説明

燃料消費量を減少させるための櫛形ポリマーの使用

本発明は、主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、モル分岐度が0.1〜10モル%の範囲内であり、繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含む、櫛形ポリマーの車両の燃料消費量を減少させるための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料消費量を減少させるための櫛形ポリマーの使用に関する。本発明は、さらに、特性が改善された櫛形ポリマーと、その製造および使用も記載している。
【0002】
車両の燃料消費量を減少させることは、さまざまな理由からますます重要になりつつある。車両自体の多くの構造改善に加え、潤滑剤、例えばエンジンオイルおよびトランスミッションオイルによって生じる攪拌損失を最小限に抑える努力も始められている。
【0003】
燃料節約型エンジンオイル配合物が、良好なVI(粘度指数)特性を特色とすることが公知である。したがって、一方では、摩耗の最小化につながる破壊されない厚い潤滑膜を得るために、高温で十分に高い粘度を生じるべきである。一方、エンジンオイルの内部摩擦を最小化することによって燃料消費量を減少させるためには、低温での非常に低い粘度が望ましい。低温で比較的低い粘度を有するが、高温で使用することができるエンジンオイルは、多くの場合、低燃費オイルと称される。
【0004】
周知のように、エンジンオイルの配合は、SAE J300規格(SAE=Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会))によって規定されている。この規格は、エンジンオイルをSAE粘度グレードxW−y(式中、x=0、5、10、15、20、35であり、y=20、30、40、50、60である)に分類する。この分類は、CCS粘度(cold cranking simulator、ASTM D5292)、温度プログラム1を用いたミニロータリー粘度計における動的粘度DVおよび降伏応力YS(MRV−TP1、ASTM D4684)、動粘度KV(ASTM D445)、ならびに高温高せん断粘度HTHS(ASTM D4683、D4741およびD5471)によってなされる。
【0005】
最近の燃料節約型エンジンオイルの配合戦略は、低い動粘度KV40、すなわち高い動粘度指数(VI)に焦点を合わせているが(神戸市における国際トライボロジー会議(ITC 2005)の議事録中のK. Hedrich,M. A. Mueller,M. Fischer:"Evaluation of Ashless, Phosphorus Free and Low Sulfur Polymeric Additives that Improve the Performance of Fuel Efficient Engine Oils"参照)、一方確立された配合戦略は、低い高温高せん断粘度HTHSθ(θ=70、80、90、または100℃)を目標としており、すなわちHTHSθは、HTHS150(SAE J300の配合における主要パラメータ)を可能な限り低く上回るべきであるとしている(Toshio Sakurai (ed.):"Additives for Petroleum−derived Products", Saiwai Shobou Press, 1986; A. K. Gangopadhyay, J. Sorab, P. A. Willermet, K. Schriewer, K. Fyfe, P. K. S Lai: "Prediction of ASTM Sequence VI and VIA Fuel Economy Based on Laboratory Bench Tests", SAE Technical Paper Series 961140;N. Nakamura: Idemitsu Technical Review 43 (2000), 24;およびT. Mang, W. Dresel (eds.): "Lubricants and Lubrication", Wiley−VCH, Weinheim 2001を参照)。上記に詳述したとおり、燃料節約のための最近の配合戦略と確立された配合戦略とは一致せず、またこれらの妥当性は明白ではない。
【0006】
同時に、エンジンオイルは、そのせん断後粘度KV100によって規定されている。ここでは、例えばBoschポンプ30サイクルによるせん断(DIN 51382)後、依然としてSAE J300のKV100領域内であることは、多くの使用者にとって完全に望ましい。
【0007】
広く普及している種類の市販の粘度指数(VI)向上剤は、水素化スチレン−ジエンコポリマー(HSD)のものである。これらのHSDは、(−B−A)n星型(US4 116 917、Shell Oil Company)の形態、ならびにA−BジブロックおよびA−B−Aトリブロックコポリマー(US3 772 196およびUS4 788 316、Shell Oil Company)の形態で存在しうる。これらの式において、Aは水素化ポリイソプレンのブロックであり、Bはジビニルベンゼン架橋ポリスチレン環またはポリスチレンのブロックである。Infineum International Ltd.(英国アビンドン)のInfineum SVシリーズは、このタイプの製品を含む。典型的な星型ポリマーは、Infineum SV 200、250、および260である。Infineum SV 150は、ジブロックポリマーである。前述の製品は、キャリアオイルまたは溶剤を含まない。特に、Infineum SV 200などの星型ポリマーは、濃化作用、粘度指数、およびせん断安定性に関して極めて有利である。
【0008】
さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)は、粘度指数(VI)を改善するためにも使用することができる。例えば、EP0 621 293およびEP0 699 694(Roehm GmbH)は、有利な櫛形ポリマーを記載している。VIのさらなる改善は、WO2007/025837(RohMax Additives)の教示により、特定のパラメータに従うことによって達成することができる。燃料消費量の改善は、これらの広報においては詳述されていない。
【0009】
エンジンオイルにおける煤煙分散(ピストン清浄性)、摩耗保護、および摩擦調整に関する有利な特性は、N−ビニル化合物(通常は、N−ビニルピロリドン)をPAMAベースポリマー上にグラフト化することによって、従来のPAMA化学作用において確立することができる(DE1 520 696(Roehm and Haas)およびWO2006/007934(RohMax Additives))。Viscoplex(登録商標)6−950はそのようなPAMAであるが、これはRohMax Additives(ドイツ国ダルムシュタット)から市販されている。
【0010】
上記に詳述した手法は、燃料消費量の減少をもたらす。しかしながら、燃料消費量をさらに改善することは依然として変わらずに望まれている。
【0011】
従来技術を考慮して、本発明の目的は、燃料消費量の減少をもたらす添加剤を提供することであった。この燃料消費量の減少は、さまざまな走行挙動を広く考慮した種々の試験方法において達成されるべきである。したがって、添加剤は、非常に低い動粘度KV40を有し、また低い高温高せん断粘度HTHSθ(式中、θ=70、80、90、または100℃)を有する(すなわち、HTHSθは、HTHS150を可能な限り低く上回るべきである)燃料油をもたらすべきである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、市販の成分を特に使用すべきであり、単純かつ費用のかからない形で製造することができる添加剤を提供することである。同時に、それらは、この目的で新規の工場設備または複雑な構造の工場設備が必要とされることなく、工業規模で生産可能であるべきである。
【0013】
これらの目的、および明確に述べられていないが、本明細書において前置きとして記載されている関連から即座に誘導または認識することができるさらなる目的は、請求項1の全ての特長を有する櫛形ポリマーの使用によって達成される。特に有利な解決法は、請求項3において詳述されている櫛形ポリマーによって提供される。本発明の櫛形ポリマーへの適当な変更は、請求項3を引用する下位請求項において保護されている。櫛形ポリマーを製造するための方法に関しては、請求項21が、根本的な基礎となる課題の解決法を提供し、請求項22が、本発明の櫛形ポリマーを含む潤滑油組成物を保護している。
【0014】
本発明は、したがって、主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、モル分岐度が0.1〜10モル%の範囲内であり、繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含む、櫛形ポリマーの車両の燃料消費量を減少させるための使用を提供する。
【0015】
本発明によって提供される特定の櫛型ポリマーによって、驚くべきことに、特定の利点を得ることができる。したがって本発明は、主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、この櫛形ポリマーは、繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、この櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8〜30質量%を有することと、この櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%〜1.1%の範囲内であることを特徴とする、櫛形ポリマーをさらに提供する。
【0016】
結果として、予測しえない形で、自動車の燃料消費量減少をもたらす潤滑油用添加剤を提供することが可能である。この燃料消費量の減少は、さまざまな走行モード、すなわち多種多様な要件で達成することができる。それにより、潤滑油中の添加剤は、低い動粘度KV40、および低い高温高せん断粘度HTHSθ(式中、θ=70、80、90、または100℃)すなわち、HTHS150よりもわずかに高いHTHSθをもたらす。
【0017】
さらに、本発明の櫛形ポリマーは、特に有益な特性プロファイルを示す。例えば、本発明の櫛形ポリマーは、驚くほどせん断安定性を有し、それにより潤滑剤は非常に長い寿命を有する。さらに、本櫛形ポリマーは、多くの添加剤と適合する。その結果、潤滑剤を多種多様な要件に適応させることができる。例えば、本櫛形ポリマーを含む、優れた低温特性を備える潤滑剤を製造することが可能である。
