説明

燃料遮断弁

【課題】燃料遮断弁は、簡単な構成で、液体燃料が接続通路から流出しても速やかに弁室に戻し、外部へ流出するのを防止する。
【解決手段】燃料遮断弁10は、弁室30Sを有し、天井壁31に弁室30S側への開口である接続孔31aを形成したケーシング本体30と、管通路42aを形成する管体部42とを形成する蓋体40と、弁室30S内に収納されたフロート52とを備えている。ケーシング本体30の上部には、接続孔31aから流出した液体燃料を一時的に堰き止めるための滞留室を形成する液遮蔽部材と、滞留室内において天井壁31の上面に突条に複数形成された仕切片とが設けられている。各々の仕切片は、接続孔31aのほぼ中心から液遮蔽部材に連結されるように放射状に配置され、滞留室を複数の滞留分室に分けるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内と外部とを連通遮断するための燃料遮断弁に関し、特に外部への通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料遮断弁として、特許文献1の技術が知られている。燃料遮断弁は、燃料タンクの上部に装着されており、上部に開口部を有する円筒状のハウジング本体と、ハウジング内の弁室に収納されたフロートと、ハウジング本体の上部を覆いかつ上部室を形成するとともにキャニスタ側に接続するための排気ポートを突出した蓋頭部材とを備え、ハウジング本体の開口部をフロートの昇降で開閉することにより、外部に対して燃料タンクの通気を確保するとともに、燃料タンク内の燃料が外部へ流出するのを防止している。また、ハウジング本体の開口部は、ハウジングの本体の上面から突出した隔壁で囲まれている。隔壁には、排気ポートと逆向きに隔壁の一部を切り欠いた切欠き部が形成され、排気ポートへの通気を確保している。この構成により、開口部から流出した液体燃料は、排気ポートへ向かう流れを隔壁によって遮られ、切欠き部から流出しても上方空間に滞留し、排気ポートへ直接、流出することが防止される。
【0003】
しかし、従来の燃料遮断弁において、液体燃料が上方空間に入ると、切欠き部および開口部を通じて弁室に戻り難い。このため、上方空間で留まっている燃料が、車両の振動により、排気ポートを通じてキャニスタに流出し易いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単な構成で、液体燃料が弁室から接続通路を通じて流出しても速やかに弁室に戻し、燃料が外部へ流出するのを防止する燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンク内を外部に連通遮断する燃料遮断弁において、
天井壁と該天井壁の下面の外周部から円筒状に突設された側壁とにより囲まれ上記燃料タンク内に接続される弁室を有し、上記天井壁に上記弁室側への開口である接続孔を形成したケーシング本体と、
上記ケーシング本体の上部に固定され上記接続孔に接続される連絡室を形成する蓋本体と、該蓋本体から突出され上記外部と上記連絡室とを接続する管通路を形成する管体部とを形成する蓋体と、
上記弁室内に収納され、上記燃料タンク内の燃料液面にしたがって昇降することで上記接続通路を開閉するフロートと
を備え、
上記連絡室内に、上記天井壁の上面に上記接続孔の全周を囲む壁面で形成され、上記接続孔から流出した液体燃料を一時的に堰き止めるための滞留室を形成する液遮蔽部材と、
上記滞留室内において上記天井壁の上面に突条に複数形成された仕切片と、
を備え、
上記各々の仕切片は、上記接続孔から放射状に配置され、上記滞留室を複数の滞留分室に分け、該各々の該滞留分室の開口が接続孔側に配置されるように構成したこと、を特徴とする。
【0008】
適用例1にかかる燃料遮断弁を用いた燃料タンクにおいて、給油などにより、燃料タンクの燃料液面の高さにしたがって弁室内のフロートが昇降して接続孔を開閉することで、弁室、接続孔、連絡室内の接続通路および管通路を通じて外部への通気を確保するとともに、燃料の外部への流出を防止している。
【0009】
