説明

燃料油用水分除去剤

【課題】燃料油中の水分を確実に除去する。
【解決手段】
燃料油中に、鉄粉、高分子吸水材を主成分とする薬剤を保持することにより、結露により発生する水分を完全に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、結露による燃料油中の水分を完全に除去し、あわせて鉄製容器の腐食を防止する薬剤の成分に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2006−2028号公報。
【非特許文献1】増子昇著「さびのおはなし」日本規格協会、1997年3月発行増補版、50、51、61、88頁。
【非特許文献2】井上勝也著「錆をめぐる話題」裳華房、1994年11月発行62頁。
【非特許文献3】松島巌著「腐食防食の実務知識」オーム社、2002年2月発行108頁。
【非特許文献4】松島巌著「錆の本」日刊工業新聞社、2002年9月発行10頁。
【非特許文献5】「金属の百科事典」丸善、1999年9月発行470頁。
【非特許文献6】園田昇、亀岡弘編「有機工業化学」化学同人、1993年2月発行第二版208、403頁。
【非特許文献7】片柴秀昭著「日本機械学会論文集」B編64巻619号、日本機械学会、1998年3月発行、299頁。
【非特許文献8】「理科年表」丸善、1988年11月発行、439、442頁
【非特許文献9】物質・材料研究機構粒子アセンブル研究会編「粒子集積化技術の世界」工業調査会、2001年6月発行、151〜155頁。
【非特許文献10】桐生春雄監修「水性コーティング」シーエムシー出版、普及版2004年10月発行。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、結露により燃料油中に取り込まれる水分を完全に除去し、あわせて鉄製容器の腐食を防止して、装置の寿命を長くする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、燃料油中に鉄粉、高分子吸水材を主成分とする薬剤を保持することにより、結露により発生する水分の完全な除去をめざすものである。
【0005】
特許文献1によれば、改質燃料油の製造に際して、水分の除去は100度以上の加熱により行われており、結露による水分の生成、混入およびそれの除去はその課題となっていない。
【0006】
一回の結露による発生水分量は微量であるとはいえ、結露が長期間にわたって繰り返されると、発生水分量も無視できる量ではなくなり、その結果、長期にわたって鉄製容器を腐食させるものである。
【0007】
ここでまず鉄の腐食反応について考えると、鉄の腐食反応の主要因は水と酸素の二つであることが、非特許文献4の10頁に述べられている。
【0008】
この二つの主要因のうちどちらか一つが欠けても、鉄の腐食反応は進行しない。
【0009】
鉄の腐食反応式は非特許文献1によれば、61頁に次式が示されている。 Fe+1/2O(空気中)+7HO(水溶液)
=Fe(HO)+2(水溶液)+2OH-(水溶液)・・・1
【0010】
また鉄の腐食反応が成長性で止まらない原因として、非特許文献1の88頁には次式があげられている。
Fe+3/4O+1/2HO=FeOOH・・・2
8FeOOH+Fe=3Fe+4HO・・・3
3Fe+3/4O+9/2HO=9FeOOH・・・4
【0011】
すなわち、反応式3と反応式4とが循環サイクルを形成する。
【0012】
また同上箇所に副反応として次式があげられている。
Fe+1/2O+HO=Fe(OH)・・・5
3Fe(OH)+1/2O=Fe+3HO・・・6
【0013】
なお鉄錆の主成分は非特許文献1の50、51頁には、FeOOH(あるいはFe・HO)(α、β、γ形)、三種類のFeOOHとFeとの混合物、Fe(OH)(あるいはFe・3HO、これは脱水されるとFe・HO(FeOOH)となる)があげられている。
【0014】
ガソリン中の酸素溶解度は水中の約6倍であることが非特許文献3の108頁に述べられている。
【0015】
すなわち、燃料油中には鉄の腐食反応を進めるに十分な酸素量が常に存在する。
【0016】
一方、気温の変動により結露を生じると、常に水分が燃料油中に供給されることが非特許文献2の62頁に述べられている。
【0017】
