説明

燃料用セルロース系原料の微生物処理方法

バイオマス原料を燃料に変換するために微生物を利用するシステムおよび方法が提供される。1つの態様では、脂質を産生する方法は、バイオマスを含む原料を受容することと、原料を脂質に変換する能力がある微生物に原料を曝すことと、産生された脂質を抽出することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、セルロース系または他の生物学的廃棄物を生物燃料/生物ガソリン等の汎用化学品に変換する、微生物システムおよび化学システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は世界的な埋蔵量の減退に直面しており、地球温暖化を促進する温室気体排出の30%超過に関与する。年間で800,000,000,000バレルの輸送燃料が世界的に消費される。ディーゼル燃料およびジェット燃料が、世界中の輸送燃料のうち50%より多くを占める。
【0003】
燃料生産者が輸送燃料の生産および使用からの炭素放出を制限または縮小することを要求する、重要な法律が可決されてきた。燃料生産者は、既存の基幹施設(例えば、精製所、補給線、油槽船)を通じて混合および分配することができる、実質的に同様で少ない正味の燃料を探し求めている。
【0004】
増加する石油の費用および石油化学原料への依存が原因で、化学品業界は利幅および値段の安定性を改善する一方で、その環境的足跡を減らす方法も探している。化学品業界は、現在の製品より効率的なエネルギー、水、およびCOである、より環境に優しい製品を開発するように努力している。生物源から産生される燃料は工程の1つの態様を表す。
【発明の概要】
【0005】
バイオマス原料を燃料に変換するために微生物を利用するシステムおよび方法が提供される。
【0006】
1つの態様では、脂質を産生する方法は、生物学的廃棄物を含む原料を受容することと、原料を脂質に変換する能力がある微生物に原料を曝すことと、産生された脂質を抽出することとを含む。
【0007】
本発明の1つの態様では、燃料を産生する方法は、セルロースを含む原料を受容することと、微生物を用いて原料の少なくとも一部を脂質に変換することと、産生された脂質を微生物から抽出することと、産生された脂質を液体燃料に変換することとを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、脂質を産生するためのシステムは、発酵装置と、発酵装置と連通する制御装置とを含む。制御装置は発酵装置に動作指示を与え、発酵装置は脂質を生み出す。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載、請求の範囲、および添付図面から明白となることになる。
【0010】
本発明の詳細を、その構造および動作の両方について、同様の参照番号が同様の部分を指す添付図面の検討により、部分的に少しずつ抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る、セルロース系原料の前処理工程の流れ図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、接種および発酵工程の流れ図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、微生物の回収工程の流れ図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、接種および発酵工程の流れ図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、分離工程の流れ図である。
【図6】図1〜5に従って用いられる、工程用設備のブロック略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この記載を読んだ後、様々な代替的な実施形態および代替的な用途においてどのように本発明を実施するのかが、当業者にとって明白となることになる。しかしながら、本発明の様々な実施形態が本明細書で記載されることになるが、こうした実施形態は例としてのみ提示され、制限ではないことが理解される。そのようなものとして、様々な代替的な実施形態のこの詳細な記載は、添付の請求の範囲で説明されている通りに本発明の範囲および広さを制限すると解釈されるべきでない。
【0013】
記載されている実施形態は、生物学的起源の低価値の出発物質からの液体燃料の産生のためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、当該システムおよび方法は、具体的に、セルロース系原料からのディーゼル燃料、ガソリン燃料、および/または航空燃料の産生に関する。いくつかの実施形態では、当該方法は、未加工原料を投入し、トリアシルグリセリド(「TAG」)または他の脂質、および芳香族化合物を産出する多段工程を含む。
【0014】
セルロース系物質を変換する本方法は、特に生物燃料を産生するために培養された原料を利用する。こうした「培養されたセルロース系原料」に加え、おがくず、木片、セルロース、藻類、他の生物学的物質、都市固形ゴミ(例えば、紙、厚紙、食品ゴミ、庭ゴミなど)、および同様のもの等のセルロース系廃棄物から、セルロース系原料を得ることができる。
【0015】
本発明の一実施形態に従う工程は、セルロース系廃棄物を液体燃料に変換することを含む。1つの態様では、農業ゴミ等のセルロース系物質は、特別に選択または開発された微生物を用いてTAG等の脂質に変換される。こうした微生物は、遊離糖類、セルロースおよびヘミセルロース、植物の主成分を、TAGに変換する。
【0016】
TAGは、グリセロール骨格に結合した3つの脂肪酸を含む。グリセロールから解離され、かつ、水素化処理される場合、脂肪酸は炭化水素類に変換され、これはディーゼル燃料、ガソリン燃料、およびジェット燃料の主成分を形成する。いくつかの実施形態では、TAGそれ自体が燃料の一成分としての役割を果たす場合がある。他の実施形態では、脂肪酸はバイオディーゼル等の燃料に変換される。本工程と関連する恩恵は、原料が最初に光合成により産生され、二酸化炭素を大気から隔離したために、燃料が燃える際に正味の炭素が大気に全く加えられないことである。
【0017】
ガソリン燃料およびジェット燃料の仕様は、アルカン類に加え、特定の割合の芳香族化合物を必要とする。TAGを容易に芳香族化合物に変換することはできない。しかしながら、植物は、燃料に必要な芳香族化合物に分解することができる芳香族化合物の重合体凝塊である、木質素も含有する。特殊な微生物は木質素を攻撃し、それをより小さい個別の芳香族化合物に変換する。従って、微生物変換工程は、植物に由来する農業ゴミおよび都市ゴミ(紙、パルプ、食品ゴミ、庭ゴミなど)を、燃料の全ての成分に変換するのに十分であり得る。
