説明

燃料電池の水処理装置

【課題】本発明の目的は、燃料電池の長期の運用により生じる細菌の繁殖を抑制し、長期の運用を可能とする燃料電池の水処理装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、イオン交換樹脂を用いた燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液を通液することによって、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂を用いた燃料電池の水処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、水素が必要であり、都市ガスや天然ガス等から水素を製造するためには、その改質工程において水が必要であり、純水が利用される。また、燃料電池の冷却や、固体高分子型燃料電池の高分子膜の加湿等にも純水が利用されている。
【0003】
純水は、通常イオン交換樹脂を備える水処理装置を利用して不純物イオンを除去することにより製造される。水道水からの純水製造の他、燃料電池の発電反応により生じる凝縮水等を処理し、該処理水(純水)を燃料電池に循環する技術が種々提案(例えば、特許文献1参照)されている。
【0004】
燃料電池は長期運用を目標に開発が進められているため、その燃料電池に用いる水処理装置も同様に、長期運用が期待される。そして、燃料電池で利用する水は外気より取り込んだ空気と接触するため、設置環境によっては、その空気を経由して水処理装置内に細菌が混入し、増殖する可能性がある。水処理装置内で細菌が増殖すると、所望の水質が得られないだけでなく、閉塞を起こして安定した処理水を供給することができない可能性がある。
【0005】
従来から、水処理装置内での細菌繁殖を抑制する方法はいくつか提案されている(例えば、非特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
非特許文献1では、OH型の陰イオン交換樹脂を用いることによって、細菌の繁殖を抑制する効果があることが示されている。そして、その理由は、OH型の陰イオン交換樹脂が強いアルカリ性を示すことによるものであるとしている。また、非特許文献1では、OH型とH型の混床樹脂は、OH型のイオン交換樹脂単独に比べより高い殺菌能力を有することが開示されている。その理由は、細菌が樹脂内を通過する際に、OH型とH型に無秩序に接し、大きなpH変化を受けるためであるとしている。
【0007】
特許文献2では、銀を担持した活性炭等の抗菌剤をイオン交換樹脂と混合することにより、細菌の繁殖を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−17457号公報
【特許文献2】特開平10−314727号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】佐藤利夫ら、電気化学および工業物理化学、54(3)、1986年、269頁〜273頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非特許文献1のようにOH型のイオン交換樹脂を水処理装置に用いても、燃料電池の発電反応等により生じる凝縮水には、炭酸が多く存在しており、該凝縮水が通水されれば、OH型のイオン交換樹脂は炭酸型に置換されることとなる。すなわち、初期の使用においては、イオン交換樹脂はOH型であるため、細菌の繁殖は抑制されるものの、長期の使用によってイオン交換樹脂は炭酸型となるため、細菌の繁殖を抑制することが困難となる。したがって、水処理装置の長期の使用においてはあまり有効でないと云える。また、非特許文献1のようにOH型とH型の混床樹脂を水処理装置に用いても、上記説明したように、OH型のイオン交換樹脂は炭酸型に置換されることとなるから、長期の使用においてはあまり有効ではないと云える。
【0011】
また、特許文献2のように銀を担持した抗菌剤を混合したイオン交換樹脂を水処理装置に用いると、活性炭からの溶出物や破砕物が処理水中に混入し、燃料電池の発電性能に影響を与える結果となり、長期の運用にはあまり有効ではない。
【0012】
本発明の目的は、燃料電池の長期の運用により生じる細菌の繁殖を抑制し、長期の運用を可能とする燃料電池の水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、イオン交換樹脂を用いた燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液を通液することによって、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換したものである。
【0014】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、硝酸塩溶液、硫酸塩溶液、塩化物溶液、錯塩溶液のうち少なくともいずれか1つから選択されることが好ましい。
【0015】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、硝酸塩溶液、硫酸塩溶液、塩化物溶液、錯塩溶液のうち少なくともいずれか1つから選択されることが好ましい。
【0016】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂は陰イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、錯塩溶液であることが好ましい。
