説明

燃料用除塵フィルター、燃料用除塵フィルターユニット及び給油機用除塵ユニット

【課題】本発明は、ガソリンスタンド等に設けられた貯蔵タンクからガソリンなど液体燃料を取り出す際に用いられ、貯蔵タンクから取り出した液体燃料に含まれる固体不純物を分離するための燃料用除塵フィルター、燃料用除塵フィルターユニット及び給油機用除塵ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の燃料用除塵フィルターは、繊維集合物が筒状に巻回されてなる筒状体からなり、前記繊維集合物はポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含み、かつ前記繊維集合物は繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%以上含む。そして、燃料用除塵フィルターは、液体燃料に曝される環境下でも劣化せず、長期間の利用時にも目開きがなく、濾過ライフが長い。また、優れた通液性と濾過精度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガソリンなどの液体燃料と固体不純物とを分離するための燃料用除塵フィルター、この燃料用除塵フィルターとケーシングとからなる燃料用除塵フィルターユニット、及び自動車などの車両へガソリン等の液体燃料を給油する際に利用される給油機に用いられる除塵ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガソリン等の液体燃料は、ガソリンスタンドなどの給油所の地下に設けられた貯蔵タンクから計量機にポンプで引き上げられて自動車などの車両へ供給される。この貯蔵タンク内のガソリンは、タンク壁面などから生じた錆や塗装片などの固体不純物を含む。そして、ガソリン供給の際に、この錆や塗装片などが計量機内に流入して故障の原因になったり、自動車などの車両のガソリンタンクに混入し車両故障の原因となる場合がある。
【0003】
従来、この貯蔵タンク内の錆や塗装片が計量機内に流入することを防ぐ手段として、ガソリンを貯蔵タンクから引き上げるポンプに金属製メッシュ状フィルターを設けている。
【0004】
また、ポリオキシメチレン系重合体を用いたフィルターに関する技術は、特許文献1〜3が開示されている。しかし、いずれの文献も、貯蔵タンクからガソリンなどを取り出す際に用いられ、ガソリンなどの液体燃料と固体不純物とを分離するための燃料用除塵フィルターを開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−215520号公報
【特許文献2】特開2005−13829号公報
【特許文献3】特開2008−155097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から用いられていた金属製メッシュ状フィルターは、50L/分以上の流量条件下で用いられる場合に、目開きが発生し、錆や塗装片などの固体不純物を分離できない場合があった。また、金属製メッシュ状フィルター自体に新たな錆が発生する場合もあり、錆が計量機内に流入することを十分に防ぐことができないものであった。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、目開きすることなく、ガソリンなどの液体燃料と錆や塗装片などの固体不純物とを分離できる燃料用除塵フィルターおよび燃料用除塵フィルターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まず、液体燃料と固体不純物とを分離するフィルターの素材について検討した。詳細には、錆が発生しない素材を選択するべく、一般に用いられている合成樹脂を検討した。しかし、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンを用いたフィルターは、ガソリンに接触させると、樹脂が膨潤したり、溶解したりして、分離機能を発揮できるものは得られなかった。そこで、本発明者らは、種々の樹脂についてガソリン等の燃料に対する耐油性を検討し、その結果、ガソリン等の液体燃料に曝される環境下においても劣化しない樹脂成分としてポリオキシメチレンに着目し、ポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含む構成であると液体燃料に曝される環境下でも膨潤したり、溶解したりせず、濾過ライフの長いフィルターが得られることを見出した。次に、目開きし難く、濾過ライフの長いフィルターの形状を検討した結果、繊維集合物を筒状に巻回した形状に到達した。さらに、フィルターを構成する繊維の繊度を10〜100dtexにすると、ガソリンなどの液体燃料と錆や塗装片などの固体不純物とを分離する用途に用いた場合において、特に優れた通液性と濾過精度が得られることをも見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明の燃料用除塵フィルターは、繊維集合物が筒状に巻回されてなる筒状体からなる燃料用除塵フィルターであって、前記繊維集合物はポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含み、かつ前記繊維集合物は繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%以上含む。
【0010】
また、本発明の燃料用除塵フィルターユニットは、上記燃料用除塵フィルターとポリオキシメチレン系重合体で成形されてなるケーシングとからなる。
【0011】
