燃料電池の製造方法、並びに燃料電池および電子機器
【課題】負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を製造する技術であって、その製造方法および廃棄方法が簡便であり、かつ、小型化などの設計変更も、容易に行うことが可能な技術を提供すること。
【解決手段】負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を印刷する電極パターン作製工程と、該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を印刷して負極および正極を作成する負極正極作製工程と、を少なくとも行う燃料電池製造方法を提供する。
【解決手段】負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を印刷する電極パターン作製工程と、該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を印刷して負極および正極を作成する負極正極作製工程と、を少なくとも行う燃料電池製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、燃料電池の製造方法に関する。より詳しくは、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法、並びに該製造方法を用いて製造された燃料電池および該燃料電池を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、大きく分けて化学電池と物理電池に分類することができ、化学電池としては、マンガン乾電池、アルカリ乾電池、ニッケル系一次電池、リチウム電池、アルカリボタン電池、酸化銀電池、空気(亜鉛)電池などの一次電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛畜電池、アルカリ畜電池などの二次電池、バイオ燃料電池などの燃料電池が、物理電池としては、太陽電池等が存在する。
【0003】
以下、本技術に関わりのある化学電池について説明する。一次電池とは、内部に反応物質を有しており、反応物質の化学反応により電流を生じる電池であって、反応物質がすべて消費されるまで使用できる電池であり、例えば、乾電池等が挙げられる。二次電池とは、内部に反応物質を有しており、電流を発生させることで反応物質が減少するが、充電することによって逆反応が起こり、生成物質がもとの反応物質に戻ることで繰り返し使用することが可能な電池であり、例えば、自動車のバッテリーやリチウムイオン電池などが挙げられる。
【0004】
なかでも、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に触媒として酸化還元酵素を固定した燃料電池(以下、バイオ燃料電池という。)は、例えばグルコース及びエタノールのように通常の工業触媒では反応が困難な燃料から、効率よく電子を取り出すことができるため、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として注目されている。
【0005】
バイオ燃料電池の一例として、グルコースを燃料とするバイオ燃料電池の反応スキームを説明する。グルコースを燃料とするバイオ燃料電池においては、負極でグルコース(Glucose)の酸化反応が進行し、正極で大気中の酸素(O2)の還元反応が進行する。そして、負極では、グルコース(Glucose)、グルコース脱水素酵素(Glucose Dehydrogenase)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+;NicotinamideAdenine Dinucleotide)、ジアホラーゼ(Diaphorase)、メディエーター、電極(カーボン)の順に電子が受け渡される。
【0006】
ところで、このようなバイオ燃料電池は、一般的に、燃料を分解する酵素群、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とその還元体(NADH)、NADHデヒドロゲナーゼ、メディエーター、などを溶解させて各溶液とし、各溶液あるいは各溶液を一種以上混合した溶液を、電極材料上に適宜添加し、当該電極上で適宜混合し、その後乾燥、さらにこれらの添加混合乾燥を一回以上繰り返して電極を作製し(特許文献1参照)、作製した電極に、プロトン伝導体、負極に燃料を供給するための燃料供給層、気液分離膜などを積層させることで、製造される。この方法はとても煩雑な方法である。
【0007】
また、従来のバイオ燃料電池において、発電部は薄く小さく設計できるが、燃料タンクは目的に応じて所定の大きさが必要であった。そのため、燃料の有無に関係なく、燃料タンクのためのスペースが必要であり、バイオ燃料電池の小型化に歯止めをかける結果を招いていた。
【0008】
一方、二次電池や太陽電池においては、電極を薄くて均一でありつつも、平坦に製造できて、所望の形のパターンを経済的に製造できるという観点から、インクジェット印刷方式を用いた電極の製造方法が用いられている。
【0009】
例えば、特許文献2では、沸点が相対的に高くない溶媒を用いることにより、未乾燥液滴が高い表面張力により移動しつつ、ターゲット点から離れうるか、他の液滴とかたまりつつ移動する現象の発生を抑制し、一定の表面張力を有しつつも、精密なパターンを形成することが可能な二次電池に用いることが可能で、インクジェット印刷方式により電極を作製するための電極組成物に関する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献3では、シリコン基板の受光面に、電極を形成する部位に応じて、インクジェット法あるいはオフセット印刷によりドーパント濃度の高い拡散剤を塗布し、高濃度膜を形成し、次に、シリコン基板の受光面全体にスピンコートによって、先に塗布した拡散剤よりもドーパント濃度の低い拡散剤を塗布して、低濃度膜を高濃度膜に重ねて形成し、次に、熱処理を行って、ドーパントを拡散させ、高濃度エミッタ層および低濃度エミッタ層を形成するとともに、拡散剤に含まれる金属化合物により、高濃度エミッタ層の上に低屈折率の反射防止膜を形成し、低濃度エミッタ層の上に高屈折率の反射防止膜を形成し、次いで、高濃度エミッタ層の上に、受光面電極を形成することによって、安価に光電変換効率が高い選択エミッタ構造の太陽電池を製造する方法に関する技術が開示されている。
【0011】
これら二次電池や太陽電池の製造方法では、インクジェット方式などの印刷技術を用いることにより、薄くて平坦な電池を製造することができると行ったメリットがある。しかしながら、これら二次電池や太陽電池は、金属を含む電極活物質、電解液、用いる燃料などに有害物質(危険物質)や環境汚染物質を含む上に、希少元素も含むため、他の廃棄物と分別した上で、廃棄・回収などを行う必要がある。この問題は、二次電池や太陽電池に限らず、市販の一次電池や燃料電池にも同様の問題がある。
【0012】
なお、バイオ燃料電池においては、酵素の活性を維持することが重要視されているからか、当業者が印刷技術を用いるといった選択をすることはこれまで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−127957号公報
【特許文献2】特開2010−097946号公報
【特許文献3】特開2010−109201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、バイオ燃料電池は、その製造方法が非常に煩雑である。また、バイオ燃料電池の燃料タンクは、目的に応じて所定の大きさが必要である。そのため、市販されているバイオ燃料電池は、予め電池の大きさ、形状、性能などが決まっており、目的に合わせた小型化などの設計変更は、容易に行うことができなかった。
【0015】
また、前述のように、印刷技術を用いて二次電池や太陽電池をより簡便に作製する技術は既に存在する。しかし、この二次電池や太陽電池、更には既存の一次電池や燃料電池は、金属、有害物質(危険物質)、環境汚染物質、希少元素などを含むため、他の廃棄物と分別した上で、廃棄・回収などを行う必要があり、製造方法が簡便になった半面、廃棄方法は複雑なままであるといった問題がある。
【0016】
そこで、本技術では、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を製造する技術であって、その製造方法および廃棄方法が簡便であり、かつ、小型化などの設計変更も、容易に行うことが可能な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明者らは、前記課題を解決するために、バイオ燃料電池の製造方法およびその構造について鋭意研究を行った結果、従来の常識から発想を転換することで、バイオ燃料電池では常識的に行われていなかった印刷技術に注目し、新規な製造技術を確立することで、本技術を完成するに至った。
【0018】
即ち、本技術では、まず、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法を提供する。
本技術に係る燃料電池製造方法では、セパレーターの役割を果たす前記非導電性シートに、印刷技術を用いて各電極を形成している。そのため、印刷パターンなどの設計を変更するだけで、目的に応じた様々な形態の電池に構成することが可能である。また、本技術に係る燃料電池製造方法は、金属を全く使用しなくても燃料電池を製造することが可能な方法である。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行うことも可能である。
また、本技術に係る燃料電池製造方法では、前記電極パターン作製工程で作製した電極上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行うことも可能である。
本技術に係る燃料電池製造方法において、前記非導電性シートに印刷する電極の配置方法は特に限定されないが、例えば、前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極上に所定の酸化還元酵素を印刷する方法を採用することができる。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行うことも可能である。
この場合、該折曲工程で行う折曲方法は特に限定されないが、例えば、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする方法、あるいは、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする方法などを採用することができる。請求項17記載の燃料電池製造方法。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行うことも可能である。
【0019】
本技術では、次に、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池を提供する。
本技術に係る燃料電池は、非導電性シート表面に、印刷技術を用いて電極を構成した電池であれば、全てを包含するが、その具体的な構成としては、以下のような例を挙げることができる。
例えば、前記負極および前記正極を、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷して構成することができる。
また、例えば、前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成することも可能である。
本技術に係る燃料電池を、前記非導電性シートを折曲して構成する場合、その折曲方法は目的に合わせて自由に設計することができるが、例えば、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りしたり、あるいは、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りしたりすることで、本技術に係る燃料電池を構成することができる。
本技術に係る燃料電池には、前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させた燃料タンクを備えることも可能である。
この燃料タンクは、例えば、非使用時には折畳しておき、使用時に拡開する構成に設計することも可能である。
本技術に係る燃料電池の前記負極に固定された前記酵素には、少なくとも酸化酵素を含ませることができる。
また、本技術に係る燃料電池の前記負極に固定された前記酵素には、少なくとも酸化型補酵素を含ませることもできる。
前記負極に固定された前記酵素に、酸化型補酵素を含ませる場合には、更に、補酵素酸化酵素を含ませることも可能である。
また、本技術に係る燃料電池の前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上には、前記酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定化することもできる。
【0020】
本技術に係る燃料電池は、あらゆる電子機器に好適に用いることが可能である。具体的に、本技術では、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本技術をバイオ燃料電池に用いることで、その製造方法および廃棄方法の簡便化、かつ、小型化などの設計変更の容易化を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本技術に係る燃料電池製造方法のフロー図である。
【図2】本技術に係る燃料電池製造方法の第1実施形態を模式的に示す断面模式図である。
【図3】本技術に係る燃料電池製造方法の第2実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図3中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図3中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図4】本技術に係る燃料電池製造方法の第3実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図4中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図4中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図5】本技術に係る燃料電池製造方法の第4実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図5中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図5中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図6】本技術に係る燃料電池製造方法の第5実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図6中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図である。