【0018】
さらに、本発明の櫛形ポリマーは、単純かつ費用のかからない形で製造することができ、特に市販の成分を使用することができる。さらに、本発明の櫛形ポリマーは、新規の工場設備または複雑な構造の工場設備を必要とせずに、工業規模で製造することができる。
【0019】
本明細書において使用する「櫛形ポリマー」という用語は自体公知であり、比較的長い側鎖が、ポリマー主鎖(しばしばバックボーンとしても知られる)に結合していることを意味する。この場合には、本発明のポリマーは、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する少なくとも1つの繰り返し単位を有する。正確な比率は、モル分岐度により明らかである。「主鎖」という用語は、必ずしも主鎖の鎖長が側鎖の鎖長よりも長いことを意味するものではない。そうではなく、この用語は、この鎖の組成に関連する。側鎖は、非常に高い比率のオレフィンの繰り返し単位、特にアルケンまたはアルカジエン、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレンに由来する単位を有するが、主鎖は、上記に詳述した極性不飽和モノマーを比較的大きい比率で含む。
【0020】
「繰り返し単位」という用語は、当該技術分野において周知である。本櫛形ポリマーは、好ましくは、マクロモノマーと低分子モノマーとのフリーラジカル重合によって得ることができる。この反応では、二重結合が開いて、共有結合を形成する。その結果、使用したモノマーから繰り返し単位が生じる。しかしながら、本櫛形ポリマーは、ポリマー類似反応および/またはグラフト共重合によって得ることもできる。この場合、変換された主鎖の繰り返し単位は、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位とみなされる。同じことが、グラフト共重合による本発明の櫛形ポリマーの製造の場合にも当てはまる。
【0021】
本発明は、好ましくは高い油溶性を有する櫛形ポリマーを記載している。「油溶性の」という用語は、本発明の櫛形ポリマーを少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%有する、ベースオイルと本発明の櫛形ポリマーとの混合物が、肉眼で見える相形成を伴わずに製造可能であることを意味する。櫛形ポリマーは、この混合物中に、分散および/または溶解した形で存在しうる。油溶性は、特に親油性側鎖の比率とベースオイルとに依存する。この特性は当業者に公知であり、親油性モノマーの比率によって、個々のベースオイルに容易に適応させることができる。
【0022】
本発明の櫛形ポリマーは、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位を含む。ポリオレフィンベースのマクロモノマーは、当該技術分野において公知である。これらの繰り返し単位は、ポリオレフィンに由来する少なくとも1つの基を含む。ポリオレフィンは当該技術分野において公知であり、炭素および水素の元素からなるアルケンおよび/またはアルカジエン、例えばC2〜C10−アルケン、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ノルボルネンなど、および/またはC4〜C10−アルカジエン、例えばブタジエン、イソプレン、ノルボルナジエンなどを重合することによって得ることができる。ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、アルケンおよび/またはアルカジエンに由来する基を、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%含む。ポリオレフィン基は、特に、水素化された形でも存在しうる。アルケンおよび/またはアルカジエンに由来する基に加え、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、さらなる基を含みうる。これらには、小さい比率の共重合可能なモノマーが含まれる。これらのモノマーは自体公知であり、モノマーの中でも特に、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、フマレート、マレエート、ビニルエステル、および/またはビニルエーテルを含む。共重合可能なモノマーに基づくこれらの基の比率は、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して、好ましくは最大で30質量%、より好ましくは最大で15質量%である。さらに、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、官能化に役立つか、あるいはポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の製造によって生じる、出発基および/または末端基を含んでもよい。これらの出発基および/または末端基の比率は、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して、好ましくは最大で30質量%、より好ましくは最大で15質量%である。
【0023】
ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の数平均分子量は、好ましくは500〜50000g/モルの範囲、より好ましくは700〜10000g/モルの範囲、特に1500〜4900g/モルの範囲、最も好ましくは2000〜3000g/モルの範囲である。
【0024】
低分子モノマーと高分子モノマーとの共重合による櫛形ポリマーの製造の場合、これらの値は、高分子モノマーの特性によって生じる。ポリマー類似反応の場合、この特性は、例えば、主鎖の変換された繰り返し単位を考慮して、使用されるマクロアルコールおよび/またはマクロアミンから生じる。グラフト共重合の場合、主鎖に組み込まれていない、形成されたポリオレフィンの比率を用いて、ポリオレフィンの分子量分布を推断することができる。
【0025】
ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、好ましくは低融点を有する(DSCを用いて測定する)。ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点は、好ましくは−10℃以下、特に好ましくは−20℃以下、より好ましくは−40℃以下である。最も好ましくは、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位のDSC融点は測定できない。
【0026】
ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位に加え、本発明の櫛形ポリマーは、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位を含む。これらのモノマーは、当該技術分野において周知である。
【0027】
「低分子の」という表現は、櫛形ポリマーのバックボーンの繰り返し単位のうちのいくつかが、低分子量を有することを明確に示している。製造によっては、この分子量は、ポリマーを製造するために使用するモノマーの分子量に起因しうる。低分子繰り返し単位または低分子モノマーの分子量は、好ましくは最大で400g/モル、より好ましくは最大で200g/モル、最も好ましくは最大で150g/モルである。
【0028】
8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマーの例には、スチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレンおよびa−エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、およびテトラブロモスチレンがある。
【0029】
「(メタ)アクリレート」という表現は、アクリレートおよびメタクリレート、ならびにアクリレートとメタクリレートとの混合物を包含する。アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートには、特に、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルヘプチ(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えば2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0030】
好適なアルキル(メタ)アクリレートは、アルコール基中に1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。ここでのアルコール基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0031】
アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステルの例には、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルが含まれる。好適なビニルエステルは、アシル基中に2〜9個、より好ましくは2〜5個の炭素原子を含む。ここでのアシル基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0032】
アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテルには、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルが含まれる。好適なビニルエーテルは、アルコール基中に1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。ここでのアルコール基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0033】