すなわち、結露現象は燃料油中に常に水分をもたらす元凶である。
【0018】
通常、結露対策はそれほど真剣に行われていないため、燃料油中には常に水分が存在する。
【0019】
ひとつの対策は燃料油中に水に対する乳化剤を加えておくことにより、その水分を乳化して燃料油中にエマルジョンとして混入させ、燃料油と一緒に燃焼させることである。
【0020】
この方式では燃料油を追加するたびに、乳化剤の追加も必要となり、実際上はわずらわしくまたコストのかかる対策法である。
【0021】
以上のように、燃料油中に酸素と水分が同時に存在するのが常態であるので、鉄の腐食反応がどんどん進行する条件下にあるにもかかわらず、その防止対策が取られていないのが実状である。
【0022】
非特許文献8、439頁には、燃料油である重油、灯油、ガソリンの密度はそれぞれ、0.85〜0.90、0.80〜0.83、0.66〜0.75kg/Lであり、水のそれ(1.0kg/L)よりも小さいことが示されている。
【0023】
すなわち、結露により生じた水分は、密度差により、燃料油中では常に底に沈み、鉄製容器の壁と常に接触した状態にある。
【0024】
自然放置しておけば、適当なポリマー被膜で保護された鉄板であっても、水分がその保護皮膜層を浸透していく結果、ゆっくりと鉄の腐食反応が進行するので、腐食反応を防止できない。
【0025】
事実、数年間使用した石油ストーブの内部やガソリン携行缶の内部には鉄錆の発生が見られた。
【0026】
以上に説明したように鉄錆の生成反応は停止せず進行する性格をもつので、そのまま放置しておくといつか携行缶に穴のあく可能性がある。
【0027】
ガソリン携行缶に穴があけば、引火の危険性や火事になるおそれがあるので、その防止は緊急を要する課題である。
【0028】
石油ストーブや石油ファンヒーターにしても、内部が鉄錆生成で腐食されると、その寿命が短くなるので不経済である。
【0029】
車両用の燃料油タンクや家庭用あるいは業務用据え置き燃料油タンクあるいはガソリンスタンドの地下燃料油貯蔵タンクに関しても同様である。
【0030】
それらは常に、結露による水分発生と、その水分による鉄製容器の腐食という難問に直面している。
【0031】
すなわち、燃料油中の水分による鉄製容器の腐食防止対策は現下の緊急課題であることは誰の目にも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
「比較例1」
【0033】
非特許文献6の208頁には高分子吸水材について記述があり、スポンジなどは自重の20倍程度しか吸水能力がないのに反して、高分子吸水材は自重の百倍以上もの吸水能力を持つことが述べられている。
【0034】
同上文献403頁には、こうした高分子吸水材を保水材として用いる砂漠の緑化について述べられている。
【0035】
すなわち、こうした高分子吸水材は水を吸収する能力を持つと同時に、周囲環境の変化により、吸収した水分を再び放出する能力を持つものであって、決して吸収した水分を永久に固定するものではない。
【0036】
換言すれば高分子吸水材による水分の吸収は可逆的な物理現象であって、非可逆的な化学現象ではない。
【0037】
したがって、もしこうした高分子吸水材を燃料油中に入れて置いたとしても、初期には確かに水分を吸収し、水分の除去に有効であるようにはみえるものの、もし鉄製容器の鉄の腐食反応が一度進行し始めると、段落番号「0009」などに説明したように腐食反応が水分を要求する結果、吸収した水分を今度はその腐食反応のために徐々に放出し始める。
【0038】
結論として、高分子吸水材は単独では有効な水分除去剤とは言いがたい。
「比較例2」
【0039】
非特許文献7、299頁には、酸化カルシウムと水による水酸化カルシウム生成反応の発熱などが述べられている。
【0040】
この文献は発熱反応に注目するものであるが、酸化カルシウムは水に対する親和性が強いので、酸化カルシウムを用いた乾燥剤が実用化されている。
【0041】
この事実から明らかなように、もちろん酸化カルシウムは水分除去剤として用いることが可能である。
【0042】
しかしその反応生成物は水酸化カルシウムであり、それ自体アルカリ性の物質であるため、先に段落番号「0009」に説明したように、鉄の腐食反応ではアルカリ性の発生が必要であることから言えば、反応生成物がアルカリ性物質であることは鉄の腐食反応を有効に防止するためには好ましくない。