また、給油や車両の前後の揺れに起因して、燃料の波打ちやフロートの作動遅れを生じて、燃料が接続孔から漏れると、漏れた燃料は液遮蔽部材によって形成された滞留室に導かれる。この場合において、滞留室は仕切片で仕切られているから、流出した燃料は、接続孔から仕切片で仕切られた滞留分室に導かれる。滞留分室内の燃料は、車両の振動を受けても、仕切片に当たってその流速を低減して管通路に向かう力が減少する。よって、燃料は、滞留分室内に留まり、管通路を通じて外部へ流出し難い。そして、車両の傾斜が戻ったときに、滞留分室内の燃料は、仕切片に沿って接続孔へ導かれ、接続孔を通じて燃料タンクに戻される。したがって、給油や車両の振動に起因して、燃料の浪打やフロート機構の作動遅れを生じても、接続孔から流出した燃料が管通路を経てキャニスタへ流出するのを防止することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例2において、仕切片の外周部は、液遮蔽部材の壁面に連結されている構成をとることができる。この構成により、燃料は、液遮蔽部材の壁面をつたって管通路に導かれず、滞留分室内から接続孔へ速やかに戻される。
【0011】
[適用例3]
適用例3において、仕切片は、上記液遮蔽部材より鉛直方向に低く形成され、その上方に上記接続孔と上記管通路との間で気体を流すための上記連絡室の一部を構成することができる。この構成により、仕切片の上方の連絡室を通じて、管通路側へ気流が流れる。よって、接続孔から流出した気体は、仕切片によって大きな圧力損失を受けることなく、管通路へ速やかに流れる。
【0012】
[適用例4]
適用例4において、上記仕切片は、上記接続孔の開口周縁部から径方向に所定距離離れた位置から上記天井壁の上面に突設されている構成をとることができる。この構成により、接続孔の周辺に仕切片がないから、接続孔から流出した気体は、大きな気流の乱れを生じることなく、管通路へ速やかに流れる。
【0013】
[適用例5]
適用例5において、上記液遮蔽部材は、上記管通路に臨んだ位置に上記接続孔の開口周縁部の一部を囲むように形成された円弧部と、上記円弧部より外径の大きい外周側仕切壁と、上記円弧部と外周側仕切壁とのそれぞれの端部を連結する通路側仕切壁とを備えている構成をとることができる。この構成により、円弧部は、管通路に向かって円弧状の通路を形成するから、気流の圧力損失を低減し、気流を速やかに管通路に流すことができる。また、通路側仕切壁は、管体部に対向して形成されているから、液体燃料の管通路への流出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料遮断弁の平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】燃料遮断弁を分解した断面図である。
【図4】燃料遮断弁の上部を示す断面図である。
【図5】ケーシング本体の上部を示す斜視図である。
【図6】ケーシング本体の平面図である。
【図7】液遮蔽部材および仕切片の作用を説明する説明図である。
【図8】蓋体を下方から見た斜視図である。
【図9】連絡室に形成された接続通路を説明する説明図である。
【図10】接続孔から管通路に向かう気体の流れを説明する説明図である。
【図11】上部弁体を構成する第1弁部および第2弁部を分解して示す斜視図である。
【図12】上部弁体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
(1) 燃料遮断弁10の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる燃料遮断弁10の平面図、図2は図1の2−2線に沿った断面図である。図2において、燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、そのタンク上壁FTaに取付穴FTbが形成されている。タンク上壁FTaには、燃料遮断弁10がその下部を取付穴FTbに突入した状態にて取り付けられている。燃料遮断弁10は、ケーシング20と、フロート機構50と、スプリング70とを主要な構成として備えている。ケーシング20は、ケーシング本体30と、底部材35と、蓋体40とを備え、ケーシング本体30と底部材35とにより囲まれたスペースが弁室30Sになっており、この弁室30Sにスプリング70に支持されたフロート機構50が収納されている。燃料遮断弁10は、燃料タンクFT内の燃料蒸気を外部へ逃がすとともに、給油時に燃料タンクFT内の燃料が所定液位FL1まで上昇したときにキャニスタへの流出を規制してオートストップを機能させるものである。
【0016】
(2) 燃料遮断弁10の各部の構成
