説明

燃料ホース

【課題】燃料低透過性、耐薬品性、柔軟性および接続加工性に優れた燃料ホースを提供する。
【解決手段】燃料と接する管状の樹脂層を有する燃料ホースであって、上記樹脂層が、下記の(A)〜(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分との重量混合比が(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40であり、(A)成分と(B)成分とが相溶状態である樹脂組成物からなる。
(A)脂肪族ポリアミド。
(B)半芳香族ポリアミド。
(C)エラストマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ホースに関するものであり、詳しくは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、圧縮天然ガス(CNG)、液化石油ガス(LPG)等の自動車用燃料の輸送ホース等に用いられる自動車用燃料ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を取り巻く燃料ガスの蒸散規制は厳しくなってきており、これに対応する低透過な燃料ホースが各種検討されている。従来、燃料ホースにはフッ素樹脂が使用されてきたが、より厳しい燃料低透過性(燃料バリア性)が要求される場合には、フッ素樹脂層の厚みを厚くせざるを得ず、そのためホースが高価になるという難点がある。そこで、フッ素樹脂よりも安価で、燃料低透過性に優れる樹脂として、例えば、ポリアミド6(PA6)等の脂肪族ポリアミドや、ポリアミド9T(PA9T)等の芳香族ポリアミドが注目されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150500号公報
【特許文献2】特開2007−126591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PA6等の脂肪族ポリアミドは、耐薬品性(耐塩化カルシウム性)が劣り、PA9T等の芳香族ポリアミドは剛性が高く、柔軟性に劣るため、コネクタとの接続加工性が悪いという難点がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、燃料低透過性、耐薬品性、柔軟性および接続加工性に優れた燃料ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料ホースは、燃料と接する管状の樹脂層を有する燃料ホースであって、上記樹脂層が、下記の(A)〜(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分との重量混合比が(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40であり、(A)成分と(B)成分とが相溶状態である樹脂組成物からなるという構成をとる。
(A)脂肪族ポリアミド。
(B)半芳香族ポリアミド。
(C)エラストマー。
【0007】
すなわち、本発明者らは、燃料低透過性、耐薬品性、柔軟性および接続加工性に優れた燃料ホースを得るため、燃料と接する樹脂層を中心に鋭意研究を重ねた。そして、脂肪族ポリアミド(A成分)と、半芳香族ポリアミド(B成分)との重量混合比を、A成分/B成分=95/5〜60/40の範囲内に設定すると、脂肪族ポリアミド(A成分)と、半芳香族ポリアミド(B成分)とが海島構造をとらずに、相溶状態となるため、半芳香族ポリアミド(B成分)の効果である耐薬品性の性能を上手く引き出すことができ、脂肪族ポリアミド(A成分)の欠点である耐薬品性の悪化が生じにくくなり、これらを用いてなる樹脂層全体の耐薬品性が向上することを突き止めた。そして、さらに研究を続けた結果、上記所定量の脂肪族ポリアミド(A成分)および半芳香族ポリアミド(B成分)とともに、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体等のエラストマー(C成分)を含有する樹脂組成物を用いて燃料ホースの樹脂層(最内層)を形成すると、燃料低透過性、耐薬品性、柔軟性および接続加工性に優れることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の燃料ホースの樹脂層は、脂肪族ポリアミド(A成分)、半芳香族ポリアミド(B成分)およびエラストマー(C成分)を含有し、A成分とB成分との重量混合比が、A成分/B成分=95/5〜60/40の範囲内に設定され、A成分とB成分とが相溶状態である樹脂組成物からなる。そのため、本発明の燃料ホースは、燃料低透過性、耐薬品性、柔軟性および接続加工性に優れている。
【0009】
また、上記エラストマー(C成分)の含有量が、A成分およびB成分の合計100重量部に対して、5〜30重量部の範囲であると、柔軟性がさらに向上する。
【0010】
さらに、上記半芳香族ポリアミド(B成分)が、ポリアミド9T(PA9T)であると、燃料低透過性、耐薬品性が向上するようになる。
【0011】
また、上記エラストマー(C成分)が、エチレン−α−オレフィン共重合体および酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方からなるオレフィン系エラストマーであると、A成分もしくはB成分との親和性が向上する。
【0012】
特に、上記A成分とB成分との重量混合比が、A成分/B成分=70/30〜65/35の範囲であると、チューブ拡径時の緊迫力が向上するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の燃料ホースは、燃料と接する管状の樹脂層を有するものであれば、上記樹脂層のみからなる単層構造、もしくは上記樹脂層の外周にプロテクタ層等の層を有する2層以上の多層構造であっても差し支えない。
【0015】