「(ジ)エステル」という表記は、特にフマル酸および/またはマレイン酸のモノエステル、ジエステル、およびエステルの混合物を使用することができることを意味する。アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレートには、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジペンチル、およびフマル酸ジヘキシルが含まれる。好適な(ジ)アルキルフマレートは、アルコール基中に1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。ここでのアルコール基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0034】
アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエートには、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸メチルエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチルが含まれる。好適な(ジ)アルキルマレエートは、アルコール基中に1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。ここでのアルコール基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0035】
上記に詳述した繰り返し単位に加え、本発明の櫛形ポリマーは、さらなるコモノマーに由来するさらなる繰り返し単位を含むことができるが、それらの比率は、繰り返し単位の質量に対して、最大で20質量%、好ましくは最大で10質量%、より好ましくは最大で5質量%である。
【0036】
またこれらは、アルコール基中に11〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、特にウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、および/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位も含む。
【0037】
またこれらは、例として下記に挙げるような、分散性の酸素および窒素官能化モノマーに由来する繰り返し単位も含む。
【0038】
これらには、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートなどに由来する繰り返し単位を含む。
【0039】
これらには、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどに由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
これらには、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートなどに由来する繰り返し単位を含む。
【0041】
これらには、複素環(メタ)アクリレート、例えば、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンなどに由来する繰り返し単位を含む。
【0042】
これらには、複素環ビニル化合物、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2、3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニル−ピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール、および水素化ビニルオキサゾールに由来する繰り返し単位を含む。
【0043】
前述のエチレン性不飽和モノマーは、独立して、あるいは混合物として使用することができる。定義された構造体、例えばブロックコポリマーを得るために、主鎖の重合時にモノマー組成を変更することもさらに可能である。
【0044】
本発明によると、櫛形ポリマーは、0.1〜10モル%、好ましくは0.3〜6モル%の範囲内のモル分岐度を有する。分岐度が0.3〜1.1モル%、好ましくは0.4〜1.0モル%、より好ましくは0.4〜0.6モル%の範囲内である櫛形ポリマーによって、特別な利点が達成される。櫛形ポリマーのモル分岐度fbranchは、式
【数1】

[式中、
A=ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の種類の数であり、
B=8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位の種類の数であり、
a=櫛形ポリマー分子中のa型のポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の数であり、
b=櫛形ポリマー分子中のb型の8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位の数である]
によって計算される。
【0045】
モル分岐度は、一般的に、櫛形ポリマーを低分子モノマーと高分子モノマーとの共重合によって製造した場合、使用するモノマーの割合から生じる。この計算には、マクロモノマーの数平均分子量を使用することができる。
【0046】
本発明の特定の態様において、櫛形ポリマー、特に櫛形ポリマーの主鎖は、−60〜110℃の範囲内、好ましくは−30〜100℃の範囲内、より好ましくは0〜90℃の範囲内、最も好ましくは20〜80℃の範囲内のガラス転移温度を有してもよい。ガラス転移温度は、DSCによって測定する。ガラス転移温度は、主鎖中の繰り返し単位の比率を考慮して、相当するホモポリマーのガラス転移温度によって推定することができる。
【0047】
櫛形ポリマーをポリマー類似反応またはグラフト共重合によって得た場合、モル分岐度は、変換率を測定するための公知の方法によって求められる。
【0048】
少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%の、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択されるモノマーに由来する低分子繰り返し単位と、オレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の比率は、繰り返し単位の質量に基づく。これらの繰り返し単位に加え、ポリマーは、一般的に、開始反応および停止反応によって形成しうる出発基および末端基も含む。本発明の特定の態様において、少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%の、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択されモノマーに由来する低分子繰り返し単位と、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位という記述は、櫛形ポリマーの総質量に基づく。櫛形ポリマーは、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位を、繰り返し単位の総質量に対して、好ましくは8〜30質量%、より好ましくは10〜26質量%有する。櫛形ポリマーの多分散性は、当業者には明らかである。したがってこれらのデータは、全ての櫛形ポリマーの平均値に基づく。
【0049】
特に興味深い櫛形ポリマーには、質量平均分子量Mwの範囲が好ましくは500000〜1000000g/モル、より好ましくは100000〜500000g/モル、最も好ましくは150000〜450000g/モルのものが含まれる。
【0050】
数平均分子量Mnは、好ましくは20000〜800000g/モル、より好ましくは40000〜200000g/モル、最も好ましくは50000〜150000g/モルの範囲内であってよい。
【0051】
この目的に適当なさらなる櫛形ポリマーは、多分散性指数Mw/Mnが、1〜5の範囲内、より好ましくは2.5〜4.5の範囲内のものである。数平均分子量および質量平均分子量は、公知の方法、例えばゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0052】
本発明の特定の態様において、櫛形ポリマーは、特に分散性モノマーとグラフト化することによって改質することができる。分散性モノマーとは、具体的には、それによって粒子、特に煤煙粒子を溶液中に保つことができる官能基を有するモノマーを意味すると理解される。これらには、特に、酸素および窒素官能化モノマー、特に複素環ビニル化合物に由来する上記に記載したモノマーが含まれる。
【0053】
本実施形態によって、とりわけ、煤煙蓄積、ピストン清浄性、および摩耗保護に関して有利な特性を達成することが可能である。
【0054】
本発明の櫛形ポリマーは、種々の方法で製造することができる。好適な方法は、自体公知の低分子モノマーと高分子モノマーとのフリーラジカル共重合にある。
【0055】
例えば、これらのポリマーは、特にフリーラジカル重合、ならびに制御されたフリーラジカル重合のための関連する方法、例えばATRP(=Atom Transfer Radical Polymerization(原子移動ラジカル重合))またはRAFT(=Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer(可逆的付加開裂連鎖移動重合))によって生じることができる。
【0056】
通例のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmanns′s Encylopedia of Industrial Chemistry第6版において説明されている。一般的に、重合開始剤および連鎖移動剤がこの目的で使用される。
【0057】
使用可能な開始剤には、当該技術分野において周知のアゾ開始剤、例えばAIBNおよび1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えば過酸化メチルエチルケトン、過酸化アセチルアセトン、過酸化ジラウリル、過2−エチルヘキサン酸tert−ブチル、過酸化ケトン、過オクチル酸tert−ブチル、過酸化メチルイソブチルケトン、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジベンゾイル、ペルオキシ安息香酸tert−ブチル、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ペルオキシ2−エチルヘキサン酸tert−ブチル、ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサン酸tert−ブチル、過酸化ジクミル、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、前述の化合物のうちの2つ以上の互いとの混合物、ならびに前述の化合物と言及していない同様にフリーラジカルを形成することができる化合物との混合物などが含まれる。適切な連鎖移動剤は、特に油溶性メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタンまたは2−メルカプトエタノール、あるいはテルペン群の連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。
