説明

燃料供給弁

【課題】 弁体の動作が不安定になることを抑制させつつ、閉弁応答性が向上する技術を提供する。
【解決手段】 燃料供給弁10は、本体12と、弁座部材34と、弁体40と、絞り部材52と、を備える。弁体40は、弁座部材34に当接する閉弁位置と弁座部材34から離間する開弁位置との間で移動可能に本体12に収容されている。弁体40が開弁位置にある状態で、絞り部20aはその上流側と下流側とを連通する。弁体40が開弁位置にある場合、絞り部20aの流路面積は、弁体40が閉弁位置にある場合と比較して小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、燃料供給弁を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、容器内の弁体を上下動させることによって、噴孔を開閉させる燃料供給弁が開示されている。この燃料供給弁は、弁体の上流側に位置する第1室と、弁体の下流側に位置し噴孔に接続される第2室を備えている。閉弁状態では、弁体内の第1の燃料流路と弁体の外側を通過する第2の燃料流路とを介して、第1室と第2室とは連通している。弁体が閉弁状態から開弁状態に移行される際には、第2の燃料流路が徐々に閉塞され、開弁状態では、第2の燃料流路は完全に閉塞される。即ち、開弁状態では、燃料は、第1の燃料流路のみを介して第1室から第2室に流れる。このため、第1室と第2室を接続する燃料流路の流路面積は、閉弁状態と比較して、開弁状態のときの方が小さくなる。この結果、第2室内の燃料の圧力と第1室内の燃料の圧力との差が大きくなる。これにより、弁体が開弁状態から閉弁状態に移行される際に、第2室内の燃料と第1室内の燃料との圧力差によって、弁体には開弁状態から閉弁状態となる方向に力が作用する。この結果、開弁状態から閉弁状態への移行時間が短くなる、即ち、閉弁応答性が良くなる。これにより、不要な燃料の噴出量が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−193932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、弁体が開弁状態において、第2の燃料流路が完全に閉塞される。すなわち、弁体が閉弁状態から開弁状態に移行する間は、燃料が第1の燃料流路と第2の燃料流路を流れ、弁体が開弁状態に移行した瞬間に、燃料は第1の燃料流路のみを流れる。このため、弁体が開弁状態となる際に、弁体に作用する圧力が急激に変化することとなる。この結果、弁体の動作が不安定となり、燃料供給弁から噴射される燃料の噴射量が不安定となる恐れがある。本明細書では、弁体の動作が不安定になることを抑制させつつ、閉弁応答性が向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される技術は、燃料供給弁である。この燃料供給弁は、本体と、弁座部材と、弁体と、を備える。本体は、燃料流入孔を備える。弁座部材は、本体に固定されており、燃料吐出孔が形成されている。弁体は、本体に収容されており、弁座部材に当接する閉弁位置と弁座部材から離間する開弁位置との間で移動可能とされている。本体は、その内部を燃料流入孔から燃料吐出孔まで伸びており、弁体が閉弁位置にある場合に全閉状態になる一方で、弁体が開弁位置にある場合に開通状態になる燃料流路を備える。燃料流路は、その中間位置に絞り部を備える。弁体が開弁位置にある状態で、絞り部はその上流側と下流側とを連通する。弁体が開弁位置にある場合の絞り部の流路面積は、弁体が閉弁位置にある場合の絞り部の流路面積より小さくなる。
【0006】
上記の燃料供給弁では、弁体が開弁位置にある場合と比較して、弁体が閉弁位置にある場合、燃料流路の絞り部の流路面積が小さくされている。この結果、弁体が閉弁位置にある状態では、絞り部の上流側(燃料流入孔側)の燃料の圧力と絞り部の下流側(燃料吐出孔側)の燃料の圧力差が大きくなる。この燃料の圧力差によって、弁体には、燃料流入孔側から燃料吐出孔側に向かう圧力が作用する。即ち、弁体には、開弁位置から閉弁位置に向かう方向の圧力が作用する。このため閉弁応答性が向上する。
【0007】
また、上記の燃料供給弁では、絞り部において、燃料流路の流路面積が小さくなるものの、弁体が開弁位置となっても、燃料流路は完全には閉塞されない。このため、従来のように、燃料流路内の燃料の圧力が急激に変化することが抑制される。この結果、弁体の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0008】
