説明

燃料チューブ

【課題】複数の層4〜7を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体2と、接続用のコネクタ3とを備えた燃料チューブ1において、使用燃料に対する高い耐燃料性を確保しながら、耐燃料透過性を向上させる。
【解決手段】コネクタ3に対してチューブ本体2を溶接により接合するとともに、チューブ本体2における中間層(バリア層)6の内側に少なくとも二つの層4,5を設けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体と、接続用のコネクタとを備えた燃料チューブに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料チューブとして、例えば、コネクタにチューブ本体を圧入固定したものや、コネクタとチューブ本体とを溶接により一体化したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す燃料チューブでは、外周部に複数の突起を有するニップルに燃料チューブの端部を圧入して固定するようにしている。
【0004】
また、特許文献2に示すものでは、チューブ本体を径方向に積層された三つの層で構成して、その最内層及び最外層を、コネクタに設けられたテーパ部にスピン溶接により溶着するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−146063号公報
【特許文献2】特表2002−504980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す燃料チューブでは、燃料チューブの端部をコネクタに圧入するようにしているため、この圧入部(燃料チューブの端部)から燃料が漏れ易く、耐燃料透過性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、上記特許文献2に示すように、燃料チューブの端部をコネクタにスピン溶接することで、この端部からの燃料漏れを防止することが考えられる。
【0008】
しかしながら、この燃料チューブでは、その端部からの漏れを低減するために、燃料チューブの最内層と最外層を共にコネクタに溶接する必要がある。このため、最内層及び最外層の樹脂の材質が、溶接可能な材料(例えばPA12)等に限定されしまう。したがって、例えば、この燃料チューブを環境性に優れたアルコール燃料等に使用することを考えた場合に、最内層の樹脂を耐アルコール性に優れたフッ素系樹脂で構成したとしてもこの樹脂のコネクタとの溶着性が悪いと、該最内層とコネクタとの溶着が不十分になり、燃料チューブの端部からの燃料漏れを十分に防止することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料チューブの構成に工夫を凝らすことで、使用燃料に応じた高い耐燃料性を確保しつつ、耐燃料透過性を向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、コネクタに対してチューブ本体を溶接により接合するとともに、チューブ本体におけるバリア層の内側に二つ以上の層を設けるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体と、接続用のコネクタとを備えた燃料チューブを対象とする。
【0012】
そして、上記チューブ本体は、最外層よりも径方向内側に位置し且つ耐燃料透過性を有するバリア層を含んでいて、該バリア層の径方向内側に二つ以上の層が位置するように構成され、上記コネクタは、上記チューブ本体の端部が挿入される環状凹部を有し、上記チューブ本体の端部は、上記コネクタの環状凹部に挿入された状態で少なくとも該環状凹部の外周壁面に溶接して接合されているものとする。
【0013】
この構成によれば、バリア層の内側に二つ以上の層を設けて、バリア層を極力、チューブ本体の外周側寄りに配置するようにしたことで、チューブ本体内の燃料通路からその厚さ方向に漏出する揮発燃料の量を低減することができる。すなわち、この燃料チューブによれば、燃料通路内からチューブ本体の厚さ方向に向かう揮発燃料の貫通力(透過力)を、中間層の内側に配置した二つの層でもって弱めることができ、これにより、燃料通路からバリア層に到達する揮発燃料の量を低減することができる。延いては、揮発燃料がバリア層の外側に漏出するのを確実に防止することができる。
【0014】
さらに、この発明では、チューブ本体の端部は、コネクタの環状凹部に挿入された状態で該環状凹部の外周面に溶接により接続されている。これにより、チューブ本体の端部(チューブ本体とコネクタとの接続部)からの燃料漏れを確実に防止することができる。すなわち、例えば、コネクタにチューブ本体を外嵌して圧入する従来の燃料チューブでは、バリア層がチューブ本体の外周側寄りに位置するほど、バリア層の内周面とコネクタの圧入部の外周面との距離が大きくなって、両者の間から揮発燃料が漏出し易くなる。これに対して、本発明では、チューブ本体を上記コネクタにおける環状凹部の外周面に溶接接合するようにしたことで、この溶接部にて揮発燃料の通過を遮断して、燃料チューブの端部からの燃料漏れを防止することができる。
【0015】
