説明

燃料ポンプ

【課題】ポンプシリンダ内に移動可能に支持されたプランジャを備えた燃料ポンプ、特にコモンレール式燃料噴射装置の高圧燃料ポンプに関し、プランジャとポンプシリンダとの間の案内領域に燃料付着物が生じないようにする。
【解決手段】プランジャ(12)に空洞(14)を設け、該空洞(14)を介してプランジャ(12)を内側から冷却する。この結果、プランジャとポンプシリンダとの間の案内領域に燃料付着物が生じることがなく、プランジャとポンプシリンダとの間の案内隙間を維持してプランジャの固着を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の燃料ポンプ、特にコモンレール式燃料噴射装置の高圧燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
実際に公知の燃料ポンプではポンプシリンダが利用され、該ポンプシリンダに、プランジャが移動可能に支持されている。プランジャは1個或いは複数のカムを介してポンプシリンダ内を昇降運動し、これにより、燃料が吸い込まれ、燃料ポンプによって負荷、例えば燃料供給系の噴射弁に導かれる。
【0003】
実際に公知の燃料ポンプでは、ポンプシリンダとプランジャとの間で生ずる漏れ燃料を燃料供給系或いは漏れ燃料帰還路に排出すべく、プランジャを移動可能に支持するポンプシリンダの箇所に、1個或いは複数の溝を設けている。特に燃料ポンプが重油燃料供給系に利用されるとき、プランジャとポンプシリンダの間の案内領域にスケールとも呼ばれる燃料付着物が生じ、該付着物は、プランジャとポンプシリンダとの間の案内隙間を狭め、プランジャを固着させてしまう。この危険は、運転温度が高ければ高い程そしてプランジャからの放熱が悪ければ悪い程、大きくなる。運転中に生ずる温度は、燃料の種類、品質並びに燃料ポンプが受ける負荷に左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上述の問題に鑑み、新たな燃料ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1に記載の燃料ポンプによって解決される。本発明に基づいて、プランジャは空洞を有し、該空洞を介してプランジャが内側から冷却される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、燃料ポンプのプランジャを内側から冷却することを提案し、もって運転中に生ずる熱をプランジャから排出する。従って、プランジャとポンプシリンダとの間における案内領域に付着物が生ずることが防ぎ、これにより、プランジャとポンプシリンダとの間の案内隙間を維持する。これにより、プランジャの固着を防止する。
【0007】
本発明の第1の実施態様では、空洞を密閉中空室として形成し、部分的に冷却材を封入し、該冷却材を、プランジャの運動により空洞内を動かす。その際、プランジャの上部で熱を吸収し、該熱をプランジャの下部、詳しくはプランジャの運動の下死点で放出する。
【0008】
本発明の第2の有利な実施態様では、空洞を、入口と出口とを備えた開放中空室として形成し、その場合には空洞を冷却材で連続的或いは周期的に貫流させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の有利な実施態様を、従属請求項および以下の説明から明らかにする。以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に基づく燃料ポンプ10の第1実施例を概略断面図で示し、燃料ポンプ10は、ポンプシリンダ11と該シリンダ11内に移動可能に支持されたプランジャ12を備える。プランジャ12は、図1においてカム13で制御されてポンプシリンダ11内を昇降運動し、プランジャ12の運動により、燃料を吸い込み、負荷に向けて搬送する。
【0011】
図1において、プランジャ12は空洞14を備える。該空洞14は、密閉中空室として形成され、部分的に冷却材15を封入されている。冷却材15は、液状冷却材又は所定温度以上でその集合状態が固相から液相に変化する冷却材、例えばナトリウムである。
【0012】
燃料ポンプ10の運転中、少なくとも運転温度の下で液状の冷却材15が、空洞14内で動き、即ち振り回され、該冷却材15は、プランジャ12の上部で熱を吸収し、プランジャ12の下部、即ちプランジャ12の運動の下死点で放出する。この結果、プランジャ12と冷却材15との間の十分な温度差、従って良好な熱伝達を常に保証できる。
【0013】
燃料ポンプ10の運転中に生ずる熱は、プランジャ12の上部から下向きに搬出され、プランジャ12の下降時に下死点において大気に放出される。
【0014】
場合によっては、図1の燃料ポンプ10のプランジャ12は、その補助的冷却を実施するために、プランジャ12の下部が外から油或いは燃料で濡らされる。
【実施例2】
【0015】
図2は、本発明による燃料ポンプ20の第2実施例を示す。図2の燃料ポンプ20も、ポンプシリンダ21と該シリンダ21内に移動可能に支持されたプランジャ22とを備える。プランジャ22はポンプシリンダ21内を、カム23で制御されて昇降運動する。
【0016】
燃料ポンプ20のプランジャ22は空洞24を備える。図2の実施例で、空洞24は冷却材の入口25と出口26を備えた開放中空室として形成され、該空洞24を冷却材が貫流する。冷却材は、プランジャ行程に応じ、空洞24を連続的又は周期的に貫流する。
【0017】
図2に示す実施例では、プランジャ22の入口25と出口26は、ポンプシリンダ21に各々設けた周溝27と協働する。入口25又は出口26が各々の周溝27と一致したとき、冷却材がプランジャ20の空洞24に供給されるか、そこから排出される。従って、図2において、空洞24をプランジャ行程に依存して冷却材が周期的に貫流する。
【0018】
図2において、入口25と協働する周溝27に冷却材の入口管28が開口し、これに対し出口26と協働する周溝27に冷却材の出口管29が開口している。
【0019】
図2の実施例では、冷却材の入口25をプランジャ22の上部、出口26をプランジャ22の下部に設けている。入口をプランジャの下部、出口をプランジャの下部に設けること、即ち、空洞24の貫流方向を逆にしてもよい。図2では、冷却材として、特に燃料又は潤滑材を利用できる。
【実施例3】
【0020】