本発明においては、上記樹脂層が、下記の(A)〜(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分との重量混合比が(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40であり、(A)成分と(B)成分とが相溶状態である樹脂組成物からなることが特徴である。
(A)脂肪族ポリアミド。
(B)半芳香族ポリアミド。
(C)エラストマー。
【0016】
本発明において、脂肪族ポリアミド(A成分)と半芳香族ポリアミド(B成分)とが相溶状態であるとは、A成分とB成分とが海−島構造等の分散状態とはならず、非分散状態であることを意味する。
なお、上記A成分とB成分とが相溶状態であることの確認は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)等による熱分析により行うことができる。
【0017】
つぎに、上記樹脂層を構成する樹脂組成物の各成分について具体的に説明する。
【0018】
〈脂肪族ポリアミド(A成分)〉
上記脂肪族ポリアミド(A成分)としては、例えば、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド92(PA92)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、相溶性の点で、PA6が好ましい。
【0019】
〈半芳香族ポリアミド(B成分)〉
上記半芳香族ポリアミド(B成分)としては、例えば、ポリアミド4T(PA4T)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、ポリアミド11T(PA11T)、ポリアミド12T(PA12T)、ポリアミド13T(PA13T)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、燃料低透過性、耐薬品性の点で、PA9Tが好ましい。
【0020】
本発明においては、脂肪族ポリアミド(A成分)と半芳香族ポリアミド(B成分)との重量混合比は、A成分/B成分=95/5〜60/40であり、好ましくはA成分/B成分=70/30〜65/35である。A成分が少なすぎる(B成分が多すぎる)と、柔軟性に劣り、A成分が多すぎる(B成分が少なすぎる)と、耐薬品性が悪くなる。
【0021】
〈エラストマー(C成分)〉
上記エラストマー(C成分)としては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、A成分もしくはB成分との親和性の点で、オレフィン系エラストマーが好ましい。なお、上記各種のエラストマー(C成分)は、無水マレイン酸変性やエポキシ変性して使用してもよい。
【0022】
上記オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン,プロピレン,ブタジエン等のオレフィンや、ジエンモノマーを単独重合もしくは共重合したもの等があげられ、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、もしくはEPDMとEPMのブレンド物、エチレン−α−オレフィン共重合体、変性エチレン−α−オレフィン共重合体、リアクターTPO等があげられる。これらのなかでも、A成分もしくはB成分との親和性の点で、エチレン−α−オレフィン共重合体、変性エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0023】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレンと、プロピレン,1−ブテン,1−ペンテン,1−ヘキセン,1−ヘプテン,1−オクテン,1−ノネン,1−デセン等のα−オレフィンとの共重合体があげられる。
【0024】
また、上記変性エチレン−α−オレフィン共重合体としては、上記エチレン−α−オレフィン共重合体のポリマー側鎖もしくはポリマー末端を、無水マレイン酸、シリコーン(シラン)、塩素、アミン、アクリル、エポキシ化合物等で化学修飾してなるものがあげられる。なかでも、無水マレイン酸等で酸変性したものが好ましい。
【0025】
上記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等があげられる。
【0026】
上記塩化ビニル系エラストマーとしては、例えば、PVC/ゴムに可塑剤をブレンドしたものの一部を部分架橋したもの等があげられる。
【0027】
上記ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、テレフタル酸ジメチル、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を原料とし、エステル交換や重縮合反応により得られるもの等があげられ、具体的には、ポリブチレンナフタレート(PBN)系エラストマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系エラストマー等があげられる。
【0028】
上記ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、ポリエーテルポリオール,ポリカーボネートポリオール,ポリエステルポリオール等のポリオールと、イソシアネートとの反応により得られる共重合体等があげられる。
【0029】
上記ポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ポリアミド6,ポリアミド12等のポリアミドと、ポリエーテルもしくはポリエステルとの共重合体等があげられ、具体的には、ポリアミド6/ポリエーテル共重合体、ポリアミド12/ポリエーテル共重合体、ポリアミド12/ポリエステル共重合体等があげられる。
【0030】