しかも、この発明では、上述の如く、中間層の内側に二つの層を配置するようにしているため、チューブ本体の端部においても、この二つの層でもって揮発燃料の貫通力を弱めることができ、これにより、揮発燃料がチューブ本体の端部においてバリア層を通過して溶着部に到達するのを防止することができる。
【0016】
このように本発明では、上記チューブ本体を環状凹部の内周面に接合しなくても、上記バリア層の内側の少なくとも二つの層による燃料の貫通力低減効果と、チューブ本体とコネクタとの溶接部における燃料遮断効果とによって、燃料チューブの端部からの燃料漏れを十分に抑制することができる。
【0017】
したがって、環状凹部の内周面に接合される最内層を、必ずしもコネクタとの溶接性に優れた樹脂で構成する必要がないため、最内層を構成する樹脂の選択自由度が広くなって、燃料チューブを広い用途(例えば、アルコール燃料等)に使用することが可能となる。
【0018】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記チューブ本体の最外層は、熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂からなるものとする。
【0019】
この構成によれば、チューブ本体の最外層を熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂で構成するようにしたことで、チューブ本体(最外層)を例えばスピン溶接によりコネクタの環状凹部の外周面に確実に溶着させることができる。
【0020】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記チューブ本体の最外層を構成する熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂は、PA11又はPA12であるものとする。
【0021】
この構成によれば、チューブ本体の最外層をPA11又はPA12で構成するようにしたことで、安価な構成で、チューブ本体をコネクタに溶着させることができる。
【0022】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記コネクタは、熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂からなるものとする。
【0023】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、上記コネクタを構成する熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂は、PA11又はPA12であるものとする。
【0024】
請求項4及び5の発明によれば、チューブ本体の最外層をコネクタに確実に溶接することができる。
【0025】
請求項6の発明では、請求項1乃至5のいずれか1つの発明において、上記コネクタは、上記チューブ本体の最外層を構成する樹脂と同じ樹脂からなるものとする。
【0026】
この構成によれば、コネクタを上記チューブ本体の最外層を構成する樹脂と同じ樹脂で構成するようにしたことで、コネクタに対するチューブ本体の接合性をより一層高めることができる。
【0027】
請求項7の発明では、請求項1乃至6のいずれか1つの発明において、上記チューブ本体の最内層は、フッ素系樹脂からなるものとする。
【0028】
この構成によれば、最内層を耐アルコール性に優れたフッ素系樹脂で構成するようにしたことで、燃料チューブを環境性に優れたアルコール燃料にも使用することができる。また、フッ素系樹脂は耐燃料透過性も高いため、耐アルコール性と耐燃料透過性との両立を図ることができる。さらに、フッ素樹脂は、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性にも優れているため、燃料チューブの耐サワーガソリン性を向上させることができる。
【0029】
請求項8の発明では、請求項1乃至7のいずれか一つの発明において、上記チューブ本体のバリア層は、下記のA群から選ばれるいずれかであるものとする。
【0030】
A群:フッ素系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12N、これらを1種又は2種以上が重合したもの。
【0031】
この構成によれば、バリア層を耐燃料透過性に優れた樹脂で構成することができる。これにより、燃料チューブの耐燃料透過性を格段に向上させることができる。
【0032】
請求項9の発明では、請求項1乃至8のいずれか1つの発明において、上記チューブ本体のバリア層は、フッ素系樹脂からなるものとする。
【0033】
この構成によれば、最内層のみならずバリア層もフッ素系樹脂で構成されている。すなわち、請求項9の発明は、耐燃料透過性を有するフッ素系樹脂を最内層とバリア層とに分けてその間に少なくとも1つの層を設けるようにしたものである。これにより、耐燃料透過性を可及的に高めることができる。
【0034】
請求項10の発明では、請求項1乃至9のいずれか一つの発明において、上記チューブ本体の最内層を構成する樹脂は、導電性を有するものとする。
【0035】
この構成によれば、最内層と燃料と接触摩擦により蓄積した電荷が放電して燃料に引火するのを防止することができる。
【0036】
