説明

燃料タンク

【課題】燃料タンクの内部にバッフルプレートを取り付けていても錆の発生を抑止できるようにした。
【解決手段】燃料タンク1は非めっき鋼板からなる上面2a及び側面2c,2d,2e,2fと亜鉛めっき鋼板からなる底面2bとで形成した。燃料タンク1の内部に亜鉛めっき鋼板からなるバッフルプレート9を、側面2c,2d,2e,2fと溶接によって取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械や車両等の各種の機械に搭載等される燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械や車両等、エンジンの動力で駆動する機械には、エンジンに供給される燃料を貯溜するための燃料タンクが搭載される。燃料タンクは、従来、例えば酸洗鋼板(鋼板の表面に付着している酸化スケールを酸により脱脂処理した後、オイルを塗布した鋼板)を用いて製造されているが、この酸洗鋼板は、表面の酸化スケールを除去して表面を清浄にしている一方、錆やすいという欠点がある。
ところで、近年における標準的な燃料供給システムでは、燃料タンクから吸引されてエンジンの燃料噴射装置に供給された燃料は、必要量だけ燃焼室内に噴射され、過剰分は再び燃料タンクに戻されるように構成されている。燃料タンクに戻された燃料は、エンジンの内部を回ってくるためエンジンの熱で暖められ、温度が60〜80℃程度にまで上昇する場合がある。温度上昇した燃料が戻されることで燃料タンクも暖められることになるが、エンジンの停止後、暖められた燃料タンクと外気温との温度差によってタンクの内面に結露が生じてしまうことがある。
【0003】
特にこの現象は、冬季において燃料タンク内の燃料残量が少ない場合に顕著となる。この結露水は、タンクの側面を流れて底部に溜まり、燃料タンク内部に錆を発生させる原因となる。燃料タンク内部に錆が発生すると、鋼板から遊離した鉄錆(特に酸洗鋼板は錆が遊離しやすい)が燃料中に混じって、エンジンに送られてしまう。この結果、燃料フィルタが早期に目詰りして燃料が正常に送られなくなり、エンストしてしまうような不具合が発生するおそれがある。また、燃料フィルタを通り抜けた微細な鉄粉は、燃料噴射ノズルやインジェクションバルブ等のエンジン内部部品の摩耗を促進して、エンジン故障の原因となる。一方、燃料タンクの底部に堆積した鉄錆は、ドレーンバルブを詰まらせ、バルブ固着を引き起すことがある。
このようなタンク内部の錆の発生を防止するためには、メンテナンス上、燃料タンク底部に溜った水を例えば1日1回、ドレーンバルブから排出させる水抜きの必要がある。しかしながら、燃料タンクから毎日水抜き作業を行うことは煩雑であり、十分に実施されないことが多かった。
【0004】
このような不具合を改善するために、例えば特許文献1に記載された燃料タンクが提案されている。
この燃料タンクは、前後左右の各側面と上面を酸洗鋼板で形成し、底面に溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコン合金メッキ鋼板を用いている。このような構成を採用することで、燃料タンクの内部に結露が発生すると結露水は側面を流れ落ちて底部に溜まるが、底面のメッキ鋼板での犠牲防食により鋼板の錆の発生を防止できると共に、溶接時の裏焼けを最小に留めて溶接後もメッキ層を残してコンタミの発生を抑制できるとしている。
【特許文献1】特開2004−82919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料タンクが45t以上の大型タイプの建設機械や車両等になると、これらの機械に搭載する燃料タンクは600リットル以上の容量のものが必要になることが多い。このような大型の燃料タンクは燃料タンク内の燃料の揺れ止めと燃料タンクの剛性確保のために、内部にバッフルプレートを取り付ける必要があった。通常、鋼板からなるバッフルプレートは燃料タンク内面の底面から高さ方向の中間部に溶接によって取り付けられている。
この場合、燃料タンク内部の側面に発生する結露は側面を伝わって流れ落ちるため、底面だけでなくバッフルプレートにも降下して溜まることになる。この場合、底面は上記特許文献1に記載されているようにメッキ鋼板で形成されていたり底面に形成したドレン部から外部に排出する水抜き機構が設置される等の防錆対策が施されているが、バッフルプレートは底面と同様に結露水が溜まり易いにも関わらず、上述したような防錆対策が施されていなかった。そのため、バッフルプレートに錆が発生して上述したような不具合を発生するおそれが高かった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、燃料タンクの内部にバッフルプレートを取り付けていても錆の発生を抑止できるようにした燃料タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による燃料タンクは、燃料タンクの内面にめっき鋼板からなるバッフルプレートを取り付けたことを特徴とする。