上記エラストマー(C成分)の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部に対して、5〜30重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜15重量部の範囲である。C成分が少なすぎると、柔軟性が劣る傾向がみられ、C成分が多すぎると、燃料低透過性を損なうおそれがある。
【0031】
なお、本発明に使用する樹脂組成物において、上記エラストマー(C成分)は、A成分もしくはB成分と相溶するのではなく、A成分とB成分とが相溶した相溶系に、未架橋のエラストマー(C成分)が粒子状で分散した状態で存在している。
【0032】
上記エラストマー(C成分)は、平均粒径0.1〜1μmの粒子状で含有されていることが好ましい。上記エラストマー(C成分)の平均粒径が小さすぎると、柔軟性が劣る傾向がみられ、平均粒径が大きすぎると、燃料低透過性を損なうおそれがある。なお、上記エラストマー(C成分)の平均粒径は、例えば、多数のエラストマー(C成分)の粒子径を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等により測定し、その平均値を算出することにより導き出すことができる。
【0033】
なお、上記樹脂層を構成する樹脂組成物には、上記A〜C成分以外に、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、柔軟成分、造核剤、耐熱剤等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0034】
上記樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記脂肪族ポリアミド(A成分)と、半芳香族ポリアミド(B成分)との重量混合比が前記所定の範囲となるよう配合し、つぎに、エラストマー(C成分)および必要に応じてその他の成分を適宜配合し、これらを2軸混練機等により、所定の条件(例えば、300〜310℃で4〜5分間)で混合することにより調製することができる。
【0035】
本発明の燃料ホースは、前述のように、燃料と接する管状の樹脂層を有するものであれば、単層構造もしくは2層以上の多層構造であっても差し支えない。なお、本発明の燃料ホースにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において、上記樹脂層の内周面に最内層を形成しても差し支えない。上記最内層は、燃料低透過性の点から、フッ素系樹脂からなるフッ素系樹脂層が好ましい。
【0036】
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフロオロエチレン−ヘキサフルオロ共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、これらの変性共重合体、各種グラフト重合体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、上記フッ素系樹脂としては、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性高分子等を添加し、導電性を付与した導電フッ素系樹脂を使用することも可能である。
【0037】
本発明の燃料ホースは、上記A〜C成分を必須成分とする樹脂組成物を調製し、これをホース状に押し出し成形して、管状の樹脂層を形成することにより作製することができる。
【0038】
なお、ホースを蛇腹状に形成する場合には、上記ホース状体(チューブ)をコルゲート成形機に通すことにより、所定寸法の蛇腹状ホースを作製することも可能である。
【0039】
本発明の燃料ホースにおいて、ホース内径は1〜40mmの範囲が好ましく、特に好ましくは2〜36mmの範囲であり、ホース外径は2〜44mmの範囲が好ましく、特に好ましくは3〜40mmの範囲である。また、樹脂層の厚みは0.02〜1.0mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.6mmの範囲である。
【実施例】
【0040】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0042】
〔脂肪族ポリアミド(A成分)〕
PA6(宇部興産社製、ナイロン6 1030B)
【0043】
〔半芳香族ポリアミド(B成分)〕
PA9T(クラレ社製、ジェネスタN1001A)
【0044】
〔エラストマー(i)(C成分)〕
エチレン−α−オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーA−4085)
【0045】
〔エラストマー(ii)(C成分)〕
無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーMH7020)
【0046】
〔実施例1〕
(樹脂組成物の調製)
PA6(A成分)とPA9T(B成分)とを、下記の表1に示す割合で配合し、2軸混練機(JSW社製)を使用し、300℃で1〜2分間混練した。つぎに、エラストマー(i)(C成分)を同表に示す割合で配合し、2軸混練機(JSW社製、TEX−α)を使用して、300℃で2〜3分間混合することにより、樹脂組成物を調製した。
【0047】
〈ホースの作製〉
上記樹脂組成物をホース状に押出成形して、管状の樹脂層(厚み1.0mm)のみからなる単層構造のホースを作製した(内径12mm)。
【0048】
〔実施例2〜8、比較例1〜3〕
各成分の配合割合を下記の表1に示す割合に変更する以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。そして、この樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、ホースを作製した。
【0049】
【表1】

【0050】
