説明

燃料検出装置

【課題】燃料の液位だけではなく、燃料性状、即ち燃料の材質を判別できる燃料検出装置を提供する。
【解決手段】燃料検出装置は、燃料タンク内に設置され、燃料の性状に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の性状を検出するための燃料性状検出部(1)と、燃料タンク内に設置され、燃料の液位に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の液位を検出するための燃料液位検出部(2)と、燃料性状検出部(1)の出力および燃料液位検出部(2)の出力を処理するための信号処理部(5〜9)などを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに燃料タンクに設置され、燃料残量検出および燃料性状検出を行う燃料検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両などの燃料タンクに搭載されている燃料残量計は、浮力を利用したフロートセンサが主流である。即ち、燃料の液面レベルをフロートの高さ変化で検出することによって、燃料タンクの燃料残量をドライバーに提示している。こうしたフロートセンサの原理は単純であるが、フロートの形状が大きく、車種毎、あるいは燃料タンク毎に、形状寸法や出力特性を設計し直す必要があり、コスト低減のネックとなっている。
【0003】
一方、静電容量方式により燃料の液面レベルを検出する液位センサが提案されている。例えば、特許文献1では、基板上に形成された異なる対向する3本の電極を用いて、充填される燃料の液面の静電容量を検知することで、液面レベルを検出している。また特許文献2および特許文献3では、常時燃料中にある検出電極と、燃料の液位の検出電極対からなる、櫛形の3種類の検出電極を設け、燃料の誘電率や温度変化によらない液位センサを考案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−40753号公報
【特許文献2】特開2010−117237号公報
【特許文献3】特開2010−117238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液位センサでは、誘電率補正や温度補正による液位のみの検出を行っている。しかしながら、最近では、エコ社会を実現するために燃料が多様化し、ガソリンの他にバイオ燃料などが出現し、燃料性状も同時に検出できる燃料ゲージが要求されている。
【0006】
本発明の目的は、燃料の液位だけではなく、燃料性状、即ち燃料の材質を判別できる燃料検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料検出装置は、
燃料タンク内に設置され、燃料の性状に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の性状を検出するための燃料性状検出部と、
燃料タンク内に設置され、燃料の液位に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の液位を検出するための燃料液位検出部と、
燃料性状検出部の出力および燃料液位検出部の出力を処理するための信号処理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静電容量方式による燃料性状検出部および燃料液位検出部の両方を備えることによって、燃料の液位だけではなく燃料性状も検出可能になる。燃料性状が特定されると、燃料性状に応じた比誘電率を用いて燃料液位を補正することが可能になるため、より高精度の液位検出を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による燃料検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、燃料性状検出器および燃料液位検出器の一例を示す構成図であり、図2(b)は水平断面図である。
【図3】同軸型燃料検出器のモデルを示す説明図である。
【図4】同軸型燃料検出器の最適径の設計要件を示すグラフである。
【図5】ガソリン混合比の異なる燃料について計測した静電容量の変化を示すグラフである。
【図6】燃料の液位が変化した場合、計測した静電容量の変化を示すグラフである。