請求項11の発明では、請求項1乃至10のいずれか一つの発明チューブにおいて、上記チューブ本体における上記バリア層と最内層との間の層は、PA11又はPA12で構成されているものとする。
【0037】
この構成によれば、バリア層と最内層との間の層を比較的安価なPA11又はPA12で構成することで、コスト増加を抑制しながら、バリア層を極力、チューブ本体の外側寄りに配置することができる。
【0038】
請求項12の発明では、請求項1乃至11のいずれか一つの発明において、上記チューブ本体の初期層間接着力は20N/cm以上であるものとする。
【0039】
この構成によれば、チューブ本体を構成する各層の層間から燃料がチューブ外に漏出するのを確実に防止することができる。
【0040】
請求項13の発明では、請求項1乃至12のいずれか一つの発明において、上記コネクタに対する上記チューブ本体の引抜き方向の接合力は、上記チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重よりも大きい。
【0041】
このように、コネクタに対するチューブ本体の引抜き方向の接合力が、チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重を上回るほど、コネクタとチューブ本体とを強固に接合することで、両者の接続部から漏出する燃料の量を可及的に低減することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明の燃料チューブによると、コネクタに対してチューブ本体を溶接により接合するとともに、チューブ本体におけるバリア層の内側に二つ以上の層を設けるようにしたことで、使用燃料に応じた高い耐燃料性を確保しつつ、耐燃料透過性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料チューブのチューブ本体を示す、その軸心方向に垂直な断面図である。
【図2】燃料チューブとコネクタとの接合構造を示す、燃料チューブの軸心方向に沿った断面図である。
【図3】コネクタを示す側面図である。
【図4】コネクタのチューブ挿入部を示す、その軸心方向に沿った断面図である。
【図5】燃料の透過メカニズムを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料チューブ1を示す。この燃料チューブ1は、例えば、自動車の燃料注入配管と燃料タンクとの連絡、或いはエンジンへ燃料を送る連絡配管に用いられるものである。この燃料チューブ1は、液体燃料に限らず気体燃料にも使用することができる。
【0045】
上記燃料チューブ1は、樹脂製のチューブ本体2と、チューブ本体2を配管等に接続するための(接続用の)コネクタ3とを有している。チューブ本体2とコネクタとは、スピン溶接(摩擦溶接の一種)により一体化されている。
【0046】
チューブ本体2は、内径及び外径が一端側から他端側まで略一定である円管であって、径方向に積層された四つの層4〜7で構成されている。これら四つの層は、径方向内側から径方向外側に向かって、最内層4、内層5、中間層6、最外層7の順に積層されている。中間層6は、詳細は後述するように耐燃料透過性を有していて、中間層6の径方向内側に内層5と最内層4との二層が形成されている。
【0047】
最内層4は、燃料が通過する燃料通路8を形成している。最内層4の内周壁は、燃料通路8内を流れる燃料と直接接触するため、両者の摩擦により蓄積した電荷がその放電時に燃料に引火する虞がある。したがって、これを防止するために、最内層4は導電性を有する樹脂で形成することが好ましい。但し、燃料チューブ1内を流れる燃料が、引火性の低いものである場合には、必ずしも最内層4は導電性を有している必要はない。
【0048】
また、最内層4は、上述の如く燃料に直接晒されるため、燃料に対する耐性(耐燃料劣化性、耐燃料腐食性等)に優れた樹脂で形成することが好ましい。したがって、例えば、環境性に優れたアルコール燃料等を使用燃料とした場合には、最内層4は、フッ素系樹脂で形成することが好ましい。フッ素系樹脂は、PA樹脂よりも耐燃料透過性に優れていて、耐燃料透過性の観点からも好ましい。このフッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられ、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体であり、前記重合体を1種又は2種以上を用いても構わない。
【0049】
さらに、最内層4を構成するフッ素系樹脂として、コネクタ(PA樹脂)との接合性に優れた樹脂を使用するようにすれば、最内層4をスピン溶接によりコネクタ3に溶着させることができて好ましい。具体的には、フッ素系樹脂の分子構造を、PA樹脂と化学的に結合できるように官能基変性した構造(例えば特開2008−100503に示す分子構造)にすればよい。また、PA12との接着性に優れたフッ素系樹脂として、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体やクロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を採用できすることもでき、接着性を高める為に、前記含フッ素重合体に、接着機能性官能基を有することが好ましい。接着機能官能基を有するものである場合、接着機能性官能基を主鎖末端又は側鎖の何れかに有する重合体からなるものであってもよいし、主鎖末端及び側鎖の両方に有する重合体からなるものであってもよい。主鎖末端に接着性機能性官能基を有する場合は、主鎖の両方の末端に有していてもよいし、いずれか一方の末端にのみ有していてもよい。尚、最内層4は、コネクタ3に必ずしも溶着させる必要はなく、少なくとも最外層7がコネクタ3に溶着されていればよい。