【0017】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記陰イオン交換樹脂はトリメチルアンモニウム基を交換基とする強塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0018】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂に前記錯塩溶液を通水することによって、前記イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換後、還元処理により銀、銅又は亜鉛を前記イオン交換樹脂表面及び内部に析出させることが好ましい。
【0019】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度は、12%以上であることが好ましい。
【0020】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂の混床樹脂を含み、前記強酸性陽イオン交換樹脂の平均粒径は、前記強塩基性イオン交換樹脂の平均粒径の80%以下であることが好ましい。
【0021】
また、前記燃料電池の水処理装置において、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂を含み、初期状態の前記強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオンの割合が、下式(1)により求められる値(RAg)以下であることが好ましい。
Ag=37exp(−2.4pH)RAg+82exp(−2.0pH)RAg+110000exp(−2.3pH)RAg ・・・(1)
(ここで、CAgは燃料電池の水処理装置出口側処理水の所望銀濃度(但し、CAg=0.001〜10ppbの範囲)、pHは燃料電池の水処理装置入口側被処理水の水素イオン指数(但し、pH=4〜6の範囲)、RAgは、強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量(eq/L−R)に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオン(eq/L−R)の割合(%)である。)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池の長期の運用により生じる細菌の繁殖を抑制し、長期の運用を可能とする燃料電池の水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る燃料電池の水処理装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】種々の水素イオン指数(pH)におけるRAgとCAgとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る燃料電池の水処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す燃料電池の水処理装置10には、イオン交換樹脂が充填されたカートリッジが備えられている。カートリッジは1つ又は複数であってもよい。カートリッジに充填されるイオン交換樹脂は、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、又は陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混床樹脂等である。
【0026】
本実施形態に係る燃料電池の水処理装置10は、主に、燃料電池12に供給する水中の不純物イオンの除去を行うものである。燃料電池の水処理装置10により処理される水としては、水道水(市水)、純水、燃料電池12の発電反応により生じる凝縮水等が挙げられる。水中に含まれる不純物イオンとしては、例えば、炭酸イオン、炭酸水素イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0027】
水道水等の市水は、被処理水ライン14から燃料電池の水処理装置10に供給される。また、燃料電池12から排出される凝縮水は、例えば、一旦凝縮水タンク16に貯留され、ポンプ18により、凝縮水ライン20から燃料電池の水処理装置10に供給される。そして、市水、凝縮水等は、燃料電池の水処理装置10のイオン交換樹脂に通液されて、水中の不純物イオンが除去されることとなる。
【0028】
不純物イオンが除去された処理水(純水)は、処理水ライン22から燃料電池12に供給される。そして、処理水は、例えば、燃料電池の冷却、固体高分子型燃料電池の場合には高分子膜の加湿等、固体酸化物型燃料電池の場合には、都市ガスなどを一酸化炭素(CO)と水素ガス(H)とに改質する工程等に利用される。
【0029】
本実施形態で用いられるイオン交換樹脂は、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液を通液させることで、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換したもの(以下、銀型のイオン交換樹脂、銅型のイオン交換樹脂、亜鉛型のイオン交換樹脂と呼ぶ場合がある)が用いられる。そして、このような銀型のイオン交換樹脂、銅型のイオン交換樹脂、亜鉛型のイオン交換樹脂を用いることにより、燃料電池の水処理装置内に細菌が混入しても、その繁殖を抑制することができるため、長期の運用が可能となる。
【0030】
イオン交換樹脂に銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液を通液させる(接触させる)時間、温度等は、銀型のイオン交換樹脂(銅型のイオン交換樹脂、亜鉛型のイオン交換樹脂)の全交換容量に占める銀イオン(銅イオン、亜鉛イオン)が所望の割合に達するような最適な条件を選択すればよい。
【0031】