【図7】本技術に係る燃料電池製造方法の燃料タンク形成工程VIIにおける、燃料タンク15の形成方法の一例を示す模式図である。
【図8】本技術に係る燃料電池製造方法の燃料タンク形成工程VIIにおける、燃料タンク15の形成方法の図7とは異なる一例を示す模式図である。
【図9】本技術に係る燃料電池1の第1実施形態を示す断面摸式図である。
【図10】本技術に係る燃料電池1の第2実施形態を示す断面摸式図である。
【図11】本技術に係る燃料電池1の第3実施形態を示す断面摸式図である。
【図12】本技術に係る燃料電池1の非使用時の保管方法の一例を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.燃料電池の製造方法
(1)電極パターン作製工程I
(2)負極正極作製工程II
(3)撥水処理工程III
(4)親水処理工程IV
(5)裁断工程V
(6)折曲工程VI
(7)燃料タンク形成工程VII
2.燃料電池1
(1)非導電性シート11
(2)電極材料12
(3)負極13
(4)正極14
(5)燃料タンク15
(6)負極端子16、正極端子17
(7)プロトン透過膜18
(8)燃料拡散層19
(9)気液分離膜20
3.電子機器
【0024】
<1.燃料電池製造方法>
図1は、本技術に係る燃料電池製造方法のフロー図である。本技術に係る燃料電池製造方法は、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、電極パターン作製工程I、負極正極作製工程IIを少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、撥水処理工程III、親水処理工程IV、折曲工程V、燃料タンク形成工程VIなどを行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0025】
(1)電極パターン作製工程I
電極パターン作製工程Iは、非導電性シート11の表面に、電極材料12を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する工程である。電極パターン作製工程Iで用いる非導電性シートは、曲折可能であるものを採用する。また、電極材料12は、少なくとも導電性粒子を含有する材料を用いる。
【0026】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる非導電性シート11は、導電性がなく、曲折可能であるシートであって、燃料などの液体透過性および気体透過性を有する例えば多孔質のシートであれば、あらゆる素材を自由に選択して用いることができる。例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、セルロース系繊維などからなる不織布やそれらをプラズマ処理やUVオゾン処理などで親水化処理した不織布、セロファンなどの半透膜などを採用することが可能である。
【0027】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる導電性粒子は、導電性があり、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる粒子を自由に選択して用いることができる。例えば、導電性活性炭、金、銀、白金、銅、亜鉛、チタン,アルミニウム,マグネシウム,パラジウム,イリジウム,クロム,およびマンガンなどの金属粒子などを採用することが可能である。この中でも本技術では特に、導電性活性炭を用いることが好ましい。導電性活性炭は水溶液中で化学的に安定であり、かつ安価であるからである。
【0028】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる電極材料12は、前記導電性粒子を少なくとも含有していればよいが、前記非導電性シート11への印刷を確実に行うためにも、例えば、いわゆるバインダーとして機能する結着剤、導電助剤、有機溶媒などを含有させることも可能である。
【0029】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる結着剤は、バインダーとして機能し、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる結着剤を自由に選択して用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチルセルロース(EC)、カルボチルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、スチレンブタジエンラバー(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンラバー(EPDM)、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールなどを採用することが可能である。
【0030】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる導電助剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、前記導電性粒子の種類に応じて、あらゆる導電助剤を自由に選択して用いることができる。例えば、ケッチェンブラックやアセチレンブラックなどの導電性カーボンブラックや黒鉛などを採用することが可能である。この中でも本技術では特に、ケッチェンブラックを用いることが好ましい。ケッチェンブラックは、導電性が高いからである。
【0031】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる溶媒は、本技術の効果を損なうことがなければ、前記導電性粒子、前記結着剤、前記導電助剤の種類に応じて、あらゆる溶媒を自由に選択して用いることができる。例えば、テルピネオール、ドデカノール、2−フェノキシエタノール、イソプロパノール、ブタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、プロピレンカーボネート、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジオクチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ブチルカルビトール、ブチルカルビトール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、4−メチル−2−ペンタノン、水などを採用することが可能である。この中でも本技術においては特に、4−メチル−2−ペンタノン、水を用いることが好ましい。4−メチル−2−ペンタノン、水は、例えば、後述するように、電極成分と触媒成分(酵素)を混ぜて印刷する際においても、酵素が失活しにくいという性質を有するからである。また、4−メチル−2−ペンタノン、水は、沸点が低いため乾燥させやすいという利点もある。
【0032】
本技術の電極パターン作製工程Iにおいて、非導電性シート11の表面への電極材料の印刷パターンは、目的に応じて自由に設計することができる。例えば、図2の第1実施形態のように、前記電極材料が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シートの両面に、前記電極材料12を印刷することができる。この際、印刷方法は特に限定されず、片面ずつ印刷する方法であっても、一度に両面印刷を行う方法であっても、本技術においては可能である。
【0033】
このように、前記電極材料12が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シート11の両面に、前記電極材料12を印刷すれば、電極パターン作製工程Iに加えて後述する負極正極作製工程IIを行うだけで、本技術に係る燃料電池を製造することができる。即ち、印刷技術のみで、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成できるため、非常に簡単かつ短時間で本技術に係る燃料電池を製造することが可能である。
【0034】
その他の印刷パターンとしては、直列接続した電池を作製するには、例えば、後述する図3に示す第2実施形態、図4に示す第3実施形態、および図6に示す第5実施形態など、並列接続した電池を作製するには、例えば、後述する図5に示す第4実施形態などの印刷パターンを採用することができる。
【0035】
本技術の電極パターン作製工程Iにおける印刷方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0036】
(2)負極正極作製工程II
負極正極作製工程IIは、電極パターン作製工程Iで作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極13および正極14を作成する工程である。
【0037】
負極13を作製するために用いる酵素としては、本技術の効果を損なうことがなければ、用いる燃料の種類に応じて、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、燃料として糖類を含む燃料を用いる場合には、糖類を酸化分解する酸化酵素を用いることができる。酸化酵素の一例としては、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコネート5デヒドロゲナーゼ、グルコネート2デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシパルベートレダクターゼ、グリセレートデヒドロゲナーゼ、フォルメートデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。
【0038】
また、負極13には、上記の酸化酵素に加え、酸化型補酵素および補酵素酸化酵素を固定してもよい。酸化型補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamideadenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、ピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinolinequinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。補酵素酸化酵素としては、例えば、ジアフォラーゼが挙げられる。
【0039】
更に、負極13には、上記の酸化酵素及び酸化型補酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。上記で発生した電子の電極への受け渡しをスムーズにするためである。電子伝達メディエーターとしては、例えば、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、ビタミンK3、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2、3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、キノン骨格を有する化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物などなどが挙げられる。
【0040】
正極14を作製するために用いる酵素としては、酸素を反応基質とするオキシダーゼ活性を有する酵素であって、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等を用いることができる。
【0041】
また、正極14には、上記の酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。負極13から送り込まれる電子の受け取りをスムーズにするためである。正極14に固定し得る電子伝達メディエーターの種類も特に限定されず、必要に応じて自由に選択することができる。例えば、ABTS(2,2'-azinobis(3-ethylbenzoline-6-sulfonate))、K3[Fe(CN)6]等を用いることが可能である。
【0042】
本技術の負極正極作製工程IIにおける印刷方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0043】
本技術の負極正極作製工程IIで用いる酵素は、耐熱性を有する酵素を用いることが好ましい。耐熱性を有する酵素を用いることで、印刷工程における酵素の失活を抑制することができ、低温ではなく常温での印刷が可能となるからである。
【0044】
また、酵素活性を維持することが可能な例えば、リン酸緩衝液などの緩衝液を選択することが好ましい。酵素活性を維持することが可能な緩衝液を選択することで、印刷工程における酵素の失活を抑制することができ、低温ではなく常温での印刷が可能となるからである。
【0045】
なお、負極正極作製工程IIは、例えば、電極成分と触媒成分(酵素)を混ぜて印刷することにより、前記電極パターン作製工程Iと同時に行うことも可能である。
【0046】
(3)撥水処理工程III
撥水処理工程IIIは、前記負極13および前記正極14を形成しない部分に、撥水処理を施す工程である。この撥水処理工程IIIは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、確実に発電を行うために、行うことが好ましい。
【0047】
撥水処理工程IIIでは、前記非導電性シート11の前記電極パターンを形成していない部分に、撥水処理を行う。このように、前記電極パターン作製工程Iにおいて前記電極パターンを形成していない部分を撥水処理することで、前記正極14へ誤って燃料が浸透することや漏電を防止することができ、その結果、製造する燃料電池の高性能化に貢献することができる。
【0048】
また、撥水処理工程IIIでは、前記電極パターン作製工程Iにおいて親水性の前記電極素材12を用いた場合に、前記電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成しない部分にも、撥水処理を行うことができる。このように、前記電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成しない部分を撥水処理することで、漏電などを防止することができ、その結果、製造する燃料電池の高性能化に貢献することができる。
【0049】
撥水処理工程IIIで行う撥水処理方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことが可能である。例えば、撥水剤を塗布する方法が挙げられる。
【0050】
本技術に用いることができる撥水剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の撥水剤を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、シリコーンオイル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素系高分子を有機溶剤に溶かしたフッ素コーティング剤などを用いることが可能である。