【0050】
内層5は、中間層6をできる限りチューブ本体2の径方向外側寄りに位置させるために、最内層4の外周面に積層されている。この内層5は、比較的安価なナイロン系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、例えば、ポリアミド(PA)11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド99、ポリアミド610、ポリアミド26、ポリアミド46、ポリアミド69、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド912、ポリアミドTMHT、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド9N、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド10N、ポリアミド11T、ポリアミド11I、ポリアミド11N、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミド12I、ポリアミド12N、ポリアミドMXD6、ポリアミドPACM12、ポリアミドジメチルPACM12等の脂肪族ポリアミドや芳香族ポリアミド等が挙げられ、少なくとも1種のポリアミドや、これらポリアミドの原料モノマーを数種用いた共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。チューブ本体2の耐熱性、機械的強度や、層間接着性の観点から、上記ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9T、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12Nが好ましく、この中でもポリアミド11、ポリアミド12がより一層好ましい。これらのナイロン系樹脂(PA樹脂)は、加工性に優れ且つ安価であることから、コスト増加を抑制しながら中間層6を極力チューブ本体2の径方向外側寄りに配置することができる。
【0051】
中間層6は、主に燃料チューブの周側面からの燃料漏れを防止するためのバリア層としての機能を有している。中間層6は、耐燃料透過性に優れた樹脂であればどのような樹脂で形成してもよく、例えば、上述のフッ素系樹脂や、上述のナイロン系樹脂から選択できるバリア性の高い樹脂、その他にエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリにビルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル(EEA)等が挙げられ、これらは接着機能性官能基を有していても構わないし、1種又は2種以上が重合されていても構わない。さらに、チューブ本体2の耐熱性、機械的強度や、層間接着性の観点から、上述のフッ素系樹脂、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等のバリア性の高い脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12N等のバリア性の高い芳香族ポリアミドや、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)がより好ましく、この中でもフッ素系樹脂がより一層好ましい。
【0052】
最外層7は、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、具体的には、例えば、ナイロン系樹脂(例えば、PA11,PA12,PA6,PA66,PA99,PA610,PA6/66,PA6/12等)で形成することができる。このように、最外層7を熱溶融性を有するナイロン系樹脂(PA樹脂)で形成することで、最外層7をコネクタ3に対してスピン溶接により確実に溶着することができる。また、PA樹脂は、耐薬品性、耐候性、柔軟性、強度、靱性等の観点から、最外層7に求められる性能を満たしていて、この点からも最外層7の構成樹脂として好ましい。最外層7に使用する樹脂は、コネクタ3に使用する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。これにより、最外層7とコネクタ3とのスピン溶接による接合性を向上させることができる。
【0053】
上記コネクタ3は、図3に示すように、燃料パイプ(不図示)を脱着自在な略L字状の所謂クイックコネクタである。コネクタ3は、樹脂製の一体成型品であって、内部に燃料が通過する燃料通路16を有している(図2〜図4参照)。コネクタ3は、最外層7とスピン溶接により接合されるため、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂で形成することが好ましく、具体的には、ナイロン系の樹脂(内層5の構成樹脂として例示した種々のナイロン系樹脂)で形成することが好ましく、上記チューブ本体2の最外層7を構成する樹脂と同じ樹脂で形成することがより好ましい。また、コネクタ3の剛性向上を図るために、ナイロン系樹脂にガラス繊維等を添加するようにしてもよい。