【0058】
ATRP方法は、自体公知である。機序の説明を制限すべきものではないが、これは「リビング」フリーラジカル重合であると仮定される。これらの方法において、遷移金属化合物を移動可能な原子団を有する化合物と反応させる。これにより移動可能な原子団が遷移金属化合物に移動し、金属が酸化される。この反応は、エチレン基を増加させるラジカルを形成する。しかしながら、原子団の遷移金属化合物への移動は可逆的であるため、この原子団を移動して成長ポリマー鎖に戻すことができ、これにより制御された重合系が形成される。相応して、ポリマーの構造、分子量、および分子量分布を制御することができる。
【0059】
この反応は、例えば、J−S. Wang,et al.,J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614−5615 (1995)、Matyjaszewski,Macromolecules, vol. 28, p. 7901−7910 (1995)に記載されている。さらに、WO96/30421、WO97/47661、WO97/18247、WO98/40415、およびWO9/10387号の特許出願は、上記ATRPの変形形態を開示している。
【0060】
さらに、本発明のポリマーは、例えばRAFT法によっても得ることができる。この方法は、例えば、明らかに開示の目的で参照する、WO98/01478およびWO2004/083169において詳細に記載されている。
【0061】
重合は、標準圧、減圧、または高圧で実施することができる。重合温度も重要ではない。しかしながら、これは通常は、−20〜200℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜130℃の範囲内である。
【0062】
重合は、溶剤を用いて実施しても、溶剤を用いずに実施してもよい。本明細書における溶剤という用語は、広義に理解されるべきである。溶剤は、使用するモノマーの極性によって選択するが、100Nオイル、比較的軽質のガスオイル、および/または芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレンの使用が好ましい。
【0063】
フリーラジカル共重合において本発明の櫛形ポリマーを製造するために使用する低分子モノマーは、一般に市販されている。
【0064】
本発明によって使用可能なマクロモノマーは、ちょうど1つの二重結合を有し、これは好ましくは末端二重結合である。
【0065】
二重結合は、マクロモノマーの製造の結果として存在しうる。例えば、イソブチレンのカチオン性重合は、末端二重結合を有するポリイソブチレン(PIB)を形成する。
【0066】
さらに、官能化されたポリオレフィン基は、適切な反応によって、マクロモノマーに変換することができる。
【0067】
例えば、ポリオレフィンに基づくマクロアルコールおよび/またはマクロアミンには、少なくとも1つの不飽和エステル基を有する低分子モノマー、例えばメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートとのエステル交換またはアミノリシスを行なってもよい。
【0068】
このエステル交換は周知である。例えば、不均一触媒系、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)、またはナトリウムメトキシド(NaOMe)など、あるいは均一触媒系、例えばチタン酸イソプロピル(Ti(OiPr)4)またはジオクチルスズオキサイド(Sn(Oct)2O)などをこの目的で使用することができる。反応は平衡反応である。遊離した低分子アルコールは、したがって、例えば蒸留によって、典型的には除去される。
【0069】
さらに、これらのマクロモノマーは、例えば、好ましくはp−トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸による酸性触媒反応を用いて、メタクリル酸またはメタクリル酸無水物から出発して、あるいはDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により遊離メタクリル酸から出発して、直接エステル化または直接アミド化によって得ることができる。
【0070】
さらに、本アルコールまたはアミドは、酸塩化物、例えば塩化(メタ)アクリロイルなどとの反応によって、マクロモノマーに変換することができる。
【0071】
さらに、カチオン重合されたPIB中に形成する末端PIB二重結合の無水マレイン酸との反応(エン反応)、およびα,ω−アミノアルコールとの後続反応によって、マクロアルコールを製造することも可能である。
【0072】
さらに、適切なマクロモノマーは、末端PIB二重結合をメタクリル酸と反応させることによって、あるいはスチレンへのPIB二重結合のフリーデル・クラフツアルキル化によって得ることができる。
【0073】
上記に詳述したマクロモノマーの製造において、重合阻害剤、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル基、またはハイドロキノンモノメチルエーテルの使用が好ましい。
【0074】
ポリオレフィンに基づく、上記に詳述した反応に使用するマクロアルコールおよび/またはマクロアミンは、公知の手段で製造することができる。さらに、これらのマクロアルコールおよび/またはマクロアミンのうちのいくつかは市販されている。
【0075】
市販のマクロアミンには、例えば、Kerocom(登録商標)PIBA 03がある。Kerocom(登録商標)PIBA 03は、約75質量%程度までNH2官能化された、Mn=1000g/モルのポリイソブチレン(PIB)であり、脂肪族炭化水素中の約65質量%の濃縮物として、BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)により提供される。
【0076】
さらなる製品は、Kraton Liquid(登録商標)L−1203であり、これは約98質量%程度までOH官能化された水素化ポリブタジエンであり(オレフィンコポリマーOCPとしても公知である)、Mn=4200g/モルの1,2繰り返し単位と1,4繰り返し単位とをそれぞれ約50%有する、Kraton Polymers GmbH(ドイツ国エッシュボルン)の製品である。
【0077】
水素化ポリブタジエンに基づく適切なマクロアルコールのさらなる供給元は、Total(フランス国パリ)の子会社であるCray Valley(フランス国パリ)、およびSartomer Company(米国ペンシルベニア州エクストン)である。
【0078】
マクロアミンの製造は、例えば、EP0 244 616(BASF AG)に記載されている。マクロアミンは、好ましくはポリイソブチレンのヒドロホルミル化およびアミノ化によって製造される。ポリイソブチレンは、低温で結晶化を示さないという利点を有する。
【0079】
有利なマクロアルコールは、BASF AGの公知の特許に従い、高い比率の末端α−二重結合を含有する、高反応性ポリイソブチレンHR−PIB(EP0 628 575)のヒドロホウ素化(WO2004/067583)によって、あるいはヒドロホルミル化とその後の水素化(EP0 277 345)によってもさらに製造することができる。ヒドロホルミル化および水素化と比較して、ヒドロホウ素化は、より高いアルコール官能度が得られる。
【0080】
水素化ポリブタジエンに基づく好適なマクロアルコールは、GB2270317(Shell International Research Maatschappij)に従って得ることができる。約60%以上の高い比率の1,2繰り返し単位は、実質的により低い結晶化温度をもたらしうる。
【0081】
上記に詳述したマクロモノマーのうちのいくつかは市販されている。これには例えば、Kraton Polymers GmbH (ドイツ国エッシュボルン)から市販される、Kraton Liquid(登録商標)L−1253があるが、これはKraton Liquid(登録商標)L−1203から製造され、約96質量%程度までメタクリレート官能化され、1,2繰り返し単位と1,4繰り返し単位とをそれぞれ約50%有する水素化ポリブタジエンである。
【0082】
Kraton(登録商標)L−1253は、GB2270317(Shell International Research Matschappij)に従って合成された。
【0083】
ポリオレフィンに基づくマクロモノマーおよびそれらの製造は、EP0 621 293およびEP0 699 694にも詳述されている。
【0084】
上記に詳述したマクロモノマーと低分子モノマーとのフリーラジカル共重合に加え、本発明の櫛形ポリマーは、ポリマー類似反応によっても得ることができる。
【0085】
これらの反応では、ポリマーをまず低分子モノマーから公知の手段で製造し、そのあと変換する。この場合、櫛形ポリマーのバックボーンは、反応性モノマー、例えば無水マレイン酸、メタクリル酸、あるいはグリシジルメタクリレートおよびその他の非反応性短鎖バックボーンモノマーから合成することができる。この場合、上記に詳述した開始剤系、例えば過安息香酸t−ブチルまたは過2−エチルヘキサン酸t−ブチルなど、および調節剤、例えばn−ドデシルメルカプタンなどは有用であろう。
【0086】
さらなるステップ、例えばアルコーリシスまたはアミノリシスにおいて、枝とも称される側鎖を生じることができる。この反応において、上記に詳述したマクロアルコールおよび/またはマクロアミンを使用することができる。
【0087】
最初に形成されたバックボーンポリマーとマクロアルコールおよび/またはマクロアミンとの反応は、マクロアルコールおよび/またはマクロアミンと低分子化合物との上記に詳述した反応に本質的に相当する。
【0088】