【0051】
撥水剤の塗布方法も特に限定されず、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIと同様に、印刷技術を用いて撥水剤を塗布する方法などを挙げることができる。この場合の印刷方法も特に限定されず、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0052】
撥水処理工程IIIを行うタイミングは、前記電極パターン作製工程Iを行った後であれば特に限定されない。前記電極パターン作製工程Iの直後に行うことも可能であるし、前記負極正極作製工程IIを経た後に行うことも可能である。また、後述する親水処理工程IVを行った後に行うことも可能である。
【0053】
(4)親水処理工程IV
親水処理工程IVは、前記電極パターン作製工程Iで作製した電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成する部分に、親水処理を施す工程である。この親水処理工程IVは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、前記負極正極作製工程IIにおいて、負極13や正極14を構成する酵素を確実に固定化するために、行うことが好ましい。この工程は、前記電極パターン作製工程Iで用いる電極材料12が疎水性である場合には行うことが好ましい。
【0054】
親水処理工程IVで行う親水処理方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、親水化剤を塗布する方法、プラズマ処理、UVオゾン処理などが挙げられる。
【0055】
親水化剤を用いる場合、本技術に用いることができる親水化剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の親水化剤を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、メタノールなどを用いることが可能である。
【0056】
親水化剤の塗布方法も特に限定されず、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、前記電極パターン作製工程I、前記負極正極作製工程II、前記疎水処理工程IIIと同様に、印刷技術を用いて親水化剤を塗布する方法などを挙げることができる。この場合の印刷方法も特に限定されず、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0057】
親水処理工程IVは、前記電極パターン作製工程Iを行った後であって、前記負極正極作製工程IIを行う前に行う必要があるが、前記疎水処理工程IIIとの順番は自由である。前記疎水処理工程IIIを行った後に親水処理工程IVを行ってもよいし、前記疎水処理工程IIIを行う前に親水処理工程IVを行うこともできる。
【0058】
(5)裁断工程V
裁断工程Vは、前記非導電性シート11を必要な大きさや形状に切断する工程である。この裁断工程Vは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、例えば、後述する図4に示す第3実施形態、図5に示す第4実施形態、および図6に示す第5実施形態などのように、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIにおいて、一度に複数の電極を印刷する場合などに行う工程である。
【0059】
裁断工程Vは、後述する折曲工程VIを行う前であれば、いずれのタイミングで行うことも可能である。例えば、最初に前記非導電性シート11を所望の大きさや形状に裁断した後に、各工程を行うことも可能であるが、製造方法の効率化を考慮すると、前記のように、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIにおいて、一度に複数の電極を印刷した後に、裁断工程Vを行うことが好ましい。
【0060】
(6)折曲工程VI
折曲工程VIは、前記電極パターン作製工程Iおよび前記負極正極作製工程IIを経て前記負極13と前記正極14が表面に作成された前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように折曲させる工程である。
【0061】
この折曲工程VIは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、例えば、前述した図2に示す第1実施形態のように、非導電性シート11の両面に各電極を形成する場合を除き、図3に示す第2実施形態、図4に示す第3実施形態、図5に示す第4実施形態、および図6に示す第5実施形態などのように、非導電性シート11の片面に各電極を形成する場合には、この折曲工程VIを行うことで、前記負極13と正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させることができる。
以下、折曲工程VIの具体例を説明する。
【0062】
図3は、本技術に係る燃料電池製造方法の第2実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図3中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図3中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第2実施形態は、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0063】
第2実施形態では、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0064】
なお、第2実施形態では、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではなく、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の端子を接続することが可能である。
【0065】
図4は、本技術に係る燃料電池製造方法の第3実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図4中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図4中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第3実施形態は、前記第2実施形態と同様に、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態であるが、裁断工程Vを行っていることが第2実施形態と異なる点である。
【0066】
第3実施形態では、前記第2実施形態と同様に、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0067】
なお、第3実施形態では、前記第2実施形態と同様に、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0068】
また、第3実施形態では、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13と他方の電極の正極14とを、導電性材料12’を用いて接続しているが、この導電性材料12’は本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、前記第2実施形態のように、電極パターン作製工程Iを行う際、一方の電極の負極13と他方の電極の正極14とが接続されるように、前記電極材料12の印刷パターンを工夫したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な導電性材料12’を接続したりして用いることも可能である。
【0069】
図5は、本技術に係る燃料電池製造方法の第4実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図5中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図5中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第4実施形態は、負極13および正極14からなる電極が、2つ並列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0070】
第4実施形態では、前記第2実施形態および第3実施形態と同様に、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0071】
なお、第4実施形態では、折曲工程VIを行った後に、負極端子16と正極端子17を、並列接続した前記電極パターンに接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではなく、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0072】
図6は、本技術に係る燃料電池製造方法の第5実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図6中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図である。この第5実施形態は、前記第2実施形態および第3実施形態と同様に、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0073】
第5実施形態では、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を介して谷折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。この際、一方の電極の負極13に接続する電極パターンaと、他方の電極の正極14に接続する電極パターンbとが接触するように、前記非導電性シート11を折曲することで、負極13および正極14からなる電極が、二つ直列接続した燃料電池を製造することができる。
【0074】
第5実施形態において、前記負極13と前記正極14との間に挟み込む非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一であってもよいし、他の素材からなる非導電性シートであってもよい。
【0075】
なお、第5実施形態では、折曲工程VIを行う際に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0076】
(7)燃料タンク形成工程VII
燃料タンク形成工程VIIは、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を折曲して燃料タンクを形成する工程である。この燃料タンク形成工程VIIは、本技術に係る燃料電池製造方法では必須の工程ではないが、製造する燃料電池の更なる小型化を達成するためには、行うことが好ましい。
【0077】
燃料タンク形成工程VIIにおいて、用いる非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一のものを用いてもよいし、他の素材からなる非導電性シートを用いてもよい。
【0078】
また、燃料タンク形成工程VIIにおいて、用いる非導電性シート11’は、前記印刷が施されていない新たな非導電性シート11’を用いてもよいし、前記電極パターン作製工程Iおよび前記負極正極作製工程IIで印刷が施されない部分を用いてもよい。
【0079】
燃料タンク形成工程VIIにおいて、非導電性シート11’の折曲方法は特に限定されず、燃料を貯蔵することが可能な形態に折曲できれば、自由に設計することができる。例えば、図7に示すように箱状に形成したり、図8に示すように袋状に形成したりして、燃料タンク15を構成することが可能である。
【0080】
<2.燃料電池>
図1は、本技術に係る燃料電池1の第1実施形態を示す断面摸式図である。本技術に係る燃料電池1は、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、少なくとも、非導電性シート11と、電極材料12と、負極13と、正極14と、から構成する。また、本技術に係る燃料電池1には、必要に応じて、燃料タンク15、負極端子16、正極端子17、プロトン透過膜18、燃料拡散層19、気液分離膜20を更に備えることも可能である。
【0081】
本技術に係る燃料電池1は、前記非導電性シート11の表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料12と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより前記負極13と前期正極14とを形成していることを特徴とする。なお、各電極のパターンの構成方法、印刷方法などは、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。以下、各構成について、それぞれの詳細に説明する。
【0082】
(1)非導電性シート11
本技術に係る燃料電池1において、非導電性シート11は、負極13と正極14を電気的に分離するセパレーターとして機能する。本技術に係る燃料電池1に用いる非導電性シート11は、導電性がなく、曲折可能であるシートであって、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる素材を自由に選択して用いることができる。非導電性シート11の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0083】
(2)電極材料12
本技術に係る燃料電池1に用いる電極材料12は、少なくとも導電性粒子を含有する。本技術に係る燃料電池1に用いる導電性粒子は、導電性があり、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる粒子を自由に選択して用いることができる。導電性粒子の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0084】
本技術に係る燃料電池1に用いる電極材料12は、前記導電性粒子を少なくとも含有していればよいが、前記非導電性シート11への印刷を確実に行うためにも、例えば、いわゆるバインダーとして機能する結着剤、導電助剤、有機溶媒などを含有させることも可能である。結着剤、導電助剤、有機溶媒の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0085】
(3)負極13
本技術に係る燃料電池1では、前記非導電性シート11表面に印刷された電極材料12上に、所定の酵素を用いて印刷を施すことにより、負極13が構成されている。負極13を作製するために用いる酵素としては、本技術の効果を損なうことがなければ、用いる燃料の種類に応じて、既存の酸化酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。酸化酵素の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0086】
