説明

燃料電池、および燃料電池搭載情報電子機器

【課題】本発明の目的は、調湿によってカソード端板のスリット内に溜まる結露水の影響を除くと共に、触媒層やガス拡散層の濡れを適した状態に維持することによって、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池用電極、その電極を用いた高分子電解質型燃料電池および液体燃料電池と、それら燃料電池を組み込んだ情報電子機器を提供することにある。
【解決手段】水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表の両面に配置した一対の電極と、前記電極を覆うように接触した拡散層とで単電池を構成し、前記単電池を集電金属板と前記集電金属板を固定する樹脂基盤とを有する端板で押さえ込むことで構成される燃料電池において、前記端板の前記樹脂基盤表面に調湿成分を有す層を形成したことを特徴とする燃料電池にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接メタノール型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料から電気化学的に直接電気エネルギを取り出すためエネルギ効率が高く、また、排出物の主体が水であることから環境に調和しやすいなどの利点がある。そのため、自動車,分散電源,情報電子機器などへの適用が試みられている。中でも、情報電子機器ではリチウム電池に代わる長時間連続運転可能な電源として注目され、燃料電池を搭載する種々の情報電子機器が提案されている。
【0003】
メタノールを燃料とする燃料電池の中でも、液体のメタノールを直接酸化して電気を取り出す方式、いわゆる直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell 、以下
DMFCと称す)は、改質器等が不要なため、電池システムが比較的簡単な構成にできる利点がある。
【0004】
DMFCの発電原理は式(1)〜(3)で示される。
【0005】
燃料極の反応:CH3OH+H2O → 6H++6e-+CO2 式(1)
空気極の反応:6H++6e-+1.5O2 → 3H2O 式(2)
全体の反応:CH3OH+1.5O2 → 2H2O+CO2 式(3)
【0006】
式(2)もしくは式(3)で示されるように、DMFCでは空気極で水が生成する。水は生成時水蒸気の形態をとっているが、空気極の構造や材質,処理条件によって、その何割かは空気極上で結露水となる。その結露水のうち何割かは、空気極の外へ排出されるが、何割かは空気極に残存する。これによってガス拡散電極やカソード触媒層の濡れ性が、時間の経過とともに増大するため、DMFCではガス拡散電極やカソード触媒層において、酸素ガスの供給路となっていた細孔が閉塞してしまうという課題がある。空気極の性能は供給される酸素量に依存するため、細孔の閉塞が起きた場合、電極に酸素ガスが十分に供給されなくなり、性能が低下する現象が起きる。また、長い時間停止したときは、電極中の高分子電解質や電解質膜が生成水によって十分に湿潤せず、水素イオンのネットワークが減少し、電極のイオン伝導率が低下,電池性能が低下する。
【0007】
カソードで生成する水を回収する技術として特許文献1がある。
【0008】
【特許文献1】特開2006−49153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
単セルを平面状に並べ直列接続する平面型の燃料電池の場合、カソードに酸素を供給するためにカソード端板に貫通孔を設ける必要があるが、この貫通孔近傍で、カソードで生成される水蒸気が結露しやすい状態になる。その結果、カソード端板の貫通孔に生成水が結露して電池出力が著しく低下する。
【0010】
一方で、出力を落とした場合や、停止している場合に、単セルを構成する高分子電解質膜から水分が脱出しやすく、高分子電解質膜が乾いて劣化してしまうという課題がある。
【0011】