例えば、マクロアルコールおよび/またはマクロアミンは、例えば、エステル、アミド、またはイミドを得るためのp−トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸による触媒反応を用いた、例えば、バックボーンポリマー中の本無水マレイン酸またはメタクリル酸官能基への自体公知のグラフト化反応において、本発明の櫛形ポリマーに変換することができる。低分子アルコールおよび/またはアミン、例えばn−ブタノールまたはN−(3−アミノプロピル)モルホリンなどの付加は、特に無水マレイン酸バックボーンの場合に、このポリマー類似反応が行なわれて、変換を完了するのを可能にする。
【0089】
バックボーン中にグリシジル官能基がある場合、マクロアルコールおよび/またはマクロアミンの付加を実施して、櫛形ポリマーを形成することができる。
【0090】
さらに、マクロアルコールおよび/またはマクロアミンは、短鎖エステル官能基を含有するバックボーンとのポリマー類似アルコーリシスまたはアミノリシスによって変換して、櫛形ポリマーを生じることができる。
【0091】
バックボーンポリマーと高分子化合物との反応に加え、低分子モノマーとさらなる低分子モノマーを反応させて櫛形ポリマーを形成することによって得られた適切に官能化されたポリマーを反応させることができる。この場合、最初に製造したバックボーンポリマーは、多重グラフト重合の開始剤としての機能を果たす、複数の官能基を有する。
【0092】
例えば、i−ブテンの多重カチオン性重合を開始することができ、これはポリオレフィン側鎖を有する櫛形ポリマーをもたらす。かかるグラフト共重合に適した方法には、定義された構造を有する櫛形ポリマーを得るための上記に詳述したATRPおよび/またはRAFT方法もある。
【0093】
本発明の特定の態様において、本発明の櫛形ポリマーは、低い比率のオレフィン二重結合を有する。ヨウ素価は、好ましくは、櫛形ポリマー1g当り0.2g以下、より好ましくは櫛形ポリマー1g当り0.1g以下である。この比率は、180℃の減圧下で24時間キャリアオイルと低分子残留モノマーを除去したあと、DIN 53241に従って測定することができる。
【0094】
適切には、櫛形ポリマーは、n−ブチルメタクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位を有してもよい。特に有利には、n−ブチルメタクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位の比率は、繰り返し単位の総質量に対して、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%であってもよい。
【0095】
本発明の好適な変形例では、櫛形ポリマーは、スチレンに由来する繰り返し単位を有してもよい。スチレンに由来する繰り返し単位の比率は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%の範囲内である。
【0096】
驚くべき利点は、特にアルキル基中に11〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位を有する櫛形ポリマーによって示される。適切には、アルキル基中に11〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位の比率は、0.1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲内である。
【0097】
本発明の特定の態様において、櫛形ポリマーは、好ましくは、スチレンに由来する繰り返し単位と、n−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位とを有する。スチレン繰り返し単位とn−ブチルメタクリレート繰り返し単位との質量比は、好ましくは1:1〜1:9、より好ましくは1:2〜1:8の範囲内である。
【0098】
本発明のさらなる好適な実施形態において、櫛形ポリマーは、好ましくは、スチレンに由来する繰り返し単位とn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位とを有する。スチレン繰り返し単位とn−ブチルアクリレート繰り返し単位との質量比は、好ましくは1:1〜1:9、より好ましくは1:2〜1:8の範囲内である。
【0099】
本発明のさらなる好適な特長において、櫛形ポリマーは、好ましくは、メチルメタクリレートに由来する繰り返し単位と、n−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位とを有する。メチルメタクリレート繰り返し単位とn−ブチルメタクリレート繰り返し単位との質量比は、好ましくは1:1〜0:100、より好ましくは3:7〜0:100の範囲内である。
【0100】
本発明の櫛形ポリマーは、好ましくは、潤滑油組成物中に使用することができる。潤滑油組成物は、少なくとも1つの潤滑油を含む。潤滑油には、特に鉱物油、合成油、および天然油が含まれる。
【0101】
鉱物油は自体公知であり、市販されている。それらは、一般に、鉱物油または原油から、蒸留および/または精製、ならびに場合によってはさらなる純化および仕上げの方法によって得られる。鉱物油という用語には、具体的には、原油または鉱物油の高沸点留分が含まれる。一般的に、鉱物油の沸点は、5000Paで200℃を上回り、好ましくは300℃を上回る。シェール油の低温乾留、瀝青炭のコークス化、空気を排除した褐炭の蒸留、および瀝青炭もしくは褐炭の水素化による製造も同様に可能である。したがって、鉱物油は、その起源によって、異なる比率の芳香族、環状、分岐、および直鎖の炭化水素を有する。
【0102】
一般的に、原油または鉱物油中のパラフィン系留分、ナフテン留分、および芳香族留分は区別される。ここでパラフィン系留分という用語は、比較的長鎖のまたは高度に分岐したイソアルカンを表わし、ナフテン留分は、シクロアルカンを表わす。さらに、鉱物油は、その起源および仕上げによって、異なる割合のn−アルカンと、モノメチル分岐パラフィンとして知られる分岐度の低いイソアルカンと、一定の極性特性の起源であると考えられる、ヘテロ原子、特にO、N、および/またはSを有する化合物とを有する。しかしながら、個々のアルカン分子は長鎖の分岐基とシクロアルカン基との双方、および芳香族部分を有しうることから、この指定は困難である。本発明の目的で、例えばDIN 51 378によって指定を行なうことができる。極性留分は、ASTM D 2007によって判定することもできる。
【0103】
好適な鉱物油中のn−アルカンの比率は3質量%未満、O、N、および/またはS含有化合物の割合は6質量%未満である。芳香族化合物およびモノメチル分岐パラフィンの割合は、一般にそれぞれ0〜40質量%の範囲内である。興味深い一態様において、鉱物油は、一般に13個を上回る、好ましくは18個を上回る、また最も好ましくは20個を上回る炭素原子を有する、ナフテン系アルカンおよびパラフィン系アルカンを主に含む。これらの化合物の割合は、一般に≧60質量%、好ましくは≧80質量%であるが、これに限定されない。好適な鉱物油は、それぞれ鉱物油の総質量に対して、芳香族留分0.5〜30質量%、ナフテン留分15〜40質量%、パラフィン系留分35〜80質量%、n−アルカン3質量%まで、および極性化合物0.05〜5質量%を含有する。
【0104】
従来の方法、例えば尿素分離、およびシリカゲル上の液体クロマトグラフィーなどによって実施する、特に好適な鉱物油の分析は、例えば以下の成分を示す(パーセンテージは、使用した個々の鉱物油の総質量に対する):
およそ18〜31個の炭素原子を有するn−アルカン:
0.7〜1.0%、
18〜31個の炭素原子を有するわずかに分岐したアルカン:
1.0〜8.0%、
14〜32個の炭素原子を有する芳香族化合物:
0.4〜10.7%、
20〜32個の炭素原子を有するイソアルカンおよびシクロアルカン:
60.7〜82.4%、
極性化合物:
0.1〜0.8%、
損失:
6.9〜19.4%。
【0105】
改善された鉱物油群(低下した硫黄含有量、低下した窒素含有量、より高い粘度指数、より低い流動点)は、鉱物油の水素処置(水素化異性化、水素化分解、水素化処理、水素化仕上げ)によりもたらされる。これは、水素の存在下、本質的に芳香族成分を減少させ、ナフテン成分を増加させる。
【0106】
鉱物油分析に関する貴重な情報、およびさまざまな組成を有する鉱物油のリストは、例えばUllmann′s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition on CD−ROM,1997の"lubricants and related products"に記載されている。
【0107】
合成油には、有機エステル、例えばジエステルおよびポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、特にポリオレフィンが含まれるが、中でもポリアルファオレフィン(PAO)、シリコン油、およびペルフルオロアルキルエーテルが好ましい。さらに、ガス・トゥー・リキッド(GTL)、コール・トゥー・リキッド(CTL)、またはバイオマス・トゥー・リキッド(BTL)方法に由来する合成ベースオイルを使用することも可能である。これらは通常は鉱物油よりもやや高価であるが、その性能に関して利点を有する。
【0108】
天然油は、動物性油または植物性油であり、例えば牛脚油またはホホバ油がある。
【0109】
潤滑油配合物用のベースオイルは、API(American Petroleum Institute(米国石油協会))により、いくつかの群に分類される。鉱物油は、I群(水素処理されていない)、ならびに飽和度、硫黄含有量、および粘度指数によってIII群およびIII群(どちらも水素処理されている)に分類される。PAOは、IV群に相当する。その他全てのベースオイルは、V群に含まれる。
【0110】
これらの潤滑油は、混合物としても使用することができ、多くの場合、市販されている。
【0111】
潤滑油組成物中の櫛形ポリマーの濃度は、組成物の総質量に対して、好ましくは0.1〜40質量%の範囲内、より好ましくは0.2〜20質量%の範囲内、最も好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。
【0112】
前述の成分に加え、潤滑油組成物は、さらなる添加剤を含んでもよい。好適な添加剤は、特に、アルコール基中に1〜30個の炭素原子を有する直鎖ポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)に基づく。これらの添加剤には、DI添加剤(分散剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、抗酸化剤、摩耗保護および極圧添加剤、摩擦調整剤)、流動点向上剤(より好ましくは、アルコール基中に1〜30個の炭素原子を有するポリアルキル(メタ)アクリレートに基づく)、および/または色素が含まれる。
