説明

燃料電池の湿潤状態制御装置

【課題】燃費の悪化を抑制しつつ、電解質膜を適度な湿潤状態に維持することができる燃料電池の湿潤状態制御装置を提供する。
【解決手段】燃料電池(10)の湿潤状態を調整するときに、カソードガスの圧力及び流量のいずれか一方を優先して制御する優先制御部(B101,B201)と、優先制御部による制御では燃料電池の湿潤状態を調整しきれないときに、冷却水の温度を制御する水温制御部(B102,B202)と、水温制御部の応答遅れを補完するように、カソードガスの圧力及び流量のいずれか他方を制御する補完制御部(B103,B203)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池の湿潤状態を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を効率よく発電させるには、電解質膜を適度な湿潤状態に維持することが重要である。すなわち、電解質膜の湿潤状態が高すぎればフラッディングが生じたり零下起動に備えて停止時のパージ動作が必要になる。また電解質膜の湿潤状態が低すぎれば燃料電池スタックの電圧が落ち込んで出力が大きく低下するおそれがある。そこで特許文献1では、電解質膜を適度な湿潤状態に維持するカソードガス圧力及びカソードガス流量となるように調圧弁やカソードコンプレッサーを制御していた。特に燃費を考慮して湿潤側に制御する場合は、カソードコンプレッサー野消費電力を下げるために回転速度を先に低下させ、その後、調圧弁を開いて圧力を上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
湿潤度を制御するパラメーターとしては冷却水温もある。しかしながら、前述した手法では、湿潤調整するために、冷却水温を制御していなかった。そのため過渡時の湿潤制御において、燃費を改善する余地のあることが本件発明者らによって知見された。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、本発明の目的は、冷却水の制御を含めて燃費の悪化を抑制しつつ、電解質膜を適度な湿潤状態に維持することができる燃料電池の湿潤状態制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明の燃料電池の湿潤状態制御装置は、燃料電池の湿潤状態を調整するときに、カソードガスの圧力及び流量のいずれか一方を優先して制御する優先制御部を有する。そして、前記優先制御部による制御では燃料電池の湿潤状態を調整しきれないときに、冷却水の温度を制御する水温制御部をさらに有する。そして、前記水温制御部の応答遅れを補完するように、カソードガスの圧力及び流量のいずれか他方を制御する補完制御部をさらに有する。
【発明の効果】
【0008】
一般的に燃料電池の温度は、冷却水の制御によって達成する。冷却水の温度を調整することで湿潤度を制御すれば、流量や圧力を調整する場合に比べて燃費に優れるという効果がある。しかしながら、冷却水の温度を調整することは、流量や圧力を調整する場合に比べて応答に時間を要する。したがって、温度による湿潤制御を最も優先にすると、制御の応答性が遅い。その一方で温度による制御の優先順位を最も遅くすると、温度による制御によって湿潤制御の目標値に到達しない場合に、目標値への乖離を他のパラメータがフォローできなってしまう。そこで、上記のように優先順位を決めることで、たとえば、湿潤状態を下げるドライ操作時は、圧力→温度→流量の順に制御するようにした。このようにすることで、温度の応答性の低さを圧力が補い、湿潤度の目標値に対して温度制御でカバーできない分を流量が補うこととなる。したがって、圧力や温度でウェット状態が満足できる場合はコンプレッサーの流量のアップを抑制でき、上記の従来技術よりも燃費が向上するのである。
【0009】
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による燃料電池の湿潤状態制御装置を適用するシステムの一例を示す図である。
【図2】図2は、燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【図3】図3は、コントローラの湿潤状態制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【図4】図4は、目標湿潤状態が下がるときの湿潤制御装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図5】図5は、目標湿潤状態が上がるときの湿潤制御装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、本発明による湿潤状態制御装置の第2実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【図7】図7は、本発明による湿潤状態制御装置の第3実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【図8】図8は、本発明による湿潤状態制御装置の第4実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明による燃料電池の湿潤状態制御装置を適用するシステムの一例を示す図である。
【0012】
最初に図1を参照して、本発明による燃料電池の湿潤状態制御装置を適用する基本的なシステムについて説明する。
【0013】
