説明

燃料ガス使用システム

【課題】燃料ガス使用装置が必要とする燃料ガスを、高熱量成分リッチな状態で、常に安定的に必要量供給できる燃料ガス使用システムを提供すること。
【解決手段】本発明である燃料ガス使用システムは、高熱量成分の他に低熱量成分を含む燃料ガスを生成する生成装置と、燃料ガス中の高熱量成分のガスを燃料として使用する燃料ガス使用装置とを備え、生成装置と燃料ガス使用装置との間に、燃料ガスを貯蔵する貯蔵部を備えており、該貯蔵部に燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮する濃縮装置を設けることにより、燃料ガス使用装置が燃料として使用する高熱量成分のガスを、常に安定した状態で燃料ガス使用装置に供給することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱量成分ガスを必要に応じて一定の状態で供給することができる燃料ガス使用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産廃棄物や生ゴミ等の有機性廃棄物を、例えば、発酵槽でメタン発酵して生成されたバイオガス中には、通常、メタン(高熱量成分)が約50〜60体積%、二酸化炭素(低熱量成分)が約40〜50体積%、硫化水素が約0.3体積%程度含まれている。なお、本明細書中では「低熱量成分」という文言は二酸化炭素を含む意味で使用するものとする。
ここで、ガスエンジンやガスタービン等のエネルギー変換装置の燃料ガスとして使用される高熱量成分であるメタンは、バイオガス中に含まれる硫化水素や低熱量成分である二酸化炭素を除く処理を行うことによって精製されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、通常、メタン発酵では生成するバイオガス中に含まれるメタンガスの濃度は約50〜60体積%と幅があるため、精製されるメタンガスの量にも変動が生じ、ガスエンジンやガスタービン等のエネルギー変換装置が必要とする熱量に相当するガス量を、一定の状態でガスエンジンやガスタービン等のエネルギー変換装置に供給することが出来ないという問題点を有している。
【0004】
特許文献1に記載された発明では、前述した問題点が考慮されていないため、精製吸収槽6(または貯蔵輸送タンク6a)中の有機溶媒に吸収されている高熱量成分であるメタンの量にもバラツキがあり、燃料ガスの供給先であるガスエンジン17等のエネルギー変換装置が必要とする量の燃料ガスを、必ずしも、常に一定の状態で供給できるという保障はなかった。
【0005】
このような問題は、メタン発酵に限らず、熱分解やガス化等によって生成されるガス中に含まれる高熱量成分を、燃料ガスとしてエネルギー変換装置に供給する場合にも生じる。
【0006】
【特許文献1】特開2007−106900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エネルギー変換装置が必要とする燃料ガスを、高熱量成分リッチな状態で、安定的に必要量供給できる燃料ガス使用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料ガス使用システムの第1の態様は、高熱量成分の他に低熱量成分を含む燃料ガスを生成する生成装置と、前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを燃料として使う燃料ガス使用装置と、を備えた燃料ガス使用システムであって、前記生成装置と前記燃料ガス使用装置との間に、前記燃料ガスを貯蔵する貯蔵部を備え、前記貯蔵部は前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮する濃縮装置を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、前記燃料ガスを生成する生成装置と該燃料ガス中の高熱量成分を燃料として使用する燃料ガス使用装置との間に、前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮する濃縮装置を備えた貯蔵部を備えているので、燃料ガス使用装置が燃料として高熱量成分のガスが必要な時に、いつでも濃縮されて貯蔵されている高熱量成分のガスを貯蔵部より供給することができる。
【0010】
また、貯蔵部に高熱量成分のガスが貯蔵されていることから、原料の違いによる燃料ガスの生成量の変動、すなわち燃料ガス中に含まれる高熱量成分のガスの生成量の変動によって、燃料ガス使用装置への高熱量成分のガスの供給が不安定になるということもなく、安定して一定の状態で燃料ガス使用装置に高熱量成分のガスを供給することができる。
