説明

燃料電池の腐食防止

本発明は、燃料電池の停止段階における、燃料電池に含まれる電気化学セル(C1、C2、C3)のアセンブリを腐食から保護する方法に関する。この保護方法は、保護すべきセルのそれぞれの端子間の電圧を測定するステップと、セルの測定電圧が保護閾値より大きいとき、このセルを電気負荷(R1、R2、R3)に放電させる(50)ステップと、セルの測定電圧が保護閾値を下回るとき、このセルを電気負荷から切り離すステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関し、特に、燃料電池スタックの停止動作中における腐食の防止に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、化学エネルギーを直接電力に変換する電気化学的装置である。燃料電池スタックは、複数のセルを直列に備えている。各セルは、約1Vの電圧を発生し、それらを積み重ねることにより、例えば約100Vなどの、より高い供給電圧を発生できる。公知の燃料電池スタックの中でも、特にプロトン交換膜(PEM)燃料電池スタックについて述べる。PEM燃料電池スタックの各セルは、アノードとカソードとの間に、プロトンだけが通過でき、ガスの通過を阻止する膜を備えている。燃料電池スタックは、例えば黒鉛などで作られた複数のフロープレートを備えるのがよく、これらのプレートは、積み重ねられており、各プレートは、スタック内の複数のセルに関係している。プレートは、スタックを通じて反応物質および生成物質を導く流路および開口部を備えている方がよい。アノードにおいて、燃料として使用される水素ガスがイオン化されてプロトンを発生させ、このプロトンが膜を通過する。この反応によって発生した電子は、セル外の電気回路を流れて、電流を形成する。カソードにおいて、酸素が還元されて、プロトンと反応して水を生じる。
【0003】
燃料電池スタックのセルが、停止時に腐食する恐れがあることは公知である。その理由は、停止動作中に燃料電池スタックの端子間に電気負荷が接続されていない場合、カソードにおける残留空気の存在とアノードにおける残留水素の存在とによって、不適当な電位が生じることがあるからである。この電位によって、カーボン担体および白金触媒が酸化され腐食されて、それらの性能が劣化する。この劣化は、オストワルド熟成と呼ばれている。この影響は、燃料電池スタックを頻繁に停止する必要がある用途に、燃料電池スタックが使用される場合、より問題となる。この問題に対して、これまで種々の解決手段が提案されている。
【0004】
第1の方法では、電気負荷の切り離し直後に、アノードおよびカソード付近の領域を浄化するために、セルの中に不活性ガスを注入している。この不活性ガスの注入によって、セル性能の劣化を軽減させるとともに、安全上の理由から、起こりうる水素と空気の可燃性混合物が発生するのを防止している。特許文献1(US5,013,617)は、この方法とともに、セルのカソードの電位を0.3〜0.7Vのレベルに急速に下げるために、ガス注入中における燃料電池スタックのスタック端子間への電気負荷の接続について記載している。
【0005】
しかし、この方法には欠点がある。この方法によると、燃料電池スタックが大きくて扱いにくく、自動車への利用、または量販電子機器などの用途に望ましくない。また、この方法は、浄化に時間が必要であるため、燃料電池スタックを頻繁に停止および起動させるという用途には適していない。
【0006】
燃料電池スタックの各セルにおける急速な電圧変動を防止するために、特許文献2(US2007/0224482)は、各セルから対応するエネルギー貯蔵装置に、電荷を転送することを提案している。この方法によると、各セルの電圧は制御されて、燃料電池スタックの寿命は延ばされている。
【0007】
特許文献3(EP1,450,429)は、セパレータによって分離された複数のセルを備える燃料電池スタックについて記載している。セルは、外部抵抗に接続されており、各抵抗は、各燃料電池スタックから電流が流れられるようにして、セル停止後の残留燃料に関連する腐食の問題を解決している。外部抵抗と直列に、スイッチが配置されている。
【0008】