【0018】
本発明の一実施形態に従い、適切な生物学的原料は、おがくず、木片、セルロース、藻類、他の生物学的物質、または燃料に変換されることになる他の固体等の、高分子量で高エネルギー含量の分子を含む。結果として生じる燃料は液体形態にあってよく、気体成分および液体成分が燃料の組成に関与する場合があることを意味する場合がある。例えば、1つの実施形態では、結果として生じる燃料が、メタン(気体)およびオクタン(液体)、ならびに様々な他の成分を含む場合がある。原料物質は、低価値物質または廃棄物であってよい。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、セルロース系原料は少なくとも10%のセルロース系廃棄物を含む。いくつかの実施形態では、セルロース系バイオマス原料は、50%よりも多くセルロース系廃棄物を含む。更に他の実施形態では、セルロース系バイオマス原料は、最大で100%のセルロース系廃棄物を含む。
【0020】
1つの態様では、原料は植物起源の生物学的生成物であってよく、それ故、結果として得られる燃料生成物が燃焼される際に、大気の二酸化炭素の正味の増加を結果的に全くもたらさない場合がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、2つ以上の原料を用いることができる。例えば、二次原料はセルロース変換工程の任意の副生成物を含む場合があり、その物質は微生物作用により燃料に変換される能力がある。二次原料は、グリセロール分子またはその断片、あるいは、追加の炭素原子またはパラフィン系鎖が付着した状態のグリセロールを含む場合がある。例えば、アルカン類がTAGから開裂される際に、このような化合物を産生することができる。
【0022】
説明の簡潔さのために、本発明に従う工程を3つの主なステップに分けることができる:(1)原料の前処理、(2)接種および発酵/蒸解、および(3)脂質および/または芳香族生成物の採取および抽出。
【0023】
(1)原料の前処理
一実施形態では、未加工原料は、微生物蒸解に利用可能なその炭素含量を作り出し、かつ、脂質および/または芳香族化合物の産生の目的のために導入される好適な種と競合する場合があるだろう、任意の自然に存在する微生物を死滅させるために前処理される。前処理は3つのステップを含む場合がある:(1)機械的前処理、(2)熱化学的前処理および滅菌あるいは紫外線(「UV」)照射または殺菌、および(3)濾過/分離。機械的前処理のステップでは、刻み器、細断器、粉砕器、または、体積に対する表面積の比率を増加させる他の機械的処理器に、未加工原料を運搬することができる。
【0024】
熱化学的前処理のステップは、水、熱、および圧力の組み合わせで、機械的に処理された物質を処理することができる。随意に、酸性または塩基性の添加剤または酵素を、熱圧処理より前に添加することもできる。この処理は、微生物の利用のための固形成分をさらに開放し(例えば、体積に対する表面積の比率を増加させ)、糖類および他の化合物を液相に溶解させ、それを微生物蒸解により適するようにする。このような処理の例としては、加水分解または糖化として様々な既知の工程の種類が挙げられるが、単回沸騰または水中での調理等の、より低いエネルギーの処理を利用することもできる。
【0025】
1つの実施形態では、非炭素の微生物栄養素が熱化学的前処理のステップより前に加えられる。非炭素の微生物栄養素としては、例えば、窒素源、リン源、硫黄源、金属源などが挙げられる。非炭素の微生物栄養素を加えた後、次に全体を滅菌することができる。
【0026】
濾過/分離のステップは、(例えば、木質素が濃縮される)固体物質を(例えば、原料中のセルロースおよびヘミセルロースからの糖類および多糖類のほとんどを含有する)液体から分離することが好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、(例えば、グリセロールの添加を介して)原料が強化される。例えば、いくつかのTAG変換工程の副生成物として、原料の強化に用いられるグリセロールを得ることができる。具体的には、グリセロールは、(例えば、エステル交換を介して)バイオディーゼル燃料を産生するように、TAGの変換により放出される。その後、放出されたグリセロールをTAGの形成に寄与するように代謝させることができる。グリセロールを原料に加える恩恵は、以下で検討されているように、発酵の最中に特定の微生物種の増殖を促すことができることである。エステル交換から得られたグリセロールは高純度ではないが、むしろ様々な構成成分を含むことが理解される。
【0028】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態に従う、セルロース系原料の前処理工程100の流れ図が示されている。前処理工程100は、セルロース系原料を受容するための受容段階110と、原料を小さい粒子に変形するための機械的前処理段階120とを含む。
【0029】
前処理工程100は、セルロース系構造物を開放する熱化学的前処理段階130も含み、セルロース系構造物を微生物により利用可能にし、糖類および多糖類の一部を溶液にする。いくつかの実施形態では、水および、随意に、酸性または塩基性の添加剤134が、この熱化学的前処理段階130の最中に原料に加えられる。いくつかの実施形態では、微生物代謝のために用いられる非炭素栄養素138も、この熱化学的前処理段階130の最中に加えられる。熱化学的前処理段階130は、潜在的に競合する微生物を阻害するために、セルロース系物質および周囲の液体を滅菌する役割も果たすことを十分に理解されたい。
【0030】
前処理工程100は、固形原料の原体を液体部分から分離するために、濾過器および/または遠心分離器などの機械的手段を用いることができる固体‐液体分離段階140も含む。上記で記載されているように、液体部分144は主に糖類および多糖類を含む一方で、固体部分128は木質素ならびに非溶存セルロースおよび非溶存ヘミセルロースを含む。
【0031】
(2)接種および発酵
接種および発酵の段階では、処理された原料の固体部分および液体部分は、別個の蒸解釜に好ましく入れられる。蒸解釜は、原料物質と、原料を脂質または芳香族化合物にそれぞれ分解する微生物と、溶媒(例えば、水)と、非炭素栄養素(例えば、硝酸塩類、リン酸塩類、微量金属類、および同様のもの)とを包含する容器である。
【0032】