絞り部の流路面積は、弁体が閉弁位置から開弁位置に向かって移動するのに従って、徐々に小さくなってもよい。この構成によれば、弁体に作用する燃料の圧力を徐々に変化させることができる。これにより、弁体の動作が不安定になることを好適に抑制することができる。
【0009】
本体は、コアとコアを励磁する電磁コイルとを備えるアクチュエータを備えていてもよい。電磁コイルによってコアを励磁すると、弁体は閉弁位置から開弁位置に向かって移動してもよい。絞り部は、アクチュエータと離間する位置に配置されていてもよい。この構成によれば、絞り部がアクチュエータから離間して配置されることによって、絞り部がアクチュエータの磁気性能に影響を与えることを防止することができる。
【0010】
弁体は、閉弁位置から開弁位置に移動する際に、コアに当接することによって開弁位置に位置決めされていてもよい。絞り部には、燃料流路内に突出して燃料流路を絞る弾性部材が設けられており、弁体が閉弁位置から開弁位置に向かって移動するのに従って弾性部材が徐々に弾性変形することによって、弁体に対して、閉弁位から開弁位置に向かう力を負荷してもよい。この構成によれば、弁体が閉弁位置から開弁位置に移動する際に、絞り部に配された弾性部材の弾性力によって、弁体がコアに当接する速度を緩めることができる。これにより、弁体がコアに当接する際の衝突音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の燃料供給弁の縦断面図を示す。
【図2】実施例1の燃料供給弁が開弁状態である場合の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図3】実施例1の弁体の側方孔が形成されている位置における断面図を示す。
【図4】実施例1のリング部材と絞り部材との平面図を示す。
【図5】実施例2の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図6】実施例3の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図7】実施例4の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図8】実施例4の弁体の平面図を示す。
【図9】実施例5の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図10】実施例5の燃料供給弁が開弁状態である場合の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【図11】変形例の燃料供給弁の一部縦断面図を示す。
【実施例1】
【0012】
図1に示す燃料供給弁10は、燃料ガス(例えば水素)を燃料電池に供給するための弁である。燃料供給弁10は、本体12と、弁体40と、圧縮ばね24と、絞り部材52とを備える。
【0013】
本体12は、ステータコア16と、弁ハウジング30と、樹脂ケーシング64とを備えている。本体12内には、燃料が流れる燃料流路20が形成されている。
【0014】
ステータコア16は、略円筒形状を有しており、その中心部に貫通孔16aが形成されている。貫通孔16aは、燃料流路20の上流部を構成している。ステータコア16の上流端(図1中の上端)は、図示しない外部の燃料供給装置に接続される。従って、燃料供給装置から供給される燃料は、貫通孔16aの上流端(図1中の上端)の燃料流入孔16bから、貫通孔16a(即ち燃料流路20)内に流入する。ステータコア16の貫通孔16aには、燃料中の異物を除去するためのフィルタ体14が配設されている。ステータコア16は、軟磁性材料で形成されており、詳しくは、電磁ステンレス鋼で形成されている。
【0015】
ステータコア16の下流端(図1中の下端)は、非磁性ブッシュ26の貫通孔の上流端(図1中の上端)に挿入されている。非磁性ブッシュ26は、略円筒形状を有している。非磁性ブッシュ26とステータコア16とは、全周に亘って溶接されており、非磁性ブッシュ26の貫通孔とステータコア16の貫通孔16aは気密に接続されている。非磁性ブッシュ26は、非磁性材料で形成されている。
【0016】
弁ハウジング30は、略円筒形状を有しており、その中心部に貫通孔30aが形成されている。弁ハウジング30と非磁性ブッシュ26とは、全周に亘って溶接されており、弁ハウジング30の貫通孔30aと非磁性ブッシュ26の貫通孔は気密に接続されている。弁ハウジング30の貫通孔30aは、燃料流路20の一部を構成している。弁ハウジング30は、軟磁性材料で形成されており、詳しくは、電磁ステンレス鋼で形成されている。
【0017】