特許文献4(AT505,914)は、燃料電池スタックのセルの停止方法について記載している。燃料電池スタックは、直列に接続された複数のセルを備えている。運転中、少なくとも2つの反応ガスがセルに導入され、運転が停止されると、一方のガスの供給は停止される。セル内に残っているガスは消費される。残留ガスの消費は、セルの端子間に電気負荷を接続することによって達成される。
【0009】
特許文献5(US2008/0032163)は、燃料電池スタックの停止動作、および起動動作を制御するシステムについて記載している。このシステムは、相当数のセルの端子間の電圧を測定し、次いで、電圧が最大のセルと電圧が最小のセルを決定する。停止動作または起動動作中に、電圧測定値に応じて、このシステムは、燃料電池スタックのスタック端子間に、大きい抵抗または小さい抵抗の電気負荷を接続する。このシステムは、セルの端子間の電圧を最小閾値と最大閾値との間に維持するように、電気負荷のインピーダンスを設定して、セルが劣化するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,013,617号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0224482号明細書
【特許文献3】欧州特許第1,450,429号明細書
【特許文献4】オーストリア特許第505,914号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0032163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のシステムは、セルの劣化に対して最適な防止策を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の欠点の1つ以上を解決することを目的としている。すなわち、本発明は、燃料電池スタックに組み込まれている電気化学セルのセットを、燃料電池スタックの停止動作中における腐食から保護する方法に関し、この方法は、
−保護すべきセルのそれぞれの端子間の電圧を測定するステップと、
−セルの測定電圧が保護閾値を上回るとき、このセルを電気負荷に放電させるステップであって、
−セルの測定電圧が保護閾値より上の中間閾値を上回るとき、このセルを電気負荷に放電させ、
−セルの測定電圧が中間閾値を下回るとき、このセルを電気負荷から切り離し、
−セルの端子間の電圧が全てこの中間閾値を下回るとき、これらのセルを保護閾値まで放電させ、
−セルの測定電圧がこの保護閾値を下回るとき、このセルを電気負荷から切り離すステップとを有する。
【0013】
一実施形態では、この方法は、プロトン交換膜電気化学セルに適用することができるものである。
【0014】
一実施形態では、セルは、それぞれの専用電気負荷に放電する。
【0015】
別の実施形態では、保護すべきセルのセットのサブセルは、それぞれの電圧が前述の保護閾値を上回るとき、同時に放電する。
【0016】
別の実施形態では、前述の保護閾値は、0.2〜0.6Vの間である。
【0017】
別の実施形態では、本発明の方法は、中間閾値を徐々に減らすように反復設定するステップと、セルの測定電圧が新しく設定した中間閾値を上回るとき、このセルを放電させるステップと、セルの測定電圧が新しく設定した中間閾値を下回るとき、このセルを電気負荷から切り離すステップとを備えている。
【0018】
また本発明は、燃料電池スタックにも関する。この燃料電池スタックは、
−腐食から保護する電気化学セルのセットと、
−これらの複数のセルのそれぞれの端子間の電圧を測定する装置と、
−電気化学セルの保護回路であって、燃料電池スタックの停止動作を検出でき、停止動作を検出すると、
−保護閾値を上回る測定電圧を有する各セルを電気負荷に放電でき、
−セルの測定電圧が保護閾値より上の中間閾値を上回るとき、このセルを電気負荷に放電させ、
−セルの測定電圧が中間閾値を下回るとき、このセルを電気負荷から切り離し、
−セルの端子間の電圧が全てこの中間閾値を下回るとき、これらのセルを保護閾値まで放電させ、
−この保護閾値を下回る測定電圧を有する各セルを電気負荷から切り離す保護回路と
を備えている。
【0019】
一実施形態では、電気化学セルは、プロトン交換膜電気化学セルである。
【0020】
別の実施形態では、電気化学セルのセットは、直列に接続されたセルから成るスタックを形成している。
【0021】