銀型のイオン交換樹脂(銅型のイオン交換樹脂、亜鉛型のイオン交換樹脂)の全交換容量に占める銀イオン(銅イオン、亜鉛イオン)の割合は、0.01%以上〜90%未満の範囲が好ましく、0.1%以上〜70%以下の範囲であることがより好ましい。銀型のイオン交換樹脂(銅型、亜鉛型も同様)の全交換容量に占める銀イオンの割合が0.01%未満であると、燃料電池の水処理装置内に混入した細菌の繁殖を十分に抑制することができない場合があり、90%以上であると、燃料電池の水処理装置から排出される処理水中への銀イオン(銅イオン、亜鉛イオン)の溶出量が多くなる場合がある。これは、燃料電池の凝縮水には、炭酸が多く含まれ、酸性を示す場合があり、このような酸性の水、すなわち水素イオンの多い水を銀型、銅型若しくは亜鉛型のイオン交換樹脂に通水すると、イオン交換基に吸着している銀イオン、銅イオン若しくは亜鉛イオンと交換反応を起こすためであると考えられる。そして、溶出した銀イオン等が含まれる処理水が燃料電池に供給されると、長期の運用に影響を及ぼす可能性がある。
【0032】
銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液として、イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である場合には、硝酸塩溶液(硝酸銀溶液、硝酸銅溶液、硝酸亜鉛溶液等)、硫酸塩溶液(硫酸銀溶液、硫酸銅溶液、硫酸亜鉛溶液等)、塩化物溶液(塩化銀溶液、塩化銅溶液、塩化亜鉛溶液等)、錯塩溶液(銀錯塩溶液、銅錯塩溶液、亜鉛錯塩溶液等)のうち少なくともいずれか1つから選択されることが好ましい。
【0033】
また、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液として、イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である場合には、硝酸塩溶液、硫酸塩溶液、塩化物溶液、錯塩溶液のうち少なくともいずれか1つから選択されることが好ましい。
【0034】
さらに、イオン交換樹脂に強酸性イオン交換樹脂を用いる場合は、その架橋度は12%以上であることが好ましい。強酸性イオン交換樹脂の架橋度が12%未満であると、燃料電池の水処理装置から排出される処理水中に銀イオン(銅イオン、亜鉛イオン)が溶出する場合がある。
【0035】
また、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液として、イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂である場合には、錯塩溶液であることが好ましい。また、不純物イオンの除去性能の点で、陰イオン交換樹脂はトリメチルアンモニウム基を交換基とする強塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、イオン交換樹脂として陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂(特に、トリメチルアンモニウム基を交換基とする強塩基性イオン交換樹脂)を用いる場合、上記イオン交換樹脂に銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液として錯塩溶液を通液(接触)させ、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換後、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンを還元処理し、イオン交換樹脂の表面及び内部に銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを析出させてもよい。このように、イオン交換後還元処理をすることにより、銀、銅、亜鉛を析出させたイオン交換樹脂を用いても、燃料電池の水処理装置内に混入した細菌の繁殖を抑制することができる。その結果、燃料電池用の水処理装置の長期の運用が可能となる。
【0037】
還元処理は、Hガス等の還元性ガスをイオン交換樹脂に接触させることにより行ってもよいが、還元ガスを用いた還元処理は、比較的高温で長時間の処理が必要である。そのため、比較的温和で短時間の処理が可能な、湿式による還元処理が好ましい。湿式による還元処理は、例えば、イオン交換樹脂に還元剤を溶解させた溶液を通水(接触)させることにより行われる。
【0038】
還元剤としては、ヒドラジン、過酸化水素、アスコルビン酸、アルコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ギ酸、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム等を使用することができる。
【0039】
銀、銅、亜鉛を析出させる際の、還元剤含有溶液との接触時間、温度、pH等は、析出させるイオン種、還元剤の種類等により、適宜設定されるものである。なお、1回の銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのイオン交換及び還元処理で、銀、銅、亜鉛の析出量が不足する場合には、所望の析出量となるまで、イオン交換及び還元処理を繰り返し行うことが好ましい。
【0040】
本実施形態において、強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂の混床樹脂を用いる場合、強酸性陽イオン交換樹脂の平均粒径は、強塩基性陰イオン交換樹脂の平均粒径の80%以下であることが好ましい。これは、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とは比重が違うため(一般的に、陽イオン交換樹脂の方が陰イオン交換樹脂より比重が大きい)、上記範囲外の粒径の強酸性陽イオン交換樹脂を用いると、水処理装置の搬送、設置、運転等に伴う振動によって、両イオン交換樹脂が分離してしまい、燃料電池に供給する水中の不純物イオンを十分に除去できない場合がある。