弁ハウジング30の貫通孔30aの下流端(図1中の下端)には、弁座部材34が挿入されている。弁座部材34は、その中心部に燃料吐出孔36が形成された略円柱形状を有している。弁座部材34と弁ハウジング30とは、弁座部材34が弁ハウジング30に圧入され、又は、弁座部材34の外周面と弁ハウジング30の下端部が全周に亘って溶接され、あるいは、圧入と溶接の両者によって、気密に保持されている。弁ハウジング30は、燃料流路20の下流端に位置しており、弁ハウジング30の燃料吐出孔36が、燃料流路20の下流端に連なる構成となっている。
【0018】
本体12の燃料流路20内には、圧縮ばね24とスプリングピン22とが配設されている。圧縮ばね24は、弁体40の上流側(図1中の上側)に位置している。スプリングピン22は、圧縮ばね24の上流側(図1中の上側)に位置しており、ステータコア16の貫通孔16aに圧入されている。圧縮ばね24の上流端(図1中の上端)は、スプリングピン22に当接しており、圧縮ばね24の下流端(図1中の下端)は、弁体40に当接している。圧縮ばね24は、圧縮された状態となっており、弁体40を弁座部材34に向けて付勢している。
【0019】
弁体40は、軟磁性材料(詳しくは電磁ステンレス鋼)によって形成されている。弁体40の軸方向(図1の上下方向)には、中心孔42が形成されている。中心孔42の下流端(図1中の下端)には、複数個の側方孔42a(本実施例では4個)が形成されている。図3は、複数個の側方孔42aのそれぞれの中心を通る断面図である。図3に示すように、側方孔42aは、弁体40の周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0020】
図1に示すように、弁体40の下端には、弁体40の径方向に伸びるフランジ部44が形成されている。フランジ部44は、弁体40の全周に亘って形成されている。中心孔42及び側方孔42aは、ステータコア16の貫通孔16aと弁ハウジング30の貫通孔30aとを連通している。ステータコア16の貫通孔16a内の燃料は、中心孔42及び側方孔42aを通じて、弁ハウジング30の貫通孔30aへと流れて、燃料吐出孔36に至る。即ち、燃料流路20は、燃料流入孔16bから、ステータコア16の貫通孔16a、スプリングピン22の内側と、弁体40の中心孔42及び側方孔42aと、弁ハウジング30の貫通孔30aとを通過して、燃料吐出孔36まで伸びている。
【0021】
弁体40の下端面46は、弁座部材34のシート面34aに対向している。弁体40の下端面46には、弾性体のシール部材48が取り付けられている。シール部材48は、例えば、ゴム、樹脂等で作製されている。下端面46がシート面34aと当接すると、シール部材48はシート面34aに圧接されて、燃料吐出孔36を気密に閉塞する。この状態では、燃料流路20は、完全に閉塞される。なお、シール部材48は、弁体40がシート面34aに当接する際に、変形することによってその衝撃を緩和する。
【0022】
弁ハウジング30の貫通孔30aには、リング部材50が配置さている。リング部材50には、弾性体の絞り部材52が取り付けられている。絞り部材52は、例えば、ゴム、樹脂等で作製されている。絞り部材52には、弁体40のフランジ部44に向かって突出する複数個(実施例では4個)の突起部52aが形成されている。図4に示すように、複数個の突起部52aは、絞り部材52の周方向に等間隔に形成されている。図1に示すように、弁体40が弁座部材34と当接する位置では、弁体40のフランジ部44と突起部52aとは離間している。
【0023】
樹脂ケーシング64は、ステータコア16の一部と、非磁性ブッシュ26と、弁ハウジング30の一部と、を取り囲むように設けられている。樹脂ケーシング64は、インサート成形によって形成されており、その内部に電磁コイル62が埋設されている。電磁コイル62は、ステータコア16を取り囲む位置に固定されている。樹脂ケーシング64には、コネクタ部66が形成されている。コネクタ部66には、複数本の端子ピン68が設けられている。複数本の端子ピン68には、電磁コイル62が電気的に接続されており、複数本の端子ピン68を通じて電磁コイル62に通電されるように構成されている。コネクタ部66は、図示しないワイヤハーネスを介して外部の制御ユニットに接続される。
【0024】
以上、燃料供給弁10の構成について詳細に説明した。次に、燃料供給弁10の動作について説明する。図1に示すように、電磁コイル62に通電されていない間、弁体40は圧縮ばね24によって弁座部材34のシート面34aに押し付けられている。このとき、燃料吐出孔36は完全に閉塞された状態(即ち閉弁状態)となっており、燃料吐出孔36から燃料は吐出されない。弁体40の最も下側(即ち弁座部材34側)の位置を、閉弁位置と呼ぶ。
【0025】