【0054】
上記コネクタ3は、チューブ本体2が挿入(嵌合)されてスピン溶接されるチューブ挿入部10と、このチューブ挿入部10から直角に延び、燃料パイプが取り付けられるパイプ取付部21とを備えている。
【0055】
チューブ挿入部10は、軸心方向の一側に開口する中空円筒状のチューブ挿入溝部11を有している。チューブ挿入溝部11の内周壁面12は、開口側から底部側に向かって径が一定の円筒状をなしている。チューブ挿入溝部11の外周壁面13は、開口側から奥側に向かって径が直線的に小さくなるテーパ状をなしている。チューブ挿入溝部11の開口側端部には、その外周を囲むように円環状のバリ収容部14が形成されている。バリ収容部14は、チューブ挿入溝部11に連続してチューブ挿入側に開口する皿状の凹部かなる。尚、このバリ収容部14は必ずしも設ける必要はない。
【0056】
以下、チューブ本体2とコネクタ3とをスピン溶接する手順について説明する。まず、チューブ本体2の一端部をコネクタ3のチューブ挿入溝部11に挿入する。そして、挿入したチューブ本体2の一端部を、チューブ挿入溝部11の開口側から奥側に向かって押し込みながら、コネクタ3をその中心軸周りに回転させると、チューブ本体2とコネクタ3との接触面が摩擦熱で溶融し、溶融した接触面が固化することでチューブ本体2がコネクタ3に溶着される。このチューブ本体2の押込み量は、チューブ本体2の挿入側端部が底付きしないように例えば2mm程度に設定されている。ここで、本実施形態では、チューブ挿入溝部11の外周壁面13は、上述の如くテーパ状に形成されているため、チューブ本体2の外周面が、チューブ挿入溝部11の外周面に接触して溶着される。このとき生じるバリはバリ収容部14に収容される。一方、チューブ挿入溝部11の内周壁面12は、上述の如く径が略一定の円筒面であるため、チューブ挿入溝部11の外周壁面13に比べてチューブ本体2との接触は抑制される。このことから、チューブ本体2とコネクタ3とは、主にチューブ挿入溝部11の外周面とチューブ本体2の挿入側端部の外周面とが接触して溶着することにより接続される。尚、チューブ本体2の挿入側端部の内周面が、チューブ本体2に対して全く溶着されない訳ではなく、例えばチューブ本体2の最内層4にコネクタ3との溶着性に優れた樹脂を採用することで両者を溶着することもできる。
【0057】
次に、実施例(表1参照)について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
最内層4を構成する樹脂として、導電性を有するフッ素系樹脂である導電EFEP(例えば、ダイキン工業社グレード材料:RP5000AS)を採用し、内層5を構成する樹脂として、PA12(例えば、ダイセル・エボニック社グレード材料:LX9011)を採用し、中間層6を構成する樹脂として、フッ素系樹脂である非導電性EFEPを採用し、最外層7を構成する樹脂として、熱溶融性を有する脂肪族系熱可塑性樹脂であるPA12を採用するようにしている。
【0059】
(実施例2)
最内層4を構成する樹脂として、実施例1と同様に導電EFEPを採用し、内層5を構成する樹脂として、実施例1と同様にPA12を採用し、中間層6を構成する樹脂として
、フッ素系樹脂である非導電性PVDFを採用し、最外層7を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用するようにしている。
【0060】
(実施例3)
最内層4を構成する樹脂として、導電性を有するポリフェニレンサルファイド(以下、導電PPSという)を採用し、内層5を構成する樹脂として、実施例1と同様にPA12を採用し、中間層6を構成する樹脂として、実施例1と同様に非導電性EFEPを採用し、最外層7を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用するようにしている。この実施例3では、上記導電PPSとして、ポリフェニレンサルファイド(PPS)にカーボンブラックを、ポリフェニレンサルファイド100質量部に対して10質量部の割合で配合して分散させたものを使用している。
【0061】
(実施例4)
最内層4を構成する樹脂として、実施例1と同様にPA12を採用し、内層5を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用し、中間層6を構成する樹脂としてEVOHを採用し、最外層7を構成する樹脂としてPA11を採用するようにしている。尚、内層5と中間層6との間、及び、中間層6と最外層7との間にはそれぞれ、各層間の接着強度が不足しないように変性ポリオレフィンの接着層を0.05mmの厚みで設けるようにしている。
【0062】
(実施例5)
最内層4を構成する樹脂として、実施例1と同様に導電EFEPを採用し、内層5を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタラート(PBT)とPA12とを混練溶融させたPBT/PA12アロイ樹脂を採用し、中間層6を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を採用し、最外層7を構成する樹脂として実施例1と同様にPA12を採用するようにしている。尚、中間層6と最外層7との間には、両者の接着強度が不十分であることからPBT/PA12アロイ樹脂を0.05mmの厚みで設けるようにしている。
