説明

燃料残量表示装置

【課題】単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料センサ値のフィルタリング値による燃料残量表示の精度を向上させる。
【解決手段】燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料センサ値に基づく燃料残量フィルタリング値と燃料センサ値との差分が第1しきい値α以上であり、かつ燃料残量フィルタリング値と噴射量積算値に基づいて算出した燃料残量値との差分が第2しきい値β以上である条件を満たすか否かを判定する表示設定判定部45と、表示設定判定部45が前記条件を満たす判定すると、前記条件を満たさないときのフィルタリングよりも追従性の高い弱フィルタリングによってフィルタリング処理部41によるフィルタリング処理を行う設定をするフィルタ設定部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の燃料残量を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料タンク内の燃料残量レベルを、フューエルレベルゲージ等を用いた燃料センサによって検出していた。例えば、特許文献1、2には、燃料タンク内の燃料残量を高い精度で検出するための技術が開示されている。
また、近年、車室内のスペースの拡大などのために、薄型扁平の燃料タンクが提供されている。
【0003】
しかし、薄型扁平の燃料タンクには、その問題点として、燃料消費に対する燃料残量レベルの変動が大きく、そのために、燃料残量レベルの変動に応じて燃料計の指針も大きく変動してしまい、乗員が正確な燃料残量を把握できない点がある。
これに対して、燃料計の指針の変動を抑えるために、燃料センサ値をフィルタリング処理したフィルタリング値によって燃料計の指針を動かす技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−316491号公報
【特許文献2】特開2006−23141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高速走行時等の極端に単位時間当たりの燃料消費量が多い場合、フィルタリング処理を行っていることで、燃料センサ値に対する燃料計の指針の追従が悪くなってしまうといった恐れがある。すなわち、燃料センサ値のフィルタリング値による燃料残量表示の精度が低下してしまう恐れがある。
本発明は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料センサ値のフィルタリング値による燃料残量表示の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の一態様では、燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出部と、前記燃料残量検出部の検出値である第1燃料残量値をフィルタリング処理するフィルタリング処理部と、前記フィルタリング処理部が前記第1燃料残量値をフィルタリング処理して取得した燃料残量フィルタリング値を燃料残量として表示する燃料残量表示部と、を備える燃料残量表示装置において、前記燃料タンクからエンジンに供給される燃料量を積算して燃料消費量を算出する燃料消費量算出部と、前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と前記燃料残量検出部が検出した第1燃料残量値との差分が予め設定された第1しきい値以上であり、かつ前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と前記燃料消費量算出部が算出した燃料消費量に基づいて算出した第2燃料残量値との差分が予め設定された第2しきい値以上である条件を満たすか否かを判定する条件判定部と、前記条件判定部が前記条件を満たす判定すると、前記条件を満たさないときに用いる強フィルタリングよりも追従性の高い弱フィルタリングによって前記フィルタリング処理部によるフィルタリング処理を行う設定をするフィルタリング処理設定部と、を備える燃料残量表示装置を提供できる。
【0007】
また、本発明の一態様では、前記燃料タンクへの燃料の給油が完了したか否かを判定する給油完了判定部をさらに備え、前記燃料消費量算出部は、前記給油完了判定部が燃料の給油が完了したと判定すると、燃料消費量をリセットして零にし、前記条件判定部は、前記給油完了判定部が燃料の給油が完了したと判定した時の前記燃料残量検出部が検出した第1燃料残量値又は前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と、前記燃料消費量算出部が算出した燃料消費量とに基づいて、前記第2燃料残量値を算出する。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値及び燃費に基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出部と、前記航続可能距離算出部が算出した航続可能距離を表示する航続可能距離表示部と、をさらに備え、前記航続可能距離算出部は、前記条件判定部が前記条件を満たすと判定すると、前記条件を満たさないときに用いる強フィルタリングよりも追従性の高い弱フィルタリングによりフィルタリング処理を行う前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値を用いて前記航続可能距離を算出する。