説明

燃料アセンブリ用デブリ排除及び保持装置

【課題】原子炉の運転に悪影響を与えず、製造コストの低い、燃料アセンブリ用デブリ排除及び保持装置を提供する。
【解決手段】デブリ排除及び保持装置63は、下部タイプレート58内の既存の流路を用いて、クーラント流の方向を変えることなく、燃料アセンブリの下部タイプレート58内の異物を捕捉及び保持する。保持装置は、下部タイプレート58内の既存の流れのパターンに影響を与えることなく、これらの低流量域内のデブリを捕捉及び保持する。そのため、保持装置63は、下部タイプレート58の圧力降下に殆ど又は全く影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して原子炉に関し、特に原子炉の燃料アセンブリ用デブリ排除及び保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR)等の原子炉は、燃料棒を囲繞する燃料アセンブリを内蔵した炉心を有する。原子炉は閉鎖循環システムであるため、デブリがシステム内に蓄積し易い。この場合のデブリは、流体流に伴う何らかの固形物質を指す。デブリには、原子炉建設時の残余物質、腐食副産物、故障時及び修理作業中に混入又は遊離した破片が含まれる。
【0003】
燃料アセンブリ内にデブリが蓄積すると、燃料棒が損傷することがある。例えばデブリ粒子が燃料棒に付着すると、燃料バンドルを通って移動するクーラントから乱流が発生し、この乱流によって、捕捉されたデブリ粒子が急激に振動して燃料棒のクラッディングに当たり、その結果、燃料棒のクラッディングに穿孔又は破損が生じる。クラッディングが損傷した燃料棒を、「リーカー(leaker)」とよぶことがある。十分な個数のリーカーがある場合は、発電所は規則に従って運転停止又は最適効率未満での運転、並びに安全上の問題への対処を余儀なくされることがある。いずれにしても、燃料アセンブリ内への外部からのデブリの侵入を最小限に抑えることが極めて望ましい。
【0004】
デブリが燃料アセンブリ内に侵入しないように、通常は、燃料アセンブリを流れるクーラントを、燃料アセンブリの下部タイプレートで濾過する。このようにして、選択されたフィルタの有効性に応じて、燃料アセンブリ内へのデブリの侵入を防ぐことができる。燃料アセンブリを通る順方向のクーラント流が十分に存在しさえすれば、抑止されたデブリが、下部タイプレート内に蓄積するだけである。原子炉運転中に下部タイプレートのキャビティ内に蓄積したデブリは、クーラント流が逆流又は停滞状態になることによって、或いは、内部又は外部振動源に反応して遊離する。例えば、原子炉の運転停止及び燃料交換時に通常的に行われるように燃料アセンブリを炉心より上方に移動させると、離脱が起こる可能性が非常に高い。燃料アセンブリを持ち上げると、その上昇速度によってクーラントが燃料アセンブリを通って逆戻りし、その結果、フィルタに蓄積されたデブリが遊離する(即ち、逆流する)。デブリが一旦遊離すると、移送される燃料アセンブリの下部タイプレートから下部プレナム内へ、或いは、最悪の場合、炉心内の下方に位置する燃料アセンブリの脆弱な上端部へと落下する。
【0005】
原子炉運転中に濾過されて下部タイプレートのキャビティ内に蓄積されたデブリは、例えば低出力又は無出力時に炉内流が減少する等、大幅に流量が低下した際に、下部タイプレートから逆流することもある。その後の原子炉運転時に、このデブリが下部タイプレートに再び引き込まれることで、デブリがその後、燃料アセンブリ内に侵入する可能性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7149272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、非常に効果的なフィルタが開発されたものの、フィルタで抑止したデブリを保持するという問題が残っている。デブリを保持する問題に対処しようとするこれまでの試みでは、様々なフィルタ構造設計を用いることで、下部タイプレートからデブリを遊離させないようにしている。しかし、そのために、従来設計の場合、下部タイプレートを通るクーラントの通常の流れパターンの方向と運動量とを実質的に変化させているが、このことによって、原子炉の運転に悪影響を与える望ましくない圧力降下が燃料アセンブリ内で生じる。