【0043】
更に、水酸化カルシウムは水に溶けると、弱アルカリ性を示すことが知られている。
【0044】
すなわち、除水により生成した水酸化カルシウムそれ自体が鉄の腐食反応の促進剤として作用する。
【0045】
結論として、酸化カルシウムは単独では燃料油中の水分除去剤として用いることはできない。
【0046】
以上述べたように、高分子吸水材、酸化カルシウム、いずれも、単独では燃料油中の水分除去剤として使用することはできない。
【0047】
鉄製容器の腐食反応を防止するには、反応しやすい鉄粉を前もって燃料油用鉄製容器内に入れておくことにより、防止できると期待される。
【0048】
鉄錆の発生はいわば鉄粉による水分の化学的固定である。
【0049】
これは高分子吸水材による水分の吸収が物理的かつ可逆的であることとは異質な効果である。
【0050】
すなわち、燃料油中で鉄錆を積極的に生成させることにより、結露による水分を完全に固定できる。
【0051】
鉄粉1gによる水分固定量は、もしFeOOHが段落番号「0010」の2式で生成すると考えれば、1/2HO/Fe=0.16g水/鉄粉1gである。
【0052】
またもしFeOOHが段落番号「0010」の4式でFeから生成すると考えれば、9/2HO/6Fe=0.24g水/鉄粉1gである。
【0053】
あるいは段落番号「0012」に示した副反応5式でFe(OH)を生成すると考えれば、HO/Fe=0.32g水/鉄粉1gである。
【0054】
実際には鉄粉1gによる水分固定量は0.16〜0.32gの間にあると考えられる。
【0055】
したがって用いる燃料油タンクの大きさに応じて、結露により発生する水分量を予測し、その数倍の水分量を固定するのに必要な鉄粉量を用いればよい。
【0056】
非特許文献8、442頁には飽和水蒸気の圧力と密度が与えられている。
【0057】
密度値は1000倍すると1リットル当たりの空気中に含まれる水蒸気量(水分量、g)となる。
【0058】
したがって、たとえば10℃で飽和状態にある空気が0℃まで冷却され、結露により液体水分を生じて、0℃での飽和状態に落ち着く場合を考えると、0℃、10℃の水蒸気密度はそれぞれ0.00485g/L、0.0094g/Lであるから、結露により生じる水分量は0.0094−0.00485=0.00455g/Lとなる。
【0059】
ほとんど燃料油の入っていない18L缶で考えると、0.00455g/Lx18L=0.082gとなる。
【0060】
こういう状態が12回繰り返されると、結露により生成する水分量は約1gとなる。
【0061】
ほとんど燃料油の入っていない状態はあまりないとはいえ、結露は冬季の屋外ではほとんど毎日生じる可能性のあることを考えると、厳寒期の三カ月間で考えても100日近くあるので、結露により18L缶でも数グラムの水分を生成する場合があると予測できる。
【0062】
数グラムの水分を鉄粉で固定するには鉄粉10g〜20gで十分である。
【0063】
この方式では、乳化剤の添加のように、燃料油を追加するたびにまた新たな乳化剤の追加を必要とするわけではなく、鉄粉が残存する限り、その水分除去効果は長期にわたり持続する。
【0064】
更に高分子吸水材と鉄粉を組み合わせると、まず高分子吸水材による水分の吸収が起き、徐々に鉄粉による鉄錆形成へと進むので、いわば水分に対するポンプ作用的な効果すなわち物理的ルーズな固定から化学的固定へと燃料油中の水分除去反応がスムーズに進行する。
【0065】
高分子吸水材の添加量に関しては、0.5〜5重量%の範囲が望ましい。
【0066】
高分子吸水材が0.5重量%以下では明らかにその効果が小さすぎる。
【0067】
一方、高分子吸水材が5重量%以上では過剰であり、コストアップにつながるだけである。
【0068】
例えば鉄粉9.5gと高分子吸水材0.5g(5重量%)の混合比のものについて考えてみれば、先に段落番号「0033」に述べたように、高分子吸水材は自重の百倍程度の水を吸収できるので、0.5gの高分子吸水材で約50gの水を吸収できる能力を持つことになる。
【0069】
この数字は、先に段落番号「0054」に述べた鉄粉の水分固定能力(0.16〜0.32g水/鉄粉1g)から計算した9.5gの鉄粉の水分固定能力(1.52〜3.04g水)に比較して、十分に大きい。