本発明の目的は、カソード端板の貫通孔近傍の湿度を調整することによって、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池及び燃料電池を組み込んだ情報電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜とを有する単セルを、単セルのカソード側に設置され、カソードに酸素を供給する貫通孔を有し、調湿成分を有する層を有するカソード端板と、単セルのアノード側に設置され、アノードに燃料を供給する貫通孔を有するアノード端板とで挟持する燃料電池である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池及び燃料電池を組み込んだ情報電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1(a)(b)に燃料電池端板を示す。1は集電板、2はガスケット、3は樹脂基板、4は外部端子接続部、5は1〜4からなる燃料電池端板を示している。外部端子接続部4は燃料電池端板5の側面に露出している。図1(a)は燃料電池端板5を、ガスケット2を設置する側からみたものであり、図1(b)は図1(a)の反対側からみたものである。図1(a)(b)から解かるように、ガスケット2が見えない側には集電板1は露出しない構造になっている。理解を容易にするために燃料電池端板5中に潜り込んでいる集電板1と外部端子接続部4の部分は点線で示してある。
【0016】
一枚の燃料電池端板5には六枚の集電板1と六個のガスケット2が存在し、電池を構成した場合に六個の単セルが直列となる。燃料電池端板5は集電板1,ガスケット2,樹脂基板3、および外部端子接続部4の一体成形によって形成されている。成形は二段階に分けて行った。一段階目に集電板1と樹脂基板3と外部端子接続部4を一体化した後、二段階目にガスケット2と樹脂基板3を一体化した。また、図2に示すように、集電板1はもともと一枚の板であったものを折り曲げて形成されており、面1aと面1bと面1cを有す、面1aはMEA6と接し、面1bは端子接続部7を備えている。また面1cは一体成形時に集電板1と樹脂基板3が強固に噛み合うことを狙って形成した面である。面1aには溝8が切ってあり、この溝8を介して、アノード極であれば燃料の供給と二酸化炭素の排出を、カソード極であれば空気の供給と水の排出を行う。
【0017】
ガスケット2は、集電板1と触れないように、面1aの外周に沿うようにして樹脂基板3上に形成されている。9は貫通孔である。また、図1から解かるように、燃料電池端板5の面積は集電板1の大きさによって左右される。本実施例では、将来的に携帯機器搭載への搭載を目指し、小型化を検討した。
【0018】
集電板1の面1aの大きさは得られる出力に係わるため小さくせずに、面1bを可能な限り小さくした。また、外部端子接続部4は、電池組み上げ後に、外部端子を接続して電池から電力を得るために設けた。
【0019】
1〜4各々の材料としては、集電板1と外部端子接続部4は反応場で安定でありかつ、集電をすることが可能な物質である必要があり、カーボンや金属(金,白金,SUS,チタン等)が考えられるが、実施例1ではチタンとした、ただしチタンそのものではチタン表面に形成される酸化膜の影響で電気抵抗が高いため、表面に数μm程度の金メッキを施した。ガスケット2は反応場で安定な物質であり、尚且つ、本実施例では一体成形でガスケット2を作製しているため、成形性が良い物資である必要がある、この場合EPDM
(エチレンプロピレンジエン三元共重合体),PET(ポリエチレンテレフタレート),シリコン樹脂等が考えられるが、実施例1ではEPDMとした。
【0020】
樹脂基板3は反応場で安定であり、燃料電池端板5の基板として電池を締め付けるための適当な硬さを有し、尚且つ、実施例1では一体成形で樹脂基板3を作製しているため、成形性が良い物資である必要がある。この場合AS(アクリロニトリルスチレン共重合体),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PC(ポリカーボネート),VC(塩化ビニル),PBT(ポリブチレンテレフタレート)等が考えられるが、実施例1ではPBTとした。なお、実施例1では、集電板1と樹脂基板3とは一体化を行っているが、集電板1と樹脂基板3は化学的に結合してはいない。そのため、成形精度によっては、集電板1と樹脂基板3との間に液が流れるに十分な隙間が生じることもある。このような場合には、隙間に例えばシリコン樹脂を流し込んで隙間を埋めて対策した。
【0021】
図3(a)(b)に示すように、アノード端板10とカソード端板11とで、MEA6を挟み込み、貫通孔9へボルト12を通し、アノード端板10の外側に燃料タンク枠13,気液分離膜14,タンク蓋15を取り付け、ナット16とワッシャー17で締め付けることによって図4(a)(b)に示されるような燃料電池モジュール18となる。ただし、図4(a)ではボルト12,ナット16,ワッシャー17は省略してある。個々の単セル間は集電用ボルト19を用いて接続してある。図5(a)(b)には単セル間の接続の様子を理解するための断面図を示した。断面は図4(a)記載のB−B断面とした。ただし、単セル間の接続に重点をおいた図であるため、ボルト12,燃料タンク枠13,気液分離膜14,タンク蓋15,ナット16,ワッシャー17は図示していない。