタによりモニタ用と録画用に分岐することで、モニタで確認しながら同時に録画を行うことができる。
【0049】
この例の計測装置は、つぎのように用いることができる。
1. 装置の配線を行い,シーケンサとスイッチボックスをケーブルで接続する.スイッチボックスのPLS1 出力をモータドライバへ、OUTPUT1を電磁弁、OUTPUT2を高速度カメラ、OUTPUT5を点火装置,INPUT2を燃料供給装置の安全装置へそれぞれ接続する。
2. コンプレッサーに空気を充填し,空気スライドステージの動作を確認する.(数時間,ステージを動かしていない場合,急前進することがあるため)スライドステージの動作確認は,スイッチボックスの『A』ボタンおよび『B』ボタンを1度ずつ押し,メインメニューランプ『1』,『2』が点灯していることを確認して『X』ボタンを押す。また,前進したステージを後退させる場合,同様に『X』ボタンを押せばよい。また,必要に応じてスピード調節バルブの調整を行う。
3. マイクロシリンジへ燃料を充填し,黄銅細管の先から液滴が生成されることを確認する。
液滴が生成されない場合は,黄銅細管の付け替えを行う。長時間使用していな場合、銅
細管からSUS 管内までの燃料が蒸発してしまい液滴生成されないため注意を用する。
4. マイクロシリンジを燃料押し出し装置にセットし,液滴直径を設定するため,ステッピングモータのへの出力パルス数を決定する。出力パルス数の設定にはスイッチボックスのメインメニューランプとメインボタンの『3』が点灯している状態にする。この状態で『X』,『Y』,『Z』のボタンを押すことにより出力パルス数が決定され,所定の直径の液滴が生成される。
5. 懸垂線先端の列方向の位置を合わせる。ステージを前進させ黄銅細管と懸垂線先端の
位置の調節を行い,懸垂線に液滴を生成する.また,火花間隔と懸垂液滴の位置の調
節を行い,懸垂液滴に点火する。そして,液滴が燃焼することを確認する。(4)でステッピ
ングモータの回転数を設定した場合,メインメニューランプの『1』,『2』を点灯させた状態で『Y』ボタンを押すことにより,設定した値でステッピングモータを動かすことができる。さらに,この状態で『Z』ボタンを押すことで点火が行われる。ただし,安全のため,ステージが前進している場合はトリガーが入らず,『0』ランプが点灯し,エラーを伝える。
6. 高速度カメラの設定を行う。シャッター設定ノブをLock へ切り替え,モニタ上にシャッター設定がOPEN となっていることを確認する。また,トリガーをEND にし,毎秒1000 枚の撮影スピードに設定する。そして,I.I.と高速度カメラの高さを調節し接続する.部屋を暗くしてI.I.と高速度カメラのピントを合わせる。
7. I.I.のピントを懸垂線に合わせる.バックライトを徐々に明るくし,I.I.のゲインを調節する.この例の装置を用いた計測の場合のI.I.のゲインの値は50〜60 に設定した。
8. 風が入らないように装置の周りをアクリル板で覆い、ハウジングを形成した。すべての準備が整った後,計測開始前にシリンジ内の燃料を再充填しておく。
9. 計測を開始する。スイッチボックスのメインメニューランプ『1』,『2』を点灯させた状態にし,『X』ボタンでステージを前進,『Y』ボタンで液滴を生成,『X』ボタンでステージを後退,『Z』ボタンで液滴へ点火,液滴の燃焼が終わった後『OK』ボタンを押すことで,高速度カメラのトリガーが入り,現象の撮影を行う。
10. スイッチボックスの,メインメニューランプ『1』のみを点灯させた状態で『OK』ボタンを押すと、ボタンを押すごとに、ステージを前進→液滴を生成→ステージを後退→点火→高速度カメラへトリガー入力,が実行される。
11. 撮影した映像は,ビデオカセットレコーダへ保存し解析を行う。
【0050】
[計測方法]
計測は、つぎのように実行することができる。
1. ビデオカセットレコーダに保存した映像を確認する。
2. 撮影した映像には,予めタイムコードが挿入されている。そのタイムコードを用いて,
第三液滴の静止状態から一コマ毎(0.033 ms)の移動距離を割り出し,速度を求める。
3. 移動距離を求める際,原点を正確に決定し,一コマ毎の距離をノギスにてモニター上
で計測する。
4. x 方向の距離,初期液滴直径,液滴間隔,燃え広がり時間などを計測する。
【0051】
[PTV 計測]
PTV(粒子画像流速測定法)について基本的な特徴について述べる.PTV システムの計測装置では,流れにトレーサ粒子が加えられる。トレーサ粒子は流れのある面内で微小時間間隔で二度照明される。トレーサ粒子からの散乱光はカメラにより,連続するフレームに記録される.光パルス間のトレーサ粒子変位は,PTV 画像を画像処理して求められる。PTV によって得られる膨大なデータを扱うため優れた後処理が必要となる。
【0052】
図9は、風洞実験でのPTV 画像記録のための代表的な装置例を示している。流れに微細なトレーサ粒子が加えられ,流れの中の断面がレーザシートにより二回照明される。二パルスの時間間隔は,平均流速および画像の撮影倍率に依存する.トレーサ粒子は二回の照明間に,局所流速にしたがって移動すると仮定される。数値化されたPTV 画像から,それぞれの粒子像の位置情報や,輝度,大きさといった付随情報を二値画像を用いて取得し,粒子の移動を解析する。複数時刻にわたり粒子像の移動方向が大きく変わらないことや,周囲の粒子像との相対位置関係が大きく変わらないことなどを利用して,複数時刻にわたる同一粒子を追跡する。局所流速ベクトルの光シート内成分,即ち二成分速度ベクトルが,二照明間の時間差と画像の倍率を考慮して求められる。このプロセスが,PTV 画像のすべての検査領域について繰り返される。流れ場の可視化研究について以下の報告がされている.
【0053】
深野らは火花点火式天然ガス機関の燃焼室内の流動が機関性能に及ぼす影響を把握することを目的に,燃焼室内の流動場の解明に取り組んだ(Y. Fukano, H. Hisaki, S. Kida, T. kadota, :火花点火式天然ガス機関の燃焼室内における流動特性,in Japanese, Journal of JSME,B, 64, (1998), 272-278)。CCD カメラによるPTV 法にイメージインテンシファイアを応用した高分解能流速計測法を構築し,それを用い燃焼室内における流動場を測定断面,測定クランク角を変え計測した。富松らは噴霧燃焼装置における輝炎を伴う内部流れをPIV(Particle Image Velocimetry,粒子画像流速測定法)計測する方法を示した。また,速度計測と同時に,噴霧燃焼火炎の構造についても観察を行うことで総合的に噴霧燃焼場を観察した(S. Tomimatsu, N. Fujisawa, and A. Hosokawa.:噴霧燃焼器における内部流のPIV 計測に関する研究, in Japanese ,The Visualization Society of Japan , 20, (2002),389-392)。
【0054】
これらのようにPIV,PTV 計測には燃焼装置内の可視化の報告が多い。しかしながら,燃料液滴列の燃え広がりにおける液滴周りの過渡的流れについての報告はない。通常重力場において,第三液滴に燃え広が起こる前に第三液滴が第二液滴から遠ざかる方向へ移動したことから,第一および第二液滴の燃え広がりによって生じる流れが第三液滴を移動させると考えられる.よって,本発明においては、1予備実験例として、燃え広がり時における第三液滴周りの流れ場の可視化を行った。その際に用いた実験配置は、図9に示される。
【0055】
[本発明の計測装置例]
本発明の計測装置例の全体の概略を図10に示す。このPTV 計測装置は,前述の図1の装置に,光源である銅蒸気レーザ,光学系およびトレーサ粒子発生装置を新たに装着したものである。銅蒸気レーザは、最大出力4 mJ/pulse,パルス幅10 〜 40 ns である。銅蒸気レーザから照射されたレーザ光は、シリンドリカルレンズを通ってシート状になり,反射鏡で反射された後,液滴の下方から上方に向かって照射される。可視化範囲でのレーザシート幅は0.2 mm である。図11に可視化範囲を示す。可視化範囲は第二液滴と第三液滴を含む図の点線で囲った範囲である。この例の装置を用いたPTV 計測においては,第三懸垂線を設置しなかった.第一液滴および第二液滴の無次元液滴間隔l は5.5 であり初期液滴直径do は0.8 mm である。光学測定にはイメージインテンシファイアを二段に接続してトレーサの散乱光を高速度カメラで撮影した。高速度カメラの露光時間は900μs,銅蒸気レーザ照射時間は10〜40 ns である。撮影速度は1000 fps とした。計測の際,外部からの対流を遮断するため,実験部をアクリル板で囲って、ハウジングを形成した。
【0056】
[タイムチャート]
同期箱と各装置の配線を図12に、タイムチャートを図13にそれぞれ示す。図13において、(1)(2)プルダウン式のトリガー信号をトリガースイッチによって同期箱に入力した。同期箱を介して高速度カメラにトリガー信号が入力される。(3)トリガー信号を受けた高速度カメラは1000 fps で画像を撮影し,ストロボ信号をI.I.に出力する。トリガー信号とストロボ信号の開始時刻は同じである。ストロボ信号を受信したI.I.は,0.04μs 遅れてシャッタを900μs 開く.(4)(5)ストロボ信号は同期箱を介して銅蒸気レーザにも出力される。銅蒸気レーザは0.04μs 遅れて照射時間10〜40ns のレーザを照射する。その瞬間, I.I.および高速度カメラはトレーサ粒子からの散乱光を受け取ることができる。
【0057】
[銅蒸気レーザ]
図14に銅蒸気レーザの概観を,表9に銅蒸気レーザの仕様を示す。微小なトレーサ
粒子からの散乱光によってビデオセンサーが露光されることから,粒子照明のための高出力光源が必要である。より良い光散乱効率を求めて大きな粒子を用いると流れに正確に追従しなくなるという矛盾が生じるからである。多くの応用では,レーザ出力とトレーサ粒子直径の条件を考慮して妥当な組み合わせが用いられる。本発明ではトレーサ粒子を極力小さくするため,高出力の銅蒸気レーザを選定した。
【0058】
【表9】



