説明

燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システム

【課題】燃料の供給先である燃料電池装置の性能を劣化させることを低減することができる燃料発生装置を提供する。
【解決手段】燃料発生装置は、酸化状態と還元状態で磁性を有し、酸化反応によって燃料を発生する燃料発生剤1を備え、燃料発生剤1の動きを磁力(例えば、磁化されている磁性体3の磁力)によって拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に供給するための燃料を発生する燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
還元性物質(燃料)と酸化性物質が反応するときに発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して電気を取り出す燃料電池の開発が近年盛んに行われている。燃料電池は、例えば燃料を水素ガスにした場合に原理的に二酸化炭素を排出しないため、クリーンなエネルギー源として注目を浴びているだけでなく、原理的に取り出せる電力エネルギーの効率が高いため、省エネルギーになり、さらに、発電時に発生する熱を回収することにより、熱エネルギーをも利用することができるといった特徴を有しており、地球規模でのエネルギーや環境問題解決の切り札として期待されている。
【0003】
このような燃料電池は、例えば、固体ポリマーイオン交換膜を用いた固体高分子電解質膜、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質膜(例えば特許文献1参照)等を燃料極(アノード)と酸化剤極(カソード)とで両側から挟み込んだものを1つのセル構成としている。そして、このような構成のセルには、燃料極に燃料ガス(例えば水素ガス)を供給する燃料ガス流路と、酸化剤極に酸化剤ガス(例えば酸素や空気)を供給する酸化剤ガス流路とが設けられ、これらの流路を介して燃料ガス、酸化剤ガスがそれぞれ燃料極、酸化剤極に供給されることにより発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3113340号公報
【特許文献2】特開2008−94645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、水蒸気との酸化反応により水素を発生する水素発生剤を用いて燃料電池装置に水素を供給することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような水素発生剤は、水蒸気との反応性を上げるために、水素発生剤の主体を微粒子化して単位体積当りの表面積を大きくすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、水素発生剤の主体を微粒子化した場合、たとえ微粒子をペレット形状などに成型したとしても、ガスを通過させるための微粒子間の空隙を確保する必要があるので、微粒子同士の結合を強固にすることができない。このため、水素発生剤を流れるガスの流れや水素発生剤に加わる衝撃や振動などによって、水素発生剤の主体を含む微粒子が舞い上がり、その結果水素発生剤の主体を含む微粒子が燃料の供給先である燃料電池装置の燃料極に到達してしまうことがある。
【0007】
一方、燃料電池装置の燃料極は、通常、燃料と燃料電池装置の燃料極と燃料電池装置の電解質との接触確率を上げて燃料電池装置の発電効率を高くするために、細孔を有する形状になっている。この燃料電池装置の燃料極の細孔に、水素発生剤の主体を含む微粒子が入り込んでしまうと、燃料と燃料電池装置の燃料極と燃料電池装置の電解質との接触確率が下がって燃料電池装置の発電効率を低下してしまうと問題が生じる。
【0008】
なお、水素発生剤が微粒子を成型したものでない場合や燃料電池装置の燃料極が細孔を有する形状でない場合には、燃料電池装置の燃料極の細孔に水素発生剤の主体を含む微粒子が入り込んでしまうという現象は起こらないが、水素発生剤を流れるガスの流れや水素発生剤に加わる衝撃や振動などによって水素発生剤の破片などが生成され、その破片などが燃料の供給先である燃料電池装置の燃料極に付着すると、燃料電池装置の燃料極の細孔に水素発生剤の主体を含む微粒子が入り込んでしまう場合ほど極端では無いが、燃料電池装置の発電効率を低下してしまうと問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、燃料の供給先である燃料電池装置の性能を劣化させることを低減することができる燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る燃料発生装置は、酸化状態と還元状態で磁性を有し、酸化反応によって燃料を発生する燃料発生剤を備え、前記燃料発生剤の動きを磁力によって拘束する構成(第1の構成)とする。