【0011】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第2の態様は、第1の態様の燃料ガス使用システムにおいて、前記濃縮装置は、前記燃料ガス中から前記低熱量成分を成す二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、燃料ガス中から低熱量成分の一種である二酸化炭素を分離することができるので、残りの燃料ガスは高熱量成分リッチな状態になり、燃料ガス使用装置に高熱量成分が高濃度の燃料ガスを供給することができる。なお、本発明において「低熱量成分」という文言は二酸化炭素を含む意味で使用するものとする。
【0013】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第3の態様は、第2の態様の燃料ガス使用システムにおいて、前記二酸化炭素分離部は、前記燃料ガスを水と気液接触させて水中に二酸化炭素を溶解させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、燃料ガスを水と気液接触させることにより二酸化炭素を水に溶解させるが、二酸化炭素は高熱量成分のガスに比べ水に対する溶解度がかなり大きいので、容易に燃料ガス中の高熱量成分のガスと分離することができる。また溶媒に水を用いているのでシステム全体の設計コストを安くすることが可能となる。
【0015】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第4の態様は、第3の態様の燃料ガス使用システムにおいて、前記燃料ガスは有機溶媒とも気液接触するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
一般に、高熱量成分は有機溶媒への溶解性が高いので、本態様によれば、燃料ガスを有機溶媒とも気液接触させることで有機溶媒中に高熱量成分を大量に溶解させて貯蔵することができ、燃料ガス使用装置が高熱量成分のガスが必要な時にいつでも供給することが出来る。
【0017】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第5の態様は、第4の態様の燃料ガス使用システムにおいて、前記有機溶媒を加熱するための加熱装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、何らかの事情により燃料ガス使用装置が、燃料ガスを多量に必要とする状態になり、前記貯蔵部から送られるガス量だけでは足りなくなった時に、有機溶媒を加熱装置で加温して揮発させることにより高熱量成分のガスの不足分を補うことができる。
【0019】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか一の燃料ガス使用システムにおいて、前記貯蔵部は加圧下で前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮できるように構成されている濃縮装置を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明によれば、例えば、高熱量成分を溶解し貯蔵する有機溶媒が常圧では気体であっても、加圧されて液体となるものを利用することが可能となり、それにより使用できる有機溶媒の種類を増やすことができる。具体的にはブタンは常圧下では気体であるが加圧して液化することで当該有機溶媒として用いることができる。更に本発明では気液接触は加圧状態で行われることになり、多量の高熱量成分を有機溶媒に吸収させることが可能になる。
【0021】
本発明に係る燃料ガス使用システムの第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか一の燃料ガス使用システムにおいて、前記貯蔵部は複数設けられ、且つ並列に配設されていることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、燃料ガス使用装置が停止している時等、高熱量成分のガスを燃料ガス使用装置に供給する必要がない場合であっても、燃料ガスを生成する生成装置の運転を止めることなく効率よく燃料ガスを生成し高熱量成分を貯蔵部に貯蔵することができる。