【図7】外部I/F部の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】図8(a)は、本発明の実施の形態2による燃料検出装置を示す構成図であり、図8(b)は水平断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3による燃料検出装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による燃料検出装置の電気的構成を示すブロック図である。燃料性状検出器1は、性状ゲージとも称され、燃料タンクに注入された燃料に特有の比誘電率によって決定される静電容量を計測する。燃料液位検出器2は、液位ゲージとも称され、燃料タンクに注入された燃料の液位に応じて変化する静電容量を計測する。参照コンデンサ3は、固定の静電容量を有するコンデンサであって、基準となる燃料の比誘電率によって決定される静電容量値と同等の静電容量値を有する。基準電圧部4は、静電容量を検出するために必要な電荷を燃料性状検出器1、燃料液位検出器2および参照コンデンサ3に供給するための基準電圧源である。
【0011】
次に、信号処理部について説明する。切り替え部5は、燃料性状検出器1の出力、燃料液位検出器2の出力および参照コンデンサ3の出力を選択的に切り替えて、1つの時系列信号に変換するための切り替えスイッチである。CV(Charge to Voltage)変換部6は、燃料性状検出器1、燃料液位検出器2および参照コンデンサ3から出力される静電容量値を電圧信号に変換する回路である。なお、切り替え部5とCV変換部6は、接続位置を前後入れ替えても良く、燃料性状検出器1、燃料液位検出器2および参照コンデンサ3の出力側にそれぞれCV変換部6を設けて、各CV変換部6の出力側に切り替え部5を設けてもよい。
【0012】
AD(Analog to Digital)変換部7は、CV変換部6のアナログ電圧信号をデジタル値に変換する。信号演算部8は、マイクロプロセッサ等で構成され、所定のプログラムに従ってデジタル信号処理を行うものであり、例えば、燃料性状検出器1、燃料液位検出器2および参照コンデンサ3からの出力データに基づいて燃料性状および燃料液位を算出する。外部I/F(インタフェース)部9は、信号演算部8の演算結果を外部機器10、例えば、車両の表示パネル等へ伝送し、ドライバーに対して燃料性状や燃料液位を表示する。
【0013】
図2(a)は、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2の一例を示す構成図であり、図2(b)は水平断面図である。燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は、燃料に浸漬されるように燃料タンク内に設置される。
【0014】
燃料性状検出器1は、燃料の液面と交差する方向、好ましくは鉛直方向に延びる筒状の内部導体101と、内部導体101に対して同軸配置された筒状の外部導体102とを備え、内部導体101が検出電極として機能し、外部導体102が接地電極として機能する。内部導体101および外部導体102は、例えば、円筒形状、角筒形状などに形成され、電極間距離が一定となるように位置決めされる。
【0015】
こうした同軸構造を支えるために、必要に応じて板状の仕切り部103が設けられ、内部導体101と外部導体102とを連結している。また、仕切り部103の気密封止により、仕切り部103の下部空間と上部空間を分離することができ、仕切り部103の上部空間への燃料進入を制限できる。この場合、仕切り部103の下部空間が燃料で充填できるように、外部導体102の仕切り部103の下方付近に、燃料ガスが排出可能な通気孔104が設けられる。こうした仕切り部103は、複数設けてもよい。
【0016】
燃料液位検出器2は、同様な同軸構造を有し、燃料の液面と交差する方向、好ましくは鉛直方向に延びる筒状の内部導体201と、内部導体201に対して同軸配置された筒状の外部導体202とを備え、内部導体201が検出電極として機能し、外部導体202が接地電極として機能する。内部導体201および外部導体202は、例えば、円筒形状、角筒形状などに形成され、電極間距離が一定となるように位置決めされる。
【0017】