【0011】
このような構成によると、燃料発生剤の動きが磁力によって拘束されるので、燃料発生剤の一部が燃料電池装置の燃料極に到達して燃料電池装置の性能を劣化させることを低減することができる。
【0012】
上記第1の構成の燃料発生装置において、前記燃料発生剤が微粒子を成型したものである構成(第2の構成)にしてもよい。
【0013】
上記第1または第2の構成の燃料発生装置において、磁化されている磁性体を備え、前記燃料発生剤の動きを前記磁性体の磁力によって拘束する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0014】
上記第1または第2の構成の燃料発生装置において、前記燃料発生剤が磁化されており、前記燃料発生剤の動きを前記燃料発生剤の磁力によって拘束する構成(第4の構成)にしてもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明に係る燃料電池システムは、上記第1〜4のいずれかの構成の燃料発生装置と、酸素を含む酸化剤と前記燃料発生装置から供給される燃料との反応により発電を行う燃料電池装置とを備える構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る燃料発生装置及び燃料電池システムによると、燃料発生剤の動きが磁力によって拘束されるので、燃料発生剤の一部が燃料電池装置の燃料極に到達して燃料電池装置の性能を劣化させることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。尚、本発明は、後述する実施形態に限られない。
【0019】
<燃料発生剤>
本発明に係る燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムで用いられる燃料発生剤の主体は、酸化反応によって燃料(還元性ガス)を放出することができ、酸化状態と還元状態で磁性を有するものであれば何でもよく、例えば、Fe、Pd、V、Mgやこれらの各合金などが挙げられる。
【0020】
また、本発明に係る燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムで用いられる燃料発生剤の主体は、酸化反応によって燃料を放出した後、還元反応によって再生可能であることが望ましい。
【0021】
また、本発明に係る燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムで用いられる燃料発生剤においては、その反応性を上げるために単位体積当りの表面積を大きくすることが望ましい。燃料発生剤の単位体積当りの表面積を増加させる方策としては、例えば、燃料発生剤の主体を微粒子化し、その微粒子化したものを成型すればよい。微粒子化の方法は例えばボールミル等を用いた粉砕によって粒子を砕く方法が挙げられる。さらに、機械的な手法などにより微粒子にクラックを発生させることで微粒子の表面積をより一層増加させてもよく、酸処理、アルカリ処理、ブラスト加工などによって微粒子の表面を荒らして微粒子の表面積をより一層増加させてもよい。
【0022】
また、触媒としてTi、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Al、Ga、Mg、Sc、Ni、Cu及びNdなどを添加してもよい。
【0023】
微粒子の粒径は、反応性の観点から、10mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。なお、粒径の下限は特に限定されないが、0.01μmのものも使用することができる。さらに、酸化性ガスとの高い反応性を得るために、微粒子の平均粒径を0.05〜0.5μmにすることが特に好ましい。
【0024】
<燃料発生剤の製造方法>
本発明に係る燃料発生装置及びそれを備えた燃料電池システムで用いられる燃料発生剤の製造方法の一例として、鉄を燃料発生剤の主体にする場合の製造方法について以下に説明する。
【0025】
まず、純鉄、酸化鉄、または硝酸鉄などの鉄化合物を原料として、鉄または酸化鉄の微粒子を作製する。そして、鉄または酸化鉄の微粒子を成型する前に特定の金属を物理混合または含浸法、好ましくは共沈法により添加する。
【0026】