また、本発明の給油機用除塵ユニットは、ガソリンスタンドで自動車などの車両に給油する液体燃料を濾過するための除塵ユニットであって、上記燃料用除塵フィルター又は上記燃料用除塵フィルターユニットからなり、貯蔵タンクから取り出した液体燃料に含まれる固体不純物を分離するために用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料用除塵フィルター及び燃料用除塵フィルターユニットは、ガソリン等の液体燃料に曝される環境下でも劣化せず、長期間の利用時にも目開きがなく、濾過ライフが長い。また、優れた通液性と濾過精度を有する。本発明の給油機用除塵ユニットは、ガソリンスタンドで自動車などの車両に給油する液体燃料を濾過するために用いられ、貯蔵タンクから取り出した液体燃料に含まれる固体不純物を良好に分離することができ、優れた通液性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の燃料用除塵フィルターの実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の燃料用除塵フィルターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の燃料用除塵フィルターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の燃料用除塵フィルターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の燃料用除塵フィルターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の燃料用除塵フィルターユニットの実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明で用いられるケーシングの一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の燃料用除塵フィルターの使用状況の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃料用除塵フィルター(以下、単にフィルターともいう)は、ガソリン、軽油、重油、灯油などの石油由来の液体燃料やバイオマスエタノール、アルコール燃料などのバイオ燃料を貯蔵タンクから取り出す際に用いられ、これらの燃料内に含まれる貯蔵タンク内の錆や塗装片などの固体不純物を分離するために用いられるフィルターである。
【0015】
本発明の燃料用除塵フィルターの使用状況の一例を図8に示す。図8は、ガソリンスタンドの地下貯蔵タンク21からガソリン26が計量機22の中に設けられた除塵ユニット23、ポンプ24、流量計25を通って、自動車30に供給される様子を示している。本発明の燃料用除塵フィルター、燃料用除塵フィルターユニット、又は給油機用除塵ユニットは、図8では、除塵ユニット23内に設けられている。そして、これらの本発明は、ポンプ24によって地下貯蔵タンク21から引き上げられたガソリン等の液体燃料内に含まれる地下貯蔵タンク内で発生した錆や塗装片などを分離する。
【0016】
本発明において、繊維集合物は、ポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含む。繊維集合物がポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含む構成であると、ガソリン、軽油、重油、灯油などの石油由来の液体燃料やバイオマスエタノール、アルコール燃料などのバイオ燃料に曝される条件下で使用されても劣化することがない。かかる効果をより顕著に得る観点から、繊維集合物は、ポリオキシメチレン系重合体を70質量%以上含むことが好ましく、ポリオキシメチレン系重合体を90質量%以上含むことがより好ましい。最も好ましくは、繊維集合物が実質的にポリオキシメチレン系重合体のみからなる。ここで、「実質的に」という用語は、安定剤等の添加剤が含まれる場合には、ポリオキシメチレン系重合体の割合が完全には100質量%とならないことを考慮して使用している。なお、繊維集合物に含まれるポリオキシメチレン系重合体の好ましい上限は100質量%である。
【0017】
本明細書において、ポリオキシメチレン系重合体とは、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーである。ポリオキシメチレン系重合体は、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンを主原料として重合反応によって得られる、いわゆるポリオキシメチレンホモポリマーであってよい。あるいは、ポリオキシメチレン系重合体は、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有し、置換基を有してよいオキシアルキレン単位を有する、いわゆるポリオキシメチレンコポリマーであってよい。
【0018】
本発明では、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマーのうちいずれか一方を単独で使用してよく、或いはこれらの混合物又はこれらを複合成形して使用することができる。ポリオキシメチレンホモポリマーの市販品としては、デュポン社製商品名“デルリン”があり、 ポリオキシメチレンコポリマーの市販品としては、ポリプラスチックス社製商品名“ジュラコン”、三菱エンジニアリングプラスチックス社製商品名“ユピタール”がある。本発明ではこれらの市販品を使用できる。また、ポリオキシメチレン系重合体は、他の構成単位を含有するコポリマー、即ち、ブロックコポリマー、ターポリマー、および架橋ポリマーのいずれであってもよい。
【0019】
なかでも、ポリオキシメチレン系重合体は、ポリオキシメチレンコポリマーであることが好ましい。ポリオキシメチレンコポリマーは、ポリオキシメチレンホモポリマーに比べて、繰り返し変形させた場合の疲労強さに優れ、また、熱劣化しにくく、熱水安定性や耐アルカリ性にも優れる。そのため、ポリオキシメチレンコポリマーを用いたフィルターは、長期間使用時の変形を抑制することができる。