【0063】
(層厚さについて)
上記実施例1及び2では最内層4の厚みを0.10mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.10mmとし、最外層7の厚みを0.60mmとした。
【0064】
上記実施例3では、最内層4の厚みを0.05mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.1mmとし、最外層7の厚みを0.65mmとした。
【0065】
上記実施例4では最内層4の厚みを0.10mm、内層5の厚みを0.05mmとし、中間層6の厚みを0.25mmとし、最外層7の厚みを0.50mmとした。
【0066】
上記実施例5では最内層4の厚みを0.10mm、内層5の厚みを0.20mmとし、中間層6の厚みを0.20mmとし、最外層7の厚みを0.45mmとした。
【0067】
(比較例について)
次に、比較例(表2参照)について具体的に説明する。
【0068】
比較例1〜5は、実施例1〜5に対応する比較例であって、コネクタ3とチューブ本体2との接続方式を各実施例とは異ならせたものである。すなわち、各比較例1〜5では、コネクタ3とチューブ本体2との接続方式が圧入方式である点を除いて、各層4〜7の構成材料や厚みはそれぞれ実施例1〜5と同様である。
【0069】
比較例6〜11はそれぞれ、中間層6と最内層4との間の内層5を有しておらず、中間層6が実施例に比べて最内層4寄りに位置するようにしたものである。比較例6,7は、中間層6がEFEPで構成された実施例1の比較例であって、実施例1において内層5を廃止して中間層を構成するEFEPを最内層4を構成する導電EFEPと一体化したものである。比較例8,9は、中間層6がPVDFで構成された実施例2に対応する比較例であって、実施例2の内層5を廃止した構成と同様である。比較例10,11は、実施例3に対応する比較例であって、実施例3において内層5を廃止した構成と同様である。各比較例6〜11では、内層5を廃止した分だけ最外層7の厚みを増加させるようにしている。また、比較例6,8,10は、コネクタ3の接続方式が溶接方式であるのに対し、比較例7,9,11は圧入方式とされている。
【0070】
(性能評価)
上記実施例及び比較例について以下に述べる各項目について評価した。評価結果は、表1及び表2に示されている。
(初期接着力)
初期接着力とは、各層4〜7の層間接着力のうち最も小さい値をいう。測定にあたっては、テストチューブを半割りにし、テンシロン万能試験機を用い、30mm/minの引張速度にて180°剥離試験を実施して剥離強度を読み取り、剥離断面長さ(幅)で除した値を初期接着力(初期層間接着力)とした。この初期接着力は、20N/cmよりも大きいことが好ましく、30N/cmよりも大きいとより好ましい。
(燃料封入20日後の接着力)
燃料封入20日後の接着力は、初期接着力と同じく、各層4〜7の層間接着力のうち最も小さい値をいう。測定にあたっては、テストチューブ内部に、FuelC(イソオクタン:トルエン=50:50体積比)とエタノ−ルとを90:10の体積比で混合したアルコ−ル/ガソリンを封入して60℃の温度に20日間保持した後、上記初期接着力試験と同じ方法で接着力を求めた。初期接着力と同様に、20N/cmよりも大きいことが好ましく、30N/cmよりも大きいとより好ましい。
(燃料透過量について)
両端部にコネクタ3を接続した長さ200mmのテストチューブ(内径6mm,肉厚1mm)を用いて以下の方法により燃料透過量V1〜V3を測定した。
【0071】
すなわち、テストチュ−ブに上記アルコ−ル/ガソリンを封入して全体の重量を測定し、次いで60℃のオ−ブンに入れ、一日毎に重量変化(a)を測定した。一方、上記アルコ−ル/ガソリンを封入していないテストチューブの重量変化(b)についても同様に測定した。この測定を20日間続けて、(a)−(b)により、一日あたりの燃料の重量変化を求めて燃料透過量V1(60°C,E10)とした。
【0072】
また、純エタノールを封入した場合についても同様に燃料の質量変化を算出し、それを燃料透過量V2(60°C,E100)とした。
【0073】
また、10〜30℃を12時間周期で一定の温度下降勾配で変化させたサイクル運転した場合についても同様に燃料の質量変化を算出し、それを燃料透過量V3(10℃〜30℃サイクル,E10)とした。
(チューブコネクタ引抜力)
コネクタ3を固定した状態でチューブ本体2をコネクタ3から引抜く方向に引張って、その引張り荷重を徐々に増加させていく試験を行った。そして、チューブ本体2がコネクタ3から抜ける瞬間の引張り荷重をチューブコネクタ引抜力とした。
【0074】
ここで、表1中の「チューブ切断」とあるのは、引っ張り荷重を増加させていったときにチューブ本体2がコネクタ3から抜けずに破断に至ったことを示している。このことは、換言すると、上記コネクタ3に対する上記チューブ本体2の引抜き方向の接合力が、上記チューブ本体2における該引抜き方向(長さ方向)の破断荷重よりも大きいことを意味している。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