こうした同軸構造を支えるために、必要に応じて板状の仕切り部203が設けられ、内部導体201と外部導体202とを連結している。また、仕切り部203の気密封止により、仕切り部203の下部空間と上部空間を分離することができ、仕切り部203の上部空間への燃料進入を制限できる。この場合、仕切り部203の下部空間が燃料で充填できるように、外部導体202の仕切り部203の下方付近に、燃料ガスが排出可能な通気孔204が設けられる。こうした仕切り部203は、複数設けてもよい。
【0018】
ここでは、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は同一の軸長を有する場合を例示したが、設置状況によっては互いに異なる軸長を有してもよい。また、燃料性状検出器1は、燃料性状の検出感度を上げるため、即ち、静電容量値を高くするために、内部導体101および外部導体102は、図2(b)に示すように、燃料液位検出器2の内部導体201および外部導体202より細径である場合を例示したが、両者とも同径であってもよい。
【0019】
検出電極として機能する内部導体101,201は、リード線を介して切り替え部5とそれぞれ電気接続されており、基準電圧部4からの基準電圧が印加される。接地電極として機能する外部導体102,202は、浮遊容量などの寄生容量の影響をなくすために、切り替え部5およびCV変換部6の信号グランドと接続され、回路接地される。
【0020】
次に動作について説明する。燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は、同軸コンデンサとして機能し、基準電圧と、電極間に存在する材料の比誘電率と、内部導体101,201および外部導体102,202の幾何形状によって決定される静電容量を有する。
【0021】
燃料タンクが空である場合、各検出器の内部空間には空気(比誘電率1)が充填されており、空気の比誘電率に対応した静電容量を示す。一方、燃料タンクが燃料で満杯である場合、各検出器の内部空間には燃料が充填されており、燃料の比誘電率に対応した静電容量を示す。燃料の比誘電率は燃料性状に応じて変化し、例えば、ガソリンの比誘電率は1.9〜2.2であり、エタノールの比誘電率は約24であり、ガソリンとエタノールの混合比率に応じて燃料の比誘電率が変化する。燃料タンクが空と満杯の中間である場合、空気による静電容量と燃料による静電容量との中間の値を示す。
【0022】
図3は、同軸型燃料検出器のモデルを示す説明図である。ここで、内部導体の外径をd1、外部導体の内径をd2、軸長をL、電極間に存在する材料の比誘電率をεとして、静電容量Cは、下記の式(1)で与えられる。
【0023】
【数1】

【0024】
また、燃料の液位が導体の下端と上端の間に位置する場合、導体下端から燃料液位までの距離をh、真空の誘電率をε、燃料の比誘電率をεとして、電極間の比誘電率εは、ε=ε×h/L+ε×(L−h)/Lで与えられる。従って、燃料性状検出器1の出力および燃料液位検出器2の出力に関して、燃料性状を表すεおよび燃料液位を表すhという2つの未知数を含む連立方程式が成立するため、εおよびhは代数的に計算することができる。
【0025】
図4は、同軸型燃料検出器の最適径の設計要件を示すグラフである。同軸型検出装置の同軸比d2/d1が小さくなると、検出感度が低くなるが、検出範囲は大きくなる。逆に、同軸比d2/d1が大きくなると、検出感度が高くなるが、検出範囲は小さくなる。これより、CV変換部6のトレードオフから最適ゲージ径を決定できる。例えば、d2=6mm〜8mm、d1=1mmとした場合、同軸比d2/d1は6〜8となって、現状のCV変換部6の最適径となる。
【0026】
具体的には、燃料性状検出器1における内部導体101の外径をd11、外部導体102の内径をd12とし、燃料液位検出器2における内部導体201の外径をd21、外部導体202の内径をd22として、同軸比d12/d11は同軸比d21/d22より小さいことが好ましい。これにより、燃料性状検出器1は少ない液位で燃料性状を表す静電容量を検出するため、少ない燃料で大きな静電容量変化を得ることができる。
【0027】
次に、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2でそれぞれ得られる静電容量値から、燃料性状および燃料液位を算出する手法について説明する。
【0028】