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記条件判定部が前記条件を満たすと判定すると、前記条件を満たさないときの算出周期よりも短い算出周期によって前記航続可能距離算出部が航続可能距離を算出する設定を行う算出周期設定部をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料残量フィルタリング値と第1燃料残量値との差分が予め設定された第1しきい値以上であり、かつ燃料残量フィルタリング値と燃料消費量に基づいて算出した第2燃料残量値との差分が予め設定された第2しきい値以上である条件を満たす場合、単位時間当たりの燃料消費量が多いと判断して、フィルタリング処理部が追従性の高い弱フィルタリング処理により取得した燃料残量フィルタリング値によって燃料残量表示ができる。
【0011】
これにより、本発明では、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料センサ値に対してその燃料残量フィルタリング値の追従性を高くすることができる。よって、本発明では、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料残量フィルタリング値による燃料残量表示の精度を向上させることができる。
さらに、本発明では、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合とそうでない場合とでフィルタリングの強弱の設定を変えることができる。これにより、本発明では、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合の燃料残量表示の精度が確保されていることで、単位時間当たりの燃料消費量が少ないときに、より追従性の低い強フィルタリング処理を採用することができる。
【0012】
また、本発明によれば、燃料給油した際の第1燃料残量値又はその燃料残量フィルタリング値と燃料給油後の燃料消費量とに基づき第2燃料残量値を算出するため、燃料給油した際の精度が高い第1燃料残量値を基準にして第2燃料残量値を算出できる。よって、本発明では、第2燃料残量値を高い精度で算出できる。これにより、本発明では、条件判定部におけるフィルタリングの強弱の設定をするための判定を高い精度で行うことができる。
【0013】
また、本発明によれば、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料残量を高い精度で示す燃料残量フィルタリング値を用いて航続可能距離を算出するために、航続可能距離の算出精度も向上させることができる。これにより、本発明では、燃料残量表示と航続可能距離表示とを整合させることができる。
また、本発明によれば、単位時間当たりの燃料消費量が多いために航続可能距離の変化も大きい場合でも、航続可能距離の算出周期を短くすることによって、航続可能距離表示の変化を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の燃料制御・燃料残量表示装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】燃料表示コントローラによる処理例の示すフローチャートである。
【図3】燃料表示モードの例を示す図である。
【図4】本実施形態の比較例の燃料制御・燃料残量表示装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、車両に搭載された燃料制御・燃料残量表示装置である。
(構成)
図1は、燃料制御・燃料残量表示装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料センサ2、車速センサ3、エンジン回転速度検出部4、燃料噴射制御部10、及びメータ部20を有している。
【0016】
燃料センサ2は、燃料タンク5内の燃料残量を検出する。そして、燃料センサ2は、検出した燃料残量を示す燃料センサ値をメータ部20に出力する。
ここで、燃料タンク5の形状は、例えば、薄型扁平形状である。
車速センサ3は、車両の速度を検出する。そして、車速センサ3は、検出した車速センサ値をメータ部20に出力する。
【0017】
エンジン回転速度検出部4は、不図示のエンジンの回転速度を検出する。そして、エンジン回転速度検出部4は、検出したエンジン回転速度情報を燃料噴射制御部10に出力する。
燃料噴射制御部10は、噴射制御部11及び噴射量積算部12を有する。
噴射制御部11は、燃料を噴射するインジェクタ6を制御する。噴射制御部11は、制御したインジェクタ6の燃料噴射時間(又は燃料噴射量)情報を噴射量積算部12に出力する。
【0018】
噴射量積算部12は、インジェクタ6の燃料噴射量を積算する。具体的には、噴射量積算部12は、エンジン回転速度検出部4からのエンジン回転速度情報が入力されており、このエンジン回転速度情報と噴射制御部11からの燃料噴射時間情報とに基づいて、燃料噴射量の積算値を算出する。そして、噴射量積算部12は、算出した噴射量積算値をメータ部20に出力する。
【0019】