電磁コイル62に通電が行われると、電磁コイル62が磁場を発生し、ステータコア16及び弁体40が励磁される。ステータコア16と弁体40とは互いに引き合い、弁体40は、ステータコア16側へ移動する。即ち、弁体40は弁座部材34のシート面34aから離間する。このとき、燃料吐出孔36は開放された状態となっており、燃料吐出孔36から燃料が吐出される。なお、絞り部材52は、電磁コイル62と離間した位置に配置されている。これにより、弾性体の絞り部材52が、電磁コイル62が発生する磁場に影響を与えることを防止することができる。
【0026】
弁体40がステータコア16側へ移動されると、弁体40のフランジ部44と絞り部材52とが接近する。これにより、フランジ部44と絞り部材52との間の燃料流路20(以下では「絞り部20a」と呼ぶ)は、徐々に小さくなる。弁体40がステータコア16側へ移動される途中で、弁体40のフランジ部44は、絞り部材52の突起部52aに当接する。この結果、燃料流路20は、絞り部20aにおいて、フランジ部44と突起部52aとによって4本に分割される。フランジ部44と突起部52aとが当接した後、さらに、弁体40がステータコア16側へ移動されると、絞り部材52は、弁ハウジング30とフランジ部44とによって圧縮されて、弾性変形する。この結果、突起部52aは、図4の仮想線に示されるように弾性変形する。これにより、絞り部20a(各突起部52a間の燃料流路20)は、突起部52aによって狭められる(即ち、燃料流路20の一部が突起部52aによって閉塞される)。絞り部20aにおける燃料流路20の流路面積が絞り部材52によって小さくされているために、絞り部20aを通過した後の燃料の圧力と、絞り部20aを通過する前の燃料の圧力と、の圧力差は、絞り部20aが設けられていない場合と比較して大きくなる。
【0027】
弁体40がステータコア16側へ接近するにつれて、突起部52aの圧縮変形量が徐々に大きくなる。即ち、弁体40がステータコア16側へ接近するにつれて、燃料流路20は徐々に絞られていく。閉弁状態(図1参照)から開弁状態(図2参照)に移行する際に、絞り部材52によって、燃料流路20の流路面積が徐々に小さくされる。
【0028】
図2に示すように、弁体40は、ステータコア16の下端に衝突すると、弁体40の動きがステータコア16によって停止される。この状態が開弁状態であり、開弁状態での弁体40の位置を、開弁位置と呼ぶ。弁体40は、絞り部材52を弾性変形しながら、ステータコア16に接近していく。このため、弁体40は、閉弁位置(図1参照)から開弁位置(図2参照)に移動するのに従って、絞り部材52の弾性力により、下方(閉弁位置)に向かう方向の力を受ける。さらに、上述したように、閉弁位置から開弁位置への移行により、絞り部20aにおける燃料流路20の流路面積が徐々に小さくなると、絞り部20aの通過前後の燃料の圧力差(絞り部20aの通過による燃料の圧力損失)が徐々に大きくなる。この結果、弁体40のフランジ部44には、下方(閉弁位置)に向かう圧力が作用する。これにより、絞り部材52を設けていない構成と比較して、弁体40とステータコア16との衝撃力を緩和することができる。
【0029】
電磁コイル62への通電が中止されると、電磁コイル62による磁場が消滅し、ステータコア16と弁体40の間の磁力も消滅する。弁体40は、圧縮ばね24による付勢力によって、弁座部材34側へ移動する。弁体40は、閉弁位置に移動し、燃料吐出孔36を閉塞する。上述したように、開弁状態において、絞り部20aを通過した後の燃料の圧力と、絞り部20aを通過する前の燃料の圧力と、の圧力差が比較的に大きくなる。このため、弁体40には、弁座部材34側に向かう圧力が作用する。これにより、弁体40が開弁位置から閉弁位置に移動する速度、即ち、閉弁応答性を高くすることができる。
【0030】
上記の燃料供給弁10では、弁体40が閉弁位置(図1参照)から開弁位置(図2参照)に移動すると、絞り部20aにおいて、燃料流路20のそれぞれの流路面積は小さくなる。但し、燃料流路20は、完全には閉塞されない。この構成によれば、閉弁状態から開弁状態に至る間に、一部の燃料流路が完全に閉塞される従来の燃料供給弁と比較して、弁体40に作用する圧力が急激に変化することが抑制される。この結果、弁体40の動作が不安定になることが抑制される。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2の燃料供給弁100について、実施例1の燃料供給弁10と異なる箇所について説明する。図5には、燃料供給弁100の一部の縦断面図が示されている。なお、図5において省略されている部分は、燃料供給弁10と同様の構成である。
【0032】