鉄または酸化鉄の微粒子に添加される特定の金属は、IUPACの周期律表の4族、5族、6族、13族の金属の少なくとも1つであり、好ましくは、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Al、Gaのいずれかにより選ばれる。または、Mg、Sc、Ni、Cuのいずれかを、鉄または酸化鉄の微粒子に添加される特定の金属として用いることもできる。
【0027】
鉄または酸化鉄の微粒子に添加する特定の金属の添加量は、金属原子のモル数で計算して、好ましくは全金属原子の0.5〜30mоl%、より好ましくは0.5〜15mоl%になるように調製する。
【0028】
特定の金属が添加された鉄または酸化鉄の微粒子は、効率良く利用するために、粉末状またはペレット状、円筒状、ハニカム構造、不織布形状など、酸化反応に適した表面積の大きい形状に成型される。
【0029】
特定の金属が添加された鉄または酸化鉄の微粒子を成型する方法には、スラリーを層状に成形したグリーンシートを焼成する方法、乾燥させた粉体を加圧プレスする方法などがある。
【0030】
なお、酸化鉄微粒子の成型体は、還元処理が施されることで、燃料発生能力を持つ。還元反応の条件としては、酸化鉄を還元できるものであれば特に限定されないが、例えば、一酸化炭素ガスや水素ガスなどを使用することができる。
【0031】
酸化鉄微粒子の成型体と一酸化炭素ガスや水素ガスとの接触に際しては、一酸化炭素ガスや水素ガス雰囲気下で加熱したり、成型体の内部に一酸化炭素ガスや水素ガスを加圧して流通させたりすることも可能である。
【0032】
還元処理は、約200℃〜約600℃で行うことが還元効率の観点から好ましい。なお、還元処理の際、Feは必ずしもFeまで還元しなくてもよく、低原子価金属酸化物であるFeOで還元反応を停止することもできる。また、成型体に含まれる有機系バインダー等を気化させる上で、上記還元反応を300℃以上で行うことがより好ましい。また、粒子間の空隙は、成型体の総体積に対して、30〜70%が好ましい。
【0033】
鉄を主体とする燃料発生剤は、例えば、下記の(1)式に示す酸化反応により、酸化性ガスである水蒸気を消費して燃料(還元性ガス)である水素ガスを生成することができる。
4HO+3Fe→4H+Fe …(1)
【0034】
上記の(1)式に示す鉄の酸化反応が進むと、鉄から酸化鉄への変化が進んで鉄残量が減っていくが、上記の(1)式の逆反応すなわち下記の(2)式に示す還元反応により、燃料発生剤を再生することができる。なお、上記の(1)式に示す鉄の酸化反応及び下記の(2)式の還元反応は600℃未満の低い温度で行うこともできる。
4H+Fe→3Fe+4HO …(2)
【0035】
<本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム>
本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を図1に示す。図1に示す本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムは、燃料発生剤1と、酸素を含む酸化剤と燃料発生剤1から供給される燃料との反応により発電を行う燃料電池装置2と、磁性体3と、燃料発生剤1及び磁性体3を収容する容器4と、燃料電池装置2を収容する容器5と、燃料発生剤1と燃料電池装置2との間でガスを循環させるためのガス流通経路6とを備えている。
【0036】
ガス流通経路6には必要に応じて、ブロアやポンプ等の循環器を設けてもよい。また、燃料発生剤1の周辺や燃料電池装置2の周辺には必要に応じて、温度を調節するヒーター等を設けてもよい。
【0037】
本実施形態では、燃料発生剤1と、磁性体3と、容器4とによって、燃料発生装置が構成される。また、本実施形態では、燃料発生剤1の主体を鉄にしている。
【0038】
燃料電池装置2は、図1に示す通り、電解質膜2Aの両面に燃料極2Bと酸化剤極である空気極2Cを接合したMEA構造(膜・電極接合体:Membrane Electrode Assembly)である。なお、図1では、MEAを1つだけ設けた構造を図示しているが、MEAを複数設けたり、さらに複数のMEAを積層構造にしたりしてもよい。
【0039】
電解質膜2Aの材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質を用いることができ、また例えば、ナフィオン(デュポン社の商標)、カチオン導電性ポリマー、アニオン導電性ポリマー等の固体高分子電解質を用いることができるが、これらに限定されることなく、水素イオンを通すものや酸素イオンを通すもの、また、水酸化物イオンを通すもの等、燃料電池の電解質としての特性を満たすものであればよい。なお、本実施形態においては、電解質膜2Aとして、酸素イオン又は水酸化物イオンを通す電解質、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質を用いる。