メータ部20は、表示部30及び燃料表示コントローラ40を有している。
表示部30は、燃料残量表示部31及び航続可能距離表示部32を有している。
燃料残量表示部31は、燃料表示コントローラ40に制御されて燃料タンク5内の燃料残量を表示する。また、航続可能距離表示部32は、燃料表示コントローラ40に制御されて車両の航続可能距離を表示する。
【0020】
燃料表示コントローラ40は、表示部30の表示制御を行う。そのために、例えば、燃料表示コントローラ40は、フィルタリング処理部41、フィルタ設定部42、航続可能距離算出部43、算出周期設定部44、及び表示設定判定部45を有している。
フィルタリング処理部41は、燃料センサ2からの燃料センサ値に対してフィルタリング処理(フィルタリング補正)を施して燃料残量フィルタリング値を出力する。燃料残量表示部31は、表示指示値となる燃料残量フィルタリング値に応じた燃料残量表示を行う。
【0021】
フィルタ設定部42は、フィルタリング処理部41のフィルタリング処理(フィルタリング補正)の強弱を設定する。ここで、強フィルタリング処理では追従性(入力に対する出力の追従性)が低くなり、弱フィルタリング処理では追従性が高くなる。
航続可能距離算出部43は、燃料残量に基づいて車両の航続可能距離を算出する。航続可能距離表示部32は、航続可能距離算出部43が算出した航続可能距離に応じた航続可能距離表示を行う。
【0022】
算出周期設定部44は、航続可能距離算出部43の航続可能距離の算出周期を設定する。
表示設定判定部45は、フィルタリング処理部41が出力した燃料残量フィルタリング値、燃料センサ2からの燃料センサ値、及び噴射量積算値から算出される燃料残量値に基づいて、フィルタ設定部42及び算出周期設定部44による設定のための判定を行う。
【0023】
ここで、図2は、燃料表示コントローラ40による処理例を示すフローチャートである。この図2に示す処理手順に沿って、燃料表示コントローラ40の各部の処理を説明する。
図2に示すように、先ずステップS1では、表示設定判定部45は、燃料残量フィルタリング値から燃料センサ値を減算した値が第1しきい値α以上であるか否かを判定する。そして、表示設定判定部45は、燃料残量フィルタリング値から燃料センサ値を減算した値が第1しきい値α以上であると判定すると(燃料残量フィルタリング値−燃料センサ値≧α)、ステップS2に進む。また、表示設定判定部45は、そうでない場合(燃料残量フィルタリング値−燃料センサ値<α)、ステップS5に進む。
【0024】
ここで、燃料残量フィルタリング値とは、燃料センサ2からの燃料センサ値をフィルタリング処理部41によってフィルタリング処理した値である。また、第1しきい値とは、燃料残量フィルタリング値と燃料センサ値との差分を判断するための値であり、例えば、実験的、経験的又は理論的に予め設定された値である。
続くステップS2では、表示設定判定部45は、噴射量積算値から算出される燃料残量値を燃料残量フィルタリング値から減算した値が第2しきい値β以上であるか否かを判定する。そして、表示設定判定部45は、噴射量積算値から算出される燃料残量値を燃料残量フィルタリング値から減算した値が第2しきい値β以上であると判定すると(燃料残量フィルタリング値−燃料残量値≧β)、ステップS3に進む。また、表示設定判定部45は、そうでない場合(燃料残量フィルタリング値−燃料残量値<β)、ステップS5に進む。
【0025】
ここで、噴射量積算値から算出される燃料残量値とは、例えば、噴射量積算部12からの噴射量積算値を用いて、下記(1)式によって算出される値である。
噴射量積算値から算出される燃料残量値=給油判定時の燃料残量フィルタリング値−噴射量積算値 ・・・(1)
ここで、例えば、車両停車中を検出し、かつイグニッションオン時の燃料センサ値が前回(直前)のイグニッションオフ時の燃料センサ値よりも大きい場合、給油判定時と判定する。ここで、車両停車中の検出は、車速センサ値に基づいて行う。また、噴射量積算値は、給油判定時にリセットされる(零値にされる)。
【0026】
また、前記(1)式において、給油判定時の燃料残量フィルタリング値に換えてその生値である給油判定時の燃料センサ値を用いても良い。
このような(1)式によって、燃料残量値は、給油時の燃料残量(燃料センサ値又は燃料残量フィルタリング値)を基準において算出される値となる。
また、第2しきい値βは、燃料残量フィルタリング値と燃料残量値との差分を判断するための値であり、例えば、実験的、経験的又は理論的に予め設定された値である。この第2しきい値βは、第1しきい値αと同一値としても良い。また、第1しきい値αと第2しきい値βとは、計測誤差等を考慮して別々の値にしても良い。
【0027】
ステップS3では、フィルタ設定部42は、フィルタリング処理部41に対して補正応答のフィルタリングを適用する。具体的には、フィルタ設定部42は、通常のフィルタリング処理よりも追従性の高い弱フィルタリング処理を行うようにフィルタリング処理部41に対する設定を行う。
続くステップS4では、算出周期設定部44は、通常の航続可能距離算出周期よりも短い航続可能距離算出周期となるように航続可能距離算出部43に対する設定を行う。そして、燃料表示コントローラ40は、ステップS7に進む。
【0028】