また、従来式の下部タイプレートの構造を設計し直すこれまでの試みでは、結果的に、装置の製造コストがかかり、装置の製造が煩雑になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各種実施形態は、燃料アセンブリの下部タイプレート内のそのままの流路を有利に利用することで、濾過後のデブリを下部タイプレート内に捕捉しておく保持装置を提供する。この保持装置は、独立型又は一体型のデブリフィルタ等の排除装置で抑止したデブリを捕捉するので、デブリ保持の問題が解決する。排除装置と保持装置は共働し、下部タイプレートの内部キャビティを継続的にフラッシングすることで、望ましくないレベルの流れ抵抗を緩和する。この「逆流」フラッシングにより、下部タイプレートの割れ目及び隙間に捕捉された、又は嵌まり込んだデブリを除去するが、その間はずっと、通常炉心運転中に燃料アセンブリ内に存在するクーラント流を使用する。加えて、そのままのクーラント流パターンを用いることにより、保持装置は、炉心の圧力降下に対して最大でも微々たる影響しか与えない。
【0009】
具体的には、一態様によると、下部タイプレートの入口ノズルの中央開口部を通るクーラント流が、下部タイプレートの内壁に沿って自然に形成される低流量域内のクーラント流よりも高い流速を有することで、結果的に、下部タイプレートの内壁及び角に沿ってデブリの方向転換と蓄積が生じるように、例示的な保持装置が構成される。一部の実施形態では、下部タイプレートの内部キャビティを拡張することによって、この流体力学的特性を得る。
【0010】
一実施形態は、燃料アセンブリ用デブリ保持アセンブリであって、クーラントがこの保持アセンブリに沿って燃料アセンブリ内へと移動する流路を横切って配置されるデブリフィルタを含む、デブリ保持アセンブリである。デブリフィルタは、クーラント流によって推進されるデブリの流れを抑止することで、デブリが燃料アセンブリ内に引き込まれないように構成される。デブリ保持アセンブリは更にデブリ保持装置を含み、デブリ保持装置は、クーラント流の方向に対してデブリフィルタよりも上流に位置し、且つ流路を横切って配置される。デブリ保持装置は、デブリがデブリ保持アセンブリから離脱しないように、デブリフィルタで抑止したデブリを捕捉するように構成される。また、デブリ保持装置は、クーラント流の方向を変えることなく、デブリを捕捉する。寧ろ、デブリ保持装置は、BWR下部タイプレート内に自然に存在する渦を利用して逆流を阻止し、渦が運ぶ遊離したデブリを、このデブリ保持装置の周縁部に保持する。そのために、デブリ保持装置は、順方向流路の平面に対して垂直の流れを通し且つ接線方向の流れに抗する筒状セル配列体等を備えた、逆流下のデブリ離脱を抑止する順方向導管を含む。1つ又は一連のストレーナプレートが順方向導管を囲繞しており、これによって、デブリを搬送する戻り水及び渦がデブリをストレーナプレート上に沈積させる。各ストレーナプレートは多孔性であり、不透過性のデッドゾーンがストレーナプレートどうしの間に配置されるか、又はストレーナプレートの多孔性区画に差し込まれる。
【0011】
別の実施形態は、デブリ保持アセンブリを内蔵する燃料アセンブリ用下部タイプレートである。この下部タイプレートは、流路に沿って燃料アセンブリ内へと至るクーラントを受け取る入口ノズルと、入口ノズルに対して外方に張り出して下部タイプレートキャビティを形成するハウジングと、ハウジング内に永久的に又は取外し可能に封入されるデブリ保持アセンブリとを含む。この場合も、デブリ保持アセンブリは、デブリフィルタと、このデブリフィルタよりも上流に位置するデブリ保持装置とを含む。
【0012】
これらの実施形態の一態様によると、デブリ保持キャビティがデブリ保持装置とデブリフィルタとの間に形成されており、このデブリ保持キャビティは、流体力学的に下部タイプレートの形状によって自然に形成される低流量域内へと延在する。デブリを捕捉するために、デブリ保持装置は順方向導管を含み、この順方向導管は、クーラント流を妨げることなくクーラントの逆流を抑止し、周縁の低流量域によって囲繞される高流量域内に配置される。一部の実施形態において、順方向導管は、低流量又は逆流条件下において、デブリフィルタから解放されたデブリ又は低流量域内に流入することによりデブリフィルタを回避するデブリの方向を、低流量域内の少なくとも1つのストレーナプレート内へと導くことにより変えるように構成される。