【0113】
さらに、本明細書に詳述する潤滑油組成物は、本発明の櫛形ポリマーと同様に、従来のVI向上剤との混合物に存在してもよい。これには、特に水素化スチレン−ジエンコポリマー(HSD、US4 116 917、US3 772 196、およびUS4 788 316(Shell Oil Company))、とりわけブタジエンおよびイソプレンに基づくもの、およびオレフィンコポリマー(OCP、K. Marsden: "Literature Review of OCP Viscosity Modifiers", Lubrication Science 1 (1988), 265)、とりわけポリ(エチレン−コ−プロピレン)型のもの(分散作用を有するN/O官能性形態で存在することもしばしばある)、または分散剤、摩耗保護添加剤、および/または摩擦調整剤としての有利な添加剤特性(促進剤)を有するN官能性形態で通常は存在するPAMA(DE1 520 696(Roehm and Haas)、WO2006/007934(RohMax Additives))が含まれる。
【0114】
潤滑油、特にエンジンオイルのためのVI向上剤と流動点向上剤を収集したものは、例えば、T. Mang, W. Dresel (eds.): "Lubricants and Lubrication", Wiley−VCH, Weinheim 2001:R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): "Chemistry and Technology of Lubricants", Blackie Academic & Professional, London 1992;またはJ. Bartz: "Additive fuer Schmierstoffe", Expert−Verlag, Renningen−Malmsheim 1994に詳述されている。
【0115】
適当な分散剤には、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えばポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI);N/O官能基を有するエチレン−プロピレンオリゴマーが含まれる。
【0116】
好適な清浄剤には、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、特にチオピロホスホネート、チオホスホネート、およびホスホネート;スルホネート、およびカーボネートが含まれる。これらの化合物は、金属として、特にカルシウム、マグネシウム、およびバリウムを含む。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基性の形態で使用することができる。
【0117】
特に興味深いものには、さらに消泡剤があるが、これらは多くの場合シリコン含有消泡剤とシリコン非含有消泡剤とに分類される。シリコン含有消泡剤には、直鎖ポリ(ジメチルシロキサン)および環状ポリ(ジメチルシロキサン)が含まれる。使用できるシリコン非含有消泡剤は、多くの場合ポリエーテル、例えばポリ(エチレングリコール)、またはリン酸トリブチルである。
【0118】
特定の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、腐食防止剤を含んでもよい。これらは、多くの場合、防錆添加剤と金属不動態化剤/不活性化剤とに分類される。使用する防錆添加剤は、とりわけ、スルホネート、例えば石油スルホネートまたは(多くの場合過塩基性の)合成アルキルベンゼンスルホネート、例えばジノニルナフテンスルホネート;カルボン酸誘導体、例えばラノリン(羊毛脂)、酸化パラフィン、ナフテン酸亜鉛、アルキル化コハク酸、4−ノニルフェノキシ酢酸、アミド、およびイミド(N−アシルサルコシン、イミダゾリン誘導体);アミン中和モノアルキルリン酸およびジアルキルリン酸;モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、またはジエタノールアミンであってもよい。金属不動態化剤/不活性化剤には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジアルキル−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール;N,N′−ジサリチリデンエチレンジアミン、N,N′−ジサリチリデンプロピレンジアミン;ジアルキルジチオリン酸亜鉛、およびジアルキルジチオカルバメートが含まれる。
【0119】
さらなる好適な添加剤群は、抗酸化剤群である。抗酸化剤には、例えば、フェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(2,6−DTB)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);芳香族アミン、特にアルキル化ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PNA)、重合2,2,4−トリメチルジヒドロキノン(TMQ);硫黄およびリンを含有する化合物、例えばジチオリン酸金属塩、例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸とオレフィンの活性化された二重結合との反応生成物、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α−ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、修飾チオール、チオフェン誘導体、キサントゲン酸塩、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環硫黄/窒素化合物、特にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール;亜鉛およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えば亜リン酸トリアリールおよび亜リン酸トリアルキル;有機銅化合物、ならびに過塩基性カルシウム系およびマグネシウム系のフェノラートおよびサリチレートが含まれる。
【0120】
好適な耐摩耗(AW)および極圧(EP)添加剤には、リン化合物、例えばリン酸トリアルキル、リン酸トリアリール、例えばリン酸トリクレジル、アミン中和モノアルキルリン酸およびジアルキルリン酸、エトキシル化モノアルキルリン酸およびジアルキルリン酸、ホスファイト、ホスホネート、ホスフィン;硫黄およびリンを含有する化合物、例えばジチオリン酸金属塩、例えばC3〜12ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジアルキルジチオリン酸アンモニウム、ジアルキルジチオリン酸アンチモン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸鉛、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸とオレフィンの活性化された二重結合との反応生成物、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α−ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル、トリメチルホスホロチオネート(TPPT);硫黄および窒素を含有する化合物、例えば亜鉛ビス(アミルジチオカルバメート)、またはメチレンビス(ジ−n−ブチルジチオカルバメート);硫黄元素を含有する硫黄化合物およびH2S−硫化炭化水素(ジイソブチレン、テルペン);硫化グリセリドおよび脂肪酸エステル;過塩基性スルホネート;塩素化合物、あるいは固形物、例えばグラファイトまたは二硫化モリブデンなどが含まれる。
【0121】
さらなる好適な添加剤群は、摩擦調整剤群である。使用する摩擦調整剤には、機械的作用を有する化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ素化グラファイトを含む)、ポリ(トリフロロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;摩擦化学反応によって層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸エステルおよびチオリン酸エステル、キサントゲン酸塩、硫化脂肪酸;ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィン、または有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(ジチオリン酸モリブデンおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそのZnDTPとの組み合わせ、銅含有有機化合物を含みうる。
【0122】
上記に詳述した化合物のうちのいくつかは、複数の機能を果たすことができる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗添加剤および極圧添加剤であるが、抗酸化剤および腐食防止剤(本明細書において、金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0123】
上記に詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (eds.): "Lubricants and Lubrication", Wiley−VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): "Chemistry and Technology of Lubricants"に、より詳しく記載されている。
【0124】
好適な潤滑油組成物は、ASTM D 445に従って40℃で測定した粘度が、10〜120mm2/sの範囲内、より好ましくは22〜100mm2/sの範囲内である。100℃で測定した動粘度KV100は、好ましくは少なくとも5.5mm2/s、より好ましくは少なくとも5.6mm2/s、最も好ましくは少なくとも5.8mm2/sである。