図3は燃料遮断弁10を分解した断面図である。ケーシング本体30は、上壁を形成する天井壁31と、側壁32とにより囲まれたカップ形状であり、その下部を開口30aとしている。天井壁31の中央部には、接続孔31aが貫通形成されている。接続孔31aの弁室30S側は、シール部31bになっている。側壁32の上部には、燃料タンクFT内と弁室30Sとを接続する連通孔32aが形成されている。また、側壁32の内壁には、フロート52をガイドするための周方向に設けた4カ所〜8カ所のリブ32bが設けられている。底部材35は、ケーシング本体30の開口30aの一部を閉じるとともに、弁室30S内に燃料蒸気および液体燃料を導入するための部材である。底部材35は、底板36と、底板36の外周部から突設された円筒状の導入通路形成部材37とを一体に形成し、底板36の外周部でケーシング本体30の下端に溶着されている。底板36には、流通孔36a,36bが形成されており、燃料蒸気および液体燃料を流通孔36a,36bを通じて弁室30S内に導く。また、底板36の上面には、スプリング70の下端を支持するためのスプリング支持部36cが形成されている。導入通路形成部材37は、導入通路37aを備えている。導入通路37aは、下端の開口部37bから取り込んだ燃料蒸気および液体燃料を流通孔36a,36bを通じて弁室30S内に導く通路である。
【0017】
蓋体40は、蓋本体41と、蓋本体41の中央から側方へ突出した管体部42とを備え、ケーシング本体30の上部と蓋体40とにより囲まれたスペースを、連絡室40Sとしている。管体部42内は、断面円形の管通路42aとなっており、この管通路42aの一端は、連絡室40S、接続孔31aを通じてケーシング本体30の弁室30Sに接続され、他端はキャニスタ(図示省略側)に接続される。蓋本体41の外周部には、フランジ43が形成されている。フランジ43は、ケーシング本体30の上部に溶着されるとともに、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに外側溶着部43aで溶着している。
【0018】
図4は燃料遮断弁10の上部を示す断面図である。蓋体40の蓋本体41とケーシング本体30とにより囲まれた連絡室40Sには、ケーシング本体30の上部および蓋本体41の上壁の下面から突設された部材により、接続孔31aから流出した燃料を一時的に溜めるための滞留室38S、および接続孔31aと管通路42aとを接続する接続通路44が形成されている。
【0019】
図5はケーシング本体30の上部を示す斜視図、図6はケーシング本体30の平面図である。滞留室38Sは、ケーシング本体30の天井壁31の上面に突設された液遮蔽部材38により構成されている。液遮蔽部材38は、接続孔31aの外周側を囲むみかつ鉛直方向に同じ高さの壁面から形成されており、つまり、円弧部38aと、ガイド片38bと、通路側仕切壁38cと、外周側仕切壁38dとにより形成されている。円弧部38aは、管通路42a側であって接続孔31aの中心から約120゜の範囲を囲むように円弧状に形成されている。ガイド片38bは、円弧部38aの接続箇所であって管通路42aへ向かう山形に形成されている。通路側仕切壁38cは、円弧部38aの両端から外周側に管通路42aに対向した対向壁として形成され、管通路42aへの燃料の流れを堰き止めている壁面である。外周側仕切壁38dは、通路側仕切壁38cの両端部から天井壁31の外周に沿ってほぼ半周分だけ形成された壁面である。
【0020】
また、滞留室38S内の天井壁31の上面には、複数の仕切片39が形成されている。各々の仕切片39は、接続孔31aのほぼ中心から放射状に突条(リブ)に複数(図示では5本)形成されており、その外側端が液遮蔽部材38の外周側仕切壁38dに接続一体化されることで、滞留室38Sを複数(図示では6つ)の滞留分室38Saに分けている。なお、仕切片39の放射状の中心は、円形の接続孔31aの中心に設定するほか、各々の滞留分室38Saの開口が接続孔31aに実質的に向いている位置であればよい。仕切片39は、接続孔31aの開口周縁部から径方向に所定距離離れた位置から天井壁31の上面に突設されており、また、その高さは、液遮蔽部材38より低く形成されている。図7に示すように、滞留分室38Saは、接続孔31aから燃料(2点鎖線)が漏れたときに、燃料を一時的に貯留するとともに、接続孔31aから燃料タンクFT側に戻す室である。
【0021】
