説明

燃料用間伐材の処理方法及び装置

【課題】間伐材の収集後の燃料原料として輸送する際の非効率を改善する燃料用間伐材の処理方法及び装置を提供。
【解決手段】燃料用間伐材の処理方法は、間伐材を水蒸気爆砕し、水蒸気爆砕間伐材を乾燥して原料して移送することを特徴とし、前記水蒸気爆砕は、温度200〜260℃、圧力2.0〜4.5MPaの下で、1分以上置いた後、圧力を開放して間伐材の細胞膜を水蒸気破裂させて間伐材を砕くものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料用間伐材の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の間伐材の処理方法としては、炭化処理して使用するもの等が提案されている(特許文献1を参照)。最近、活力のある森林を造成し、均質な材を生産するためには、間伐は欠かすことができない。しかしながら、間伐材を収集するべく、林道の端まで運ばれた間伐材を収集するコストがかかるため、林地における残材は年間約2000万m発生していると推計されているが、殆どが未利用のままである。僅かに、電力事業向けに間伐材を燃料とすべく、生木のまま輸送し、途中でチップ化して輸送して発電所などの必要とされる場所に運んでいた。
【0003】
しかしながら、この方法ではチップ化するまでは樹木を伐採したままの形状で積み上げるので、トラックなどの荷台に収容できる空間の大部分は空気であり、樹木の占める割合は3割以下である。しかも樹木の75%は水分である。ところが、燃料に用いるときには樹木中の水分も不要なものである。それにもかかわらず、間伐材の輸送はあたかも空気と水分を運んでいるようなものであり、効率の悪いものであった。その上、チップ化したものでも40〜50%の水分を含んでいる上、チップ間の空隙も結構あるので、チップ化したものを発電所まで運ぶときでも、半分程度が水分や空気のものを運んでいることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、間伐材の収集後の燃料原料として輸送する際の非効率を改善する燃料用間伐材の処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等、上記課題に鑑み、間伐材集積地で間伐材に水蒸気爆砕と乾燥との処理をして、その間伐材を燃料原料として輸送することによって、従来問題となった間伐材の搬送の非効率性が改善されることを見出し、本発明に到ったものである。
即ち、本発明は以下の構成又は構造により、上記目的を達成したものである。
【0007】
本発明の燃料用間伐材の処理方法は、間伐材を水蒸気爆砕し、爆砕間伐材を乾燥して原料して移送することを特徴とする。
前記水蒸気爆砕の前に乾燥するも好ましい。
また、前記前乾燥は、間伐材を篩に掛けて振動させながら乾燥することが好ましい。
前記水蒸気爆砕は、温度200〜260℃、圧力2.0〜4.5MPaの下で、1分以上置いた後、圧力を開放して間伐材の細胞膜を破裂させて間伐材を砕くことが好ましい。
【0008】
本発明はまた、前記燃料用間伐材の処理方法を具備した装置であって、爆砕機と、乾燥機と、爆砕機及び乾燥機を搭載する1以上の移動手段とを含む装置であることを特徴とする。
前記装置は、移動手段が自動車両であることが好ましい。
前記乾燥機は、複数あり、そのうちの少なくとも一機が振動式乾燥機であることが好ましい。
前記装置は、発電機と、爆砕機に高圧蒸気を供給する高圧ボイラーと、乾燥機に用いる空気を加熱する蒸気を供給する低圧ボイラーと、計器類、自動弁の作動用の空気源のためのコンプレッサーと、を含むことが好ましい。
【0009】
ここで水蒸気爆砕とは原料の間伐材を構成する植物の細胞膜を蒸気により高圧で所定時間保持した後、圧力を急激に開放することで、圧縮されていた蒸気、原料の細胞膜内に含まれていた水分が爆発的に膨張し、細胞膜が破壊される状態をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法では間伐材を水蒸気爆砕・乾燥するので、含有水分は5〜20%程度になり、間伐材の量が1/3以下になる。これに対し、従来、生木をチップ化した場合には若干の重量減はあるとしても、殆ど変わらないので、例えば、3台のトラックで輸送しなければならなかったのが1台で済み、輸送費が大幅に軽減できる。しかも、従来のように生木のままチップ化しても水分が多いため、その燃料のもつ熱量は少ないのに対し、本発明における水蒸気爆砕、乾燥工程を経たものは、燃料としたときの熱量は高い。さらに、水蒸気爆砕、乾燥に要する費用は余分にかかるものの、輸送費の軽減で経済的にもプラスとなる。その結果、従来、放置されていた間伐材が有効利用できるので、産業上、極めて有用である。
