説明

燃料判別方法および装置

【課題】軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定可能にする。
【解決手段】検査対象燃料を注入した保持容器3を電気炉1内に配置した後、エアポンプ4を作動させるとともに、第1電気ヒータ11に通電することにより、検査対象燃料は温度上昇により蒸発が起こり、気化した燃料はキャリアガスにのって触媒体2に到達し触媒上で燃焼する。この燃焼により触媒体2内の温度が上昇し、触媒体2に流入する前のキャリアガスの温度と触媒体内温度との温度差が大きくなる。そして、軽油・灯油・重油の蒸発温度は異なるため、例えば軽油に灯油や重油が混入されている場合とそれらが混入されていない場合とでは、温度差が大きくなるときのガス温度領域が異なる。したがって、ガス温度と触媒体内温度に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定する燃料判別方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光の全反射から光屈折率を検出し燃料の種類を判定するもの(以下、第1従来例という。例えば、特許文献1参照)、光検出装置で燃料の着色状態を検出し燃料性状を判定するもの(以下、第2従来例という。例えば、特許文献2参照)、重油中の蒸留残渣分により光が散乱することにより光透過率が低くなることを利用して重油を検出するもの(以下、第3従来例という。例えば、特許文献3参照)が提案されている。また、石油メーカ(石油協会)においては、軽油に重油または灯油が不正に混入された不正燃料の判定のため、軽油識別材(クマリン)を重油、灯油に添加するようにしている(以下、第4従来例という)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−242079号公報
【特許文献2】特開2008−122289号公報
【特許文献3】特開平9−26391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1従来例では、光屈折率は燃料密度と相関があるため、重油と灯油を混入することにより軽油相当の密度とした不正燃料を検出することは困難である。第2従来例では、不正燃料に軽油相当の着色がされた場合、検出は困難である。第3従来例では、軽油と灯油の光透過率は略等しいため、軽油への灯油混入の検出は困難である。第4従来例では、不正燃料の中には軽油識別材を除去処理した例もあり、そのような不正燃料を検出することは困難である。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、検査対象燃料を昇温させつつ、検査対象燃料から蒸発した燃料を、触媒を担体に担持させた触媒体(2)に向けてキャリアガスにて送り、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度と触媒体(2)内の温度とを計測する温度計測工程を実行し、温度計測工程で計測した2つの温度データに基づいて、検査対象燃料への軽油以外の燃料の混入の有無を判定することを特徴とする。
【0007】
これによると、検査対象燃料を昇温させることにより燃料の蒸発が起こり、気化した燃料はキャリアガスにのって触媒体(2)に到達し触媒上で燃焼する。この燃焼により触媒体内の温度(以下、触媒体内温度という)が上昇し、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度(以下、ガス温度という)と触媒体内温度との温度差が大きくなる。
【0008】
そして、軽油・灯油・重油の蒸発温度は異なるため、例えば軽油に灯油や重油が混入されている場合とそれらが混入されていない場合とでは、温度差が大きくなるときのガス温度領域が異なる。したがって、ガス温度と触媒体内温度に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料判別方法において、触媒をその活性化温度以上まで昇温させた後に、温度計測工程を開始することを特徴とする。
【0010】
ところで、検査対象燃料の蒸発温度よりも触媒の活性化温度が高い場合は、触媒が活性化温度まで昇温された時点ですべての種類の燃料が触媒上で一斉に燃焼を開始してしまう。そこで、触媒をその活性化温度以上まで予め昇温させておくことにより、蒸発した燃料毎に順に触媒上で燃焼させることができ、ひいては、ガス温度と触媒体内温度に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを一層正確に判定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、検査対象燃料およびキャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、ガス温度センサ(5)にて検出したキャリアガスの温度と触媒体温度センサ(6)にて検出した触媒体(2)内の温度とに基づいて、検査対象燃料への軽油以外の燃料の混入の有無を判定する燃料性状判定手段(7)とを備えることを特徴とする。
【0012】
これによると、請求項1に係る発明を実施することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、検査対象燃料およびキャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、ガス温度センサ(5)にて検出したキャリアガスの温度をガス温度とし、触媒体温度センサ(6)にて検出した触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、触媒体内温度からガス温度を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差とし、検査対象燃料がない場合の温度差を基準温度差とし、対象燃料温度差から基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、燃料性状判定手段(7)は、燃焼温度差が増加する過程において燃焼温度差が所定値に達したときのガス温度に基づいて判定を行うことを特徴とする。
【0014】
これによると、検査対象燃料が、軽油・灯油・重油のいずれであるか、或いは、検査対象燃料が、軽油に軽油以外の燃料が混入されたものであるか否かを判定することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、検査対象燃料およびキャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、ガス温度センサ(5)にて検出したキャリアガスの温度をガス温度とし、触媒体温度センサ(6)にて検出した触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、触媒体内温度からガス温度を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差とし、検査対象燃料がない場合の温度差を基準温度差とし、対象燃料温度差から基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、燃料性状判定手段(7)は、燃焼温度差が減少する過程において燃焼温度差が所定値に達したときのガス温度に基づいて判定を行うことを特徴とする。
【0016】
これによると、検査対象燃料が、軽油・灯油・重油のいずれであるか、或いは、検査対象燃料が、軽油に軽油以外の燃料が混入されたものであるか否かを判定することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、検査対象燃料およびキャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、ガス温度センサ(5)にて検出したキャリアガスの温度をガス温度とし、触媒体温度センサ(6)にて検出した触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、触媒体内温度からガス温度を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差とし、検査対象燃料がない場合の温度差を基準温度差とし、対象燃料温度差から基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、燃料性状判定手段(7)は、燃焼温度差が最大になったときのガス温度に基づいて判定を行うことを特徴とする。
【0018】