ここで図5(a)は組み立て前、図5(b)は組み立て後である。また、図6(a)(b)に、単セル間の接続方法の別の形態を示した。ここでも単セル間の接続に重点をおいた図であるため、ボルト12,燃料タンク枠13,気液分離膜14,タンク蓋15,ナット16,ワッシャー17は図示していない。ここで図6(a)は組み立て前、図6(b)は組み立て後である。二本の集電用ボルト19を二枚の燃料電池端板5の両側から挿入し、一個の集電用ナット20で単セルを接続する。図5で示した単セル間の接続方法と図6で示した単セル間の接続方法を比べた場合、図6で示した方法の方が、より強固に接続可能であるが、図6で示した方法では部品数が増えるため作業性が落ちる。そこで本実施例では図5で示した方法を採用している。集電用ボルトはカソード端板の表面に露出している。カソード表面に露出した集電用ボルトにテスターを当てることによって、燃料電池モジュール18の製造組み立て時に各MEAの性能を検査することを可能としている。各MEAの性能を検査した後、集電用ボルトは絶縁材でカバーされる。本実施例のMEA6は電解質膜21の一方の側にアノード触媒層22、もう一方の側にカソード触媒層23を形成したものを、カソード拡散層24とアノード拡散層25で挟み込んだ構成のものを指す。そして、燃料電池モジュール18は燃料タンク枠13に備え付けられたチューブ継ぎ手26にチューブ(図示せず)を繋ぎ、更にそのチューブに例えばマイクロチューブポンプ(図示せず)のような外部から燃料を送り込める機械を繋いで燃料を送り込むことで発電が可能となる。また、気液分離膜14は、気体は通過するが、液体は通過しない特徴を持つ膜であり、タンク内で発生した二酸化炭素をタンク内から速やかに排出する役割を担っている。タンク枠13およびタンク蓋15は、硬質塩化ビニル製樹脂を用いる。メタノール水溶液に対して成分が溶出し難い材質であれば、PTFE製やエポキシ製の硬質樹脂,シリコン樹脂やEPDM(エチレンプピレンジエンゴム)などのゴム状樹脂,ガラス繊維や炭素繊維などを複合した樹脂,アルミニウムやチタンや防食処理をしたマグネシウム合金等の金属材料でもよい。また、ネジとアノード端板、もしくはカソード端板との間に、皿バネのような弾性体を挟んでもよい。皿バネ等を併用することで、シール材の経時劣化によるシール性やMEAへの面圧の低下を防ぐことが出来る。
【0022】
上記のようにして得られた燃料電池モジュールにおいて、カソード端板11の外表面に珪藻土の層を設けた。
【0023】
層の形成方法を以下に述べる。カソード端板11の表面うち、図1(b)に示した、
MEA6と接しない方の表面に、ヘラを用いて接着剤を接着層厚さが数十〜数百マイクロメータになるように塗りつけた。その後速やかに、接着層の上から珪藻土をまぶして珪藻土の層を形成した。接着剤は空気中の水分によって硬化するものを用いた。接着剤の粘度は高い方が望ましい。低粘度の接着剤を用いると、接着剤が珪藻土表面の細孔に毛細管現状によって入り込んでしまう。珪藻土に期待する調湿効果は、この表面の細孔部分によるものであるため、接着剤がこの細孔に入り込むことは好ましくない。また、珪藻土は市販されているものの中から、粒の大きさが数百マイクロメータ〜数ミリメータものを選び用いた。選ぶ粒の大きさは接着層の厚さによって異なる。粒の大きさは接着層の厚さより大きいものが好ましい。接着層の厚さより小さい粒子を選ぶと、接着層の中に珪藻土が埋もれてしまうためである。粒子が接着層の中に埋もれると接着剤が珪藻土表面の細孔に毛細管現状によって入り込んでしまい、珪藻土に期待する効果を得られなくなる。望ましい珪藻土層の形成状態を図7(a)に、望ましくない形成方法を図7(b)に示す。
【0024】
なお、実施例1で述べた珪藻土層の形成方法はあくまで一例である。市販品の中には接着剤と珪藻土とをペースト状に混合して使用する仕様のものもある。その場合は、仕様に従って珪藻土層を形成すればよい。
【0025】
本発明の効果である調湿性を確認するために、上記操作で得られた燃料電池モジュール18を用いて検証試験を行った。
【0026】
試験装置の構成を図8に示す。装置形態は、電池モジュールを両側に配管を溶接した一定体積の容器27に入れ、配管の一方に、乾燥空気のボンベ28を接続し、他方の配管には露点計29を接続した形になっている。電池モジュールは容器に開けた穴を通して、電子負荷装置30と接続されている。容器に開けた穴はシリコン樹脂(例えば、信越化学工業株式会社製:KE45W)で埋めてある。なお、あらかじめある程度の湿度を含んだ空気で試験を行いたい場合は、乾燥空気のボンベと容器との間に加湿用水タンクを設置すればよい。燃料電池モジュールへの燃料供給は燃料カートリッジ31によって行った。