別の実施形態による保護回路は、電気負荷およびスイッチを備えている。1つの負荷および1つのスイッチは、これらのセルのそれぞれに専用である。保護回路は、専用スイッチをオンして、セルをその専用の負荷に放電させる。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、情報として以下に挙げる本発明の限定的でない説明を読むことにより明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】燃料電池のセルの概略図である。
【図2】燃料電池スタックを保護する電子回路の概略図である。
【図3】電気負荷に関する燃料電池スタックの概略図である。
【図4】燃料電池スタックの停止動作中に、電子回路がどのように機能するかの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実際のところ、燃料電池スタックの停止動作中に、各セルの電圧は、個別に低下する。セル電圧の低下の仕方は、湿気、ガス圧勾配、局所温度、使用材料、および行われる電気化学作用などの、燃料電池スタックの動作条件に依存する。燃料電池スタックの停止時における燃料電池スタックの各セルの最初の電圧レベルも、特に製作公差に起因して異なる。従って、スタック全体を電気負荷に放電させることにより、過電圧関連の腐食からセルを保護できるとしても、セルの中には、放電中に低すぎるレベルまで電圧が低下するものがあるかもしれない。このようなセルは、劣化することとなる。まだ電圧レベルが高すぎるセルが存在する間に、放電が停止されると、このセルもまた劣化することとなる。
【0025】
本発明は、燃料電池スタックの停止動作中における腐食から、燃料電池スタックの電気化学セルから成るセットを保護するものである。保護するべき各セルの端子間の電圧を測定する。セルの電圧が保護閾値を上回る場合、このセルを、電気負荷に放電させる。セルの測定電圧がこの閾値を下回る場合、このセルを電気負荷から切り離す。
【0026】
本発明によると、燃料電池スタックの停止時におけるセルの放電を最適化することができ、高すぎる電圧レベルに起因する腐食も、低すぎる電圧レベルに起因する劣化も、防止することができる。また、保護されるセルは、停止動作の終了時に、電圧レベルはかなり均一になる。
【0027】
図1は、プロトン交換膜燃料電池スタック、または固体高分子形燃料電池スタック(一般にPEM燃料電池スタックと呼ばれている)のセルの概略図である。燃料電池スタックは、セルの供給口に水素ガスを供給する燃料源30を備えている。また、燃料電池スタックは、セルの供給口に空気を供給する空気源32も備えている。空気は、酸化剤として使用される酸素を含んでいる。セルは、アノード22、カソード26、および電解質層24を備えている。この電解質層は、アノードとカソードとの間に配置されている。アノード22は、ガス拡散層と、このガス拡散層と電解質24との間に配置される触媒層とを備えている。ガス拡散層は、流路から触媒層の方にガスを拡散させる。ガス拡散層は、例えば、それ自体公知のように、フェルトまたはカーボンクロスでもよく、これにポリテトラフルオロエチレンなどの疎水剤が担持されている。アノード22の触媒層は、一般に、白金およびポリテトラフルオロエチレンを備え、これらの両方とも、カーボン担体に担持されている。ポリテトラフルオロエチレンは、その疎水性のために使用され、白金は、その触媒性のために使用される。カソード26は、ガス拡散層と、このガス拡散層と電解質24との間に配置されている触媒層とを備えている。電解質層24は、半透膜であり、プロトンは伝導するが、セル内に存在するガスに対しては不透性である。セルは、アノードガスの流れを導くプレート29と、カソードガスの流れを導くプレート28とを備え、これらのプレートは、それぞれ、アノード22およびカソード26に面して配置されている。プレート28および29は、公知のように、例えば黒鉛からなっている。
【0028】
燃料電池スタックの運転中、空気が電解質24とプレート28との間を流れ、水素ガスが電解質24とプレート29との間を流れる。アノード22において、水素ガスがイオン化されて、プロトンを発生し、このプロトンが電解質24を通過する。この反応によって発生した電子は、燃料電池スタックに接続された電気負荷に印加されて、電流を形成する。カソードにおいて、酸素が還元されて、プロトンと反応して水を生じる。アノードおよびカソードにおける反応は、次の通りである。