【0020】
ポリオキシメチレンコポリマーは、主鎖がオキシメチレン単位とコモノマー単位からなる。コモノマーは、エチレンオキサイド換算値として0.1〜10質量%の範囲で共重合されていることが好ましく、0.5〜8質量%の範囲で共重合されていることがより好ましい。コモノマーの共重合割合が上記範囲内であると、より疲労強さに優れたポリオキシメチレンコポリマーが得られ、その結果、長期間の使用でも変形することがないフィルターを得ることができる。なお、コモノマーはCH2CH2Oであることが好ましい。
【0021】
主鎖のオキシメチレン単位に結合し得る置換基又はコモノマー単位に結合し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、フェニル基、または他の有機基であってよい。
【0022】
繊維集合物に含まれるポリオキシメチレン系重合体は、融解ピーク温度が135〜190℃の範囲内にあることが好ましく、融解ピーク温度が140〜180℃の範囲内にあることがより好ましい。融解ピーク温度が上記範囲内にあると、100℃程度の環境下で連続使用するなど耐熱性が求められる場合でも繊維およびフィルターの物性が損なわれることがなく、その形状も維持することができる。
【0023】
繊維集合物に含まれるポリオキシメチレン系重合体は、Z平均分子量が50万以下であることが好ましく、35万以下であることがより好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。ポリオキシメチレン系重合体のZ平均分子量が50万以下であると、結晶化速度が速くなりすぎず、糸切れなく紡糸することができる。また、押出機で溶融する際に未溶融物が発生することがない。このため、繊維集合物中の繊維繊度が均一になり、濾過ムラのないフィルターを得ることができる。なお、繊維が2以上の重合体からなる場合、Z平均分子量は、2以上の重合体のそれぞれのZ平均分子量がひとつとなって測定される場合がある。個別に分解することは困難であるが、ひとつとなって測定された値をZ平均分子量として用いることは可能である。
【0024】
繊維集合物は、ポリオキシメチレン系重合体以外の他の成分を50質量%以下の範囲で含んでよい。他の成分は、30質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。他の成分は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドなどの高分子材料の中から、1又は2以上を選択して用いることができる。或いは、コットン、シルク、ウール、麻、パルプなどの天然繊維、又はレーヨン、キュプラなどの再生繊維を用いてもよい。
【0025】
本発明の燃料用除塵フィルターは、繊維集合物が筒状に巻回されてなる筒状体からなる。繊維集合物を筒状に巻回した筒状体からなるフィルターは、長期間の利用時にも目開きがなく、濾過ライフが長いフィルターとなる。
【0026】
繊維集合物は、モノフィラメント、マルチフィラメント、又はフィルムヤーンなどのフィラメント或いは、撚糸、紡績糸、織物、編物、不織布、又は抄造紙などの繊維から構成されるものであってよい。なかでも、繊維集合物は不織布であることが好ましい。不織布が筒状に巻回されてなるフィルターは繊維の脱落が少ない。また、フィルターの径方向に粗密構造を設けることが容易である。
【0027】
繊維集合物が不織布である場合、不織布は、熱接着不織布、エアスルー不織布、ケミカルボンド不織布、水流交絡不織布、ニードルパンチ不織布、エアレイ不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、又は、繊維間が接着されていないウェブであってよい。
【0028】
繊維集合物は、繊維集合物を構成する繊維同士が互いに接着されてなることが好ましい。繊維同士が互いに接着されてなると、より繊維が脱落しにくいフィルターとなる。
【0029】
巻回された繊維集合物は、フィルターの径方向に粗密構造を有してよい。フィルターの内側から外側に向かって液体燃料を流す場合には、フィルターの内周から外周へ空隙率を段階的に又は連続的に小さくするとよい。或いは、フィルターの外側から内側に向かって液体燃料を流す場合には、フィルターの内周から外周へ空隙率を段階的に又は連続的に大きくするとよい。
【0030】
繊維集合物は、繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%以上含む。繊度が10dtex以上の繊維を含むと、ガソリンなどの液体燃料と錆や塗装片などの固体不純物とを分離する用途に用いた場合、固体不純物に適した繊維間空隙となり、圧力損失が高くなりすぎず、高い水準で通液性と濾過精度を両立することができる。また、繊度が100dtex以下の繊維を含むと、燃料用除塵フィルターとして十分な濾過精度のフィルター得ることができる。かかる効果をより顕著に得る観点から、繊維集合物は、繊度が12〜60dtexの繊維を含むことが好ましく、繊度が13〜40dtexの繊維を含むことがより好ましい。
【0031】
特に、固体不純物が30〜70μmである場合、繊維集合物は、繊度が15〜35dtexの繊維を含むことがさらに好ましい。かかる繊度であると、特に30〜70μm程度の固体不純物を分離することに適した緻密性となる。即ち、30〜70μm程度の固体不純物を分離する環境下において、通液性と濾過精度に優れ、かつ濾過ライフが長いフィルターとなる。
【0032】
繊維集合物を構成する繊維は、繊度が10〜100dtexの繊維を70質量%以上含むことが好ましい。繊度が10〜100dtexの繊維を70質量%以上含むと、固体不純物に適した繊維間空隙を形成することができ、圧力損失の低いフィルターを得ることができる。かかる効果をより顕著に得る観点から、繊維集合物は、繊度が10〜100dtexの繊維を90質量%以上含むことがより好ましく、繊度が10〜100dtexの繊維のみからなることがさらに好ましい。なお、繊維集合物に含まれる繊度が10〜100dtexの繊維の上限値は100質量%である。
