説明

燃料センサユニット、燃料タンク構造及び燃料センサユニット搭載方法

【課題】燃料センサを燃料タンクの下面を基準として搭載し、燃料センサから延出されるハーネスを短くすることで燃料センサの測定精度を高く維持できる燃料センサユニットと、この燃料センサユニットを備えた燃料タンク構造、及び、燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する燃料センサユニット搭載方法を得る。
【解決手段】燃料タンク14の底壁14Lを基準に配置されるサブカップ20と上壁14Uを基準に取り付けられるインタンクキャニスタ22とはスライド支柱26を介してスライド可能とされる。スライド支柱26には燃料センサユニット32が固定され、スライド支柱26と共に下方にスライド可能とされるため、ハーネス46は短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料センサユニット、燃料タンク構造及び燃料センサユニット搭載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクに備えられる燃料センサの構造として、たとえば特許文献1には、燃料タンクの下面を基準に取り付けた電極と、燃料タンクの上面を基準に取り付けた発信器との間をリード線(ハーネス)で接続した構造が記載されている。電極と発信器とは、支持棒等を介して上下動(スライド)するようになっている。
【0003】
しかし、特許文献1の構造では、まず、電極を燃料タンクの下面を基準として配置した後、発信器等を下方にスライドさせて燃料タンクの上面を基準に取り付ける必要がある。このため、ハーネスが長くなり、屈曲によるハーネス相互の干渉が生じやすくなるため、燃料センサでの測定精度を高くすることが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−223624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、燃料センサを燃料タンクの下面を基準として搭載し、燃料センサから延出されるハーネスを短くすることで燃料センサの測定精度を高く維持できる燃料センサユニットと、この燃料センサユニットを備えた燃料タンク構造、及び、燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する燃料センサユニット搭載方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、燃料タンクの下面を基準として燃料タンク内に配置される下側部材と、前記燃料タンク内の燃料の液位を検知可能で、前記下側部材が燃料タンクの所定位置に配置された状態で下側部材に対しスライドすることで、燃料タンクの下面を基準とした搭載位置に接近して該搭載位置に搭載される燃料センサと、前記燃料センサが前記搭載位置に搭載された状態で下側部材に対しスライド可能で、燃料タンクの上面を基準とした取付位置に該スライドによって接近して該取付位置で燃料タンクに取り付けられる上側部材と、前記燃料センサから延出されると共に前記上側部材に取り付けられたハーネスと、を有する。
【0007】
この燃料センサユニットでは、たとえば、請求項7に記載の燃料センサユニット搭載方法により、燃料タンクに搭載される。
【0008】
すなわち、まず、配置工程において、燃料タンクの内部に、燃料タンクの下面を基準として下側部材を配置する。
【0009】
燃料センサは、下側部材が燃料タンクの所定位置に配置された状態(下側部材配置状態)で下側部材に対しスライドするため、スライド工程では、下側部材に対し燃料センサをスライドさせて搭載位置に搭載する。また、上側部材は、燃料センサが搭載位置に搭載された状態(燃料センサ搭載状態)で下側部材に対しスライドするため、スライド工程では、下側部材に対し上側部材をスライドさせて取付位置に移動させる。
【0010】
したがって、下側部材配置状態で、燃料センサは搭載位置には至っていない。このため、下側部材配置状態で燃料センサが搭載位置に搭載されてしまう構成と比較して、燃料センサと上側部材との距離が短い。燃料センサからはハーネスが延出されて上側部材に取り付けられているが、このハーネスの長さ(燃料センサから上側部材までの長さ)を短くできる。これにより、ハーネスの屈曲に起因する干渉を抑制できるので、燃料センサでの測定精度を高くすることが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、前記燃料センサが前記上側部材に固定されている。