【0059】
[トレーサ粒子]
表10 に、この例の装置で用いたトレーサ粒子の仕様を示す。トレーサ粒子は燃え広がりの過渡的流れを捉えるために、流体に対して追従性のよい直径を選定した。また,燃焼を伴う現象であるため,燃焼の熱によってトレーサ粒子が焼失しない物質を選ぶ必要があった.粒径1.5 μm,密度2.0 g/cm3 のSiO2 粒子を用いた。
【0060】
【表10】



【0061】
[トレーサ粒子供給装置]
トレーサ粒子発生装置の概略を図15に示す。トレーサ粒子の供給方法には種々の方法がある。最初,大粒径のトレーサ粒子を実験装置内部へ圧縮空気を用いて噴出することを試みたが、測定部での平均トレーサ粒子直径が100μm と大きく,流体の追従性が悪くなったため,新たなトレーサ粒子発生装置を開発した。トレーサ粒子発生装置は,超音波装置の振動を利用してトレーサ粒子を浮遊させる。その後ファンによってトレーサ粒子を送り出され,重力分級装置を経た後,実験装置内部に供給される。この種の粒径の微粒子の避けられない一般的な傾向として、トレーサ粒子は、中程度の粒径(個数平均粒径付近の粒径)の粒子の割合が多く、粒径が小さいものほど、及び、大きいものほど、含有率が少なくなる山型の粒度分布を示す(常に、理想的なガウジアン分布を示すとは限らず、いびつな山型であることも多い)が、悪影響を及ぼすのは主に大粒径の粒子である。重力分級装置を経た後、この大粒径の粒子の部分は取り除かれ、トレーサ粒子直径は平均2.9μm となった。
【0062】
[重力分級装置]
重力分級装置の概略を図16に示す。超音波の振動により,微細化され浮遊したトレー
サ粒子は供給ファンにより重力分級装置を経て実験装置内部へ供給される。その際,粒径
2.0μm程度の粒子のみを取り出し大きい粒子直径を取り除いた。大きい粒子径は質量が大
きい(質量は粒径の3乗に比例するので粒径の小さな差異が、質量の大きな差をもたらす)ため長い流路を通過する間に沈降する。一方,小さな粒子径は長い流路で沈降しない
ため実験装置内部に供給される。流路の寸法は流露方向に1650 mm,縦80mm,横40mm
±20%程度とすることが好ましい。
【0063】
[トレーサ粒子直径測定方法]
流体に対して追従性のよいトレーサが供給されているかどうかを確認するため,トレーサ供給装置から供給されるトレーサ粒子直径を測定した。粒度分布測定装置および顕微鏡を用いて計測を行った。
【0064】
[粒度分布測定装置(LDSA)]
レーザ光散乱方式粒度分布測定装置は,平行光束中にある粒子が散乱する光の散乱角を利用して、散乱光強度の散乱角依存性と粒子直径の関係から粒子直径を測定する。フウンホーファ回折を利用した装置である。LDSA の詳細を表11に示す。光源としてHe-Neレーザ(波長632.8 nm, 赤色)を使用し,レーザから出力されたビームは,コリメータで直径約6 mm の平行なビームになる。ビームは,レンズを介し,センサの中心に焦点を結ぶ。センサは,同心円状になっており,センサの内側から外側に向かって順次散乱角に対応した散乱強度が測定できる。ある直径の粒子がレーザ光中に入ると,その粒子直径の大きさによってさまざまな散乱パターンが生じる。粒子直径が小さい場合は,散乱角は大きくなり,粒子直径が大きい場合は,散乱角は小さくなる。いくつかの粒子が,同じある散乱角で散乱した場合,その散乱光は,センサの中心から同円周上に集光する。
【0065】
【表11】