【0033】
繊維集合物は、ポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含むポリオキシメチレン系繊維を50質量%以上含み、かつポリオキシメチレン系繊維の繊度が10〜100dtexであることが好ましい。かかる構成であると、耐油性と固体不純物に適した繊維間空隙を同時に得ることができる。
【0034】
繊維集合物を構成する繊維は、特に限定されず、単一繊維、又は、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、並列型複合繊維、分割型複合繊維などの複合繊維を用いることができる。また、繊維集合物を構成する繊維の繊維断面は、円形であってよく、また、三角形、四角形、五角形等の多角形、楕円、楔型、Y型、X型、星形等の異形断面であってもよい。また、繊維の一部分又は全部分がフィブリル化されていてもよい。
【0035】
繊維集合物を構成する繊維は、熱接着繊維を含むことが好ましい。熱接着繊維は、繊維の周面の少なくとも一部に熱加工時の熱処理温度で溶融又は軟化する樹脂成分が配置された繊維である。例えば、鞘成分が低融点樹脂、芯成分が高融点樹脂である芯鞘型複合繊維が挙げられる。中でも繊維同士の接着性と液体燃料に対する耐性とを両立するフィルターを得る観点から、繊維集合物を構成する繊維は後述の熱接着性複合繊維を含むことが好ましい。
【0036】
燃料用除塵フィルターは、筒状体の長手方向の一方の端面が閉鎖されており、かつ他方の端面が開放されてなることが好ましい。ここで、閉鎖という用語は、その端面において、直径30μmの粒子の捕集効率が95%以上であることをいい、開放という用語は、直径30μmの粒子の捕集効率が95%未満であることをいう。かかる構成であると、開放された端面から分離対象の燃料及び固体不純物を流入させることができ、閉鎖された端面からは、固体不純物が流出しないので、筒状のフィルターの内側から外側へ通液させることにより、固体不純物を分離することができる。また、フィルターの一方の端面が閉鎖されているため、フィルター内部に残渣を蓄積することができ、洗浄や廃棄も容易である。なお、閉鎖された端面は、液体燃料が通過できる構成であってもよいし、液体燃料が通過できない構成であってもよい。
【0037】
一方の端面を閉鎖した構成は、例えば、繊維集合体を巻回した筒状体を作製し、その後、筒状体の一方の端面に閉鎖部材を固定し閉鎖して得ることができる。或いは、筒状体の端面を閉鎖しながら繊維集合物を巻回して得ることができる。
【0038】
閉鎖部材は、ポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含むことがより好ましい。閉鎖部材がポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含むと、繊維集合物と同種の素材を用いることに起因して、筒状体と閉鎖部材との接着性がよく、強固に接着することができる。
【0039】
閉鎖部材は、成形体、不織布、樹脂シート、フィルム、木製板、金属板などであってよい。なかでも、閉鎖部材が樹脂シートであると、筒状体との接着が容易となる。また、閉鎖部材が不織布であると、閉鎖部材がフィルター機能を有する構成となる。
【0040】
閉鎖部材の形状は、端面の形状に合わせて選択することができる。端面が円形である場合には閉鎖部材は、円盤状であることが好ましい。閉鎖部材が円盤状であると、筒状体と閉鎖部材とを隙間なく接着することが容易になる。閉鎖部材を用いずに端面を閉鎖する場合は、円盤状に閉鎖することに限らず、直線状、十字状、又は円錐状など、どのような形態で閉鎖してもよい。
【0041】
閉鎖部材の厚みは、0.01〜20mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることが好ましい。閉鎖部材の厚みが0.01mm以上であると、閉鎖部材の強度が十分であり、閉鎖部材の厚みが20mm以下であると、コスト高とならず、経済的に有利である。
【0042】
筒状体の端面に閉鎖部材を固定する手段は、例えば、熱接着、超音波接着などが挙げられる。或いは、閉鎖部材を用いずに筒状体の端面を偏平化して接着して閉鎖してもよい。偏平化して接着するとは、例えば、図4、図5のように、円筒状のフィルターの端面を閉鎖することである。
【0043】
燃料用除塵フィルターの外径は、10〜100mmであることが好ましく、30〜70mmであることがより好ましく、40〜60mmであることがさらに好ましい。外形が10〜100mmの範囲であると、従来から用いられているポンプ内に配置することが容易である。本明細書では、燃料用除塵フィルターの外径は、開放されてなる端面において、燃料用除塵フィルターの外周の最も長い径である。
【0044】
燃料用除塵フィルターの内径は、5〜90mmであることが好ましく、20〜60mmであることがより好ましく、30〜50mmであることがさらに好ましい。外形が5〜90mmの範囲であると、液体燃料を流入或いは流出しやすい。本明細書では、燃料用除塵フィルターの内径は、開放されてなる端面において、燃料用除塵フィルターの内周の最も長い径である。
【0045】
燃料用除塵フィルターの外径と内径の差は、1〜50mmであることが好ましく、3〜20mmであることがより好ましい。外径と内径の差が1mm以上あると、効率よく固体不純物を分離することができ、外径と内径の差が50mm以下あると、目詰まりが発生し難い。
【0046】
燃料用除塵フィルターの長手方向の長さは、20〜1000mmであることが好ましく、50〜200mmであることがより好ましい。長手方向の長さが20〜1000mmの範囲であると、従来から用いられているポンプ内に配置することが容易である。
