説明

燃料製造装置

【課題】安価にかつ簡便に油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造することができる燃料製造装置を提供する。
【解決策】油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造する装置であって、排水タンク11に貯蔵されている油分含有排水をポンプ13で前処理装置15に送り、排水中の大きな油滴を除去した後、タルク18を充填した吸着塔17に送り油分をタルク18に吸着させ、油分吸着タルクからなる燃料を製造する。吸着塔17の下部に透明材21からなる可視部19を設け、油分の吸着により透明になるポリプロピレン製の不織布25の裏面に着色した着色材27を貼り付けたマーカ23を不織布25が透明材21の内壁に接触するように貼り付けることで、不織布25が油分を吸着すると着色材27が視認でき、タルク18が十分に油分を吸着したことを認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造する燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場、機械工場、あるいは家庭からは、さまざまな濃度の油含有排水が排出されている。一方、石油系燃料の代替として、最近ではヤトロファなどの植物から取れる油などを使用し、BDF(Bio Diesel Fuel)を多量に製造する大型のプロジェクトが世界各地で活動している。植物の生産地では、現地で植物の実を絞り油脂を搾取しているが、油脂の搾取に伴い発生する多量の油分含有排水が問題となっている。
【0003】
油分含有排水からの油分離方法として、従来から水との比重差を利用した自然浮上分離あるいは加圧浮上分離が用いられているが、ある粒径以下の細かい油滴をこのような簡単な方法で除くことは難しい。河川等へ排出する排水を規制値以下の油分濃度にするためには、さらなる2次的な分離操作が必要となる。そのような操作として活性炭、有機物吸着剤などが多用されているが、コストが高く、また、油を吸着した吸着剤の処理などが問題になる。
【0004】
一方、油分含有排水を燃料とする試みもなされている。例えば、油分含有排水に微生物と木屑などの可燃性有機物を添加して、処理槽に投入し30℃から90℃の温度範囲で12時間以上攪拌し、水分を微生物の代謝、代謝熱により蒸発させ、油分を可燃性有機物に吸着させ燃料を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−107056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の燃料の製造方法は、油分含有排水に含まれる油分から利用価値の高い燃料が製造できる点では有効な方法と言える。しかしながら、微生物を常に活性な状態に保っておくには、温度管理など厳密な環境管理が必要になる。また、攪拌時間が12時間以上と長いために設備が大型になると同時に大きな攪拌動力が必要になる。
【0007】
本発明の目的は、安価にかつ簡便に油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造することができる燃料製造装置を提供することである。また油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造すると同時に排水を浄化可能な燃料製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造する装置であって、タルクを充填した吸着塔に油分含有排水を流通させ、油分を選択的に前記タルクに吸着させ、油分吸着タルクからなる燃料を製造することを特徴とする燃料製造装置である。
【0009】
また本発明は、前記燃料製造装置において、前記吸着塔は、吸着塔の出口部近傍に透明材からなる可視部を有し、ポリプロピレン製の不織布の裏面に着色材が貼付されたマーカを備え、前記マーカは、前記不織布が前記透明材の内壁に接触するように取付けられ、前記不織布は油分を吸着するまでは不透明であり、前記不織布は油分を吸着すると透明になり、裏面の着色材を視認できることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記燃料製造装置において、前記油分含有排水は、予め浮上分離法で油分が除去された後の油分含有排水であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記燃料製造装置において、油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造すると共に排水を浄化可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料製造装置は、タルクを充填した吸着塔に油分含有排水を流通させ、油分を選択的にタルクに吸着させ、油分吸着タルクからなる燃料を製造するため、温度管理等が不要であり、所要動力も非常に小さい。また特別な操作も必要なく簡単に燃料を製造することができる。また、タルクは自然に産出する鉱物であり安価に入手ができるため、安価に燃料を製造することができる。油分吸着タルクを低い温度で燃焼させれば、タルクを再利用することもできるので、より安価に燃料を製造することができる。また本発明の燃料製造装置は、油分含有排水中の油分をタルクに吸着させるので、同時に排水処理も行うことができる。