【0012】
この燃料センサユニットでは、たとえば、請求項8に記載の燃料センサユニット搭載方法により、燃料タンクに搭載される。
【0013】
すなわち、燃料センサは、上側部材に固定されている。したがって、スライド工程において、上側部材を下側部材に対しスライドさせる動作で、同時に燃料センサも下側部材に対しスライドさせることができ、燃料タンクへの燃料センサユニットの搭載が容易になる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記上側部材が、前記燃料タンクの前記上面に取り付けられる上取付部材と、前記上取付部材にスライド可能に取り付けられたスライド部材と、を有し、前記燃料センサが前記スライド部材に固定されている
【0015】
したがって、上側部材を構成する上取付部材に対し、スライド部材をスライドさせることで、燃料センサをスライドさせることができる。上取付部材に直接的に燃料センサを固定した構成と比較して、燃料センサの配置の自由度が高くなる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記燃料センサが、前記燃料タンク内の燃料液位を検知する液位検知部と、前記燃料タンク内の燃料性状を検知する性状検知部と、を備え、前記液位検知部を補強して剛性を高める補強部材を有する。
【0017】
液位検知部により、燃料タンク内の燃料液位を検知できると共に、性状検知部により、燃料タンク内の燃料性状を検知できる。
【0018】
補強部材により液位検知部を補強し剛性を高めることで、燃料タンク内で液位検知部が不用意に変形することを抑制し、液位検知部での測定精度をより高くすることが可能になる。
【0019】
また、性状検知部には補強部材が取り付けられておらず、液位検知部と比較すると剛性が低い。このため、燃料タンク内の所望の位置に所望の姿勢で配置することが容易になる。たとえば、液位検知部に対し性状検知部を曲げて配置する場合でも、配置が容易になる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記燃料タンク内で前記性状検知部を燃料タンクの底面に沿うように案内する案内部材を有する。
【0021】
案内部材によって、性状検知部を燃料タンクの底面に沿うように案内し、燃料タンクの底面に沿った所望の位置に容易に配置できる。
【0022】
請求項6に記載の発明では、内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、前記燃料タンクに搭載される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料センサユニットと、を有する。
【0023】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料センサユニットを有しているので、ハーネスの長さを短くでき、燃料センサでの測定精度の高い燃料タンク構造となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、燃料センサを燃料タンクの下面を基準として搭載し、燃料センサから延出されるハーネスを短くすることで燃料センサの測定精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料センサユニットが搭載された燃料タンク構造を特に内部構造で示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する工程を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する工程を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態の燃料センサユニットを構成する静電容量センサユニットを示す正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造におけるサブカップ下部を部分的に拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造におけるサブカップを示す斜視図である。
【図7】比較例の燃料センサユニットが搭載された燃料タンク構造を特に内部構造で示す説明図である。
【図8】比較例の燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する工程を示す説明図である。
