説明

燃料集合体の外観検査装置

【課題】電気的な画像反転装置を使用することなく正像を得ることができ、また被写体とカメラの距離を離すことなく燃料集合体および内挿物の両方にフォーカスすることができ、効率的に外観検査を行うことができる燃料集合体の外観検査装置を提供する。
【解決手段】被写体からの光線を反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて前記被写体を撮像する燃料集合体の外観検査装置であって、反射鏡として第1反射鏡および第2反射鏡の2枚の反射鏡を有し、被写体からの光線を前記第1反射鏡により反射させ、その後第2反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて被写体を撮像する燃料集合体の外観検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所における燃料集合体の外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では水中に収容された縦置きの燃料集合体(図6)の外観を、燃料集合体の外観検査装置を用いて水平方向から検査している。従来の燃料集合体の外観検査装置は被写体からの光線を1枚の反射鏡により反射させた後カメラヘッドに入射させて撮像している。この様子を図7に示す。図7に示すように、装置を設置するスペースの関係上、水中に設置され45°に傾斜した反射鏡1を介して、同じく水中に縦置きされたカメラヘッド4にて、燃料集合体3を撮像している。カメラヘッド4にはTVカメラが搭載されており、TVカメラの映像はカメラ制御器5を介して、ビデオモニタ6に表示される(たとえば、特許文献1)。
【0003】
上記のように被写体からの光線を1枚の反射鏡に反射させた後カメラヘッドに入射させる場合、カメラヘッドには上下が反転した画像が入力される。一方従来、燃料集合体の外観検査装置に用いられている撮像管を用いたTVカメラの場合、撮像面で電子ビームを走査させることにより、撮像面上に結像された被写体の像を電気信号として読み出している。そして、カメラ制御器5内で撮像面の走査信号を反転させることにより、ビデオモニタ6に正像を表示させている。
【0004】
しかしながら昨今、手作業でしか製作することのできない撮像管の供給業者が減り、撮像管の入手が困難になって来ている。その一方で、撮像管に替わる撮像素子として、感度の高いCCD(Charge Coupled Device:電荷転送素子)やCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)に代表される、固体(半導体)撮像素子を用いたTVカメラが普及している。このような固体撮像素子を燃料集合体の外観検査装置で使用する場合、耐放射線性の観点から遮蔽体を設けることが必要となるが、供給安定性の面からも、また感度の面からも固体撮像素子が今後有望になると考えられる。
【特許文献1】特開2002−81911号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CCDカメラに代表される固体撮像素子カメラの映像読出し方法は撮像管と異なり、一般的には読出し方向を反転する機能を有していない。このため、外観検査装置に図8に示すように画像反転装置7を組み込み、被写体をカメラヘッド4に設けた固体撮像素子カメラで画像信号として読み出した後に前記画像反転装置7により電気的に画像を反転する方法がある。しかし、燃料集合体の外観検査装置で要求される解像度が約800TV本(周波数帯域換算で約10MHz)であるのに対し、市販の画像反転装置が対応する解像度は約400TV本(周波数帯域換算で約5MHz)であり、現在市販されている画像反転装置を用いると著しく画質が劣化するという問題がある。
【0006】
一方、燃料集合体の外観検査装置は、図9に示すように燃料集合体3以外に、内挿物8の外観検査にも用いられる。内挿物8は取扱工具の関係で、一般的に燃料集合体3の位置よりもカメラから離れた位置に置かれる。この場合、燃料集合体3の外観検査で必要な最短フォーカス位置と、内挿物8の検査で必要な最長フォーカス位置を両立させられないという問題がある。この問題を光学的に解決する方法としては、図10に示すようにTVカメラを被写体から遠ざけて、被写体とTVカメラの距離を離せば良いが、燃料検査ピットのスペースの問題からこのような配置を取ることは困難である。
【0007】