【0013】
また本発明によれば、吸着塔の出口部近傍に設けられたマーカを視認することで、充填したタルク全体が十分に油分を吸着していることが分かり、充填搭を効率的に運用することができる。充填したタルクの一部のみが油分を吸着した状態で充填搭から全タルクを抜き出した場合、平均すると抜き出されたタルクに吸着された油分が少なく、これを燃料として使用すると、タルク重量当たりの発熱量が小さく燃料として適さないことが懸念される。これに対して本発明の燃料製造装置は、充填搭の出口部近傍に設けられたマーカにより充填したタルク全体が十分に油分を吸着していることを確認できるので、タルク重量当たりの発熱量が大きい燃料を得ることができる。また出口部近傍に設けられたマーカを視認することで、この位置までのタルクが油分を吸着したことが分かるので、この時点でタルクを抜き出し新たなタルクを充填することで、処理水に含まれる油分を常に規制値以下とすることができる。
【0014】
また本発明によれば、対象とする油分含有排水が、予め浮上分離法で油分が除去された後の油分含有排水であるので、排水中の油分濃度が低いけれども、本発明の燃料製造装置は、流通方式であるためこのような排水からでも多量の油分を吸着したタルクからなる燃料を得ることができ好ましい。
【0015】
また本発明によれば、本発明の燃料製造装置は、油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造すると共に排水を浄化することができるのでより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態としての燃料製造装置1のフローを示す図である。
【図2】本発明の吸着塔17の可視部19を構成する透明材21に取り付けられたマーカ23の断面図である。
【図3】本発明のタルク18を用いた油吸着実験装置51のフローを示す図である。
【図4】図3の油吸着実験装置51のタルク充填カラム57のマーカ61の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態としての燃料製造装置1のフローを示す図である。図2は、図1の吸着塔17の可視部19を構成する透明材21に取り付けられたマーカ23の断面図である。
【0018】
燃料製造装置1は、タルク18を用いて油分含有排水中の油分をタルク18に吸着させ油分吸着タルクからなる燃料を製造する装置であって、排水タンク11、ポンプ13、前処理装置15、吸着塔17から構成される。排水タンク11は、食品工場、機械工場、植物からの燃料油製造工場などから排出される油含有排水を貯蔵するためのタンクである。ポンプ13は、排水タンク11の排水を前処理装置15に所定量供給する。
【0019】
前処理装置15は、自然浮上分離装置などであり、比重差などを利用して排水に含まれる大きな油滴を浮上させ分離する装置である。分離した油滴は回収され有効利用されるが、細かい油滴は分離されず懸濁した状態で排水中に留まり吸着塔17に送られる。油含有排水に含まれる油滴の全てが細かく浮上分離が難しい場合は、前処理装置15の設置が省略され、排水は排水タンク11から直接吸着塔17に送られ処理される。
【0020】
吸着塔17には、タルク18が充填されている。充填するタルク18の粒径は特に限定されないが、5mm以下に粉砕されたタルクが好ましい。タルクは、滑石、葉ロウ石系鉱物の一種で天然に産し、組成式はMg[(OH)Si10]である。タルクは化学的、熱的にも安定で不純物を含む汚水の処理に対し長期の使用に耐えることができる。またタルクは、強い油吸着特性と容易な油脱離性能を有することが知られている(例えば特許第3909599号参照)。タルクは、粒径が小さいほど比表面積が大きくなるので油分吸着量が増大し、タルク重量当たりの発熱量が大きい燃料を得ることができる。粒径が5mmを超えると油分吸着量が少なく、燃料としての使用先、使用方法が大きく限定される。一方で、粒径を小さくするに従い粉砕の負荷が増大し、さらに取扱いも難しくなるのでこれらを考慮し、燃料としての使用先、使用方法に応じて充填するタルク18の粒径を決めればよい。