本技術に係る燃料電池1の負極13には、前記酸化酵素の他に、必要に応じて、酸化型補酵素、補酵素酸化酵素、電子伝達メディエーターなども固定化することができる。酸化型補酵素、補酵素酸化酵素、電子伝達メディエーターなどの具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0087】
(4)正極14
本技術に係る燃料電池1では、前記非導電性シート11表面に印刷された電極材料12上に、所定の酵素を用いて印刷を施すことにより、正極14が構成されている。正極14を作製するために用いる酵素としては、酸素を反応基質とするオキシダーゼ活性を有する酵素であって、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。酵素の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0088】
本技術に係る燃料電池1の正極14には、前記酵素の他に、必要に応じて、電子伝達メディエーターなども固定化することができる。電子伝達メディエーターなどの具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0089】
本技術に係る燃料電池1では、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成する。その形成方法は、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成できれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図9に示す第1実施形態のように、前記電極材料12が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シート11の両面に、前記電極材料12を印刷し、更に、一方の面の前記電極材料12上に負極13に用いる酵素を印刷し、他方の面の前記電極材料12上に正極14に用いる酵素を印刷することで、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成することができる。
【0090】
また、その他の方法としては、図10に示す第2実施形態や図11に示す第3実施形態のように、電極材料12と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シート11を、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように折曲させて形成することができる。
【0091】
より具体的に説明すると、図10に示す第2実施形態は、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14がシート上部側に印刷された状態で、山折りすることにより、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成した例である(図3、図4、および図5に示す燃料電池の製造方法参照)。
【0092】
一方、図11に示す第3実施形態は、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を介して谷折りすることにより、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成した例である(図6に示す燃料電池の製造方法参照)。
【0093】
本技術に係る燃料電池1では、負極13で燃料の酸化反応により電子を放出し、該電子が正極14へ移動し、正極14で該電子と外部から供給される酸素を用いて還元反応が進行する、という一連の反応を進行させることにより電気エネルギーを発生させる。
【0094】
本技術に係る燃料電池1では、電極(負極13、正極14)の数は特に限定されない。必要な電力量に合わせて、電極(負極13、正極14)の数は自由に設計変更することが可能である。
【0095】
また、電極(負極13、正極14)を複数形成する場合、その接続方法も特に限定されず、必要な電力量に合わせて、直列接続および並列接続のいずれを採用することも可能である。なお、直列接続の具体例は、前述した図3、図4、および図6に示す燃料電池製造方法と同一であり、並列接続の具体例は、前述した図5に示す燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0096】
(5)燃料タンク15
本技術に係る燃料電池1には、必要に応じて、燃料タンク15を備えることができる。この燃料タンク15は、本技術に係る燃料電池1に必須の構成ではなく、市販の燃料を貯蔵することが可能な形態を呈するものを、使用時に取り付けて使用することも可能である。
【0097】
また、燃料タンク15は、本技術に係る燃料電池1に予め備えてもよいが、取り外し可能な形態に設計し、非使用時には取り外した状態にしておき、使用時に取り付けるように設計することも可能である。
【0098】
燃料タンク15は、燃料を貯蔵することが可能な形態であれば、自由な素材を用いて自由に設計することができるが、本技術では、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を折曲させることで、燃料タンク15を形成することが可能である。
【0099】
バイオ燃料電池では、発電部は設計次第で非常に薄く設計することができるのに対し、燃料タンクは、燃料の有無に関わらず、常に大きなスペースを取るため、バイオ燃料電池の大型化を招く一因になっていた。電池の小型化のために、薄い小さな燃料タンクを用いることも可能ではあるが、容量が小さな燃料タンクでは、短時間で燃料が無くなってしまうので、燃料の補給をこまめに行わなければならないという問題が発生していた。
【0100】
しかし、本技術に係る燃料電池1のように、燃料タンク15を、非導電性シート11’を折曲させて形成することで、電池の更なる小型化に貢献することができる。
【0101】
特に、燃料タンク15を、非使用時には折畳しておき、使用時に拡開するように設計すれば、非使用時はコンパクトに収納でき、使用時には、目的に応じた容量の燃料タンク15を、非導電性シート11’を拡開するだけで、形成することが可能である。このような構成にすることで、本技術に係る燃料電池1は、災害時、緊急時などの非常時において、非常に有用な電池として用いることができる。
【0102】
このように、燃料タンク15を、非導電性シート11’を折曲させて形成することで構成することができるのは、本技術に係る燃料電池1が、後述するように、身近で安全性の高い飲料などを燃料として用いることができるからである。例えば、一般的な従来の燃料電池は、燃料が気体であったり、揮発性の高いメタノールであったりするので、完全に密閉でき、かつ、危険な燃料が漏れださないような頑強に燃料タンクを設計する必要があった。
【0103】
本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15を形成するために用いる非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一のものを用いてもよいし、他の素材からなる非導電性シートを用いてもよい。
【0104】
また、本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15を形成するために用いる非導電性シート11’は、前記印刷が施されていない新たな非導電性シート11’を用いてもよいし、前記非導電性シート11の前記負極13や正極14の印刷が施されていない部分を用いてもよい。
【0105】
本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15において、非導電性シート11’の折曲方法は特に限定されず、燃料を貯蔵することが可能な形態に折曲できれば、自由に設計することができる。例えば、前述の図7に示すように箱状に形成したり、前述の図8に示すように袋状に形成したりして、燃料タンク15を構成することが可能である。
【0106】
(6)負極端子16、正極端子17
本技術に係る燃料電池1には、負極端子16および/または正極端子17を備えることができる。この負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池1では必須の構成ではなく、例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0107】
本技術に係る燃料電池1に用いることができる負極端子16および正極端子17は、公知のあらゆる素材を用いて構成することができる。その素材は、外部と電気的に接続可能な素材であれば特に限定されず、例えば、Pt、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Nb、Mo、In、Ir、Zn、Mn、Fe、Co、Ti、V、Cr、Pd、Re、Ta、W、Zr、Ge、Hfなどの金属、アルメル、真ちゅう、ジュラルミン、青銅、ニッケリン、白金ロジウム、ハイパーコ、パーマロイ、パーメンダー、洋銀、リン青銅などの合金類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材、HfB2、NbB、CrB2、B4Cなどのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物、VSi2、NbSi2、MoSi2、TaSi2などのケイ化物、及びこれらの合材等を用いることができる。
【0108】
(7)プロトン透過膜18
本技術に係る燃料電池1では、負極13と正極14との間を、プロトンが透過できるようにする必要がある。プロトンを透過させるために、負極13と正極14との間にプロトン透過膜18を配置することも可能であるが、本技術においては、前記非導電性シート11の液体透過性を利用して、水を媒体としてプロトンを透過させることができる。この際、pHを維持するために、緩衝物質を併用する。なお、この緩衝物質は、予め燃料Fに入れておく方法、燃料タンク15や後述する燃料拡散層19などに入れておく方法、前記非導電性シート11に浸透させておく方法などを用いて、負極13と正極14との間のプロトン伝導に用いることができる。
【0109】
本技術に係る燃料電池1に用いることができる緩衝物質は、本技術の効果を損なわない限り、あらゆる緩衝物質を自由に選択して用いることができる。例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)やリン酸二水素カリウム(KH2PO4)などが生成するリン酸二水素イオン(H2PO4−)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(略称トリス)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸(H2CO3)、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略称トリシン)、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略称ビシン)、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、イミダゾール誘導体(ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール−2−カルボン酸エチル、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、イミダゾール−1−イル−酢酸、2−アセチルベンズイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、N−(3−アミノプロピル) イミダゾール、5−アミノ−2−(トリフルオロメチル) ベンズイミダゾール、4−アザベンズイミダゾール、4−アザ−2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール)などのイミダゾール環を含む化合物などを挙げることができる。
【0110】
(8)燃料拡散層19
本技術に係る燃料電池1には、燃料拡散層19を備えることもできる。この燃料拡散層19は、本技術に係る燃料電池1には必須の構成ではないが、負極13に確実かつ正確に燃料を供給するためや、燃料供給の速度や量を調整可能にするためには、備えることが好ましい。
【0111】
燃料拡散層19は、燃料を拡散させて負極13に燃料を供給することができれば、その構成は特に限定されない。例えば、紙、布、流路、ポリマー、親水性コーティング材などの材料を用いて構成することが可能である。より具体的には、例えば、綿、麻、毛、絹、テンセル、キュプラ、レーヨン、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の布、親水化処理した炭素繊維材料、ゼラチン、コラーゲンゲル、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン等の親水性ポリマー、酸化チタン被膜等の親水性コーティング剤などの材料を用いて構成することが可能である。
【0112】
(9)気液分離膜20
本技術に係る燃料電池1には、気液分離膜20を備えることもできる。この気液分離膜20は、本技術に係る燃料電池1には必須の構成ではないが、正極14に空気中からの酸素を確実に供給し、正極14における還元反応をスムーズに進行させるためには、備えることが好ましい。
【0113】
気液分離膜20は、正極14に空気中からの酸素を供給することができれば、その構成は特に限定されない。例えば、、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの材料を用いて構成することが可能である。
【0114】
以上説明した本技術に係る燃料電池1に供給する燃料Fの種類は特に限定されず、燃料電池の燃料として公知のあらゆるものを供給することができる。例えば、蛋白質、脂肪酸、糖質、又はその他の化合物を利用することができる。この中でも特に糖質は、食品、その残渣、発酵産物、又はバイオマスなどからの入手の容易性、価格面、汎用性、安全性、及び扱いの容易性などの観点から、より好適である。
【0115】
また、人体が飲食又は接触可能な燃料を用いることも可能である。例えば、ジュース、スポーツ飲料、砂糖水、アルコール類などの飲料、化粧水などの化粧料等を用いることができる。即ち、日常生活において摂取する飲料や化粧料等を、本技術に係る燃料電池1の燃料として用いることが可能である。このように人体が飲食又は接触可能な燃料を用いれば、安全性のみでなく、任意の場所で、任意の燃料を補給することが可能となるといったメリットも生じる。
【0116】
本技術に係る燃料電池1は、前述したように、印刷技術を用いることだけで、電池を製造することができるため、電池の小型化や設計変更の容易化を実現することが可能である。特に、本技術に係る燃料電池1は、シート状の形態をしているため、例えば、図12に示すように、非使用時には巻回して保管し、目的の電力量や形状に合わせて使用時に必要な分だけ切断して用いることも可能である。