このため本発明は、水中に収容された燃料集合体の外観検査を行うための外観検査装置であって、固体撮像素子を用いた場合であっても画質を著しく劣化させることなく正像を得ることができ、またカメラヘッドから異なる距離に位置する被写体に対してもフォーカスを合わせることが可能で、限られたスペース内において効率的に外観検査を行うことができる燃料集合体の外観検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究の結果、被写体からの光線を、2枚の反射鏡を用いて2度反射させた後カメラヘッドに入射させることにより、上記課題を達成できることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、
被写体からの光線を反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて前記被写体を撮像する燃料集合体の外観検査装置であって、
前記反射鏡として第1反射鏡および第2反射鏡の2枚の反射鏡を有し、被写体からの光線を前記第1反射鏡により反射させ、その後第2反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて被写体を撮像すること特徴とする燃料集合体の外観検査装置である。
【0010】
請求項1の発明においては、被写体からの光線を、第1反射鏡により反射させ、その後第2反射鏡により反射させることにより、被写体の像を2回反転させた後カメラヘッドに入射させるため、正象をカメラヘッドに入射させることができ、このため画像反転装置を用いる必要がなく、固体撮像素子を用いた場合であっても画質を著しく劣化させることなく正像をモニタに表示することができる。
【0011】
さらに、第1反射鏡と第2反射鏡の2枚の反射鏡の位置を調整して、光路長を変更し、光学系を再構成することにより、被写体とカメラの距離を離すことなく、反射鏡からの距離が異なる位置に設置された燃料集合体および内挿物の両方に容易にフォーカスを合わせることができるため、限られたスペース内において効率的に外観検査を行うことができる燃料集合体の外観検査装置を提供することができる。
【0012】
このような反射鏡を2枚用いて被写体からの光線を2回反射させて被写体を撮像することは例えば特開平9−5059号公報などにより既に行われているが、従来は前記公報に記載されているような、真直度や平面度を測定する等という他の目的のために行われており、本発明の如く画像を正像にするために用いられていることを記載した文献はない。
【0013】
既に固体撮像素子が普及しているにも拘らず、長年燃料集合体の外観検査装置に用いられなかったのは、耐放射線撮像管が安定的に入手でき、1回反射にて生じた鏡像を電気的方法で容易に正像に戻すことができたためであると考えられる。
【0014】
本発明は、このような燃料集合体の外観検査装置において画像を正像にすることに関して、反射鏡を1枚追加するという光学系の簡単な改良を行うだけで、問題を解決し、高度の電子技術を駆使した装置を用いることなく、低コストで容易に正像を得ることを可能とする画期的な技術である。
【0015】
請求項2の本発明は、
前記被写体からの光線の光軸と前記第1反射鏡の面とが成す角度をα、前記第1反射鏡により反射させた光線の光軸と前記第2反射鏡の面とが成す角度をβとするとき、α+β=135°となるように前記第1反射鏡および第2反射鏡が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体の外観検査装置である。
【0016】
請求項2の発明においては、上記角度α、βがα+β=135°となるように2枚の反射鏡を配置することにより、2枚の反射鏡の相対的な位置やカメラヘッドに対する個々の反射鏡の角度等に関係なく鉛直に置かれた燃料集合体の表面からの光線を、同じく鉛直方向に向けられたカメラヘッドに正しい角度で入射させることができる。
【0017】
このため、燃料検査ピットのスペースの状況など、設置場所の状況に応じて自由度の高い光学系の設計が可能である。
【0018】
請求項3の発明は、
前記被写体の撮像が、固体撮像素子を用いたTVカメラにより行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料集合体の外観検査装置である。
【0019】
請求項3の発明は、本発明の効果を最も顕著に発揮させることができる発明である。即ち、前記の通り固体撮像素子は、一般的に読み出し方向を反転する機能を有していないため、別途画像を反転させるための画像反転装置を必要とするが、本発明によれば、画質が著しく劣化する画像反転装置を用いることなく、被写体からの光線をカメラヘッドに正像として入射させ、正像をモニタに表示させることができる。
【0020】