【0041】
本実施形態において、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合、初期状態の強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオンの割合が、下式(1)により求められる値(RAg)以下であることが好ましい。なお、式(1)は、種々の水素イオン指数(pH)におけるRAgとCAgとの関係を示す図2から算出したものである。
Ag=37exp(−2.4pH)RAg+82exp(−2.0pH)RAg+110000exp(−2.3pH)RAg ・・・(1)
(ここで、CAgは燃料電池の水処理装置出口側処理水の所望銀濃度(但し、CAg=0.001〜10ppbの範囲)、pHは燃料電池の水処理装置入口側被処理水の水素イオン指数(但し、pH=4〜6の範囲)、RAgは、強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量(eq/L−R)に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオン(eq/L−R)の割合(%)である。)
【0042】
水処理装置に用いられるイオン交換樹脂が、式(1)により求められる値(RAg)を超えた場合には、燃料電池の水処理装置から排出される処理水中に銀イオンが所望の濃度以上に溶出し易くなる。
【0043】
以上のように、本実施形態の燃料電池の水処理装置では、燃料電池の水処理装置内に細菌が混入しても、イオン交換樹脂に吸着された銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンの殺菌作用により、細菌の繁殖を抑制することができるため、水処理装置の長期の運用が可能となる。すなわち、燃料電池の発電反応により生じる凝縮水を、本実施形態の燃料電池の水処理装置によって処理し、該処理水を燃料電池に供給して再利用すれば、長期的に安定した燃料電池の運転が可能となる。なお、凝縮水を循環利用する場合には、凝縮水中に含まれるガスを大気に放出した後、水処理装置10により処理して、燃料電池12に供給することが好ましい。
【0044】
燃料電池12では、燃料ガス(例えば都市ガス)及び空気(酸素を含んでいる)が、それぞれ燃料供給ライン24、空気供給ライン26から燃料電池12に供給されて、発電が行われる。そして、燃料電池12は、高温で発電が行われるため、例えば、熱交換器28により発電排熱と、凝縮水及び水道水とを熱交換して温水を供給することも可能である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1,2)
図1に示す装置を用いて、固体酸化物型燃料電池から排出される凝縮水の水処理を行った。凝縮水中に溶解しているCO濃度は約16ppmであり、塩化物イオン濃度は約100ppbであり、凝縮水のpHは5であった。カートリッジに充填するイオン交換樹脂は、トリメチルアンモニウム基を交換基とする強塩基性陰イオン交換樹脂30mLと強酸性陽イオン交換樹脂10mLとを混床充填したイオン交換樹脂を使用した。実施例1,2の強塩基性陰イオン交換樹脂は、OH型の強塩基性陰イオン交換樹脂(Amberjet4002(OH))を用いた。また、実施例1の強酸性陽イオン交換樹脂は、架橋度が12%の陽イオン交換樹脂(Amberjet1024(H))を用い、この樹脂に0.15ppbのAgNO水溶液を1500mL通液して、Ag型に変換し、陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を9%に調整したものである。実施例2の強酸性陽イオン交換樹脂は、架橋度が12%の陽イオン交換樹脂(Amberjet1024(H))を用い、この樹脂に10g/LのAgNO水溶液を1500mL通液して、Ag型に変換し、陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を90%以上に調整したものである。
【0047】
実施例1、2共にイオン交換樹脂への被処理水の通水は下向流で行った。そして、10日間運転後、イオン交換樹脂により処理された処理水をサンプリングし、銀イオン濃度、塩化物イオン濃度を測定し、細菌の有無を調べた。その結果を表1にまとめた。
【0048】
(比較例)
比較例は、Ag型に変換していない強酸性陽イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から判るように、Ag型に変換した強酸性陽イオン交換樹脂を用いた実施例1,2では、10日間運転後でも細菌はほとんど発生していなかったが、Ag型に変換していない強酸性陽イオン交換樹脂を用いた比較例では、細菌の発生が観察された。また、陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を90%以上に調整した実施例2では、処理水に銀イオンが約1000ppb含まれていたが、陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を9%に調整した実施例1では、処理水中の銀イオンを10ppb以下に抑制することができた。なお、実施例1,2及び比較例において、処理水中の塩化物イオン濃度は10ppb以下であり、塩化物イオンを十分に除去することができた。
【0051】