これによると、検査対象燃料が、軽油・灯油・重油のいずれであるか、或いは、検査対象燃料が、軽油に軽油以外の燃料が混入されたものであるか否かを判定することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、検査対象燃料およびキャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、触媒体(2)に流入する前のキャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、ガス温度センサ(5)にて検出したキャリアガスの温度をガス温度とし、触媒体温度センサ(6)にて検出した触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、触媒体内温度からガス温度を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差とし、検査対象燃料がない場合の温度差を基準温度差とし、対象燃料温度差から基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、燃料性状判定手段(7)は、燃焼温度差が増加する過程において燃焼温度差が所定値に達したときのガス温度、および、燃焼温度差が減少する過程において燃焼温度差が所定値に達したときのガス温度に基づいて判定を行うことを特徴とする。
【0020】
これによると、検査対象燃料が、軽油・灯油・重油のいずれであるかを判定することができる。また、軽油に灯油や重油が混入されている場合、灯油のみが混入されているか、重油のみが混入されているか、灯油および重油がともに混入されているかを判定することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、検査対象燃料を昇温させつつ、検査対象燃料から蒸発した燃料を含むガスを、触媒を担体に担持させた触媒体(2、914)に送り、触媒体(2、914)に流入する前のガスの温度と触媒体(2、914)内の温度とを計測し、計測した2つの温度データに基づいて検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求める燃料判別方法であって、ガスの温度をガス温度とし、触媒体(2、914)内の温度を触媒体内温度とし、触媒体内温度からガス温度を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差とし、検査対象燃料がない場合の温度差を基準温度差とし、対象燃料温度差から基準温度差を減算した値を燃焼温度差とし、燃焼温度差が増加する過程において燃焼温度差が所定値のときのガス温度を昇温時ガス温度とし、燃焼温度差が減少する過程において燃焼温度差が所定値のときのガス温度を降温時ガス温度とし、検査対象燃料が灯油である場合の昇温時ガス温度を灯油昇温時ガス温度Tr1とし、検査対象燃料が灯油である場合の降温時ガス温度を灯油降温時ガス温度Tr2とし、今回灯油の割合を求める検査対象燃料の昇温時ガス温度を検査対象燃料昇温時ガス温度Tr3とし、今回灯油の割合を求める検査対象燃料の降温時ガス温度を検査対象燃料降温時ガス温度Tr4とし、検査対象燃料が軽油である場合の昇温時ガス温度を軽油昇温時ガス温度Tr5とし、検査対象燃料が軽油である場合の降温時ガス温度を軽油降温時ガス温度Tr6とし、第1混合比R1=(Tr5−Tr3)/(Tr5−Tr1)と、第2混合比R2=(Tr6−Tr4)/(Tr6−Tr2)とに基づいて、検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求めることを特徴とする。
【0022】
これによると、特3号軽油(規定量未満の灯油が混入された正規燃料)と、規定量以上の灯油が混入された不正燃料とを、判別することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明のように、請求項8に記載の燃料判別方法において、第1混合比R1と第2混合比R2の平均値を、検査対象燃料に含まれる灯油の割合とすることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明のように、請求項8に記載の燃料判別方法において、所定値を複数設定して、第1混合比R1および第2混合比R2を複数算出し、複数の第1混合比R1および複数の第2混合比R2を、検査対象燃料に含まれる灯油の割合である灯油混合比と所定値との2次元グラフにプロットし、複数の第1混合比R1の外挿線と複数の第2混合比R2の外挿線との交点に対応する2次元グラフ上の灯油混合比の値を、検査対象燃料に含まれる灯油の割合とすることができる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、検査対象燃料を保持する燃料保持器(812、913)と、検査対象燃料を加熱して蒸発させる燃料加熱手段(813、915)と、検査対象燃料から蒸発した燃料を燃焼させる触媒を担体に担持させた触媒体(2、914)と、触媒体(2、914)を加熱する触媒体加熱手段(21、916)と、触媒体(2、914)に流入する前の蒸発燃料の温度を検出するガス温度センサ(814、917)と、触媒体(2、914)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6、918)と、ガス温度センサ(814、917)にて検出した蒸発燃料の温度と触媒体温度センサ(6、918)にて検出した触媒体(2、914)内の温度とに基づいて、検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段とを備える燃料判別装置であって、燃料保持器(812、913)はセラミック多孔質体からなり、燃料加熱手段(813、915)はセラミック製のシートに印刷されたヒータであり、燃料保持器(812、913)と燃料加熱手段(813、915)は一体化されていることを特徴とする。
【0026】
これによると、燃料保持器(812、913)および燃料加熱手段(813、915)を小型にすることができ、ひいては装置を小型にすることができる。
【0027】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の燃料判別装置において、触媒体(914)は通気性を有するセラミック多孔質体からなり、触媒体加熱手段(916)はセラミック製のシートに印刷されたヒータであり、触媒体(914)と触媒体加熱手段(916)は一体化されていることを特徴とする。
【0028】
これによると、触媒体(914)および触媒体加熱手段(916)を小型にすることができ、ひいては装置を更に小型にすることができる。
【0029】
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の燃料判別装置において、燃料保持器(812、913)、燃料加熱手段(813、915)、触媒体(914)、および触媒体加熱手段(916)は、一体化されていることを特徴とする。
【0030】
これによると、燃料保持器(812、913)、燃料加熱手段(813、915)、触媒体(914)および触媒体加熱手段(916)を小型にすることができ、ひいては装置を更に小型にすることができる。
【0031】
請求項14に記載の発明では、請求項11ないし13のいずれか1つに記載の燃料判別装置において、燃料保持器(812、913)の下方に触媒体(2、914)が配置されていることを特徴とする。
【0032】
これによると、蒸発燃料と空気の比重差により、蒸発燃料は下方の触媒体(2、914)に向かって流れるため、蒸発燃料を触媒体(2、914)に送る手段(例えばエアポンプ)を廃止することができる。
【0033】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【図2】第1実施形態の装置による検査対象燃料の温度計測結果を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【図4】第2実施形態の装置による検査対象燃料の温度計測結果を示す図である。
【図5】第2実施形態の装置による検査対象燃料の温度計測結果を異なる形式で示す図である。
【図6】第2実施形態の装置による検査対象燃料の温度計測結果と判定基準としての軽油の温度計測結果を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。
【図11】検査対象燃料の温度計測結果を示す図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【図13】図12の要部の分解斜視図である。
【図14】本発明の第8実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【図15】本発明の第9実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【図16】図15の装置の分解斜視図である。
【図17】本発明の第10実施形態に係る燃料判別方法にて用いる燃料の温度計測結果を示す図である。
【図18】第10実施形態に係る燃料判別方法にて検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求めるためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0036】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。