すなわち、第1の貯蔵部が濃縮された燃料ガス中の高熱量成分で満杯になれば、第2の貯蔵部で燃料ガス中の高熱量成分を濃縮貯蔵し、更に、第2の貯蔵部が濃縮された燃料ガス中の高熱量成分で満杯になれば、第3の貯蔵部で燃料ガス中の高熱量成分を濃縮貯蔵というように、複数の貯蔵部を並列的に設けて燃料ガス中の高熱量成分を濃縮貯蔵することで、燃料ガスを生成する生成装置の運転を止めることなく効率よく燃料ガスを生成することができる。更に複数の貯蔵部で燃料ガス中の高熱量成分を濃縮貯蔵しているので、燃料ガス使用装置が高熱量成分のガスが必要な時にいつでも一定の状態で供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る燃料ガス使用システムの第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明に係る燃料ガス使用システムの第2の実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明に係る燃料ガス使用システムの第3の実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明に係る実施例の装置構成である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る燃料ガス使用システムの一例であるメタン発酵による燃料ガス使用システムの実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[第1の実施形態]
図1には、本発明に係る燃料ガスシステムの第1の実施形態の概略構成図が記載されている。
本態様の燃料ガス使用システムは、主に、被発酵材M(例えば畜産廃棄物)を発酵処理し燃料ガスを生成する生成装置であるメタン発酵槽1、被発酵材Mを発酵処理することにより生成される燃料ガスであるバイオガスG1に含まれる硫化水素を除去するための脱硫装置2、脱硫装置2によって硫化水素が除去されたバイオガスG2に含まれる高熱量成分であるメタンのガスを濃縮しメタンリッチなガスG3として貯蔵するための貯蔵部3、燃料使用装置であるエネルギー変換装置7が必要とする高熱量成分であるメタンを含むメタンリッチなガスG3を、貯蔵部3より送出するためのガス送出制御部Aから構成されている。
【0026】
被発酵材Mとしては有機性廃棄物(バイオマス)、例えば、生ごみ、排水処理汚泥、畜産廃棄物や緑農廃棄物などを挙げることができる。ここで、畜産廃棄物としては、家畜の糞尿や、屠体、その加工品が挙げられ、より具体的にはブタ、牛、羊、山羊、ニワトリなどの家畜の糞尿やこれらの屠体、そこから分離された骨、肉、脂肪、内臓、血液、脳、眼球、皮、蹄、角などのほか、例えば肉骨粉、肉粉、骨粉、血粉などに代表される家畜屠体の骨、肉等を破砕した破砕物や、血液などを乾燥した乾燥物も含まれる。その他の廃棄物としては、家庭の生ごみのほか、産業廃棄物生ごみとして農水産業廃棄物、食品加工廃棄物等が含まれる。なお、有機性廃棄物の状態により、必要に応じて前処理として破砕・分別工程を実施することができる。
【0027】
一方、燃料ガスを生成する生成装置であるメタン発酵槽1は、絶対嫌気性のメタン発酵菌による活動を維持するために、空気を遮断したタンクにより構成される。発酵槽1は固形物濃度(通常3〜40重量%の範囲)と発酵温度(通常、中温発酵では約32〜37℃、高温発酵では約52〜55℃、超高温発酵では約60〜70℃)によって、形状や運転条件が異なってくる。例えば、洗浄廃水が混合したりして高含水率になった原料(固形物濃度10重量%まで)の場合は湿式型の完全混合方式の発酵槽が用いられる。
なお、発酵槽には、必要に応じて保温のための加熱手段を設けておくことが好ましい。
【0028】
高含水率の原料(固形物濃度を10重量%程度まで)の場合は、完全混合方式の発酵槽を用い、超高温メタン発酵菌(至適温度65℃)では滞留時間(Retention Time)を10日間程度、高温メタン発酵菌(至適温度55℃)では滞留時間(Retention Time)を15日間程度、中温メタン発酵菌(至適温度37℃)では滞留時間を25〜30日間程度とすることが可能である。
【0029】
被発酵材Mを発酵処理することにより生成された、燃料ガスであるバイオガスG1には、高熱量成分であるメタンが約50〜60体積%、低熱量成分である二酸化炭素が約40〜50体積%、硫化水素が約0.3体積%程度含まれている。ここで、バイオガス中に硫黄分が残っていると後段に設けられたエネルギー変換装置7に悪影響をおよぼすため、バイオガスG1を脱硫装置2に通して硫化水素中の硫黄分を脱硫することにしている。
【0030】
脱硫装置2で行われる脱硫方法については公知の方法が使用できる。例えば、生物脱硫、酸化鉄や亜鉛等の金属触媒を用いた脱硫、アルカリ吸収による脱硫方法等である。
脱硫装置2によって脱硫されたバイオガスG2は、コンプレッサー12によって本発明の特徴部である貯蔵部3に送られる。
【0031】