実施例2の燃料供給弁100は、リング部材50を備えていない。弁ハウジング130は、弁ハウジング30とリング部材50とを合わせた形状と同じ形状を有する。絞り部材52は、弁ハウジング130に直接的に接着されている。その他の構成は、燃料供給弁10と同様である。
【実施例3】
【0033】
次に、実施例3の燃料供給弁200について、実施例2の燃料供給弁100と異なる箇所について説明する。図6には、燃料供給弁200の一部の縦断面図が示されている。なお、図6において省略されている部分は、燃料供給弁10と同様の構成である。実施例3の燃料供給弁200では、絞り部材252の突起部252aは、閉弁状態において、弁体40のフランジ部44に接触している。即ち、突起部252aの高さ(図6の上下方向の長さ)は、突起部52aの高さ(図5の上下方向の長さ)よりもよりも高い。その他の構成は、燃料供給弁100と同様である。
【0034】
実施例2及び3の燃料供給弁100,200においても、弁体40が閉弁位置から開弁位置に移動する際に、絞り部材52,252が配置されている位置(即ち、実施例2の絞り部材52とフランジ部44との間及び隣接する突起部52aの間に形成される絞り部20a、実施例3の隣接する突起部252aの間に形成される絞り部)において、燃料流路20の流路面積が小さくされる。このため、実施例1の燃料供給弁10と同様の効果を奏することができる。
【実施例4】
【0035】
次に、実施例4の燃料供給弁300について、実施例1の燃料供給弁10と異なる箇所について説明する。図7には、燃料供給弁300の一部の縦断面図が示されている。図7において省略されている部分は、燃料供給弁10と同様の構成である。
【0036】
実施例4の燃料供給弁300では、弁体40のフランジ部44の上面44aに、複数個(本実施例では4個)の絞り部材352が接着されている。図8に示すように、絞り部材352は、フランジ部44の上面44aに等間隔に配置されている。絞り部材352は、絞り部材52と同様の材料で作製されている。
【0037】
弁ハウジング330には、フランジ部44の上面44a、即ち、突起部352と対向する当接面330bが形成されている。燃料供給弁300が閉弁状態(図7の状態)である場合には、当接面330bと絞り部材352とは離間している。なお、変形例では、当接面330bと絞り部材352とは接触していてもよい。その他の構成は、燃料供給弁10と同様である。
【0038】
弁体40が閉弁位置(図7で示される位置)から開弁位置に移動する際には、弁体40がステータコア16側(図7の上方)に移動される。この結果、絞り部材352は、弁ハウジング330の当接面330bに接触する。これにより、絞り部材352が配置されている位置における燃料流路20(即ち絞り部20a)は、複数本(本実施例では4本)の絞り部20aに分岐される。弁体40がさらに上方に移動されると、突起部352は、当接面330bとフランジ部44の上面44aとの間で徐々に圧縮される。これにより、図8の仮想線で示すように、絞り部材352の弾性変形によって、複数本の絞り部20aの流路面積が小さくされる。即ち、弁体40が閉弁位置から開弁位置に移動する際に、絞り部材352が配置されている位置において、燃料流路20の流路面積が小さくされる。これため、燃料供給弁300は、実施例1の燃料供給弁10と同様の効果を奏することができる。
【実施例5】
【0039】
次に、実施例5の燃料供給弁400について、実施例1の燃料供給弁10と異なる箇所について説明する。図9,10には、燃料供給弁500の一部の縦断面図が示されている。図9,10において省略されている部分は、燃料供給弁10と同様の構成である。
【0040】
実施例5の燃料供給弁400では、スプリングピン422は、圧縮ばね24の上方に位置する当接部422aと、圧縮ばね24内を貫通する挿入部422bとを備える。当接部422aは、スプリングピン22と同様の形状を有している。挿入部422bは、当接部422aの下方に接続されている。挿入部422bは、円管部分422cと、円柱形状の中実部分422dとを備える。
【0041】
円管部分422cの内部は、当接部422aの内部と連通して、燃料流路20の一部を形成している。円管部分422cの中実部分422d側の端には、複数個の貫通孔422eが形成されている。これにより、円管部分422c内を流れる燃料ガスは、貫通孔422eを通過して、中実部分422dの外側を通過する。即ち、中実部分422dの外周面とステータコア16の貫通孔16aとの間、及び、中実部分422dの外周面と弁体40の内周面との間で、燃料流路20の一部が形成される。
【0042】