【0066】
[顕微鏡装置]
トレーサ粒子発生装置の供給口にスケール付プレパラートを置き,トレーサ粒子を付着させ,顕微鏡によって測定した。
【0067】
[トレーサ粒子計測方法]
トレーサ粒子の計測は、つぎのようなシーケンスで行われた。
1. 予め銅蒸気レーザの暖機を行う。水道水の蛇口を開け冷却用の水を出す。ネオンガスの栓を開け,銅蒸気レーザのスタートスイッチを入れる.その際,点灯ランプに注意し必ず異常がないかどうかを確認する。スタートスイッチを入れてから,レーザが使用できる状態になるまで約1時間待つ。
2. 各装置の配線を行う.シーケンサとスイッチボックスのケーブルを接続し,スイッチボックスのPLS1出力をモータドライバへ,OUTPUT1を電磁弁へ,OUTPUT2を高速度カメラ
へ,OUTPUT5を点火装置へそれぞれ接続する。
3. コンプレッサーへ空気を充填し,空気スライドステージの動作を確認する。スライドステージの動作確認には,スイッチボックスの『A』ボタンと『B』ボタンを1度ずつ押し,メインメニューランプ『1』,『2』が点灯していることを確認する。『X』ボタンを押すことによりステージを前進させることができる。また,前進したステージを後退させる場合,同様に『X』ボタンを押す。また,スピード調整バルブでステージの前進・後進の速度を調節する。
4. マイクロシリンジへ燃料を充填し,黄銅細管の先端から液滴が生成されることを確認する。液滴が生成されない場合は黄銅細管の付け替えを行う。また,1週間に1度,必ず全ての黄銅細管を交換することが望ましい。
(注)マイクロシリンジ内に異物が混入しないよう,燃料充填時には細心の注意を払う
5. マイクロシリンジを燃料押し出し装置にセットし,ステッピングモータの回転量を設定して,直径0.8 mm の液滴が生成できるようにする。ステッピングモータの回転量の設定には,スイッチボックスのメインメニューランプをメインボタンの『C』スイッチを押し『3』のみが点灯している状態にする。この状態で『X』,『Y』,『Z』のボタンを押すことにより出力パルス数の調節が行われる。
(注)シリンジステッピングモータのステップ数
『X』・・・10 ステップ(例)20 ステップ・・・『X』2 回―液滴直径0.5mm
『Y』・・・100 ステップ50 ステップ・・・『X』5 回―液滴直径0.8mm
『Z』・・・1000 ステップ
6. 懸垂線の位置を合わせる。位置の設定が終了後,黄銅細管の位置調節を行い,実際
に懸垂線へ液滴を生成する。続いて,点火線の位置を調節し第1懸垂液滴に点火し燃
焼することを確認する。ステッピングモータの回転量を設定した場合,メインメニューランプ『1』,『2』を点灯させた状態で『Y』ボタンを押すことでステッピングモータを作動させることができる。さらにこの状態で『Z』ボタンを押すことで点火が行われる。
7. 部屋を暗くし,銅蒸気レーザを発振する。このとき,レーザが安定状態になっていることを必ず確認する。その際,線香の煙を用いてレーザシートの調整を行う。
8. トレーサ粒子発生装置を作動させ,粒子供給ファンを調整しながらトレーサ粒子を実験装置内部に十分供給できるようにする。その際,銅蒸気レーザの光源を利用してトレー
サ粒子の供給量を確認しておく。
9. 高速度カメラおよびI.I.の設定を行う。
(注)I.I.を用いる場合,I.I.に強い光を当てないよう部屋を必ず暗くする。
10. 装置の周りをアクリル板で覆う。また,実験を長時間行わない場合,黄銅細管からSUS管内までの燃料は蒸発してしまうため,すべての準備が整った後,実験開始前に再度シリンジ内の燃料を充填しておく。
11. 実験を開始する場合,トレーサ粒子発生装置を作動させ,銅蒸気レーザを照射し始める。スイッチボックスのメインメニューランプ『1』,『2』を点灯させた状態にし,『X』ボタンでステージを前進,『Y』ボタンで液滴を生成,『X』ボタンでステージを後退,『Z』ボタンで第一液滴へ点火すると同時に高速度カメラにトリガーを送信し撮影を行う。
12. 撮影した画像はジャズドライブと8 ミリテープに保存する。そして,TIF 画像からBMP画像に変換を行いPTV 解析ソフトで解析を行う。
【0068】
〔計測手法〕
流体計測ソフト「Flow-PTV」(株式会社ライブラリー)を用いて流れ場を解析した。
1. 撮影した画像をTIF 画像からBMP 画像に変換し,PTV 計測ソフトを用いて解析を行う。
2. PTV 計測での各計測・追跡決定条件
格子間隔・・・X―10
Y―10
ベクトルパラメータ・・・10 倍
マスク,範囲,スケール,撮影コマ数を各設定する。
3. 物体輝度範囲と物体輝度面積の項目の調整を行う。非常に細かいトレーサ粒子のPTV計測を行う場合,特別2 値化の項目をONにする。連番ファイルおよびテキストデータで保存する。
(注)粒子の数と方向,ノイズおよび連番写真の粒子の動きに注意する。
4. 予め,燃え広がりが起こる前の第二液滴周辺の初期速度をテキストデータから確認する。その際,粒子のx 方向速度ベクトル,y 方向速度ベクトルの平均値を初期速度とした。
5. 各画像シーンの各粒子(カップルナンバー)のx 方向,y 方向速度をテキストデータから読み取る方法は各粒子のベクトル始点にマウスを合わせ,右クリックをし,粒子のカップルナンバーを確認する。そのカップルナンバーとテキストデータのカップルナンバーを一致させx 方向,y 方向の速度を得る。
6. x 軸方向流速と無次元距離の関係を時間の経過を追って調べた。
【0069】
〔微小重力場〕
ディーゼル機関やガスタービンなどの噴霧燃焼における燃料液滴は非常に小さいため,対流の効果が小さく,球対称に近い現象が生じると考えられる。一方,微小燃料液滴を用いて燃焼実験を行うには多くの困難が伴うため,直径1 mm 程度の比較的大きな燃料液滴を対象として計測が行われることが多い。燃料液滴の直径が大きい場合,対流の影響を受けやすく,この効果を低減して上記の現象を模擬するためには,微小重力環境下において計測を行う必要がある。本発明においても,直径0.8 mm 程度の液滴を用いて計測を行っている。燃え広がりによる第三液滴の移動を考察する上で自然対流による現象の複雑化および重力による振り子の復元力を除去するため,微小重力環境下において計測を行った。
【0070】
[実験装置]
微小重力計測装置全体の概略を図17に示す。微小重力計測装置には通常重力場の計測装置を落下カプセルに搭載できるように改良した。付け加えた装置は、微小重力検知センサ,CCD カメラ,高圧空気タンクおよびレギュレータである。計測は,落下塔を用いて行った(微小重力時間1.1s).光学測定装置は,CCD カメラおよびバックライトによって構成されており,液滴の輪郭像と火炎の自発光像を連続画像として記録した。落下カプセルはウィンチによって落下塔上部まで持ち上げられる。落下塔上部にて初期液滴直径0.8 mm の液滴を生成し,落下を開始させた。微小重力検知センサは微小重力状態を検知し,シーケンサにトリガー信号を送る。シーケンサは点火装置を作動させ,液滴が燃焼を開始する。そして,第三懸垂液滴の挙動を観察した。
【0071】
[落下塔]
微小重力環境を実現するために,日本大学生産工学部ハイテクリサーチセンター内にある落下塔を用いた。落下塔は自由落下法によって微小重力環境を実現させる装置であり,真空中をカプセルが落下する方式と大気中を落下する方式の二方式がある。本学の所有する落下塔は大気中を落下する方式である。図18に落下塔の全景を示す。落下塔は,全高8.6m,自由落下距離5.4 m,減速部0.9 m であり,約1.1 s の微小重力環境を実現できる。落下塔内部にある2 本のガイドワイヤーは鉛直に設置されており,昇降時および着地時のカプセルの回転を防ぐ。カプセルの昇降はウィンチによって行われる。ウィンチは落下塔脇に設置されており,ワイヤーが落下塔上部に取り付けられた2 つの平滑車を介して、カプセル切り離し装置に接続されている。また,落下塔上部にはカプセル切り離し装置を固定するためのガイドレールが設置されている。ガイドレールにはリミットスイッチが取り付けられており,カプセル切り離し装置がガイドレールに進入しリミットスイッチが作動すると,ウィンチは自動的に停止する。カプセルの落下衝撃を効率よく吸収するため,落下塔底部減速室内のスポンジマットは,エアーダンパ構造となるように配置してある。
【0072】
[落下カプセル]
図19に落下カプセルの概略を示す。落下カプセルは外カプセルと内カプセルの二重構造となっており,測定装置は内カプセルに搭載されている。落下前,内カプセルは外カプセル内の上部に位置し,両者の底部には150 mm の距離がある。カプセル落下中,外カプセルは空気抵抗を受けるため,自由落下より落下速度が遅くなり,両者は次第に接近し着地時に接触する。このような構造により実験装置が搭載されている内カプセルの対気速度はきわめて小さく,空気抵抗による自由落下からのずれを小さくできる。内カプセル内部の重力加速度は10-4 G0 程度である。
外カプセルの構造材にはアルミニウム合金を用いた。直径1.0 m,全長1.4 m,質量約100kg であり,底部には落下時の空気抵抗を低減するため木製の円錐台が取り付けられている。内側底部には,内カプセル衝突時の衝撃を吸収するためのスポンジと,跳ね上がり防止のための7 つの吸盤が設置してある。外カプセルの外壁には2箇所の作業窓があり,外カプセルから内カプセルを出さずに内カプセル内の計測装置へ作業ができるようになっている。
装置が搭載されている内カプセルは,直径0.8 m の天板,底板および四本の柱で組まれている。天板上には,CCD カメラ画像の出力用端子×2 本(BNC connector),AC100V 供給用端子(Connector1 , 4Pin) , 液滴生成スイッチ用端子(Connector2,8Pin) がある. BNCconnector はビデオカセットレコーダへ映像を出力するための端子で,落下中も外部のビデオレコーダと接続されている。Connector1 とConnector2 は落下時に切り離される。落下中にも電力を必要とするため,オムロン製バックアップ100 VAC の電源を用いて電力供給を行った。底板上には窒素ボンベが搭載されており,充填窒素はエアスライドステージの前進・後進移動に用いられる。また,内カプセルには計測装置をはさむように2 枚の八角形プラットホームが設置されており,それぞれの上に装置が配置されている。
【0073】
[[カプセル切り離し装置]]
[変更前落下切り離し装置]
図20にカプセル切り離し装置の概略を示す。この切り離し装置は,エアシリンダ,電磁コイル,ソレノイドバルブ,エアタンクからなる。カプセルの切り離しは,カプセルに取り付けてある吊り板から2 本のピンを引き抜くことでカプセルを切り離す。カプセルの重量はピンA のみで支えており,ピンB は安全用のピンである。ピンの操作は落下塔脇のコントロールパネルで行う。
コントロールパネルのスイッチ配置を図21に示す。パネル1 にあるスイッチは安全装置に関するものである。SW 1P とSW 1S をON にし,リセットボタンで安全装置を解除する。パネル2 は切り離し装置の制御用スイッチであり,計測時はRELEASE 側に,落下塔内で作業をするときなど通常はSET側にしておく。パネル5 のSW 5P はDC 5Vの電源装置のスイッチである。ON にすることで,パネル1 へ電力が供給される。パネル6 の二つのボタンは落下カプセルを切り離すためのスイッチである。一つめのボタンを押すと切り離し装置の電磁コイルが働き,ピンBが解除される。二つ目のボタンを押すことでソレノイドバルブが開き,エアシリンダが作動することでピンA が解除される。計測時は,二つのボタンを同時に押すことで,カプセルを切り離す。
【0074】
[変更後落下切り離し装置]
図22に変更後の切り離し装置の構造を示す。初期の落下方法では,切り離しの振動が第三懸垂線を微小重力中に移動させてしまうため,従来の切り離し装置を大幅に変更した。現在の切り離し方法は,切り離し時の振動を最小限にするため,ケミカルテープをニクロム線で加熱することにより切り離す構造である。ケミカルテープ(白色)は,吊り上げるカプセルの重量,ニクロム線の熱量および実験の容易さを考慮して選定した。図23に結び方を示す。ケミカルテープを用いて外カプセルおよび内カプセルを吊りあげるためもあい結びを採用した.もあい結びはカプセルの重量を利用して結び目が締まるような結び方であり安全であった。
【0075】
[操作方法]
1.各装置の配線を行う。落下装置,電源,CCD カメラ,ビデオカセットレコーダの接続を行い,窒素ボンベの栓を開ける。
(注)窒素ボンベのMAX 充填圧力は,120「kgf/cm2」である。
2. PTV 地上実験での実験方法2〜6 までと同様な設定および操作を行う.
(注1)PTV 地上実験3 において,コンプレッサーへの充填は微小重力実験では行なっていない。
(注2)PTV 地上実験6 場合の点火線の位置調整は,微小重力実験の場合点火線の構造を変更しているため調整法が異なる。
3. 実験装置の調整および設定が終わり次第,内カプセルを外カプセル内に挿入し,ウィンチで吊り上げる。
4. 落下塔底部の減速室に衝撃吸収のためのスポンジマットを敷き,落下カプセルを落下塔上部までウィンチを使用して上げる。
5. 落下塔内の安全を確認後,コントロールパネル上のスイッチを以下の順でON にする。(各スイッチの説明,配置は図21に示す)
6. パネル1 のSW 1P, SW 1S →SW 1R でRESET →パネル5 のSW 5P→パネル2 のSW
2L をRELEASE 側にする。
7. リモートコントロールで懸垂線に液滴を生成,付着させる。
(注)微小重力実験では,落下塔際上部にて落下直前に液滴を生成する。
8. 液滴が目標のサイズになったことを確認し,ビデオカセットレコーダの録画を行う。
9. すべての落下準備が整い次第,パネル6 のSW 6B ,SW 6R の二つの切り離しボタンを同時に押しカプセルを切り離す。
10.ビデオカセットレコーダに録画した映像の解析を行う。
【0076】
[計測方法]
1. ビデオカセットレコーダに保存した映像を確認する。
2. 第三液滴の移動距離を求める場合,初期位置を正確に決定し画面上の移動距離をノギスにて計測する。画面上の距離に倍率をかけて実際の移動距離を求める。
3. x 方向およびy 方向の無次元距離と時間の関係をデータにした。
【0077】
[実験パラメータ]
等価液滴直d0,無次元液滴間隔s および無次元移動距離Δx を以下に定義した。
[等価液滴直径]
液滴直径には,液滴の短径a および長径b を用いてd0=(a2b)1/3 により定義される等価液滴直径を用いた。液滴列の初期直径としては第二初期液滴直径と第三液滴初期直径の平均値を用いてd0 と表記した。
【0078】
[無次元液滴間隔]
液滴間隔は第二液滴と第三液滴の距離を第二初期液滴直径と第三初期液滴直径の平均値d0 で除し,無次元液滴間隔s とした。
[無次元移動距離]
第三液滴の移動量は燃焼前の位置を基準にして,そこからの移動量を第二液滴初期直径と第三初期液滴直径の平均値で除して無次元移動距離Δx とした。
【0079】
[燃え広がり誘導時間]
点火の定義は,燃料液滴の周囲に火炎の発光が確認された場合とした。燃え広がり誘導時間は燃え広がりが第二液滴から第三液滴までに要する時間である。燃え広がり誘導時間には20 / F at l = で表されるフーリエ数を用いた。温度伝播率( ) P / a C λ ρ = であり、定圧比熱P C は300 k での空気の値を用い,密度3 kg/m ρ は300 k での空気の値とした。
【0080】
[計測条件]
計測は,通常重力場および微小重力場で行った。 通常重力場では,初期液滴直径d0 が0.8 mm および0.3 mm で行い,液滴間隔を変化させ第三懸垂液滴の挙動を観察した。PTV計測においては無次元液滴間隔s は5.5 に固定した。初期液滴直径d0 は0.8 mm とし,第二および第三液滴周りの流れ場の可視化を行った。微小重力場では,初期液滴直径d0 は0.8 mm とし,第三懸垂液滴の挙動観察を行った。
燃料には正ヘプタンを使用し,雰囲気には大気圧の空気を用いた。空気温度は300±3K とした。
【0081】
[[本発明の測定方法の応用例]]
このような本発明の測定方法は、以下のような種々事項の考察、解析に応用することができる。
[燃焼の準定常理論]
単一液滴の準定常理論を理解することにより,燃料液滴列での燃焼や液滴の移動の考察をより深く理解することができる。ここでは単一液滴の準定常理論について説明する。
燃料液滴の燃焼では燃料蒸気と空気(または酸素)の拡散と熱移動とが現象を支配している。これらのことを考慮して,一つのモデルを構築してみると図24のようになる。
すなわち,半径1 R の液滴は火炎面などの外部から熱を受けて蒸発し,燃料蒸気を吹き出す。燃料蒸気は外側に向かって拡散し,外側から内側に向かって拡散してきた空気と反応し,火炎面を形成する。したがって,火炎面では燃料蒸気および酸素濃度はゼロとなり温度は火炎温度f θ となる。
【0082】
[燃料蒸気の物質移動]
燃料蒸気濃度は混合気1kg 中に燃料蒸気F kg C 含まれているとすれば,C F kg/kg であり,混合気の密度を3 kg/m ρ とすればその量はρC F である。燃料蒸気は液滴表面で飽和しており濃度差で外側に拡散していくものと考えられるから,拡散係数をD m2 /s とすれば単位時間,単位面積あたりに-D・d(ρC)/drの燃料蒸気が分子拡散していく。さらに,燃料蒸気は吹き出し速度u が与えられているので単位時間,単位面積あたりにρCFu の燃料蒸気が外側に向かって対流で移動するから両者を加えるとρCFu-D・d(ρCF)/drとなる。
もともと吹き出し速度は混合気全体を外側に移動させているのであるから,その分の単位時間,単位面積あたりの移動蒸気量はρu である。したがって,両者を等しいと置けば
【0083】
【数1】