【0047】
繊維集合物は、また、ポリオキシメチレン系重合体Aを含む熱接着成分としての第1成分と、ポリオキシメチレン系重合体Bを含む第2成分とを含み、第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している熱接着性複合繊維を10質量%以上含むことが好ましい。なお、ポリオキシメチレン系重合体AおよびBは、互いに、分子量、オキシメチレン単位と共重合しているコモノマーの種類および割合のうち、少なくとも1つが異なるポリオキシメチレン系重合体である。繊維集合物が熱接着性複合繊維を10質量%以上含むと、繊維同士の交点をポリオキシメチレン重合体成分で接着することができ、接着性と液体燃料に対する耐性とを両立するフィルターを得ることができる。繊維集合物は熱接着性複合繊維を30質量%以上含むことがより好ましく、維集合物は熱接着性複合繊維を50質量%以上含むことがさらに好ましく、維集合物は熱接着性複合繊維を70質量%以上含むことが特に好ましい。繊維集合物は熱接着性複合繊維のみで構成されてもよい。かかる構成であると、繊維集合物をフィルターの径方向に接着することを可能にする。なお、繊維集合物に含まれる熱接着性複合繊維の好ましい上限は100質量%である。
【0048】
ポリオキシメチレン系重合体AおよびBは、JIS K 7121に従って測定される融解ピーク温度をそれぞれTfAおよびTfBとしたときに、TfB>TfA+10を満たすことが好ましい。かかる構成であると、融解ピーク温度の差が10℃以上あることに起因して、ポリオキシメチレン系重合体Aのみが軟化する温度で熱処理することが可能となり、ポリオキシメチレン系重合体Aで繊維同士を熱接着することが容易になる。
【0049】
ポリオキシメチレン系重合体Aの融解ピーク温度TfAは、好ましくは138〜160℃の範囲内にあることが好ましく、148〜156℃の範囲内にあることがより好ましい。TfAが上記範囲内にあると、汎用の熱処理機でも熱処理することができ、また、100℃程度の連続使用するなど耐熱性が求められる場合でも繊維およびフィルターの物性が損なわれることがなく、その形状も維持することができる。
【0050】
ポリオキシメチレン系重合体Bの融解ピーク温度TfBは、TfAよりも10℃以上、好ましくは13℃以上、より好ましくは15℃以上高いことが好ましい。このような範囲内にあると、上記成形フィルターへの熱処理時に溶融することなく加工することができる。TfAとTfBとの差が小さいと、熱接着時に第2成分の収縮が生じ、繊維の形態が崩れ、例えば成形フィルターを作製したときに、繊維間を接着したときに適度な空隙を付与することが困難となる場合がある。
【0051】
第1成分および第2成分は、ポリオキシメチレン系重合体Aおよびポリオキシメチレン系重合体Bをそれぞれ50質量%以上含むことが好ましい。各成分中にポリオキシメチレン系重合体A又はBを50質量%以上含むと、ガソリン、軽油、重油、灯油などの石油由来の液体燃料やバイオマスエタノール、アルコール燃料などのバイオ燃料に曝される条件下で使用されても劣化することがない。かかる効果を顕著に得る観点から、各成分は、ポリオキシメチレン系重合体A又はBを70質量%以上含むことがより好ましく、90質量以上含むことがさらに好ましい。最も好ましくは、実質的にポリオキシメチレン系重合体A又はBのみからなる。ここで、「実質的に」という用語は、安定剤等の添加剤が含まれる場合には、ポリオキシメチレン系重合体A又はBの割合が完全には100質量%とならないことを考慮して使用している。なお、各成分に含まれるポリオキシメチレン系重合体A又はBの好ましい上限は100質量%である。
【0052】
第1成分および第2成分は、それぞれポリオキシメチレン系重合体以外の他の樹脂成分を50質量%以下の範囲で含んでよい。他の樹脂成分は、30質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。他の樹脂成分は特に限定されないが、上述の繊維集合物に含まれてよい他の成分に記載した高分子材料を用いることができる。
【0053】
熱接着性複合繊維は、第1成分が鞘成分であり、第2成分が芯成分である芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘構造によれば、熱接着成分である第1成分が繊維表面全体に存在することとなるので、良好な熱接着性が発揮される。芯鞘型複合繊維は、第2成分(芯成分)の重心位置が繊維の重心位置からずれている偏心芯鞘型断面を有してよい。そのような断面を有する繊維は、立体捲縮を発現しやすく、フィルター内部に立体的な空隙を付与することができる。
【0054】
熱接着性複合繊維は、その断面において第2成分の重心位置が繊維の重心位置とほぼ一致する形状、即ち同心芯鞘型複合繊維であることが好ましい。同心芯鞘型複合繊維であると、熱接着時の収縮が抑えられることにより、成形フィルターとして加工する際に、安定して生産することができる。
【0055】
また、熱接着時の収縮が抑える観点から、熱接着性複合繊維は、単繊維乾熱収縮率が15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0056】
熱接着性複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、第1成分と第2成分の複合比率は、容積比で3:7〜7:3の範囲であることが好ましい。より好ましい容積比の範囲は、4:6〜6:4である。第1成分の割合が3未満であると、熱接着性が不十分となる場合があり、第1成分の割合が7を超えると、カード通過性が悪くなるおそれがある。
【0057】