本発明によれば、燃料タンク内部に発生する結露水がバッフルプレートに滞留してもバッフルプレートをめっき鋼板で形成することで錆の発生を抑制でき、バッフルプレートに水抜き機構が設けられていなくても防錆効果を十分に発揮できる。
【0008】
また、燃料タンクの底面はめっき鋼板からなり、底面に対向する位置にバッフルプレートが設けられていることが好ましい。
燃料タンク内部に発生する結露水はバッフルプレートと底部とに滞留することになるが、いずれもめっき鋼板で形成しているから燃料タンク内部での錆の発生を抑制できる。
バッフルプレートと底部を形成するめっき鋼板は亜鉛めっきが施された鋼板であってもよい。
また、バッフルプレートは非めっき金属を用いた側面に溶接によって取り付けられていてもよい。
めっき鋼板同士の溶接は困難であるが、燃料タンクの側面を非めっき鋼板で形成したから、燃料タンクの内面にバッフルプレートを確実に溶接で取り付けることができる。
なお、燃料タンク内に取り付けるバッフルプレートが1枚であればメンテナンス時等に燃料タンク内部の洗浄等を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
上述のように本発明による燃料タンクによれば、燃料タンクの内部にめっき鋼板からなるバッフルプレートを取り付けたから、燃料タンクの内部に結露が発生してバッフルプレートに溜まったとしても、めっき鋼板のために錆の発生を十分抑制できるという効果を奏する。しかも、バッフルプレートを取り付けることで、燃料タンクを搭載した建設機械や車両等の各種機械が揺れや振動等を発生したとしても内部の燃料の揺れを抑制できると共に燃料タンクの強度を向上できる。
【0010】
また、燃料タンクの底面はめっき鋼板からなり、底面に対向する位置にバッフルプレートが設けられていると、燃料タンクの内面に結露した結露水はバッフルプレートの上部ではバッフルプレートで溜められ、バッフルプレートの下部では底面で溜められることになるが、いずれも錆の発生を防止できる。
【0011】
また、バッフルプレートは非めっき金属を用いた側面に溶接によって取り付けられているため、めっき鋼板からなるバッフルプレートは、非めっき金属からなる側面と容易に溶接でき、側面が非めっき金属であってもバッフルプレートと底面がめっき鋼板であるために錆の発生を十分防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は実施形態による燃料タンクの斜視図、図2は図1に示す燃料タンクの内部構造を示す説明図、図3は燃料タンクの要部構成のみを示す説明図である。
図1乃至図3において、例えば建設機械の一例として油圧ショベルに搭載される燃料タンク1が開示されている。燃料タンク1は例えば略直方体形状とされ、上面2a及び対向する下面2bと四面の側面2c,2d,2e,2fとで形成されている。燃料タンク1の内部には図示しないエンジンの燃料となる軽油が貯溜される。燃料タンク1内の軽油は、燃料吸込口3から図示しない燃料供給ラインを経由してエンジンの燃料噴射装置に供給され、必要量だけ燃焼室内に噴射される一方、過剰分は燃料リターンラインを経由して燃料戻り口4から再び燃料タンク1に戻されるように構成されている。
尚、図中、上面2aには燃料注入口5が設けられ、底面2bにはすり鉢状の凹部6が形成されていてその底部に結露水等を排出するためのドレン口7が設けられている。
【0013】
燃料タンク1において、四面の側面2c,2d,2e,2fおよび上面2aは非めっき鋼板、例えば酸洗処理した後でオイルを塗布した鋼板である酸洗鋼板で形成され、底面2bは、例えば亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板で形成されている。底面2bは側面2c,2d,2e,2fと溶接によって連結されている。
また、燃料タンク1の内面には、側面2c,2d,2e,2fの高さ方向の適宜高さ位置、例えば中央部付近に略四角形枠板状の1枚のバッフルプレート9が溶接によって側面2c,2d,2e,2fに固定されている。このバッフルプレート9は例えば亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板で形成されている。亜鉛めっきされたバッフルプレート9は底面2bと同様に非めっき鋼板である側面2c,2d,2e,2fと好適に溶接される。
【0014】
本実施形態による燃料タンク1は上述の構成を備えており、底面2bとバッフルプレート9は亜鉛めっき鋼板で形成されているから燃料タンク1の内面に結露等で結露水が発生した場合、側面2c,2d,2e,2fに沿って流れて落下する。バッフルプレート9の上側では結露水はバッフルプレート9まで落下してバッフルプレート9上に溜められる。
また、バッフルプレート9の下側では結露水は底面2bまで落下して底面2b上に溜められる。