【0084】
となる。燃料蒸気層内を添字1 であらわし,式(1)を適用してみる。燃料の単位時間当たりの蒸発量をw kg/s とすれば
【0085】
【数2】



【0086】
となる。火炎面外側の領域を添字2 であらわすと,そこでは濃度OX C の酸素が内側に向かってD2・d(ρCOX)/drだけ拡散してくる.しかし,外側に向かった吹き出し流のためにρCOX u け妨げられる.火炎面内で燃料蒸気と反応して酸素がゼロとなるためには理論上のζ倍の酸素が必要であれば
【0087】
【数3】



となる。これが物質移動の式である。境界条件は火炎面上でとると、
【0088】
【数4】




として式(3)に代入して
【0089】
【数5】




となり、図25に濃度分布の概要が示される。
【0090】
[熱移動]
火炎面内側の温度をθとすれば単位時間,単位面積あたりに内側に向かってλ11/ / dr の熱が伝わり,外側に向かって吹き出し流によりCP1 ρ1u(θ1W)の熱が運び去られ,その差がwH の燃料蒸気を発生させると考えられるから,燃料の蒸発潜熱をL とすれば
【0091】
【数6】




となる。ただしθWは液滴表面温度である。
火炎面より外側の領域においては燃料の発熱量をH とすれば,燃焼反応による全発熱量wH のうちからwL を差し引いた( ) w H L . が外側に向かって伝導しかつ,吹き出し流CP2 ρu(θ1)によって移動するから
【0092】
【数7】