燃料電池スタック10は、適温に維持されつつ反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。そこで燃料電池スタック10には、カソードライン20と、アノードライン30と、冷却水循環ライン40と、が接続される。なお燃料電池スタック10の発電電流は、電流センサー101で検出される。燃料電池スタック10の発電電圧は、電圧センサー102で検出される。
【0014】
カソードライン20には、燃料電池スタック10に供給されるカソードガスO2が流れる。カソードライン20には、コンプレッサー21と、カソード調圧弁22と、が設けられる。
【0015】
コンプレッサー21は、燃料電池スタック10よりも上流のカソードライン20に設けられる。コンプレッサー21は、モーターMによって駆動される。コンプレッサー21は、カソードライン20を流れるカソードガスO2の流量を調整する。カソードガスO2の流量は、コンプレッサー21の回転速度によって調整される。
【0016】
カソード調圧弁22は、燃料電池スタック10よりも下流のカソードライン20に設けられる。カソード調圧弁22は、カソードライン20を流れるカソードガスO2の圧力を調整する。カソードガスO2の圧力は、カソード調圧弁22の開度によって調整される。
【0017】
カソードライン20を流れるカソードガスO2の流量は、カソード流量センサー201で検出される。このカソード流量センサー201は、コンプレッサー21よりも下流であって燃料電池スタック10よりも上流に設けられる。
【0018】
カソードライン20を流れるカソードガスO2の圧力は、カソード圧力センサー202で検出される。このカソード圧力センサー202は、コンプレッサー21よりも下流であって燃料電池スタック10よりも上流に設けられる。さらに図1では、カソード圧力センサー202は、カソード流量センサー201の下流に位置する。
【0019】
アノードライン30には、燃料電池スタック10に供給されるアノードガスH2が流れる。アノードライン30には、アノード再循環ライン300が並設される。アノード再循環ライン300は、燃料電池スタック10よりも下流のアノードライン30から分岐し、燃料電池スタック10よりも上流のアノードライン30に合流する。アノードライン30には、ボンベ31と、アノード調圧弁32と、エゼクター33と、アノードポンプ34と、パージ弁35と、が設けられる。
【0020】
ボンベ31には、アノードガスH2が高圧状態で貯蔵されている。ボンベ31は、アノードライン30の最上流に設けられる。
【0021】
アノード調圧弁32は、ボンベ31の下流に設けられる。アノード調圧弁32は、ボンベ31から新たにアノードライン30に供給するアノードガスH2の圧力を調整する。アノードガスH2の圧力は、アノード調圧弁32の開度によって調整される。
【0022】
エゼクター33は、アノード調圧弁32よりも下流に設けられる。エゼクター33は、アノード再循環ライン300がアノードライン30に合流する部分に位置する。このエゼクター33で、アノード再循環ライン300を流れたアノードガスH2が、ボンベ31から新たに供給されたアノードガスH2に混合される。
【0023】
アノードポンプ34は、エゼクター33の下流に位置する。アノードポンプ34は、エゼクター33を流れたアノードガスH2を燃料電池スタック10に送る。
【0024】
パージ弁35は、燃料電池スタック10の下流であって、さらにアノード再循環ライン300の分岐部分の下流のアノードライン30に設けられる。パージ弁35が開くと、アノードガスH2がパージされる。
【0025】
アノードライン30を流れるアノードガスH2の圧力は、アノード圧力センサー301で検出される。このアノード圧力センサー301は、アノードポンプ34よりも下流であって燃料電池スタック10よりも上流に設けられる。
【0026】
冷却水循環ライン40には、燃料電池スタック10に供給される冷却水が流れる。冷却水循環ライン40には、ラジエーター41と、三方弁42と、ウォーターポンプ43と、が設けられる。また冷却水循環ライン40には、バイパスライン400が並設される。バイパスライン400は、ラジエーター41よりも上流から分岐し、ラジエーター41よりも下流に合流する。このためバイパスライン400を流れる冷却水は、ラジエーター41をバイパスする。
【0027】
ラジエーター41は、冷却水を冷却する。ラジエーター41には、クーリングファン410が設けられている。
【0028】
三方弁42は、バイパスライン400の合流部分に位置する。三方弁42は、開度に応じて、ラジエーター側のラインを流れる冷却水の流量と、バイパスラインを流れる冷却水の流量と、を調整する。これによって冷却水の温度が調整される。
【0029】
ウォーターポンプ43は、三方弁42の下流に位置する。ウォーターポンプ43は、三方弁42を流れた冷却水を燃料電池スタック10に送る。
【0030】
冷却水循環ライン40を流れる冷却水の温度は、水温センサー401で検出される。この水温センサー401は、バイパスライン400が分岐する部分よりも上流に設けられる。
【0031】
コントローラーは、電流センサー101、電圧センサー102、カソード流量センサー201、カソード圧力センサー202、アノード圧力センサー301、水温センサー401の信号を入力する。そしてコントローラーは、制御信号を出力して、コンプレッサー21、カソード調圧弁22、アノード調圧弁32、アノードポンプ34、パージ弁35、三方弁42、ウォーターポンプ43の作動を制御する。
【0032】