微生物は次の2つの種類のうち何れかの種であってよい:セルロース、ヘミセルロース、またはグリセロールを脂質に変換する1つの種類、および木質素を芳香族化合物に分解する第2の種類。セルロース、ヘミセルロース、またはグリセロールを脂質に変換する、細菌種および/または真菌種を含む微生物としては、例えば、乾燥細胞塊の最大で80%脂質として保存する、トリコデルマ・リーセイ、アシネトバクター種、および、アクチノミセス属とストレプトミセス属の一員が挙げられる。細菌および真菌の他の種は、木質素を芳香族化合物に分解する。
【0033】
いくつかの実施形態では、接種において利用される微生物は、標準的な手順を用いて開始培地内で増殖される。標準的な手順は、選択される特定の種により変化する場合がある。
【0034】
結果として得られた脂質は、直鎖炭化水素部分を有する任意の分子形態を含む場合がある。直鎖炭化水素部分は車両燃料に変換するのが比較的容易であるので、このような脂質が望ましい。
【0035】
脂質としては、TAG類および蝋エステル類が挙げられる。単価または多価の不飽和炭化水素鎖は脂質中にも見られ、飽和させる追加の水素の要求を伴うものの、アルカン類への変換に適している。
【0036】
結果として得られた芳香族化合物は、炭素環構造を有する任意の分子形態を有する。好適な芳香族化合物の例としては、キシレン類、メチルベンゼン類、および他のものが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、TAGおよび芳香族化合物の産生は、高炭素で低窒素の環境内に微生物を保持することと、曝気および/または撹拌を与えることとにより促進される。理解されるように、TAGまたは芳香族化合物に変換された原料炭素の百分率を最適化することは、細胞複製および代謝活動により消費される炭素を減らし、かつTAGおよび芳香族化合物を産生する際に消費される炭素を増やすように、微生物培地の成長を制御することを必要とする。原料中で非炭素栄養素の炭素に対する比率を制御すること、ならびに、pH、温度、溶存酸素、二酸化炭素産生量、流体剪断、および同様のもの等の他のパラメータを制御することにより、これを行うことができる。いくつかの実施形態では、これらのパラメータの1つ以上の測定結果を用いて、産生されたTAGをいつ採取するかを決定することができる。言い換えれば、これらのパラメータのうち1つ以上は、所望のTAG産生と関連するかこれを示す値を有する場合がある。
【0038】
例えば、いくつかの実施形態では、流体剪断は、反応容器を全体として動かすこと(例えば、制御された振動数で前後に揺すること)、または、流体中に浸漬された撹拌機(例えば、制御された振動数で電気モータにより駆動される様々なヘラまたは撹拌器の形状のうち何れか)を用いることの何れかにより制御される。
【0039】
いくつかの実施形態では、流体の曝気または酸素化は、流体の撹拌機により引き起こされた乱流に起因する空気の同伴を介することと、空気、酸素が豊富な空気、または純酸素を、流体を通じて泡立てることを介することとを含む、任意の数の手段により達成される。
【0040】
ここで図2を参照すると、本発明の一実施形態に従う、接種および発酵工程200の流れ図が示されている。接種および発酵工程200は、前処理工程100からの液体産出物144を受容するための受容段階210と、選択された微生物の開始培地225を液体144に加え、接種ステップ220で混合物を形成する接種ステップ220とを含む。選択された微生物は、単一種または単一菌株、あるいは、多重種または多重菌株の組み合わせであってよい。
【0041】
接種および発酵工程200は、当該技術分野で知られている適切な方法を用いて、混合物を採取し、温度、pH、溶存酸素、および流体剪断等の他のパラメータを制御する、代謝ステップ230も含む。この代謝ステップ230の最中に、微生物は急増してから原料を代謝し、脂質の細胞内封入体を創り出す。この段階の終わりに(例えば、時間、pH、溶存酸素、または他のもののパラメータのうち1つ以上の定義値により決定される時に)、代謝は止められ、脂質を含有する浮遊した微生物を有する減損した流体240を生じる。
【0042】
ここで図4を参照すると、本発明の一実施形態に従う、接種および発酵工程400の流れ図が示されている。接種および発酵工程400は、前処理工程100からの前処理された原料148の固体部分を受容するための受容段階410と、原料148の当該部分が、滅菌水、および非炭素栄養素424、および木質素428を分解するのに適した特別に選択された微生物の開始培地と混合される、接種ステップ420とを含む。
【0043】
接種および発酵工程400は、当該技術分野で知られている適切な方法を用いて、混合物を採取し、温度、pH、溶存酸素、および流体剪断等の他のパラメータを制御する、代謝ステップ430も含む。この代謝ステップ430の最中に、微生物は急増してから原料を代謝し、溶液に放出されるより小さい芳香族化合物に木質素を分解する。この段階の終わりに(例えば、時間、pH、溶存酸素、または他のもののパラメータのうち1つ以上の定義値により決定される時に)、代謝は止められ、減損した固体、微生物、および所望の芳香族化合物を含有する気体と液体を含有する混合物440を生じる。
【0044】
(3)採取および生成物の抽出
生成物を蒸解釜から抽出する工程は、当該生成物がセルロース分解からのTAGであるか、あるいは木質素分解からの芳香族炭化水素類であるかに依存する。それぞれが同様に考慮される。しかしながら、両方の場合において、採取する適切な時間を選ぶことが収率を最大にすることになる。pH、溶存酸素、二酸化炭素産生量、残存する炭素栄養素の濃度、および同様のもの等の測定結果を用いて、最適な採取時間を決定することができる。
【0045】
TAGを採取および抽出する
蒸解釜内の液体培地はTAGを産生する微生物に栄養を与え、当該微生物が繁茂し生殖することを可能にする。こうした微生物はTAGを細胞内構造中に保存する。第1のステップは、それ故に、細胞バイオマスを液体培地から採取または回収することである。いくつかの細胞は、大きさにして数百マイクロメートルの多細胞凝塊を形成する傾向があり、その場合、選り分け、ふるい分け、遠心分離、または濾過により採取を行うことができる。このステップの結果は、典型的に過剰な水を含む細胞物、例えば、湿潤した発酵生成物の塊である。細胞が分かれたままである傾向がある場合、採取することは、凝集剤を加えることおよび他の細胞分離ステップを含む場合がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、湿潤した発酵生成物は回収ステップの後に乾燥される。例えば、ローラプレスを通じて押すことにより、全体の過剰な水を除去することができる。その後、真空オーブン、凍結乾燥器、または他の一般的な乾燥設備を用いて、当該生成物をさらに乾燥させることができる。真空オーブンを用いる場合、例えば、TAGが加水分解されないか最小にのみ加水分解されるように温度を制御するべきであることを認識されたい。いくつかの実施形態では、凍結乾燥が、結果として生じる乾燥物の体積比に対する表面積を増加させる効果を有し、それにより後続の抽出をより速くするので、乾燥手段として選択される。いくつかの実施形態では、(例えば、液体窒素中での浸漬を介する)瞬間冷凍が細胞構造を解体するために用いられ、後続の抽出の効率を改善する。