アノードにおいて:H2→2H++2e-
カソードにおいて:4H++4e-+O2→2H2
【0029】
燃料電池スタックの運転中、セルは、アノードとカソードとの間に、約1VのDC電圧を発生する。
【0030】
図2は、電気負荷80に電力を供給する燃料電池スタック10の概略図である。燃料電池スタック10は、図1に示すセルなどから成るスタックを備えている。これらのセルは、電気的に直列に接続されており、スタックは、負荷80の端子間に適切な電圧を印加する。
【0031】
燃料源30は、スタック20の供給口12に水素ガスを選択的に供給する。空気源32は、スタック20の供給口14に空気を選択的に供給する。スタック20には、過剰な水素ガスを取り除くための排出口16と、電気化学反応によって生成される水および熱を取り除くための排出口18とが設けられている。
【0032】
図示してはいないが、燃料電池スタック10は、スタック20を冷却するためのシステムを備えることもある。
【0033】
燃料電池スタック10は、例えばマイクロコントローラを用いて動作する制御モジュール60を備えている。さらに、燃料電池スタック10は、腐食からスタックを保護するためのモジュール50と、スタック内のセルの電圧を監視するための回路40と、スタック20を負荷80に選択的に接続することができるスイッチ70とを備えている。制御モジュール60は、スイッチ70および保護モジュール50の動作を制御する。制御モジュール60は、監視回路40にも接続されており、スタック20内のセルの電圧レベルを受け取る。
【0034】
燃料電池スタック10が起動されると、燃料源30および空気源32は、スタック20に供給を開始する。公称電圧が、スタック20の端子間に発生する。制御モジュール60は、スイッチ70をオンにして、スタック20から負荷80に電力を供給する。
【0035】
図3は、スタック20に接続されている例示的保護モジュール50の概略図である。モジュール50は、抵抗とスイッチとを備え、これらの両方とも、スタック20のそれぞれ1つのセルに専用である。従って、保護される各セルは、モジュール50の専用の抵抗およびスイッチに接続されている。このようにして、スイッチS1および抵抗R1は、セルC1に接続され、スイッチS2および抵抗R2は、セルC2に接続され、スイッチS3および抵抗R3はセルC3に接続されている。さらに、保護モジュール50は、制御モジュール60から送られる制御信号に応じて、スイッチをオンオフする制御回路52を備えている。制御回路52は、全てのスイッチを個別にオンオフする。スイッチは、保護モジュール50の回路に組み込まれたトランジスタでもよい。
【0036】
燃料電池スタック10が既に起動されていて、セルに空気と燃料が供給されているとき、制御回路52は、全てのスイッチをオフの状態に保ち、スタック20内のセルによって生成される電力が、保護モジュール50の抵抗で浪費されるのを防止する。
【0037】
燃料電池スタック10の停止動作中に、スタック20を貫流する燃料と空気の流れが止められ、スイッチ70がオフにされて、負荷80が切り離される。負荷80の切り離し後も、水素ガスおよび空気は、スタック20内のセルの中に依然として存在する。セル内の電気化学反応は、短時間の間継続する。負荷80がセルから切り離されているので、高すぎる電圧がアノードおよびカソードで発生することがあり、その電圧によって、腐食が生じることがある。
【0038】
スタック20のセルを腐食から保護するために、制御回路52は、専用スイッチをオンにして、発生した過渡電流をモジュール50の専用抵抗で消費させる。
【0039】
燃料電池スタック10の停止動作中に、制御モジュール60は、次のようにスタック20内のセルを保護する。監視回路40は、保護すべきセル(一般にスタック20内の全てのセル)のそれぞれの端子間の電圧を測定する。監視回路40は、通常、制御モジュール60のマイクロコントローラに個々のセルの電圧値を供給するためのアナログ・デジタル変換器を備えている。これらの電圧は、制御モジュール60によって、予め定められた保護電圧閾値と比較される。この電圧閾値は、この電圧以下では、セルの材料が腐食する恐れなしにセルを維持しうるレベルに相当する。予め定められた保護閾値を上回る電圧を有する各セルは、その専用スイッチをオンにされ、各セルからその専用抵抗への放電が可能になる。このような残留水素ガスが存在するために発生する電流は、専用抵抗をジュール加熱することにより消費される。