また、反射鏡により光を反射させる場合、反射面における光量の損失が発生するため、1回の反射に比べて2回の反射における光量低下が大きくなるが、請求項3の発明においては、カメラヘッドとして、撮像管に比べて感度が高い固体撮像素子を用いたTVカメラを用いているため、反射により光量が低下しても良好な画像を得ることができる燃料集合体の外観検査装置を提供することができる。また、撮像管に比べてコスト面でも有利である。
【0021】
使用する固体撮像素子としては、CCD、CMOS、CID(Charge Injection Device:電荷注入素子)などが好ましく適用できる。特にCIDやCMOSを用いたTVカメラの中には耐放射線性を有するものも市販されており、これらを用いることにより放射線によるTVカメラの性能劣化を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固体撮像素子を用いた場合であっても画質を著しく劣化させるということなく正像を得ることができ、またカメラヘッドから異なる距離に位置する被写体に対してもフォーカスを合わせることが可能で、限られたスペース内において効率的に外観検査を行うことができる燃料集合体の外観検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0024】
(1)反射鏡の配置について
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料集合体の外観検査装置の反射鏡の配置および被写体からの光線のカメラヘッドに至るまでの経路を示す説明図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る燃料集合体の外観検査装置は、第1反射鏡1と第2反射鏡2の2枚の反射鏡を備え、被写体となる燃料集合体3や内挿物8からの光線を上記の反射鏡により2回反射させ、カメラヘッド4で撮像するものである。このような構成にすることにより、第1反射鏡1で鏡像(反転画像)となった被写体の像は、第2反射鏡2で再度反転し、最終的に正像としてカメラヘッド4に入射される。これにより、固体撮像素子を用いた場合でも解像度の低い市販の電気的な画像反転装置を使用する必要はなくなり、燃料集合体などの被写体の画質の著しい劣化の発生がない画像をモニタに表示することができる。
【0025】
また、反射鏡を2枚使用して光路長を変更し、光学系を再構成することができるため、被写体とカメラの距離を離すことなく、第1反射鏡1から異なる距離に設置された燃料集合体3及び内挿物8両方の被写体に容易にフォーカスを合わせることができる。
【0026】
図2は、反射鏡を2枚使用して光学系を再構成した外観検査装置の反射鏡の配置の一例および被写体からの光の光路を示す図である。図2において被写体からの光線の光軸と第1反射鏡の面とが成す角度をα、前記第1反射鏡により反射させた光線の光軸と第2反射鏡の面との成す角度をβとするとき、α+β=135°となるように前記第1反射鏡および第2反射鏡が配置されている。
【0027】
このように、α+β=135°に設定されているため、∠BAC=90°となり、第1反射鏡1に水平方向から入射する被写体からの光線の光軸と第2反射鏡2で反射された光線の光軸が直行する。即ち、2枚の反射鏡の距離、相互の位置関係、個々の反射鏡の角度等に関係なく、第2反射鏡2で反射された光線は上方に向かって鉛直に進むため、カメラヘッドに正確に入射させることができる。
【0028】
なお、上記の第1反射鏡1及び第2反射鏡2としては、ノンブラウニングガラス基板にアルミニウムやクロム膜を蒸着した金属蒸着型裏面鏡、誘電体多層膜反射鏡、およびステンレスなどの金属表面を研磨した金属研磨型表面鏡等を用いることが好ましい。
【0029】
(2)カメラヘッドの構成について
図3は本実施の形態に係る燃料集合体の外観検査装置のカメラヘッドの構成を概念的に示す図である。図3において、縦置きされたカメラヘッド4は水密ケース9、TVカメラ10及びレンズ11から構成される。また、TVカメラ10は撮像管に比べて感度の高い固体撮像素子(図示せず)を具備している。
【0030】
以下実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。なお、理解し易くするため、便宜上初めに比較例を記載し、次いで実施例を記載する。
【0031】
(比較例)
本比較例は、図7に示す1枚の反射鏡を有する従来の燃料集合体の外観検査装置を用いた場合の例であって、燃料集合体位置にはフォーカスが合わせられるが、内挿物位置にはフォーカスを合わすことができない例である。
表1に比較例の外観検査装置のズームレンズの仕様を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
ズームレンズとクローズアップレンズを装着したときの、ズームレンズのパラメータは以下のように求められる。
イ.最至近フォーカス位置