【0047】
抽出された液体が残りの栄養素、ならびに採取を免れた微生物細胞を含有する場合があるので、この流体を再循環させる場合がある。例えば、1つの実施形態では、1回の産生循環からの流体(例えば、濾液)が、次の産生循環の開始培養液(例えば、液体培地)の一部として用いられる。当該流体が微生物を生殖させかつ蒸解することにより放出された代謝物も含有する場合があり、かつ、高い代謝物の濃度が続く産生循環を阻害する場合があるので、1つの実施形態では、再循環された流体は代謝物を中和するように処理される。場合によっては、再循環された流体を滅菌する場合もある。
【0048】
回収の後に、細胞物が、細胞撹乱器、例えば、脂質物質を細胞内から抽出するための手段に曝される。いくつかの実施形態では、細胞撹乱器は、例えば、熱、超音波、または細胞の化学的撹乱(溶菌)を用いて脂質を微生物細胞から遊離させる。1つの実施形態では、化学的溶菌は、細胞およびその内部構造を溶解させるために、クロロホルム‐メタノール溶液を利用することを含む。任意の特定の理論に制約されることを望むことなく、メタノールが細胞を撹乱し、クロロホルムが脂質を抽出することが考えられる。塩化メチレンおよびクロロホルム‐メタノールを含むがそれらに限定されない他の化学溶媒を、化学的溶菌および脂質の抽出において用いることもできる。
【0049】
脂質は細胞内構造から放出された時点で、細胞残屑から分離される。いくつかの実施形態では、脂質分離機が用いられる。例えば、浮遊した脂質の豊富な塊を混合物の頂部から誘導するドクターブレード、より重い成分を脂質分離器の底部から引き上げる汚水槽、または脂質の特性に依存する他の出入口手段を用いることができる。さらに、いくつかの実施形態では、より高度な純度のTAGを供給するために、化学的溶媒和工程を利用することができる。例えば、リン脂質およびタンパク質がアルカン類に不溶であるために、ヘキサンまたはヘプタン類のような軽質アルカン溶媒を用いることで、機械的手段より純粋なTAGが生じる。結果的に、結果として生じるTAGは、いくつかの燃料において望ましいリンおよび金属類による汚染が低い場合がある。
【0050】
TAGの抽出の後に、TAGは、その後分画してガソリン燃料、ディーゼル燃料、またはジェット燃料の構成成分を形成することができる炭化水素類に変換される。このような変換工程は当業者に知られている。
【0051】
ここで図3を参照すると、本発明の一実施形態に従う、微生物または中間生成物の回収工程300の流れ図が示されている。微生物の回収工程300は、接種および発酵工程200からのTAGを含有する浮遊した微生物を有する減損した流体240を受容するための受容段階310を含み、微生物または中間生成物330を採取または回収する(320)ために、本明細書に記載されているような1つ以上の分離技術を用いる。いくつかの実施形態では、濾過、ふるい分け、選り分け、遠心分離、または沈殿のうち1つ以上等の機械的手段は、微生物330を減損した液体325から分離するために用いられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、減損した液体325は、図1の前処理段階100で原料に加えられた水134の一部として再循環される。減損した液体325は、図示されていないが、図2の代謝段階230で微生物により分泌された代謝物の他の阻害効果を軽減するように緩衝することを必要とする場合がある。
【0053】
微生物または中間生成物330は、湿潤した微生物の発酵生成物から成る。従って、抽出工程を加速するために、乾燥ステップ340を随意に行うことができる。乾燥ステップ340は、オーブン内で加熱すること、真空オーブン内での加熱および/または排出、極低温液体の使用の有無にかかわらない凍結乾燥、または他の乾燥手段を利用することができる。このステップ340の結果は、乾燥した微生物または中間生成物350である。
【0054】
湿潤物330または乾燥物350の何れかは、その後、細胞構造を解体してTAGを化学溶媒に接近可能にする、細胞撹乱ステップ360を受ける。細胞撹乱ステップ360は、機械的方法、熱的方法、および化学的方法のうち1つ以上を含む方法を利用することができる。例えば、機械的撹乱法は、超音波手段、切断手段、押圧手段、圧延手段、または摩耗手段のうち1つ以上を含む場合がある。熱的方法は、他の手段の中でも、加熱空気またはマイクロ波エネルギーを用いることができる。化学的方法は、クロロホルム、クロロホルムとメタノール、または塩化メチレンを含むが、それらに限定されない、いくつかの化学剤のうち1つを用いる。細胞撹乱ステップ360の産出物は、遊離したTAGを有するバイオマス370である。このステップ360で用いられる撹乱化学物質を、閉鎖循環系の中で捕獲、回収、および再利用することができる。微生物の回収工程300は、TAGの抽出または初期精製のステップ380も含む。いくつかの実施形態では、TAGの抽出は、ヘキサンおよびヘプタン類等の短鎖アルカン類を含む溶媒を用いて、化学的溶媒和を介して行われる。溶媒和の後には傾瀉が続き、TAGの所要の純度およびを汚染物質からの解放を達成するのに必要なだけ繰り返される。TAGの抽出ステップ380の産出物は、細胞残屑388に加えて、抽出および精製されたTAG384である。このステップ380で用いられる溶媒を、閉鎖循環系の中で捕獲、回収、および再利用することができる。
【0055】
上述のように、乾燥した微生物または中間生成物は、微生物細胞の中にTAGを含有する。次のステップは、同時に、細胞を撹乱しTAGを抽出する。それは以下の溶媒の混合物に依存する:
a.(メタノール、エタノール、イソプロパノール、または同様のもの等の)細胞構造を撹乱するアルコール系溶媒、および
b.(クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、または同様のもの等の)TAGを抽出する極性有機溶媒。
【0056】
1つの実施形態では、溶媒は10体積%のメタノールおよび90体積%のクロロホルムの混合物を含む。百分率が正確である必要はない。