【0040】
監視回路40が予め定められた閾値を下回るセル電圧を測定すると、このセルの専用スイッチがオフにされ、セルの過剰放電を防止する。過剰放電は、セルの劣化をもたらすことがあるからである。保護閾値は、例えば、0.2〜0.6Vの間である。
【0041】
従って、スタック20の個々のセルは個別に放電され、それによって、一部のセルがより低い電圧を有したり、またより高い放電率を有したりして、セルのセットが劣化する恐れなしに、燃料電池スタック10を停止することができる。このように、停止動作は、全てのセルが比較的均一の最適な最終電圧を有するように行われる。
【0042】
さらに、本発明の方法では、セルのアノード領域に残留する水素を消費する。これとは対照的に、停止動作中にスタックを不活性ガスで浄化する方法では、例えば拡散板29に含まれている水素などの、残留水素をすべて浄化することができない。
【0043】
図4は、本発明によるセルを放電させる方法の第1の実施例のフロー図である。この方法では、セルの放電は、段階的に行われる。
【0044】
ステップ101において、燃料電池スタック10の停止動作の開始を検出する。ステップ102において、各セルの端子間の電圧を測定する。ステップ103において、中間電圧閾値を設定する。この閾値は、フロー図の開始時に、例えば、最大電圧を有するセルの測定電圧の90%に等しい値に設定されるか、または事前にメモリに記憶された電圧に設定される。ステップ104において、設定した中間閾値が保護閾値を下回るかどうかを判定する。保護閾値は、例えば、たぶん0.2〜0.6Vの間の予め定められた値になると思われる。設定した中間閾値が保護閾値を下回る場合には、スタックの個々のセルは、十分に放電されており、セルが確実に保護されることになる。フローの命令は、ステップ109に進み、放電プロセスを終了する。
【0045】
設定した中間閾値が保護閾値を上回る場合、ステップ105において、セル電圧が全て中間閾値を下回るかどうかが判定される。セル電圧が、全て中間閾値を下回る場合、全てのセルは、確かに中間閾値まで放電されている。ステップ108において、中間閾値を少しだけ減少してから、ステップ104に戻る。少なくとも1つのセルが、中間閾値を上回る電圧を有する場合、ステップ106に進む。ステップ106において、中間閾値を上回る電圧を有するセルの専用スイッチをオンにする。このようにして、これらのセルは放電される。中間閾値を下回る電圧を有するセルの専用スイッチはオフにして、セルからの放電を防止する。ステップ107において、全てのセルの電圧を測定してから、ステップ105に戻る。
【0046】
この反復的方法により、全てのセルを、保護閾値まで徐々に放電できる。この方法は、一定のインピーダンスを有する専用負荷を使用しており、そのため、セルの放電期間は、個々に異なる。
【0047】
このプロセスによると、セルの電圧を着実に保護閾値まで下げることができる。この放電方法は、セルの最初の充電量に応じて、個々のセルの放電時間を変えることができる。従って、セルが少しの充電量しかないとき、このセルを劣化させる危険のある大電流を要求することは決してない。
【0048】
本発明による放電方法の別の実施例では、セルは、保護閾値を通過するまで、やはり直接かつ継続的に放電される。この放電により、セルの端子間に高電圧が印加される期間を短くすることができる。このようにして、燃料電池スタックの寿命が最適化される。
【符号の説明】
【0049】
10 燃料電池スタック
12、14 供給口
16、18 排出口
20 スタック
22 アノード22
24 電解質、電解質層
26 カソード
28、29 プレート
30 燃料源
32 空気源
40 監視回路
50 保護モジュール
52 制御回路
60 制御モジュール
70 スイッチ
80 電気負荷
101〜109 ステップ
C1〜C3 セル
R1〜Rn 抵抗
S1〜Sn スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックの停止動作中における、燃料電池スタック(10)に組み込まれている複数の電気化学セル(C1、C2、C3)から成るセットを腐食から保護する方法であって、
−保護すべき前記複数のセルのそれぞれの端子間の電圧を測定するステップ(40)と、