貯蔵部3は、バイオガスG2中に含まれる低熱量成分である二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離部Bが設けられている。二酸化炭素分離部Bによって低熱量成分である二酸化炭素をバイオガスG2中から分離することにより、貯蔵部3内の空間Cの部分には高熱量成分であるメタンを多量に含むメタンリッチなガスG3が濃縮して貯蔵される。すなわち、二酸化炭素分離部Bは高熱量成分であるメタンを濃縮するための濃縮装置として機能を果たしている。
本態様において、二酸化炭素分離部Bは、バイオガスG2中の二酸化炭素を分離する手段として、貯蔵部3内でバイオガスG2を水3’と撹拌器4を用いて撹拌させながら気液接触させて、水3’中に低熱量成分である二酸化炭素を溶解させることにより、高熱量成分であるメタンと分離するように構成されている。
【0032】
貯蔵部3内の空間Cに貯蔵されメタンリッチなガスG3は、燃料ガスとして燃料ガス使用装置であるエネルギー変換装置7へ送られる。ここで、本態様では燃料使用装置であるエネルギー変換装置7が必要とする熱量を、貯蔵部3から送出できるようにガス送出制御部Aが設けられている。
【0033】
ガス送出制御部Aは、制御装置10、熱量計11、バルブ13およびコンプレッサー12で構成されている。エネルギー変換装置7が必要とする熱量が熱量計11から制御装置10へ信号で送られ、必要な熱量に相当するメタンリッチなガスG3の量が制御装置10で計算される。そして、計算されたメタンリッチなガスG3の量を、貯蔵部3からエネルギー変換装置7へ送出するために、制御装置10からの信号によりバルブ13が開かれ、エネルギー変換装置7へ必要な量のメタンリッチなガスG3の送出が行われる。また、消費された分のメタリッチなガスG3を補うために、制御装置10からコンプレッサー12に信号が送られ、バイオガスG2が貯蔵部3の二酸化炭素分離部Bへ送られる。
【0034】
熱量計としては、公知のものが使用でき、例えば触媒/半導体方式、燃料電池方式、熱伝導方式、光学方式等のものが挙げられる。また、コンプレッサーの代わりに同等の機能を有するブロワー等を用いてもよい。
【0035】
貯蔵部3内の二酸化炭素分離部Bで水3’に溶解した低熱量成分である二酸化炭素は、貯蔵部3外に設けられた循環装置5によって大気に放散される。詳述すると、二酸化炭素が溶解した水3’を貯蔵部3から循環装置5へ所定量排出し、循環装置5の部分で大気開放することにより二酸化炭素を大気中に放散させる。その一方で、二酸化炭素が大気中に放散された水3’を、循環装置5から再び貯蔵部3に戻すことにより二酸化炭素を溶解するための溶媒として使用できるようにしている。このような構成を採用することにより二酸化炭素を確実に分離し、また、水の量も節約することが出来る。
【0036】
なお、貯蔵部3において、高熱量成分であるメタンを濃縮するために、バイオガスG2中に含まれる低熱量成分である二酸化炭素を二酸化炭素分離部Bにおいて分離する際に、貯蔵部3内を加圧状態にして行うことが望ましい。貯蔵部3内を加圧状態にすることにより水3’中により多くの二酸化炭素が溶解するため、分離精度が上昇するからである。具体的には、常圧〜10MPa程度とするのが好ましい。したがって、貯蔵部は前述した加圧状態に耐えうる構造とすることが必要である。例えば、0.1MPa程度ならば通常の容器に近いもので十分である。
【0037】
[第2の実施形態]
図2には、本発明に係る燃料ガスシステムの第2の実施形態の概略構成図が記載されている。なお、第1の実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0038】
第1の実施形態において、二酸化炭素分離部2で水3’とバイオガスG2を気液接触させて低熱量成分である二酸化炭素をバイオガスG2中から分離したが、本態様では、更に、バイオガスG2中から二酸化炭素が分離され濃縮されたメタンリッチなガスG3を有機溶媒3’’と撹拌器4を用いて撹拌させながら気液接触させて、有機溶媒3’’中に溶かした状態で貯蔵するようにしたものである。メタンは有機溶媒への溶解性が非常に大きいため有機溶媒を使用することにより、第1の実施態様よりも、より多くのメタンリッチなガスG3を貯蔵できるという効果を有している。更に本態様では、有機溶媒を加熱するための加熱装置6を設けている。加熱装置6を設けることにより、何らかの事情により燃料ガス使用装置であるエネルギー変換装置7が、高熱量成分のメタンリッチなガスG3を多量に必要とする状態になり、前記貯蔵部3から送られるガス量だけでは足りなくなった時に、有機溶媒3’’を加熱装置6で加熱して揮発させメタンリッチなガスG3の不足分を補うことができる。
ここで、加熱装置6は公知の装置を使用できる。たとえば、温水コイル、その他熱媒体を循環するコイル等が挙げられる。
【0039】