【0013】
一部の実施形態では、例示的な保持装置を、既存の燃料アセンブリ設計に後付けすることができ、独立的に既存のデブリフィルタと共働させること、又はこれら両方の要素を含むアセンブリの一部分とすることができる。
【0014】
以上、様々な実施形態の態様及び機構の幾つかを概説したが、これらは可能性のある様々な用途を説明したにすぎないと、解釈されるべきである。本開示の情報を異なる様式で適用することによっても、本開示の実施形態の様々な態様を組み合わせることによっても、その他有益な結果を得ることができる。請求項により定義される特許請求の範囲に加えて添付図面に関連して、これらの実施例の詳細な説明を参照することにより、その他の態様及び更に包括的な理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の例示的な環境に従った原子炉圧力容器の構造を示す概略断面図である。
【図2】図1の原子炉の炉心内の燃料アセンブリと燃料支持部材とを示す部分断面図である。
【図3】図2の燃料アセンブリの部分分解斜視図である。
【図4】図3の燃料アセンブリ内で使用可能なフィルタアセンブリを有する下部タイプレートの従来技術の例を示す分解斜視図である。
【図5】入口ノズルから到来してデブリフィルタに衝突する流れが創出する渦のパターンを示す、下部タイプレート内の図4のデブリフィルタの概略断面図である。
【図6】一実施形態に従ったデブリ保持アセンブリを有する下部タイプレートの斜視図である。
【図7】図6のデブリ保持アセンブリを有する下部タイプレートの断面分解図である。
【図8】図5との比較のためのクーラント流のパターンを示す、デブリ保持アセンブリを有する下部タイプレートの断面図である。
【図9】逆流抑止シリンダとデブリを捕捉する周縁バンドとを示す、デブリ保持アセンブリの一実施形態の部分断面斜視図である。
【図10】例示的なデブリ保持アセンブリを、その内部に設けられる例示的なデブリフィルタの視点から示す上面図である。
【図11】図9及び10のデブリ保持アセンブリの断面側面図である。
【図12】例示的なデブリ保持アセンブリを、その内部に設けられる例示的なデブリ保持装置の視点から示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
必要に応じて、本明細書では詳細な実施形態を開示する。開示の実施形態はあくまでも例示的なもので、様々な形態及び代替形態、並びに組み合わせにおいても実施可能である。本明細書において、実例、見本、、モデル、又はパターンとしての実施形態について言及するために、「例示的」という語を幅広く使用している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、機構によっては、或る特定の部品の細部を示すために実際よりも大きくなっていたり小さくなっていたりする。その他の例では、本開示が曖昧にならないように、当業者に周知のよく知られた部品、システム、材料、又は方法を詳細には説明していない。したがって、本明細書に開示の特定の構造及び機能の詳細を、限定的なものとしてではなく、あくまでも請求項の根拠及び当業者に教示するための典型的な根拠であると解釈されるべきである。

例示的な環境
本発明の各種実施形態の説明における例示的な環境は、沸騰水型原子炉(BWR)である。図1を参照すると、原子炉圧力容器(RPV)10の一般的な構造を示している。RPV10は、原子炉圧力容器上蓋20と蒸気乾燥器22と気水分離器24と上部ガイド26と炉心シュラウド28と炉心支持板30と燃料アセンブリ32と制御棒34と燃料支持部材36と制御棒ガイド管38と下部プレナム40と補強梁42と再循環ポンプ44と主蒸気管46とを含む。クーラント流Fは、RPV10の部品を冷却する。
【0017】