【0011】
また、本発明装置は林道を移動できるので、林道の端に運ばれた間伐材或いは林道の端に間伐材を運びつつ、収集しながら、水蒸気爆砕・乾燥することで収容すべき間伐材の容積を少なくしつつ処理していける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の燃料用間伐材の処理方法が実施される移動自在型間伐材処理装置を示すもので、第1自動車両と、自動車両に載置される破砕機と第1振動式乾燥機と第2振動式乾燥機を示す平面図及び側面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の燃料用間伐材の処理方法が実施される移動自在型間伐材処理装置を示すもので、第2自動車両と、自動車両に載置される爆砕装置と高圧ボイラーを示す平面図及び側面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の燃料用間伐材の処理方法が実施される移動自在型間伐材処理装置を示すもので、第3自動車両と、自動車両に載置される爆砕装置と乾燥機に必要とされる補助機等のユーティリティを示す平面図及び側面図である。
【図4】爆砕装置の側面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ・・・トラック
2 ・・・破砕機
3 ・・・第1振動式乾燥機
4 ・・・第2振動式乾燥機
5 ・・・トラック
6 ・・・爆砕装置
7 ・・・高圧ボイラー
8 ・・・トラック
9 ・・・用水タンク
10 ・・・ボイラー
11 ・・・コンプレッサー
12 ・・・発電機
61 ・・・供給ホッパー
62 ・・・供給調整バルブ
63 ・・・加圧タンク
64 ・・・ボールバルブ
65 ・・・排出チューブ
66 ・・・クッションタンク
67 ・・・抜出スクリュー
68 ・・・開口ソケット
69 ・・・サイレンサー
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1−4を参照しつつ詳細に説明する。
燃料用間伐材の処理方法は、間伐材を水蒸気爆砕し、水蒸気爆砕間伐材を乾燥して移送する。その処理をする装置の1例は、図1−3に示すように、自動車両(トラック)3台に本発明の好ましい燃料用間伐材の処理装置を示した。しかしながら、本発明を実施するに当たっては、最小限、図1に示す乾燥機1台と、図2に示す爆砕機1台と自動車両1台で済む。
しかしながら、より諸条件に柔軟に対応するためには、以下のトラック3台に補助機を含めたものが用いられる。
【0015】
すなわち、本発明の最良の燃料用間伐材の処理方法を具備した装置にあっては、爆砕機と、乾燥機と、爆砕機及び乾燥機を搭載する1以上の移動手段とを含む装置のほかに、図1−3に示すように、トラック3台の荷台に補助機及び機器使用のユーテリィティを具備することが好ましい。
図1に示すトラック1には、破砕機2と乾燥機3、4が荷台に搭載されている。図2に示すトラック5には爆砕装置6と、水蒸気爆砕する際に高温、高圧にする必要から用いられる高圧ボイラー7が搭載されている。図3に示すトラック8にはその他のユーティリティーが搭載されている。爆砕装置6は図4に示すように、供給ホッパー61、供給調整バルブ62、加圧タンク63、ボールバルブ64、排出チューブ65、クッションタンク66、クッションタンク66の下部に配される抜出スクリュー67、及びクッションタンク66の上部に設置されるサイレンサー69とからなる。また、抜出スクリュー67の押し出し端部の開口ソケット68は、図1に示す第2振動式乾燥機4に連結される。
【0016】
トラック1の破砕機2は、必要により使用される間伐材の細裁断機であり、爆砕装置6の供給ホッパーに投入できないような大きさの間伐材を裁断するためのものである。