【0125】
本発明の特定の態様において、好適な潤滑油組成物は、ASTM D 2270に従って測定した粘度指数が、100〜400の範囲内、より好ましくは150〜350の範囲内、最も好ましくは175〜275の範囲内である。
【0126】
特に興味深いさらなる潤滑油組成物は、150℃で測定した高温高せん断粘度HTHSが、少なくとも2.4mPas、より好ましくは少なくとも2.6mPasのものである。100℃で測定した高温高せん断粘度HTHSは、好ましくは最大で10mPas、より好ましくは最大で7mPas、最も好ましくは最大で5mPasである。100℃と150℃で測定した高温高せん断粘度HTHSの差、HTHS100−HTHS150は、好ましくは最大で4mPas、より好ましくは最大で3.3mPas、最も好ましくは最大で2.5mPasである。100℃での高温高せん断粘度HTHS100の150℃での高温高せん断粘度HTHS150に対する比、HTHS100/HTHS150は、好ましくは最大で2.0、より好ましくは最大で1.9である。高温高せん断粘度HTHSは、ASTM D4683に従って、特定の温度で測定することができる。
【0127】
適当な変形例では、ASTM D2603 Ref. Bによる(12.5分間の超音波処理)永久せん断安定性指数(PSSI)は、35以下、より好ましくは20以下である。有利には、DIN 51381による(Boschポンプ30サイクル)永久せん断安定性指数(PSSI)が、最大で5、好ましくは最大で2、最も好ましくは最大で1の潤滑油組成物を得ることも可能である。
【0128】
乗用車での使用の場合の燃料節約(15W−40基準エンジンオイルRL 191と比較)は、欧州において、一般に試験法CEC L−54−T−96(「Mercedes−Benz M111 Fuel Economy Test」;CEC=Coordinating European Council for Development of Performance Tests for Transportation Fuels, Lubricants and Other Fluids)に従って測定される。より最近の結果(国際トライボロジー会議(ITC 2005、神戸)の議事録内のK. Hedrich, M. A. Mueller, M. Fischer: "Evaluation of Ashless, Phosphorus Free and Low Sulfur Polymeric Additives that Improve the Performance of Fuel Efficient Engine Oils";国際トライボロジー会議(ITC 2000、長崎)の議事録内のK. Hedrich, G. Renner: "New Challenge of VI Improver for Next Generation Engine Oils")は、別の試験法(「RohMax試験」)でも類似の結果が得られることを示している。この試験では、2.0Lガソリンエンジンではなく、1.9Lディーゼルエンジン(4150rpmで81kW)を使用する。このエンジンの設定は、試験法CEC L−78−T−99に記載されている設定(「Volkswagen Turbocharged DI Diesel Piston Cleanliness and Ring Sticking Evaluation」)と本質的に一致する。CEC L−54−T−96によるオイル温度の正確な維持は、設定での追加冷却を必要とする。CEC L−54−T−96と「RohMax試験」との共通の特徴と違いは、以下の通りである:

【0129】
上述のとおりのテストベンチでの試験後、車両での実際の燃料消費量は、典型的には実地試験の形で、例えば、規定の期間(例えば、6ヶ月間)にわたり、規定のkm数(例えば、10000km)走行する10車両のタクシーを用いて測定する。
【0130】
下記において、実施例および比較例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、これにより限定することは意図しない。
【0131】
櫛形ポリマーの合成
実施例1〜5および比較例1〜3
4口フラスコと精密ガラスサーベル撹拌機を備える装置に、まず、第1表に組成を示す低分子モノマーの混合物とマクロモノマーとの混合物600gと、Shell Risella 907ガスオイルと100Nオイル35gとの混合物(65%/35%)400gとを装入する。窒素下で115℃まで加熱したあと、2,2−ビス−tert−ブチルペルオキシブタン1.2gを添加し、温度を維持する。開始剤の最初の添加の3時間後および6時間後に、新たに2,2−ビス−tert−ブチルペルオキシブタン1.2gをそれぞれ供給し、混合物を115℃で一晩攪拌する。翌日、150Nオイル500gで混合物を固形分60%から40%に希釈する。鉱物油中の櫛形ポリマーの40%溶液1500gが得られる。
【0132】
第1表
【表1】

【0133】
第1表中:
hPBDMM4800:CrayValley(フランス国パリ)の水素化ポリブタジエンであり、Mn=4800g/モル、TM=−25℃、およびfMMの範囲90〜95%(マクロモノマー)
nBMA:n−ブチルメタクリレート
Sty:スチレン
LMA:アルコール基中に12〜14個の炭素原子を有するアルキルメタクリレート混合物
MMA:メチルメタクリレート
【0134】
マクロモノマーのマクロモノマー官能度fMMは、WO2007/025837に詳述されているように、櫛形ポリマー自体のGPC曲線から得た。
【0135】
分子量および多分散性指数PDIは、WO2007/025837に詳述されているように、GPCを用いて測定した。
【0136】
第1表(続き)
【表2】

【0137】
櫛形ポリマーの評価
A)APIのI/III群オイルに基づく、DIパッケージを含むOW−20ベースオイルにおいて:
得られた櫛形ポリマー添加剤は、ASTM D445による40℃および100℃での動粘度(KV40およびKV100)、ASTM D5292に従って測定したCCS粘度、およびASTM D4683に従って100℃で測定した高温高せん断粘度HTHS100によって、150℃での高温高せん断粘度HTHS150=2.6mPasを有する(ASTM D4683)、DIパッケージ含有OW−20ベースオイル中の溶液(KV40=23.45mm2/s、KV100=4.92mm2/s、VI=138)と特徴付けられた。
【0138】
本発明の櫛形ポリマーが著しく低いKV40(および同様に低いKV100)、および100℃での低い高温高せん断粘度HTHS100を有し、EP0699694の広報に詳述されているポリマーもそうであることが明らかに示されている。類似する結果は、−35℃でのCCS粘度に関しても得られる。詳細な評価の結果は、第2表に示す。
【0139】
比較のために、市販のVI向上剤を追加的に検討した。この目的で、市販のInfineum SV200(HSD星型ポリマー)とViscoplex(登録商標)6−950(RohMax Additives GmbHから市販される直鎖PAMA)を用いて、エンジンオイル配合物を作製した。これらの結果は、同様に第2表に示す。
【0140】
第2表
【表3】

【0141】
さらに、実施例1〜5の櫛形ポリマーを含む潤滑油組成物のせん断安定性を検討した。この目的で、DIN 51382(Boschポンプ30サイクル)に従ってPSSI測定を実施したが、全ての潤滑油が0の優れたPSSI値を達成した(すなわち、これらの製品はKV100の低下を全く示さなかった)。この結果、驚くべきことに、高温、例えば100℃での粘度値について上記に詳述した規格のものに比較的近いままで、使用時の値がこれらの値よりも低くならない、潤滑油組成物を提供することが可能である。
【0142】
櫛形ポリマーの流動点向上剤との適合性を検討するために、さらなる試験を実施した。このために、市販の流動点向上剤(Viscoplex 1−247)を0.37質量%の濃度で含む潤滑油組成物を製造した。この場合、流動点(PP)はASTM D97に従って測定し、動的粘度DVと降伏応力YSはMRV−TPl(ASTM D4684)に従って測定した。結果は、第3表に詳述する。
【0143】
第3表
【表4】

【0144】
結果は、特にPAMAに基づく流動点降下剤と本櫛形ポリマーを組み合わせた潤滑油組成物が、傑出した低温特性(目標:<−40℃/<35Pa/<=60000mPa)を有することを示している。
【0145】
B)APIのIII群オイルに基づくOW−20ベースオイルにおいて:
11.2%のHiTEC(登録商標)1192(Afton Chemical)、8.8%のNexbase(登録商標)3030、80%のNexbase(登録商標)3043(Neste Oil)から、KV40=27.24mm2/s、KV100=5.390mm2/s、およびVI=136を有するOW−20ベースオイルを製造した。その後、A)と同様に、HTHS150=2.6mPasの配合物における、実施例と比較例との粘度測定を分析した。
【0146】
このOW−20においても、本発明の櫛形ポリマーが、Viscoplex(登録商標)6−950よりも著しく低いKV40(および同様に低いKV100)、および低い高温高せん断粘度HTHS100を有することがわかった。類似する結果は、−35℃でのCCS粘度に関しても得られる。この評価の結果は、第4表に詳述する。
【0147】
第4表
【表5】

【0148】
OW−20配合物も、PAMAに基づく市販の流動点向上剤の存在下(Viscoplex(登録商標)1−247、濃度およそ0.37質量%)、優れたMRV−TPl低温特性を示す。この結果は、第5表に示す(目標:<35Paまたは<=60000mPas)。
【0149】
第5表
【表6】

【0150】
C)APIのIII群オイルに基づく、DIパッケージを含む5W−30ベースオイルにおいて:
最後に、DIパッケージ含有5W−30ベースオイル(KV40=38.76mm2/s、KV100=6.938mm2/s、およびVI=140)において、3番目の一連の測定を実施した。5W−30配合物にHTHS150=2.9mPas「のみ」が要求されるSAE J300から逸脱して、欧州のエンジン製造者の常用の手段(例えば、Mercedes−Benzの作動液規格MB229.1およびMB228.3(工場充填用))で、5W−30配合物をHTHS150=3.5mPasに調整した。
【0151】
5W−30配合物においても、本発明の櫛形ポリマーが、Viscoplex(登録商標)6−950よりも著しく低いKV40(および同様に低いKV100)、および低い高温高せん断粘度HTHS100を有することがわかった。この評価の詳細な結果は、第6表にまとめる。