再循環ポンプ44により下部プレナム40内に圧力が生じることで、クーラント(例えば水)が下部プレナム40から燃料アセンブリ32へと流れる。燃料アセンブリ32においてクーラントが加熱され、蒸気成分と液体成分とを含む二相流を形成する。蒸気成分及び液体成分は、気水分離器24と蒸気乾燥器22とを含む原子炉システムによりクーラント流から分離される。例えば、蒸気は、気水分離器24によりクーラント流から分離された後、蒸気乾燥器22内に導かれ、残留の可能性がある余分な水分が除去される。こうして、加圧蒸気が生成され、そして、主蒸気管46によって原子炉のタービン建屋(図示せず)内へと導かれる。生成された加圧蒸気は、その後、タービン内に導かれる。気水分離器24と蒸気乾燥器22とによりクーラント流から分離された水は、方向を変えて再循環ポンプ44内に戻される。

燃料アセンブリ及び燃料支持体
図1を参照すると、燃料アセンブリ32の上端部が上部ガイド26により支持され、燃料アセンブリ32の下端部が燃料支持部材36により支持される。概して、燃料支持部材36は、格子状配列の4つの燃料アセンブリ32を支持し、且つ、クーラント流を下部プレナム40から上方に導いて4つの核燃料アセンブリ32の各々に個別に導入するように構成される。燃料支持部材36は、制御棒ガイド管38の上端部に挿入され、制御棒ガイド管38の上端部に配置される。
【0018】
図2及び3を参照すると、燃料アセンブリ32は、中空金属導管50と、伸縮スプリング51と、全長燃料棒52と、部分長燃料棒53と、燃料スペーサ54と、ウォータロッド55と、ハンドル57を有する上部タイプレート56と、下部タイプレート58とを含む。中空金属導管50は、矩形の断面を有し且つ上部タイプレート56及び下部タイプレート58を受け入れる上側及び下側開口端部を有する、細長形状を有する。全長燃料棒52及び部分長燃料棒53は、平行に配置され、核分裂可能物質を含む。一旦燃料アセンブリが中空金属チャネル50内に配置されると、燃料スペーサ54は、燃料アセンブリの全長に沿って、全長燃料棒52と部分長燃料棒53との両方と、ウォータロッド55とを数箇所で支持する。上部及び下部タイプレート56、58は、全長燃料棒52の上端部と下端部とを固定する一方で、部分長燃料棒53の下端部は、下部タイプレート58のみに固定される。このように組み立てることにより、クーラントを確実に燃料棒52及び53の各々とその周りに行き渡らせることができる。図2及び3では、燃料アセンブリ32が、少なくとも1つのウォータロッド55を含み得る。
【0019】
運転時、中空金属導管50は原子炉の炉心内で直立しており、上部タイプレート56は、各燃料アセンブリ32の部品を内蔵する中空金属導管50の上側開口部に配置される。下部タイプレート58は、中空金属導管50の下側開口部に配置され、燃料スペーサ54は、中空金属導管50の長手方向内面に沿った様々な位置に配置される。燃料スペーサ54及びタイプレート56、58は、クーラントを燃料アセンブリ32に通すように構成される。通常運転時、クーラントは、流れ方向Fに下部タイプレート58を通って燃料棒52及び53を越え、中空金属導管50の長手方向内面に沿って流れた後に、上部タイプレート56の上部を通って流出する。原子炉10の各システムからのデブリは、通常運転時、クーラント流に乗って燃料アセンブリ32へと引き込まれる。

下部タイプレート
図2〜4を参照すると、下部タイプレート58は、下部タイプレート格子板64の下にフィルタカートリッジ63が配置された下部タイプレートキャビティ62へと繋がる入口ノズル60を含む。下部タイプレート格子板64は、下部タイプレートキャビティ62の上端部に配置され、燃料棒52及び53の下端部プラグを支持する。下部タイプレート格子板64は、クーラント流を、燃料アセンブリ32内と、全ての燃料棒52及び53の間とウォータロッド55の間へと導く。
【0020】
下部タイプレート58は更に、外方に且つ入口ノズル60を横切って延在するベイル59を含む。概して、ベイル59は、燃料アセンブリ32の下部タイプレート58の下端部を、燃料支持部材36で受け易くなるように方向付けするように構成される。

燃料支持部材
図2を参照すると、燃料支持部材36は、流れFを下部プレナム40から上方に支持チャンバ80を通って燃料アセンブリ32内へと導くように構成される下部側方入口オリフィス82を含む。支持チャンバ80は、正流Fが下から流入する下部側方入口オリフィス82から繋がる。
【0021】