となる. θ∞ は遠方の温度である.これらが熱移動の基礎式である.境界条件は火炎面内側に対して
【0093】
【数8】




火炎面外側に対して
【0094】
【数9】




となる。この解は
【0095】
【数10】




となる。図36に温度分布の概略を示す。
式(4)においてr = ∞として
【0096】
【数11】




近似式を使えば
【0097】
【数12】




燃焼速度定数Cb
【0098】
【数13】




で定義されdt 時間にdRだけ液滴の半径が小さくなったとすれば液滴の密度ρf としてdt 時間の蒸発量 w dtは
【0099】
【数14】



であるから
【0100】
【数15】




となり燃焼速度定数から蒸発量が求まる。
【0101】
[[常重力場]]
[モードの定義]
燃え広がり形態によって第三液滴の移動が変化すると考えられるため本発明では燃え広がり形態を以下のように定義した。
図27は燃え広がりモードの概念図である。モード1 は第二懸垂液滴の火炎に第三懸垂液滴が包まれて燃え広がりが起こる場合,モード2 は第二懸垂液滴の火炎が第三懸垂液滴に燃え広がる前に球状火炎になり,第三懸垂液滴に燃え広がった場合,モード3 は第三懸垂液滴の火炎が第二懸垂液滴の火炎とは独立に発生した場合,モード4 は第三懸垂液滴が燃え広がらなかった場合とした。
【0102】
[[液滴直径0.8 mm の場合]]
[無次元液滴間隔とモードの関係]
図28に初期液滴直径0.8mm の場合の無次元液滴間隔s とモードの関係を示した。s =1.0 ~ 3.0 はモード1 を示し,s = 2.5 ~ 4.0 はモード2,s = 3.5 ~ 7.0 はモード3,s = 6.5 以上では燃え広がらなかった。
【0103】
[液滴の挙動]
図29から32は,火炎燃え広がり挙動の画像と第三液滴の挙動を時間変化で示し手いる。第二懸垂液滴に火炎が燃え広がった時刻t を0.0 s とした.写真の破線は,第三液滴の初期位置を示している。第二液滴から遠ざかる方向を正方向とし,近寄る方向を負方向とした。図中のt i g は第三液滴に燃え広がりが起こった時刻を示している。
図29はモード1 の場合である.無次元液滴間隔s は2.8 である.t = 0 s の画像では,第一液滴が点火した瞬間に,第二液滴に燃え広がりが生じている.t = 0.1 s の画像では,第二と第三液滴がお互いに反発しあって第三液滴が正方向に移動し始めている。 t = 0.15 s では,第三液滴が正方向にさらに移動し,正方向の移動距離が極大になる.t = 0.2 s においては,振り子の復元力により負方向に移動が転じている。t = 0.35 s では,正方向に移動が転じる。t = 0.45 s での移動距離の極大値はt = 0.15 s での移動距離の極大値より大きい値を示した。t = 0.5 s では移動が再び負方向へ転じる。
【0104】
図30はモード2 の場合である。無次元液滴間隔s は3.4 である。t = 0 s の画像では,第一液滴に点火された瞬間に,第二液滴に燃え広がりが生じている。t = 0.1 s の画像では,第二と,第三液滴がお互いに反発しあって第三液滴が正方向に移動し始めている。t = 0.2 sの画像では,第二と第三液滴がお互いに反発しあって第三液滴が正方向に移動し正方向の移動距離が最大になる。t = 0.25 s においては振り子の復元力により負方向に移動が転じている。t = 0.35 s では,再び正方向に移動が転じる.t = 0.55 s 以後は可視化範囲から第三液滴が出てしまい計測が行えなかった。モード2 の場合,第三液滴が移動する原因はs =2.0 の場合と同様だが,注目すべき点は燃え広がりが起こった後の正方向移動距離が大きいことである。
【0105】
図31はモード3 の場合である。無次元液滴間隔s は5.7 である.t = 0.1 s の画像では,第一液滴から第二液滴に燃え広がった瞬間に,第三液滴は正方向に移動した。t = 0.1 s からは,振り子の復元力と自然対流の影響によって第三液滴が負方向に移動していると推察される。 t = 0.4 s の画像では,燃焼によって生じた既燃ガスの流れにより,第二と第三液滴がお互いに反発しあって第三液滴が正方向に移動している。
【0106】
図32は,第三液滴に燃え広がらなかった場合である。無次元液滴間隔s は7.0 である。t= 0.1 s に第二液滴の燃え広がりによって生じた膨張流の影響を受けて第三液滴は正方向に移動し,それ以降は振動する. s = 5.7 と比べて,場合の負方向の移動距離が増大している。これは,自然対流の影響を強く受けたためと考えられる。
【0107】
[燃え広がり前の燃料液滴の移動(ヘプタンの場合)]
図33は,無次元液滴間隔と燃え広がりが起こる前の正方向無次元最大移動距離Δxmax1の関係を示している。 Δxmax1は,第二液滴が初期に発生する燃料蒸気および既燃ガスの流れがによって第三液滴に及ぼす力の度合いを表している。 s = 5.0 以下では第三液滴の移動が起こる前に燃え広がりが起こってしまうため, Δxmax1 をゼロとした。また,正方向の移動中に第三液滴に燃え広がりが生じた場合は白丸で表し第三液滴が燃え広がった位置をΔxmax1 とした。第一液滴から第二液滴に燃え広がりが起こらなかった場合はプロットに加えていない。 Δxmax1 はs = 5.5 からs = 6.5 にかけて減少する。第三液滴は第一液滴の燃え広がりによって生じる熱膨張流により抗力を受けて移動し,さらに第二液滴の燃え広がりで生じる熱膨張流が加わって移動すると考えられる。s > 5.5 においてΔxmax1 が無次元液滴間隔の増加に伴って減少するのは,第一および第二液滴の熱膨張流は無次元液滴間隔の増大に伴って減少すること,および第一液滴の熱膨張流による第三液滴の移動が最大値をとって負方向に移動の向きが転じた後に,第二液滴の燃え広がりが起こることなどが原因と考えられる.即ち,第二液滴に燃え広がりが起こる時点での第三液滴の位置と速度でΔxmax1 が決定されると考えられる。
【0108】
[燃焼による水液滴の移動(水の場合)]
第三液滴の移動に,第二液滴の火炎の熱による第三液滴の蒸発が寄与するかどおか,およびs < 5.5 における第三液滴が受ける抗力を調べるため,第三液滴に水を用いて同様の実験を行った。
図34は無次元液滴間隔と第三液滴のΔxmax1の関係を示している。水の場合は正方向無次元移動距離の初期の極大値をΔxmax1 とした。第三液滴に燃料液滴を用いた場合と同様に,無次元液滴間隔が増大するに伴ってΔxmax1 が減少している。燃料液滴を用いた場合,s = 5.0 付近ではΔxmax1 が0.62 の値を示し,水滴を用いた場合はΔxmax1 が0.4 の値を示している。ここで第一および第二液滴が発生する熱膨張流によって抗力を受けて重力と釣り合う場合を考えると,液滴の変位は液滴の密度に反比例する。両者の値の違いは燃料と水の密度差によって定量的に説明できる.以上より第三液滴の移動に対しては,第三液滴の蒸発の寄与は少ないと考えられる。
【0109】
[燃え広がり後の液滴の移動]
図35に初期液滴直径0.8mm の場合の無次元液滴間隔と燃焼後の無次元最大移動距離Δxmax2 の関係を示している。 Δxmax2 は,第三液滴に燃え広がりが生じてからのΔx 極大値の最大値とした。 Δxmax2 は第二および第三液滴が発生する燃料蒸気および既燃ガスの流れが第三液滴におよぼす抗力の度合いを表している。第三液滴が燃え広がった後, Δxが極大値を示すことなく燃焼を終了した例はなかった。(図29から32を参照)第三液滴に燃え広がりが起こらなかった場合はΔxmax2 を零とした。無次元液滴間隔が1.2 から3.3 までは, Δxmax2 が増大し,s = 3.3 で最大値をとり,s = 7.4 まで減少している。s = 3.3 でΔxmax2が最大値をとる原因は,燃焼前の正方向の移動や,燃え広がり位置,振り子の復元力,自然対流などが現象を複雑にしてしまい,詳細がわかっていない。振り子の機構上,x 方向の移動量が増大すると,上向きの自然対流の影響強く受けてしまう.そのため第三液滴の移動に燃料蒸気と既燃ガスがどのように影響しているかがはわからないため,自然対流と振り子の復元力の影響がない微小重力環境下で実験を行わければならない。
【0110】
[燃え広がり遅れ時間]
第三液滴が燃え広がりが起こる前に正方向に移動する現象が燃え広がり誘導時間におよぼす影響を検討した。図36は無次元液滴間隔と無次元燃え広がり誘導時間τの関係を示している。第三液滴が固定液滴の場合の燃え広がり誘導時間は,第一と第二液滴間の燃え広がり誘導時間とした。固定−固定液滴間の場合のτは,無次元液滴間隔s = 6.2 付近で無限大になる。固定−移動液滴間のτはs = 5.8 付近で急激に大きくなる。無次元液滴間隔が5.5〜5.8 の範囲では,固定−移動液滴の場合,第三液滴が燃え広がり前に第二液滴から遠ざかるため,固定−移動液滴間の場合に比べてτが長くなり,燃え広がり限界は短くなると考えられる。
【0111】
[液滴直径0.3 mm の場合]
これまでの実験は初期液滴直径が約0.8mm を用いて行ってきた。初期液滴直径を小さくした場合,自然対流の影響が減少し,微小重力場における燃え広がり現象が観察できる。そこで,初期液滴直径を0.3mm とし,実験を行った。
【0112】
[無次元液滴間隔とモードの関係]
図37に初期液滴直径が0.3mm の場合の無次元液滴間隔とモードの関係を示した。燃え広がり限界は初期液滴直径0.8mm の液滴の場合,s が約6であるのに対し,初期液滴直径が0.3mm の場合は,s が約12 と2倍にまで増大していることがわかる。液滴直径が大きい場合,自然対流が強くなり液滴の火炎を上方へ引き延ばす。逆に液滴直径が小さい場合,自然対流は弱くなり火炎が球状に広がる。したがって,初期液滴直径0.8mmの場合と比較して,初期液滴直径に対する火炎燃え広がり方向の火炎直径が大きくなるため,燃え広がり限界を示すs が大きくなったと考えられる。
【0113】
[燃え広がり前の燃料液滴の移動]
初期液滴直径0.3mm の場合においても,第三液滴の燃え広がり前の正方向移動が観察されたため,d0 = 0.8 mm の場合と同様なデータ整理を行った。
図38にΔxmax1 と無次元液滴間隔の関係を示す。 Δxmax1はs = 11 付近から減少している。d0 = 0.3 mm の場合の燃え広がり前の液滴の挙動は,d0 = 0.8mm の場合と定性的に同じであることがわかった。d0 = 0.3mm の場合のΔxmax1 の最大値はd0 = 0.8 mm の場合のそれと比較して約2 倍に増大している。液滴直径が減少すると液滴の移動が顕著になることがわかった。
【0114】
[燃え広がり後の液滴の挙動]
初期液滴直径0.3mm の場合は第三液滴の燃焼時間が短いため,燃焼後の移動を観察することができなかった。
【0115】
[燃え広がり遅れ時間]
初期液滴直径0.3mmの場合の,無次元液滴間隔と無次元燃え広がり誘導時間τの関係を図39に示す。固定−固定液滴間の場合のτは初期液滴直径0.8 mm の場合と同じ定義にした。固定−固定液滴間の場合のτは,無次元液滴間隔s = 12.5 付近で無限大になる。固定−移動液滴間のτはs = 11.5 付近で急激に増大する。無次元液滴間隔が10〜11.5 の範囲では,固定−移動液滴間の場合,第三液滴が燃え広がり前に第二液滴から遠ざかるため,固定−固定液滴間と比べてτが長くなり、燃え広がり限界が小さくなると考えられる。初期液滴直径が0.3 mm の場合のτは,初期液滴直径が0.8 mm の場合のτと定性的に同じ無次元液滴間隔依存性を示した。
【0116】
[[PTV 計測]]
燃え広がりが起こる前に第三液滴が正方向へ移動した原因を詳しく調べるため,第二液滴に燃え広がりが起こることによって生じる流れをPTV 計測した。
【0117】
[トレーサ粒子直径、粒度分布測定結果]
トレーサ粒子直径の測定には粒度分布測定装置(LDSA)を用いた。実験開始当初,トレーサ粒子供給のため,空気の噴流を用いてトレーサ粒子を散布させていた.図40は空気噴流を用いた場合のトレーサ粒子径の粒度分布を示す。トレーサ粒子直径は約8μm と60μm に二つのピークの極値を持ち、1次粒子と、多数の1次粒子粒子が凝集した巨大な2次粒子とを含むことがわかる.しかし,超音波の振動を利用しトレーサ粒子を散乱させた場合の結果を図41に示す。トレーサ粒子直径は約2.9μmの付近の粒子が大部分であった。この結果を個数分布に変換すると図42になり,粒子直径約2.9μmのトレーサ粒子の個数が大部分であることがわかる.
【0118】
[顕微鏡写真結果]
図43にトレーサ粒子の顕微鏡写真を示す。メモリ間隔は10μm であり,丸で囲った中に見える点がトレーサ粒子である。トレーサ粒子直径は約2.0μm であった。粒度分布測定装置の測定結果と顕微鏡写真の測定結果が一致した。よって,小さいトレーサ粒子直径を供給することができたと考えることができる。
【0119】
[トレーサ粒子の運動]
注入トレーサ法は,流れの場に流体と同じ動きをする種々の目印となる物質,いわゆるトレーサ粒子を加えて,その描く線および模様により流れの状況を可視化する方法である,これまで使用されている可視化手法の中で最も簡便で広く利用されている手法の一つである。
流れの状況を正確に把握するためには、流れに対して追随性の高いトレーサ粒子を選択し,それを十分に制御された方法で流れに混入する必要がある。
注入トレーサ法で流れを可視化するとき,使用するトレーサ粒子の流れへの追随性は、可視化の精度を左右する重要な因子の一つである。そのため,対象とする流れの速度,流れ場の形状,流体の種類などを考慮して,トレーサ粒子の流れへの追随性について予め検討しておく必要がある。追随性に影響する主な因子として,ブラウン運動,加速・振動場における追随性などがあげられる。本項においてはブラウン運動,加速,熱泳動の影響について検討を行う。
【0120】
[粒子のブラウン運動]
空気の粒子が様々な方向から様々な速さで粒子に衝突することによって,粒子は規則性のない乱雑な動きをする。この動きをブラウン運動と呼ぶ.空気の粒子の熱運動は,温度が高くなれば活発になるため,ブラウン粒子も動きが活発になる.よって,空気の粒子が勢いよく衝突するため,ブラウン粒子が突き動かされる量も大きくなり,ブラウン運動は温度が高いほど活発になるということがわかる。ブラウン粒子が大きくなると,質量も大きくなるため,空気の粒子がブラウン粒子を突き動かす量は小さくなる。また,ブラウン粒子の表面積が広くなるため,一度に多量の空気の粒子が様々な方向から衝突することで,互いの力が打ち消しあい,ブラウン粒子が受ける力は小さくなる.このことから,ブラウン粒子が大きいとブラウン運動が起きにくくなることがわかる。
【0121】
【数16】