【0070】
高分子吸水材による水分の吸収が十分であるほど、鉄粉による水分の固定反応すなわち鉄錆の生成反応も促進される。
【0071】
また酸化カルシウムを共存させておくと、酸化カルシウムの吸水速度は高分子吸水材のそれよりも大きいので、微量の水分に対しても鋭敏に反応し、水分固定を行う。
【0072】
結露により生じた水分中には炭酸ガスも溶解している。
【0073】
炭酸ガスを溶解した水は弱酸性を示す。
【0074】
弱酸性を示す水は鉄を腐食しやすい。
【0075】
酸化カルシウムは水分と反応してまず水酸化カルシウムになるが、水酸化カルシウムはぬれた状態では炭酸ガスと反応して非常に炭酸カルシウムになりやすいので、弱酸性を示す炭酸ガスの除去剤としても有効な働きをする。
【0076】
酸化カルシウムの添加量に関しては、10重量%以下で十分である。
【0077】
生成した水酸化カルシウムは最終的には炭酸カルシウムとなって安定化するが、その中途段階では鉄粉と水分との腐食反応すなわち水分除去反応を促進させる。
【0078】
したがって、結露による発生水分と炭酸ガスを有効にスムーズに除去するためには、鉄粉、高分子吸水材、酸化カルシウムの共存が好都合である。
【0079】
なお、鉄粉を安全に取り扱う対策として、鉄粉表面に10ミクロンメートル以下の厚さの無機物あるいは有機物の薄い皮膜を形成することが望ましい。
【0080】
皮膜のない鉄粉は活性が高く、取り扱い中に危険な場合もある。
【0081】
10ミクロンメートル以下の厚さの皮膜では鉄粉の安全性こそ向上するものの、水分との反応性に関してはほとんど違いは見られない。
【0082】
非特許文献9、151〜155頁には大粒子の無機物を小粒子の別の無機物で被覆する各種方法が述べられており、ボールミル法などの機械的複合化法、流動層法および静電気を利用した湿式や乾式の方法があげられている。
【0083】
鉄粉の表面に無機物の被覆層を設ける場合には、これらの方法のどれも用いることができる。
【0084】
被覆用に好適な無機物はSiO、MgO、Alなどである。
【0085】
被覆層の厚みは、鉄粉とこれら無機物の配合比により決めることができる。
【0086】
有機物の被覆層を設ける場合には、非特許文献10に、アクリル樹脂系、アルキッド樹脂系、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの水性エマルジョンがあげられている。
【0087】
鉄粉をこれら樹脂の水性エマルジョン中に分散させた後、ろ過後、不活性ガス中で乾燥、粉砕すれば、これらの樹脂で被覆した鉄粉を製造することができる。
【0088】
被覆層の厚みは水性エマルジョン中の樹脂濃度により、決めることができる。
【0089】
水性エマルジョンを用いると、鉄粉表面の一部が酸化されて、薄い酸化物層も同時に形成される場合がある。
【0090】
鉄の酸化物層も一つの被覆層と考えることができるので、不都合な問題は生じない。
【0091】
もちろん、水性エマルジョンでなく、有機溶剤に溶解した各種樹脂溶液を用いても、樹脂被覆を水性エマルジョンの場合と同様に行うことができる。
【0092】
なお、鉄粉と高分子吸水材、酸化カルシウムの混合物を適当な圧力でプレスした状態で用いることも可能であるが、生成した鉄錆を浮動させることなく、しっかり固定するためには綿などの天然繊維あるいはポリエステルのような合成繊維と一緒に、いわば両者のサンドイッチ構造として成形することが望ましい。
【0093】
繊維層と共存させることにより、繊維層の保水効果による鉄錆生成反応の促進と同時に、生成した鉄錆の繊維層への沈着をもたらすことができるので、生成した鉄錆の浮動、移動を有効に防止でき、しっかり固定できる。
【0094】
繊維層のそうした効果は、サンドイッチ構造でなくてもよく、繊維層の中へ所定の配合比に混合された鉄粉、高分子吸水材、酸化カルシウムの混合物を分散させるような形で混入させてもよい。
【0095】
あるいはそうした繊維による直径5mm〜10mm程度の細長い袋の中に、所定の配合比に混合された鉄粉、高分子吸水材、酸化カルシウムの混合物を詰め込んでもよい。
【0096】
そうした細長い袋は一本単独の構造でもよいし、数個の袋が並列に連結された構造でもよい。