【0057】
乾燥した微生物が密集しかつ革状である場合、次のステップより前に、数時間の間溶媒混合物中に予浸することができる。それがポーラスかつフワフワである場合、予浸は必要とされない。
【0058】
細胞の撹乱およびTAGの抽出は、熱い溶媒混合物をある量の乾燥した微生物を通じて繰り返し浸出させることにより進行する。実験室では、ソックスレー装置によりこれを達成することができる。工業規模では、大規模でより頑強かつよりエネルギー効率の良いシステムにより、ソックスレー装置を置き換えることができる。根本的な化学原理は同じままである:ほとんど全ての細胞が撹乱され、ほとんど全てのTAGが溶液中に入るまでの、熱い溶媒への乾燥した発酵生成物の度重なる曝露。ソックスレー装置内では、熱が溶媒の貯蔵器に印加され、それを沸騰させる。蒸気は、沸点直下に冷却された凝縮器内で凝縮するまで立ち上る。凝縮液は、乾燥したバイオマスを包含する容器内に滴下する。熱い(それ故化学的により活性の高い)溶媒の高さは、バイオマスを浸すように上昇する。容器の頂部にある吸い上げ管は、容器内の液体が吸い上げ管内の屈曲の頂部に達する度に、容器を完全に空にして溶媒貯蔵器に戻す。この工程には数十分かかる場合がある。この時間の間、溶媒混合物は、細胞構造を分解すること、および、TAG(および他の細胞内分子)を溶解させることを両方行っている。容器が溶媒貯蔵器に注ぐ時、ここで溶存TAGをそれとともに運搬する。さらなる有意量のTAGがバイオマスから全く抽出されなくなるまで、蒸発‐凝縮‐充填‐溶解‐吸い上げという循環を繰り返すことができる。溶媒貯蔵器内で回収された物質はTAGを含有し、ここで微生物細胞から抽出される。
【0059】
いくつかの実施形態では、貯蔵器は、TAG、極性溶媒に可溶な他の生体分子、および溶媒それ自体を包含する。蒸発および蒸留段階は、溶媒を混合物から蒸発させてそれを凝縮し、溶媒を再利用のために再捕獲する。ここで貯蔵器内に残存するものは、不純物を含有する場合があるために、粗TAGと呼ばれる。
【0060】
精製ステップは、ヘプタン、またはヘプタンのヘキサンとの混合物、または石油エーテル等の、短鎖炭化水素類で作成された溶媒中で粗TAGを処理することを含む。1つの実施形態は、ヘプタンおよび(40℃と60℃との間の沸点を有する)低沸点石油エーテルの1:1の混合物を用いる。
【0061】
いくつかの実施形態では、細胞残屑388が気化器に送られ、現場電気および/または工程熱を産生するために消費される。図2の代謝段階230において炭素栄養素および非炭素栄養素の一部として、細胞残屑388を用いることもできる。代替的には、飼料等の他の製品のように、細胞残屑388を回収、加工、および販売することができる。
【0062】
容易に十分に理解されるように、本発明の実施形態に従って産生されたTAGを、輸送用途に適した液体燃料として用いることができる。いくつかの実施形態では、燃料生成物は、(例えば、車両エンジンに要求されるような)所定の範囲内にある分子量を有する、飽和非芳香族炭化水素分子(例えば、直線アルカン類および分岐アルカン類)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、TAGの構成成分をガソリンの代用品として用いることができる。このような実施形態では、TAGはおよそ6から12の炭素範囲内にある構成成分を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、TAGの構成成分を航空燃料の代用品として用いることができる。このような実施形態では、TAGの構成成分は主としてアルカン類を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、TAGの構成成分をディーゼル燃料の代用品として用いることができる。このような実施形態では、TAGは、16から18の炭素範囲にあるアルカン類、および随意に、およそ14から20の炭素範囲にある追加の微量構成成分を含む。
【0066】
表1は、微生物の選択された菌株により産生された、例示的なTAGの構成成分を示す。
表1:産生されたTAG
【表1】

【0067】
表1に示されているように、微生物は、その炭素源として、グリセロール、または、グルコースおよびグリセロールの組み合わせの何れかを与えられた。この特定のTAG生成物の主成分は、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸を含む。表1での炭素鎖長の分布は、妥当な効率をもって、任意の液体輸送燃料を当該生成物から精製することができることを示す。表1で同定されている主成分に加え、TAGは、1〜2%のリグノセリン酸(24個の炭素鎖、0個の二重結合)と、1%未満の、以下のとおり:(14:0)、(15:0)、(16:1)、(17:0)、(18:3)、(20:1)、(20:2)、(20:4)、(22:0)の(X:Y)として示される、炭素鎖長Xおよび二重結合の数Yを有する脂肪酸のそれぞれとを含む。
【0068】
容易に十分に理解されるように、工程条件を変化させることにより生成物の組成を調節し、原料の変化を部分的に相殺しかつ用途仕様を満たすことができる。生成物仕様に依存して、いくつかの実施形態では、液体燃料生成物はある割合の飽和芳香族炭素化合物を含有する場合がある。例えば、ジェット燃料の仕様は、総計の燃料組成物のうち8重量%と25重量%との間を含む芳香族成分を要求する。
【0069】
芳香族化合物を抽出する
上述のように、生成物を蒸解釜から抽出することは独特であり、生成物がセルロース分解からのTAGであるか、または木質素分解からの芳香族炭化水素類であるかに依存する。前処理された原料の固体で木質素が豊富な部分を受容する蒸解釜は、水、栄養素、および、木質素を様々な芳香族化合物に分解するために加えられる適切な接種物を含む。発酵または蒸解の循環の終わりでは、固体塊は微生物および未蒸解の固形原料の組み合わせである。
【0070】
芳香族化合物は、(TAG生成でのように細胞内に保存されるよりむしろ)蒸解釜の産出物の液相および気相の一部として含まれる。これは、微生物が木質素を、主として栄養値のために蒸解するためでないが、木質素構造の内部にあるタンパク質に接近するために分解するからである。従って、微生物は、木質素分解の生成物を吸収および代謝しない。
【0071】
いくつかの実施形態では、蒸解釜の内容物の固体部分は、主として、電気および工程熱を産生するように廃棄または気化することができるゴミである。標準的な化学的分離工程または精製工程を実施し、発酵の液相および気相の産出物から芳香族化合物を捕獲することができる。
【0072】