【0037】
この燃料判別装置は、ディーゼルエンジンに使用される燃料(すなわち軽油)に重油または灯油が混入されているか否かを判定するものであり、例えば整備工場にて用いられる。
【0038】
図1に示すように、燃料判別装置は、第1電気ヒータ11が内蔵された加熱手段としての管状の電気炉1を備えている。この電気炉1の内部空間の一端側には、触媒をモノリス担体に担持した触媒体2が挿入されている。なお、この触媒の活性化温度は、約200℃である。また、検査対象燃料を保持する保持容器3が、電気炉1の内部に配置可能になっている。送風手段としての電動式のエアポンプ4により、キャリアガスとしての空気が電気炉1の内部に供給されるようになっている。
【0039】
電気炉1の内部空間における保持容器3の上方には、触媒体2に流入する前のキャリアガスの温度を検出する例えば熱電対よりなるガス温度センサ5が配置されている。また、触媒体2の内部には、触媒体2の内部の温度を検出する例えば熱電対よりなる触媒体温度センサ6が配置されている。
【0040】
燃料性状判定手段としての制御装置7は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、記憶されたプログラムに従って各種演算や処理を行う。具体的には、制御装置7は、エアポンプ4および第1電気ヒータ11への通電を制御する。また、制御装置7は、ガス温度センサ5および触媒体温度センサ6からの各信号が入力され、それらの入力信号を処理して、検査対象燃料について軽油以外の燃料の混入の有無を判定する。
【0041】
次に、上記燃料判別装置を用いて行う燃料判別について説明する。
【0042】
まず、準備工程では、保持容器3にマイクロシリンジで20μLの検査対象燃料を注入した後に、保持容器3を電気炉1の略中央部に配置する。
【0043】
続く温度計測工程では、エアポンプ4を作動させるとともに、第1電気ヒータ11に通電した状態で、ガス温度センサ5および触媒体温度センサ6により温度を計測する。具体的には、エアポンプ4を作動させて、キャリアガスを保持容器3側から触媒体2に向かって流す。このときの送風量は、300ml/min程度に設定する。また、第1電気ヒータ11に通電して、電気炉1の内部を昇温させる。このときの昇温速度は、20℃/min程度に設定する。この電気炉1の昇温に伴って、触媒体2、検査対象燃料およびキャリアガスも昇温する。
【0044】
そして、検査対象燃料は温度上昇により蒸発が起こり、気化した燃料はキャリアガスにのって触媒体2に到達し触媒上で燃焼する。この燃焼により触媒体2内の温度T1(以下、触媒体内温度T1という)が上昇し、触媒体2に流入する前のキャリアガスの温度T2(以下、ガス温度T2という)と触媒体内温度T1との温度差ΔT1(ΔT1=T1−T2)が大きくなる。
【0045】
図2は、検査対象燃料として、軽油100%、灯油100%、重油100%の3種類を用意し、上記燃料判別装置を用いて各検査対象燃料について温度計測を行った結果を、温度差ΔT1とガス温度T2で整理したものである。
【0046】
そして、図2によると、温度差ΔT1がピークから減少する際のガス温度T2は、蒸発温度が最も低い灯油が最も低く、蒸発温度が最も高い重油が最も高いことが分かる。換言すると、蒸発温度が低い燃料ほど低いガス温度領域で発熱(触媒上での燃焼)が終わり、蒸発温度が高い燃料ほど高いガス温度領域まで発熱が起こっており、温度差ΔT1がピークから減少する際のガス温度T2と燃料の蒸発特性との間に、所定の相関関係があることが分かる。
【0047】
したがって、温度差ΔT1がピークから減少する過程において温度差ΔT1が第1閾値ΔTs1(本例では、80℃)まで減少したときのガス温度T2(図2中のa〜c各点のガス温度。以下、温度差減少時の第1閾値ガス温度という)に基づいて、燃料を識別することができる。具体的には、判定基準値として軽油の温度差減少時の第1閾値ガス温度を予め求めて制御装置7に記憶させておき、検査対象燃料の温度差減少時の第1閾値ガス温度が、軽油の温度差減少時の第1閾値ガス温度よりも低い場合は、検査対象燃料は灯油100%または灯油混入軽油と判定し、検査対象燃料の温度差減少時の第1閾値ガス温度が、軽油の温度差減少時の第1閾値ガス温度よりも高い場合は、検査対象燃料は重油100%または重油混入軽油と判定する。
【0048】
以上のように、本実施形態によると、ガス温度T2と触媒体内温度T1に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定することができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
第1実施形態の装置および方法では、温度差ΔT1が増加し始めるときのガス温度T2は、検査対象燃料の種類に拘わらずほぼ等しくなっていた(図2参照)。これは、用いた触媒の活性化温度が約200℃であるため、いずれの検査対象燃料も、触媒が活性化温度に達したときに燃焼を開始して温度上昇を起こした為である。
【0051】
そこで、本実施形態は、触媒をその活性化温度以上まで予め昇温させておくことにより、温度差ΔT1が増加し始めるときのガス温度T2が、検査対象燃料の種類によって異なるようにした。
【0052】
本実施形態の燃料判別装置は、図3に示すように、触媒体2を加熱する専用の第2電気ヒータ21が触媒体2に内蔵されている。この第2電気ヒータ21は、制御装置7にて通電が制御される。
【0053】
本実施形態では、まず、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱して、触媒をその活性化温度(本例では、約200℃)以上まで昇温させる。具体的には、触媒体2の温度が所定温度(本例では、約250℃)に維持されるように、制御装置7にて第2電気ヒータ21への通電を制御する。触媒体2の温度が所定温度に達すると、第1実施形態と同様に、準備工程を実施後、温度計測工程を実施する。
【0054】
図4は、本実施形態の燃料判別装置および方法にて温度計測を行った結果を、温度差ΔT1とガス温度T2で整理したものである。なお、図4中の「燃料無し」は、保持容器3に検査対象燃料を注入せずに温度計測を行った場合の特性である。
【0055】
しかし、第2電気ヒータ21により触媒体2を予め所定温度まで加熱しているため、図4のように整理した場合、気化した燃料が触媒上で燃焼することによる触媒体2内の温度上昇量が把握しにくく、したがって燃料判別の判定基準を決めるのが困難である。
【0056】
そこで、各検査対象燃料の温度差ΔT1(以下、対象燃料温度差ΔT1という)から「燃料無し」の温度差ΔT1std(以下、基準温度差ΔT1stdという)を減算したものを燃焼温度差ΔT2とし、燃焼温度差ΔT2とガス温度T2で整理したものが図5である。因みに、燃焼温度差ΔT2は、気化した燃料が触媒上で燃焼することによる触媒体2内の温度上昇量に相当する。
【0057】
そして、図5によると、燃焼温度差ΔT2が増加する際のガス温度T2は、蒸発温度が最も低い灯油が最も低く、蒸発温度が最も高い重油が最も高いことが分かる。換言すると、燃焼温度差ΔT2が増加する際のガス温度T2と燃料の蒸発特性との間に、所定の相関関係があることが分かる。
【0058】
したがって、燃焼温度差ΔT2が増加する過程において燃焼温度差ΔT2が第2閾値ΔTs2(本例では、25℃)まで増加したときのガス温度T2(図5中のd〜f各点のガス温度。以下、燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度という)に基づいて、燃料を識別することができる。具体的には、判定基準値として軽油の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度を予め求めて制御装置7に記憶させておき、検査対象燃料の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度が、軽油の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度よりも低い場合は、検査対象燃料は灯油100%または灯油混入軽油と判定し、検査対象燃料の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度が、軽油の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度よりも高い場合は、検査対象燃料は重油100%または重油混入軽油と判定する。
【0059】
また、図5によると、燃焼温度差ΔT2がピークから減少する際のガス温度T2は、蒸発温度が最も低い灯油が最も低く、蒸発温度が最も高い重油が最も高いことが分かる。したがって、燃焼温度差ΔT2がピークから減少する過程において燃焼温度差ΔT2が第2閾値ΔTs2まで減少したときのガス温度T2(以下、燃焼温度差減少時の第2閾値ガス温度という)に基づいて、燃料を識別することができる。
【0060】