【0097】
なお、そうした水分除去剤は使用するまでは水分との接触を遮断しておく必要があるので、ポリエチレンのような適当な水分遮蔽性材料の袋内に密封しておく必要がある。
【0098】
また、燃料油タンクからの回収を考えると、そうした収納袋に回収用の紐を付けることが望ましい。
【0099】
水分除去剤の使用に際しては、密封袋の密封を破って燃料油タンク内に沈め、シーズンの終わり毎にそれを取り出し、次のシーズンの初めにまた新しい水分除去剤をタンク内に入れる。
【実施例1】
【0100】
非特許文献7の470頁に述べられている還元法によって製造された粒子径100ミクロンメートル以下の鉄粉に高分子吸水材を0.5重量%混合し、軽くプレスして厚さ0.5mmの層とし、それを厚さ0.5mmの綿繊維布の間にはさみこみ、もう一度軽くプレスして10層の成型体(鉄粉20g)とし、厚さ0.1mmのポリエチレン袋(100x100mm)に二重に密封した。ポリエチレン袋には長さ50cmの綿製の紐をとりつけた。使用に際して、ポリエチレン収納袋に切り込みを入れて、灯油用の18リットルのポリタンク内に沈めた。半年間の使用後、引き出すと、鉄錆の発生が十分にみられ、水分除去効果が確認できた。手動ポンプでくみ出す灯油には鉄錆の混入は全く見られなかった。
【実施例2】
【0101】
実施例1に述べた鉄粉に1ミクロンメートル以下の粒子径を持つシリカ(SiO)を乾式ボールミル法で厚さ10ミクロンメートル以下に被覆した鉄粉に、高分子吸水材を5重量%、また粒子径0.3mm以下の酸化カルシウム粉末を10重量%加えた混合粉末を厚さ0.2mmのポリエステル繊維の直径5mm、長さ100mmの細長い袋内に収納し、ポリエチレン袋に複数個密封した。一つのポリエチレン袋内の鉄粉の量は20gとした。灯油ポリタンク内で使用したところ、実施例1と同じ効果が得られた。
【実施例3】
【0102】
実施例1に述べた鉄粉に、アルキッド樹脂系の5%水性エマルジョンを用い、鉄粉に5ミクロンメートル程度の被覆層をもうけた。濾過後の乾燥、粉砕は窒素ガス中で行った。この鉄粉に高分子吸収材を2.5重量%、また実施例2に述べた酸化カルシウム粉末を5重量%加えた混合粉末を作成し、直径約1mmのゆるい綿糸100本をよりあわせて太い紐を作る際に、この混合粉末中にくぐらせて、混合粉末を紐の中に分散させた。鉄粉含有量20gをめどに紐の長さを調整して切断し、1本ずつを二重ポリエチレン袋内に密封した。家庭用石油給湯器の灯油タンク内に入れ、実施例1と同じ結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0103】
家庭用や業務用の燃料油タンク、一時保存容器などへの利用。
【0104】
車両用燃料タンクへの利用。
【0105】
ガソリンスタンドなどの据え付け用燃料タンクへの利用。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄粉を主成分とする燃料油用水分除去剤で、鉄粉が無被覆あるいは厚さ10ミクロンメートル以下の有機物あるいは無機物の被膜で被覆されていることを特徴とする燃料油用水分除去剤。
【請求項2】
鉄粉に対して、高分子吸水材粉末を0.5〜5重量パーセント含有することを特徴とする請求項1記載の燃料油用水分除去剤。
【請求項3】
鉄粉に対して、酸化カルシウム粉末を10重量パーセント以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料油用水分除去剤。
【請求項4】
鉄粉を含有する層と天然あるいは合成繊維層とが交互に重なるサンドイッチ構造を持つこと、あるいは天然あるいは合成繊維層内に鉄粉を主成分とする水分除去剤を分散させた構造を持つことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料油用水分除去剤。

【公開番号】特開2010−43151(P2010−43151A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206675(P2008−206675)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(597047716)
【Fターム(参考)】