芳香族化合物の抽出の後、次に、芳香族化合物を分子量により分画することができる。その後、分画された芳香族化合物をアルカン類と混合し、ガソリン燃料、ディーゼル燃料、またはジェット燃料の構成成分を形成することができる。このような混合工程は当業者に知られている。
【0073】
ここで図5を参照すると、本発明の一実施形態に従う分離工程500の流れ図が示されている。分離工程500は、減損した固体、微生物、および、図4の代謝ステップ430により生み出された所望の芳香族化合物を含有する気体と液体を含有する混合物440を受容するための受容段階510を含む。
【0074】
分離工程500は、混合物400に機械的な固体の分離ステップ520を受けさせる。この分離ステップ520は、分離を実現するために、選り分け、ふるい分け、遠心分離、または濾過等の、標準的な機械的手段のうち1つ以上を用いる。分離された減損した固体525を気化器に送り、現場電気および/または工程熱を産生するために消費することができる。代替的には、飼料等の他の製品のように、減損した固体を回収、加工、および販売することができる。
【0075】
分離ステップ520は、標的芳香族化合物を含有する液体および気体530も産出する。化学的分離ステップ540は、当該技術分野で知られている標準的な化学工程を用いて、芳香族化合物を他のものから分離して分子量により分画し、目的とする芳香族化合物544を生じる。この化学的分離ステップ540の副生成物は、微生物細胞体を含有する場合がある、廃気および廃液548である。いくつかの実施形態では、この廃液548は、図1の原料の前処理段階130の投入水混合物134の一部を形成するために再循環される。
【0076】
TAGおよび芳香族化合物の産生を、セルロース処理工場および/または輸送燃料を産生する生物精製所と関連付け、またはこれらにより実施することができる。当該関連は複合的、並列、または別個であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、セルロース処理工場は農業ゴミ(または他のセルロース系物質)を受容し、微生物作用によりTAG類に変換し、その後、燃料に変換することができるTAG類から中間体を抽出する。対照的に、生物精製所は典型的にTAGおよび芳香族化合物を受容し、処理して輸送燃料に混合する。
【0078】
1つの実施形態では、TAGおよび芳香族化合物の産生は、生物精製所と並行してセルロース処理工場により実施される。このような一実施形態では、生物精製所により産生されたグリセロールは、さらなる脂質を生成し、その後、脂質を燃料に変換するか、あるいは、脂質を燃料に変換する生物精製工場に脂質を移すかの何れかのために用いられる。
【0079】
別の実施形態では、TAGおよび芳香族化合物の産生は、生物精製所と統合されたセルロース処理工場により実施される。このような一実施形態では、セルロース処理システムがグリセロールを産生するために利用される。例えば、同じ容器は、入り交じったセルロース蒸解混合物およびグリセロール消費混合物の両方を包含する場合がある。セルロースの蒸解およびグリセロールの消費のための微生物を、相性が良い場合に入り混ぜることができる。同じ微生物は、セルロースの蒸解およびグリセロールの産生の両方を同時に行うことができることが想定される。同様に、単一の組み合わさった脂質生成物を両方の工程から回収することができる。
【0080】
別の実施形態では、TAGおよび芳香族化合物の産生は、生物精製所から分かれたセルロース処理工場により実施される。このような一実施形態では、グリセロールの処理がセルロースの処理から切り離されている。1つの例では、燃料生成物までずっとグリセロールの供給を減らすことができる。代替的には、グリセロールの供給は、燃料の産生が別個の生物精製所または化学精製所で完了した状態で、脂質を中間生成物として与えることができる。いくつかの実施形態では、アルカン類はTAG類から抽出されかつグリセロール処理器内で再循環され、さらなる燃料を生成する。供給物質が使い尽くされるまで、この工程を循環様式で繰り返すことができる。
【0081】
上記の記載から、本発明の実施形態に従う方法は一連のステップを含む。これらのステップは、下記のうち1つ以上を含む:
(1)セルロース系原料を受容および前処理すること、
(2)随意に、TAGのエステル交換の副産物として得られたグリセロールを加えること、
(3)前処理された原料を液相および固相に分離すること、
(4)炭素を脂質に変換する能力がある微生物を液相に接種し、その後微生物にそうすることを可能にすること、
(5)結果として生じる微生物を液体から採取すること、
(6)燃料への後続の変換のために脂質を抽出すること、
(7)固相の前処理された原料を水および栄養素と混合し、その後、木質素を攻撃し、芳香族化合物に変換する能力がある微生物を接種すること、
(8)結果として生じる芳香族化合物を、蒸解釜の産出物の液相および気相から分離すること、
(9)副産物として、または、気化および熱と電気への変換のための供給物として、残存する固相の物質を再循環させること、
(10)原料および発酵の次回分のための培養液として、液相物を再循環させること。
【0082】
加えて、いくつかの実施形態では、前処理工程100は、図1に示されているように、相当なセルロースおよびヘミセルロースを固相つまり固体部分148内に残す。このような実施形態では、固相原料148は、ステップ420において、セルロースおよびヘミセルロースを蒸解して細胞内TAGを産生する種、ならびに、木質素を分解して芳香族分子を分泌する種を含む、微生物の共同体を接種される。代謝ステップ430の後に、芳香族化合物の分離520が図5で示されているように進行するが、固相抽出物525はもはや単なる廃棄物または再循環物ではないが、図3のTAGの抽出工程300を受ける。
【0083】
いくつかの実施形態では、図1の原料の前処理工程100の終わりの液体‐固体分離ステップ140が欠けている。このような実施形態では、未分離の原料が液相および固相を蒸解する能力がある微生物の共同体を接種され、芳香族化合物が図5で示されているように分離され、TAGが図3で示されているように抽出される。
【0084】
ここで図6に目を向けると、一実施形態に従うTAGを産生するためのシステム600が示されている。システム600は、制御装置690と連通する処理工場つまり処理施設610を含む。1つの実施形態では、処理工場610は制御装置690とネットワーク接続680を介して連通する。ネットワーク接続680は無線型でも結線型でもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、制御装置690は、処理工場610の動作条件に関する動作指示を与える。制御装置690は処理工場610から情報を受信し、処理工場610への動作指示を調節する帰還として、当該情報を利用することができる。