【0027】
検証試験は、容器内の湿度の変化と、電池電圧に着目して行った。この条件では、容器内の湿度変動が小さく、長時間発電しても電圧の低下が少ないものが好ましいことになる。先に述べたように、燃料電池出力はそれを取り巻く湿度の影響を受ける。湿度が高い場合には、カソードで生成した水によるフラッディングで出力が低下し、湿度が低い場合には、電解質膜の乾燥による水素イオンのネットワークの減少で出力が低下する。従って電池には適当な湿度が必要となる。しかしながら、この湿度に対する電池の挙動には、湿度が高い場合の電圧には主にカソード拡散層およびカソード電極の特性が、湿度が低い場合には主に電解質膜の特性が影響している。何%RHの湿度が最適であるかは、MEAの作製方法,電極構成やカソード拡散層の調製方法等によって異なるため、一概には言えない。従って、本実施例では容器内をある湿度になるように調整しているが、この湿度が燃料電池の出力にとって最適であるということではない。
【0028】
珪藻土による調湿性は、珪藻土の細孔径と珪藻土の量と燃料電池から発生する水分量によって影響を受ける。燃料電池の調湿を行う場合、予め燃料電池から発生する水分量を見積もった後に、珪藻土の細孔径と量を見積もることが望ましいと考えられる。
【0029】
本実施例では平均細孔径が約40Åの珪藻土を用いた。平均細孔径はガス吸着法を用いて測定した。不活性ガスとして窒素ガスを選択し、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により細孔径を求めた。カソード端板11の表面に形成した珪藻土の層の厚さは1〜3mmとした。
【0030】
本実施例では珪藻土の平均細孔は約40Åのものを用いたが、25Å〜65Åの範囲であれば良好な結果が得られる。
【0031】
なお、珪藻土の代わりにゼオライトを用いてもよい。ゼオライトの場合、珪藻土を用いる場合と比較して、調湿層を厚くするか、電池から発生する湿度が小さくなるように設計する等の工夫が必要である。ゼオライトの平均細孔径も25Å〜65Åが良く、厚さは
1.5 〜3mmが良い。
【0032】
また、検証試験は電池モジュール組み立て後所定のエージング作業を行った後速やかに行った。これは電解質膜の乾燥を避けるためである。
【0033】
図9に検証試験の結果を示す。
【0034】
(1)比較品 湿度は発電開始と共に上昇し続け、ほぼ飽和水蒸気に達した。電圧は、飽和水蒸気に達した後、しばらくして不安定になった。また、発電停止と共に湿度は急激に減少し続け、発電開始前とほぼ等しい値になった。
【0035】
(2)本発明 湿度は発電開始と共に上昇するが、60〜70%RHの付近で一定となった。電圧は、試験開始後わずかに低下したが、不安定になることなくほぼ一定となった。また、発電停止後は(1)と異なり湿度が急激に減少することはなかった。
【0036】
以上、本実施例によれば、燃料電池が発電によって生じる水蒸気の影響を受け難く、
MEAが長時間乾燥し難い燃料電池を提供することができる。
【実施例2】
【0037】
図10(a)(b)は、実施例1で作製した燃料電池モジュール18を搭載した情報電子機器32の外観構成を示すものである(なお、燃料電池モジュールの部位について、実施例2で特に記載していない箇所は実施例1を参照)。図10(a)の右が正面図、図
10(a)の左が背面図、図10(b)は図10(a)中に記載したA−A断面図である。33は情報電子機器32の筐体、34は表示部、35は情報電子機器32の操作ボタン、36はスリットを示している。スリット36は、燃料電池モジュール18に外部から空気を供給するためのものである。燃料電池モジュール18は、情報電子機器の筐体に内包されている。
【0038】
図10(b)には、情報電子機器32の内部構成の模式図も示してある。内部構成は主に、燃料電池モジュール18,回路37,二次電池38,燃料カートリッジ39を有し、燃料供給のためのポンプ等の補機は使用していない。なお、燃料カートリッジ39は着脱可能である。また、実施例2では、二次電池38としてLi電池を用いた。Li電池は燃料電池モジュール18の発電をサポートする役割を担う。燃料カートリッジ39からの燃料を燃料電池モジュール18に供給し発電する。発電した電力を利用して、二次電池38を充電することも可能である。
【0039】
ここで使用する燃料電池モジュール18は、メタノールを直接酸化するタイプの燃料電池である。また、ここで情報状電子機器とは、表示部(画面)を有し、情報の入出力が可能な装置である。
【0040】
燃料電池モジュール18は、平板形状を有しており、情報電子機器32の表示部の裏側に、表示部と並行に搭載されている。
【0041】