【0021】
前処理装置15からの細かい油滴を含む排水は、吸着塔17の頂部より供給され、排水に含まれる油分は充填されているタルク18の表面に吸着する。そのため、吸着塔17の底部から取り出される処理水は、油分が規制値以下であり問題なく系外に排出できる。
【0022】
また、吸着塔17には、塔の下部に透明材21からなる可視部19が設けられており、可視部19から吸着塔17の内部が目視できる構造である。透明材21は、ガラス、アクリル樹脂などからなり、内壁にマーカ23が貼り付けられている。
【0023】
マーカ23は、油分の吸着により透明になるポリプロピレン製の不織布25と、不織布25の裏面に貼付された鮮明な色の着色材27とからなる。マーカ23は、不織布25の表面が、透明材21の内壁に貼り付けられている。不織布25は、油の吸着により透明になると同時に、水のみに晒されているときは常に不透明である必要がある。ポリプロピレン製不織布の中で繊維に方向性があるものは、長時間水に晒すと水が浸透し透明になるものがあるが、ここでは不織布25に、薄いポリプロピレン製不織布をランダムに重ねた不織布を使用する。このような不織布25は、油の吸着により透明になるが、水のみに晒されているときは常に不透明である。
【0024】
次に燃料製造装置1の使用方法を示す。最初に排水タンク11に排水を充填し、吸着塔17に新しいタルク18を充填する。排水は、ポンプ13により排水タンク11から前処理装置15に送られ、前処理装置15で大きな油滴が除去された後、吸着塔17に供給される。吸着塔17では、排水に含まれる油分が上部のタルク18に吸着し、吸着塔17からは油分を含まない処理水が排出される。上部のタルク18の油分吸着量が飽和に達すると、油分を吸着する位置が下方のタルク層へ移動する。油分を含む排水が可視部19まで到達するとマーカ23を構成する不織布25が油分を吸着し透明になり、裏面に貼り付けられた黄色や赤色など鮮明な色からなる着色材27を外部から視認できる。これにより、吸着塔17の頂部から可視部19までのタルク18が十分に油分を吸着していることが分かる。この時点で排水の吸着塔17への供給を停止すると、油分が吸着塔17の出口部に到達しないため、処理水に規制値以上の油分が混入することはない。
【0025】
マーカ23の代わりに、単にポリプロピレン製の不織布25の透明/不透明を利用して油分の吸着位置を確認する方法も考えられるが、目視による不織布25の透明/不透明の判別は容易ではなく、この方法では、油分の吸着を見逃す危険がある。これに対して本実施形態に示すマーカ23は、黄色や赤色など鮮明な色からなる着色材27が不織布25の裏面に貼付されているので、油分が吸着塔17の下部まで到達したことを容易に判断することができる。なお、着色材27の貼付により光学機器による判定も容易となり、光学機器との組合せにより自動的に排水の供給を停止させることもできる。
【0026】
マーカ23により、油分を含む排水が搭の下部まで到達したことを視認すると、吸着塔17への排水の供給を停止し、吸着塔17内のタルク18を取り出す。吸着塔17から取り出したタルク18は、全体的に、十分に油分を吸着しているので燃料として利用することができる。
【0027】
上記実施形態では、吸着塔17の頂部から油分含有排水を供給し、塔の底部から浄化された処理水を取り出す方法を示したが、排水を吸着塔17の底部から供給し浄化された処理水を吸着塔17の頂部から取り出しても良い。また。吸着塔17を2基以上設け、定期的に切換えながら使用することで、排水を連続的に処理しつつ燃料を製造することができる。
【0028】
油分含有排水に含まれる油分をタルクに吸着させる方法として、タルクを油分含有排水中に投入し、バッチ的にタルクに油分を吸着させる方法がある。浮上分離法などで予め大きな油滴が除去された後の油分含有排水中の油分濃度は低い。このような油分濃度の低い油分含有排水中にタルクを投入しても、回収されたタルクは、油分吸着量が少なく単位重量当たりの発熱量が小さいため燃料として適さない。バッチ操作を何度も繰り返し、タルクへの油分の吸着量を増加させる方法が考えられるが、多くの手間を必要とする。さらにこの方法では、タルクへの油分の吸着がどの時点で飽和に達するか分からないので、バッチ操作の回数が少ないと、燃料として適さないタルクが得られ、逆に必要以上にバッチ操作の回数を多くしても、タルクへの油分の吸着が飽和に達した後は、全く不要な操作を行うこととなる。
【0029】