ここで, k はボルツマン定数,T は流体の絶対温度, tは時間である.本発明では,流体温度2000 K とし,
【0122】
【数17】




と,表すことができる。本発明において,直径d=2.9 μm の粒子が1 ms でブラウン運動する移動距離は,
【0123】
【数18】




となる.1 ms に移動する距離は, 0.18 m μ となり無視できる値である.
【0124】
[温度勾配による粒子の移動(熱泳動)]
温度勾配のある流れ場を浮遊する微小粒子は,熱泳動により高温部から低温部へ移動する.粒子の移動速度v は次式で与えられる。
【0125】
【数19】



【0126】
ここで,T は流体の絶対温度,dt / dy は流れ場の温度勾配,λf,λpは流体および粒子の熱伝導率である.本研究においては流体の温度t=300 k,熱伝導率λf = 0.0259W/m K ,動粘性係数νf= 15.5 mm2 / s, SiO2 の熱伝導率λP =1.38W/m Kであり,温度勾配dt/dyは準定常理論から断熱火炎温度2270 K とし算出すると400 K/mmに成る。 300 Kの空気中の移動速度vは、
v=0.558mm/s (17)
上式より1 ms に移動する距離は, 0.558μmとなり無視できる値である。
【0127】
[粒子の加速]
ノズル,小孔などから粒子を流体に注に注入する場合,あるいは速度の変化する流れ場を粒子が流れるとき,粒子が流体速度uf に達するまでにある時間を要する。その間,粒子に作用する力は粒子を加速(または減速)する力と流体抵抗であり,流体抵抗はストークスの法則に従うものとする。粒子の加速度dup/dtは次のように表せる。
【0128】
【数20】




粒子の初期速度をゼロとすると粒子の速度p u は
【0129】
【数21】




となる.したがって,粒子が流体速度の99%に達するまでの時間t
【0130】
【数22】




となる.粒子の初期速度がゼロの場合について評価しており,粒子の初期速度が流体速度に近いほど加速時間と移動距離は小さくなる.平均粒直径2.9μm,密度2g/cm3 のSiO2 粒子,PTV 計測から得られた流速60 mm/s について,粒子が流速の99%に達するまでの時間0 t は0.26 ms である。撮影速度は1000 fps であるので,画像が更新されるまでにトレーサ粒子は流体の速度を十分に示していることがわかる。 これらトレーサ粒子の運動が計測に与える影響は小さいことがわかった。
【0131】
[燃え広がりが発生する流れ]
図44は第二液滴に燃え広がりが生じてからのPTV 画像である。流れの挙動を時間とともに示した。第二液滴に燃え広がりが生じた時刻をゼロとした。t = -1 ms において,第一液滴が生じた流れが確認できる.t = 0〜4 ms は,第二液滴に燃え広がりが生じ,火炎が液滴の周りを囲む過程である。第二液滴を中心として放射状にベクトルが表示され,かつ第二液滴から遠ざかるに従いベクトルの長さが減少している。火炎近傍での流速は約120 mm/s である。t = 5〜10 では,火炎近傍のトレーサ粒子が存在しないため,火炎から離れた位置での流速が60 mm/s と観察された。第二液滴の燃え広がりによって生じた熱膨張流が第二液滴を中心として放射状に存在し,第二液滴から離れるに従い流速が減少している.t = 19 ms になると自然対流の影響が現れ,t = 30 ms では自然対流の影響が増大していることがわかる。
【0132】
[初期速度の影響]
列方向にx 軸を設定し,第二液滴から第三液滴に向かう方向を正とした。トレーサ粒子はその供給装置の制約により,平均初期速度25 mm/s で鉛直上向きにx 軸と66°の角度をなして移動していた。平均x 方向速度は10 mm/s であった。速度計測範囲を図45に示す。点線で囲まれた範囲とし,流速データは各時刻において測定された速度ベクトルのy 成分の平均値とした。図46にy 方向速度と時間の関係を示す.時間の原点は第二液滴が燃え広がりを生じた時刻をゼロとした. t = -28 ms において,トレーサ粒子供給装置により,22mm/s の流れが生じている。t = -25 ms において,第一液滴が点火し,熱膨張流の影響を受けてy 方向速度が減少している。t = 0 ms において,第二液滴が燃え広がりを生じy 方向速度は0 mm/s になっている。つまり,第二液滴に燃え広がりが生じる時刻ではy 方向速度は存在せず,トレーサ粒子供給装置が作る流れが現象に与える影響は小さいと考えられる。
【0133】
[流れの空間変化および時間変化]
図47はPTV 計測によって得られたベクトルを時系列で整理する際の計測範囲である。点線で囲まれた範囲で測定された速度ベクトルのx 成分の平均値をデータとした。x 軸方向流速と無次元距離の関係を時間の経過とともに図48に示した。第二液滴からの無次元距離x は,第二液滴中心からのx 軸方向距離を第二液滴の初期直径で除した値である。時刻の原点は第二液滴に燃え広がりが起こった時刻である.第一液滴と第二液滴の無次元液滴間隔は5.5 とした。 t = 0〜30 ms までは流速が30 mm/s を超えている。第一および第二液滴が生じた熱および既燃ガス流膨張流はs = 12.0 付近まで及んでいることがわかる。 このことは図33においてs = 6.0 付近まで第一液滴の熱膨張流の影響が及んでいることを示唆している。t = 50 ms になると,s > 6.0 の範囲では自然対流の影響が強くなり,負方向に流速が転じる。以上より,第三液滴に燃え広がりが起こる前は熱膨張流の影響を受けて第三液滴は正方向に移動し,その後自然対流の影響により負方向に移動したと考えられる。
【0134】
[熱膨張流]
図49にs = 5.7 における火炎燃え広がりの詳細連続画像を示す。第二液滴が燃え広がった時刻をゼロとした。t = 0 ms に第二液滴が燃え広がり火炎が発達していくのがわかる。t = 1 ms において,第二液滴の周囲を進行する火炎が観察できる.t = 2 〜 3 ms のでは,火炎の前縁を進行するトリプル火炎が観察される。t = 4 〜6 ms では,第二液滴を包み込むように火炎が進行し,衝突して吹き出している様子が観察された。火炎が吹き出しをPTV 計測して得られた結果として図50に示す。 流速を火炎が衝突している時刻においての画像を重ね合わせて流速を示した。第二液滴の火炎が衝突している位置において流速が大きくなっていることがわかる。流速は約150 mm/s であった。
【0135】
[[流れの物理的現象]]
[燃え広がり前の移動の計算]
第三液滴が燃え広がる前に第二液滴から遠ざかる現象について,簡単な計算を用いて移動の検証を行う.図51のように一様な流れの中に置かれた振り子が流れにより受ける抗力と重力のつりあいについて計算を行なった。一様な流れの流速はPTV 計測で得られた流速を用いた。以下に計算に用いた数値を示す。液滴半径r を0.4 ×10−3 m ,ヘプタンの密度ρを679.5 kg/m ,空気の粘性係数(大気圧,20℃の場合)μを1.822 ×10−7 Pa s 、PTV 計測より得られた流速V を 50 ×10−3 m ,懸垂線の腕の長さl を30 × 10−3 mとした。
液滴を球と仮定して質量を算出すると
【0136】
【数23】