【図9】比較例の燃料センサユニットを燃料タンクに搭載する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、本発明の第1実施形態の燃料タンク構造12が示されている。また、図2〜図3には、燃料タンク14に対し燃料センサユニット18を搭載する工程が順に示されている。
【0027】
この燃料タンク構造12は、内部に燃料を収容可能な燃料タンク14を有している。燃料タンク14は、全体として略直方体の箱状に形成されている。この燃料タンク14内に、燃料センサユニット18が配置される。
【0028】
燃料タンク14内には、サブカップ20が配置されている。サブカップ20は、上面が開放されたカップ状に形成されている。サブカップ20内には、図示しない燃料ポンプが備えられている。燃料ポンプの駆動により、同じく図示しない燃料送出配管を通じて、燃料を機関等に送出することができる。
【0029】
サブカップ20は、燃料タンク14の底壁14Lに接触して(底壁14Lを基準として)配置されており、本発明の下側部材の一例となっている。サブカップ20の側壁には図示しない燃料流入孔が形成されている。この燃料流入孔から燃料が流入することで、サブカップ20に所定量以上の燃料を貯留させることが可能である。たとえば、燃料タンク14の傾斜等によって燃料タンク14内で燃料が偏在した場合でも、サブカップ20内に燃料が貯留されているので、このサブカップ20内の燃料を燃料ポンプで吸い上げることが可能である。
【0030】
燃料タンク14内には、インタンクキャニスタ22が備えられている。インタンクキャニスタ22内には活性炭等の吸着剤が収容されている。燃料タンク14内で発生した蒸発燃料成分を含む気体は、インタンクキャニスタ22内に流入し、蒸発燃料成分が吸着剤で吸着される。
【0031】
インタンクキャニスタ22には、図示しない大気連通管及びパージ配管が接続されている。インタンクキャニスタ22で蒸発燃料成分が吸着された気体は、大気連通管から大気に開放される。また、パージ配管はエンジンと接続されており、エンジンの駆動によって発生した負圧をインタンクキャニスタ22に作用させることで、吸着剤に吸着された蒸発燃料成分を脱離(パージ)することが可能である。
【0032】
インタンクキャニスタ22の上部には、インタンクキャニスタ22よりも横方向に張り出すフランジ板22Fが備えられている。このフランジ板22Fにより、インタンクキャニスタ22が燃料タンク14の上壁14Uを基準として取り付けられる。
【0033】
フランジ板22Fの上には、センサ回路24が備えられている。センサ回路24は、後述するように、静電容量センサユニット32とハーネス46により電気的に接続されている。
【0034】
本実施形態では、サブカップ20及びインタンクキャニスタ22は、燃料タンク14への搭載状態では、横方向に並べて配置されている。また、サブカップ20とインタンクキャニスタ22とは、同程度の幅を有している。
【0035】
サブカップ20とインタンクキャニスタ22との間には、スライド支柱26が介在されている。図1から分かるように、燃料タンク14への搭載状態で燃料センサユニット18を正面から見ると、スライド支柱26に対しサブカップ20とインタンクキャニスタ22とが反対側に位置している。また、図2に示すように、燃料タンク14への搭載前の状態では、サブカップ20が下で、インタンクキャニスタ22が上になっている。
【0036】
サブカップ20及びインタンクキャニスタ22の双方には、スライド支柱26をスライド可能に保持するスライドレール20R、22Rが形成されている。スライド支柱26は、サブカップ20に対し上下方向にスライドする。また、スライド支柱26に対し、インタンクキャニスタ22も上下方向にスライドする。結果的に、インタンクキャニスタ22が、スライド支柱26を介して、サブカップ20に対し上下方向にスライドする。
【0037】
インタンクキャニスタ22のフランジ板22Fとスライド支柱26の間には、圧縮コイルスプリング28が介在されている。圧縮コイルスプリング28は、スライド支柱26を下方に付勢しているが、図示しないストッパにより、スライド支柱26の下端がサブカップ20の底壁14Lよりも上方に位置した所定の保持位置で保持され(図2参照)、不用意に抜け落ちないようになっている。
【0038】
そして、圧縮コイルスプリング28の付勢力に抗して、インタンクキャニスタ22をスライド支柱26に対し下方に移動させることが可能とされている。
【0039】