【0086】
1つの実施形態では、動作条件を監視装置つまり表示装置695上に提示することができ、使用者はユーザインターフェースを介して動作条件と相互作用することができる。監視装置695は、陰極線管、平板画面、または任意の他の表示モジュールの形態であってよい。ユーザインターフェースとしては、キーボード、マウス、ジョイスティック、筆記用ペン、あるいは、マイクロフォン、ビデオカメラ、または他の使用者入力機器等の他の機器を挙げることができる。
【0087】
処理施設610は、滅菌工程設備つまり滅菌器620と、固体抽出工程設備つまり固体抽出器630と、発酵工程設備つまり発酵器640と、生物固体抽出工程設備つまり生物固体抽出器650と、細胞撹乱工程設備つまり細胞撹乱器660と、TAG抽出工程設備つまりTAG抽出器670とを含む。いくつかの実施形態では、制御装置690は発酵器640と連通しており、発酵器640の動作条件を提供/制御する。
【0088】
滅菌工程設備620および固体抽出工程設備630は、図1のセルロース系原料の前処理工程100を共に行う。発酵工程設備640は、図2の接種および発酵工程200を行う。生物固体抽出工程設備650、細胞撹乱工程設備660、およびTAG抽出工程設備670は、図3の微生物のバイオマス回収工程300を共に行う。
【0089】
当業者は、本明細書で開示されている実施形態に関連して記載されている、様々な例解的な論理ブロック、モジュール、およびアルゴリズムのステップを、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両方の組み合わせとして度々実施することができることを十分に理解することになる。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明瞭に例解するために、様々な例解的な成分、ブロック、モジュール、およびステップが、概してそれらの機能性に関して上記に記載されてきた。このような機能性がハードウェアまたはソフトウェアとして実施されるかどうかは、全体のシステムに課せられる設計制約に依存する。当業者は、各特定の用途のための様々な方法で記載されている機能性を実施することができるが、このような実施の決定を本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈してはならない。加えて、モジュール、ブロック、またはステップの範囲内の機能の組み分けは、記載の容易さのためである。本発明から逸脱することなく、具体的な機能またはステップを1つのモジュールまたはブロックから動かすことができる。
【0090】
本明細書で開示されている実施形態に関連して記載されている、様々な例解的な論理ブロックおよびモジュールを、汎用処理器、デジタル信号処理器(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラム可能な論理素子、離散ゲートまたはトランジスタ論理、離散ハードウェアコンポーネント、あるいは、本明細書で記載されている機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせで、実装または実行することができる。汎用処理器はマイクロ処理器であってよいが、選択的に、当該処理器は、任意の処理器、制御装置、マイクロ制御装置、または状態機械であってよい。計算機器の組み合わせ、例えば、DSPおよびマイクロ処理器の組み合わせ、複数のマイクロ処理器、DSPコアと連動する1つ以上のマイクロ処理器、または任意の他のこのような構成として、処理器を実装することもできる。
【0091】
本明細書で開示されている実施形態に関連して記載されている、方法またはアルゴリズムのステップを、ハードウェアにおいて、処理器により実行されるソフトウェアモジュールにおいて、またはその2つの組み合わせにおいて、直接的に具現することができる。ソフトウェアモジュールは、RAM記憶装置、フラッシュ記憶装置、ROM記憶装置、EPROM記憶装置、EEPROM記憶装置、登録器、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CO‐ROM、または任意の他の形態の記憶媒体に常駐することができる。処理器が記憶媒体から情報を読み出し、かつ記憶媒体に情報を書き込むことができるように、例示的な記憶媒体を処理器に連結することができる。選択的に、記憶媒体は処理器に不可欠である場合がある。処理器および記憶媒体は、ASICに常駐することができる。
【0092】
開示されている実施形態の上記の記載は、あらゆる当業者が本発明を行うか用いることを可能にするために提供される。こうした実施形態に対する様々な修正が当業者にとって容易に明白となることになり、本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、本明細書に記載されている一般的な原則を他の実施形態に適用することができる。例えば、セルロース処理工場により受容された原料はセルロース系物質を含有するものと見なされてきたものの、アルカン類および/または芳香族化合物を生じることができる任意の種類の原料を用いることができる。従って、本明細書で提示されている記載および図面は目下好適な実施形態を表し、それ故に、本発明により広範に意図される主要部を表すことを理解されたい。本発明の範囲が当業者にとって自明であり得る他の実施形態を完全に包含することと、本発明の範囲が添付の請求の範囲以外の何物によってもそれ故に制限されないこととが、さらに理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を産生する方法であって、
生物学的物質を含む原料を受容することと、
前記原料を脂質に変換する能力がある微生物に前記原料を曝すことと、
産生された脂質を抽出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
機械的前処理、熱化学的前処理、滅菌、紫外線照射、殺菌、濾過、および分離のうち少なくとも1つで前記原料を前処理すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記産生された脂質がトリアシルグリセリド類を含み、