このような構成によって、燃料電池スタック10は、適温に維持されつつ反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。燃料電池スタック10によって発電された電力は、DC/DCコンバーター11を介してバッテリー12や負荷13に供給される。
【0033】
図2は、燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【0034】
次に、図2を参照して、発明者らの技術思想について説明する。
【0035】
上述のように、燃料電池スタック10は、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。燃料電池スタック10は、電解質膜の両面にカソード電極触媒層及びアノード電極触媒層が形成された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)が数百枚積層されて構成される。なお図2(A)は1枚のMEAを示している。ここではMEAにカソードガスが供給されて(カソードイン)対角側から排出されながら(カソードアウト)、アノードガスが供給されて(アノードイン)対角側から排出される(アノードアウト)例が示されている。
【0036】
各膜電極接合体(MEA)は、カソード電極触媒層及びアノード電極触媒層において以下の反応が、負荷に応じて進行して発電する。
【0037】
【数1】

【0038】
図2(B)に示すように、反応ガス(カソードガスO2)がカソード流路を流れるにつれて上式(1−1)の反応が進行し、水蒸気が生成される。するとカソード流路の下流側では相対湿度が高くなる。この結果、カソード側とアノード側との相対湿度差が大きくなる。この相対湿度差をドライビングフォースとして、水が逆拡散しアノード上流側が加湿される。この水分がさらにMEAからアノード流路に蒸発してアノード流路を流れる反応ガス(アノードガスH2)を加湿する。そしてアノード下流側に運ばれてアノード下流のMEAを加湿する。
【0039】
上記反応によって効率よく発電するには、電解質膜が適度な湿潤状態であることが必要である。
【0040】
そこで、本件発明者らは、カソードガスO2の流量及び圧力並びに燃料電池スタック1の温度に着目した。
【0041】
すなわち、カソードガスO2の流量を増やせば、カソードガスO2とともに排出される水分が増える。したがって、電解質膜の湿潤状態を低下させることができる。一方、カソードガスO2の流量を減らせば、カソードガスO2とともに排出される水分が減る。したがって、電解質膜の湿潤状態を上昇させることができる。
【0042】
カソードガスO2の圧力が減るのは、カソード調圧弁22の開度が大きくなるときである。したがって、カソード調圧弁22の開度を大きくしてカソードガスO2の圧力を下げれば、カソードガスO2が排出されやすくなる。この結果、カソードガスO2とともに排出される水分も増える。したがって、電解質膜の湿潤状態を低下させることができる。一方、カソードガスO2の圧力が増えるのは、カソード調圧弁22の開度が小さくなるときである。したがって、カソード調圧弁22の開度を小さくしてカソードガスO2の圧力を上げれば、カソードガスO2が排出されにくくなる。この結果、カソードガスO2とともに排出される水分も減る。したがって、電解質膜の湿潤状態を上昇させることができる。
【0043】
燃料電池スタック1の温度が高くなれば、カソードガスO2に含まれる水分量が増える。この結果、カソードガスO2とともに排出される水分も増える。したがって、電解質膜の湿潤状態を低下させることができる。一方、燃料電池スタック1の温度が低くなれば、カソードガスO2に含まれる水分量が減る。この結果、カソードガスO2とともに排出される水分も減る。したがって、電解質膜の湿潤状態を上昇させることができる。
【0044】
発明者らは、このような知見を得た。さらにカソードガスO2の流量を増やすためにコンプレッサー21の回転速度を上げると、消費電力が増大して燃費が悪化する。そこでできる限りコンプレッサー21の回転速度を低く抑えることが望ましい。発明者らは、このような着想に基づいて本発明を完成するに至った。以下では具体的な内容を説明する。
【0045】
図3は、コントローラの湿潤状態制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【0046】
なおブロック図に示される各ブロックは、コントローラーの各機能を仮想ユニットとして示すものであり、各ブロックは物理的な存在を意味しない。
【0047】
湿潤状態制御装置は、コンプレッサー21、カソード調圧弁22、アノード調圧弁32、アノードポンプ34、パージ弁35、三方弁42、ウォーターポンプ43の作動を制御して、燃料電池スタック10の電解質膜の湿潤状態を制御する。具体的には、湿潤状態制御装置は、湿潤状態減少部100と、湿潤状態増大部200と、を含む。
【0048】
湿潤状態減少部100は、目標排水量QH2O_outが増える、すなわち湿潤状態が減少するときに、実行される制御部である。湿潤状態減少部100は、目標圧力演算ブロックB101と、目標温度演算ブロックB102と、目標流量演算ブロックB103と、を含む。
【0049】
目標圧力演算ブロックB101は、目標排水量QH2O_outと、最低スタック温度Tminと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、目標圧力Ptargetを演算する。
【0050】
なお目標排水量QH2O_out[NL/min]は次式(2)によって求まる。ここでNLは、Normal Liter、すなわち標準状態でのリットルを示す。