次に、検査対象燃料が、軽油のみから構成されているか、軽油に灯油が混入された燃料か、軽油に重油が混入された燃料か、或いは、軽油に灯油および重油がともに混入された燃料であるかの見分け方について、図6に基づいて説明する。この図6は、検査対象燃料の温度計測結果と、判定基準として予め求めた軽油の温度計測結果を、燃焼温度差ΔT2とガス温度T2で整理したものである。
【0061】
そして、灯油が混入された燃料は、蒸発温度が低い灯油が低いガス温度領域で発熱するため、図6に示すように、検査対象燃料の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度(図6中のg点のガス温度)が、軽油の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度(図6中のh点のガス温度)よりも低い場合は、検査対象燃料に灯油が混入されていると判定する。因みに、検査対象燃料の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度が、軽油の燃焼温度差増加時の第2閾値ガス温度と同等ないしはそれよりも高い場合は、検査対象燃料に灯油は混入されていないと判定する。
【0062】
また、重油が混入された燃料は、蒸発温度が高い重油が高いガス温度領域で発熱するため、図6に示すように、検査対象燃料の燃焼温度差減少時の第2閾値ガス温度(図6中のi点のガス温度)が、軽油の燃焼温度差減少時の第2閾値ガス温度(図6中のj点のガス温度)よりも高い場合は、検査対象燃料に重油が混入されていると判定する。因みに、検査対象燃料の燃焼温度差減少時の第2閾値ガス温度が、軽油の燃焼温度差減少時の第2閾値ガス温度と同等ないしはそれよりも低い場合は、検査対象燃料に重油は混入されていないと判定する。
【0063】
したがって、図6に例示した検査対象燃料の場合、軽油に灯油および重油がともに混入された燃料であると判定する。
【0064】
以上のように、本実施形態によると、触媒をその活性化温度以上まで予め昇温させておくことにより、蒸発した燃料毎に順に触媒上で燃焼させることができ、ひいては、ガス温度T2と触媒体内温度T1に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを一層正確に判定することができる。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図7は第3実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。なお、本実施形態は、図3に示す燃料判別装置を用いて実施される。
【0066】
図7の処理は、保持容器3に検査対象燃料を注入した後に開始される。図7に示すように、ステップS11では、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱して、触媒をその活性化温度以上まで昇温させる。
【0067】
触媒体2の温度が所定温度に達すると、ステップS12に進み、エアポンプ4を作動させるとともに第1電気ヒータ11に通電し、その状態でガス温度T2および触媒体内温度T1を検出する。
【0068】
続いて、ステップS13では、検査対象燃料の蒸発開始時のガス温度T2(以下、蒸発開始時ガス温度という)を求める。具体的には、制御装置7に予め記憶された基準温度差ΔT1stdとステップS12で取得したデータとに基づいて燃焼温度差ΔT2を求め、図5に示すように燃焼温度差ΔT2が増加する過程において燃焼温度差ΔT2が第3閾値ΔTs3(本例では、3℃)まで増加したときのガス温度T2(図5中のk〜m各点のガス温度)を、蒸発開始時ガス温度T2とする。
【0069】
続いて、ステップS14では、ステップS13で求めた蒸発開始時ガス温度T2を、制御装置7に予め記憶された開始時第1閾値Ts1と比較する。そして、図5によると、蒸発開始時ガス温度T2は、灯油が最も低く、重油が最も高いため、蒸発開始時ガス温度T2が開始時第1閾値Ts1未満であれば(ステップS14がYES)、ステップS15に進み、検査対象燃料は灯油である旨を表示する。
【0070】
ステップS14がNOの場合はステップS16に進み、ステップS16では、ステップS13で求めた蒸発開始時ガス温度T2を、開始時第1閾値Ts1、および制御装置7に予め記憶された開始時第2閾値Ts2(但し、Ts1<Ts2)と比較する。そして、蒸発開始時ガス温度T2が開始時第1閾値Ts1以上で、且つ、開始時第2閾値Ts2未満であれば(ステップS16がYES)、ステップS17に進み、検査対象燃料は軽油である旨を表示する。
【0071】
一方、ステップS16がNOの場合、すなわちステップS13で求めた蒸発開始時ガス温度T2が開始時第2閾値Ts2以上であれば、ステップS18に進み、検査対象燃料は重油である旨を表示する。
【0072】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図8は第4実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。なお、本実施形態は、図3に示す燃料判別装置を用いて実施される。
【0073】
図8の処理は、保持容器3に検査対象燃料を注入した後に開始される。図8に示すように、ステップS21では、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱して、触媒をその活性化温度以上まで昇温させる。
【0074】
触媒体2の温度が所定温度に達すると、ステップS22に進み、エアポンプ4を作動させるとともに第1電気ヒータ11に通電し、その状態でガス温度T2および触媒体内温度T1を検出する。
【0075】
続いて、ステップS23では、検査対象燃料の蒸発終了時のガス温度T2(以下、蒸発終了時ガス温度という)を求める。具体的には、制御装置7に予め記憶された基準温度差ΔT1stdとステップS22で取得したデータとに基づいて燃焼温度差ΔT2を求め、図5に示すように燃焼温度差ΔT2が減少する過程において燃焼温度差ΔT2が第4閾値ΔTs4(本例では、3℃)まで減少したときのガス温度T2(図5中のn〜p各点のガス温度)を、蒸発終了時ガス温度T2とする。
【0076】
続いて、ステップS24では、ステップS23で求めた蒸発終了時ガス温度T2を、制御装置7に予め記憶された終了時第1閾値Te1と比較する。そして、図5によると、蒸発終了時ガス温度T2は、灯油が最も低く、重油が最も高いため、蒸発終了時ガス温度T2が終了時第1閾値Te1未満であれば(ステップS24がYES)、ステップS25に進み、検査対象燃料は灯油である旨を表示する。
【0077】
ステップS24がNOの場合はステップS26に進み、ステップS26では、ステップS23で求めた蒸発終了時ガス温度T2を、終了時第1閾値Te1、および制御装置7に予め記憶された終了時第2閾値Te2(但し、Te1<Te2)と比較する。そして、蒸発終了時ガス温度T2が終了時第1閾値Te1以上で、且つ、終了時第2閾値Te2未満であれば(ステップS26がYES)、ステップS27に進み、検査対象燃料は軽油である旨を表示する。
【0078】
一方、ステップS26がNOの場合、すなわちステップS23で求めた蒸発終了時ガス温度T2が終了時第2閾値Te2以上であれば、ステップS28に進み、検査対象燃料は重油である旨を表示する。
【0079】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。図9は第5実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。なお、本実施形態は、図3に示す燃料判別装置を用いて実施される。
【0080】
図9の処理は、保持容器3に検査対象燃料を注入した後に開始される。図9に示すように、ステップS31では、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱して、触媒をその活性化温度以上まで昇温させる。
【0081】
触媒体2の温度が所定温度に達すると、ステップS32に進み、エアポンプ4を作動させるとともに第1電気ヒータ11に通電し、その状態でガス温度T2および触媒体内温度T1を検出する。
【0082】
続いて、ステップS33では、検査対象燃料の燃焼温度差ΔT2が最大になったときのガス温度T2(以下、ピーク時ガス温度という)を求める。具体的には、制御装置7に予め記憶された基準温度差ΔT1stdとステップS12で取得したデータとに基づいて燃焼温度差ΔT2を求め、図5に示すように燃焼温度差ΔT2が最大になったときのガス温度T2(図5中のq〜s各点のガス温度)を、ピーク時ガス温度T2とする。
【0083】
続いて、ステップS34では、ステップS33で求めたピーク時ガス温度T2を、制御装置7に予め記憶されたピーク時第1閾値Tp1と比較する。そして、図5によると、ピーク時ガス温度T2は、灯油が最も低く、重油が最も高いため、ピーク時ガス温度T2がピーク時第1閾値Tp1未満であれば(ステップS34がYES)、ステップS35に進み、検査対象燃料は灯油である旨を表示する。
【0084】