以上の如く、上記実施形態では、中間層6の内側に二つの層(最内層4及び内層5)を設けて、中間層6を極力、チューブ本体2の外周側寄りに配置するようにしたことで、チューブ本体2の燃料通路8内から厚さ方向に漏出する揮発燃料の量を低減することができる。すなわち、この燃料チューブ1によれば、図5(a)に模式的に示すように、燃料通路8内からチューブ本体2の厚さ方向に向かう揮発燃料の貫通力(透過力)を、中間層6の内側に配置した二つの層4,5でもって弱めることができ、これにより、燃料通路8内から中間層6に到達する揮発燃料の量を低減することができる。延いては、揮発燃料が中間層6を通過してその外側に漏出するのを防止することができる。
【0078】
さらに、上記実施形態では、コネクタ3の挿入溝部11の外周面に、チューブ本体2の挿入側端部の外周面を溶着するようにしたことで、チューブ本体2の端部(チューブ本体2とコネクタ3との接続部)からの燃料漏れを確実に防止することができる。すなわち、図5(b)に示すように、コネクタ圧入タイプの燃料チューブ1(比較例1〜5に係る燃料チューブ1)では、中間層6をチューブ本体2の外周側寄りに配置するほど、中間層6の内周面とコネクタ3の圧入部の外周壁面13との距離が大きくなって、両者の間から揮発燃料が漏出し、燃料チューブ1の端部からの燃料漏れが増加する。これに対して、上記実施形態に係る燃料チューブ1では、図5(a)に示すように、チューブ本体2の外周面をチューブ挿入溝部11の外周面に溶着するようにしたことで、この溶着部にて揮発燃料の通過を遮断して、燃料チューブ1の端部からの燃料漏れを防止することができる。しかも、上記実施形態では、上述の如く、中間層6の内側に二つの層4,5を配置するようにしているため、チューブ本体2の端部においても、この二つの層4,5でもって揮発燃料の通過をある程度は遮断し、揮発燃料が中間層6の外側に漏出して溶着部15に到達するのを抑制することができる。
【0079】
このことは、表1及び2の試験結果からもわかる。すなわち、実施例1〜5では、コネクタ接続方式を圧入方式とした比較例1〜5に比べて、燃料透過量V1〜V3のいずれにおいても小さくなっていることがわかる。これは、上述したように、コネクタ接続方式を圧入方式とした場合には、中間層6とコネクタ3との間から燃料が漏出するが、コネクタ接続方式を溶接方式とした場合には、溶接部にてこの燃料の漏出を遮断することができるためと考えられる。
【0080】
また、実施例1、2、3では、内層5を廃止した比較例6、8、10に比べて、燃料透過量V1〜V3が減少していて、特に燃料透過量V3が半分以下に減少していることがわかる。具体的には、例えば実施例1と比較例6とを比べると、上記燃料透過量V3は実施例1で1.1となり比較例6で2.9となって、内層5を有する実施例1の方が、上記燃料透過量V3が半分以下に減少していることがわかる。これは、上述したように、実施例1の方が、内層5を設けることにより中間層6を極力、外側寄りに配置して中間層6に到達する揮発燃料の量を低減することができるためと考えられる。したがって、上記実施形態に係る燃料チューブ1は、低温サイクル環境下において特に効果的であると言える。
【0081】
ここで、コネクタ接続方式を圧入方式とした比較例1、2、3と比較例7、9、11とを比べると、中間層(バリア層)6を外側寄りに配置した方が(比較例1、2、3の方が)、燃料透過量V1〜V3が大きくなっているが、これは上述したように、チューブ本体2とコネクタ3との接続部からの燃料漏れが大きくなるためであり、上記実施形態では、チューブ本体2とコネクタ3とを溶接しにより接続しているため、中間層6を外側寄りに配置しても、チューブ本体2とコネクタ3との接続部からの燃料漏れを抑制することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、上記チューブ本体2の最内層4をコネクタ3(チューブ挿入溝部11の内周壁面12)に溶着する等しなくても、上記二つの層4,5による燃料遮断効果と最外層7とコネクタ3との溶着部15における燃料遮断効果とによって、燃料チューブの端部からの燃料漏れを確実に抑制することができる。
【0083】
以上に述べたように、上記実施形態では、チューブ本体2の周壁部からの燃料漏れ防止(チューブ本体2の厚さ方向の燃料漏れ防止)と、チューブ本体2の端部からの燃料漏れ防止との両立を図ることができる。また、最内層4を必ずしもコネクタ3に溶着する必要がないため、例えば最内層4を形成する樹脂としてコネクタ3(PA樹脂)との溶着性が低いフッ素系樹脂等を採用することもできる。したがって、エタノール燃料を使用する場合など、耐燃料性(耐燃料劣化性、耐腐食性)の観点から最内層4にフッ素系樹脂等を使用する必要がある場合でも、高い耐燃料透過性を実現することができる。
【0084】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0085】