中実部分422dの下流側の先端部422fは、弁体40が開弁位置(図10参照)に位置する状態で、圧縮ばね24の下流側の端部よりも下流側に位置する。中実部分422dの先端部422fは、下流側の端に向かって徐々に細くされている。
【0043】
弁体40が閉弁位置(図9参照)から開弁状態(図10参照)に移動される際、中実部分422dの先端部422fと弁体40の内面との間の間隔が徐々に狭くなる。即ち、先端部422fと弁体40の内面によって形成される絞り部20bにおける燃料流路20の流路面積は小さくなる。即ち、弁体40が閉弁位置から開弁位置に移動する際に、挿入部422bが配置されている位置(絞り部20b)において、燃料流路20の流路面積が小さくされる。この結果、絞り部20b(中実部分422dの先端部422fと弁体40の内面との間)を通過した後の燃料ガスの圧力と、絞り部20bを通過する前の燃料ガスの圧力と、の圧力差は、中実部分422dが配置されていない構成と比較して、大きくなる。これにより、燃料供給弁400が開弁状態から閉弁状態に移行する際に、弁体40には、弁座部材34に向かう圧力が作用する。この結果、閉弁応答性が向上する。また、挿入部422bによって燃料流路20の一部が閉塞されるが、完全には閉塞されない。この構成によれば、弁体40に作用する圧力が急激に変化することを抑制することができるために、弁体40の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0044】
(変形例)
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0045】
例えば、図11に示すように、燃料供給弁10では、閉弁状態において、突起部52aが、フランジ部44に接触していてもよい。
【0046】
また、上記の各実施例では、燃料ガスを燃料電池に供給する燃料供給弁10,100,200,300が説明されている。しかしながら、本明細書で開示される技術は、ガソリン等の液体燃料を内燃機関等に供給する燃料供給弁にも適用することができる。
【0047】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
10,100,200,300,400,500:燃料供給弁
12:本体
16:ステータコア
20:燃料流路
30:弁ハウジング
34:弁座部材
36:燃料吐出孔
40:弁体
52:絞り部材
52a:絞り部
62:電磁コイル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料流入孔を備える本体と、
前記本体に固定されており、燃料吐出孔が形成されている弁座部材と、
前記本体に収容されており、前記弁座部材に当接する閉弁位置と前記弁座部材から離間する開弁位置との間で移動可能とされている弁体と、を備え、
前記本体は、その内部を前記燃料流入孔から前記燃料吐出孔まで伸びており、前記弁体が前記閉弁位置にある場合に全閉状態になる一方で、前記弁体が前記開弁位置にある場合に開通状態になる燃料流路を備え、
前記燃料流路は、その中間位置に絞り部を備え、
前記弁体が前記開弁位置にある状態で、前記絞り部はその上流側と下流側とを連通し、
前記弁体が前記開弁位置にある場合の前記絞り部の流路面積は、前記弁体が前記閉弁位置にある場合の前記絞り部の流路面積より小さくなる、燃料供給弁。
【請求項2】
前記絞り部の流路面積は、前記弁体が前記閉弁位置から前記開弁位置に向かって移動するのに従って徐々に小さくなる、請求項1に記載の燃料供給弁。
【請求項3】
前記本体は、コアと前記コアを励磁する電磁コイルとを備えるアクチュエータを備えており、前記電磁コイルによって前記コアを励磁すると、前記弁体は前記閉弁位置から前記開弁位置に向かって移動し、
前記絞り部は、前記アクチュエータと離間する位置に配置されている、請求項1又は2に記載の燃料供給弁。
【請求項4】
前記弁体は、前記閉弁位置から前記開弁位置に移動する際に、前記コアに当接することによって前記開弁位置に位置決めされ、
前記絞り部には、前記燃料流路内に突出して前記燃料流路を絞る弾性部材が設けられており、前記弁体が前記閉弁位置から前記開弁位置に向かって移動するのに従って前記弾性部材が徐々に弾性変形することによって、前記弁体に対して、前記閉弁位置から前記開弁位置に向かう力を負荷する、請求項3に記載の燃料供給弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−177426(P2012−177426A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40648(P2011−40648)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】