【0137】
上記の無次元移動距離Δx = 0.29 はつりあい位置での数値である.d0 = 0.8 mm の場合, Δxmax1 は約0.5 である.この数値は第三液滴の移動振幅の最大値であるため,釣り合い位置の値は0.25 であると推察される。以上の結果から,一様流れにおかれた振り子の計算結果と通常重力場のΔx の結果は良い一致を示している。
【0138】
[熱膨張流の流速計算]
PTV 計測より,第二液滴の燃え広がり初期において,第二液滴に形成された予混合層に火炎が伝わり,周囲の流体を押しのけている様子が確認された。図52は第一液滴の火炎の熱によって燃え広がりが生じた第二液滴の,予混合火炎伝播過程を表している。第二液滴の中心から半径r を取り,時間経過を示した。第二液滴に燃え広がりが生じた初期の段階では,火炎の半径が小さく,火炎が第二液滴を進行していくと同時に火炎の半径が増大していく.これは火炎によって加熱され既燃ガスが膨張し,液滴方向には膨張することができないため,液滴外側の方向に膨張したためと考えられる。この火炎半径の増大δF が,第二液滴の周囲の空気を押し出していると考え,簡易的に予混合気層火炎伝播時に発生する熱膨張流の流速を計測した。
図49の画像から第二液滴に燃え広がりが生じた瞬間の火炎の半径から球体の体積を算出した値をV1、燃え広がりが完了した瞬間の火炎の半径から球体の体積を算出した値をV2 とする。増大した体積ΔV は
【0139】
【数24】




となる。PTV 計測の結果では,熱膨張流の瞬間流速は約120 mm/s であった。計算で得られた結果は平均流速85 mm/s であり実験結果より小さい。火炎外側の気体の膨張を考慮していないこと,および,次のパラグラフで計算する燃焼ガス流速より大きな値を示していることより,定性的に本モデルは熱膨張流発生メカニズムを表現していると考えられる。
【0140】
[第二液滴燃え広がり後の既燃ガス流速の計算]
第二液滴にエンベロープ火炎が成立した後の流れが既燃ガスの流れによって生じているのがどうかの検討を準定常理論を用いて行なった。準定常の状態に近いと考えられる。第二液滴が燃え広がりを生じてから10 ms 後の火炎外側の流速計算を行う(図44参照)。この状態では,火炎が球状であり,自然対流の影響が小さい.図53に計算の条件を示す。火炎の温度は断熱火炎温度とし,火炎および液滴の形状は球であるとする。また,火炎の位置は,PTV 計測で得られた火炎の位置を用いた。
図54に,単一液滴の場合の液滴直径の二乗の時間変化を示す。燃焼を開始してから燃焼速度定数kb は2 0.76 mm / s となった。この燃焼速度定数から式(3-12)を用いて蒸発量を計算すると
【0141】
【数25】




になる。ヘプタン−空気予混合気の断熱火炎温度と燃焼によって生じる生成物質の分圧を断熱火炎温度プログラムより計算した。その結果を表12 に示す。液滴燃焼の場合,火炎が形成される位置での当量比は1と考えられることから,当量比1 においての断熱火炎温度と燃焼生成物の分圧率を算出した。断熱火炎温度TFlameは2270.072 K となり,燃焼生成物の分圧率は生成比率が大きい順にN2 =0.715, HO=0.135, CO =0.109 となる。この生成物質の分圧率からダルトンの法則より N, HO, CO の密度を求めると
【0142】
【数26】