【0117】
また、これまでに市販されている電池は、全て、予め電池の大きさ、形態、性能などが決まっており、ユーザーが電池の大きさ、形態、性能などを目的に応じて設計変更することは不可能であった。しかし、本技術に係る燃料電池1は、家庭のインクジェットプリンタなどを用いても製造することができるため、例えば、パーソナルコンピューター上で、ユーザー自身が目的に応じたデザイン・設計を行い、所望の大きさ、形態、性能の燃料電池1を作製することが可能である。
【0118】
このように、本技術に係る燃料電池1は、ユーザー自身が自由に電池を作製できるというエンターテイメント性を付加することができる。また、実験教材や電池作製キットとすることで、教育現場への貢献も期待できる。
【0119】
更に、本技術に係る燃料電池1は、金属を用いることなく必須の構成を製造することができる。そのため、従来の電池に比べ、環境に与える負荷が小さく、使用後には、分別することなく、可燃物として廃棄することが可能である。
【0120】
<3.電子機器>
本技術に係る燃料電池1は、その製造方法および廃棄方法の簡便性、小型化などの設計変更の容易性などを利用して、公知のあらゆる電子機器に好適に用いることができる。
【0121】
該電子機器は、本技術に係る燃料電池を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能等は特に限定されず、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0122】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法。
(2)前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行う(1)記載の燃料電池製造方法。
(3)前記電極パターン作製工程で作製した電極パターン上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行う(1)または(2)に記載の燃料電池製造方法。
(4)前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、
前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極パターン上に所定の酸化還元酵素を印刷する(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(5)前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行う(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(6)前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする(5)記載の燃料電池製造方法。
(7)前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする(5)記載の燃料電池製造方法。
(8)前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行う(1)から(7)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(9)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池。
(10)前記負極および前記正極は、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷された(9)記載の燃料電池。
(11)前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、
前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成された(9)記載の燃料電池。
(12)前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りされた(11)記載の燃料電池。
(13)前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りされた(11)記載の燃料電池。
(14)前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させて燃料タンクが形成された(9)から(13)のいずれかに記載の燃料電池。
(15)前記燃料タンクは、非使用時には折畳されており、使用時に拡開される(14)記載の燃料電池。
(16)前記負極に固定された前記酵素は、酸化酵素を少なくとも含む(9)から(15)のいずれかに記載の燃料電池。
(17)前記負極に固定された前記酵素は、酸化型補酵素を少なくとも含む(9)から(16)のいずれかに記載の燃料電池。
(18)前記負極に固定された前記酵素は、補酵素酸化酵素を少なくとも含む(17)記載の燃料電池。
(19)前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上に電子伝達メディエーターが固定化された(9)から(18)のいずれかに記載の燃料電池。
(20)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、
印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本技術に係る燃料電池製造方法は、非常に簡便な方法であり、また、製造された燃料電池1は、簡便に廃棄することができ、また小型化などの設計変更も容易化である。そのため、あらゆる電子機器の動力源として実現することが可能である。
【0124】
また、日常生活において摂取する飲料や化粧料等を燃料として用いれば、任意の場所で必要に応じて燃料を供給することができる。従って、災害時などの電力供給がストップした場合の電力源として貢献できる。
【0125】
更に、燃料として人体が飲食又は接触可能な燃料を用いれば、燃料漏れ等を懸念せず、自由な構造に設計することができる。そのため、本技術に係る燃料電池を用いた電子機器には、エンターテイメント性を付加したり、視覚的美的効果を付加したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0126】
I 電極パターン作製工程
II 負極正極作製工程
III 撥水処理工程
IV 親水処理工程
V 裁断工程
VI 折曲工程
VII 燃料タンク形成工程
1 燃料電池
11、11’ 非導電性シート
12 電極材料
13 負極
14 正極
15 燃料タンク
16 負極端子
17 正極端子
18 プロトン透過膜
19 燃料拡散層
20 気液分離膜
F 燃料
【技術分野】
【0001】
本技術は、燃料電池の製造方法に関する。より詳しくは、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法、並びに該製造方法を用いて製造された燃料電池および該燃料電池を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、大きく分けて化学電池と物理電池に分類することができ、化学電池としては、マンガン乾電池、アルカリ乾電池、ニッケル系一次電池、リチウム電池、アルカリボタン電池、酸化銀電池、空気(亜鉛)電池などの一次電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛畜電池、アルカリ畜電池などの二次電池、バイオ燃料電池などの燃料電池が、物理電池としては、太陽電池等が存在する。
【0003】
以下、本技術に関わりのある化学電池について説明する。一次電池とは、内部に反応物質を有しており、反応物質の化学反応により電流を生じる電池であって、反応物質がすべて消費されるまで使用できる電池であり、例えば、乾電池等が挙げられる。二次電池とは、内部に反応物質を有しており、電流を発生させることで反応物質が減少するが、充電することによって逆反応が起こり、生成物質がもとの反応物質に戻ることで繰り返し使用することが可能な電池であり、例えば、自動車のバッテリーやリチウムイオン電池などが挙げられる。
【0004】
なかでも、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に触媒として酸化還元酵素を固定した燃料電池(以下、バイオ燃料電池という。)は、例えばグルコース及びエタノールのように通常の工業触媒では反応が困難な燃料から、効率よく電子を取り出すことができるため、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として注目されている。
【0005】
バイオ燃料電池の一例として、グルコースを燃料とするバイオ燃料電池の反応スキームを説明する。グルコースを燃料とするバイオ燃料電池においては、負極でグルコース(Glucose)の酸化反応が進行し、正極で大気中の酸素(O2)の還元反応が進行する。そして、負極では、グルコース(Glucose)、グルコース脱水素酵素(Glucose Dehydrogenase)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+;NicotinamideAdenine Dinucleotide)、ジアホラーゼ(Diaphorase)、メディエーター、電極(カーボン)の順に電子が受け渡される。
【0006】
ところで、このようなバイオ燃料電池は、一般的に、燃料を分解する酵素群、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とその還元体(NADH)、NADHデヒドロゲナーゼ、メディエーター、などを溶解させて各溶液とし、各溶液あるいは各溶液を一種以上混合した溶液を、電極材料上に適宜添加し、当該電極上で適宜混合し、その後乾燥、さらにこれらの添加混合乾燥を一回以上繰り返して電極を作製し(特許文献1参照)、作製した電極に、プロトン伝導体、負極に燃料を供給するための燃料供給層、気液分離膜などを積層させることで、製造される。この方法はとても煩雑な方法である。
【0007】
また、従来のバイオ燃料電池において、発電部は薄く小さく設計できるが、燃料タンクは目的に応じて所定の大きさが必要であった。そのため、燃料の有無に関係なく、燃料タンクのためのスペースが必要であり、バイオ燃料電池の小型化に歯止めをかける結果を招いていた。
【0008】
一方、二次電池や太陽電池においては、電極を薄くて均一でありつつも、平坦に製造できて、所望の形のパターンを経済的に製造できるという観点から、インクジェット印刷方式を用いた電極の製造方法が用いられている。
【0009】
例えば、特許文献2では、沸点が相対的に高くない溶媒を用いることにより、未乾燥液滴が高い表面張力により移動しつつ、ターゲット点から離れうるか、他の液滴とかたまりつつ移動する現象の発生を抑制し、一定の表面張力を有しつつも、精密なパターンを形成することが可能な二次電池に用いることが可能で、インクジェット印刷方式により電極を作製するための電極組成物に関する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献3では、シリコン基板の受光面に、電極を形成する部位に応じて、インクジェット法あるいはオフセット印刷によりドーパント濃度の高い拡散剤を塗布し、高濃度膜を形成し、次に、シリコン基板の受光面全体にスピンコートによって、先に塗布した拡散剤よりもドーパント濃度の低い拡散剤を塗布して、低濃度膜を高濃度膜に重ねて形成し、次に、熱処理を行って、ドーパントを拡散させ、高濃度エミッタ層および低濃度エミッタ層を形成するとともに、拡散剤に含まれる金属化合物により、高濃度エミッタ層の上に低屈折率の反射防止膜を形成し、低濃度エミッタ層の上に高屈折率の反射防止膜を形成し、次いで、高濃度エミッタ層の上に、受光面電極を形成することによって、安価に光電変換効率が高い選択エミッタ構造の太陽電池を製造する方法に関する技術が開示されている。
【0011】
これら二次電池や太陽電池の製造方法では、インクジェット方式などの印刷技術を用いることにより、薄くて平坦な電池を製造することができると行ったメリットがある。しかしながら、これら二次電池や太陽電池は、金属を含む電極活物質、電解液、用いる燃料などに有害物質(危険物質)や環境汚染物質を含む上に、希少元素も含むため、他の廃棄物と分別した上で、廃棄・回収などを行う必要がある。この問題は、二次電池や太陽電池に限らず、市販の一次電池や燃料電池にも同様の問題がある。
【0012】
なお、バイオ燃料電池においては、酵素の活性を維持することが重要視されているからか、当業者が印刷技術を用いるといった選択をすることはこれまで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−127957号公報
【特許文献2】特開2010−097946号公報
【特許文献3】特開2010−109201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、バイオ燃料電池は、その製造方法が非常に煩雑である。また、バイオ燃料電池の燃料タンクは、目的に応じて所定の大きさが必要である。そのため、市販されているバイオ燃料電池は、予め電池の大きさ、形状、性能などが決まっており、目的に合わせた小型化などの設計変更は、容易に行うことができなかった。
【0015】
また、前述のように、印刷技術を用いて二次電池や太陽電池をより簡便に作製する技術は既に存在する。しかし、この二次電池や太陽電池、更には既存の一次電池や燃料電池は、金属、有害物質(危険物質)、環境汚染物質、希少元素などを含むため、他の廃棄物と分別した上で、廃棄・回収などを行う必要があり、製造方法が簡便になった半面、廃棄方法は複雑なままであるといった問題がある。
【0016】
そこで、本技術では、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を製造する技術であって、その製造方法および廃棄方法が簡便であり、かつ、小型化などの設計変更も、容易に行うことが可能な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明者らは、前記課題を解決するために、バイオ燃料電池の製造方法およびその構造について鋭意研究を行った結果、従来の常識から発想を転換することで、バイオ燃料電池では常識的に行われていなかった印刷技術に注目し、新規な製造技術を確立することで、本技術を完成するに至った。
【0018】
即ち、本技術では、まず、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法を提供する。
本技術に係る燃料電池製造方法では、セパレーターの役割を果たす前記非導電性シートに、印刷技術を用いて各電極を形成している。そのため、印刷パターンなどの設計を変更するだけで、目的に応じた様々な形態の電池に構成することが可能である。また、本技術に係る燃料電池製造方法は、金属を全く使用しなくても燃料電池を製造することが可能な方法である。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行うことも可能である。