情報電子機器32は、情報電子機器32の演算処理部と表示部とが同一筐体内に含まれるような情報電子機器を示しているが、このようないわゆるPDA(Personal Digital
Assistance)以外でも、例えばノートPC,タブレット型情報機器,携帯電話などの情報電子機器でも構わない。
【0042】
図10(b)に示すように、燃料電池モジュール18と回路37との間は、絶縁性で水や水蒸気を透過しない壁40で分けられている。
【0043】
燃料電池モジュール18と情報電子機器32とは、燃料電池モジュール18の締め付けナット16のヘッド部の外形と同形状に壁40に掘り込み(図示せず)を入れ、この掘り込みに、ナット16のヘッド部を引っ掛けることで固定されている。ナット16のヘッド部は突起となって、燃料電池モジュール18のカソード電極への空気供給が妨げられることを防ぐことも期待できる。
【0044】
ナットのヘッド部を用いない場合でも、空気供給を確保するために突起部を設けることが好ましい。また、燃料電池モジュール18の固定は、燃料電池モジュール18の外形に合わせて突起を形成して行っても良い。なお、燃料電池モジュール18の固定は、粘着テープの貼り付けによって行ってもよいが、粘着テープの特性によっては、燃料電池モジュール18から発生した水蒸気によって粘着性が損なわれたり、水蒸気によって粘着テープの成分が溶出したりする等の問題を考慮する必要がある。また、燃料電池モジュール18の額縁にネジ穴を設けて、ネジ締結によって行ってもよいが、組み立て工数と部品数が増加する問題を考慮する必要がある。
【0045】
スリット36は、孔を開けた樹脂フィルムを用いるが、ステンレス鋼製の金網や、金属板に孔をあけた、いわゆるパンチングメタルでもよい。材質は、メタノール水溶液に腐蝕され難い材質であればよく、チタンなどの金属や、エポキシ樹脂製,炭素繊維やガラス繊維を複合した樹脂製であってもよい。
【0046】
燃料電池モジュール18からの出力は、外部端子接続部4を介して情報電子機器32の表示画面裏側にある回路37に供給される。
【0047】
燃料電池モジュール18への燃料供給は、図11に示されるように、燃料カートリッジ39を燃料カートリッジ保持部41へ挿入し、そこから燃料タンク枠13の側面に形成したチューブ継ぎ手26へチューブを介して燃料を送り込むことでなされる。
【0048】
実施例2では、カートリッジを用いて燃料タンクへの補充を行った。カートリッジの吐出圧は大気圧に比べて充分に大きく設定し、レギュレータ(図示せず)で所定の圧力に調整して燃料タンクに導入した。この加圧によって、燃料タンク内で消費された燃料は速やかにカートリッジから供給され、燃料タンク内が常に燃料で満たされる。
【0049】
燃料電池モジュール18は、外気の空気を自然拡散により取り込み発電するため、外気中の異物、いわゆるホコリや花粉等の粉塵やタバコの煙等の侵入を出来る限り防ぐために、スリット36の表面にフィルター(図示せず)を設けてもよい。
【0050】
燃料タンクの容量,燃料カートリッジ容量及びメタノール濃度によって、燃料電池モジュール18の駆動時間が決まる。燃料タンクは、メタノール濃度20重量%のメタノール水溶液が25cc入る容量を有している。また、燃料カートリッジはメタノール濃度20重量%のメタノール水溶液が5cc入る容量を有している。燃料カートリッジ一本で約2時間の使用が可能である。
【0051】
メタノール濃度が20重量%の燃料を用いたが、MEAや端板等の構成部材の特性を損なわない範囲であれば、さらに濃い濃度の燃料を用いてもよい。
【0052】
本発明の効果である調湿性を確認するために、上記操作で得られた情報電子機器を用いて検証試験を行った。
【0053】
図12に結果を示す。検証試験は燃料電池モジュール18を情報電子機器32に搭載したまま行った。電池に対する負荷は、情報電子機器32に搭載された回路37の制御によって行われるが、実施例2の回路は電池から常に一定電流を負荷する形態になっている。電圧は、外部端子接続部4部分で観測した。観測は筐体外部に置いた電圧計からスリットの間に配線挿入し、その配線を外部端子接続部4部分に接続して行った。検証試験では電池電圧が発電時間に対してどのように変化するかに注目した。この条件では、長時間発電しても電圧の低下が少ないものが好ましいことになる。試験を行うにあたり、比較品として、本実施例で用いた端板と全く同じ形状でありながら、表面に珪藻土を塗ってない端板を用いて組み立てた燃料電池モジュールを組み込んだ情報電子機器で行った試験結果も合わせて示す。図12から明らかなように、本実施例の電池モジュールは、比較品と比べて、長時間におよび電圧低下が少ない。
【0054】