そのため、燃料タンク1内でバッフルプレート9に結露水が溜まっても亜鉛めっき鋼板であるため、化学反応による犠牲防食によって防錆性を発揮でき、底面2bのようにドレン口7等による水抜き機構が設けられていなくても水の滞留による発錆を抑制できる。同様に、底面2bに結露水が溜まった場合でもドレン口7から水抜きを行えるが、水抜きを頻繁に行わなくても亜鉛めっき鋼板による犠牲防食により発錆を抑制できる。
【0015】
従って、本実施形態による燃料タンク1によれば、例えば容量が600リットル以上の大型の燃料タンク1の場合は内部にバッフルプレート9を取り付けて燃料の揺れ止めと燃料タンク1を補強する必要があるが、バッフルプレート9と底面2bを亜鉛めっき鋼板で形成したから、燃料タンク1の内外の温度差等によって燃料タンク内面に結露が発生して結露水が側面2c,2d,2e,2fを伝わりバッフルプレート9と底面2bに結露水が溜まっても、バッフルプレート9と底面2bは亜鉛めっき鋼板による犠牲防食によって優れた防錆性を発揮できて燃料タンク1内の錆の発生を有効に防止できる。
【0016】
そのため、燃料タンク1内に発生した錆が燃料中に混じって燃料フィルタが早期に目詰まりしたり、燃料噴射ノズルやインジェクションバルブ等のエンジン内部部品の摩耗が促進されたりする不具合を回避できると共に、燃料タンク1の水抜き作業を頻繁に行う必要がなくなりメンテナンス性が向上する。
また、燃料タンク1内に1枚のバッフルプレート9を配設した構成であるから、メンテナンス時等に燃料タンク1内を洗浄する際に内部洗浄を容易に行える。また、燃料タンク1を形成するにあたり亜鉛めっき鋼板で形成したバッフルプレート9と底面2bは非めっき鋼板である側面2c,2d,2e,2fと溶接することで良好な溶接品質を得られる。
【0017】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく本発明の技術思想の範囲内で種々の変更を採用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、バッフルプレート9として亜鉛めっき鋼板を採用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば溶融亜鉛(Zn)−アルミニウム(Al)−マグネシウム(Mg)−シリコン(Si)合金メッキ鋼板(例えば、特許第3179446号公報に示される鋼板等)等を採用してもよい。底面2bについても同様である。また、バッフルプレート9と底面2bは同一種類のめっき鋼板を採用する必要はなく互いに異なるめっき鋼板であってもよい。
また、上述の実施形態では、燃料タンク1の内部に1枚のバッフルプレート9を設けたが、複数枚のバッフルプレート9を適宜間隔で設けるようにしてもよい。この場合、メンテナンス時に二枚のバッフルプレート間の洗浄が困難ではあるが、十分な防錆性を発揮できる。
【0018】
なお、上述の実施形態では、燃料タンク1が45t以上の大型タイプの建設機械や車両等の燃料タンクで、600リットル以上の容量のものにバッフルプレート9を設けるものとしたが、これにより小さい燃料タンク内に本発明によるバッフルプレートを設けてもよいことはいうまでもない。
また、本発明は、建設機械だけでなく、各種車両等に搭載される燃料タンクに実施することができ、さらに、燃料タンクだけでなく、例えば建設機械に搭載される作動油タンク等のタンクにも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態による燃料タンクの斜視図である。
【図2】図1に示す燃料タンクの内部構造を示す説明図である。
【図3】図1に示す燃料タンクの要部構成のみを示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 燃料タンク
2b 底面
2c,2d,2e,2f 側面
9 バッフルプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの内部にめっき鋼板からなるバッフルプレートを取り付けたことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
燃料タンクの底面はめっき鋼板からなり、該底面に対向する位置に前記バッフルプレートが設けられている請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記めっき鋼板は亜鉛めっきが施された鋼板である請求項1または2に記載された燃料タンク。
【請求項4】
前記バッフルプレートは非めっき金属の側面に溶接によって取り付けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143399(P2009−143399A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322978(P2007−322978)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】