また、本技術に係る燃料電池製造方法では、前記電極パターン作製工程で作製した電極上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行うことも可能である。
本技術に係る燃料電池製造方法において、前記非導電性シートに印刷する電極の配置方法は特に限定されないが、例えば、前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極上に所定の酸化還元酵素を印刷する方法を採用することができる。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行うことも可能である。
この場合、該折曲工程で行う折曲方法は特に限定されないが、例えば、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする方法、あるいは、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする方法などを採用することができる。請求項17記載の燃料電池製造方法。
本技術に係る燃料電池製造方法では、前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行うことも可能である。
【0019】
本技術では、次に、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池を提供する。
本技術に係る燃料電池は、非導電性シート表面に、印刷技術を用いて電極を構成した電池であれば、全てを包含するが、その具体的な構成としては、以下のような例を挙げることができる。
例えば、前記負極および前記正極を、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷して構成することができる。
また、例えば、前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成することも可能である。
本技術に係る燃料電池を、前記非導電性シートを折曲して構成する場合、その折曲方法は目的に合わせて自由に設計することができるが、例えば、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りしたり、あるいは、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りしたりすることで、本技術に係る燃料電池を構成することができる。
本技術に係る燃料電池には、前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させた燃料タンクを備えることも可能である。
この燃料タンクは、例えば、非使用時には折畳しておき、使用時に拡開する構成に設計することも可能である。
本技術に係る燃料電池の前記負極に固定された前記酵素には、少なくとも酸化酵素を含ませることができる。
また、本技術に係る燃料電池の前記負極に固定された前記酵素には、少なくとも酸化型補酵素を含ませることもできる。
前記負極に固定された前記酵素に、酸化型補酵素を含ませる場合には、更に、補酵素酸化酵素を含ませることも可能である。
また、本技術に係る燃料電池の前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上には、前記酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定化することもできる。
【0020】
本技術に係る燃料電池は、あらゆる電子機器に好適に用いることが可能である。具体的に、本技術では、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本技術をバイオ燃料電池に用いることで、その製造方法および廃棄方法の簡便化、かつ、小型化などの設計変更の容易化を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本技術に係る燃料電池製造方法のフロー図である。
【図2】本技術に係る燃料電池製造方法の第1実施形態を模式的に示す断面模式図である。
【図3】本技術に係る燃料電池製造方法の第2実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図3中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図3中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図4】本技術に係る燃料電池製造方法の第3実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図4中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図4中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図5】本技術に係る燃料電池製造方法の第4実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図5中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図5中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。
【図6】本技術に係る燃料電池製造方法の第5実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図6中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図である。
【図7】本技術に係る燃料電池製造方法の燃料タンク形成工程VIIにおける、燃料タンク15の形成方法の一例を示す模式図である。
【図8】本技術に係る燃料電池製造方法の燃料タンク形成工程VIIにおける、燃料タンク15の形成方法の図7とは異なる一例を示す模式図である。
【図9】本技術に係る燃料電池1の第1実施形態を示す断面摸式図である。
【図10】本技術に係る燃料電池1の第2実施形態を示す断面摸式図である。
【図11】本技術に係る燃料電池1の第3実施形態を示す断面摸式図である。
【図12】本技術に係る燃料電池1の非使用時の保管方法の一例を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.燃料電池の製造方法
(1)電極パターン作製工程I
(2)負極正極作製工程II
(3)撥水処理工程III
(4)親水処理工程IV
(5)裁断工程V
(6)折曲工程VI
(7)燃料タンク形成工程VII
2.燃料電池1
(1)非導電性シート11
(2)電極材料12
(3)負極13
(4)正極14
(5)燃料タンク15
(6)負極端子16、正極端子17
(7)プロトン透過膜18
(8)燃料拡散層19
(9)気液分離膜20
3.電子機器
【0024】
<1.燃料電池製造方法>
図1は、本技術に係る燃料電池製造方法のフロー図である。本技術に係る燃料電池製造方法は、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、電極パターン作製工程I、負極正極作製工程IIを少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、撥水処理工程III、親水処理工程IV、折曲工程V、燃料タンク形成工程VIなどを行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0025】
(1)電極パターン作製工程I
電極パターン作製工程Iは、非導電性シート11の表面に、電極材料12を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する工程である。電極パターン作製工程Iで用いる非導電性シートは、曲折可能であるものを採用する。また、電極材料12は、少なくとも導電性粒子を含有する材料を用いる。
【0026】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる非導電性シート11は、導電性がなく、曲折可能であるシートであって、燃料などの液体透過性および気体透過性を有する例えば多孔質のシートであれば、あらゆる素材を自由に選択して用いることができる。例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、セルロース系繊維などからなる不織布やそれらをプラズマ処理やUVオゾン処理などで親水化処理した不織布、セロファンなどの半透膜などを採用することが可能である。
【0027】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる導電性粒子は、導電性があり、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる粒子を自由に選択して用いることができる。例えば、導電性活性炭、金、銀、白金、銅、亜鉛、チタン,アルミニウム,マグネシウム,パラジウム,イリジウム,クロム,およびマンガンなどの金属粒子などを採用することが可能である。この中でも本技術では特に、導電性活性炭を用いることが好ましい。導電性活性炭は水溶液中で化学的に安定であり、かつ安価であるからである。
【0028】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いる電極材料12は、前記導電性粒子を少なくとも含有していればよいが、前記非導電性シート11への印刷を確実に行うためにも、例えば、いわゆるバインダーとして機能する結着剤、導電助剤、有機溶媒などを含有させることも可能である。
【0029】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる結着剤は、バインダーとして機能し、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる結着剤を自由に選択して用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチルセルロース(EC)、カルボチルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、スチレンブタジエンラバー(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンラバー(EPDM)、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールなどを採用することが可能である。
【0030】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる導電助剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、前記導電性粒子の種類に応じて、あらゆる導電助剤を自由に選択して用いることができる。例えば、ケッチェンブラックやアセチレンブラックなどの導電性カーボンブラックや黒鉛などを採用することが可能である。この中でも本技術では特に、ケッチェンブラックを用いることが好ましい。ケッチェンブラックは、導電性が高いからである。
【0031】
本技術の電極パターン作製工程Iで用いることができる溶媒は、本技術の効果を損なうことがなければ、前記導電性粒子、前記結着剤、前記導電助剤の種類に応じて、あらゆる溶媒を自由に選択して用いることができる。例えば、テルピネオール、ドデカノール、2−フェノキシエタノール、イソプロパノール、ブタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、プロピレンカーボネート、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジオクチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ブチルカルビトール、ブチルカルビトール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、4−メチル−2−ペンタノン、水などを採用することが可能である。この中でも本技術においては特に、4−メチル−2−ペンタノン、水を用いることが好ましい。4−メチル−2−ペンタノン、水は、例えば、後述するように、電極成分と触媒成分(酵素)を混ぜて印刷する際においても、酵素が失活しにくいという性質を有するからである。また、4−メチル−2−ペンタノン、水は、沸点が低いため乾燥させやすいという利点もある。
【0032】
本技術の電極パターン作製工程Iにおいて、非導電性シート11の表面への電極材料の印刷パターンは、目的に応じて自由に設計することができる。例えば、図2の第1実施形態のように、前記電極材料が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シートの両面に、前記電極材料12を印刷することができる。この際、印刷方法は特に限定されず、片面ずつ印刷する方法であっても、一度に両面印刷を行う方法であっても、本技術においては可能である。
【0033】
このように、前記電極材料12が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シート11の両面に、前記電極材料12を印刷すれば、電極パターン作製工程Iに加えて後述する負極正極作製工程IIを行うだけで、本技術に係る燃料電池を製造することができる。即ち、印刷技術のみで、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成できるため、非常に簡単かつ短時間で本技術に係る燃料電池を製造することが可能である。
【0034】
その他の印刷パターンとしては、直列接続した電池を作製するには、例えば、後述する図3に示す第2実施形態、図4に示す第3実施形態、および図6に示す第5実施形態など、並列接続した電池を作製するには、例えば、後述する図5に示す第4実施形態などの印刷パターンを採用することができる。
【0035】
本技術の電極パターン作製工程Iにおける印刷方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0036】
(2)負極正極作製工程II
負極正極作製工程IIは、電極パターン作製工程Iで作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極13および正極14を作成する工程である。
【0037】
負極13を作製するために用いる酵素としては、本技術の効果を損なうことがなければ、用いる燃料の種類に応じて、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、燃料として糖類を含む燃料を用いる場合には、糖類を酸化分解する酸化酵素を用いることができる。酸化酵素の一例としては、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコネート5デヒドロゲナーゼ、グルコネート2デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシパルベートレダクターゼ、グリセレートデヒドロゲナーゼ、フォルメートデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。
