説明

燃料電池のガス配管継手

【目的】 高温の条件下でガス配管の電気絶縁性を確保しつつボルトの締付け力の低下によるガスリークの発生を未然に防止することを可能とする。
【構成】 フランジ部34とフランジ部36とを突き合わせてボルト締めしてなる燃料電池のガス配管継手において、上記フランジ部34とフランジ部36との間、および上記ボルト33と少なくとも一方のフランジ部34(36)との間にそれぞれ電気絶縁部材41,44を介設すると共に、フランジ部34,36間にボルト締めしたときにフランジ部34,36を弾性変形させる間隙53,54を形成したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は燃料電池のガス配管継手に係り、特に高温のガス配管の電気絶縁性を確保しつつボルトによる締付け力の低下を防止することのできる燃料電池のガス配管継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は燃料電池の一例を示すものであり、図示するように、容器1内にはボルト2で上下に締付けられる電池本体(単セルの積層体)3が収容されている。この燃料電池本体3の下部に設けられたホルダ4にはアノード(燃料)側の入口ガス配管5および出口ガス配管6が接続されると共にカソード(酸化剤)側の入口ガス配管7および出口ガス配管8が接続されている。これら容器1内の各ガス配管5〜8にはフランジ部11,12を互いに突き合わせてボルト締めしてなる継手13が介設されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、燃料電池の電位を確保するためには容器1内の電池本体側配管(例においてはホルダ4の各配管部分)において容器1と電気絶縁する必要がある。
【0004】一方、出力の高い大型の燃料電池においては各ガス配管5〜8を通過するガスの運転温度は高温(700 度)になり、各ガス配管温度も高温になる。したがって、フランジ部11,12間にテフロンを使用したパッキンを介設してもテフロンの使用限界温度が低い(200 〜220 度)ことから電気絶縁には限界があり、また、継手13部分においてはボルトが熱膨張して締付け力が弱められ、ガスリークが発生する問題がある。
【0005】本発明は上記問題点を有効に解決すべく創案されたものである。
【0006】本発明はガス配管の電気絶縁性を確保しつつボルトの締付け力の低下によるガスリークの発生を未然に防止することのできる燃料電池のガス配管継手を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はフランジ部とフランジ部とを突き合わせてボルト締めしてなる燃料電池のガス配管継手において、上記フランジ部とフランジ部との間、および上記ボルトと少なくとも一方のフランジ部との間にそれぞれ電気絶縁部材を介設すると共に、フランジ部間にボルト締めしたときにフランジ部を弾性変形させる間隙を形成したものである。
【0008】
【作用】フランジ部とフランジ部との間、およびボルトと少なくとも一方のフランジ部との間にそれぞれ電気絶縁部材が介設され、ガス配管の継手において電気絶縁される。また、フランジ部間に間隙が形成され、この隙間によりボルトを締付けたときにフランジ部が弾性変形するので、フランジ部はバネ効果を発揮する。したがって、ボルトが熱膨張してもボルトによる締付け力がフランジ部の弾性力で補われ、フランジ部に対する締付け力を維持できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】図3は高出力の大型燃料電池を示すものである。
【0011】図示するように、容器21内にはボルト22で締付けられる電池本体(スタック)23,24が上下に配置されると共に、これら電池本体23,24にガスを均一に分配し、かつ電池本体23,24の締付けを安定させるための中間ホルダ25が配置されている。中間ホルダ25にはアノード(燃料)側の入口ガス配管26および出口ガス配管27が接続されると共にカソード(酸化剤)側の入口ガス配管28および出口ガス配管29が接続されている。これらガス配管26〜29は容器21内に立ち上げて中間ホルダ25に接続されている。
【0012】31は下部ホルダであり、この下部ホルダ31は容器21と導通して同電位となっている。なお、容器21に収容された電池本体を1ユニットとしてこれを直列に接続する場合には下部ホルダ31において絶縁する必要がある。また、数ユニットの電池本体を直列に接続し高電圧化を図る場合、電池本体のすべての部分を電気的に対地(容器)と絶縁する必要がある。
【0013】各ガス配管26〜29には図1に示すようにフランジ付配管30aとフランジ付配管30bとを連結する継手32が介設され、この継手32はボルト33を下部のSUS製フランジ部34に形成されたボルト挿通孔35および上部のSUS製フランジ部36に形成されたボルト挿通孔37に挿通させてナット38で締め付けて構成されるものである。
【0014】特に、フランジ部34,36間には電池本体23,24の電位を確保するためにフランジ部34のフランジ面とフランジ部36のフランジ面との接触を切断する電気絶縁部材41が介設され、この電気絶縁部材41はアルミナ製の絶縁ガスケット42により構成されている。リング状に形成された絶縁ガスケット42にはボルト33を挿通させる挿通穴43が形成されている。また、ボルト33と下部のフランジ部34との間にもこれらの接触を切断する電気絶縁部材44が介設され、この電気絶縁部材44はボルト挿通孔35内にボルト33を覆うように設けられたセラミック製絶縁パイプ45を有すると共に下部のフランジ部34とボルト頭部46との間に3層に重ね合わされた絶縁ワッシャ47〜49を有する。中間に位置する絶縁ワッシャ48はカオウオールシートで構成され、その上下に位置する絶縁ワッシャ47,49は上下面にセラミック溶射層が施されたSUS材で構成されている。