燃料性状検出器1で得られる静電容量CSは、仕切り部103で仕切られた固定の長さ、即ち、導体の下端から仕切り部103までの下部空間に充填された燃料の比誘電率によって決定される。このとき燃料の比誘電率は、燃料の性状に応じて変化する。
【0029】
図5は、ガソリン混合比の異なる燃料について計測した静電容量CSの変化を示すグラフである。ここでは、同一の同軸径を有する燃料性状検出器1を用いて計測しており、縦軸はAD変換部7からの出力を示し、横軸は燃料性状検出器1の同軸長を示す。
【0030】
温室効果ガス削減を目的に近年海外で急速に普及しているバイオガソリンは、ガソリンを主にバイオエタノールを混合している。上述したように、ガソリンの比誘電率は1.9〜2.2と低く、エタノールの比誘電率は24と高いため、ガソリンとエタノールの混合比に応じて比誘電率が変化する。図5に示すように、ガソリンの混合比が低下するとエタノールの比誘電率が優勢になり、ガソリン100%のときの比誘電率よりAD出力値が上昇する。検出器の同軸径が一定であれば、同軸内部に注入される燃料量に比例して、AD出力値は上昇する。さらにガソリンに混合される物質の比誘電率の大きさと混合比率により、AD出力値は増減し、その増減直線の傾きも変化する。
【0031】
このとき同軸長を一定にして、その内部空間に燃料を完全に充填した状態で取得したAD出力値を燃料性状データとする。燃料性状を判定する際、予め燃料性状検出器1で計測した燃料性状データを参照データとして信号演算部8に記憶しておいて、今回得られたAD変換部7の出力値や充填直線の傾きと参照データとの照合を行うことによって、充填された燃料性状を検出することができる。
【0032】
次に、数値計算の具体例を説明する。対象となる燃料の静電容量を予め測定した参照テーブルを信号演算部8に初期値CR0として記憶しておく。さらに同様もしくは燃料性状検出器1で得られる静電容量CSより小さい既知の静電容量CRをもつ参照コンデンサ3を有する。信号演算部8では、切り替え部5の切り替えによってCR0とCRを測定し、燃料性状検出器1で得られる静電容量CSに燃料が充填されたことを検知し、CS0とCRを比較してCRの回路動作のチェックを行い、CRtとする。
【0033】
参照コンデンサ3はなくてもよく、この場合は燃料性状で得られる静電容量CSのみを用い、CRt=CS0とする。また参照コンデンサ3は複数あってもよく、燃料が充填されていない場合の静電容量や、燃料性状検出器1の燃料充填途中位置の静電容量や、検知対象となる燃料種別毎にその対象となる静電容量を有し、切り替え部5の切り替えによって、燃料性状検出器1に充填される燃料と比較を行う。
【0034】
次に、燃料タンクに燃料が注入され、仕切り部103の下部空間が全て燃料で充填されと、このとき燃料性状Sは、下記の式(2)で与えられる。
【0035】
【数2】

【0036】
燃料性状検出器1で得られる静電容量CSは、例えば、ガソリン100%であればその比誘電率≒1.9〜2.2であり、水道水(比誘電率≒10)やエタノール(比誘電率≒24)等が混入すると、混合燃料は比誘電率が大きい方に変化する。これによって静電容量CSは、燃料と混合する液体の混合比率に応じて変化する。よって、式(2)から得られる数値から、例えば、ガソリン100%からの混合比率が決定することができ、この数値をもって燃料性状として検出することができる。
【0037】
また、燃料の比誘電率は温度により変化するため、温度検出部を有することが好ましく、例えば、サーミスタや熱電対を燃料温度が計測できる場所に配置し、燃料温度を計測してその温度から燃料性状を補正し、燃料性状を判定してもよい。
【0038】
次に、燃料液位検出器2で得られる静電容量CLは、仕切り部203で仕切られた固定の長さ、即ち、導体の下端から仕切り部203までの下部空間の比誘電率によって決定される。このとき下部空間の比誘電率は、燃料の液位に応じて変化する。
【0039】
図6は、燃料の液位が変化した場合に、計測した静電容量CLの変化を示すグラフである。ここでは、同一の同軸径を有する燃料液位検出器2を用いて計測しており、縦軸はAD変換部7からの出力を示し、横軸は燃料液位検出器2の同軸長を示す。
【0040】
先に得られた燃料性状検出器1で得られる静電容量CSと、燃料液位検出器2により得られたCLから、燃料液位Lは、下記の式(3)で与えられる。
【0041】
【数3】

【0042】