図8は蓋体40を下方から見た斜視図、図9は連絡室40Sに形成される接続通路44を説明する説明図である。接続通路44は、蓋本体41の蓋内壁41aから形成された前側通気ガイド部材45および後側通気ガイド部材46により構成されている。前側通気ガイド部材45は、円弧壁45aおよび分岐壁45bを備えている。後側通気ガイド部材46は、分岐壁46aおよび円弧部46bを備えている。前側通気ガイド部材45は、その円弧壁45aが接続孔31aの開口周縁の半分に沿うように配置され、分岐壁45bが上方に向かって円弧状に形成され(図4参照)、接続孔31aの上方で接続孔31aの一部にかかるように配置されている。後側通気ガイド部材46は、その円弧部46bが接続孔31aを中心に、前側通気ガイド部材45と反対側であって、山形に配置され、分岐壁46aが上方に向かって円弧状に形成され(図4参照)、接続孔31aの上方で該接続孔31aの一部にかかるように配置されている。
前側通気ガイド部材45および後側通気ガイド部材46は、液遮蔽部材38が前側通気ガイド部材45に対して、高さ方向で所定距離離れて配置されている。
【0022】
図10に示すように、前側通気ガイド部材45および後側通気ガイド部材46の配置により、接続通路44は、第1流路47および 第2流路48からなる分岐通路として構成されている。第1および第2流路47,48は、接続孔31aの中心と管通路42aの軸線Lとを結ぶ線に対して対称に配置されている。第1流路47は、前側通気ガイド部材45の円弧壁45aと後側通気ガイド部材46の円弧部46bとにより形成される分岐路47aと、仕切片39の上部から蓋本体41(図8)の天井面までのスペースに形成される周回路47bとにより構成されている。第2流路48は、第1流路47と同様に、前側通気ガイド部材45の円弧壁45aと後側通気ガイド部材46の円弧部46bとにより形成される分岐路48aと、仕切片39の上部から蓋本体41(図8)の天井面までのスペースに形成される周回路48bとにより構成されている。これらの周回路47b,48bは、管通路42aに合流している。また、前側通気ガイド部材45の分岐壁45bおよび後側通気ガイド部材46の円弧部46bは、接続孔31aの上方で軸線Lに沿って山脈状に形成されることで、接続孔31aから流出する気流を、第1および第2流路47,48に分岐し易いように形成されている。このような接続通路44の構成により、接続孔31aから流出した燃料蒸気の気流は、第1流路47と第2流路48とに分岐し、管通路42aに流れる。
【0023】
図3に示すようにフロート機構50は、再開弁特性を向上させた2段の弁構造であり、フロート52と、フロート52の上部に配置された上部弁体60とを備えている。フロート52は、第1フロート部53と、第2フロート部57とを備え、これらを一体に組み付けている。第1フロート部53の上部には、弁支持部55が突設されている。弁支持部55は、上部弁体60を首振り可能に支持する部位であり、ほぼ円錐形状の突起(凸形状)である支持突部55aを備え、弁支持部55の外周部に上部弁体60を抜止するための環状突部55bが形成されている。第1フロート部53の外周部と第2フロート部57の内周部の間隙には、スプリング収納間隙53aが設けられており、スプリング70が配置されている。
【0024】
上部弁体60は、接続通路44を開閉するとともに、再開弁特性を改善するための弁であり、フロート52の弁支持部55に昇降可能かつ首振り可能に支持されている。図11は上部弁体60を構成する第1弁部61および第2弁部65を分解して示す斜視図、図12は上部弁体60を示す断面図である。第1弁部61は、ほぼ円筒の第1弁本体62と、シート部材64とを備えている。第1弁本体62内には、支持孔62aが軸方向に形成されている。第1弁本体62の上部には、シート部材64を取り付けるための取付部62bが形成されている。また、第1弁本体62の外周部には、環状凹所62cが形成され、その環状凹所62cに支持孔62aを外部に接続するための通気孔62dが4箇所形成されている。第1弁本体62の下部には、スリット62eが形成されており、スリット62eにより固定片62iから係合片62gが弾性変形可能に形成されている。係合片62gには、係合穴62hが形成されている。
【0025】
シート部材64は、シール部31bに着離する第1シート部64aと、支持孔62aに接続される連通孔64bと、連通孔64bの下端部に形成されたシール部64cと、取付部64dとを備え、ゴム材料により一体成形されている。シート部材64は、取付部64dで第1弁本体62の取付部62bに装着されており、第1シート部64aが第1弁本体62の上面に対して間隙を有することで、シール部31bに着座するときに弾性変形してシール性を高めている。