【0143】
【数27】




となる。第二液滴に燃え広がりが生じてから10 ms 後の火炎面外縁の流速は,約38 mm/sであることがわかる。図48での第二液滴に燃え広がりが生じてから10 ms 後の火炎半径の無次元位置x = 2.2(実際の火炎半径は1.7 mm である)付近の流速は32 mm/s であり定量的に一致した。このことから,第二液滴に燃え広がりが生じてから10 ms 後の火炎面外側においては,既燃ガスが流れを生じていると考えられる.これらの計算により,モデルを簡略化したにもかかわらず,計算結果とPTV 計測の結果が定性的に一致した。
以上の考察から,燃え広がりによって生じる流れには二つの流れがあることが本発明によりわかった。
1, 火炎が第二液滴の予混合気層を伝播する際に発生する熱膨張流がつくる流れ。
2, 火炎伝播が完了した後,燃焼によって生じた既燃ガスがつくる流れ。
また,予混合火炎伝播により生じる熱膨張流の流速は既燃ガスによって生じる流れの流速よりも大きいことがわかった.
【0144】
[[微小重力場]]
[第三液滴の挙動]
自然対流の影響と振り子の復元力の影響を除去するため,微小重力環境で実験を行った。図55の連続写真は,s = 4.5 の場合の微小重力環境での火炎燃え広がり挙動である。第三液滴の移動を詳細に捉えるため,第二および第三液滴を拡大撮影した。図中の白線は第三液滴の初期位置である。微小重力環境の開始時刻をt = 0 s とした。x 軸およびy 軸は図54内に示されているように設定した。第一液滴への点火はt = 0.2 s に行った。t =0.2 s の写真は,第一液滴が点火した瞬間であり,この時点で3 つの液滴が一列に並んでいる.t = 0.3 s では第三液滴に燃え広がりが既に完了しおり,通常重力場の場合と同様,第三液滴が正方向に移動を開始している。t = 6.0 s では火炎が視野範囲外に成長するために画像には火炎が見えないが,燃焼は継続している。
図54の右側のグラフは,x 方向およびy 方向の無次元移動距離Δx およびΔy の時間変化を示している.t = 0 s ではx 方向の速度が零であることがわかる.第三懸垂線の構造上,微小重力環境に移行した際のy 方向移動を伴うが,その後の移動量は小さい。t = 0.20 s において第一液滴が点火し,t = 0.23 s において第二液滴への燃え広がりが完了した.この時刻あたりにおいて第三液滴の速度が増大していることより,第一および第二液滴の燃え広がりにより発生した熱膨張流によって,第二液滴から遠ざかる方向に第三液滴が力を受けたと考えられる。t = 0.26 s において第三液滴に燃え広がりが起こった。t = 0.3 s 以降はほぼ等速運動になりt = 0.6 s からは速度が減衰している。
【0145】
以上、詳細な説明から明らかなように、本発明においては、噴霧燃焼における火炎と液滴の干渉に着目し,列方向移動可能な振り子懸垂線を用いて三燃料液滴列(第一固定懸垂液滴―第二固定懸垂液滴―第三列方向移動可能懸垂液滴)という一次元の単純なモデルを用いて燃料液滴列の燃え広がり計測を行うことができた。そして、通常重力場および微小重力場で行った火炎燃え広がり実験とPTV 計測行った結果,以下のような知見を得ることができた。
1. 第三液滴が燃え広がる前,第三液滴は第二液滴の熱膨張流を受けて第二液滴から遠ざかる方向に移動する.この無次元最大移動距離は無次元液滴間隔が増大するに伴って減少する.初期液滴直径が小さい場合も,同様な傾向が観察された.初期液滴直径が小さくなった場合の無次元最大移動距離は初期液滴直径が大きい場合の無次元最大移動距離に比べて約2 倍大きかった.つまり,初期液滴直径が減少するに伴い,無次元最大移動距離は増大する.
2. 第三液滴が燃え広がる前の第三液滴の移動を考察するため,第三液滴に水滴を用いて実験を行った.その結果,第三液滴が燃料の場合と同様な挙動を示した.つまり,無次元最大移動距離は無次元液滴間隔が増大するに伴って減少した.また,第三液滴の蒸発が移動におよぼす影響は小さいことがわかった.
3. 第三液滴に火炎が燃え広がった後,第三液滴は第二液滴から遠ざかる方向に移動する.第三液滴は,第二液滴および第三液滴が生じる燃料蒸気流や既燃ガス流により移動すると考えられる.第三液滴の燃え広がり後無次元最大移動距離は無次元液滴間隔3 付近で最大値をとった.
4. 固定−固定液滴間の燃え広がり誘導時間と固定−移動液滴間の燃え広がり誘導時間を比較すると,固定−移動液滴間の場合,第三液滴が第二液滴から遠ざかるため,燃え広がり限界距離付近では,燃え広がり誘導時間が固定−固定液滴間の場合より増大し,燃え広がり限界は減少する.燃え広がり限界付近以外の無次元液滴間隔では,燃え広がり誘導時間に差はみられなかった.液滴直径が小さい場合,燃え広がり誘導時間の無次元液滴間隔依存性は,液滴直径が大きい場合と定性的に同じであった.
5. PTV 計測より,第二液滴が生じる流れは,第二液滴から放射状に広がり,その流速は第二液滴から遠ざかるに伴って減少することがわかった.
6. 第二液滴を回り込んで進行するトリプル火炎が観察され,火炎が衝突する際の熱膨張流が吹き出している様子が確認された. PTV 計測により,吹き出し流速は約120 mm/sであった.
7. 燃え広がりによって生じる流れには二つの流れがあることがわかった.1)火炎が第二液滴の予混合気層を伝播する際に発生する熱膨張流がつくる流れ.瞬間流速は約120mm/s に達した.2)火炎伝播が完了した後,燃焼によって生じた既燃ガスがつくる流れ.火炎付近での流速は約40 mm/s に達した.また,予混合火炎伝播により生じる熱膨張流の流速は既燃ガスによって生じる流れの流速よりも大きいことがわかった.
8. 第三液滴は,燃え広がりが起こった後も,第二液滴から遠ざかる方向にほぼ等速で移動することが微小重力環境で観察された。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明におけるプロトタイプの測定装置全体の概略図である。
【図2】懸垂液滴の配置図である。
【図3】第三Y字懸垂線を示した図である。
【図4】本発明における計測装置における液滴生成装置の概略図である。
【図5】本発明における黄銅細管の調節装置である。
【図6】点火経路を示した図である。
【図7】本発明におけるスイッチボックスの概略、内部回路を示した図である。
【図8】本発明の計測で実際に使用した一部のプログラムを示した図である。
【図9】本発明における風洞実験でのPTV 画像記録のための代表的な装置例を示した図である。
【図10】本発明の計測装置例の全体の概略図である。
【図11】計測装置における可視化範囲を示した図である。
【図12】PTV実験装置の同期箱と各装置の配線を示した図である。
【図13】PTV計測のタイムチャートを示した図である。
【図14】銅蒸気レーザの概観を示した図である。
【図15】トレーサ粒子発生装置の概略図を示した図である。
【図16】重力分級装置の概略図を示した図である。
【図17】微小重力計測装置全体の概略図を示した図である。
【図18】微小重力環境を実現するための落下塔の図である。
【図19】落下カプセルを示した図である。
【図20】カプセル切り離し装置の概略図である。
【図21】コントロールパネルのスイッチ配置を表した図である。
【図22】変更後の切り離し装置の構造を示した図である。
【図23】もあい結びを示した図である。
【図24】燃焼の準定常理論のモデルを示した図である。
【図25】燃料と空気の濃度分布を示した図である。
【図26】温度分布を示した図である。
【図27】燃え広がり形態を示した図である。
【図28】初期液滴直径0.8mm の場合の無次元液滴間隔s とモードの関係を示した図である。
【図29】火炎燃え広がり挙動の画像と第三液滴の挙動を時間変化で示した図である。
【図30】火炎燃え広がり挙動の画像と第三液滴の挙動を時間変化で示した別の図である。
【図31】火炎燃え広がり挙動の画像と第三液滴の挙動を時間変化で示した別の図である。
【図32】火炎燃え広がり挙動の画像と第三液滴の挙動を時間変化で示した別の図である。
【図33】無次元液滴間隔と燃え広がりが起こる前の正方向無次元最大移動距離Δxmax1の関係を示した図である。
【図34】無次元液滴間隔と第三液滴のΔxmax1の関係を示した図である。
【図35】初期液滴直径0.8mm の場合の無次元液滴間隔と燃焼後の無次元最大移動距離Δxmax2 の関係を示した図である。
【図36】無次元液滴間隔と無次元燃え広がり誘導時間τの関係を示した図である。
【図37】初期液滴直径が0.3mm の場合の無次元液滴間隔とモードの関係を示した図である。
【図38】Δxmax1 と無次元液滴間隔の関係を示した図である。
【図39】初期液滴直径0.3mmの場合の,無次元液滴間隔と無次元燃え広がり誘導時間τの関係を示した図である。
【図40】空気噴流を用いた場合のトレーサ粒子径の粒度分布を示した図である。
【図41】超音波の振動を利用しトレーサ粒子を散乱させた場合の結果を示した図である。
【図42】トレーサ粒子個数分布を示した図である。
【図43】トレーサ粒子径の顕微鏡写真図である。
【図44】第2液滴のPTV画像を示した図である。
【図45】平均y軸方向速度の計算範囲を示した図である。
【図46】y軸方向平均速度の時間変化を示した図である。
【図47】平均x軸方向速度の計算範囲を示した図である。
【図48】x軸方向平均速度の時間変化を示した図である。
【図49】第二液滴の火炎燃え広がりの様子を示した図である。
【図50】トリプル火炎と第二液滴からの熱膨張流噴出を表した図である。
【図51】一様流を受ける液滴の振り子モデルを示した図である。
【図52】予混合火炎伝播における周囲流速の計算モデルである。
【図53】準定常理論における火炎近傍での既燃ガス流速の計算モデルを示した図である。
【図54】単一液滴の燃焼速度定数を示した図である。
【図55】微小重力における第三液滴の挙動を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハウジング内又は仕切空間内に、(b)列状に複数の模擬懸垂液滴核が取り付けられた懸垂線を支持する懸垂線支持台と、(c)前記複数の模擬懸垂液滴核に液体燃料を供給して該模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜を形成することにより模擬液滴を生成するための液滴生成装置と、(d)少なくとも前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域にトレーサ粒子雲を供給するためのトレーサ粒子供給装置と、(e)点火装置とを有し、かつ、前記ハウジング若しくは仕切空間内に又は外に(f)光学測定系と、(g)それらを制御するシーケンサ、を有する燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置であって、前記(d)トレーサ粒子供給装置が、トレーサ粒子源からニューマチック供給するトレーサ粒子供給路の途中で、該トレーサ粒子中の粗大粒子を除去して、粒径の揃った粒子のみを前記複数の模擬懸垂液滴核上に液体燃料の皮膜が形成される領域に供給するための(d1)トレーサ粒子選別手段を有するものであることを特徴とする燃焼伝播解析及び火炎燃え広がりの測定装置。
【請求項2】
前記(a)ハウジング又は仕切空間を形成する材料が、光透過性材料であることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記(b)懸垂線支持台は、点火装置に近い方から順に、第一固定懸垂液滴、第二固定懸垂液滴、第三移動懸垂液滴が取り付けられた懸垂線を支持するものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記(b)懸垂線支持台に支持される懸垂線は、一部が前記複数の模擬懸垂液滴核のうちの一部を懸垂線支持台に振り子運動しないように支持し、その余の模擬懸垂液滴核を振り子運動可能に支持する炭化珪素の太さ20μm以下の細線であり、該複数の模擬懸垂液滴核の間隔は調節自在であることを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記複数の模擬懸垂液滴核が直径30〜800μmのセラミック球で、前記懸垂線又は懸垂線支持台に架け替え可能であることを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記(c)液滴生成装置が、空気スライドステージ、液体燃料容器、燃料送り装置、燃料供給管、黄銅細管及び調節装置から構成され、シーケンサによって電磁弁をON / OFF することにより、空気スライドステージの前進・後進が制御されるものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
前記燃料送り装置は、前記燃料供給管から前記黄銅細管へ導かれた燃料を噴射するマイクロシリンジとこれに接続しボールねじを介して燃料を模擬懸垂液滴に送り出すボールを有することを請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記(c)液滴生成装置に生成される模擬液滴が、直径150〜1600μmであることを請求項1又は6のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
前記(d)のトレーサ粒子供給装置が、体積平均粒径0.05〜12.0μmのシリカ粒子を貯蔵する粒子タンクと、粒子供給管と、粒子雲吐出管とを有し、該粒子雲吐出管には、エアータンクとレギュレータと、ソレノイドバルブと、流量コントローラとを介して粒子供給管に送気して粒子雲を形成するための送気管を有し、また、該粒子雲吐出管の先端は、前記燃料供給のための黄銅細管の直下に位置することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
前記(d1)トレーサ粒子選別手段の近傍に、さらに、粒度分布測定装置を有することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項11】
前記(e)点火装置は、直流電源からの電圧をステップアップするための昇圧トランスを含む点火電力回路を有し、点火装置へのトリガー出力を点火装置と直結したときの点火装置からのノイズがシーケンサやその他の障害を避けるためのリレーを介してシーケンサにより制御される電気火花点火装置であることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項12】
前記(f)光学測定系が、レーザーフィルム照射手段と、ハイスピードビデオカメラ又はCCDアレイを有するCCDデジタルカメラとを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項13】
前記(g)シーケンサは、CPUユニット,増設出力ユニット,電源ユニットから成り、スイッチボックスと共に制御装置を構成し、ステッピングモータ,電磁弁、点火装置および前記光学測定系を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項14】
装置全体を覆うカプセルと、該カプセルを落下塔に引き揚げるためのカプセル揚場手段と、該カプセル揚場手段から該カプセルを切り離して該カプセルを自由落下させるためのカプセル切離手段と、落下した該カプセルを受け止めた際に衝撃力を緩衝させる緩衝手段とを有する微小重力付与手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1に記載の測定装置を用い、前記(f)光学測定系により送信された気流画像の情報をコネクタによりモニタ用と記録用に分岐し、モニタ画像を目視により確認しながら録画・記録し、記録された気流画像を、必要に応じて2値化し、該2値化画像データを、必要に応じてメモリに呼出自在に格納して強調、平均化及び/又は選択からなる画像情報処理を実行し、該2値化画像データをグラフ化することを特徴とする燃料液滴粒子間のPTV計測による火炎伝播モードの試験方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate



【図10】
image rotate



【図11】
image rotate



【図12】
image rotate



【図13】
image rotate



【図14】
image rotate



【図15】
image rotate



【図16】
image rotate



【図17】
image rotate



【図18】
image rotate



【図19】
image rotate



【図20】
image rotate



【図21】
image rotate



【図22】
image rotate



【図23】
image rotate



【図24】
image rotate



【図25】
image rotate



【図26】
image rotate



【図27】
image rotate



【図28】
image rotate



【図29】
image rotate



【図30】
image rotate



【図31】
image rotate



【図32】
image rotate



【図33】
image rotate



【図34】
image rotate



【図35】
image rotate



【図36】
image rotate



【図37】
image rotate



【図38】
image rotate



【図39】
image rotate



【図40】
image rotate



【図41】
image rotate



【図42】
image rotate



【図43】
image rotate



【図44】
image rotate



【図45】
image rotate



【図46】
image rotate



【図47】
image rotate



【図48】
image rotate



【図49】
image rotate



【図50】
image rotate



【図51】
image rotate



【図52】
image rotate



【図53】
image rotate



【図54】
image rotate



【図55】
image rotate


【公開番号】特開2005−265486(P2005−265486A)
【公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−75425(P2004−75425)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】