ステップS34がNOの場合はステップS36に進み、ステップS36では、ステップS33で求めたピーク時ガス温度T2を、ピーク時第1閾値Tp1、および制御装置7に予め記憶されたピーク時第2閾値Tp2(但し、Tp1<Tp2)と比較する。そして、ピーク時ガス温度T2がピーク時第1閾値Tp1以上で、且つ、ピーク時第2閾値Tp2未満であれば(ステップS36がYES)、ステップS37に進み、検査対象燃料は軽油である旨を表示する。
【0085】
一方、ステップS36がNOの場合、すなわちステップS33で求めたピーク時ガス温度T2がピーク時第2閾値Tp2以上であれば、ステップS38に進み、検査対象燃料は重油である旨を表示する。
【0086】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。図10は第6実施形態に係る燃料判別装置にて実行される燃料判別処理の流れ図である。図11は検査対象燃料の温度計測結果を示す図である。なお、本実施形態は、図3に示す燃料判別装置を用いて実施される。
【0087】
図10の処理は、保持容器3に検査対象燃料を注入した後に開始される。図10に示すように、まず、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱し(ステップS101)、続いて、触媒の機能が発揮される活性温度に達するまで触媒が昇温されたか否か、具体的には、触媒体内温度T1が所定温度に達したか否かを判定する(ステップS102)。
【0088】
触媒体内温度T1が所定温度に達すると(ステップS102がYES)、エアポンプ4を作動させて電気炉1の内部へのキャリアガスの供給を開始し(ステップS103)、また、第1電気ヒータ11に通電して電気炉1内を所定の昇温速度で加熱する(ステップS104)。なお、第1電気ヒータ11、第2電気ヒータ21、およびエアポンプ4は、燃料判別処理を終了するまで作動させるようになっている。
【0089】
電気炉1内が加熱されることにより、電気炉1内のキャリアガスや保持容器3内の検査対象燃料が加熱され、検査対象燃料は燃料の蒸発特性に従って蒸発する。蒸発した燃料はキャリアガスにより触媒体2に運ばれる。蒸発した燃料が触媒体2に達すると、触媒作用により触媒体2内で燃焼する。この燃焼により触媒体内温度T1が上昇し、ガス温度T2と触媒体内温度T1との温度差ΔT1が大きくなる。
【0090】
ステップS104で電気炉1内の加熱を開始した後に、ステップS105に進んでガス温度T2および触媒体内温度T1を計測する。
【0091】
続いて、ステップS106では、制御装置7に予め記憶された基準温度差ΔT1stdとステップS105で取得したデータとに基づいて燃焼温度差ΔT2を算出し、この燃焼温度差ΔT2が、第1所定値Ta(本例では、3℃。図11参照)を超えたか否かを判定する。なお、第1所定値Taは、検査対象燃料の蒸発が始まり、蒸発した燃料が触媒体2内で燃焼し始めたことを判定するための値であり、制御装置7に予め記憶されている。
【0092】
そして、燃焼温度差ΔT2が第1所定値Taを超えるまで、すなわちステップS106がYESになるまでステップS105およびステップS106の処理が繰り返される。その後、燃焼温度差ΔT2が第1所定値Taを超えると(ステップS106がYES)、蒸発した燃料が触媒体2内で燃焼し始めたと判断し、ステップS107に進む。
【0093】
ステップS107〜111では、現在のガス温度T2、換言すると、検査対象燃料の蒸発が始まった時のガス温度T2に基づいて、検査対象燃料の性状を判定する。
【0094】
具体的には、ガス温度T2が図11に示す第1判定値Td1以下(ステップS107がNO)の場合、検査対象燃料の蒸発が低い温度領域で始まっているため、検査対象燃料に灯油の成分が含まれていると判断し、ステップS108で灯油フラグをONする。なお、第1判定値Td1は制御装置7に予め記憶されている。
【0095】
ガス温度T2が、第1判定値Td1を超え(ステップS107がYES)、且つ図11に示す第2判定値Td2以下(ステップS109がNO)の場合、検査対象燃料の蒸発が中間温度領域で始まっているため、検査対象燃料に灯油の成分は含まれておらず、軽油の成分が含まれていると判断し、ステップS110で軽油フラグをONする。なお、Td1<Td2であり、第2判定値Td2は制御装置7に予め記憶されている。
【0096】
ガス温度T2が第2判定値Td2を超えている場合(ステップS109がYES)、検査対象燃料の蒸発が高い温度領域で始まっているため、検査対象燃料に灯油および軽油の成分は含まれていないと判断し、ステップS111で検査対象燃料は重油である旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。
【0097】
ステップS107またはステップS109がNOの場合は、ステップS108またはステップS110を経て、ステップS112に進み、ステップS112では、ガス温度T2および触媒体内温度T1を再度計測する。
【0098】
続いて、ステップS113では、基準温度差ΔT1stdとステップS112で取得したデータとに基づいて燃焼温度差ΔT2を算出し、この燃焼温度差ΔT2が、第2所定値Tb(本例では、3℃。図11参照)未満になったか否かを判定する。なお、第2所定値Tbは、検査対象燃料の蒸発がほぼ終了したことを判定するための値であり、制御装置7に予め記憶されている。
【0099】
そして、燃焼温度差ΔT2が第2所定値Tb未満になるまで、すなわちステップS113がYESになるまでステップS112およびステップS113の処理が繰り返される。その後、燃焼温度差ΔT2が第2所定値Tb未満になると(ステップS113がYES)、検査対象燃料の蒸発がほぼ終了したと判断し、ステップS114に進む。
【0100】
ステップS114〜122では、現在のガス温度T2、換言すると、検査対象燃料の蒸発がほぼ終了した時のガス温度T2に基づいて、検査対象燃料の性状を判定する。
【0101】
具体的には、ガス温度T2が図11に示す第3判定値Td3以下(ステップS114がNO)の場合、検査対象燃料の蒸発が低い温度領域で終了しているため、検査対象燃料に軽油および重油の成分は含まれていないと判断し、ステップS115で検査対象燃料は灯油である旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。なお、第3判定値Td3は制御装置7に予め記憶されている。
【0102】
ガス温度T2が、第3判定値Td3を超え(ステップS114がYES)、且つ図11に示す第4判定値Td4以下(ステップS116がNO)の場合、検査対象燃料の蒸発が中間温度領域で終了しているため、検査対象燃料に重油の成分は含まれておらず、軽油の成分が含まれていると判断し、ステップS117に進んで灯油フラグがONしているか否かを判定する。なお、第4判定値Td4は制御装置7に予め記憶されている。
【0103】
灯油フラグがONしている場合(ステップS117がYES)、検査対象燃料には灯油と軽油が含まれていると判断し、ステップS120で検査対象燃料は灯油と軽油が混合したものである旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。
【0104】
灯油フラグがONしていない場合(ステップS117がNO)、検査対象燃料は軽油であると判断し、ステップS119で検査対象燃料は軽油である旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。
【0105】
ガス温度T2が第4判定値Td4を超えている場合(ステップS116がYES)、検査対象燃料の蒸発が高い温度領域で終了しているため、検査対象燃料に重油の成分が含まれていると判断し、ステップS118に進んで軽油フラグがONしているか否かを判定する。
【0106】
軽油フラグがONしている場合(ステップS118がYES)、検査対象燃料には軽油と重油が含まれていると判断し、ステップS121で検査対象燃料は軽油と重油が混合したものである旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。
【0107】
軽油フラグがONしていない場合(ステップS118がNO)、検査対象燃料には灯油、軽油および重油の成分が含まれていると判断し、ステップS122で検査対象燃料は灯油、軽油および重油が混合したものである旨を表示した後、燃料判別処理を終了する。ていると判定する。
【0108】
本実施形態によると、検査対象燃料が、軽油・灯油・重油のいずれであるかを判定することができる。また、軽油に灯油や重油が混入されている場合、灯油のみが混入されているか、重油のみが混入されているか、灯油および重油がともに混入されているかを判定することができる。
【0109】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について説明する。図12は第7実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図、図13は図12の要部の分解斜視図である。
【0110】