上記裁断した間伐材は直接、トラック2の爆砕装置6に搬入しても良いが、好ましくは、トラック1の第1振動式乾燥機3に前もって通すことが好ましい。爆砕装置6の前に乾燥する方が必要とされる熱量を少なくすることができるからである。また、この場合、図1に示す2台の乾燥機にあって、爆砕装置6に投入する前の乾燥機は振動式乾燥機3が好ましい。間伐材は土砂を含んでいるので、そのまま爆砕装置6に入れると水蒸気爆砕の際の高速流体により、爆砕装置内壁が摩耗するが、振動式乾燥機3を用いれば、土砂を乾燥過程で振動させつつ落とすことが可能であるからである。振動式乾燥機は、搬送コンベアとして篩スクリーンを具備し、スクリーンを振動させながら移動させる。従って、間伐材を堆積させて振動させるスクリーンは目の粗いものが用いられる。尚、後述の振動式乾燥機4と区別するべく以下、第1振動式乾燥機3と呼ぶ。
【0017】
図4に示すように、爆砕装置6は、供給ホッパー61、供給調整バルブ62、加圧タンク63、ボールバルブ64、排出チューブ65、クッションタンク66、クッションタンク66の下部に配される抜出スクリュー67、及びクッションタンク66の上部に設置されるサイレンサー69とからなる。
【0018】
水蒸気爆砕に当たっては間伐材を構成する植物細胞膜を蒸煮した上で、水蒸気爆砕することがこのましい。蒸煮することで細胞膜を破壊させやすくなるためである。そのメカニズムはヘミセルロースを主に加水分解させ、酢酸を形成させて細胞膜を破壊するものと考えられている。水蒸気爆砕は上述したごとく細胞膜を破裂させることができる程度の圧力と温度の条件におかれた間伐材を瞬時に開放することで行われる。
即ち、加圧タンク63内に間伐材が供給され、加圧タンク内は、図2に示す高圧ボイラーからの水蒸気ガスが導入され加圧される。所定時間の加圧加熱後、ボールバルブ64で、瞬時に内部ボール弁が回転することによって、加圧タンク63内の圧力を開放する。これにより、間伐材は、加圧蒸気と共に、クッションタンク66に強制排出される。排出蒸気は、クッションタンク66から水蒸気爆砕音が緩和されながらサイレンサー62から外部へ排出される。一方、水蒸気爆砕された間伐材は下方に落ち、抜出スクリュー67、抜出スクリュー67の押し出し端部の開口ソケット68を介して、図1に示す第2振動式乾燥機4に送り出される。
【0019】
この場合、解放前の条件は好適には水蒸気圧で2.0〜4.5MPa、好ましくは2.5〜3.5MPaで、200〜260℃の条件下で行われる。また、水蒸気爆砕前は1分間以上、特に2〜5分間が好ましく、この状態を保持することで十分であり、効率的である。
また、上記温度より低い条件、例えば、170〜180℃程度の場合には、0.7MPa程度の圧力で行われるが、この場合には時間がかかり、1〜4時間かかるので好ましくない。爆砕機6で水蒸気爆砕された間伐材はボール弁の回転で瞬時にタンク内を開放しクッションタンク63の内壁の接線方向から反応物が入り、渦をまきながら蒸気は上方に、間伐材は下方に向かい、蒸気はサイレンサー69の上方から抜ける。間伐材は抜出スクリュー64から掻き出される。
【0020】
爆砕装置6で処理された間伐材は、水蒸気爆砕過程で水蒸気雰囲気下に置かれるので、間伐材の含有水分を軽減すべく、この後、乾燥される。乾燥は振動式である必要はないが、同じ振動式乾燥機であれば、トラック1の荷台に平行に配置すればよいので、水蒸気爆砕後も好適には振動式乾燥機4が用いられる。水蒸気爆砕後に用いる第2振動式乾燥機4は水蒸気爆砕前に用いる第1振動式乾燥機3のように間伐材とともに紛れ込む土砂を除く必要がなく、しかも水蒸気爆砕で粉砕された細胞膜をできるだけ回収したいので、間伐材を堆積させて振動させるコンベアスクリーンは目の細かいものが用いられる点で異なる。爆砕装置6を用いることで、乾燥機1で脱水しても脱水できないような水分まで除去できる状態にするので、爆砕装置6を経由した間伐材を乾燥することにより間伐材の水分は5%〜20%程度にすることができる。
【0021】
好ましい実施態様として、自動車両に補助機として、用水タンク9とボイラー10とコンプレッサー11と発電機12とを含む。このうち、用水タンク9は水蒸気爆砕の際に用いる高圧ボイラー用の水蒸気の原料と乾燥機に用いるエアを加熱するための蒸気の原料として用いることができる。また、ボイラー10は乾燥機に用いるエアを加熱する蒸気であり、コンプレッサー11は計器類、自動弁の作動用の空気源のためのものである。また、発電機12は前記機械類を動かすためのものである。
【0022】