最至近フォーカス位置LMIN(気中)は、下記の(1)式により求められる。
MIN=(f×S)/(f+S)・・・(1)
ここで、
:クローズアップレンズの焦点距離
S:レンズのフォーカス目盛位置(表1の最至近フォーカス距離がSに相当する)
【0034】
前記表1に記載したF、Sの値をそれぞれ上記(1)式に代入することにより、LMIN(気中)は以下に示す値となる。
MIN(気中)=720(mm)
さらに、水中における実距離は、LMIN(気中)を1.33倍することにより以下の(2)に示す値となる。
MIN(水中)=720(mm)×1.33=958(mm)・・・(2)
【0035】
ロ.最至近フォーカス位置における視野範囲
最至近フォーカス位置における視野範囲Hは、下記の(3)式により求められる。
H=[H’×{ (S−f)×f} ]/{ (S+f)×f]・・・(3)
ここで、
H’:イメージサイズ
S:レンズのフォーカス目盛位置
:レンズのフォーカスレンズ部の焦点距離(約60mm)
:クローズアップレンズの焦点距離
f:レンズの焦点距離
【0036】
本比較例においては、H’、f(広角端)、f(望遠端)は以下の通りである。
H’=14(mm)(1インチ16:9型撮像素子を想定)
f(広角端)=30×1.5(エクステンダの倍率)=45(mm)
f(望遠端)=150×1.5(エクステンダの倍率)=225(mm)
上記H’、f(広角端)、f(望遠端)および表1に示したf、Sの値をそれぞれ(3)式に代入することにより
最至近フォーカス位置LMIN(水中)(958mm)における水平方向の視野範囲、H(広角端)、H(望遠端)は以下の(4)(4’)に示す値となる。
H(広角端)=217(mm)・・・(4)
H(望遠端)= 43(mm)・・・(4’)
【0037】
ハ.燃料集合体位置および燃料集合体位置における視野範囲
本比較例においては燃料集合体位置LFUELは940mmである。燃料集合体位置LFUELにおけるレンズフォーカス目盛位置S(気中)は、(1)式に表1に記載したf(1200mm)を代入することにより、以下の(5)に示す値となり、レンズフォーカス目盛位置S(水中)はレンズフォーカス目盛位置S(気中)を1.33倍することにより(5’)に示す値となる。
S(気中)=4338(mm)・・・(5)
S(水中)=5770(mm)・・・(5’)
また燃料集合体位置LFUEL(水中の場合1250mm、気中の場合940mm)における視野範囲H(広角端)、H(望遠端)は(3)式に上記レンズフォーカス目盛位置Sおよび前記f(広角端)、f(望遠端)fを代入することにより以下の(6)(6’)に示す値となる。
H(広角端)=288(mm)・・・(6)
H(望遠端)= 58(mm)・・・(6’)
【0038】
ニ.内挿物位置
本比較例における内挿物位置は、水中の場合1650(mm)、気中の場合1240(mm)である。
【0039】
ホ.最遠フォーカス位置および最遠フォーカス位置における視野範囲
また、最遠フォーカス位置LMAX及びその位置における視野範囲Hは下記(7)式および(8)式により求められる。
MAX=f・・・(7)
H=(f/f)×H’・・・・・(8)
上記(7)式より、LMAX(気中)およびLMAX(気中)を1.33倍することにより求められるLMAX(水中)は以下に示す値となる。
MAX(気中)=1200(mm)
MAX(水中)=1596(mm)
また、上記(8)式より、H(広角端)、H(望遠端)は以下に示す値となる。
H(広角端)=373(mm)
H(望遠端)= 75(mm)
以上詳述した比較例における被写体距離と画角をまとめて表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示したように、比較例においては燃料集合体にフォーカスを合わせることはできるが、内挿物位置の1650mmにはフォーカスを合わせられないことが分かる。
【0042】
(実施例1)
実施例1は被写体からの光線を第1反射鏡、第2反射鏡の2枚の反射鏡を用いて反射させることによりカメラヘッドに正像を入射させ、前記第1反射鏡と第2反射鏡の2枚の反射鏡の位置を調整して、さらに光学系を再構成して光路長を変更することにより、反射鏡からの距離が異なる位置に設置された燃料集合体および内挿物の両方にフォーカスすることを可能とした燃料集合体の外観検査装置の例である。
【0043】
図4は本発明の実施例1を説明するための図である。図4において、被写体からの入射光線の光軸と第1反射鏡1及び第2反射鏡2の面とが成す角(αおよびβ)の大きさはどちらも67.5°(α+β=135°)であり、このとき水平方向の光軸をもって第1反射鏡1に入射した燃料集合体3からの光線は、第1反射鏡1により反射した後さらに第2反射鏡2により反射し、鉛直方向の光軸をもってカメラヘッド4に入射される。ここで、光軸が交差する点Aから第1反射鏡1の反射面及び第2反射鏡2の反射面までの距離をL1およびL2を共に100mm、L3を141mmとしている。
