説明

燃料組成物及びアンモニアの燃焼方法

【課題】 低温環境下であっても着火し易い、アンモニアを主体とする燃料組成物及びアンモニアの燃焼方法を提供することにある。
【解決手段】 燃料成分としてのアンモニア、並びにヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上の助燃剤を含有する燃料組成物並びに、燃料成分としてのアンモニア及び前記助燃剤を別々に貯蔵し、着火直前に混合又は接触させた後、着火することを特徴とするアンモニアの燃焼方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンモニアを燃料成分とする燃料組成物、詳しくは燃料の着火源として使用されるアンモニアを主体とする燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、酸素中では燃焼し窒素酸化物を発生するが、空気中での引火性は知られていない。
また、アンモニアを燃焼させる特許文献としては、水素とアンモニアを混合して燃焼機関で燃焼する方法が特許文献1に開示があるが、アンモニアのみを燃焼させるものではない。
また、特許文献2には、水蒸気又は空気以外の最多量成分がアンモニアであるアンモニア含有ガスを気体状酸化剤と混合させた混合ガスを分解触媒層に導入して分解させる方法が開示されているが、高濃度のアンモニアを燃焼させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−331265
【特許文献2】特開平10−174843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低温環境下であっても着火し易い、アンモニアを主体とする燃料組成物及びアンモニアの燃焼方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、主原料としてのアンモニアと相溶性があり、助燃剤の分子中に酸素原子を多く有し、燃焼時にアンモニアの酸化反応に効果的に寄与すること、さらには燃焼ガス中のCO源となるような炭素原子を全く有しないか又は炭素原子の含有比率が低いクリーンな助燃剤を見いだして、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔4〕に記載の事項をその特徴とするものである。
【0007】
〔1〕燃料成分としてアンモニア、助燃剤としてヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上を含有する燃料組成物。
【0008】
〔2〕燃料の着火源として用いられることを特徴とする前記〔1〕に記載の燃料組成物。
【0009】
〔3〕燃料成分としてのアンモニア、並びにヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上の助燃剤を別々に貯蔵し、着火直前に混合又は接触させた後、着火することを特徴とするアンモニアの燃焼方法。
【0010】
〔4〕前記助燃剤が水に溶解していることを特徴とする前記〔3〕に記載のアンモニアの燃焼方法。
【0011】
〔5〕燃料成分としてのアンモニア、並びにヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上の助燃剤を含有する燃料組成物に着火することを特徴とするアンモニアの燃焼方法。
【0012】
〔6〕前記燃料組成物が水に溶解していることを特徴とする前記〔5〕に記載のアンモニアの燃焼方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料組成物は低温(−30℃)でも着火し易く、本発明の燃料組成物を着火剤として低温で通常では着火しない又は着火し難い燃料を容易に燃焼させることができる。
また、燃焼ガス中に炭素化合物を含まないか又は炭素化合物の含有量が非常に少ないので内燃機関などに利用した場合にカーボンの堆積問題がない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃料組成物は、燃料成分としてアンモニアを含有し、助燃剤としてヒドロキシルアンモニウムナイトレート(硝酸ヒドロキシルアンモニウム:分子式NHOHNO)アンモニウムナイトレート(硝酸アンモニウム:分子式NHNO)及びヒドラジニウムナイトレート(硝酸ヒドラジン:分子式N・HNO)からなる群から選ばれる1種以上を含有する。前記助燃剤は通常は酸化剤として使用される化合物である。
【0015】
前記助燃剤のうち、低温での着火性と燃焼性の観点から、好ましいのはヒドロキシルアンモニウムナイトレートである。また、助燃剤として2種以上を含有する場合は、ヒドロキシルアンモニウムナイトレートと他の助燃剤との併用が好ましい。
【0016】
そして、前記助燃剤は、水によく溶けるので高濃度の水溶液の状態にすると取扱が非常にやり易くなる。助燃剤を水溶液の状態にする場合には、その濃度が薄すぎると助燃剤としての効果を発揮しないので、その濃度は60%以上が好ましく、さらには、80%以上で水溶液が流動性を保つことのできる濃度がより好ましい。
更には、アンモニアも水溶性であるので、アンモニアと助燃剤を予め水に溶かした状態で本発明の燃料組成物として用いることもできる。
【0017】
本発明の燃料組成物におけるアンモニアと前記助燃剤との含有割合は、低温での着火性の観点から、酸素を必要としなくてもアンモニアが着火する混合比率が最も好ましい。
【0018】