下部タイプレート58が支持チャンバ80内に受け入れられると、ベイル59が、受入オリフィス84を介して支持チャンバ80の円錐部内へと延在する。受入オリフィス84のリップ部には、下部タイプレート58の外側傾斜面が当接して、メカニカルシールを形成する。こうして、支持チャンバ80と下部タイプレート58と中空金属導管50は、下部プレナム40から支持チャンバ80を介して、各燃料支持部36上に載置された燃料アセンブリ32を通して、クーラント流を上方へと導く実質的に連続した流路を提供する。

フィルタカートリッジ
図6〜12を参照して、下部タイプレート58に使用するデブリ保持アセンブリ63の各種実施例を更に説明する。限定ではなく比較を目的として、例示的な従来技術のデブリフィルタカートリッジ67(図4及び5に示す)は、クーラント流Fが下部タイプレートの入口ノズル60に流入し、ハウジング62を通って下部タイプレート格子板64から流出するときの、このクーラント流Fを横切って配置される単段濾過システムである。上述したように、デブリフィルタ67は、定常流条件下においては良好に機能し、デブリの燃料アセンブリ内への移動を抑止するが、流れが停止又は逆流すると、デブリが離脱して再び移動する可能性がある。また、流れ抵抗により、戻り水の一部が下方へと方向転換し、入口ノズル60を通過して、デブリが濾過されないことがある。
【0022】
本発明の各種態様は、一体型デブリ保持アセンブリ63を用いてデブリ離脱の問題を解消する利点を有する。一体型デブリ保持アセンブリ63は、流れの濾過とデブリの捕捉の両方を行うことによって、下部タイプレートを通るデブリの流れを抑止してデブリの離脱を防ぐ。従来技術の装置とは対照的に、例示的なデブリ保持アセンブリ63は、デブリフィルタ65とデブリ保持装置66とを含む、少なくとも二段の捕捉システムである。図7は、核燃料アセンブリ32用の完全組立済みデブリ保持アセンブリ63を有する、下部タイプレート58の分解断面図である。デブリ保持装置66は、部分的に周縁バンド93とデッドゾーン70により中断される1つ以上のストレーナプレート92(図12参照)とにより形成される、デブリトレイ68を内蔵する。周縁バンド93と一体的であり得るストレーナプレート92は、以下に説明するように、一部の実施形態では孔部78を有する。デブリ保持装置66はまた、順方向導管90により形成され、この順方向導管90は、デブリ保持アセンブリ63の構造部となり、順方向流条件において性能に悪影響を及ぼすことなく、デブリの逆流を抑止し、更なる濾過能力を提供する。周縁バンド93は、デブリ保持アセンブリ63の壁部を形成するようにして、これら全ての部品を囲繞する。周縁バンド93は、隆起状移動止め部72等の機構を備えて形成可能な外面を有し、この隆起状移動止め部72等の機構が、下部タイプレート58内での位置決め、安定性、及び保持を助ける。
【0023】
図6、7、及び8に最もわかりやすく示すように、図示のデブリ保持アセンブリ63は、スロット74に挿通され、下部タイプレートキャビティ62内で入口ノズル60と下部タイプレート格子板64との間に配置されるように構成される。このように、既存の燃料アセンブリにデブリ保持アセンブリ63を後付け可能にし、保守作業時におけるデブリ保持アセンブリ63の取り外しと洗浄又は交換を可能にすることを企図している。機械加工後の金属蓋板69を用いて、フィルタカートリッジが最初に挿入されるスロット74を密封すると共に、デブリ保持アセンブリ63を下部タイプレート58内に維持する。図6及び12を参照すると、下部タイプレート58の内部鋳造部の窪み(図示せず)は、デブリ保持アセンブリ63の周縁部に沿って1つ以上の縁部Pから突出する移動止め部72に対応している。移動止め部72は、この窪み内に受け入れられ、デブリ保持アセンブリ63を正位置に位置決め及び固定するように構成される。
【0024】