−セルの前記測定電圧が保護閾値を上回るとき、このセルを電気負荷(R1、R2、R3)に放電させるステップであって、
−セルの前記測定電圧が前記保護閾値より上の中間閾値を上回るとき、このセルを電気負荷に放電させ、
−セルの前記測定電圧が前記中間閾値を下回るとき、このセルを前記電気負荷から切り離し、
−前記複数のセルの端子間の電圧の全てが前記中間閾値を下回るとき、前記複数のセルを前記保護閾値まで放電させ、
−セルの前記測定電圧が前記保護閾値を下回るとき、このセルを前記電気負荷から切り離すステップとを有していることを特徴とする保護方法。
【請求項2】
プロトン交換膜電気化学セルに適用されることを特徴とする請求項1に記載の保護方法。
【請求項3】
前記複数のセルは、それぞれ専用の電気負荷(R1、R2、R3)に放電されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の保護方法。
【請求項4】
保護されるセルのセット内の前記複数のセルは、それぞれの電圧が前記保護閾値を上回るとき、同時に放電されるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護方法。
【請求項5】
前記保護閾値は、0.2〜0.6Vの間にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護方法。
【請求項6】
中間閾値を徐々に減らすように反復設定するステップと、セルの測定電圧が前記新しく設定した中間閾値を上回るとき、このセルを放電させるステップと、セルの測定電圧が前記新しく設定した中間閾値を下回るとき、このセルを前記電気負荷から切り離すステップとを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護方法。
【請求項7】
燃料電池スタック(10)であって、
−腐食から保護する複数の電気化学セルのセットと、
−前記複数のセルのそれぞれの端子間の電圧を測定する装置(40)と、
−前記複数の電気化学セルを保護する回路(50)であって、前記回路は、前記燃料電池スタックの停止動作を検出でき、停止動作の検出時に、
−保護閾値を上回る測定電圧を有する各セルを電気負荷に放電することができ、
−セルの前記測定電圧が前記保護閾値より上の中間閾値を上回るとき、このセルを電気負荷に放電させ、
−セルの前記測定電圧が前記中間閾値を下回るとき、このセルを前記電気負荷から切り離し、
−前記複数のセルの端子間の電圧が全て前記中間閾値を下回るとき、前記複数のセルを前記保護閾値まで放電させ、
−前記保護閾値を下回る測定電圧を有する各セルを前記電気負荷から切り離すことができる回路とを備えていることを特徴とする燃料電池スタック(10)。
【請求項8】
前記複数の電気化学セルは、プロトン交換膜電気化学セルであることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池スタック(10)。
【請求項9】
前記複数の電気化学セルから成るセットは、直列に接続されたセルのスタック(20)を形成するようになっていることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料電池スタック(10)。
【請求項10】
前記保護回路(50)は、電気負荷(R1、R2、R3)およびスイッチ(S1、S2、S3)を備え、1つの負荷、および1つのスイッチは、前記複数のセルのそれぞれに専用であり、前記保護回路(50)は、セルをその専用負荷に放電させるために、専用スイッチをオンにするようになっていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の燃料電池スタック(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−508903(P2013−508903A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534652(P2012−534652)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065655
【国際公開番号】WO2011/048057
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】