【0040】
容器4、ガス流通経路6、容器5、及び電解質2Aによって形成される空間は主に酸化性ガス(例えば水蒸気や二酸化炭素など)を充填してから密閉するが、少量の燃料(例えば水素ガスや一酸化炭素ガスなどの還元性ガス)が混入しても構わない。
【0041】
例えば燃料を水素にした場合、本実施形態では、発電動作時に、燃料極2Bにおいて下記の(3)式の反応が起こる。
+O2−→HO+2e …(3)
【0042】
上記の(3)式の反応によって生成された電子は、燃料極2Bから外部負荷(不図示)を通って、空気極2Cに到達し、空気極2Cにおいて下記の(4)式の反応が起こる。
1/2O+2e→O2− …(4)
【0043】
そして、上記の(4)式の反応によって生成された酸素イオンは、電解質膜2Aを通って、燃料極2Bに到達する。上記の一連の反応を繰り返すことにより、燃料電池装置2が発電動作を行うことになる。
【0044】
そして、燃料発生剤1は、上記の(1)式に示すFeの酸化反応により、燃料電池装置2から供給される水蒸気を消費して、水素ガスを発生させ、水素ガスを燃料電池装置2に供給する。
【0045】
なお、図1に示す本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムは、発電動作のみならず充電動作も行うことができる二次電池型燃料電池システムである。充電時には、燃料電池装置2が外部電源(不図示)に接続されて電気分解器として作動して、上記の(3)式及び(4)式の逆反応が起こり、燃料極2B側において水蒸気が消費され水素ガスが生成され、燃料発生剤1は、上記の(2)式に示す還元反応により、酸化鉄から鉄への変化を進めて鉄残量を増やし、すなわち燃料発生剤1は再生されて、燃料電池装置2から供給される水素ガスを消費して、水蒸気を発生させ、水蒸気を燃料電池装置2に供給する。
【0046】
電解質膜2Aは、固体酸化物電解質の場合であれば、電気化学蒸着法(CVD−EVD法;Chemical Vapor Deposition -Electrochemical Vapor Deposition)等を用いて形成することができ、固体高分子電解の場合であれば、塗布法等を用いて形成することができる。
【0047】
燃料極2B、空気極2Cはそれぞれ、例えば、電解質膜2Aに接する触媒層と、その触媒層に積層された拡散電極とからなる構成にすることができる。触媒層としては、例えば白金黒或いは白金合金をカーボンブラックに担持させたもの等を用いることができる。また、燃料極2Bの拡散電極の材料としては、例えばカーボンペーパ、Ni−Fe系サーメットやNi−YSZ系サーメット等を用いることができる。また、空気極2Cの拡散電極の材料としては、例えばカーボンペーパ、La−Mn−O系化合物やLa−Co−Ce系化合物等を用いることができる。燃料極2B、空気極2Cはそれぞれ、例えば蒸着法等を用いて形成することができる。
【0048】
磁性体3は、磁化されている磁性体であって、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジウム磁石などの永久磁石が好ましい。また、磁性体3のキュリー温度は、燃料電池システムの発電時における燃料発生剤1の温度よりも十分高いことが好ましい。
【0049】
磁性体3の大きさは、小さすぎると燃料発生剤1の動きを十分に拘束することができず、大きすぎるとコストや設置スペースが大幅に増加してしまうため、燃料発生剤1の体積の1/100〜1/10であることが好ましい。
【0050】
磁性体3の形状は、本実施形態では直方体形状としているが、後述する第2実施形態(図2参照)のような円柱形状、後述する第2実施形態(図3参照)のような楕円板形状、球形状、円板形状、平板形状などであってもよい。磁性体3の個数に制限はなく、本実施形態のように複数であってもよく、後述する第2実施形態や第3実施形態のように1個であってもよい。
【0051】
燃料発生剤1の主体を含む微粒子の動きが磁性体3の磁力によって拘束されるので、燃料発生剤1の主体を含む微粒子が燃料電池装置2の燃料極2Bに到達して燃料電池装置2の性能を劣化させることを低減することができる。
【0052】
上記効果を確認するために、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムを作製し、そのシステム全体を振動機器(シンフォニアテクノロジー社製、小型電磁フィーダCF)で24時間振動させ、燃料発生剤1及び磁性体3の振動前後での重量を比較したところ、振動前は5.23gであり、振動後は5.21gであり、その重量変化は微小であった。また、振動後にシステムを分解して燃料電池装置2の燃料極2Bを観察したところ、燃料電池装置2の燃料極2Bへの燃料発生剤1の主体を含む微粒子(鉄微粒子)の付着が無いことが確認できた。