一部の実施形態では、下部タイプレート58内にデブリ保持アセンブリ63を収容するハウジング62の内壁は、所望の流体力学的特性を達成するにあたり、従来設計のものの多くに比べて、大きく鋳造される。具体的には、入口ノズル60を通る高速の流れが、拡張されたハウジング62内で相対的に急な面積拡大に直面することにより、衝突噴流パターンが創出され、この衝突噴流パターンによって、デブリが下部タイプレートキャビティ62の内側周縁部の周りの低流量域Zの方へと導かれる。デブリ保持アセンブリ63内の低流量域Zの範囲は、デブリ保持アセンブリ63が無い場合、下部タイプレート58内部に存在する低流量域Zよりも小さくなる。図5は、一部の実施形態のこのような態様に従って拡張された、従来技術のデブリフィルタカートリッジ67を下部タイプレート58内に設けたハウジング62の断面図であり、フィルタカートリッジ67へのクーラント流Fの噴流衝突によって創出される渦のパターンを示している。低流量域Zは、クーラント流Fが、拡張されたハウジング62を通る際に創出される。デブリ粒子は、低流量域Z内の表面61上に蓄積する。図7は、例示的なデブリ保持アセンブリ63を有する同じハウジング62の分解図であり、図8は、ハウジング62内で機能するデブリ保持アセンブリを示している。
【0025】
中央の順方向導管90によって、クーラント流Fが、比較的線形の流路を通って抑止されることなくデブリ保持アセンブリ63に流入するので、クーラント流Fの方向又は運動量は、実質的に変化しない。順方向導管90内のあらゆる開口の寸法を、デブリフィルタ65内の開口の寸法に比べて、意図的に遙かに大きくすることができる。その結果、順方向のクーラント流Fは十分に強力になものとなって、順方向導管90を通じてデブリDを推進させ、デブリDはその後、デブリフィルタ65にぶつかって、このフィルタ65によって抑止される。しかし、停滞流又は逆流R/F条件下においては概して、順方向導管90を通じてデブリを戻すだけの力が生じないので、順方向導管90は、デブリ保持アセンブリ63からのデブリの離脱を抑止する。このように、順方向導管90は、下部タイプレートキャビティ62内の通常の流れの動態に実質的に影響を与えることなく、逆流と、デブリ保持アセンブリ63のデブリ保持キャビティ76からのデブリDの離脱を抑止する。一部の実施形態では、この逆流抑制機能を、例えば図9に示すように達成可能である。図9において、順方向導管90はマトリックス配列の筒状セル94を含み、このマトリックス配列の筒状セル94は、逆流を防止すると共に、デブリDの方向をキャビティ76の周縁部へと変えることによって、デブリDをストレーナプレート92で捕捉させる。図12に示すように、各セル94が六角形の断面形状を有することもあるが、その他の形状が適切なこともある。いずれの場合も、セル94の高さ、寸法、及び厚さは、直線流(即ち、順方向導管90の平面に対して垂直な流れ)を抑止することなく通過させ得るように、選択される。一部のその他の実施形態では、順方向導管90の筒状セルの代わりに、孔部(図示せず)を用いてもよく、この孔部の直径は、低速のデブリDを抑止できる程度に小さく、いかなる条件下でもクーラント流に、無視できる程度の影響しか与えない大きさである。
【0026】
図8及び9を参照すると、クーラント流Fが順方向導管90を通ると、クーラント流Fは、順方向導管90表面から流出後、ハウジング62内で渦パターンを創出する。概して、低流量域Zは、拡張キャビティ62内の低速の逆流R/Fの領域であって、少なくとも部分的には、下部タイプレート58内に自然に存在する渦によって創出される。この低流量域は、デブリフィルタ65により堰き止められたデブリDが、デブリ保持装置66のストレーナプレート92内に収集され得る容積部分である。
【0027】
図7〜9及び11を参照すると、デブリ保持装置66は、クーラント流Fを実質的に阻止することなくデブリ保持装置66内へと流入させる順方向導管90と、少なくとも部分的には低流量域Zを横切って延在するように配置されるストレーナプレート92とを含む。流れが衝突することにより、流れによって推進されるデブリD(図11)が低流量域Zへと導かれるので、低流量域Zは、デブリ保持アセンブリ63にとって最適な位置となる。順方向導管90の形状(図9及び12)によって、局所流が阻止されると共に、デブリの捕捉が可能になり、これによって、停滞流、順方向流、及び逆流条件下におけるデブリの離脱が防止される。更に、微細孔部78を有する区画が、デブリを放出させることなくあらゆる戻り水をキャビティ76外に循環させるので、デッドゾーン70にデブリが誘引される。デブリ保持キャビティ76内の孔部78の方向付けを、低流量域Z内において下部タイプレート58のキャビティ62内に蓄積するデブリを表面61から落とす、フラッシング特性が高まるように行うことができる(図8参照)。

作用