例えば、アンモニアとヒドロキシルアンモニウムナイトレートの組み合わせの場合は、化学量論的反応式は以下の通りであので、アンモニア:ヒドロキシルアンモニウムナイトレート=19.1重量%:80.9重量%である。
4NH+3NHOHHNO → 12HO+5N
従って、ヒドロキシルアンモニウムナイトレートの添加量はアンモニア1重量部に対して4.24重量部の付近で効果を最も発揮することができる。
【0019】
一方、酸素存在下ではアンモニア、100重量部に対し前記助燃剤は通常0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜10重量部の割合で助燃剤を添加すればアンモニアを燃焼させることが可能である。
【0020】
また、アンモニアの燃焼方法の一つの方法は、アンモニア及び前記助燃剤を別々に貯蔵し、着火直前に混合又は接触させた後、着火するアンモニアの燃焼方法である。
本発明におけるアンモニアの燃焼方法のうちの他の方法は、アンモニア及び前記助燃剤を含有する燃料組成物を予め調製しておいて、該燃料組成物に着火するアンモニアの燃焼方法である。
【0021】
前者の燃焼方法において、着火直前の混合又は接触の方法としては、アンモニアを供給しながら、アンモニアの供給系統に助燃剤もしくは助燃剤と他の燃料成分の混合物を注入する方法、又は助燃剤もしくは助燃剤と他の燃料成分の混合物を供給しながら、その供給系統にアンモニアを注入する方法等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0022】
本発明の燃料組成物は、低温、例えば−30℃であっても着火することができる。着火の方法としては、電気スパークによって着火する方法やアーク放電による方法等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。
【0024】
下記に示す実施例及び比較例のテスト装置とテスト方法は以下の通りである。
−30℃の低温室メインバーナとパイロットバーナを具備する燃焼装置を設置し、本発明の燃料組成物が低温環境下においても着火剤となることを確認した。
上記燃焼装置は、パイロットバーナに着火後3秒後にメインバーナのノズルから灯油を霧状に噴出させてメインバーナに着火させるようにした。パイロットバーナへの点火は、パイロットバーナのノズルからパイロットバーナ用燃料を霧状に噴出させ、ノズルの噴出口出口で高電圧火花放電することによりおこなった。
【0025】
〔実施例1〕
パイロットバーナへの供給する燃料として液体アンモニアと80%硝酸ヒドロキシルアンモニウム水溶液を重量比で1:0.07の割合で混合した燃料組成物を用いて前記燃焼装置により着火テストを行った。
パイロットバーナへの前記燃料組成物の供給は、前記燃料組成物を7気圧に加圧して封入したボンベをパイプによりパイロットバーナに連結することにより行い、前記方法によりメインバーナへの着火テストを行った結果、メインバーナへの着火が10回のテストで全て確認できた。
【0026】
〔実施例2〕
パイロットバーナへ供給する燃料を液体アンモニアと80%硝酸アンモニウム水溶液を重量比で1:0.07の割合とした以外は、実施例1と同じ条件で着火テストを行った結果、メインバーナへの着火が10回のテストで全て確認できた。
【0027】
〔実施例3〕
パイロットバーナへ供給する燃料を液体アンモニアと80%硝酸ヒドラジン水溶液を重量比で1:0.1の割合とした以外は、実施例1と同じ条件で着火テストを行った結果、メインバーナへの着火が10回のテストで全て確認できた。
【0028】
〔比較例〕
パイロットバーナへの供給する燃料をメインバーナに供給する燃料と同一の灯油を用いてメインバーナへの着火をテストしたが、10回テストした内着火できたのは1回だけであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の燃料組成物は、内燃機関着火用燃料組成物として適しており、特に寒冷地での始動が必要な内燃機関にも適している。内燃機関としては、自動車用内燃機関、航空機用内燃機関及び船舶用内燃機関等が挙げられる。また、本発明の燃料組成物は、特に寒冷地において燃焼を行う場合の燃料への着火源として利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料成分としてアンモニア、助燃剤としてヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上を含有する燃料組成物。
【請求項2】
燃料の着火源として用いられることを特徴とする請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
燃料成分としてのアンモニア、並びにヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上の助燃剤を別々に貯蔵し、着火直前に混合又は接触させた後、着火することを特徴とするアンモニアの燃焼方法。
【請求項4】
前記助燃剤が水に溶解していることを特徴とする請求項3に記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項5】
燃料成分としてのアンモニア、並びにヒドロキシルアンモニウムナイトレート、アンモニウムナイトレート、ヒドラジニウムナイトレート及びトリエタノールアンモニウムナイトレートからなる群から選ばれる1種以上の助燃剤を含有する燃料組成物に着火することを特徴とするアンモニアの燃焼方法。
【請求項6】
前記燃料組成物が水に溶解していることを特徴とする請求項5に記載のアンモニアの燃焼方法。