燃料液位を表す静電容量CLは、燃料性状に応じて変化するため、注入した燃料種別および燃料温度に応じて燃料液位が変化する。ここでは、燃料性状検出器1で得られる静電容量CSから、燃料タンク内の燃料性状が検出できるため、注入された燃料の性状に応じて燃料液位を補正することによって、正確な燃料液位を検出することができる。
【0043】
再び図1を参照して、AD変換部7は、多ビットのAD変換器であって、変換ビット数が可変であることが好ましい。例えば、燃料の比誘電率が低い場合、燃料液位の上昇においても、燃料液位による静電容量変化が小さく、AD変換出力が大きく得られず、燃料液位の分解能が小さい。この対策として、AD変換ビット数を可変にし、燃料液位の低位点においても高分解能が得られるように、AD変換ビット数nを大きくすることより、2のn乗で分解能を向上できる。逆に、AD変換出力の変化が大きく、燃料液位による変動が大きい場合は、AD変換ビット数nを小さくすることにより、2のn乗で分解能を低下できる。
【0044】
信号演算部8は、AD変換部7から得られる検出データをサンプリングし、一定期間蓄積することが可能であり、蓄積したデータは、平均処理あるいは移動平均処理を施すことによって、液面変化やノイズによる変動成分を除去できる。信号演算部8は、参照コンデンサ3との比較や参照テーブルとの比較や回路動作チェックなどを行い、車両等が必要とする燃料計のスケール変換を行って外部I/F部9を介して表示パネル等へ出力する。燃料性状や燃料液位は、それぞれ多項式で表される燃料検出モデルから予測した結果を出力してもよい。
【0045】
外部I/F部9は、信号演算部8と外部機器10との間のデータ交換に関与するものであり、従来の通信方式との互換性を維持するために、デジタルデータの交換だけでなくアナログデータの交換も可能であることが好ましい。外部I/F部9は、例えば、図7に示すように、信号演算部8の演算結果をシリアル通信で伝送するシリアル通信部91と、信号演算部8の演算結果をPWM信号に変換するPWM生成部92と、PWM信号を平滑化する低域通過フィルタ(LPF)部93と、フィルタ出力を電圧出力として供給する電圧出力部94と、フィルタ出力を電流出力として供給する電流出力部95と、シリアル通信部91の出力、電圧出力部94の出力および電流出力部95の出力を選択的に切り替えるための出力切替部96などを備えてもよい。これによりデジタル通信だけでなく、アナログ通信にも対応することができ、電圧出力または電流出力のいずれかで車両等のメータパネルと接続し、燃料計表示が可能になる。
【0046】
実施の形態2.
図8(a)は、本発明の実施の形態2による燃料検出装置を示す構成図であり、図8(b)は水平断面図である。本実施形態の電気的構成は、図1に示したものと同様であり、重複説明を省略する。燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は、燃料に浸漬されるように燃料タンク内に設置される。
【0047】
本実施形態では、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は、同軸方向に積層されており、燃料の液面と交差する方向、好ましくは鉛直方向に延びる筒状の内部導体301と、内部導体301に対して同軸配置された筒状の外部導体302とを共有しており、内部導体301が検出電極として機能し、外部導体302が接地電極として機能する。板状の仕切り部303によって下部空間と上部空間が分離されており、下部空間が燃料性状検出器1に対応し、上部空間が燃料液位検出器2に対応する。内部導体301および外部導体302は、例えば、円筒形状、角筒形状などに形成され、電極間距離が一定となるように位置決めされる。外部導体202には、燃料ガスが排出可能な通気孔304が所望の位置に設けられる。
【0048】
さらに、板状の仕切り部306が同軸方向に沿って設けられ、検出器の内部空間を2つの半円筒空間に分離している。図8(b)に示すように、第1の半円筒空間には、扇型断面を有する誘電体305が装着されており、第2の半円筒空間には、空気、燃料ガスまたは液体燃料が充填される。誘電体305は、その比誘電率が検出対象となる燃料の比誘電率と同等または近似している材料であって、比誘電率の温度特性においても検出対象となる燃料と同等または近似しているものであるが、誘電体305の比誘電率変化特性が事前の計測などにより既知であればよい。誘電体305が、自己の形状を維持できる材質のものであれば、仕切り部306は省略してもよい。