前記トリアシルグリセリド類をグリセロール類および脂肪酸メチルエステル類に分離すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グリセロール類を前記原料に加えることにより前記グリセロール類を再循環させること、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記原料を液相および固相に分離すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記原料を微生物に曝すことが、
前記液相に微生物を接種し、前記微生物が前記原料を脂質に変換するのに適した条件を与えること、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脂質の抽出の後に、前記再循環された液相の物質を前記原料に加えることにより任意の残存する液相の物質を再循環させること、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水および栄養素を前記固相に加えることと、
前記固相を芳香族化合物に変換する能力がある微生物を前記固体に接種することと、
前記微生物が前記固相を芳香族化合物に変換するのに適した条件を与えることと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
産生された芳香族化合物を抽出すること、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
芳香族化合物の抽出の後に、気化のために前記固相の物質を原料として利用することにより任意の残存する固相の物質を再循環させること、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記固相が木質素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記産生された脂質を燃料に変換すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
燃料を産生する方法であって、
セルロースを含む原料を受容することと、
微生物を用いて、前記原料の少なくとも一部を脂質に変換することと、
前記産生された脂質を前記微生物から抽出することと、
前記産生された脂質を燃料に変換することと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記セルロースが、おがくず、木片、藻類、都市固形ゴミ、および他の生物学的物質のうち少なくとも1つを含むセルロース系廃棄物に由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記原料が、遊離糖類、ヘミセルロース、および他の植物をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記産生された脂質が、遊離脂肪酸類、トリアシルグリセリド類、蝋エステル類、直鎖炭化水素類、および分鎖炭化水素類を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記原料がグリセロールで強化される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物が、トリコデルマ・リーセイ、アシネトバクター種、および、アクチノミセス属とストレプトミセス属の一員から成る群から選択される、細菌種または真菌種のうち少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物が、前記原料を芳香族化合物に変換する能力がさらにある、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が前記脂質を細胞内構造中に保存し、前記方法が、
前記脂質を抽出することより前に前記微生物を少なくとも部分的に乾燥させること、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記脂質を抽出することが、アルコール系溶媒および極性有機溶媒に前記微生物を曝すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記極性有機溶媒が、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒が、およそ10体積%のメタノールおよびおよそ90体積%のクロロホルムの混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記脂質がトリアシルグリセリド類を含み、前記産生された脂質を燃料に変換することが、
前記トリアシルグリセリド類を脂肪酸類およびグリセロール類に解離することと、
飽和炭化水素類を産生するように前記脂肪酸類を水素化処理することと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記産生された燃料が、バイオディーゼル燃料、ディーゼル燃料、ガソリン燃料、およびジェット燃料のうち少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
トリアシルグリセリド類を産生するためのシステムであって、
発酵器と、
前記発酵器と連通し、前記発酵器に動作指示を与える、制御装置と、
を備え、
前記発酵器が前記トリアシルグリセリド類を生じる、システム。
【請求項28】
前記発酵器に連結され、前記トリアシルグリセリド類を回収する、抽出器、
をさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記制御装置がネットワークを介して前記発酵器と連通する、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
使用者がユーザインターフェースにて前記発酵器に対する動作指示を変更することができるように、前記制御装置が前記ユーザインターフェースと連通する、請求項27に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−504967(P2012−504967A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531208(P2011−531208)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060169
【国際公開番号】WO2010/042819
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511087110)メノン アンド アソシエイツ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】