有機溶媒3’’としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖及び非直鎖の炭化水素化合物、シクロヘキサン類、ベンゼン等の揮発性芳香族炭化水素、エチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類が挙げられる。これらは揮発し高熱量成分となるものである。
【0040】
なお、本態様も第1の態様と同様に、貯蔵部3内を加圧状態にして高熱量成分であるメタンを濃縮するのが好ましい。貯蔵部3内を加圧状態にすることにより水3’中により多くの二酸化炭素が溶解するため、分離精度が上昇するとともに、有機溶媒3’’中にもメタンリッチなガスG3がより多く溶解し、貯蔵できるメタンリッチなガスG3の量が増えるからである。加える圧力としては第1の態様と同様で良い。
更に、常圧で気体の有機溶媒も、加圧することで液体と成り得るので使用することができ、有機溶媒の選択の幅を広げることができる。
【0041】
また、本態様ではバイオガスG2を二酸化炭素分離部Bの水3’と気液接触させた後、有機溶媒3’’と気液接触させているが、逆に、バイオガスG2を有機溶媒3’’に気液接触させた後、二酸化炭素分離部Bの水3’と気液接触させても同様の効果が得られる。
【0042】
[第3の実施形態]
図3には、本発明に係る燃料ガスシステムの第3の実施形態の概略構成図が記載されている。なお、第2の実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0043】
本態様では、第2の実施態様において、例えば貯蔵部3を複数並列に設ける構成としたものである。燃料ガス使用装置であるエネルギー変換装置7が停止している時、つまり、高熱量成分のメタンリッチなガスG3をエネルギー変換装置7に供給する必要がない場合であっても、貯蔵部3を複数並列的に設けることにより、燃料ガスであるバイオガスを生成するメタン発酵槽1の発酵処理を止めることなく、生成したバイオガスG1を脱硫したバイオガスG2を各貯蔵部3に送りこめるので、効率よくバイオガスを生成し高熱量成分であるメタンリッチなガスG3を貯蔵部3に貯蔵することができる。
【0044】
すなわち、第1の貯蔵部3が濃縮されたメタンリッチなガスG3で満杯になれば、第2の貯蔵部3でメタンリッチなガスG3を濃縮、貯蔵し、更に、第2の貯蔵部3が濃縮されたメタンリッチなガスG3で満杯になれば、第3の貯蔵部でメタンリッチなガスG3を濃縮、貯蔵するというように、複数の貯蔵部3を並列的に設けてメタンリッチなガスG3を濃縮貯蔵することで、燃料ガスを生成するメタン発酵槽1の発酵処理を止めることなく効率よく燃料ガスを生成することができる。更に複数の貯蔵部3で燃料ガス中のメタンリッチなガスG3を濃縮、貯蔵しているので、エネルギー変換装置7がメタンリッチなガスG3が必要な時にはいつでも供給することができるという効果を有している。
【0045】
本態様では、第2の実施例で使用している貯蔵部3を複数並列に設けたが、第1の実施例で使用した貯蔵部3を複数並列に設けてもよいし、更に、第1の実施例で使用した貯蔵部3と第2の実施例で使用している貯蔵部3を複数並列に組み合わせる構成としても同様の効果が得られる。
【0046】
以上、本発明の一例として、メタン発酵による燃料ガス使用システムについて説明したが、本発明はメタン発酵に限られるものではない、水素発酵や熱分解、ガス化等により発生する燃料ガスについても同様に適用することができる。
【0047】
例えば、水素発酵を行った場合では、高熱量成分がメタンの代わりに水素となるが、第1の形態では、空間Cの部分に水素が貯蔵される。また、第2の形態では、水素はメタンより有機溶媒に対する溶解性が低いのでメタンほど貯蔵部3の有機溶媒中に貯蔵することは出来ない。しかし、エネルギー変換装置7の実用性を発揮できる程度の量は貯蔵可能である。さらに、もし、エネルギー変換装置7が燃料ガスとして貯蔵部3に貯蔵している以上の水素が必要となり水素が不足する時は、有機溶媒を加熱装置6によって加熱して揮発させることにより有機溶媒の高熱量成分で水素の不足分の熱量を補うことができる。
【0048】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。図4には、本発明に係る実施例使用した装置構成が示されている。
有効液量が700mlの耐圧性の発酵槽1’に被発酵材Mである搾乳牛の糞尿を700ml投入し、温度55℃、圧力0.1Mpaを維持しバイオガスを発生させた。
その後、バルブb1を開いて生成されたバイオガス(燃料ガス)を脱硫器に通し、バルブb2を開いてバイオガス中の高熱量成分であるメタンと低熱量成分である二酸化炭素をガスクロマトグラフ(GC)で定量した。
その結果、メタン55重量%、二酸化炭素45重量%であった。
【0049】
次に、ガスクロマトグラフによる測定後、バルブb2を閉じて脱硫されたバイオガスを貯蔵部3に設けた二酸化炭素分離部Bの水3’に送り込むためバルブb3を開いた。