【0038】
また、負極13には、上記の酸化酵素に加え、酸化型補酵素および補酵素酸化酵素を固定してもよい。酸化型補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamideadenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、ピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinolinequinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。補酵素酸化酵素としては、例えば、ジアフォラーゼが挙げられる。
【0039】
更に、負極13には、上記の酸化酵素及び酸化型補酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。上記で発生した電子の電極への受け渡しをスムーズにするためである。電子伝達メディエーターとしては、例えば、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、ビタミンK3、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2、3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、キノン骨格を有する化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物などなどが挙げられる。
【0040】
正極14を作製するために用いる酵素としては、酸素を反応基質とするオキシダーゼ活性を有する酵素であって、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等を用いることができる。
【0041】
また、正極14には、上記の酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。負極13から送り込まれる電子の受け取りをスムーズにするためである。正極14に固定し得る電子伝達メディエーターの種類も特に限定されず、必要に応じて自由に選択することができる。例えば、ABTS(2,2'-azinobis(3-ethylbenzoline-6-sulfonate))、K3[Fe(CN)6]等を用いることが可能である。
【0042】
本技術の負極正極作製工程IIにおける印刷方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0043】
本技術の負極正極作製工程IIで用いる酵素は、耐熱性を有する酵素を用いることが好ましい。耐熱性を有する酵素を用いることで、印刷工程における酵素の失活を抑制することができ、低温ではなく常温での印刷が可能となるからである。
【0044】
また、酵素活性を維持することが可能な例えば、リン酸緩衝液などの緩衝液を選択することが好ましい。酵素活性を維持することが可能な緩衝液を選択することで、印刷工程における酵素の失活を抑制することができ、低温ではなく常温での印刷が可能となるからである。
【0045】
なお、負極正極作製工程IIは、例えば、電極成分と触媒成分(酵素)を混ぜて印刷することにより、前記電極パターン作製工程Iと同時に行うことも可能である。
【0046】
(3)撥水処理工程III
撥水処理工程IIIは、前記負極13および前記正極14を形成しない部分に、撥水処理を施す工程である。この撥水処理工程IIIは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、確実に発電を行うために、行うことが好ましい。
【0047】
撥水処理工程IIIでは、前記非導電性シート11の前記電極パターンを形成していない部分に、撥水処理を行う。このように、前記電極パターン作製工程Iにおいて前記電極パターンを形成していない部分を撥水処理することで、前記正極14へ誤って燃料が浸透することや漏電を防止することができ、その結果、製造する燃料電池の高性能化に貢献することができる。
【0048】
また、撥水処理工程IIIでは、前記電極パターン作製工程Iにおいて親水性の前記電極素材12を用いた場合に、前記電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成しない部分にも、撥水処理を行うことができる。このように、前記電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成しない部分を撥水処理することで、漏電などを防止することができ、その結果、製造する燃料電池の高性能化に貢献することができる。
【0049】
撥水処理工程IIIで行う撥水処理方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことが可能である。例えば、撥水剤を塗布する方法が挙げられる。
【0050】
本技術に用いることができる撥水剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の撥水剤を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、シリコーンオイル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素系高分子を有機溶剤に溶かしたフッ素コーティング剤などを用いることが可能である。
【0051】
撥水剤の塗布方法も特に限定されず、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIと同様に、印刷技術を用いて撥水剤を塗布する方法などを挙げることができる。この場合の印刷方法も特に限定されず、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0052】
撥水処理工程IIIを行うタイミングは、前記電極パターン作製工程Iを行った後であれば特に限定されない。前記電極パターン作製工程Iの直後に行うことも可能であるし、前記負極正極作製工程IIを経た後に行うことも可能である。また、後述する親水処理工程IVを行った後に行うことも可能である。
【0053】
(4)親水処理工程IV
親水処理工程IVは、前記電極パターン作製工程Iで作製した電極パターン上の前記負極13および前記正極14を形成する部分に、親水処理を施す工程である。この親水処理工程IVは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、前記負極正極作製工程IIにおいて、負極13や正極14を構成する酵素を確実に固定化するために、行うことが好ましい。この工程は、前記電極パターン作製工程Iで用いる電極材料12が疎水性である場合には行うことが好ましい。
【0054】
親水処理工程IVで行う親水処理方法は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、親水化剤を塗布する方法、プラズマ処理、UVオゾン処理などが挙げられる。
【0055】
親水化剤を用いる場合、本技術に用いることができる親水化剤は、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の親水化剤を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、メタノールなどを用いることが可能である。
【0056】
親水化剤の塗布方法も特に限定されず、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の方法を自由に選択して行うことができる。例えば、前記電極パターン作製工程I、前記負極正極作製工程II、前記疎水処理工程IIIと同様に、印刷技術を用いて親水化剤を塗布する方法などを挙げることができる。この場合の印刷方法も特に限定されず、既存の印刷方法を自由に選択して行うことができる。例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などを採用することができる。
【0057】
親水処理工程IVは、前記電極パターン作製工程Iを行った後であって、前記負極正極作製工程IIを行う前に行う必要があるが、前記疎水処理工程IIIとの順番は自由である。前記疎水処理工程IIIを行った後に親水処理工程IVを行ってもよいし、前記疎水処理工程IIIを行う前に親水処理工程IVを行うこともできる。
【0058】
(5)裁断工程V
裁断工程Vは、前記非導電性シート11を必要な大きさや形状に切断する工程である。この裁断工程Vは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、例えば、後述する図4に示す第3実施形態、図5に示す第4実施形態、および図6に示す第5実施形態などのように、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIにおいて、一度に複数の電極を印刷する場合などに行う工程である。
【0059】
裁断工程Vは、後述する折曲工程VIを行う前であれば、いずれのタイミングで行うことも可能である。例えば、最初に前記非導電性シート11を所望の大きさや形状に裁断した後に、各工程を行うことも可能であるが、製造方法の効率化を考慮すると、前記のように、前記電極パターン作製工程Iや前記負極正極作製工程IIにおいて、一度に複数の電極を印刷した後に、裁断工程Vを行うことが好ましい。
【0060】
(6)折曲工程VI
折曲工程VIは、前記電極パターン作製工程Iおよび前記負極正極作製工程IIを経て前記負極13と前記正極14が表面に作成された前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように折曲させる工程である。
【0061】
この折曲工程VIは、本技術に係る燃料電池製造方法において必須の工程ではないが、例えば、前述した図2に示す第1実施形態のように、非導電性シート11の両面に各電極を形成する場合を除き、図3に示す第2実施形態、図4に示す第3実施形態、図5に示す第4実施形態、および図6に示す第5実施形態などのように、非導電性シート11の片面に各電極を形成する場合には、この折曲工程VIを行うことで、前記負極13と正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させることができる。
以下、折曲工程VIの具体例を説明する。
【0062】
図3は、本技術に係る燃料電池製造方法の第2実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図3中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図3中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第2実施形態は、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0063】
第2実施形態では、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0064】
なお、第2実施形態では、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではなく、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の端子を接続することが可能である。
【0065】
図4は、本技術に係る燃料電池製造方法の第3実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図4中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図4中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第3実施形態は、前記第2実施形態と同様に、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態であるが、裁断工程Vを行っていることが第2実施形態と異なる点である。
【0066】
第3実施形態では、前記第2実施形態と同様に、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0067】
なお、第3実施形態では、前記第2実施形態と同様に、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0068】
また、第3実施形態では、折曲工程VIを行った後に、一方の電極の負極13と他方の電極の正極14とを、導電性材料12’を用いて接続しているが、この導電性材料12’は本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、前記第2実施形態のように、電極パターン作製工程Iを行う際、一方の電極の負極13と他方の電極の正極14とが接続されるように、前記電極材料12の印刷パターンを工夫したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な導電性材料12’を接続したりして用いることも可能である。
【0069】
図5は、本技術に係る燃料電池製造方法の第4実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図5中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図、図5中(B)は製造した燃料電池を正極14から視た平面模式図である。この第4実施形態は、負極13および正極14からなる電極が、2つ並列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0070】
第4実施形態では、前記第2実施形態および第3実施形態と同様に、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、山折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。
【0071】
なお、第4実施形態では、折曲工程VIを行った後に、負極端子16と正極端子17を、並列接続した前記電極パターンに接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではなく、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0072】
図6は、本技術に係る燃料電池製造方法の第5実施形態を模式的に示す上方視平面模式図であり、図6中(A)は製造した燃料電池を負極13側から視た平面模式図である。この第5実施形態は、前記第2実施形態および第3実施形態と同様に、負極13および正極14からなる電極が、2つ直列接続した燃料電池を製造する実施形態である。
【0073】