次に、本発明の燃料用除塵フィルターの製造方法について、一例を挙げて説明する。まず、ポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含み、繊度が10〜100dtexのポリオキシメチレン系繊維を用意する。なお、ポリオキシメチレン系繊維として、繊度が10dtex未満或いは100dtexを超える繊維を用いる場合には、別途、繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%となるように用意する。
【0058】
続いて、上記のポリオキシメチレン系繊維に、必要に応じて他の繊維を混綿して、カード機またはエアレイド機で開繊された繊維ウェブ、又は一旦ロール状に巻回された不織布等の繊維集合物を作製する。このとき、繊維集合物中のポリオキシメチレン系重合体が50質量%以上である限りにおいて、他のシート等を積層してよい。また、必要に応じて、繊維集合物にニードルパンチ処理や水流交絡処理等の二次的加工を施してもよい。この繊維集合物の目付は、例えば、10〜100g/m2の範囲内にあることが好ましい。
【0059】
次いで、この繊維集合物を送り出して巻芯に巻き取る。このとき、繊維集合物を熱処理機にて140〜180℃の温度に加熱して、繊維の一部を溶融させて繊維同士及び繊維集合物の各層間を熱接着させながら巻芯に巻き取ることが好ましい。更に、必要に応じて、巻き取られた繊維集合物を冷却し、巻芯を抜き取って、繊維集合物が筒状に巻回された筒状体からなるフィルターを得る。なお、熱処理機としては、例えば熱風加熱型の熱処理機、赤外線加熱型の熱処理機、熱風・赤外線加熱併用型の熱処理機等が使用できる。熱接着性繊維を用いる場合の好ましい熱処理温度は、第1成分の結晶化温度および融点以上、第2成分の融点−3℃以下であり、より好ましい熱処理温度は、第1成分の融点+3℃以上、第2成分の融点−5℃以下である。
【0060】
このようにして得られた筒状体の密度は、所定の濾過精度に合わせて適宜設定され、密度0.20〜0.70g/cm3の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.25〜0.56g/cm3の範囲内にある。
【0061】
また、上記密度に置き換えて、空隙率で表すこともできる。筒状体の空隙率は、所定の濾過精度に合わせて適宜設定され、40〜85%の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、50〜80%である。
【0062】
次に、必要に応じて、得られた筒状体の一方の端面に成形体や不織布などからなる閉鎖部材を一体化して閉鎖する。例えば、筒状体の端面を加熱して、溶融状態にして、筒状体の端面の形状に合うように加工した閉鎖部材を押し当て、冷却固化させて一体化する。
【0063】
本発明の燃料用除塵フィルターユニットは、燃料用除塵フィルターとポリオキシメチレン系重合体で成形されてなるケーシングとからなる。ケーシングがポリオキシメチレン系重合体からなると、液体燃料に対する耐油性に優れる。
【0064】
燃料用除塵フィルターユニットは、ケーシングの内側に燃料用除塵フィルターが配置されてなることが好ましい。ケーシングの内側に燃料用除塵フィルターが配置されてなると、フィルターが型くずれすることがなく、長期間に渡り利用することができる。
【0065】
ケーシングは、その側面に開孔部を有することが好ましい。ケーシングの側面に開孔部があると、液体燃料を燃料用除塵フィルターユニットの内側から流入して、外側へ流出させることができ、その結果、燃料用除塵フィルターユニットの内側に錆や塗料片などの残渣を蓄積させることができる。
【0066】
ケーシングは、その底面が閉鎖されてなることが好ましい。ケーシングの底面が閉鎖されてなると、ケーシング内に燃料用除塵フィルターを保持しやすい。
【0067】
燃料用除塵フィルターユニットは、ケーシングと燃料用除塵フィルターとが、接着されていないことが好ましい。ここで、接着されていないとは、ケーシングと燃料用除塵フィルターとが取り外し自在であることをいう。かかる構成であると、ケーシングから燃料用除塵フィルターを取り外すことができ、燃料用除塵フィルターを取り替える際にケーシングを廃棄せず利用することができ、また、燃料用除塵フィルターを洗浄する際に取り扱いやすい。
【0068】
ケーシングは、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、或いは流動状態の原料を金型に圧入して反応固化させる方法で得られた成形品であることが好ましい。
【0069】
本発明の給油機用除塵ユニットは、ガソリンスタンドで車両に給油する液体燃料を濾過するための除塵ユニットであって、上述の燃料用除塵フィルター又は上述の燃料用除塵フィルターユニットからなり、貯蔵タンクから取り出した液体燃料に含まれる固体不純物を分離するために用いられる。なお、本発明でいう車両とは、ガソリンなどの液体燃料を動力源にして駆動する車をいう。例えば、自動車や自動二輪車である。
【0070】
ガソリンスタンドにおいて貯蔵タンクが地下に埋設されている場合、ガソリン等の液体燃料はポンプによって、引き上げられて計量機能を有する給油機(即ち、計量機)内に流入される。本発明の給油機用除塵ユニットは、貯蔵タンクから取り出した液体燃料中に含まれる固体不純物が給油機内の主要部(例えば、流量計など)に流れ込まないようにするために用いられる。したがって、本発明の給油機用除塵ユニットは、給油機内の主要部よりも貯蔵タンク側の流路に設けられる。例えば、貯蔵タンクと給油機との間、給油機内部、ポンプなどに設けられる。
【0071】
本発明の給油機用除塵ユニットは、固体不純物を除去するために特に優れた構成である。これは、貯蔵タンク内で発生する錆や塗装片などの粒径が30〜70μmであることと、上述の繊維集合物において、繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%以上含むことにより、かかる粒径の固体不純物に対する通液性と濾過精度とが特に優れたフィルターとなるためである。
【0072】