一方、ステップS5では、フィルタ設定部42は、フィルタリング処理部41に対して通常のフィルタリングを適用する。これにより、フィルタリング処理部41は、前記ステップS3で適応される補正応答のフィルタリング処理よりも追従性の低い強フィルタリング処理をする設定がなされる。
続くステップS6では、算出周期設定部44は、通常の航続可能距離算出周期となるように航続可能距離算出部43に対する設定を行う。そして、燃料表示コントローラ40は、ステップS7に進む。
【0029】
ステップS7では、フィルタリング処理部41は、前記ステップS3又はステップS5の何れかの設定に基づいて、燃料センサ2からの燃料センサ値に対してフィルタリング処理を施す。そして、フィルタリング処理部41は、このフィルタリング処理によって取得した燃料残量フィルタリング値である表示指示値を燃料残量表示部31に出力する。
これにより、燃料残量表示部31は、フィルタリング処理部41からの表示指示値(燃料残量フィルタリング値)に応じた燃料残量表示を行う。
【0030】
続くステップS8では、航続可能距離算出部43は、前記ステップS4又はステップS6の何れかで設定された算出周期によって航続可能距離を算出する。そして、航続可能距離算出部43は、算出した航続可能距離を航続可能距離表示部32に出力する。
航続可能距離表示部32は、航続可能距離算出部43からの航続可能距離に応じた航続可能距離表示を行う。
【0031】
ここで、具体的には、航続可能距離算出部43は、前記ステップS7で取得された燃料残量フィルタリング値(表示指示値)を用いて、下記(2)式によって航続可能距離を算出する。
航続可能距離=平均燃費×燃料残量フィルタリング値 ・・・(2)
ここで、平均燃費は、例えば、下記(3)式によって算出される。
平均燃費=リセット後(給油判定時の後)の積算走行距離/リセット後(給油判定時の後)の噴射量積算値 ・・・(3)
【0032】
以上の図2のように、燃料表示コントローラ40は処理を行う。
また、例えば、フィルタ設定部42は、給油開始時に追従性の高い弱フィルタリング処理をする設定を行う。
ここで、図3は、燃料表示モードの例を示す図である。
図3に示すように、燃料表示モードは、通常モードM1及び給油判定時モードM2との間で遷移する。通常モードM1は、通常時の燃料表示モードであり、給油判定時モードM2は、燃料給油時の燃料表示モードである。
【0033】
具体的には、給油判定時モードM2では、前述のように、給油開始時に追従性の高い弱フィルタリング処理をする設定を行い、そのときにフィルタリング処理部41によって取得された燃料残量フィルタリング値(表示指示値)に応じて燃料残量表示部31の燃料残量表示を行う。ここで、車速センサ値に基づいて車両が停止したと判定されたときに通常モードから給油判定時モードに遷移する。この給油判定時モードM2によって、燃料給油中の燃料残量変化を高い精度で燃料残量表示部31に表示できる。
また、前記図2に示す処理は、例えば、この通常モードM1中の処理となる。
【0034】
(動作等)
次に、燃料制御・燃料残量表示装置1の動作等の一例を説明する。
燃料制御・燃料残量表示装置1では、燃料タンク5内の燃料残量を燃料センサ2が検出する。さらに、燃料制御・燃料残量表示装置1では、燃料センサ2が検出した燃料センサ値をフィルタリング処理部41がフィルタリング処理する。そして、燃料制御・燃料残量表示装置1では、フィルタリング処理部41により取得した燃料残量フィルタリング値によって燃料残量表示部30に燃料残量表示を行う。
【0035】
また、燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料残量フィルタリング値から燃料センサ値を減算した値が第1しきい値α以上であり、かつ燃料残量フィルタリング値から燃料残量値を減算した値が第2しきい値β以上である場合には、追従性の高い弱フィルタリング処理により取得した燃料残量フィルタリング値(表示指示値)によって燃料残量表示部31に燃料残量表示を行う。さらに、この場合、燃料制御・燃料残量表示装置1は、通常よりも短い周期によって、航続可能距離を算出するとともに、その算出した航続可能距離による航続可能距離表示部32への航続可能距離表示を行う。
【0036】
さらに、燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料残量フィルタリング値から燃料センサ値を減算した値が第1しきい値α未満である場合、又は燃料残量フィルタリング値から燃料残量値を減算した値が第2しきい値β未満である場合には、通常の燃料残量表示及び通常の航続可能距離表示を行う。すなわち、燃料制御・燃料残量表示装置1は、追従性の低い強フィルタリング処理により取得した燃料残量フィルタリング値(表示指示値)によって燃料残量表示部31に燃料残量表示を行う。さらに、燃料制御・燃料残量表示装置1は、通常周期によって、航続可能距離を算出するとともに、その算出した航続可能距離による航続可能距離表示部32への航続可能距離表示を行う。
【0037】
次に、本実施形態の燃料制御・燃料残量表示装置1の構成、動作等を、本実施形態の比較例の燃料制御・燃料残量表示装置1の構成、動作等との対比で説明する。
図4は、本実施形態の比較例の燃料制御・燃料残量表示装置100の構成例を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の比較例の燃料制御・燃料残量表示装置100は、燃料センサ102、車速センサ103、及びメータ部110を有している。