【0053】
なお、本実施形態では、循環器によるガス循環やヒーター等による温度勾配などによって、図1中に示す矢印のガス流を発生させており、燃料発生剤1、磁性体3、及び容器3によって構成される燃料発生装置のガス流出口近傍に磁性体3を配置している。このような配置により、燃料発生剤1の主体を含む微粒子がガスの流れによって動いても、ガス流出口から燃料発生装置の外部に出ていく前にその動きを拘束することができる。
【0054】
<本発明の第2実施形態に係る燃料電池システム>
図2に示す本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムは、ガス循環や温度勾配などによってガス流を発生させることが必須ではない点と、磁性体3の形状及び配置とを除いて、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムと同一の構造である。なお、図2において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、燃料発生剤1の主体を含む微粒子の動きが磁性体3の磁力によって拘束されるので、燃料発生剤1の主体を含む微粒子が燃料電池装置2の燃料極2Bに到達して燃料電池装置2の性能を劣化させることを低減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、図2に示す通り、磁性体3は円柱形状であって、容器4の中央に配置されている。このような配置により、燃料発生剤1の主体を含む微粒子がガスの流れによって動いても、ガス流出口から燃料発生装置の外部に出ていく前にその動きを拘束することができる。このような配置により、ガスが容器4の隅へも流れていきやすくなり、燃料発生剤1が満遍なく使用されやすくなるという利点を有する。
【0057】
<本発明の第3実施形態に係る燃料電池システム>
図3に示す本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムは、ガス循環や温度勾配などによってガス流を発生させることが必須ではない点と、磁性体3の形状及び配置とを除いて、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムと同一の構造である。なお、図3において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、燃料発生剤1の主体を含む微粒子の動きが磁性体3の磁力によって拘束されるので、燃料発生剤1の主体を含む微粒子が燃料電池装置2の燃料極2Bに到達して燃料電池装置2の性能を劣化させることを低減することができる。
【0059】
また、本実施形態では、図3に示す通り、磁性体3は楕円板形状であって、容器4の外部に配置されている。このような配置により、燃料発生剤1と磁性体3との距離が調整可能となり、燃料発生剤1と磁性体3との距離の調整によって磁界強度の調整が容易になり、燃料発生剤1が磁性体3に過度に引き寄せられてガスの拡散を阻害することを容易になくすことができるという利点を有する。なお、本実施形態では、磁性体3を所定の位置に保持する保持部材を設けてもよく、磁性体3を容器4の外壁に固着してもよく、磁性体3を磁性体3の磁力によって容器4の外壁に固定してもよい。
【0060】
<本発明の第4実施形態に係る燃料電池システム>
図4に示す本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムは、磁性体3を設けない点と、燃料発生剤1を予め磁化している点とを除いて、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムと同一の構造である。なお、図4において図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、燃料発生剤1の主体を含む微粒子の動きが燃料発生剤1の磁力によって拘束されるので、燃料発生剤1の主体を含む微粒子が燃料電池装置2の燃料極2Bに到達して燃料電池装置2の性能を劣化させることを低減することができる。
【0062】
上記効果を確認するために、本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムを2種類作製した。
【0063】