図12、図13に示すように、燃料判別装置は、例えばステンレスよりなる円筒状の容器30を備え、エアポンプ4により空気が容器30の内部に供給されるようになっている。容器30の内部には、検査対象燃料を保持して加熱し蒸発させる燃料蒸発器8と、触媒体温度センサ6および第2電気ヒータ21が内蔵された触媒体2が、水平方向に並べて配置されている。なお、第2電気ヒータ21は、本発明の触媒体加熱手段に相当する。
【0111】
燃料蒸発器8は、セラミック積層体81、ハウジング82、およびコネクタ83を備えている。セラミック積層体81は、積層されたセラミックよりなる板状の4枚のシート811と、検査対象燃料を保持する燃料保持器812と、検査対象燃料を加熱して蒸発させる燃料加熱手段としての第1電気ヒータ813と、触媒体2に流入する前の蒸発燃料の温度を検出するガス温度センサ814とを備えている。
【0112】
燃料保持器812は、セラミック多孔質体からなり、板状に形成されている。第1電気ヒータ813は、例えば白金よりなり、シート811に印刷されている。ガス温度センサ814は、例えば白金とロジウムよりなる熱電対であり、シート811に印刷されている。燃料保持器812、第1電気ヒータ813、およびガス温度センサ814は、それぞれが独立して、隣接する2枚のシート811間に配置されている。そして、セラミック積層体81は、シート811、燃料保持器812、第1電気ヒータ813、およびガス温度センサ814が、圧着して焼成され、一体化されている。
【0113】
セラミック積層体81は、通気用の穴821が形成された筒状のハウジング82内に収容されている。第1電気ヒータ813、およびガス温度センサ814は、コネクタ83を介して制御装置7に接続されている。また、燃料蒸発器8は、容器30に対して脱着可能になっている。
【0114】
次に、上記燃料判別装置を用いて行う燃料判別について説明する。
【0115】
まず、燃料蒸発器8を容器30から外して、検査対象燃料を燃料保持器812に保持させる。具体的には、検査対象燃料中に燃料蒸発器8を漬けて燃料保持器812に所定量の検査対象燃料を含浸させてもよいし、マイクロシリンジで燃料保持器812に所定量の検査対象燃料を注入してもよい。その後、燃料蒸発器8を容器30に装着して、セラミック積層体81およびハウジング82を容器30内に配置させる。
【0116】
また、第2電気ヒータ21により触媒体2を加熱して、触媒をその活性化温度以上まで昇温させた後、触媒体2の温度が所定温度に維持されるように、制御装置7にて第2電気ヒータ21への通電を制御する。
【0117】
続いて、エアポンプ4を作動させるとともに、第1電気ヒータ813に通電した状態で、ガス温度センサ814および触媒体温度センサ6により温度を計測する。具体的には、エアポンプ4を作動させて、キャリアガスを燃料蒸発器8側から触媒体2に向かって流す。また、第1電気ヒータ813に通電して、燃料保持器812内の検査対象燃料を昇温させ蒸発させる。気化した燃料はキャリアガスにのって触媒体2に到達して触媒上で燃焼し、この燃焼により触媒体2内の温度が上昇する。
【0118】
以下、第2実施形態と同様の方法にて、ガス温度センサ814にて検出した蒸発燃料の温度T2と触媒体温度センサ6にて検出した触媒体内の温度T1に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定する。
【0119】
以上のように、本実施形態では、燃料保持器812は、セラミック多孔質体にて板状としているため、小型にすることができる。また、第1電気ヒータ813およびガス温度センサ814は、シート811に印刷しているため、小型にすることができる。
【0120】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について説明する。図14は第8実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図である。本実施形態は、第7実施形態における燃料蒸発器8と触媒体2の配置を変更したものであり、以下、第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0121】
図14に示すように、本実施形態の燃料判別装置は、燃料蒸発器8と触媒体2が天地方向に並べて配置されている。より詳細には、燃料保持器8の下方に触媒体2が配置されている。また、エアポンプ4が廃止されている。
【0122】
本実施形態の燃料判別装置では、第1電気ヒータ813(図13参照)に加熱されて蒸発した燃料は、空気との比重差により、下方の触媒体2に向かって流れる。したがって、エアポンプ4を廃止することができる。
【0123】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態について説明する。図15は第9実施形態に係る燃料判別装置の全体構成を示す模式的な図、図16は図15の装置の分解斜視図である。
【0124】
図15、図16に示すように、燃料判別装置は、燃料燃焼器9と、エアポンプ4と、制御装置7とからなる。
【0125】
燃料燃焼器9は、セラミックよりなる板状の4枚の絶縁シート911と、セラミックよりなる角柱状の保持用シート912とを備え、絶縁用シート911と保持用シート912は積層されている。保持用シート912には、断面矩形状の溝部912aが形成されており、この溝部912aは、保持用シート912の長手方向の一端面から他端面まで連続している。
【0126】
溝部912aには、検査対象燃料を保持する燃料保持器913と、触媒を担持した触媒体914が挿入されている。燃料保持器913および触媒体914は、通気性を有するセラミック多孔質体からなり、角柱状に形成されている。また、燃料保持器913および触媒体914は、水平方向に並べて配置されている。
【0127】
燃料燃焼器9は、検査対象燃料を加熱して蒸発させる燃料加熱手段としての第1電気ヒータ915、触媒体914を加熱する触媒体加熱手段としての第2電気ヒータ916、触媒体914に流入する前の蒸発燃料の温度を検出するガス温度センサ917、および触媒体914の温度を検出する触媒体温度センサ918を備えている。
【0128】
第1電気ヒータ915および第2電気ヒータ916は、例えば白金よりなり、1枚の共通の絶縁用シート911に印刷されている。ガス温度センサ917は、例えば白金とロジウムよりなる熱電対であり、1枚の絶縁用シート911に単独で印刷されている。触媒体温度センサ918は、例えば白金とロジウムよりなる熱電対であり、1枚の絶縁用シート911に単独で印刷されている。
【0129】
そして、燃料燃焼器9は、絶縁用シート911、保持用シート912、燃料保持器913、触媒体914、第1電気ヒータ915、第2電気ヒータ916、ガス温度センサ917、および触媒体温度センサ918が、圧着して焼成され、一体化されている。
【0130】
次に、上記燃料判別装置を用いて行う燃料判別について説明する。
【0131】
まず、検査対象燃料を燃料保持器913に保持させる。具体的には、検査対象燃料中に燃料燃焼器9を漬けて燃料保持器913に所定量の検査対象燃料を含浸させてもよいし、マイクロシリンジで燃料保持器913に所定量の検査対象燃料を注入してもよい。
【0132】
また、第2電気ヒータ916により触媒体914を加熱して、触媒をその活性化温度以上まで昇温させた後、触媒体914の温度が所定温度に維持されるように、制御装置7にて第2電気ヒータ916への通電を制御する。
【0133】
続いて、エアポンプ4を作動させるとともに、第1電気ヒータ915に通電した状態で、ガス温度センサ917および触媒体温度センサ918により温度を計測する。具体的には、エアポンプ4を作動させて、キャリアガスを燃料保持器913側から触媒体914に向かって流す。また、第1電気ヒータ915に通電して、燃料保持器913内の検査対象燃料を昇温させ蒸発させる。気化した燃料はキャリアガスにのって触媒体914に到達して触媒上で燃焼し、この燃焼により触媒体914内の温度が上昇する。
【0134】
以下、第2実施形態と同様の方法にて、ガス温度センサ917にて検出した蒸発燃料の温度T2と触媒体温度センサ918にて検出した触媒体内の温度T1に基づいて、軽油に軽油以外の燃料が混入されているか否かを判定する。
【0135】
以上のように、本実施形態では、燃料保持器913、触媒体914、第1電気ヒータ915、および第2電気ヒータ916を一体化しているため、それらを小型にすることができる。
【0136】
なお、本実施形態の燃料判別装置は、燃料燃焼器9を図15に示す状態から時計回りに90°回転させた状態で用いることにより、換言すると、燃料保持器913の下方に触媒体914を位置させて用いることができる。この場合、蒸発した燃料は空気との比重差により下方の触媒体914向かって流れるため、エアポンプ4を廃止することができる。
【0137】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態および第7〜9実施形態の燃料判別装置のいずれかを用いて実施される。そして、その燃料判別装置により、検査対象燃料を昇温させつつ、検査対象燃料から蒸発した燃料を含むガスを触媒体に送り、触媒体に流入する前のガスの温度と触媒体内の温度とを計測する。