Ag=37exp(−2.4pH)RAg+82exp(−2.0pH)RAg+110000exp(−2.3pH)RAgの式に、pH5、CAg10ppbを当てはめると、RAgが9.4%となる。すなわち、pHが5である被処理水を処理して、処理水中の銀イオン濃度を10ppb以下とするには、陰イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を9.4%以下とする必要がある。そして、上記実施例1は上記の式から算出される値以下であることを満たしている。したがって、実施例1の方が実施例2より、長期の運用に適したものであることがわかる。
【0052】
(実施例3,4)
実施例3では、架橋度が8%の強酸性陽イオン交換樹脂(Amberjet1024(H))を用い、この樹脂に0.27ppbのAgNO水溶液を1500mL通液して、Ag型に変換し、陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオンの割合を9%に調整したことが以外は、実施例1と同様に試験を行った。そして、10日間運転後、イオン交換樹脂により処理された処理水をサンプリングし、銀イオン濃度を測定し、また、細菌の有無を調べた。その結果を表2にまとめた。
【0053】
【表2】

【0054】
表2から判るように、架橋度が8%の強酸性陽イオン交換樹脂を用いた実施例3は、架橋度が12%の強酸性陽イオン交換樹脂を用いた実施例1と比較して、処理水中への銀イオンの溶出が増加した。したがって、処理水中への銀イオンの溶出を抑制するためには、架橋度が12%以上の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0055】
10 水処理装置、12 燃料電池、14 被処理水ライン、16 凝縮水タンク、18 ポンプ、20 凝縮水ライン、22 処理水ライン、24 燃料供給ライン、26 空気供給ライン、28 熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を用いた燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は、銀、銅及び亜鉛のうち少なくともいずれか1つを含む溶液を通液することによって、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換したものであることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、硝酸塩溶液、硫酸塩溶液、塩化物溶液、錯塩溶液のうち少なくともいずれか1つから選択されることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、硝酸塩溶液、硫酸塩溶液、塩化物溶液、錯塩溶液のうち少なくともいずれか1つから選択されることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は陰イオン交換樹脂を含み、前記溶液は、錯塩溶液であることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池の水処理装置であって、前記陰イオン交換樹脂はトリメチルアンモニウム基を交換基とする強塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項6】
請求項2,4又は5記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂に前記錯塩溶液を通水することによって、イオン交換樹脂のイオンを銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくともいずれか1つで置換後、還元処理により銀、銅又は亜鉛を前記イオン交換樹脂表面及び内部に析出させることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項7】
請求項3記載の燃料電池の水処理装置であって、前記強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度は、12%以上であることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂の混床樹脂を含み、
前記強酸性陽イオン交換樹脂の平均粒径は、前記強塩基性イオン交換樹脂の平均粒径の80%以下であることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の燃料電池の水処理装置であって、前記イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂を含み、初期状態の前記強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオンの割合が、下式(1)により求められる値(RAg)以下であることを特徴とする燃料電池の水処理装置。
Ag=37exp(−2.4pH)RAg+82exp(−2.0pH)RAg
+110000exp(−2.3pH)RAg ・・・(1)
(ここで、CAgは燃料電池の水処理装置出口側処理水の所望銀濃度(但し、CAg=0.001〜10ppbの範囲)、pHは燃料電池の水処理装置入口側被処理水の水素イオン指数(但し、pH=4〜6の範囲)、RAgは、強酸性陽イオン交換樹脂の全交換容量(eq/L−R)に占める銀イオン若しくは銀を含む錯イオン(eq/L−R)の割合(%)である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−41874(P2011−41874A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190131(P2009−190131)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】