これに対して、本実施形態に示す吸着塔17は、流通方式であるため油分濃度の低い油分含有排水中からでも多量の油分を吸着したタルク18を得ることができる。また本実施形態に示す吸着塔17は、搭の上部のタルク18から油分の吸着が始まり、飽和量に達した時点で下方のタルク層に油吸着が移動するため効率的に多量の油分を吸着させたタルク18を製造することができる。さらにマーカ23により終点も分かるので、取扱いが簡単であると同時に、タルク重量当たりの発熱量が大きい燃料を得ることができる。また、タルク層を流通した処理水は、タルク18により油が十分に除去されているため油分が極めて少なく、燃料製造と排水処理とを同時に行うことができる。
【0030】
また燃料製造装置1を用いて燃料を製造するとき、温度管理等が不要であり、特別な操作も必要とせず、簡単に油分含有排水から燃料を製造することができる。また、稼働機器はポンプのみであり、トラブルも少なくランニングコストも非常に小さい。また、タルクは自然に産出する鉱物であり安価に入手できるため、製造された燃料自身も安価であり、燃焼後の残渣も安全なものである。また油分吸着タルクを低い温度で燃焼させれば、タルクを再利用することもできるので、残渣も発生せず、またより安価に燃料を製造することができる。
【実施例】
【0031】
次に実験方法及び実験結果について説明する。図3は、タルク18を用いた油吸着実験装置51のフローを示す図である。図4は、油吸着実験装置51のタルク充填カラム57のマーカ61の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。本実験では、排水として、ヤトロファ油を搾取する過程で発生する油含有排水を模擬した模擬排水を使用した。
【0032】
油吸着実験装置51は、模擬排水タンク53、空気抜き三方コック55、タルク充填カラム57、流量調節用コック59から構成される。タルク充填カラム57は、アクリル製透明カラム(内径50mm、高さ300mm)であり、カラムの内部にタルク18を充填している。タルク充填カラム57は、模擬排水がカラムの頂部から供給され、タルク層で油分が吸着分離されカラムの底部より処理水が排出される構造である。
【0033】
タルク充填カラム57には、マーカ61がカラムの下部の内壁に高さを変え3か所に貼り付けられている。マーカ61は、ポリプロピレン不織布63の裏面に着色材65を貼り合せ作られている。ポリプロピレン不織布63は、大きさは20mm角程度で、厚さは0.2mm程度である。着色材65は、X字に切り取った黄色あるいは赤色の色付ビニールテープを用いた。マーカ61は、透明なタルク充填カラム57の下部の内壁にポリプロピレン不織布63の表面を密着させ貼り付けた。
【0034】
模擬排水タンク53から送られる模擬排水は空気抜き三方コック55を通りタルク充填カラム57に供給される。空気抜き三方コック55は、模擬排水タンク53から送られる模擬排水に含まれる空気を事前に除去し、空気がタルク充填カラム57に混入することを防止するコックである。流量調節用コック59は、タルク充填カラム57に供給される模擬排水の流量を調節するためのコックである。
【0035】
模擬排水には、軽油代替の植物油として注目されているヤトロファ油を搾取する過程で発生する油含有排水を模擬した排水を調製し使用した。具体的には、20Lの水道水と50mLのヤトロファ油とタルク18の油吸着の状態を目視で確認できるように0.15gの赤色色素(中央合成化学株式会社)とを十分に攪拌し、これを模擬排水とした。ヤトロファ油は、種子の殻を除き、搾油したものを使用した。なお、ヤトロファ油の発熱量は約10000kcal/kgであり、比重は0、89g/mlである。
【0036】
タルク18は、粒径1mmから5mmの破砕状の粒子(勝光山研究所)で、カラム内に888g充填した。模擬排水を供給するに先立ち、タルク充填カラム57に水道水を1.2L供給しタルク18に付着しているタルク18の粉末を洗い流した。模擬排水は、流量調節用コック59の調整により頂部より0.60L/分で供給した。
【0037】
タルク充填カラム57に模擬排水を流通させると、模擬排水に含まれる油が赤色に着色されているため、タルク18に油分が付着し着色したタルク層がカラムの上部から下部へ広がるのが視認できた。着色されたタルク層がタルク充填カラム57の下部のマーカ61に到達すると、マーカ61のポリプロピレン不織布63が油を吸着し透明になり、裏面の黄色あるいは赤色のテープで作られた着色材65のX型の文字を明瞭に視認できた。
【0038】
模擬排水等の油分を分析した結果、模擬排水の油分は2.5mg/Lであったが、タルク充填カラム57で処理された処理水に含まれる油分は確認できなかった。なお、模擬排水中の油分の分析は次の方法で行った。排水1Lを分液ロートに入れ、ヘキサン200mLを加えて十分に浸透させ抽出した。さらに、ヘキサン溶液に無水硫酸ナトリウムを加え脱水しろ過した。ろ過したヘキサン溶液をロータリエバポレータで10mL程度まで濃縮した。濃縮液を濃縮管に移し窒素ガスを吹きかけさらに濃縮し、濃縮液の体積を測定し質量に換算した。
【0039】