上記説明はモバイル型、それも3台のトラックに分散させたものであったが、台数を適宜変更したり、個々のトラックに搭載される夫々の機械の配置も適宜変更できることも言うまでもない。モバイル型ではなく、全くの固定型でも良い。また、モバイル型ではあるが、爆砕装置、乾燥装置、その他の付属装置を荷台から降ろしてある一定期間、その地の周辺の間伐材の処理をし、その間、本発明で処理されたものを燃料とする工場に運ぶ車はその地に置かれることはあるとしても、その他の車は戻るようになっていてもよい。そして、その地の周辺の間伐材の処理が終わり次第、再び、車を呼び戻して、荷台に載せて別な土地に移動する。
【0023】
<実施例>
水分75%の間伐材1トンを順次、トラックの荷台に載せた、第1振動式乾燥機3に投入する。第1振動式乾燥機は幅0.5m、長さ5mの大きさで120℃に設定されており、間伐材は2.5〜5メッシュのスクリーン上に約50mmの厚さに敷かれて振動しつつ移動する。加熱時間はおよそ40分である。乾燥された間伐材は順次送り出され、30リットル入りバケツに取り出し、爆砕装置の供給ホッパーから投入される。爆砕装置で間伐材は水蒸気により243℃、3.461MPaに3分加熱加圧されて水蒸気爆砕される。
【0024】
水蒸気爆砕された間伐材はクッションタンク内壁に接線方向から入り、渦を形成しながら下方にあるスクリューで掻き出されながら、回収される。間伐材はこの後、第2振動式乾燥機4に投入される。第2振動式は第1振動式乾燥機とスクリーンのメッシュが異なるだけであり、幅0.5m、長さ5mの大きさで120℃に設定されている。間伐材は40メッシュのスクリーン上に約50mmの厚さに敷かれて振動しつつ移動する。加熱時間はおよそ40分である。各工程経由後の諸物性と各工程の投入エネルギーを、表1に示す。20%水分の木材の発熱量は、参考資料:木材便覧245頁に示す第5.37表によれば、3478kcal/kgであり、第2振動式乾燥機出口の間伐材の量は313kgであるから、1,088,614kcalである。
【0025】
75%水分の木材の発熱量は、上述の木材便覧の第5.37表には直接の値がないので、この表から実験式を作成すると、発熱量は4562−54.2x(xは水分(%)となるので、497kcalであるから、これに対し、75%水分の間伐材1トンをそのまま燃料とした場合には、497,000kcalである。即ち、本発明の方法により得られた燃料は、従来の倍以上の熱量が得られるのである。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の燃料用間伐材の処理方法及び処理装置は、間伐材を燃料として利用することに利便性の高い産業上の利用可能性があるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間伐材を水蒸気爆砕し、水蒸気爆砕間伐材を乾燥して原料して移送することを特徴とする燃料用間伐材の処理方法。
【請求項2】
前記水蒸気爆砕の前に乾燥する請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
前記前乾燥は、間伐材を網のスクリーン上で篩に掛けて振動させながら乾燥する請求項2記載の処理方法。
【請求項4】
前記水蒸気爆砕は、温度200〜260℃、圧力2.0〜4.5MPaの下で、1分以上置いた後、圧力を開放して間伐材の細胞膜を破裂させて間伐材を砕くものである請求項1〜3の何れかの項に記載の燃料用間伐材の処理方法。
【請求項5】
前記請求項1〜4の何れかに記載の処理方法を具備した、間伐材を処理する装置であって、爆砕機と、乾燥機と、爆砕機及び乾燥機を搭載する1以上の移動手段とを含む装置。
【請求項6】
移動手段が自動車両である請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記乾燥機は、複数あり、そのうちの少なくとも一機が振動式乾燥機である請求項5又は6記載の装置。
【請求項8】
発電機と、爆砕機に高圧蒸気を供給する高圧ボイラーと、乾燥機に用いる空気を加熱する蒸気を供給する低圧ボイラーと、計器類、自動弁の作動用の空気源のためのコンプレッサーと、を含む請求項5〜7のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−11583(P2012−11583A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147855(P2010−147855)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(504229815)株式会社CDMコンサルティング (12)
【Fターム(参考)】