このようにして得られた、実施例および比較例のホースに関して、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。その結果を、上記表1に併せて示した。
【0051】
〔相溶状態〕
各ホースの樹脂組成物について、脂肪族ポリアミド(A成分)と半芳香族ポリアミド(B成分)との相溶状態を確認した。すなわち、DSC(島津制作所社製、DSC−60)を用いて、樹脂組成物を熱分析した。評価は、融点に起因する吸熱ピークが単一ピークであるものを○(相溶)、単一ピークでないものを×(非相溶)とした。なお、測定条件は、窒素中、常温〜300℃まで10℃/minで昇温し、その後30℃まで冷却した後、再度300℃まで10℃/minで昇温して測定を行った。
【0052】
〔エラストマー(C成分)の平均粒径〕
各樹脂組成物に分散している多数のエラストマー(C成分)の粒子径を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(島津制作所社製、9500−J)で観察し、その平均値を算出した。評価は、平均粒径が1〜10μmのものを○、平均粒径が10μmを超えるものを×とした。
【0053】
〔接続加工性〕
各ホースをコネクタに接続し、150℃×1時間熱処理を加え、23℃で24時間静置した後、コネクタとホースに手で周方向に回転トルクを加えた。評価は、ホースが回転しなかったものを○、ホースが回転したもの(接続加工できない材料も含む)を×とした。
【0054】
〔応力緩和性〕
各ホースの樹脂層から切り出した試験片(幅:5mm、長さ100mm)を用いて、応力緩和試験機(東洋精機社製、HDT.VSPT.TESTER.S-6M)にて、緩和試験を行った。すなわち、試験片に35%伸張を与え、室温で1日放置後100℃に昇温し、240時間後の応力(緩和)値を測定した。評価は、応力値が4〜7MPaのものを○、7MPaを超える、あるいは1MPa未満のものを×とした。
【0055】
〔燃料低透過性(燃料バリア性)〕
各ホースに対し、等圧式ホース透過率測定装置(GTRテック社製、GTR−TUBE3−TG)を用いて、トルエン/イソオクタン/エタノールを45:45:10(体積比)の割合で混合した模擬アルコール添加ガソリンの透過係数を、40℃で1カ月間測定した(単位:mg/m/day)。評価は、平衡に達したときの値が、50(mg/m/day)未満のものを○、50(mg/m/day)以上のものを×とした。
【0056】
上記結果から、実施例品は、いずれも接続加工性、柔軟性、応力緩和性、燃料低透過性に優れていた。
【0057】
これに対し、比較例1品は、樹脂層がPA9Tを主成分とするため、接続加工性(この材料は、接続加工時に割れが発生した)および応力緩和性が劣っていた。
比較例2品は、PA9Tの混合比が高すぎる(PA6の混合比が少なすぎる)ため、相溶性が劣り、応力緩和性も劣っていた。
比較例3品は、樹脂層がPA6を主成分とするため、燃料低透過性が劣っていた。
【0058】
なお、上記実施例の樹脂層においては、脂肪族ポリアミド(A成分)としてPA6のみを、半芳香族ポリアミド(B成分)としてPA9Tのみを使用したが、これ以外の脂肪族ポリアミド(A成分)、半芳香族ポリアミド(B成分)を使用した場合であっても、上記実施例と略同等の結果が得られることを、本発明者らは実験により確認している。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の燃料ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CNG、LPG等の自動車用燃料の輸送ホース等に用いられるが、自動車のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)用燃料の輸送ホース等にも使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と接する管状の樹脂層を有する燃料ホースであって、上記樹脂層が、下記の(A)〜(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分との重量混合比が(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40であり、(A)成分と(B)成分とが相溶状態である樹脂組成物からなることを特徴とする燃料ホース。
(A)脂肪族ポリアミド。
(B)半芳香族ポリアミド。
(C)エラストマー。
【請求項2】
(C)成分の含有量が、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して、5〜30重量部の範囲である請求項1記載の燃料ホース。
【請求項3】
(B)成分がポリアミド9T(PA9T)である請求項1または2記載の燃料ホース。
【請求項4】
(C)成分が、エチレン−α−オレフィン共重合体および酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方からなるオレフィン系エラストマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料ホース。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分との重量混合比が、(A)成分/(B)成分=70/30〜65/35である請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料ホース。

【公開番号】特開2013−64423(P2013−64423A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202013(P2011−202013)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】