図5に示すように、スライド支柱26の下端には、燃料タンク14の底壁14Lと平行に接触片26Sが延出されている。スライド支柱26が底壁14Lに接触したときの接触面積が接触片26Sにより広くなり接触面圧は低くなるので、燃料タンク14の耐久性が向上される。
【0040】
スライド支柱26とインタンクキャニスタ22とで、本発明の上側部材の一例が構成されている。
【0041】
図1〜図3に示すように、スライド支柱26には、静電容量センサユニット32が固定されている。静電容量センサユニット32は、燃料タンク14内の底壁14Lに沿って配置される性状センサ34と、燃料タンク14内で上下方向に沿って(図示の例では底壁14Lに対し垂直に)配置される液位センサ36、性状センサ34と液位センサ36の間において、電極が形成されていない湾曲部38、液位センサ36の上方に位置するハーネス46を有している。
【0042】
本実施形態では特に、図4に示すように、静電容量センサユニット32は、樹脂フィルム等の折り曲げ可能な絶縁体によって、全体として長尺状に形成されたベース40を有している。ベース40の表面には複数の電極がベース40の長手方向の所定位置に配置されている。この電極の部位に応じて、1つのベース40上に、性状センサ34及び液位センサ36が構成されている。換言すれば、性状センサ34及び液位センサ36が一体化されて静電容量センサユニット32が構成されている。そして、燃料タンク14への搭載状態では、ベース40が所定位置(湾曲部38の位置)で略直角に折り曲げられた形状となっている。
【0043】
複数の電極は、燃料と接している部分と接していない部分とで、静電容量の値が異なる。また、接触している燃料の種類よっても、静電容量の値が異なる。この静電容量の値の違いを用いて、静電容量センサユニット32における燃料の接触範囲の広狭に応じた信号や燃料の種類に応じた信号を出力できる。
【0044】
ここで、性状センサ34は、燃料タンク14の底壁14Lに沿って配置されているため、燃料タンク14内の燃料量がわずかであっても、性状センサ34の全体が燃料に浸漬される可能性が高い。したがって、性状センサ34は、接触している燃料の種類に応じて静電容量が異なることを利用して、燃料タンク14内の燃料濃度を検知することが可能である。
【0045】
これに対し、液位センサ36は、燃料タンク14内において、上下方向に沿って配置されている。このため、燃料タンク14内の燃料量に応じて、燃料に浸漬される部分の長さが変化し、静電容量も異なった値をとる。これを利用して、燃料タンク14内の燃料量を検知することが可能である。
【0046】
静電容量センサユニット32の上端部には、端子44が設けられている。端子44は、フランジ板22Fの上に取り付けられたセンサ回路24と電気的に接続されている。性状センサ34及び液位センサ36信号は、センサ回路24に送られる。なお、センサ回路24は、フランジ板22F以外の場所、たとえば上壁14U上に取り付けられていてもよいが、この場合には、ハーネス46の一部がフランジ板22Fに取り付けられると共に、端子44とセンサ回路24とが導線等によって接続される。
【0047】
静電容量センサユニット32において、本実施形態では、液位センサ36の部分ではスライド支柱26に固定されている。すなわち、液位センサ36の部分はスライド支柱26によって補強され、剛性が高くなっている。これに対し、湾曲部38及び性状センサ34はスライド支柱26よりも下方に位置しており、補強されていないため、変形しやすい。
【0048】
図6に示すように、サブカップ20は、全体として上方に開放された略円筒状に形成されているが、周壁48の一部は平面状に形成されて誘導壁50とされている。誘導壁50の両側からは、誘導壁50との間に、静電容量センサユニット32の厚みよりもわすかに広い隙間をあけて、一対の保持板52が延出されている。サブカップ20に対しスライド支柱26と共に静電容量センサユニット32が下方にスライドされると(図2及び図3参照)、静電容量センサユニット32は、誘導壁50と保持板52との間に保持されつつ下方に誘導される。
【0049】
図6から分かるように、保持板52は、静電容量センサユニット32の幅方向(矢印W1方向)の両側部分にのみ位置しており、中央部分には位置していない。これに対しスライド支柱26は、静電容量センサユニット32(液位センサ36)の幅方向の中央部分に位置している。したがって、静電容量センサユニット32が下方にスライドする途中で、スライド支柱26と保持板52とが不用意に干渉することはない。なお、本実施形態では、保持板52どうしの間隔D1は、スライド支柱26の幅W2よりもわすかに広い程度とされており、保持板52がスライド支柱26のスライドを案内する作用も奏する構造とされている。