【0049】
検出電極として機能する内部導体301は、リード線を介してCV変換部6と電気接続されており、基準電圧部4からの基準電圧が印加される。接地電極として機能する外部導体302は、CV変換部6の信号グランドと接続され、回路接地される。
【0050】
次に動作について説明する。仕切り部303の下部空間に位置する燃料性状検出部1において、誘電体305が存在しない第2の半円筒空間に燃料が充填されると、誘電体305により発生していた静電容量CS0に加えて、燃料充填で発生した静電容量CSが得られる。このときCS0とCSの比率または差分から燃料性状を検出することができる。
【0051】
実施の形態1と同様に、燃料性状検出器1で得られる燃料性状データは、信号演算部8において記憶されている情報により信号処理され、燃料性状情報として出力される。このときサーミスタや熱電対などの温度検出部を設けて温度検出を行い、比誘電率を補正して燃料性状情報を出力してもよい。
【0052】
次に、燃料液位検出器2は、仕切り部303の上部空間に位置しており、下方に位置する燃料性状検出器1に燃料が十分に充填された状態から、液位が導体上端に達するまでの範囲で液位検出を行う。仕切り部303の上部空間に燃料が充填されると、燃料液位による静電容量CLが発生することから、燃料性状による静電容量CSとの比率または差分により、燃料液位Lを算出することができる。
【0053】
本実施形態では、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2を同軸方向に積層させることによって、検出器全体の小型化が図られる。また、燃料性状検出器1において、燃料と同等の誘電率を有する誘電体305を内部導体301と外部導体302との間に装着することによって、燃料有無の比較が容易になり、検出器全体の小型化が図られる。
【0054】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3による燃料検出装置を示す構成図である。本実施形態の電気的構成は、図1に示したものと同様であり、重複説明を省略する。燃料タンク402の内部には、燃料ポンプ401が設置される。燃料ポンプ401は、フィルタ408を介して燃料407を吸引加圧し、パイプ410を経由してインジェクター(不図示)に送り込む。空の燃料タンク402に燃料407が注入されると、液位409が上昇し、一方、燃料ポンプ401の動作によって燃料407がインジェクターに送られると、燃料消費量に応じて液位409は下降する。
【0055】
燃料性状検出器1および燃料液位検出器2は、燃料ポンプ401の側面にアーム403を用いて一体的に実装されている。検出器の上方には、図1に示した電気的構成を備えたコントロールユニット404が設置され、さらにハーネス405を介してコネクタ406に接続されている。コネクタ406は、ケーブルを介して表示器などに接続される。コントロールユニット404は、燃料に浸漬しても動作可能なように耐油シールが施されている。なお、コントロールユニット404は、燃料タンク402の外部に設置しても構わない。
【0056】
コントロールユニット404は、燃料性状検出器1からの出力および燃料液位検出器2からの出力に基づいて燃料性状情報および燃料性状情報を演算し、演算結果は、表示器へ伝送されてドライバーに通知したり、さらに車両のエンジン制御ユニットへ伝送してもよい。エンジン制御ユニットは、予め設定した値と比べることによりバイオ燃料のアルコール濃度を検出でき、このアルコール濃度に応じてエンジンシリンダー内の点火プラグの点火時期を変えたり、燃料を噴射するインジェクターの燃料の噴射量や噴射タイミングを変えたり、最適なエンジン制御を行うことによって、例えば、排気ガスを規制値内に制御することができる。
【0057】
燃料タンク402の上面には、内径φLの開口部が設けられている。燃料ポンプ401、燃料性状検出器1および燃料液位検出器2を一体化したアセンブリの最大寸法をφKとして、φK<φLを満たすことが好ましく、これによりアセンブリを燃料タンク内に挿入する作業性を改善することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 燃料性状検出器、 2 燃料液位検出器、 3 参照コンデンサ、