【0138】
さらに、計測した2つの温度データに基づいて検査対象燃料の性状を判定し、検査対象燃料は灯油が混入された軽油であると判定された場合に、以下述べるようにして灯油の混入割合を求めることにより、特3号軽油(規定量未満の灯油が混入された正規燃料)であるか、規定量以上の灯油が混入された不正燃料であるかを、判別するものである。
【0139】
図17は、今回灯油の割合を求める検査対象燃料の温度計測結果と、判定基準として予め求めた軽油および灯油の温度計測結果を、燃焼温度差ΔT2とガス温度T2で整理したものである。なお、本例の検査対象燃料は、灯油70%、軽油30%の混合燃料である。
【0140】
この図17によると、燃料性状によってプロファイルが異なっており、例えば、燃焼温度差ΔT2が最大になったときのガス温度T2(すなわち、ピーク時ガス温度)は、灯油が最も低く、軽油が最も高く、灯油・軽油混合燃料はそれらの中間の値となる。
【0141】
そこで、図17のように燃焼温度差ΔT2とガス温度T2で整理したグラフを利用して、検査対象燃料の灯油の混入割合を求めることを検討した。その結果、以下のようにして検査対象燃料の灯油の混入割合が求められることが確認された。
【0142】
まず、触媒体に流入する前のガスの温度をガス温度T2とし、触媒体内の温度を触媒体内温度T1とし、触媒体内温度T1からガス温度T2を減算した値を温度差とし、検査対象燃料を蒸発させた場合の温度差を対象燃料温度差ΔT1とし、検査対象燃料がない場合(すなわち、保持容器や燃料保持器に検査対象燃料を注入せずに温度計測を行った場合)の温度差を基準温度差ΔT1stdとし、対象燃料温度差ΔT1から基準温度差ΔT1stdを減算した値を燃焼温度差ΔT2とする。
【0143】
また、燃焼温度差ΔT2が増加する過程において燃焼温度差ΔT2が所定値Xのときのガス温度T2を昇温時ガス温度とし、燃焼温度差ΔT2が減少する過程において燃焼温度差ΔT2が所定値Xのときのガス温度T2を降温時ガス温度とする。
【0144】
さらに、検査対象燃料が灯油である場合の昇温時ガス温度を灯油昇温時ガス温度Tr1とし、検査対象燃料が灯油である場合の降温時ガス温度を灯油降温時ガス温度Tr2とし、今回灯油の割合を求める検査対象燃料の昇温時ガス温度を検査対象燃料昇温時ガス温度Tr3とし、今回灯油の割合を求める検査対象燃料の降温時ガス温度を検査対象燃料降温時ガス温度Tr4とし、検査対象燃料が軽油である場合の昇温時ガス温度を軽油昇温時ガス温度Tr5とし、検査対象燃料が軽油である場合の降温時ガス温度を軽油降温時ガス温度Tr6とする。
【0145】
そして、Tr1〜Tr6の値を図17から求めた後、第1混合比R1を、R1=(Tr5−Tr3)/(Tr5−Tr1)の式にて求め、第2混合比R2を、R2=(Tr6−Tr4)/(Tr6−Tr2)の式にて求める。より詳細には、所定値Xを複数設定して、第1混合比R1および第2混合比R2を複数算出する。
【0146】
ここで、図18は検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求めるための2次元グラフであり、算出した複数の第1混合比R1および第2混合比R2をプロットしたものである。この図18において、○印は第1混合比R1、□印は第2混合比R2、線L1は複数の第1混合比R1の外挿線、線L2は複数の第2混合比R2の外挿線である。そして、第1混合比R1の外挿線L1と第2混合比R2の外挿線L2との交点tに対応する混合比(図18の縦軸)の値を、検査対象燃料に含まれる灯油の割合とする。
【0147】
因みに、本例の検査対象燃料の実際の灯油混合比は0.7であるのに対し、上記方法にて求めた灯油混合比は0.74であり、上記方法にて検査対象燃料の灯油の混入割合を精度よく求められることが確認された。
【0148】
以上述べたように、本実施形態によると、検査対象燃料の灯油の混入割合を求めることができるため、特3号軽油と規定量以上の灯油が混入された不正燃料とを判別することができる。
【0149】
なお、本実施形態では、所定値Xを複数設定して、第1混合比R1および第2混合比R2を複数算出したが、所定値Xを1つ設定して、第1混合比R1および第2混合比R2を1つ算出し、その第1混合比R1と第2混合比R2の平均値を、検査対象燃料に含まれる灯油の割合としてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 電気炉(加熱手段)
2 触媒体
4 エアポンプ(送風手段)
5 ガス温度センサ
6 触媒体温度センサ
7 制御装置(燃料性状判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象燃料を昇温させつつ、前記検査対象燃料から蒸発した燃料を、触媒を担体に担持させた触媒体(2)に向けてキャリアガスにて送り、前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度と前記触媒体(2)内の温度とを計測する温度計測工程を実行し、
前記温度計測工程で計測した2つの温度データに基づいて、前記検査対象燃料への軽油以外の燃料の混入の有無を判定することを特徴とする燃料判別方法。
【請求項2】
前記触媒をその活性化温度以上まで昇温させた後に、前記温度計測工程を開始することを特徴とする請求項1に記載の燃料判別方法。
【請求項3】
触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、
検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて前記触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、
前記検査対象燃料および前記キャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、
前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、
前記触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、
前記ガス温度センサ(5)にて検出した前記キャリアガスの温度と前記触媒体温度センサ(6)にて検出した前記触媒体(2)内の温度とに基づいて、前記検査対象燃料への軽油以外の燃料の混入の有無を判定する燃料性状判定手段(7)とを備えることを特徴とする燃料判別装置。
【請求項4】
触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、
検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて前記触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、
前記検査対象燃料および前記キャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、
前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、
前記触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、
前記検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、
前記ガス温度センサ(5)にて検出した前記キャリアガスの温度をガス温度とし、
前記触媒体温度センサ(6)にて検出した前記触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、
前記触媒体内温度から前記ガス温度を減算した値を温度差とし、
前記検査対象燃料を蒸発させた場合の前記温度差を対象燃料温度差とし、
前記検査対象燃料がない場合の前記温度差を基準温度差とし、
前記対象燃料温度差から前記基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、
前記燃料性状判定手段(7)は、前記燃焼温度差が増加する過程において前記燃焼温度差が所定値に達したときの前記ガス温度に基づいて前記判定を行うことを特徴とする燃料判別装置。
【請求項5】
触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、
検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて前記触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、
前記検査対象燃料および前記キャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、
前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、
前記触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、