【0050】
なお、図6では図示の便宜上、誘導壁50の上方に静電容量センサユニット32が位置しているが、実際には、燃料タンク14への搭載前の状態であっても、静電容量センサユニット32の下部は誘導壁50と保持板52との間に保持されている。
【0051】
さらに、図5に示すように、誘導壁50の下方には、誘導壁50から連続し、サブカップ20の底壁20Lと平行な収容壁54が形成されており、誘導壁50の下部と収容壁54との間が収容部56とされている。さらに、底壁20Lの先端は、上方に向かって湾曲されており、下方にスライドした静電容量センサユニット32の下端部分を底壁14Uに沿わせて収容部56に誘導する案内片58とさされている。静電容量センサユニット32が下方にスライドすると、この案内片58によって、静電容量センサユニット32の性状センサ34及び湾曲部38が湾曲されながら、収容部56に案内される。
【0052】
サブカップ20、インタンクキャニスタ22、スライド支柱26、静電容量センサユニット32(ハーネス46)、センサ回路24等を含んで、燃料センサユニット18が構成されている。
【0053】
図2及び図3に示すように、燃料タンク14の上壁14Uの略中央には、挿入口16が形成されている。挿入口16の大きさ(開口径)は、サブカップ20及びインタンクキャニスタ22のいずれか一方を燃料タンク14内に挿入可能とされるが、これら双方を同時に挿入することは出来ない程度とされている。図1から分かるように、挿入口16は、燃料センサユニット16が燃料タンク14に搭載されると、フランジ板22Fによって閉塞される。
【0054】
次に、本実施形態の燃料センサユニット18の作用を、燃料センサユニット18を燃料タンク14に搭載する方法と共に説明する。
【0055】
図2に示すように、挿入口16からサブカップ20を燃料タンク14内に挿入する。そして、サブカップ20を、燃料タンク14の底壁14Lに接触させる。このとき、スライド支柱26も、その一部が燃料タンク14内に入り込んでいる。また、静電容量センサユニット32も、性状センサ34の全部及び液位センサ36の一部が燃料タンク14内に入り込んでいる。ただし、スライド支柱26及び液位センサ36のそれぞれの下端は、燃料タンク14の底壁14Lには接触していない。また、静電容量センサユニット32は湾曲部38や性状センサ34で湾曲することなく略直線状になっている。そして、静電容量センサユニット32の下部は、誘導壁50と保持板52の間(図6参照)に収容されている。
【0056】
なお、この状態で、インタンクキャニスタ22は挿入口16の上方に位置していない。そこで、矢印L1で示すように、燃料センサユニット18を横方向(図2では左方向)にずらして、挿入口16の上方にインタンクキャニスタ22を移動させる。
【0057】
そして、図3に示すように、インタンクキャニスタ22を下方に押し、挿入口16から燃料タンク14内に挿入する。このとき、スライド支柱26及び液位センサ36の下端は燃料タンク14の底壁14Lに対し非接触になっており、下方にスライド可能である。スライド支柱26とフランジ板22Fの間に圧縮コイルスプリング28が介在されており、スライド支柱26は下方に付勢されている。したがって、インタンクキャニスタ22を下方に押すだけで、インタンクキャニスタ22と共にスライド支柱26及び静電容量センサユニット32が下方にスライドする。
【0058】
このように静電容量センサユニット32が下方にスライドする途中で、性状センサ34及び湾曲部38が順に案内片58によって案内されて湾曲しつつ、収容部56に誘導される。ただし、静電容量センサユニット32の液位センサ36は、スライド支柱26によって補強されているので、不用意に変形することなく、形状を安定的に維持できる。
【0059】
そして、図5に示すように、スライド支柱26(接触変26S)が燃料タンク14の底壁14Lに接触した状態で、性状センサ34は収容部56に収容されると共に、液位センサ36の下端が燃料タンク14の底壁14Lを基準とした所定の搭載位置に搭載された状態となる。
【0060】
その後、図1に矢印L2で示すように、圧縮コイルスプリング28の付勢力に抗して、インタンクキャニスタ22をさらに下方へスライドさせ、フランジ板22Fを燃料タンク14の上壁14Uに取り付ける。
【0061】
ここで、図7には、比較例の燃料センサユニット82を燃料タンク14に搭載した状態が示されている。また、図8〜図9には、比較例の燃料センサユニット82を燃料タンク14に搭載する工程が順に示されている。比較例の燃料センサユニット82では、静電容量センサユニット32がスライド支柱26ではなく、サブカップ20(下側部材)に固定されている。これ以外は、本実施形態の燃料センサユニット18と同一の構成とされている。