表1に、本発明のタルク18を用いた油吸着実験装置51によるタルク18の油吸着量の特性を示した。タルク充填カラム57への模擬排水の供給を停止させ、カラム内から油を吸着したタルク18をサンプリングした。サンプル量は、それぞれ約10g単位で数種取り出し油吸着量などを測定した。水分は、ハロゲン赤外水分計を用いて測定し含水率を求めた。その後、油吸着タルクを乾燥し重量を測定し乾燥重量とした。タルク18に吸着した油重量は、次の要領で求めた。乾燥した試料をビーカに入れてヘキサン50mLを加えて攪拌し溶解した。ロートにろ紙を置きロートの下部に空重量を測定したナス型フラスコを取りつけた。ビーカ内のヘキサンを全量、ろ紙でろ過した。その後、ナス型フラスコをエバポレータにかけてヘキサンを蒸発させ、重量を測定し、空のナス型フラスコの重量を差引いた値から求めた。
【0040】
【表1】

【0041】
A1からA3のサンプルは、タルク充填カラム57内のタルク充填層の上部より30〜50mmの位置で採取した。また、B1からB3のサンプルは、タルク充填カラム57内のタルク充填層の上部より70〜90mm位置で採取した。各サンプルにおけるタルク重量当たりの油吸着割合は、3.13%から5.25%と大きな差がなく、充填されているタルク18は、ほぼ均一に比較的多くの油を吸着していることが分かった。また、油分を吸着したタルク18は疎水性であるため、含水率も低く、タルク重量当たりの水付着割合は2.49%から3.57%と低い値を示しており、燃料、特に助燃用の燃料としては十分に利用できることが分かった。
【0042】
タルク18に吸着している油分を燃料として利用する場合、油分を吸着しているタルク18を加熱し油分を分離して利用してもよい。タルク18は、細孔が少なく油分が容易に分離でき、また、付着水分が少ないため、高い発熱量の油燃料を得ることができる。例えば、サンプルA2の場合、分離して得られる油燃料は水を含んでいるが約5000kal/kg以上の発熱量を持っており、一般に広く利用できる。油分を分離したタルク18は吸着材として再利用することもできる。
【0043】
表2は、本発明のタルク18の油吸着量と粒径の異なるタルクの油吸着量の特性を比較し示したものである。表2では、タルクの粒径が小さくなると、比表面積が増大するため油吸着量は増加することが分かる。本実験で用いたタルク18の粒径は1mmから5mmであるが、粒径をさらに細かくすることで油吸着量は増大する。そこで、タルクの粒径を適切に選択することで目的に応じた発熱量を持つ燃料を製造できる。例えば、12.8μのタルクを用いると約1000kal/kg以上の燃料を得ることができる。
【0044】
【表2】

【符号の説明】
【0045】
1 燃料製造装置
15 前処理装置
17 吸着塔
18 タルク
19 可視部
21 透明材
23 マーカ
25 不織布
27 着色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造する装置であって、
タルクを充填した吸着塔に油分含有排水を流通させ、油分を選択的に前記タルクに吸着させ、油分吸着タルクからなる燃料を製造することを特徴とする燃料製造装置。
【請求項2】
前記吸着塔は、吸着塔の出口部近傍に透明材からなる可視部を有し、ポリプロピレン製の不織布の裏面に着色材が貼付されたマーカを備え、
前記マーカは、前記不織布が前記透明材の内壁に接触するように取付けられ、前記不織布は油分を吸着するまでは不透明であり、前記不織布は油分を吸着すると透明になり、裏面の着色材を視認できることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項3】
前記油分含有排水は、予め浮上分離法で油分が除去された後の油分含有排水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料製造装置。
【請求項4】
油分含有排水中の油分を吸着濃縮し燃料を製造すると共に排水を浄化可能なことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の燃料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−111920(P2012−111920A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264453(P2010−264453)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(507234438)公立大学法人県立広島大学 (24)
【出願人】(503364386)長岡鉄工建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】