表3に実施例1のズームレンズに関する仕様を示す。
【0044】
【表3】

【0045】
なお、実施例1においては2枚の反射鏡を組み合わせて使用することで光路長が長くなるため、表3に示すように(イ)倍率の高いエクステンダを使用するとともに、(ロ)焦点距離の長いクローズアップレンズを使用する。この場合、ズームレンズのパラメータは以下のようになる。
【0046】
イ.最至近フォーカス位置
前記(1)式に表3に記載したf、Sを代入することにより、実施例1の最至近フォーカス位置LMIN(気中)は以下の(9)に示す値となり、水中における実距離はLMIN(気中)×1.33により求めることができ以下の(9’)に示す値となる。
MIN(気中)=969mm・・・(9)
MIN(水中)=969mm×1.33=1289mm・・・(9’)
【0047】
ロ.最至近フォーカス位置における視野範囲
実施例1においては、H’、f(広角端)、f(望遠端)は以下の通りである。
H’=14[mm](1インチ16:9型撮像素子を想定)
f(広角端)= 30×2(エクステンダの倍率)= 60(mm)
f(望遠端)=150×2(エクステンダの倍率)=300(mm)
【0048】
そして、上記H’、f(広角端)、f(望遠端)および表3に記載したf、Sの値をそれぞれ(3)式に代入することにより実施例1の最至近フォーカス位置LMIN(水中)(1289mm)における水平方向の視野範囲Hは、以下の(10)、(10’)に示す値となる。
H(広角端)=219(mm)・・・(10)
H(望遠端)= 44(mm)・・・(10’)
【0049】
ロ.燃料集合体位置
第1反射鏡1と第2反射鏡2を第4図に示す距離に置くと、カメラヘッド4から燃料集合体8までの光路長は、前記比較例に比べて図4中の直角二等辺三角形ABCの各辺の和の長さ(約341mm)だけ長くなり、燃料集合体位置LFUELは以下に示す値となる。
FUEL(水中)=1591(mm)
FUEL(気中)=1197(mm)
【0050】
ハ.燃料集合体位置における視野範囲
燃料集合体位置LFUELにおけるレンズフォーカス目盛位置Sは、前記(1)式にLFUEL=1197mm、f=2100mmを代入することにより、以下の(11)、(11’)に示す値となる。
S(気中)=2784(mm)・・・(11)
S(水中)=3702(mm)・・・(11’)
【0051】
また、燃料集合体位置LFUEL(水中の場合1591mm、気中の場合1197mm)における視野範囲Hは、(3)式に上記レンズフォーカス目盛位置Sおよび前記f(広角端)、f(望遠端)、fを代入することにより以下の(12)、(12’)に示す値となる。
H(広角端)=273(mm)・・・(12)
H(望遠端)= 55(mm)・・・(12’)
【0052】
ニ.内挿物位置および内挿物位置における視野範囲
同様にして、内挿物位置(水中の場合1991mm、気中の場合1497mm)における視野範囲を求めると、以下に示す値となる。
H(広角端)=345(mm)
H(望遠端)= 69(mm)
【0053】
ホ.最遠フォーカス位置および最遠フォーカス位置における視野範囲
また、最遠フォーカス位置LMAX及びその位置における視野範囲Hは、前記(7)式、(8)式から、それぞれ以下の(13)、(13’)と(14)、(14’)に示す値となる。
MAX(気中)=2100(mm)・・・(13)
MAX(水中)=2793(mm)・・・(13’)
H(広角端)=490(mm)・・・(14)
H(望遠端)= 98(mm)・・・(14’)
実施例1における被写体距離と画角をまとめて表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
表4に示した結果から、燃料集合体、内挿物の両方の位置がフォーカス範囲に含まれることが分かる。
【0056】
以上詳述したように、実施例1の燃料集合体の外観検査においては、第1反射鏡および第2反射鏡の2枚の反射鏡を用いて被写体からの光線を2回反射させることよりカメラヘッドに正像を入射させることができ、画像反転装置を用いる場合と比較して、画質の劣化がない画像を得られることが確認できた。また同時に光路長をある程度の自由度を持って長くできることを利用し、ズームレンズ11に装着して使用する市販のクローズアップレンズ及びエクステンダを含めた光学系の再構成を行ない、従来フォーカスが合わなかった内挿物の位置もフォーカス範囲に含められることが確認できた。
【0057】