【0062】
比較例の燃料センサユニット82では、サブカップ20を燃料タンク14の底壁14Lに接触させた状態で、スライド支柱26の下端及び静電容量センサユニット32(液位センサ36)の下端も燃料タンク14の底壁14Lに接触している。
【0063】
そして、燃料センサユニット82を矢印L3で示すように横方向にずらした後、インタンクキャニスタ22を下方にスライドさせ(図9参照)、フランジ板22Fを燃料タンク14の上壁14Uに取り付ける。
【0064】
比較例の燃料センサユニット82では、図7から分かるように、静電容量センサユニット32が、サブカップ20に固定されているため、実質的にハーネス46が伸びきった(直線状になった)状態の長さが、上記実施形態と比較して長くなっている。したがって、インタンクキャニスタ22を所定の取付位置に取り付けた状態で、ハーネス46の余長部46Z(実質的な弛み部分の長さ)も長くなっている。
【0065】
これに対し、本実施形態では、静電容量センサユニット32がスライド支柱26(本発明における上側部材の構成要素)に固定されている。図2に示す状態において、静電容量センサユニット32(液位センサ36)は燃料タンク14の底壁14Lに接触しておらず、ハーネス46が伸びきった状態での長さが、比較例の構造よりも短くなっている。したがって、インタンクキャニスタ22を下方にスライドさせて所定の取付位置に取り付けた状態で、ハーネス46の余長部46Zも、比較例よりも短くなっている。これにより、本実施形態では、ハーネス46の余長部46Zの屈曲に起因する干渉等を抑制でき、静電容量センサユニット32での測定精度を高くすることが可能である。
【0066】
燃料センサユニット32を燃料タンク14内の所定位置に搭載した状態で、サブタンク20とインタンクキャニスタ22とは、スライド支柱26を介して上下にスライド可能である。したがって、たとえば燃料タンク14の内圧変化等に応じて、上壁14Uと下壁14Lとが接近又は離間した場合には、サブカップ20が底壁14Lを基準とした位置に配置された状態を維持し、さらに、インタンクキャニスタ22も、上壁14Uを基準とした位置を維持する。
【0067】
なお、上記では、本発明の上側部材の一部を構成するスライド支柱26に静電容量センサユニット32を固定しているが、上側部材の他の部材であるインタンクキャニスタ22に静電容量センサユニット32を固定してもよい。すなわち、この場合であっても、サブカップ20を燃料タンク14の底壁14Lに接触させた状態でスライド支柱26及び静電容量センサユニット32は底壁14Lに接触しない構成となるため、ハーネス46を短くすることが可能である。上記実施形態のように、スライド支柱26に静電容量センサユニット32を固定すると、スライド支柱26は、インタンクキャニスタ22よりも形状や位置の自由度が高いので、静電容量センサユニット32の配置の自由度も高くなる。
【0068】
さらに、本発明では、静電容量センサユニット32が、上側部材に固定されていなくてもよい。要するに、サブカップ20を燃料タンク14の底壁14Lに接触させた状態で静電容量センサユニット32が底壁14Lに接触しない構成を実現していれば、底壁14Lに接触する構成と比較して、ハーネス46の長さを短くすることができる。ただし、静電容量センサユニット32を上側部材に固定しておけば、上側部材を下方にスライドさせる動作に伴って、同時に静電容量センサユニット32も下方にスライドさせることができる。静電容量センサユニット32のみを下方にスライドさせる工程を省略でき、燃料タンク14への搭載が容易になる。
【0069】
本発明の下側部材として、上記では、サブカップ20を挙げているが、要するに、燃料タンク14の下面(底壁14L)を基準として燃料タンク14内に配置される部材であればよい。たとえば、底壁14Lに沿って配置される燃料フィルタや、この燃料フィルタを保持する枠状の部材を下側部材としてもよい。
【0070】
本発明の上側部材としても、上記では、インタンクキャニスタ22及びスライド支柱26で構成されている例を挙げているが、これに限定されない。たとえば、燃料タンク14内に配置される燃料センサ以外の検知部材やバルブなどを上側部材としてもよい。
【0071】