【0038】
なお、ここでは、航続可能距離表示に関する対比の説明を省略するために、本実施形態の比較例の燃料制御・燃料残量表示装置100の構成から、航続可能距離表示に関連する構成を省略している。
この比較例の燃料制御・燃料残量表示装置100は、メータ部110の燃料表示コントローラ120が、本実施形態の構成とは異なり、フィルタリング処理部121だけを有している。
【0039】
このような構成の燃料制御・燃料残量表示装置100は、高速走行時等の単位時間当たりの燃料消費量が多い場合、フィルタリング処理部121によるフィルタリング処理を行うことによって、燃料センサ値(実際の燃料残量レベルと同等の値)に対する燃料残量表示の追従が悪くなってしまう。
これに対して、本実施形態の燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合、フィルタリング処理部41が追従性の高い弱フィルタリング処理によって燃料残量フィルタリング値を取得できる。
【0040】
そして、本実施形態の燃料制御・燃料残量表示装置1は、そのような燃料残量フィルタリング値を用いて燃料残量表示を行うことで、フィルタリング処理による効果を維持しつつも、燃料センサ値(実際の燃料残量レベルと同等の値)に対する燃料残量表示の追従性を高めることができる。
ここで、本実施形態では、燃料センサ2は、例えば、燃料残量検出部を構成する。また、噴射量積算部12は、例えば、燃料消費量算出部を構成する。また、表示設定判定部45は、例えば、条件判定部を構成する。また、フィルタ設定部42は、例えば、フィルタリング処理設定部を構成する。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料残量フィルタリング値と燃料センサ2が検出した燃料センサ値との差分が第1しきい値α以上であり、かつ燃料残量フィルタリング値と噴射量積算部12が算出した噴射量積算値に基づいて算出した燃料残量値との差分が第2しきい値β以上である条件を満たす場合、単位時間当たりの燃料消費量が多いと判断して、フィルタリング処理部41が追従性の高い弱フィルタリング処理により取得した燃料残量フィルタリング値によって燃料残量表示ができる。
【0042】
これにより、燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料センサ値に対してその燃料残量フィルタリング値の追従性を高くすることができ、燃料残量フィルタリング値による燃料残量表示の精度を向上させることができる。
さらに、燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合とそうでない場合とでフィルタリングの強弱の設定を変えることができる。これにより、燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合の燃料残量表示の精度が確保されていることで、単位時間当たりの燃料消費量が少ないときに、より追従性の低い強フィルタリング処理を採用することができる。
【0043】
(2)燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料給油した際の燃料センサ値又はその燃料残量フィルタリング値と燃料給油後の噴射量積算値とに基づき燃料残量値を算出するため、燃料給油した際の精度が高い燃料センサ値を基準にして燃料残量値を算出できる。よって、燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料残量値を高い精度で算出できる。
これにより、燃料制御・燃料残量表示装置1は、表示設定判定部45におけるフィルタリングの強弱の設定をするための判定を高い精度で行うことができる。
【0044】
(3)燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多い場合でも、燃料残量を高い精度で示す燃料残量フィルタリング値を用いて航続可能距離を算出するために、航続可能距離の算出精度も向上させることができる。
これにより、燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料残量表示と航続可能距離表示とを整合させることができる。
【0045】
(4)燃料制御・燃料残量表示装置1は、単位時間当たりの燃料消費量が多いために航続可能距離の変化が大きくなる場合でも、航続可能距離の算出周期を短くすることによって、航続可能距離表示の変化を小さくすることができる。
(5)燃料制御・燃料残量表示装置1は、燃料センサ値をフィルタリング処理して取得した燃料残量フィルタリング値によって燃料残量表示部30に燃料残量表示するため、従来の場合と同様に、薄型扁平の燃料タンク等を採用したための燃料残量レベルの変動やバッテリ電圧の変動等の外乱に影響されず、燃料残量表示の変動を抑えることができる。
【0046】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、燃料タンクからエンジンに供給される燃料量を積算した燃料消費量を、噴射量積算値として取得することに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、燃料タンクからエンジンに燃料を供給する燃料供給経路上に燃料流量センサを配置して、燃料流量センサのセンサ値に基づいて燃料消費量を取得することができる。