図3、7、及び8を参照すると、通常運転時、クーラントは、入口ノズル60から方向Fへと流れ、拡張ハウジング62内へと流入し、デブリ保持アセンブリ63を通過し、下部タイプレート格子板64を通過した後、燃料アセンブリ32に流入する。デブリは、燃料アセンブリ32に流入する前に、デブリ保持装置66の順方向導管90を通ってデブリ保持アセンブリ63内へと流入し、デブリフィルタ65により堰き止められるので、燃料棒52及び53を損傷することはない。
【0028】
デブリフィルタ65表面における流れの衝突により、デブリは、デブリ保持アセンブリ63内部の低流量域Zへと押しやられる。デブリは、低流量域Zに到達すると、低流量域Z内に配置されるデブリ保持装置66のストレーナプレート92内へと落下する。デブリフィルタ65の中心付近で抑止された、流れFが保持するデブリは、燃料アセンブリ32の移動時等に、「バックウオッシュ」としても知られる停滞流又は逆流時に、デブリ保持装置66へと落下する。順方向導管90は、逆流下でのデブリの放出を防ぐ。
【0029】
一体型のカートリッジ式デブリ保持アセンブリ63に関して説明したが、代替的に、デブリフィルタ65及びデブリ保持装置66を、下部タイプレートハウジング内に直列に設けられた別個の装置としてもよい。このような実施形態では、個々の部品をそれぞれ交換又は置換することができる。
【0030】
本明細書では、最適な態様を含め、例を用いて本発明を開示しているが、これによってまた、任意の装置又はシステムの作製及び使用、並びに任意の付随する方法の実施を含め、当業者が本発明を実施できるようになる。本発明の特許請求の範囲は請求項により定義されているが、当業者に想到可能なその他の例も包含し得る。こうしたその他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を有する場合、又は請求項の文言と実質的に相違ない等価の構成要素を含む場合、本発明の特許請求の範囲に含まれることとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料アセンブリ用デブリ保持アセンブリであって、
前記燃料アセンブリ内へと至るクーラント流路を横切って設けられるデブリフィルタであって、前記燃料アセンブリ内へのデブリの流入を抑止するように構成されるデブリフィルタと、
流れ方向に対して前記デブリフィルタよりも上流に配置され、前記流路を横切って設けられるデブリ保持装置と、を含み、
クーラント流の方向を変えることなく、前記デブリ保持アセンブリからデブリが離脱しないように、前記デブリフィルタにより抑止されたデブリを、前記デブリ保持装置が保持するように構成された、デブリ保持アセンブリ。
【請求項2】
前記デブリ保持装置が、
クーラントの逆流を防ぐ順方向導管と、
デブリを保持するように構成される少なくとも1つのストレーナプレートと、
を含む、請求項1に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのストレーナプレートが、前記ストレーナプレートどうしの間に形成された少なくとも1つのデッドゾーンを有する複数のストレーナプレートから成る、請求項1に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項4】
各ストレーナプレートが多孔性であり、各デッドゾーンが前記クーラント流に対して実質的に不透過性となるように構成される、請求項3に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項5】
前記順方向導管が、前記順方向導管の平面に対して実質的に垂直方向に流れるクーラントを前記順方向導管を介して搬送し、且つ、前記順方向導管の前記平面に対して実質的に接線方向のクーラント流を抑止するように構成される、請求項1に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのストレーナプレートが、前記デブリ保持装置と前記デブリフィルタとの間に形成される内部キャビティの周縁部付近に延在する周縁バンドと一体的になっている、請求項1に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのストレーナプレートが、前記デブリ保持装置と前記デブリフィルタとの間に形成される内部キャビティの周縁部付近に延在する周縁バンドと一体的になっており、