すなわち、上記実施形態及び実施例では、チューブ本体2を四つの層4〜7で構成する例を示したが、必ずしも四層で構成する必要はなく、例えば五層以上であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、中間層6の内側に内層5と最内層4との二層を設けるようにしているが、必ずしも二層に限ったものではなく、例えば三層以上であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、チューブ本体2をスピン溶接によりコネクタ3に接合するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、超音波溶接や振動溶接により接合するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、チューブ本体2の一端部にのみコネクタ3を接合する例を示したが、チューブ本体2の両端部にそれぞれコネクタ3を接合するものであってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体と、接続用のコネクタとを備えた燃料チューブに有用であり、特に、コネクタに対して燃料チューブをスピン溶接により接合した燃料チューブに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 燃料チューブ
2 チューブ本体
3 コネクタ
4 最内層
5 内層
6 中間層(バリア層)
7 最外層
11 チューブ挿入溝部(環状凹部)
12 内周壁面
13 外周壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を径方向に積層してなる樹脂製のチューブ本体と、接続用のコネクタとを備えた燃料チューブであって、
上記チューブ本体は、最外層よりも径方向内側に位置し且つ耐燃料透過性を有するバリア層を含んでいて、該バリア層の径方向内側に二つ以上の層が位置するように構成され、
上記コネクタは、上記チューブ本体の端部が挿入される環状凹部を有し、
上記チューブ本体の端部は、上記コネクタの環状凹部に挿入された状態で少なくとも該環状凹部の外周壁面に溶接して接合されていることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最外層は、熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項3】
請求項2記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最外層を構成する熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂は、PA11又はPA12であることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタは、熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項5】
請求項4記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタを構成する熱溶融可能な脂肪族系熱可塑性樹脂は、PA11又はPA12であることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタは、上記チューブ本体の最外層を構成する樹脂と同じ樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最内層は、フッ素系樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体のバリア層は、下記のA群から選ばれるいずれかであることを特徴とする燃料チューブ。
A群:フッ素系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6N、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12N、これらを1種又は2種以上が重合したもの。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体のバリア層は、フッ素系樹脂からなることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の最内層を構成する樹脂は、導電性を有することを特徴とする燃料チューブ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体における上記バリア層と最内層との間の層は、PA11又はPA12で構成されていることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記チューブ本体の初期層間接着力は20N/cm以上であることを特徴とする燃料チューブ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の燃料チューブにおいて、
上記コネクタに対する上記チューブ本体の引抜き方向の接合力は、上記チューブ本体における該引抜き方向の破断荷重よりも大きいことを特徴とする燃料チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196778(P2012−196778A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60634(P2011−60634)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】