【0047】
また、本実施形態では、1つのフィルタリング処理部41の設定を変更することで強フィルタリング処理と弱フィルタリング処理とを切り換えることができるがこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、強フィルタリング処理を行う第1フィルタリング処理部と弱フィルタリング処理を行う第2フィルタリング処理部とを備えて、第1フィルタリング処理部と第2フィルタリング処理部とを切り換えるようにしても良い。
【0048】
また、本実施形態では、1つの航続可能距離算出部43の設定を変更することで算出周期を切り換えることができるがこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、算出周期の短い第1航続可能距離算出部と算出周期の長い第2航続可能距離算出部とを備えて、第1航続可能距離算出部と第2航続可能距離算出部を切り換えるようにしても良い。
【0049】
また、本実施形態の燃料制御・燃料残量表示装置1は、車両に搭載されることに限定されるものではなく、例えば、船舶等の他の燃料駆動体に搭載されても良い。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料制御・燃料残量表示装置、10 燃料噴射制御部、11 噴射制御部、12 噴射量積算部、30 表示部、31 燃料残量表示部、32 航続可能距離表示部、40 燃料表示コントローラ、41 フィルタリング処理部、42 フィルタ設定部、43 航続可能距離算出部、44 算出周期設定部、45 表示設定判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出部と、前記燃料残量検出部の検出値である第1燃料残量値をフィルタリング処理するフィルタリング処理部と、前記フィルタリング処理部が前記第1燃料残量値をフィルタリング処理して取得した燃料残量フィルタリング値を燃料残量として表示する燃料残量表示部と、を備える燃料残量表示装置において、
前記燃料タンクからエンジンに供給される燃料量を積算して燃料消費量を算出する燃料消費量算出部と、
前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と前記燃料残量検出部が検出した第1燃料残量値との差分が予め設定された第1しきい値以上であり、かつ前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と前記燃料消費量算出部が算出した燃料消費量に基づいて算出した第2燃料残量値との差分が予め設定された第2しきい値以上である条件を満たすか否かを判定する条件判定部と、
前記条件判定部が前記条件を満たす判定すると、前記条件を満たさないときに用いる強フィルタリングよりも追従性の高い弱フィルタリングによって前記フィルタリング処理部によるフィルタリング処理を行う設定をするフィルタリング処理設定部と、
を備えることを特徴とする燃料残量表示装置。
【請求項2】
前記燃料タンクへの燃料の給油が完了したか否かを判定する給油完了判定部をさらに備え、
前記燃料消費量算出部は、前記給油完了判定部が燃料の給油が完了したと判定すると、燃料消費量をリセットして零にし、
前記条件判定部は、前記給油完了判定部が燃料の給油が完了したと判定した時の前記燃料残量検出部が検出した第1燃料残量値又は前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値と、前記燃料消費量算出部が算出した燃料消費量とに基づいて、前記第2燃料残量値を算出することを特徴とする請求項1に記載の燃料残量表示装置。
【請求項3】
前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値及び燃費に基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出部と、前記航続可能距離算出部が算出した航続可能距離を表示する航続可能距離表示部と、をさらに備え、
前記航続可能距離算出部は、前記条件判定部が前記条件を満たすと判定すると、前記条件を満たさないときに用いる強フィルタリングよりも追従性の高い弱フィルタリングによりフィルタリング処理を行う前記フィルタリング処理部によって取得した燃料残量フィルタリング値を用いて前記航続可能距離を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料残量表示装置。
【請求項4】
前記条件判定部が前記条件を満たすと判定すると、前記条件を満たさないときの算出周期よりも短い算出周期によって前記航続可能距離算出部が航続可能距離を算出する設定を行う算出周期設定部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−32717(P2013−32717A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168376(P2011−168376)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】