【0051】
【数2】

【0052】
なお燃料電池内部での生成水量QH2O_in[NL/min]は次式(3)によって求まる。
【0053】
【数3】

【0054】
目標水収支Qnet_water[NL/min]は、燃料電池の運転状態(負荷状態)に応じて決められた電解質膜の目標湿潤状態を実現するように設定される。
【0055】
目標圧力演算ブロックB101は、このようにして求められた目標排水量QH2O_outと、最低スタック温度Tminと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、目標圧力Ptargetを求める。具体的には、次式(4-1)(4-2)によって、目標圧力Ptargetを求める。
【0056】
【数4】

【0057】
ここで最低スタック温度Tminとは、燃料電池スタックの湿潤状態を最高にするときのスタック温度である。上述のように、電解質膜の湿潤状態を上昇させるには、燃料電池スタック1の温度を低くする。なお燃料電池スタック1の温度は、低すぎると凝縮水による発電不良が生じるおそれがある。その一方で、高すぎると燃料電池スタック1の劣化が早まる。したがって、燃料電池スタックの湿潤状態を最高にするときのスタック温度とは、これらを総合的に考慮して燃料電池スタックの性能を確保できる範囲で最も低いスタック温度である。同様に、最低カソード流量Qminとは、燃料電池スタックの湿潤状態を最高にするときのカソード流量である。上述のように、電解質膜の湿潤状態を上昇させるには、カソード流量を減らす。なおカソード流量は、低すぎると供給量不足による発電不良が生じるおそれがある。その一方で、高すぎると音振性能が悪化するおそれがある。したがって燃料電池スタックの湿潤状態を最低にするときのカソード流量とは、これらを総合的に考慮して燃料電池スタックの性能を確保できる範囲で最も低いカソード流量である。これらは、予め実験によって燃料電池の運転状態に応じて設定されている。
【0058】
またPsat_minは、最低スタック温度Tminに対する飽和水蒸気圧であり、アントワンの式に基づいて上式(4-2)が求められる。
【0059】
以上のようにして、目標圧力演算ブロックB101は、目標排水量QH2O_outと、最低スタック温度Tminと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、目標圧力Ptargetを求める。なお目標圧力演算ブロックB101は特許請求の範囲の優先制御部に対応する。
【0060】
目標温度演算ブロックB102は、目標排水量QH2O_outと、カソード圧力センサー202で検出された圧力Psensと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、目標温度Ttargetを求める。具体的には、次式(5-1)(5-2)によって求める。なお式(5-1)は、アントワンの式の逆引きによって求められる。
【0061】
【数5】

【0062】
sat_targetは、目標飽和水蒸気圧である。なお本実施形態では、圧力Psensは、カソード圧力センサー202で検出されたが、予め実験によって燃料電池スタックの圧力損失を求めておいて、それに基づいて推定してもよい。
【0063】
以上のようにして、目標温度演算ブロックB102は、目標排水量QH2O_outと、実圧力Psensと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、目標温度Ttargetを求める。なお目標温度演算ブロックB102は特許請求の範囲の水温制御部に対応する。
【0064】
目標流量演算ブロックB103は、目標排水量QH2O_outと、カソード圧力センサー202で検出された圧力Psensと、水温センサー401で検出された水温Tsensと、に基づいて、目標カソード流量Qtargetを求める。具体的には、次式(6-1)(6-2)によって求める。
【0065】
【数6】

【0066】
sat_sensは、水温センサー401で検出された水温Tsensにおける飽和水蒸気圧である。
【0067】
以上のようにして、目標流量演算ブロックB103は、目標排水量QH2O_outと、実圧力Psensと、実水温Tsensと、に基づいて、目標カソード流量Qtargetを求める。なお目標流量演算ブロックB103は特許請求の範囲の補完制御部に対応する。
【0068】
湿潤状態増大部200は、目標排水量QH2O_outが減る、すなわち湿潤状態が増大するときに、実行される制御部である。湿潤状態増大部200は、目標流量演算ブロックB203と、目標温度演算ブロックB202と、目標圧力演算ブロックB201と、を含む。
【0069】
目標流量演算ブロックB203は、目標排水量QH2O_outと、最高スタック温度Tmaxと、最低カソード圧力Pminと、に基づいて、目標カソード流量Qtargetを求める。具体的には、次式(7-1)(7-2)によって求める。
【0070】
【数7】

【0071】