そして、脱硫されたバイオガスを水3’と気液接触させて水3’に二酸化炭素を溶解させた。二酸化炭素が溶解した水3’はバルブb4を開いて水槽5’に所定量排出した。その後、水槽5’を大気開放して水3’に溶解している二酸化炭素を大気中に放散した。
【0050】
二酸化炭素分離部Bで二酸化炭素が除去されたバイオガスは、燃料ガスとして使用されるメタンリッチなガスとして有機溶媒3’’であるブタンに溶解した状態で貯蔵した。
ここで、脱硫後のバイオガスのメタンと二酸化炭素の比は前述したガスクロマトグラフ(GC)の結果から85:15であった。メタンガスの低位発熱量は8550kcal/mである。よって、本実施例における、燃料ガスである高熱量成分の発熱量は8550kcal/m×0.85=7267.5kcal/mとなる。
この高カロリー化したバイオガスを、さらに熱量を上げて純メタンガスと同じカロリーとするためには、溶媒のブタンを少量気化させて高カロリー化したバイオガスに混合すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述したように、本発明によれば、燃料ガス中の高熱量成分を貯蔵部に効率よく貯蔵することにより、燃料ガス使用装置が燃料を必要とするときに、いつでも一定の状態で必要量高熱量成分を燃料ガス使用装置に供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 メタン発酵槽(生成装置)、 2 脱硫装置、 3 貯蔵部、 4 撹拌器、
5 循環装置、 6 加熱装置、 7 エネルギー変換装置(燃料ガス使用装置)、
10 制御装置、 11 熱量計、 12 コンプレッサー、 13 バルブ、
A ガス送出制御部、 B 二酸化炭素分離部(濃縮装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱量成分の他に低熱量成分を含む燃料ガスを生成する生成装置と、
前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを燃料として使う燃料ガス使用装置と、を備えた燃料ガス使用システムであって、
前記生成装置と前記燃料ガス使用装置との間に、前記燃料ガスを貯蔵する貯蔵部を備え、
前記貯蔵部は前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮する濃縮装置を備えていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記濃縮装置は、前記燃料ガス中から前記低熱量成分を成す二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部を備えていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項3】
請求項2に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記二酸化炭素分離部は、前記燃料ガスを水と気液接触させて水中に二酸化炭素を溶解させるように構成されていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項4】
請求項3に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記燃料ガスは有機溶媒とも気液接触するように構成されていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項5】
請求項4に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記有機溶媒を加熱するための加熱装置が設けられていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記貯蔵部は加圧下で前記燃料ガス中の高熱量成分のガスを濃縮できるように構成されている濃縮装置を備えていることを特徴とする燃料ガス使用システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載された燃料ガス使用システムにおいて、
前記貯蔵部は複数設けられ、且つ並列に配設されていることを特徴とする燃料ガス使用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213760(P2011−213760A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80408(P2010−80408)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)