図3は、本発明による燃料ポンプ30の第3実施例を示す。図3の燃料ポンプ30も、ポンプシリンダ31と該シリンダ31内に移動可能に支持したプランジャ32を備える。プランジャ32は、ポンプシリンダ31内をカム33で制御されて昇降運動する。図3の実施例でも、プランジャ32に冷却材用の空洞34を設けている。該空洞34は、図2の実施例と同じに開放中空室として形成し、入口35を介して冷却材を供給し、出口36を介して冷却材を排出する。入口35は、ポンプシリンダ31に設けられた周溝37と協働し、該周溝37に冷却材の入口管38が開口している。従って、図3の実施例でも、空洞34をプランジャ行程に依存して冷却材が周期的に貫流する。
【0021】
図2と3の実施例は、図2の実施例で冷却材の入口25と出口26を共通部品に設け、これに対し図3の実施例で入口と出口を2個の別個の部品に設けた点で相違している。
【0022】
それに応じ図3では、プランジャ32を2分割構造としている。入口35は上側プランジャ39に、出口36は下側プランジャ40に各々設けている。図3では、下側プランジャ40は、流路42を規定するスリーブ状突起43が上側プランジャ39内に突出し、その際、入口35は上側プランジャ39の下部、出口36は下側プランジャ40の下部に設けている。この結果、下側プランジャ40のスリーブ状突起43と上側プランジャ39との間を延びる空洞34の部分42を冷却材が貫流し、空洞に死空間が生じない。
【0023】
図3の実施例でも、冷却材の入口と出口を置換できる。この場合は、入口を下側プランジャ40に、出口を上側プランジャ39に設け、空洞34の貫流方向を逆にする。このため、ポンプシリンダ31に追加的入口を設け、孔36の位置を相応して適合させる。
【0024】
図3の実施例では、潤滑油を冷却材として利用する。潤滑油は入口35を経て空洞34に供給され、空洞34内を上昇し、熱をプランジャ32から吸収する。暖まった潤滑油は流路41を経て出口36に導き、プランジャ32から排出する。潤滑油は駆動部潤滑用に利用する。
【0025】
全ての実施例は、燃料ポンプのプランジャを内側から冷却する、詳しくはプランジャに設けた空洞を介して冷却する点で共通している。この結果、運転中に生ずる熱を、プランジャの領域から効果的に排出し、大気に放出できる。このため、プランジャとポンプシリンダとの間の案内領域に、該プランジャとポンプシリンダとの間の案内隙間を狭める付着物が生ずるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に基づく燃料ポンプの第1実施例の概略断面図。
【図2】本発明に基づく燃料ポンプの第2実施例の概略断面図。
【図3】本発明に基づく燃料ポンプの第3実施例の概略断面図。
【符号の説明】
【0027】
10、20、30 燃料ポンプ、11、21、31 ポンプシリンダ、12、22、32 プランジャ、13、23、33 カム、14、24、34 空洞、15 冷却材、20 燃料ポンプ、25、35 入口、26、36 出口、27 周溝、28、38 入口管、29 出口管、37 溝、39 上側プランジャ、40 下側プランジャ、41 流路、
42 空洞部分、43 スリーブ状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプシリンダ内に移動可能に支持されたプランジャを備えた燃料ポンプにおいて、
前記プランジャ(12、22、32)が空洞(14、24、34)を有し、該空洞(14、24、34)を介してプランジャ(12、22、32)が内側から冷却されることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項2】
空洞(14)が密閉中空室として形成されて部分的に冷却材(15)が封入され、該冷却材(15)が、プランジャ(12)の運動により空洞(14)内で動かされることを特徴とする請求項1記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
冷却材(15)が、プランジャ(12)の運動により空洞(14)内で振り回され、プランジャ(12)の上部において熱を吸収し、プランジャ(12)の下部において熱を放出することを特徴とする請求項2記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
空洞(24、34)が、入口(25、35)と出口(26、36)とを備えた開放中空室として形成され、冷却材で貫流されることを特徴とする請求項1記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
冷却材が連続的或いは周期的に空洞(24、34)に供給され、又は空洞(24、34)から排出されることを特徴とする請求項4記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
プランジャ(22)が、入口(25)と出口(26)が共通部品に設けられているように形成されたことを特徴とする請求項4又は5記載の燃料ポンプ。
【請求項7】
入口(25)がプランジャ(22)の上部に、出口(26)がプランジャ(22)の下部に設けられたことを特徴とする請求項6記載の燃料ポンプ。
【請求項8】
プランジャ(32)が、入口(35)と出口(36)が2個の別個の部品(39、40)に設けられるように形成されたことを特徴とする請求項4又は5記載の燃料ポンプ。
【請求項9】
入口(35)がプランジャの第1部品(39)の下部に、出口(36)がプランジャの第2部品(40)の下部に設けられたことを特徴とする請求項8記載の燃料ポンプ。
【請求項10】
冷却材を空洞(24、34)に供給し、又は空洞(24、34)から排出すべく、入口(25、35)および/又は出口(26、36)が、ポンプシリンダ(21、31)に設けられた周溝(27、37)と協働することを特徴とする請求項4から9の1つに記載の燃料ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−101617(P2008−101617A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267457(P2007−267457)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】