ここで最高スタック温度Tmaxとは、燃料電池スタックの湿潤状態を最低にするときのスタック温度である。上述のように、電解質膜の湿潤状態を下降させるには、燃料電池スタック1の温度を高くする。なお燃料電池スタック1の温度は、低すぎると凝縮水による発電不良が生じるおそれがある。その一方で、高すぎると燃料電池スタック1の劣化が早まる。したがって、燃料電池スタックの湿潤状態を最低にするときのスタック温度とは、これらを総合的に考慮して燃料電池スタックの性能を確保できる範囲で最も高いスタック温度である。同様に、最低カソード圧力Pminとは、燃料電池スタックの湿潤状態を最低にするときのカソード圧力である。上述のように、電解質膜の湿潤状態を下降させるには、カソード圧力を減らす。なおカソード圧力は、低すぎると圧力不足による性能悪化が生じるおそれがある。その一方で、高すぎるとコンプレッサーで実現できないおそれがある。したがって燃料電池スタックの湿潤状態を最低にするときのカソード圧力とは、これらを総合的に考慮して燃料電池スタックの性能を確保できる範囲で最も低いカソード圧力である。これらは、予め実験によって燃料電池の運転状態に応じて設定されている。
【0072】
以上のようにして、目標流量演算ブロックB203は、目標排水量QH2O_outと、最高スタック温度Tmaxと、最低カソード圧力Pminと、に基づいて、目標カソード流量Qtargetを求める。なお目標流量演算ブロックB203は特許請求の範囲の優先制御部に対応する。
【0073】
目標温度演算ブロックB202は、目標排水量QH2O_outと、最低カソード圧力Pminと、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensと、に基づいて、目標温度Ttargetを求める。具体的には、次式(8-1)(8-2)によって求める。なお式(8-1)は、アントワンの式の逆引きによって求められる。
【0074】
【数8】

【0075】
sat_targetは、目標飽和水蒸気圧である。
【0076】
以上のようにして、目標温度演算ブロックB202は、目標排水量QH2O_outと、最低カソード圧力Pminと、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensと、に基づいて、目標温度Ttargetを求める。なお目標温度演算ブロックB202は特許請求の範囲の水温制御部に対応する。
【0077】
目標圧力演算ブロックB201は、目標排水量QH2O_outと、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensと、水温センサー401で検出された水温Tsensと、に基づいて、目標カソード圧力Ptargetを求める。具体的には、次式(9-1)(9-2)によって、目標カソード圧力Ptargetを求める。
【0078】
【数9】

【0079】
sat_sensは、水温センサー401で検出された水温Tsensに対する飽和水蒸気圧であり、式(9-2)は、アントワンの式に基づいて求められる。
【0080】
以上のようにして、目標圧力演算ブロックB201は、目標排水量QH2O_outと、実流量Qsensと、実水温Tsensと、に基づいて、目標カソード圧力Ptargetを求める。なお目標圧力演算ブロックB201は特許請求の範囲の補完制御部に対応する。
【0081】
図4は、目標湿潤状態が下がるときの湿潤制御装置の作動を示すタイミングチャートである。
【0082】
以上の制御ロジックが実行されると、目標湿潤状態が下がるときは、湿潤制御装置は以下のように作動する。
【0083】
時刻t11で、目標湿潤状態が下がると、湿潤制御装置の湿潤状態減少部100が作動を開始する。
【0084】
目標圧力Ptargetは、目標排水量QH2O_outと、最低スタック温度Tminと、最低カソード流量Qminと、に基づいて設定される。目標温度Ttargetは、目標排水量QH2O_outと、実圧力Psensと、最低カソード流量Qminと、に基づいて、設定される。目標カソード流量Qtargetは、目標排水量QH2O_outと、実圧力Psensと、実水温Tsensと、に基づいて設定される。
【0085】
目標圧力Ptargetは、湿潤状態を最高にするときのスタック温度(最低スタック温度Tmin)及びカソード流量(最低カソード流量Qmin)に基づいて設定されるので、最も変動しやすい。そこでまず最初は優先的に目標圧力Ptargetが下がる。そして、この目標圧力Ptargetが実現されるように、カソード調圧弁22が制御される。するとカソード圧力がほとんど応答遅れなく低下する。
【0086】
目標圧力Ptargetの変更だけでは、調整しきれなければ、時刻t12で、目標温度Ttargetが変動しはじめる。すなわち目標温度Ttargetの設定には、限界値(最低カソード流量Qmin)が用いられる。また上述のようにして調整されたカソード圧力のセンサー検出値Psensがフィードバックされる。このためカソード圧力だけは調整しきれない分が、冷却水の温度の変更で調整されることとなる。なお冷却水の温度は、目標値が変わっても変動しにくく応答遅れが生じやすい。冷却水の温度は、水温センサー401で検出されており、この温度がフィードバックされてカソード流量が決められるので、冷却水の温度の応答遅れがカソード流量で補完される。
【0087】
目標温度Ttargetの変更でも、調整しきれなければ、時刻t13で、目標カソード流量Qtargetが変動しはじめる。すなわち、カソード圧力センサー202で検出された圧力Psensと、水温センサー401で検出された水温Tsensと、がフィードバックされて、カソード流量が決められるので、目標圧力Ptarget及び目標温度Ttargetの変更で調整しきれない分がカソード流量で補完されることとなる。
【0088】
図5は、目標湿潤状態が上がるときの湿潤制御装置の作動を示すタイミングチャートである。
【0089】
時刻t21で、目標湿潤状態が上がると、湿潤制御装置の湿潤状態増大部200が作動を開始する。