前記周縁バンドが、前記流路の中央に設けられる前記順方向導管の周りに延在し、
前記順方向導管が、停滞条件及び逆流条件下でデブリを保持するように構成される、
請求項5に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項8】
前記順方向導管がマトリックス配列のシリンダを含む、請求項7に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項9】
前記シリンダの各々の形状が六角形である、請求項8に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項10】
前記デブリフィルタと前記デブリ保持装置とが相互接続され、両者間にデブリ保持キャビティを形成する、請求項1に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項11】
前記デブリフィルタと前記デブリ保持装置とを相互接続し、更に前記デブリ保持キャビティの壁部を形成する外囲体を更に含む、請求項10に記載のデブリ保持アセンブリ。
【請求項12】
燃料アセンブリ用下部タイプレートであって、
流路に沿って前記燃料アセンブリ内へと至るクーラントを受け取る入口ノズルと、
前記入口ノズルに対して外方に張り出し、下部タイプレートキャビティを形成するハウジングと、
前記ハウジング内のデブリ保持アセンブリであって、
クーラントが前記ハウジングを介して前記燃料アセンブリ内に流入する流路を横切って配置されるデブリフィルタと、
流れ方向に対して前記デブリフィルタよりも上流に配置され、前記流路を横切って設けられるデブリ保持装置と、
を有するデブリ保持アセンブリと、を含み、
クーラント流の方向を変えることなく、デブリがデブリ保持アセンブリから離脱しないように、前記デブリフィルタにより抑止されたデブリを捕捉するように前記デブリ保持装置が構成される、
下部タイプレート。
【請求項13】
前記デブリフィルタと前記デブリ保持装置との間に形成されるデブリ保持キャビティを更に含み、前記デブリ保持キャビティが、前記流路に隣接する低流量域を含む、請求項12に記載の下部タイプレート。
【請求項14】
前記デブリ保持装置が、前記デブリ保持キャビティの周りにおいて前記低流量域を少なくとも部分的に横切って延在する周縁バンドを含む、請求項13に記載の下部タイプレート。
【請求項15】
クーラントを前記デブリフィルタから離れる方向に流し、且つ、デブリが前記デブリフィルタから離れる方向に流れないように構成されるストレーナプレートを、前記周縁バンドが含む、請求項14に記載の下部タイプレート。
【請求項16】
クーラント流に対して実質的に不透過性であり、且つ、前記ストレーナプレートにより抑止された前記デブリを捕捉するように構成されるデッドゾーンを前記周縁バンドが更に含む、請求項15に記載の下部タイプレート。
【請求項17】
前記周縁バンドと前記低流量域とに囲繞される順方向導管を更に含み、クーラントが前記デブリフィルタから離れる方向に逆流しないように前記順方向導管が構成される、請求項15に記載の下部タイプレート。
【請求項18】
前記順方向導管が、前記順方向導管の平面に対して実質的に垂直方向に流れるクーラントを、前記順方向導管を介して搬送し、且つ、前記順方向導管の前記平面に対して実質的に接線方向のクーラント流を抑止するように構成される、請求項17に記載の下部タイプレート。
【請求項19】
前記順方向導管が、停滞条件及び逆流条件下でデブリを保持するように構成される、請求項18に記載の下部タイプレート。
【請求項20】
前記順方向導管がマトリックス配列の六角形状シリンダを含む、請求項19に記載の下部タイプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−177692(P2012−177692A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−24603(P2012−24603)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)