1種類目のシステムは、本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムを作製する際に、燃料発生剤1の主体を含む微粒子に着磁装置(日本電磁測器株式会社製)にて磁化させ、円柱型Φ30×10mmに成型した場合の鉄板への吸着力が0.2〜2kgfになるように磁力を調節した。作製した1種類目のシステム全体を振動機器(シンフォニアテクノロジー社製、小型電磁フィーダCF)で24時間振動させ、燃料発生剤1の振動前後での重量を比較したところ、振動前は1.08gであり、振動後は1.04gであり、その重量変化は微小であった。また、振動後にシステムを分解して燃料電池装置2の燃料極2Bを観察したところ、燃料電池装置2の燃料極2Bへの燃料発生剤1の主体を含む微粒子(鉄微粒子)の付着が無いことが確認できた。
【0064】
2種類目のシステムは、本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムを作製する際に、燃料発生剤1の主体を含む微粒子を加圧して球状、楕円球状、円柱状、平板状などのペレットを作製し、その作製したペレットに着磁装置(日本電磁測器株式会社製)にて磁化させ、円柱型Φ30×10mmに成型した場合の鉄板への吸着力が0.2〜2kgfになるように磁力を調節した。作製した2種類目のシステム全体を振動機器(シンフォニアテクノロジー社製、小型電磁フィーダCF)で24時間振動させ、燃料発生剤1の振動前後での重量を比較したところ、振動前は1.03gであり、振動後は1.02gであり、その重量変化は微小であった。また、振動後にシステムを分解して燃料電池装置2の燃料極2Bを観察したところ、燃料電池装置2の燃料極2Bへの燃料発生剤1の主体を含む微粒子(鉄微粒子)の付着が無いことが確認できた。
【0065】
<変形例>
また、上述した各実施形態では、燃料発生剤1と燃料電池装置2とを別々の容器に収容した構造を図示しているが、燃料発生剤1と燃料電池装置2とを同一の容器に収容してもよい。
【0066】
また、上述した各実施形態では、電解質膜2Aとして酸素イオンを伝導する電解質を用いて、発電の際に燃料極2B側で水を発生させるようにしている。この構成によれば、燃料を燃料発生剤1から燃料電池装置2に供給するためのガス流通経路によって燃料発生剤1とつながっている電極側(燃料極2B側)で水を発生するため、装置の簡素化や小型化に有利である。一方、特開2009−99491号公報に開示された燃料電池のように、燃料電池装置2の電解質として水素イオンを通す固体高分子電解質を用いることも可能である。但し、この場合には、発電の際空気極2C側で水が発生されることになるため、この水を燃料発生剤1に伝搬する流路を設ければよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、1つの燃料電池装置2が発電も水の電気分解も行っているが、燃料発生剤が、燃料電池(例えば発電専用の固体酸化物燃料電池)と水の電気分解器(例えば水の電気分解専用の固体酸化物燃料電池)それぞれにガス流通経路上並列に接続される構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 燃料発生剤
2 燃料電池装置
2A 電解質膜
2B 燃料極
2C 空気極
3 磁性体
4、5 容器
6 ガス流通経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化状態と還元状態で磁性を有し、酸化反応によって燃料を発生する燃料発生剤を備え、前記燃料発生剤の動きを磁力によって拘束することを特徴とする燃料発生装置。
【請求項2】
前記燃料発生剤が微粒子を成型したものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料発生装置。
【請求項3】
磁化されている磁性体を備え、
前記燃料発生剤の動きを前記磁性体の磁力によって拘束することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料発生装置。
【請求項4】
前記燃料発生剤が磁化されており、
前記燃料発生剤の動きを前記燃料発生剤の磁力によって拘束することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料発生装置と、
酸素を含む酸化剤と前記燃料発生装置から供給される燃料との反応により発電を行う燃料電池装置とを備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112549(P2013−112549A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258640(P2011−258640)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】