4 基準電圧部、 5 切り替え部、 6 CV変換部、 7 AD変換部、
8 信号演算部、 9 外部I/F部、 10 外部機器、
101,201,301 内部導体、 102,202,302 外部導体、
103,203,303,306 仕切り部、 104,204,304 通気孔、
305 誘電体、 401 燃料ポンプ、 402 燃料タンク、 403 アーム、
404 コントロールユニット、 405 ハーネス、 406 コネクタ、
407 燃料、 408 フィルタ、 409 液位, 410 パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に設置され、燃料の性状に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の性状を検出するための燃料性状検出部と、
燃料タンク内に設置され、燃料の液位に応じて変化する静電容量を計測することにより、燃料の液位を検出するための燃料液位検出部と、
燃料性状検出部の出力および燃料液位検出部の出力を処理するための信号処理部と、を備えることを特徴とする燃料検出装置。
【請求項2】
燃料性状検出部は、燃料の液面と交差する方向に延びる筒状の内部導体と、内部導体に対して同軸配置された筒状の外部導体とを備え、内部導体が検出電極として機能し、外部導体が接地電極として機能するものであり、
燃料液位検出部は、燃料の液面と交差する方向に延びる筒状の内部導体と、内部導体に対して同軸配置された筒状の外部導体とを備え、内部導体が検出電極として機能し、外部導体が接地電極として機能することを特徴とする請求項1記載の燃料検出装置。
【請求項3】
燃料性状検出部における内部導体の外径をd11、外部導体の内径をd12とし、燃料液位検出部における内部導体の外径をd21、外部導体の内径をd22として、
d12/d11 < d21/d22
を満たすことを特徴とする請求項2記載の燃料検出装置。
【請求項4】
内部導体および外部導体が仕切り部によって連結され、外部導体の仕切り部の下方には通気孔が設けられることを特徴とする請求項1記載の燃料検出装置。
【請求項5】
信号処理部は、燃料性状検出部の出力および燃料液位検出部の出力に平均化処理を施すことを特徴とする請求項1記載の燃料検出装置。
【請求項6】
信号処理部は、燃料性状検出部の出力および燃料液位検出部の出力を選択的に切り替えるための信号切替部と、
選択された静電容量信号を電圧信号に変換するための静電容量/電圧変換部と、
変換された電圧信号をデジタル信号に変換するためのアナログデジタル電圧変換部と、
デジタル信号を演算するための演算部と、
演算部の演算結果を外部機器へ伝送するためのインタフェース部とを備え、
インタフェース部は、演算部の演算結果をシリアル通信で伝送するシリアル通信部と、演算部の演算結果をPWM信号に変換するPWM生成部と、PWM信号を平滑化するフィルタ部と、フィルタ出力を電圧出力として供給する電圧出力部と、フィルタ出力を電流出力として供給する電流出力部と、シリアル通信部の出力、電圧出力部の出力および電流出力部の出力を選択的に切り替えるための出力切替部とを有することを特徴とする請求項1記載の燃料検出装置。
【請求項7】
燃料性状検出部および燃料液位検出部は、同軸方向に積層されていることを特徴とする請求項2記載の燃料検出装置。
【請求項8】
燃料性状検出部において、燃料と同等の誘電率を有する誘電体部材が内部導体と外部導体との間に装着されていることを特徴とする請求項7記載の燃料検出装置。
【請求項9】
燃料タンクの内部には、燃料を外部へ供給するための燃料ポンプが設けられ、
燃料タンクには、開口部が設けられ、
燃料性状検出部および燃料液位検出部は、燃料ポンプに取り付けられており、
燃料性状検出部、燃料液位検出部および燃料ポンプの最大寸法φKが、燃料タンクの開口部寸法φLより小さいことを特徴とする請求項1記載の燃料検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163508(P2012−163508A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25573(P2011−25573)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】