本明細書では、融解ピーク温度、結晶化温度、Z平均分子量、乾熱収縮率、及び空隙率は、それぞれ下記の方法で測定する。
【0073】
[融解ピーク温度]
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、サンプル量を6.0mgとして、10℃/minの昇温スピードで常温から200℃まで昇温して、繊維を融解させて、得られた融解熱量曲線から融解ピーク温度を求めた。
【0074】
[結晶化温度]
示差走査熱量測定装置を用いて、サンプル10mgをアルミニウム製容器に入れ、窒素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で、20℃から210℃まで昇温し、5分間保持した後、10℃/分の降温速度で降温したときの結晶化発熱ピークを、結晶化温度とした。
【0075】
[Z平均分子量の測定条件]
手法:GPC(Gel Permeation Chromatography法)
条件:
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC(Waters社製)
検出器:示差屈折率検出器 RI(2414型、感度256、Waters社製)
カラム:Shodex HFIP-806M 2本(S/N A406246、A406247)(φ8.0mm×30cm、理論段数約14000段/2本、昭和電工(株)製)
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、NaTFA5mM添加、セントラル硝子(株)製)
流速:0.5mL/分
試料:(溶解)室温で緩やかに撹拌
(溶解性)目視良好
(濃度)0.05w/v%
(濾過)メンブレンフィルター 孔径0.45μm(H−13−5、東ソー(株)製)
注入量:0.200mL
標準試料:ポリメチルメタクリレート(昭和電工(株)製)
ジメチルテレフタレート(東京化成工業(株)製)
Mzの決定:分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の溶出位置の分子量をMiとし、分子数をNiとして、下記式より算出する。
Mz=Σ(Ni・Mi3)/Σ(Ni・Mi2
【0076】
[乾熱収縮率の測定]
JIS L 1015(乾熱収縮率)に準じて、温度140℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)で測定される単繊維乾熱収縮率で示される。
【0077】
[空隙率]
空隙率(%)=[1−{フィルター密度(g/cm3)/フィルターを構成する樹脂成分の真密度(g/cm3)}]×100
【実施例】
【0078】
以下、本発明の内容について実施例により具体的に説明する。
【0079】
(実験例1)
(繊維の準備)
繊度が17dtexであって、第1成分(鞘成分)が融解ピーク温度(融点)155℃であり、CH2CH2Oコモノマー含有量がエチレンオキサイド換算値として7.1質量%である、ポリオキシメチレン系重合体(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名V40−EF)からなり、第2成分(芯成分)が融解ピーク温度(融点)170℃であり、CH2CH2Oコモノマー含有量がエチレンオキサイド換算値として0.9質量%である、ポリオキシメチレン系重合体(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名A40−EF)からなる芯鞘型形状の熱接着性複合繊維を用意した。なお、第1成分/第2成分の複合比(容積比)は50/50であった。
【0080】
(筒状体の作製)
次いで、前記熱接着性複合繊維を100質量%準備し、パラレルカード機を用いて開繊して、目付30g/m2の繊維ウェブを作製した。得られた繊維ウェブを、連続して熱風・赤外線加熱併用型のコンベア式熱処理機に送り出し、加熱温度160℃で約30秒間熱処理して、予め160℃に加熱した鉄芯(直径:46mm)に、巻径が52mmに達するまで巻き取った。そして、巻き取られた繊維ウェブを冷却し、鉄芯を抜き取った後、両端を切断し、この切断面を、加熱した平板(表面温度:155℃)に押し当てることにより切断面の樹脂同士を融着させて、長さ110mmの筒状体を作製した。得られた筒状体の密度は、0.41g/cm3(空隙率は56%)であった。
【0081】
(閉鎖部材の作製)
前記熱接着性複合繊維を100質量%準備し、パラレルカード機を用いて開繊して、ニードルパンチ処理を行い、熱風・赤外線加熱併用型のコンベア式熱処理機に送り出し、加熱温度160℃で約60秒間熱処理して、厚さ1mm、目付250g/m2の熱接着不織布を得た。この熱接着不織布を直径52mmの円形状に切り抜き、閉鎖部材を得た。
【0082】
(フィルターの作製)
前記筒状体の一方の端面に前記閉鎖部材を配置し、超音波溶着機を用いて、筒状体と閉鎖部材とを接着一体化して、本発明のフィルターを得た。
【0083】
(実施例2)
実施例1で用いた筒状体を用い、閉鎖部材として、厚さ100μm、融解ピーク温度が155℃のポリオキシメチレン系樹脂からなるTダイフィルム(商品名:三菱エンジニアリングプラスチックス製)を用いて、筒状体の一方の端面を160℃で熱し、前記閉鎖部材を熱融着して一体化して、実施例2のフィルターを得た。
【0084】
(実施例3)
実施例1で作製した筒状体の一方の端面に、ポリオキシメチレン系重合体からなり、図2に示す形状のエンドキャップを配置して、本発明のフィルターを得た。
【0085】
(比較例1)
筒状体および閉鎖部材の作製に用いた熱接着性複合繊維に代えて、繊度が17dtexであって、第1成分(鞘成分)が融点120℃のポリエチレンからなり、第2成分(芯成分)が融点166℃のポリプロピレンからなる芯鞘型複合繊維を用い、熱処理温度を145℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のフィルターを得た。