実施例1において、図4の直角二等辺三角形ABCの直角を挟む2の辺の長さを100mm、斜辺の長さを141mmとしたが、実際にはこの長さに限定されることはなく、使用するレンズの定数と要求されるフォーカス範囲や視野幅に応じて適宜決められる。
【0058】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同じレンズを用いた燃料集合体の外観検査装置であって、実施例1と同じ長さの光路長を確保しつつ、反射鏡を挿入するための水平方向のスペースが小さい場合でも反射鏡を挿入することができるよう2枚の反射鏡を配置した例である。図5は本発明の第2の実施例を説明するための図である。実施例2においては被写体からの光線の光軸が構成した直角三角形ABCにおいてABの長さを実施例1よりも短くした。一方、実施例1と同じ長さの光路長を確保するために、ACの長さを実施例1よりも大きくした。
【0059】
具体的には、図5において、光軸と第1反射鏡1の面とが成す角は60°、光軸と第2反射鏡2の面とが成す角は75°である。このとき光軸の交差する点Aから第1反射鏡1の反射面Bまでの距離L1は72mm、点Aから第2反射鏡2の反射面Cまでの距離L2は125mm、二つの反射鏡間の距離L3は144mmである。
【0060】
そして、実施例2においても、従来フォーカスが合わなかった内挿物の位置もフォーカス範囲に含められることが確認できた。
【0061】
このように、本発明によれば水平方向の設置スペースが小さい場合にも2枚の反射鏡を用いて必要な光路長を確保することができる。また、鉛直方向の設置スペースが小さい場合には、水平方向のAB間の長さを長くすることにより、AC間の長さを小さくしても必要な長さの光路長を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の燃料集合体の外観検査装置の反射鏡の配置および被写体からの光線の光路を示す図である。
【図2】本発明の燃料集合体の外観検査装置においてα+β=135°とする理由を説明する図である。
【図3】本実施の一実施の形態に係る燃料集合体の外観検査装置のカメラヘッドの構成を概念的に示す図である。
【図4】実施例1における反射鏡の配置および被写体からの光線の光路を示す図である。
【図5】実施例2における反射鏡の配置および被写体からの光線の光路を示す図である。
【図6】加圧水型原子炉で使用される燃料集合体の一例を示す側面図である。
【図7】従来の外観検査装置の構成を説明する図である。
【図8】従来の外観検査装置を用いて画像反転を説明する図である。
【図9】従来の外観検査装置を用いて内挿物の検査を説明する図である。
【図10】従来の外観検査装置を用いて内挿物をフォーカスする方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0063】
1 第1反射鏡
2 第2反射鏡
3、20 燃料集合体
4 カメラヘッド
5 カメラ制御器
6 ビデオモニタ
7 画像反転装置
8 内挿物
9 水密ケース
10 TVカメラ
11 レンズ
21 燃料棒
22 シンブル管
23 支持格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光線を反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて前記被写体を撮像する燃料集合体の外観検査装置であって、
前記反射鏡として第1反射鏡および第2反射鏡の2枚の反射鏡を有し、被写体からの光線を前記第1反射鏡により反射させ、その後第2反射鏡により反射させた後、カメラヘッドに入射させて被写体を撮像すること特徴とする燃料集合体の外観検査装置。
【請求項2】
前記被写体からの光線の光軸と前記第1反射鏡の面とが成す角度をα、前記第1反射鏡により反射させた光線の光軸と前記第2反射鏡の面とが成す角度をβとするとき、α+β=135°となるように前記第1反射鏡および第2反射鏡が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体の外観検査装置。
【請求項3】
前記被写体の撮像が、固体撮像素子を用いたTVカメラにより行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料集合体の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−43896(P2010−43896A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206945(P2008−206945)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】