【0090】
目標カソード流量Qtargetは、目標排水量QH2O_outと、最高スタック温度Tmaxと、最低カソード圧力Pminと、に基づいて設定される。目標温度Ttargetは、目標排水量QH2O_outと、最低カソード圧力Pminと、実流量Qsensと、に基づいて設定される。目標カソード圧力Ptargetは、目標排水量QH2O_outと、実流量Qsensと、実水温Tsensと、に基づいて設定される。
【0091】
目標流量Qtargetは、湿潤状態を最低にするときのスタック温度(最高スタック温度Tmax)及びカソード圧力(最低カソード圧力Pmin)に基づいて設定されるので、最も変動しやすい。そこでまず最初は優先的に目標流量Qtargetが下がる。そして、この目標流量Qtargetが実現されるように、コンプレッサー21が制御される。するとカソード流量がほとんど応答遅れなく低下する。
【0092】
目標流量Qtargetの変更だけでは、調整しきれなければ、時刻t22で、目標温度Ttargetが変動しはじめる。すなわち目標温度Ttargetの設定には、限界値(最低カソード圧力Pmin)が用いられる。また上述のようにして調整されたカソード流量のセンサー検出値Qsensがフィードバックされる。このためカソード流量だけは調整しきれない分が、冷却水の温度の変更で調整されることとなる。なお冷却水の温度は、目標値が変わっても変動しにくく応答遅れが生じやすい。冷却水の温度は、水温センサー401で検出されており、この温度がフィードバックされてカソード圧力が決められるので、冷却水の温度の応答遅れがカソード圧力で補完される。
【0093】
目標温度Ttargetの変更でも、調整しきれなければ、時刻t23で、目標カソード圧力Ptargetが変動しはじめる。すなわち、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensと、水温センサー401で検出された水温Tsensと、がフィードバックされて、カソード圧力が決められるので、目標流量Qtarget及び目標温度Ttargetの変更で調整しきれない分がカソード圧力で補完されることとなる。
【0094】
本実施形態によれば、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を下げるときには、まず目標圧力を下げてカソード調圧弁22を開く。次に目標冷却水温を上げて三方弁42を制御する。そして最後に目標流量を上げてコンプレッサー21の回転速度を上げる。このようにすることで、コンプレッサー21の回転速度の上昇が、可能な限り抑制されることとなる。コンプレッサーの回転速度が上昇するほど、消費電力が増大し燃費が悪化するが、本実施形態では、可能な限りコンプレッサー21の回転速度の上昇が抑制されるので、消費電力が抑えられて燃費が向上する。
【0095】
また本実施形態によれば、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を上げるときには、まず目標流量を下げてコンプレッサー21の回転速度を下げる。次に目標冷却水温を下げて三方弁42を制御する。そして最後に目標圧力を上げてカソード調圧弁22を閉じる。このようにすることで、コンプレッサー21の回転速度が、可能な限り早めに低下することとなる。上述のようにコンプレッサーの回転速度が上昇するほど、消費電力が増大し燃費が悪化する。換言すれば、コンプレッサーの回転速度が低下するほど、消費電力が抑えられて燃費が向上する。本実施形態では、コンプレッサー21の回転速度が、可能な限り早めに低下するので、燃費が向上するのである。
【0096】
さらに本実施形態では、目標圧力演算ブロックB101と目標圧力演算ブロックB201との制御ロジックは同じである。また目標温度演算ブロックB102と目標温度演算ブロックB202との制御ロジックも同じである。さらに目標流量演算ブロックB103と目標流量演算ブロックB203との制御ロジックも同じである。そしてこれらの制御ブロックに入力される信号をのみ変えることで、燃料電池の湿潤状態を低めて乾燥させたり、燃料電池の湿潤状態を高めて湿潤させたりしている。このように同一の制御ロジックでありながら、入力値を変えるだけで、圧力・温度・流量の制御順位を変えて、燃料電池の湿潤状態を制御できるのである。
【0097】
(第2実施形態)
図6は、本発明による湿潤状態制御装置の第2実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【0098】
なお以下では前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0099】
運転モードによっては、三方弁42を制御しない。また何らかのトラブルによって三方弁42を制御できない可能性がある。このようなときには、目標圧力演算ブロックB101は、最低スタック温度Tminに代えて、水温センサー401で検出された水温Tsensを用いて目標圧力Ptargetを演算する。また目標流量演算ブロックB203は、最高スタック温度Tmaxに代えて、水温センサー401で検出された水温Tsensを用いて目標圧力Ptargetを演算する。
【0100】