【0015】また、絶縁ガスケット42とこれを上下に挾むフランジ部34,36との間にはリング状の摺動材51,52が介設されており、この摺動材51,52はフランジ面と絶縁ガスケット42との水平方向の熱膨張差により絶縁ガスケット42にクラックが発生することを防止するために比較的軟質の銅あるいはモネルで構成されている。摺動材51,52の摺動面には摺動性および耐摩耗性を確保するために金メッキ層が施されている。
【0016】また、摺動材51,52はボルト締めしたときにフランジ部34,36を弾性変形させる間隙53,54を形成する。図示例にあっては摺動材51,52が絶縁ガスケット43を間に挾んで上下に介設されているので、下部のフランジ部34と絶縁ガスケット42との間に間隙53が形成されると共に、絶縁ガスケット42と上部のフランジ部36との間に間隙54が形成される。これらの間隙53,54はフランジ部34,36間の内周側が摺動材51,52で閉じられてフランジ部34,36間を外周側に開放するようになっている。したがって、各フランジ部34,36はボルト締めされることにより強制的に互いに近接する方向に変形するために、元の平坦なフランジ面に復帰しようとするバネ力を発揮する。
【0017】高温ガスを移送する運転時において、ほとんど熱変形しない絶縁ガスケット42に対しボルト33が軸方向に熱膨脹しても、ボルト33の締付けによりフランジ部34,36が互いに近接させる方向に弾性変形している限り、その弾性力がボルト33の締付け力を補うことになり、ボルト33による締付け力の低下を防止できる。
【0018】このようにフランジ部34,36間、およびフランジ部36とボルト33との間に電気絶縁部材41,44が介設されると共に、ボルト締めしたときにフランジ部34,36を弾性変形させるため、継手32においてはガス配管26〜29の電気絶縁を確保しつつフランジ部34,36のバネ効果によりフランジ部33,36の締付け力が維持されガスシール性が確保される。
【0019】図2は第2の実施例を示すものである。
【0020】図2においてはフランジ部34,36間に介設される電気絶縁部材41がアルミナ繊維を主成分とするセラミックファイバー製シート状ガスケット61で構成されている。このガスケット61はセラミックファイバにシリカ系等のバインダを加えてなるものである。セラミックファイバにバインダを加えたガスケット61は耐食性の強い電解質である炭酸塩に対して健全である。
【0021】また、運転温度が上昇するとバインダのみが飛散および焼結して収縮してしまうため、ガスケット61の厚さは多少減少するが、フランジ部材34,36がボルト締めされて弾性変形しているので、ガスケット61の厚さの減少に伴うフランジ部34,36の締付け力の低下をフランジ部34,36の弾性変形で補うことができる。なお、ガスケット61は一度収縮すると後に温度変化があってもガスケット61の厚さに変化は生じない。したがって、室温と運転温度(700 度程度)との間の熱サイクルの繰り返し(温度の上下変動)があっても、本実施例にあっては安定したガスシール性を発揮できる。
【0022】また、ボルト33と下部のフランジ部34との間に介設される電気絶縁部材44にあっては絶縁パイプ45がボルト33の周りに巻き付けてなるセラミックファイバシートで構成されると共に中間の絶縁ワッシャ48がセラミックファイバシートで構成されている。
【0023】さらに、下部のフランジ部34のフランジ面には径方向内側を隆起させてなる段部62が形成され、この段部62は上下のフランジ面間に間隙63を形成する。したがって、上記実施例と同様にボルト締めしたときにフランジ部34,36が弾性変形し、ボルト33の熱膨張による締付け力の低下を防止できる。なお、段部62は上部のフランジ部36のフランジ面あるいは双方のフランジ部34,36のフランジ面に形成してもよい。
【0024】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、フランジ部とフランジ部との間、およびボルトと少なくとも一方のフランジ部との間にそれぞれ電気絶縁部材を介設すると共に、フランジ部間にボルト締めしたときにフランジ部を弾性変形させる間隙を形成したので、高温下においてガス配管の電気絶縁性を確保しつつボルトの締付け力の低下を防止でき、ガスシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス配管の継手を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図3】大型の燃料電池を示す断面図である。
【図4】小型の燃料電池を示す断面図である。
【符号の説明】
26〜29 ガス配管
33 ボルト
34,36 フランジ部
41,44 電気絶縁部材
53,54,63, 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フランジ部とフランジ部とを突き合わせてボルト締めしてなる燃料電池のガス配管継手において、上記フランジ部とフランジ部との間、および上記ボルトと少なくとも一方のフランジ部との間にそれぞれ電気絶縁部材を介設すると共に、フランジ部間にボルト締めしたときにフランジ部を弾性変形させる間隙を形成したことを特徴とする燃料電池のガス配管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−169472
【公開日】平成7年(1995)7月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−315105
【出願日】平成5年(1993)12月15日
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)