以上、本実施例によれば、燃料電池が発電によって生じる水蒸気の影響を受けることなく、MEAが長時間乾燥し難い燃料電池を搭載した情報電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】請求項1記載の燃料電池端板の一例を示す図。
【図2】請求項1記載の燃料電池端板を構成している集電板の一例を示す。
【図3】請求項1の燃料電池端板の組み立て方を示す図。
【図4】請求項1記載の燃料電池端板と、その燃料電池端板を用いた燃料電池モジュールの一例を示す図。
【図5】請求項1記載の燃料電池端板を用いて組み立てた燃料電池モジュールの断面図。
【図6】請求項1記載の燃料電池端板を用いて組み立てた燃料電池モジュールの断面図。
【図7】珪藻土層の形成方法を示す図。
【図8】試験装置の構成を示す図。
【図9】検証試験の結果を示す図。
【図10】燃料電池搭載情報電子機器の外観図および断面図。
【図11】燃料電池搭載情報電子機器の外観図。
【図12】検証試験の結果を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1…集電板、1a…MEAと接する集電板の面、1b…端子接続部を備えた集電板の面、1c…成形時に集電板と樹脂基板との噛み合いを強固にするための面、2…ガスケット、3…樹脂基板、4…外部端子接続部、5…燃料電池端板、6…MEA、7…端子接続部、8…溝、9…貫通孔、10…アノード端板、11…カソード端板、12…ボルト、13…タンク枠、14…気液分離膜、15…タンク蓋、16…ナット、17…ワッシャー、
18…燃料電池モジュール、19…集電用ボルト、20…集電用ナット、21…電解質膜、22…アノード触媒層、23…カソード触媒層、24…カソード拡散層、25…アノード拡散層、26…チューブ継ぎ手、27…容器、28…ボンベ、29…露点計、30…電子負荷装置、31…燃料カートリッジ、32…情報電子機器、33…筐体、34…表示部、35…操作ボタン、36…スリット、37…回路、38…二次電池、39…燃料カートリッジ、40…壁、41…燃料カートリッジ保持部、a…珪藻土、b…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜とを有する単セルと、前記単セルのカソード側に設置される部材とを有し、前記部材は調湿成分を有する層を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜とを有する単セルを、前記単セルのカソード側に設置され、前記カソードに酸素を供給する貫通孔を有し、調湿成分を有する層を有するカソード端板と、前記単セルのアノード側に設置され、前記アノードに燃料を供給する貫通孔を有するアノード端板とで挟持する燃料電池。
【請求項3】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成された水素イオン伝導性高分子電解質膜とを有する単セルを、前記単セルのカソード側に設置され、前記カソードに酸素を供給する貫通孔を有するカソード端板と、前記単セルのアノード側に設置され、前記アノードに燃料を供給する貫通孔を有するアノード端板とで挟持し、前記カソード端板を覆い、貫通孔を有するハウジング部の内側に調湿成分を含む層を形成した燃料電池。
【請求項4】
前記調湿成分を含む層が、珪藻土を有する請求項1記載の燃料電池。
【請求項5】
前記珪藻土の平均細孔径が25〜65Åであることを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
【請求項6】
前記調湿成分を含む層が、ゼオライトを有する請求項1記載の燃料電池。
【請求項7】
前記ゼオライトの平均細孔径が30〜65Åであることを特徴とする請求項6記載の燃料電池。
【請求項8】
前記アノードにメタノール水溶液を、前記カソードに空気を供給することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項9】
請求項1記載の燃料電池であって、前記部材は、金属集電板を有するカソード端板である燃料電池。
【請求項10】
請求項1記載の燃料電池であって、前記調湿成分を含む層は、多孔質の粒子層と前記多孔質の粒子層よりも薄い接着層とを有する燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−4315(P2008−4315A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170849(P2006−170849)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】