本実施形態のようにすることで、三方弁42を制御しない運転モードや、何らかのトラブルによって三方弁42を制御できない場合にも対応することができる。また本実施形態でも、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を下げるときには、まず目標圧力を下げてカソード調圧弁22を開く。次に目標流量を上げてコンプレッサー21の回転速度を上げる。このようになるので、コンプレッサー21の回転速度の上昇が、可能な限り抑制されることとなり、消費電力が抑えられて燃費が向上する。また、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を上げるときには、まず目標流量を下げてコンプレッサー21の回転速度を下げる。次に目標圧力を上げてカソード調圧弁22を閉じる。このようになるので、コンプレッサー21の回転速度が、可能な限り早めに低下することとなり、消費電力が抑えられて燃費が向上するのである。
【0101】
(第3実施形態)
図7は、本発明による湿潤状態制御装置の第3実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【0102】
運転モードによっては、カソード調圧弁22を制御しない。また何らかのトラブルによってカソード調圧弁22を制御できない可能性がある。このようなときには、目標流量演算ブロックB203は、最低カソード圧力Pminに代えて、カソード圧力センサー202で検出された圧力Psensを用いて目標カソード流量Qtargetを求める。また目標温度演算ブロックB202は、最低カソード圧力Pminに代えて、カソード圧力センサー202で検出された圧力Psensを用いて目標温度Ttargetを求める。
【0103】
本実施形態のようにすることで、カソード調圧弁22を制御しない運転モードや、何らかのトラブルによってカソード調圧弁22を制御できない場合にも対応することができる。また本実施形態でも、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を下げるときには、まず目標冷却水温を上げて三方弁42を制御する。次に目標流量を上げてコンプレッサー21の回転速度を上げる。このようになるので、コンプレッサー21の回転速度の上昇が、可能な限り抑制されることとなり、燃費が向上する。また、燃料電池の目標湿潤状態が変更されて、湿潤状態を上げるときには、まず目標流量を下げてコンプレッサー21の回転速度を下げる。次に目標冷却水温を下げて三方弁42を制御する。このようになるので、コンプレッサー21の回転速度が、可能な限り早めに低下することとなり、燃費が向上するのである。
【0104】
(第4実施形態)
図8は、本発明による湿潤状態制御装置の第4実施形態におけるコントローラの制御にかかる機能をブロック図として表したものである。
【0105】
運転モードによっては、コンプレッサー21を制御しない。また何らかのトラブルによってコンプレッサー21を制御できない可能性がある。このようなときには、目標圧力演算ブロックB101は、最低カソード流量Qminに代えて、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensを用いて目標カソード圧力Ptargetを求める。また目標温度演算ブロックB102は、最低カソード流量Qminに代えて、カソード流量センサー201で検出された流量Qsensを用いて、目標温度Ttargetを求める。
【0106】
本実施形態のようにすることで、コンプレッサー21を制御しない運転モードや、何らかのトラブルによってコンプレッサー21を制御できない場合にも対応することができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0108】
たとえば、燃料電池の湿潤状態とは、燃料電池の水収支(たとえば「水収支=生成される水−排出される水」で定義される)であってもよいし、燃料電池の電解質膜の抵抗であってもよいし、その他の燃料電池の湿潤状態を表すものであってもよい。
【0109】
また冷却水の温度に代えて、燃料電池自体の温度や、空気の温度を用いてもよい。
【0110】
さらに上記各実施形態では、目標圧力演算ブロックB101では、目標圧力Ptargetを設定するときに、湿潤状態を最高にするときのスタック温度(最低スタック温度Tmin)及びカソード流量(最低カソード流量Qmin)を用いる。目標温度演算ブロックB102では、目標温度Ttargetを設定するときに、湿潤状態を最高にするときのカソード流量(最低カソード流量Qmin)を用いる。目標流量演算ブロックB203では、目標流量Qtargetを設定するときに、湿潤状態を最低にするときのスタック温度(最高スタック温度Tmax)及びカソード圧力(最低カソード圧力Pmin)を用いる。目標温度演算ブロックB202では、目標温度Ttargetを設定するときに、湿潤状態を最低にするときのカソード圧力(最低カソード圧力Pmin)を用いる。このように限界値(最大値、最小値)を用いれば、最も効果が大きい。しかしながら、最大値よりも小さめ、最小値よりも大きめのものを使用してもよい。このようにしても相応の効果は得られる。
【0111】
さらにまた、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 燃料電池スタック
20 カソードライン
21 コンプレッサー
22 カソード調圧弁
201 カソード流量センサー
202 カソード圧力センサー
30 アノードライン
40 冷却水循環ライン
400 バイパスライン
41 ラジエーター
42 三方弁
43 ウォーターポンプ
401 水温センサー
100 湿潤状態減少部
B101 目標圧力演算ブロック(優先制御部)
B102 目標温度演算ブロック(水温制御部)
B103 目標流量演算ブロック(補完制御部)