【0152】
第6表
【表7】

【0153】
5W−30配合物も、PAMAに基づく市販の流動点向上剤の存在下(Viscoplex(登録商標)1−247、濃度およそ0.37質量%)、優れたMRV−TP1低温特性を示す。この結果は、第7表に示す(目標:<35Paまたは<=60,000mPas)。
【0154】
第7表
【表8】

【0155】
D)「RohMax試験」を用いた燃料節約の検討
上記に詳述したRohMax試験を用いて、さまざまなポリマーでの燃料節約を検討した。検討の測定精度を判断するために、一連の試験の最初と最後に、15W−40オイル(CEC基準エンジンオイルRL 191)での運転を実施した。燃料節約の判定は、第8表に詳述するポリマーを用いて行なったが、このために5W−30配合物をC)以下に挙げる実施例に従って作製した。得られた結果は、同様に第8表に記載する。
【0156】
第8表
【表9】

【0157】
これらの試験は、15W−40基準オイルを用いた比較運転から明らかなように、優れた再現性を示した。0.1gをはるかに下回るこの再現性は、特に温度条件の慎重な制御によって達成された。
【0158】
さらに、本発明の櫛形ポリマーを使用した場合、VISCOPLEX(登録商標)6−950と比較して、驚くほど高い燃料節約を達成することができることがわかった。さらに、実施例5と実施例6との比較は、請求項3に詳述する櫛形ポリマーを用いると、燃料消費量のさらなる著しい減少が生じることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、モル分岐度が0.1〜10モル%の範囲内であり、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含む櫛形ポリマーを、車両の燃料消費量を減少させるために用いる使用。
【請求項2】
前記モル分岐度が0.3〜3.6の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、前記櫛形ポリマーは、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、前記櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8〜30質量%を有することと、前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%〜1.1%の範囲内であることとを特徴とする、櫛形ポリマー。
【請求項4】
前記櫛形ポリマーが、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位を11〜26質量%有することを特徴とする、請求項3に記載の櫛形ポリマー。
【請求項5】
前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位が、700〜10000g/モルの範囲内の数平均分子量を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の櫛形ポリマー。
【請求項6】
前記櫛形ポリマーが、ポリオレフィンベースのマクロモノマーと、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1〜10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマー、とに由来する繰り返し単位を少なくとも90質量%含むことを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項7】
多分散性指数Mw/Mnが1〜5の範囲内であることを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項8】
前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.4%〜1.0%の範囲内であることを特徴とする、請求項3から7までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項9】
前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.4%〜0.6%の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載の櫛形ポリマー。
【請求項10】
前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位が、C2〜C10−アルケンおよび/またはC4〜C10−アルカジエンからなる群から選択されるモノマーに由来する基を含むことを特徴とする、請求項3から9までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項11】
前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位が、前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して、C2〜C10−アルケンおよび/またはC4〜C10−アルカジエンからなる群から選択されるモノマーに由来する基を少なくとも80質量%含むことを特徴とする、請求項10に記載の櫛形ポリマー。
【請求項12】
前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点が−10℃以下であることを特徴とする、請求項3から11までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項13】
前記ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点が測定できないことを特徴とする、請求項3から12までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項14】
前記櫛形ポリマーが、n−ブチルメタクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項3から13までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項15】
n−ブチルメタクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位の比率が、少なくとも50質量%であることを特徴とする、請求項14に記載の櫛形ポリマー。
【請求項16】
前記櫛形ポリマーが、スチレンに由来する繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項3から15までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項17】
スチレンに由来する繰り返し単位の比率が、5〜25質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項16に記載の櫛形ポリマー。
【請求項18】
前記櫛形ポリマーが、100000〜500000g/モルの範囲内の質量平均分子量を有することを特徴とする、請求項3から17までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項19】
前記櫛形ポリマーが、アルキル基中に11〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項3から18までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマー。
【請求項20】
アルキル基中に11〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位の比率が、1〜10質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項19に記載の櫛形ポリマー。
【請求項21】
マクロモノマーおよび低分子モノマーが共重合されることを特徴とする、請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーを製造するための方法。
【請求項22】
請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーを含む、潤滑油配合物。
【請求項23】
前記潤滑油配合物が、APIのI、II、III、IV、および/またはV群のベースオイルを含むことを特徴とする、請求項22に記載の潤滑油配合物。
【請求項24】
ASTM D2603 Ref.BによるPSSIが35以下であることを特徴とする、請求項22および23のいずれか1項に記載の潤滑油配合物。
【請求項25】
前記潤滑油配合物が、請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーではない少なくとも1つの付加的添加剤を含むことを特徴とする、請求項22から24までのいずれか1項に記載の潤滑油配合物。
【請求項26】
前記添加剤が、粘度指数向上剤、流動点向上剤、分散剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、抗酸化剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、および/または摩擦調整剤であることを特徴とする、請求項25に記載の潤滑油配合物。
【請求項27】
前記添加剤が、アルコール基中に1〜30個の炭素原子を有する直鎖ポリアルキル(メタ)アクリレートに基づくことを特徴とする、請求項25または26に記載の潤滑油配合物。
【請求項28】
自動車における燃料消費量を減少させるための、請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーの使用。

【公表番号】特表2010−532805(P2010−532805A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515431(P2010−515431)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054355
【国際公開番号】WO2009/007147
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】