【0026】
図11および図12において、第2弁部65は、円筒形状の第2弁本体66を備えている。第2弁本体66には、下方を開放した有底孔が形成されており、この有底孔の底中央部に、凹形状の被支持部66bが形成されている。被支持部66bは、フロート52の弁支持部55上に載置されることにより、第2弁部65が弁支持部55を支点として首振り可能に支持されている。
また、第2弁本体66の上面には、第2シート部66cが形成されており、この第2シート部66cは、第1弁部61のシール部64cに着離することにより連通孔64bを開閉するように形成されている。第2弁本体66の下部には、抜止爪66dが4箇所形成されており、第1弁本体62の係合穴62hに係合することにより、第1弁部61を第2弁部65に対して昇降可能に支持している。各々の抜止爪66dの上部には、係合穴66eが形成されており、フロート52の環状突部55bに係合することにより、第2弁部65がフロート52に対して昇降可能に支持および抜止されている。また、第2弁本体66の外周部には、第2弁部65を上下方向にガイドするためのガイド突条66fが形成されている。ガイド突条66fは、第2弁本体66の側壁に周方向に等間隔に4箇所、上下方向にリブ形状に突設されており、支持孔62aの内壁面に摺動可能になっている。
また、上部弁体60の重心は、被支持部66bより下方に設定されている。このための構成として、固定片62iが下方の重量を大きくするために形成されている。また、弁支持部55を凸形状に、被支持部66bを凹形状にすることで、上部弁体60とフロート52との中心合わせが容易にでき、しかも支点に対して重心を下方に設定し易くなるので、上部弁体60の姿勢も安定する。
【0027】
(3) 燃料遮断弁10の動作
次に、燃料遮断弁10の動作について説明する。図2に示すように、給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、底部材35の導入通路37a、底部材35の流通孔35b,流通孔35bから弁室30S内に流入する。さらに、燃料蒸気は、弁室30Sから、接続孔31a、接続通路44、管通路42aを通じて、キャニスタ側へ逃がされる。そして、燃料タンクFT内の燃料液位が所定液位FL1に達すると、燃料は開口部37bを塞ぐことにより、燃料タンクFT内のタンク内圧が上昇する。この状態では、タンク内圧と弁室30S内の圧力との差圧が大きくなり、流通孔36a,36bを通じて、弁室30Sに流れ込み、燃料液位が弁室30S内を上昇する。弁室30S内の燃料液位が高さh0に達すると、フロート52の浮力およびスプリング70の荷重による上方への力と、フロート機構50の自重による下方への力との釣り合いによって、前者が後者を上回りフロート機構50が一体になって上昇して、第1弁部61のシート部材64がシール部31bに着座して接続孔31aを閉じる。このとき、インレットパイプ内に燃料が溜まり、給油ガンに燃料が触れると、オートストップを働かせる。これにより、燃料タンクへの給油の際等に、燃料タンクから燃料蒸気を逃がすとともに燃料が燃料タンク外へ流出するのを防止することができる。
【0028】
一方、燃料タンクFT内の燃料が消費されて、燃料液位が低下すると、フロート52は、その浮力を減少して下降する。フロート52の下降により、第2弁部65の抜止爪66dとフロート52の環状突部55bとの係合を介して、フロート52は、第2弁部65を引き下げる。これにより、第2シート部66cは、シール部64cから離れて、連通孔64bを開く。連通孔64bの連通により第1弁部61の下方の圧力は、接続通路44の付近と同じ圧力になる。抜止爪66dが係合穴62hに係合しているから、第2弁部65を介して第1弁部61も引き下げる。そして、第1弁部61が下降することで、シート部材64がシール部31bから離れて、接続通路44が開かれる。このように連通孔64bの通路面積を接続孔31aの通路面積より小さく設定することで、上部弁体60は、小さな力で開弁し、再開弁特性の向上を促進するように作用する。
【0029】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の作用効果を奏する。