200 湿潤状態増大部
B201 目標圧力演算ブロック(補完制御部)
B202 目標温度演算ブロック(水温制御部)
B203 目標流量演算ブロック(優先制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の湿潤状態を調整するときに、カソードガスの圧力及び流量のいずれか一方を優先して制御する優先制御部と、
前記優先制御部による制御では燃料電池の湿潤状態を調整しきれないときに、冷却水の温度を制御する水温制御部と、
前記水温制御部の応答遅れを補完するように、カソードガスの圧力及び流量のいずれか他方を制御する補完制御部と、
を有する燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
燃料電池の湿潤状態を低めて乾燥させる場合には、
前記優先制御部は、カソードガスの圧力を優先して下げ、
前記水温制御部は、前記優先制御部による制御では燃料電池の湿潤状態を調整しきれないときに、冷却水の温度を上げ、
前記補完制御部は、前記水温制御部の応答遅れを補完するように、カソードガスの流量を制御する、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
燃料電池の湿潤状態を低めて乾燥させる場合には、
前記優先制御部は、燃料電池が現在よりも高湿潤状態にするときに供給するカソードガスの流量及び冷却水の温度に基づいてカソードガスの圧力を下げ、
前記水温制御部は、カソードガスの実圧力及び前記現在よりも高湿潤状態にするときに供給するカソードガスの流量に基づいて冷却水の温度を上げ、
前記補完制御部は、カソードガスの圧力及び冷却水の実温度に基づいてカソードガスの流量を制御する、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
現在よりも高湿潤状態にするときに供給するカソードガスの流量とは、燃料電池の性能を確保できる範囲で最も低い流量であり、
現在よりも高湿潤状態にするときに供給する冷却水の温度とは、燃料電池の性能を確保できる範囲で最も低い温度である、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
前記水温制御部が作動しない場合であって燃料電池の湿潤状態を低めて乾燥させるときには、前記優先制御部は、前記現在よりも高湿潤状態にするときに供給する冷却水の温度に代えて、冷却水の実温度を用いる、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
前記補完制御部が作動しない場合であって燃料電池の湿潤状態を低めて乾燥させるときには、前記優先制御部及び前記優先制御部は、前記現在よりも高湿潤状態にするときに供給するカソードガスの流量に代えて、カソードガスの実流量を用いる、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
燃料電池の湿潤状態を高めて湿潤させる場合には、
前記優先制御部は、カソードガスの流量を優先して下げ、
前記水温制御部は、前記優先制御部による制御では燃料電池の湿潤状態を調整しきれないときに、冷却水の温度を下げ、
前記補完制御部は、前記水温制御部の応答遅れを補完するように、カソードガスの圧力を制御する、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
燃料電池の湿潤状態を高めて湿潤させる場合には、
前記優先制御部は、燃料電池が現在よりも低湿潤状態にするときに供給するカソードガス圧力及び冷却水の温度に基づいてカソードガスの流量を下げ、
前記水温制御部は、カソードガスの実流量及び燃料電池が現在よりも低湿潤状態にするときに供給するカソードガスの圧力に基づいて冷却水の温度を下げ、
前記補完制御部は、カソードガスの流量及び冷却水の実温度に基づいてカソードガスの圧力を制御する、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
現在よりも低湿潤状態にするときに供給するカソードガスの圧力とは、燃料電池の性能を確保できる範囲で最も低い圧力であり、
現在よりも低湿潤状態にするときに供給する冷却水の温度とは、燃料電池の性能を確保できる範囲で最も高い温度である、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
前記水温制御部が作動しない場合であって燃料電池の湿潤状態を高めて湿潤させるときには、前記優先制御部は、前記現在よりも低湿潤状態にするときに供給する冷却水の温度に代えて、冷却水の実温度を用いる、
燃料電池の湿潤状態制御装置。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の燃料電池の湿潤状態制御装置において、
前記補完制御部が作動しない場合であって燃料電池の湿潤状態を高めて湿潤させるときには、前記優先制御部及び前記優先制御部は、前記現在よりも低湿潤状態にするときに供給するカソードガスの圧力に代えて、カソードガスの実圧力を用いる、
燃料電池の湿潤状態制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252939(P2012−252939A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126109(P2011−126109)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】