前記検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、
前記ガス温度センサ(5)にて検出した前記キャリアガスの温度をガス温度とし、
前記触媒体温度センサ(6)にて検出した前記触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、
前記触媒体内温度から前記ガス温度を減算した値を温度差とし、
前記検査対象燃料を蒸発させた場合の前記温度差を対象燃料温度差とし、
前記検査対象燃料がない場合の前記温度差を基準温度差とし、
前記対象燃料温度差から前記基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、
前記燃料性状判定手段(7)は、前記燃焼温度差が減少する過程において前記燃焼温度差が所定値に達したときの前記ガス温度に基づいて前記判定を行うことを特徴とする燃料判別装置。
【請求項6】
触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、
検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて前記触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、
前記検査対象燃料および前記キャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、
前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、
前記触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、
前記検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、
前記ガス温度センサ(5)にて検出した前記キャリアガスの温度をガス温度とし、
前記触媒体温度センサ(6)にて検出した前記触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、
前記触媒体内温度から前記ガス温度を減算した値を温度差とし、
前記検査対象燃料を蒸発させた場合の前記温度差を対象燃料温度差とし、
前記検査対象燃料がない場合の前記温度差を基準温度差とし、
前記対象燃料温度差から前記基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、
前記燃料性状判定手段(7)は、前記燃焼温度差が最大になったときの前記ガス温度に基づいて前記判定を行うことを特徴とする燃料判別装置。
【請求項7】
触媒を担体に担持させた触媒体(2)と、
検査対象燃料から蒸発した燃料をキャリアガスにて前記触媒体(2)側に送る送風手段(4)と、
前記検査対象燃料および前記キャリアガスを加熱する加熱手段(1)と、
前記触媒体(2)に流入する前の前記キャリアガスの温度を検出するガス温度センサ(5)と、
前記触媒体(2)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6)と、
前記検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段(7)とを備える燃料判別装置であって、
前記ガス温度センサ(5)にて検出した前記キャリアガスの温度をガス温度とし、
前記触媒体温度センサ(6)にて検出した前記触媒体(2)内の温度を触媒体内温度とし、
前記触媒体内温度から前記ガス温度を減算した値を温度差とし、
前記検査対象燃料を蒸発させた場合の前記温度差を対象燃料温度差とし、
前記検査対象燃料がない場合の前記温度差を基準温度差とし、
前記対象燃料温度差から前記基準温度差を減算した値を燃焼温度差としたとき、
前記燃料性状判定手段(7)は、前記燃焼温度差が増加する過程において前記燃焼温度差が所定値に達したときの前記ガス温度、および、前記燃焼温度差が減少する過程において前記燃焼温度差が所定値に達したときの前記ガス温度に基づいて前記判定を行うことを特徴とする燃料判別装置。
【請求項8】
検査対象燃料を昇温させつつ、前記検査対象燃料から蒸発した燃料を含むガスを、触媒を担体に担持させた触媒体(2、914)に送り、前記触媒体(2、914)に流入する前の前記ガスの温度と前記触媒体(2、914)内の温度とを計測し、計測した2つの前記温度データに基づいて前記検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求める燃料判別方法であって、
前記ガスの温度をガス温度とし、
前記触媒体(2、914)内の温度を触媒体内温度とし、
前記触媒体内温度から前記ガス温度を減算した値を温度差とし、
前記検査対象燃料を蒸発させた場合の前記温度差を対象燃料温度差とし、
前記検査対象燃料がない場合の前記温度差を基準温度差とし、
前記対象燃料温度差から前記基準温度差を減算した値を燃焼温度差とし、
前記燃焼温度差が増加する過程において前記燃焼温度差が所定値のときの前記ガス温度を昇温時ガス温度とし、
前記燃焼温度差が減少する過程において前記燃焼温度差が所定値のときの前記ガス温度を降温時ガス温度とし、
前記検査対象燃料が灯油である場合の前記昇温時ガス温度を灯油昇温時ガス温度Tr1とし、
前記検査対象燃料が灯油である場合の前記降温時ガス温度を灯油降温時ガス温度Tr2とし、
今回灯油の割合を求める検査対象燃料の前記昇温時ガス温度を検査対象燃料昇温時ガス温度Tr3とし、
今回灯油の割合を求める検査対象燃料の前記降温時ガス温度を検査対象燃料降温時ガス温度Tr4とし、
前記検査対象燃料が軽油である場合の前記昇温時ガス温度を軽油昇温時ガス温度Tr5とし、
前記検査対象燃料が軽油である場合の前記降温時ガス温度を軽油降温時ガス温度Tr6とし、
第1混合比R1=(Tr5−Tr3)/(Tr5−Tr1)と、第2混合比R2=(Tr6−Tr4)/(Tr6−Tr2)とに基づいて、前記検査対象燃料に含まれる灯油の割合を求めることを特徴とする燃料判別方法。
【請求項9】
前記第1混合比R1と前記第2混合比R2の平均値を、前記検査対象燃料に含まれる灯油の割合とすることを特徴とする請求項8に記載の燃料判別方法。
【請求項10】
前記所定値を複数設定して、前記第1混合比R1および前記第2混合比R2を複数算出し、
複数の前記第1混合比R1および複数の前記第2混合比R2を、前記検査対象燃料に含まれる灯油の割合である灯油混合比と前記所定値との2次元グラフにプロットし、
複数の前記第1混合比R1の外挿線と複数の前記第2混合比R2の外挿線との交点に対応する前記2次元グラフ上の灯油混合比の値を、前記検査対象燃料に含まれる灯油の割合とすることを特徴とする請求項8に記載の燃料判別方法。
【請求項11】
検査対象燃料を保持する燃料保持器(812、913)と、
前記検査対象燃料を加熱して蒸発させる燃料加熱手段(813、915)と、
前記検査対象燃料から蒸発した燃料を燃焼させる触媒を担体に担持させた触媒体(2、914)と、
前記触媒体(2、914)を加熱する触媒体加熱手段(21、916)と、
前記触媒体(2、914)に流入する前の前記蒸発燃料の温度を検出するガス温度センサ(814、917)と、
前記触媒体(2、914)内の温度を検出する触媒体温度センサ(6、918)と、
前記ガス温度センサ(814、917)にて検出した前記蒸発燃料の温度と前記触媒体温度センサ(6、918)にて検出した前記触媒体(2、914)内の温度とに基づいて、前記検査対象燃料の性状を判定する燃料性状判定手段とを備える燃料判別装置であって、
前記燃料保持器(812、913)はセラミック多孔質体からなり、
前記燃料加熱手段(813、915)はセラミック製のシートに印刷されたヒータであり、
前記燃料保持器(812、913)と前記燃料加熱手段(813、915)は一体化されていることを特徴とする燃料判別装置。
【請求項12】
前記触媒体(914)は通気性を有するセラミック多孔質体からなり、
前記触媒体加熱手段(916)はセラミック製のシートに印刷されたヒータであり、
前記触媒体(914)と前記触媒体加熱手段(916)は一体化されていることを特徴とする請求項11に記載の燃料判別装置。
【請求項13】
前記燃料保持器(812、913)、前記燃料加熱手段(813、915)、前記触媒体(914)、および前記触媒体加熱手段(916)は、一体化されていることを特徴とする請求項12に記載の燃料判別装置。
【請求項14】
前記燃料保持器(812、913)の下方に前記触媒体(2、914)が配置されていることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1つに記載の燃料判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−252899(P2011−252899A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195834(P2010−195834)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】