静電容量センサユニット32の形状は上記したものに限定されず。たとえば、液位センサ36と性状センサ34とが燃料タンク14への搭載状態で略直角に曲げられている構造であってもよい。ただしこの構造のようにあらかじめこれら2つのセンサを略直角に形成すると、下方へのスライド時に性状センサ34がサブカップ20等との干渉することを避けるため、形状が制限される。これに対し、上記実施形態のように、燃料タンク14への搭載前は性状センサ34が液位センサ36と略直線状で、搭載途中で(あるいは搭載後に)性状センサ34が姿勢を変えて液位センサ36に対し直角になる構造とすれば、下方へのスライド時にサブカップ20と干渉しづらいため、形状の自由度が高くなる。
【0072】
さらに本発明の燃料センサとしては、性状センサ34を有さず、液位センサ36のみを有する形状であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
12 燃料タンク構造
14 燃料タンク
14U 上壁(燃料タンクの上面)
14L 底壁(燃料タンクの下面)
18 燃料センサユニット
20 サブカップ(下側部材)
22 インタンクキャニスタ(上取付部材、上側部材)
24 センサ回路
26 スライド支柱(スライド部材、上側部材、補強部材)
32 静電容量センサユニット
34 性状センサ(性状検知部)
36 液位センサ(液位検知部、)
46 ハーネス
46Z 余長部
58 案内片(案内部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの下面を基準として燃料タンク内に配置される下側部材と、
前記燃料タンク内の燃料の液位を検知可能で、前記下側部材が燃料タンクの所定位置に配置された状態で下側部材に対しスライドすることで、燃料タンクの下面を基準とした搭載位置に接近して該搭載位置に搭載される燃料センサと、
前記燃料センサが前記搭載位置に搭載された状態で下側部材に対しスライド可能で、燃料タンクの上面を基準とした取付位置に該スライドによって接近して該取付位置で燃料タンクに取り付けられる上側部材と、
前記燃料センサから延出されると共に前記上側部材に取り付けられたハーネスと、
を有する燃料センサユニット。
【請求項2】
前記燃料センサが前記上側部材に固定されている請求項1に記載の燃料センサユニット。
【請求項3】
前記上側部材が、
前記燃料タンクの前記上面に取り付けられる上取付部材と、
前記上取付部材にスライド可能に取り付けられたスライド部材と、
を有し、
前記燃料センサが前記スライド部材に固定されている請求項2に記載の燃料センサユニット。
【請求項4】
前記燃料センサが、前記燃料タンク内の燃料液位を検知する液位検知部と、前記燃料タンク内の燃料性状を検知する性状検知部と、を備え、
前記液位検知部を補強して剛性を高める補強部材を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料センサユニット。
【請求項5】
前記燃料タンク内で前記性状検知部を燃料タンクの底面に沿うように案内する案内部材を有する請求項3又は請求項4に記載の燃料センサユニット。
【請求項6】
内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、
前記燃料タンクに搭載される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料センサユニットと、
を有する燃料タンク構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料センサユニットを燃料タンク内に搭載するための燃料センサユニット搭載方法であって、
前記燃料タンクの内部に、該燃料タンクの下面を基準として前記下側部材を配置する配置工程と、
前記下側部材に対し前記燃料センサをスライドさせることで前記搭載位置に搭載すると共に、前記上側部材をスライドさせることで前記取付位置に取り付けするスライド工程と、
を有する燃料センサユニット搭載方法。
【請求項8】
請求項2に記載の燃料センサユニットを燃料タンク内に搭載するための請求項7に記載の燃料センサユニット搭載方法であって、
前記スライド工程において前記上側部材を前記下側部材に対しスライドさせる燃料センサユニット搭載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−91447(P2013−91447A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235313(P2011−235313)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】