(4)−1 図2において、給油や車両の前後の揺れに起因して、燃料の波打ちやフロート機構50の作動遅れを生じて、燃料が接続孔31aから漏れると、図7に示すように、漏れた燃料は液遮蔽部材38によって形成された滞留室38Sに導かれる。この場合において、滞留室38Sは仕切片39で仕切られているから、流出した燃料は、接続孔31aから仕切片39で仕切られた滞留分室38Saに導かれる。滞留分室38Sa内の燃料は、車両のローリングに伴う遠心力や振動を受けても、仕切片39および外周側仕切壁38dに当たってその流速の低減によって管通路42aに向かう力が減少する。しかも、仕切片39の外周部は、外周側仕切壁38dに連結されているので、燃料は、外周側仕切壁38dの壁面をつたって管通路42aに導かれない。よって、燃料は、滞留分室38Sa内に留まり、管通路42aを通じて外部へ流出し難い。そして、車両の傾斜が戻るか、振動により、滞留分室38Sa内の燃料は、仕切片39に沿って接続孔31aへ導かれ、接続孔31aを通じて燃料タンクに戻される。したがって、給油や車両の傾斜や振動に起因して、燃料の浪打やフロート機構50の作動遅れを生じても、接続孔31aから流出した燃料が管通路42aを経てキャニスタへ流出するのを防止することができる。
【0030】
(4)−2 図7に示すように、仕切片39は、接続孔31aの中心から放射状に配置して、各々の滞留分室38Saの開口側が接続孔31aに面しているので、車両がいずれの方向に振動しても、滞留分室38Sa内の液体燃料は接続孔31aへ速やかに戻ることができる。
【0031】
(4)−3 図4および図9に示すように、仕切片39は、液遮蔽部材38より鉛直方向に低く形成され、その上方に接続孔31aと管通路42aとの間で気体を流すための連絡室40Sの一部を構成しているので、仕切片39の上方の連絡室40Sを通じて、管通路42a側へ気流が流れる。よって、接続孔31aから流出した気体は、仕切片39によって大きな圧力損失を受けることがなく、管通路へ速やかに流れる。
【0032】
(4)−4 図6に示すように、仕切片39は、接続孔31aの開口周縁部から径方向に所定距離Laだけ離れた位置から天井壁31の上面に突設されている構成をとっているので、接続孔31aの周辺で大きな気流の乱れを生じることなく、気体を管通路42aへ速やかに流すことができる。
【0033】
(4)−5 図9に示すように、液遮蔽部材38は、管通路42aに臨んだ位置に接続孔31aの開口周縁部の一部を囲むように形成された円弧部38aを備え、管通路42aに向かって円弧状の通路を形成するから、気流を、大きな圧力損失を生じることなく、速やかに管通路42aに流すことができる。また、通路側仕切壁38cは、管体部42に対向して形成されているから、燃料の管通路42aへの流出を確実に防止することができる。
【0034】
(4)−6 接続孔31aから流出した気流は、前側通気ガイド部材45により管通路42a側への流れを遮られ、管通路42aと反対側へ流れるが、反対側に配置された後側通気ガイド部材46の分岐壁46aにより、第1流路47および第2流路48の分岐路47a,48aに導かれ、さらに、液遮蔽部材38の上方に配置された周回路47b,48bを通った後に管通路42aで合流する。したがって、後側通気ガイド部材46の分岐壁46aは、接続孔31aからの気流を、接続通路44の第1流路47と第2流路48とに分岐させ、管通路42aへ速やかに流すから、圧力損失を低減することができる。
【0035】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0036】
上記実施例にかかる液遮蔽部材38および仕切片39は、管通路42a側への液体燃料の流出の防止、および管通路42aへの圧力損失の低減を考慮して、本発明の作用効果を損なわない限り、種々の形状および高さをとることができる。
【0037】
上記実施例のタンク用流路構造体は、給油時の満タン液位であるときに接続孔を閉じる満タン規制バルブに用いたが、これに限らず、車両の傾斜時などに燃料タンクFTの流出を防止するロールオーバーバルブに用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…燃料遮断弁
20…ケーシング
30…ケーシング本体
30S…弁室
30a…開口
31…天井壁
31a…接続孔
31b…シール部
32…側壁
32a…連通孔
32b…リブ
35…底部材
36…底板
36a,36b…流通孔
36c…スプリング支持部
37…導入通路形成部材
37a…導入通路
37b…開口部
38…液遮蔽部材
38S…滞留室
38a…円弧部
38b…ガイド片
38c…通路側仕切壁
38d…外周側仕切壁
38Sa…滞留分室
39…仕切片
40…蓋体