【0086】
(比較例2)
筒状体および閉鎖部材の作製に用いた熱接着性複合繊維を繊度が3.3dtexである熱接着性複合繊維に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフィルターを得た。
【0087】
実施例1〜3、比較例1及び比較例2について、濾過精度と濾過ライフを測定した。結果を表1に示す。評価方法は以下のとおりである。
【0088】
【表1】

【0089】
[濾過精度]
JIS Z8901に準ずる試験用ダスト(商品名:JIS試験粉体1,7種、日本粉体工業技術協会製、[粒子径分布:5μm以上の粒子が88質量%、10μm以上の粒子が76質量%、20μm以上の粒子が62質量%、30μm以上の粒子が50質量%、40μm以上の粒子が39質量%、75μm以上の粒子が20質量%である])の試験用懸濁液(濃度:50ppm)を、均一に攪拌しながらフィルターの外側から中空部に向かって40リットル/分の流量で流し、濾過開始から5分経過した後の濾過液について下記の方法で評価した。なお、濾過精度は、捕集効率が90%となったときのダスト径で評価した。
【0090】
[濾過ライフ]
JIS Z8901に準ずる試験用ダスト(商品名:JIS試験粉体1,7種、日本粉体工業技術協会製、[粒子径分布:5μm以上の粒子が88質量%、10μm以上の粒子が76質量%、20μm以上の粒子が62質量%、30μm以上の粒子が50質量%、40μm以上の粒子が39質量%、75μm以上の粒子が20質量%である])の試験用懸濁液(濃度:50ppm)を、均一に攪拌しながら筒状フィルターの外側から中空部に向かって40リットル/分の流量で流し、この流量を維持するための通液圧力が0.2MPaになったときの総通液量(リットル)で評価した。
【0091】
[耐油性(容積変化率)]
フィルターの外径(mm)、内径(mm)、および長さ(mm)を測長し、円筒状のガラス容器に試料を入れ、試料が完全に浸る様にレギュラーガソリンをそれぞれ注ぎ入れた。25℃の温度で24時間浸漬後に試料を取り出し、外径、内径および長さを測長し、浸漬前後の容積変化率を下記の式より求めた。
容積変化率(%)={(浸漬後の容積/浸漬前の容積)×100}−100
【0092】
実施例1〜3のフィルターは、ポリオキシメチレン系重合体からなるため優れた耐油性を示した。これに対して、比較例1のフィルターは、ポリオレフィン系繊維を用いたため、フィルターが膨潤していた。また、実施例1〜3のフィルターは、比較例2のフィルターと比べて、濾過ライフに優れていた。
【0093】
(実施例4)
次に、図7に示す形状でポリオキシメチレン重合体からなるケーシング内に、実施例1のフィルターを配し、フィルターユニットを得た。
【0094】
前記フィルターユニットを、計量機内のガソリン引き上げポンプに配置し、地下タンクからガソリンを引き上げて、その濾液を評価した。その結果、実施例4のフィルターユニットは錆や塗料片などが混入しておらず、不純物を含まないガソリン濾液を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の燃料用除塵フィルターは、ガソリンなどの液体燃料と固体不純物とを分離するために特に好ましく用いることができ、ガソリンスタンドなどの地下タンクからガソリンを引き上げる際のポンプや貯蔵タンクと給油機との間、給油機内部に配置して使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 筒状体
2 閉鎖部材
3 ケーシング
4 中空部
5 接着部
10 燃料用除塵フィルター
11 燃料用除塵フィルターユニット
21 地下貯蔵タンク
22 計量機(給油機)
23 除塵ユニット
24 ポンプ
25 流量計
26 ガソリン
30 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維集合物が筒状に巻回されてなる筒状体からなる燃料用除塵フィルターであって、
前記繊維集合物はポリオキシメチレン系重合体を50質量%以上含み、
かつ前記繊維集合物は繊度が10〜100dtexの繊維を50質量%以上含むことを特徴とする燃料用除塵フィルター。
【請求項2】
前記筒状体は長手方向の一方の端面が閉鎖されており、かつ他方の端面が開放されてなる請求項1に記載の燃料用除塵フィルター。
【請求項3】
前記繊維集合物が、ポリオキシメチレン系重合体Aを含む熱接着成分としての第1成分と、ポリオキシメチレン系重合体Bを含む第2成分とを含み、第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している熱接着性複合繊維を10質量%以上含む請求項1又は2に記載の燃料用除塵フィルター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料用除塵フィルターとポリオキシメチレン系重合体で成形されてなるケーシングとからなる燃料用除塵フィルターユニット。
【請求項5】
ガソリンスタンドで車両に給油する液体燃料を濾過するための除塵ユニットであって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料用除塵フィルター又は請求項4に記載の燃料用除塵フィルターユニットからなり、
貯蔵タンクから取り出した液体燃料に含まれる固体不純物を分離するための給油機用除塵ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24668(P2012−24668A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164078(P2010−164078)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】