40S…連絡室
41…蓋本体
41a…蓋内壁
42…管体部
42a…管通路
43…フランジ
43a…外側溶着部
44…接続通路
45…前側通気ガイド部材
45a…円弧壁
45b…分岐壁
46…後側通気ガイド部材
46a…分岐壁
46b…円弧部
47,48…第1および第2流路
47a,48a…分岐路
47b,48b…周回路
50…フロート機構
52…フロート
53…第1フロート部
53a…スプリング収納間隙
55…弁支持部
55a…支持突部
55b…環状突部
57…第2フロート部
60…上部弁体
61…第1弁部
62…第1弁本体
62a…支持孔
62b…取付部
62c…環状凹所
62d…通気孔
62e…スリット
62g…係合片
62h…係合穴
62i…固定片
64…シート部材
64a…第1シート部
64b…連通孔
64c…シール部
64d…取付部
65…第2弁部
66…第2弁本体
66b…被支持部
66c…第2シート部
66d…抜止爪
66e…係合穴
66f…ガイド突条
70…スプリング
FT…燃料タンク
FTa…タンク上壁
FTb…取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(FT)内を外部に連通遮断する燃料遮断弁において、
天井壁(31)と該天井壁(31)の下面の外周部から円筒状に突設された側壁(32)とにより囲まれ上記燃料タンク(FT)内に接続される弁室(30S)を有し、上記天井壁(31)に上記弁室(30S)側への開口である接続孔(31a)を形成したケーシング本体(30)と、
上記ケーシング本体(30)の上部に固定され上記接続孔(31a)に接続される連絡室(40S)を形成する蓋本体(41)と、該蓋本体(41)から突出され上記外部と上記連絡室(40S)とを接続する管通路(42a)を形成する管体部(42)とを形成する蓋体(40)と、
上記弁室(30S)内に収納され、上記燃料タンク(FT)内の燃料液面にしたがって昇降することで上記接続通路(44)を開閉するフロート(52)と
を備え、
上記連絡室(40S)内に、上記天井壁(31)の上面に上記接続孔(31a)の全周を囲む壁面で形成され、上記接続孔(31a)から流出した液体燃料を一時的に堰き止めるための滞留室(38S)を形成する液遮蔽部材(38)と、
上記滞留室(38S)内において上記天井壁(31)の上面に突条に複数形成された仕切片(39)と、
を備え、
上記各々の仕切片(39)は、上記接続孔(31a)から放射状に配置され、上記滞留室(38S)を複数の滞留分室(38Sa)に分け、該各々の該滞留分室(38Sa)の開口が接続孔(31a)側に配置されるように構成したこと、を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記仕切片(39)の外周部は、上記液遮蔽部材(38)の壁面に連結されている燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁において、
上記仕切片(39)は、上記液遮蔽部材(38)より鉛直方向に低く形成され、その上方に上記接続孔(31a)と上記管通路(42a)との間で気体を流すための上記連絡室(40S)の一部を構成する燃料遮断弁。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料遮断弁において、
上記仕切片(39)は、上記接続孔(31a)の開口周縁部から径方向に所定距離離れた位置から上記天井壁(31)の上面に突設されている燃料遮断弁。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記液遮蔽部材(38)は、上記管通路(42a)に臨んだ位置に上記接続孔(31a)の開口周縁部の一部を囲むように形成された円弧部(38a)と、上記円弧部(38a)より外径の大きい外周側仕切壁(38d)と、上記管通路(42a)に対向して形成され上記円弧部(38a)と外周側仕切壁(38d)とのそれぞれの端部を連結する通路側仕切壁(38c)とを備えている燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−28213(P2013−28213A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163890(P2011−163890)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】