第5実施形態では、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を介して谷折りすることにより、前記負極13と前記正極14とを前記非導電性シート11を介して対向させている。この際、一方の電極の負極13に接続する電極パターンaと、他方の電極の正極14に接続する電極パターンbとが接触するように、前記非導電性シート11を折曲することで、負極13および正極14からなる電極が、二つ直列接続した燃料電池を製造することができる。
【0074】
第5実施形態において、前記負極13と前記正極14との間に挟み込む非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一であってもよいし、他の素材からなる非導電性シートであってもよい。
【0075】
なお、第5実施形態では、折曲工程VIを行う際に、一方の電極の負極13に負極端子16を、他方の電極の正極14に正極端子17を、それぞれ接続しているが、負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池に必須ではない。例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0076】
(7)燃料タンク形成工程VII
燃料タンク形成工程VIIは、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を折曲して燃料タンクを形成する工程である。この燃料タンク形成工程VIIは、本技術に係る燃料電池製造方法では必須の工程ではないが、製造する燃料電池の更なる小型化を達成するためには、行うことが好ましい。
【0077】
燃料タンク形成工程VIIにおいて、用いる非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一のものを用いてもよいし、他の素材からなる非導電性シートを用いてもよい。
【0078】
また、燃料タンク形成工程VIIにおいて、用いる非導電性シート11’は、前記印刷が施されていない新たな非導電性シート11’を用いてもよいし、前記電極パターン作製工程Iおよび前記負極正極作製工程IIで印刷が施されない部分を用いてもよい。
【0079】
燃料タンク形成工程VIIにおいて、非導電性シート11’の折曲方法は特に限定されず、燃料を貯蔵することが可能な形態に折曲できれば、自由に設計することができる。例えば、図7に示すように箱状に形成したり、図8に示すように袋状に形成したりして、燃料タンク15を構成することが可能である。
【0080】
<2.燃料電池>
図1は、本技術に係る燃料電池1の第1実施形態を示す断面摸式図である。本技術に係る燃料電池1は、負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、少なくとも、非導電性シート11と、電極材料12と、負極13と、正極14と、から構成する。また、本技術に係る燃料電池1には、必要に応じて、燃料タンク15、負極端子16、正極端子17、プロトン透過膜18、燃料拡散層19、気液分離膜20を更に備えることも可能である。
【0081】
本技術に係る燃料電池1は、前記非導電性シート11の表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料12と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより前記負極13と前期正極14とを形成していることを特徴とする。なお、各電極のパターンの構成方法、印刷方法などは、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。以下、各構成について、それぞれの詳細に説明する。
【0082】
(1)非導電性シート11
本技術に係る燃料電池1において、非導電性シート11は、負極13と正極14を電気的に分離するセパレーターとして機能する。本技術に係る燃料電池1に用いる非導電性シート11は、導電性がなく、曲折可能であるシートであって、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる素材を自由に選択して用いることができる。非導電性シート11の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0083】
(2)電極材料12
本技術に係る燃料電池1に用いる電極材料12は、少なくとも導電性粒子を含有する。本技術に係る燃料電池1に用いる導電性粒子は、導電性があり、本技術の効果を損なうことがなければ、あらゆる粒子を自由に選択して用いることができる。導電性粒子の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0084】
本技術に係る燃料電池1に用いる電極材料12は、前記導電性粒子を少なくとも含有していればよいが、前記非導電性シート11への印刷を確実に行うためにも、例えば、いわゆるバインダーとして機能する結着剤、導電助剤、有機溶媒などを含有させることも可能である。結着剤、導電助剤、有機溶媒の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0085】
(3)負極13
本技術に係る燃料電池1では、前記非導電性シート11表面に印刷された電極材料12上に、所定の酵素を用いて印刷を施すことにより、負極13が構成されている。負極13を作製するために用いる酵素としては、本技術の効果を損なうことがなければ、用いる燃料の種類に応じて、既存の酸化酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。酸化酵素の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0086】
本技術に係る燃料電池1の負極13には、前記酸化酵素の他に、必要に応じて、酸化型補酵素、補酵素酸化酵素、電子伝達メディエーターなども固定化することができる。酸化型補酵素、補酵素酸化酵素、電子伝達メディエーターなどの具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0087】
(4)正極14
本技術に係る燃料電池1では、前記非導電性シート11表面に印刷された電極材料12上に、所定の酵素を用いて印刷を施すことにより、正極14が構成されている。正極14を作製するために用いる酵素としては、酸素を反応基質とするオキシダーゼ活性を有する酵素であって、本技術の効果を損なうことがなければ、既存の酵素を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。酵素の具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0088】
本技術に係る燃料電池1の正極14には、前記酵素の他に、必要に応じて、電子伝達メディエーターなども固定化することができる。電子伝達メディエーターなどの具体例は、前述した燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0089】
本技術に係る燃料電池1では、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成する。その形成方法は、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成できれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図9に示す第1実施形態のように、前記電極材料12が前記非導電性シート11を介して対向するように、前記非導電性シート11の両面に、前記電極材料12を印刷し、更に、一方の面の前記電極材料12上に負極13に用いる酵素を印刷し、他方の面の前記電極材料12上に正極14に用いる酵素を印刷することで、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成することができる。
【0090】
また、その他の方法としては、図10に示す第2実施形態や図11に示す第3実施形態のように、電極材料12と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シート11を、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように折曲させて形成することができる。
【0091】
より具体的に説明すると、図10に示す第2実施形態は、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14がシート上部側に印刷された状態で、山折りすることにより、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成した例である(図3、図4、および図5に示す燃料電池の製造方法参照)。
【0092】
一方、図11に示す第3実施形態は、前記非導電性シート11を、前記負極13と前記正極14がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を介して谷折りすることにより、負極13と正極14とが前記非導電性シート11を介して対向するように形成した例である(図6に示す燃料電池の製造方法参照)。
【0093】
本技術に係る燃料電池1では、負極13で燃料の酸化反応により電子を放出し、該電子が正極14へ移動し、正極14で該電子と外部から供給される酸素を用いて還元反応が進行する、という一連の反応を進行させることにより電気エネルギーを発生させる。
【0094】
本技術に係る燃料電池1では、電極(負極13、正極14)の数は特に限定されない。必要な電力量に合わせて、電極(負極13、正極14)の数は自由に設計変更することが可能である。
【0095】
また、電極(負極13、正極14)を複数形成する場合、その接続方法も特に限定されず、必要な電力量に合わせて、直列接続および並列接続のいずれを採用することも可能である。なお、直列接続の具体例は、前述した図3、図4、および図6に示す燃料電池製造方法と同一であり、並列接続の具体例は、前述した図5に示す燃料電池製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0096】
(5)燃料タンク15
本技術に係る燃料電池1には、必要に応じて、燃料タンク15を備えることができる。この燃料タンク15は、本技術に係る燃料電池1に必須の構成ではなく、市販の燃料を貯蔵することが可能な形態を呈するものを、使用時に取り付けて使用することも可能である。
【0097】
また、燃料タンク15は、本技術に係る燃料電池1に予め備えてもよいが、取り外し可能な形態に設計し、非使用時には取り外した状態にしておき、使用時に取り付けるように設計することも可能である。
【0098】
燃料タンク15は、燃料を貯蔵することが可能な形態であれば、自由な素材を用いて自由に設計することができるが、本技術では、前記印刷が施されていない非導電性シート11’を折曲させることで、燃料タンク15を形成することが可能である。
【0099】
バイオ燃料電池では、発電部は設計次第で非常に薄く設計することができるのに対し、燃料タンクは、燃料の有無に関わらず、常に大きなスペースを取るため、バイオ燃料電池の大型化を招く一因になっていた。電池の小型化のために、薄い小さな燃料タンクを用いることも可能ではあるが、容量が小さな燃料タンクでは、短時間で燃料が無くなってしまうので、燃料の補給をこまめに行わなければならないという問題が発生していた。
【0100】
しかし、本技術に係る燃料電池1のように、燃料タンク15を、非導電性シート11’を折曲させて形成することで、電池の更なる小型化に貢献することができる。
【0101】
特に、燃料タンク15を、非使用時には折畳しておき、使用時に拡開するように設計すれば、非使用時はコンパクトに収納でき、使用時には、目的に応じた容量の燃料タンク15を、非導電性シート11’を拡開するだけで、形成することが可能である。このような構成にすることで、本技術に係る燃料電池1は、災害時、緊急時などの非常時において、非常に有用な電池として用いることができる。
【0102】
このように、燃料タンク15を、非導電性シート11’を折曲させて形成することで構成することができるのは、本技術に係る燃料電池1が、後述するように、身近で安全性の高い飲料などを燃料として用いることができるからである。例えば、一般的な従来の燃料電池は、燃料が気体であったり、揮発性の高いメタノールであったりするので、完全に密閉でき、かつ、危険な燃料が漏れださないような頑強に燃料タンクを設計する必要があった。
【0103】
本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15を形成するために用いる非導電性シート11’は、前記負極13と前記正極14を印刷した前記非導電性シート11と同一のものを用いてもよいし、他の素材からなる非導電性シートを用いてもよい。
【0104】
また、本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15を形成するために用いる非導電性シート11’は、前記印刷が施されていない新たな非導電性シート11’を用いてもよいし、前記非導電性シート11の前記負極13や正極14の印刷が施されていない部分を用いてもよい。
【0105】
本技術に係る燃料電池1の燃料タンク15において、非導電性シート11’の折曲方法は特に限定されず、燃料を貯蔵することが可能な形態に折曲できれば、自由に設計することができる。例えば、前述の図7に示すように箱状に形成したり、前述の図8に示すように袋状に形成したりして、燃料タンク15を構成することが可能である。
【0106】
(6)負極端子16、正極端子17
本技術に係る燃料電池1には、負極端子16および/または正極端子17を備えることができる。この負極端子16および正極端子17は、本技術に係る燃料電池1では必須の構成ではなく、例えば、用いる電子機器からの各端子を接続したり、燃料電池を使用する際に市販の取り外し可能な端子を接続したりして用いることも可能である。
【0107】
本技術に係る燃料電池1に用いることができる負極端子16および正極端子17は、公知のあらゆる素材を用いて構成することができる。その素材は、外部と電気的に接続可能な素材であれば特に限定されず、例えば、Pt、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Nb、Mo、In、Ir、Zn、Mn、Fe、Co、Ti、V、Cr、Pd、Re、Ta、W、Zr、Ge、Hfなどの金属、アルメル、真ちゅう、ジュラルミン、青銅、ニッケリン、白金ロジウム、ハイパーコ、パーマロイ、パーメンダー、洋銀、リン青銅などの合金類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材、HfB2、NbB、CrB2、B4Cなどのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物、VSi2、NbSi2、MoSi2、TaSi2などのケイ化物、及びこれらの合材等を用いることができる。
【0108】
(7)プロトン透過膜18
本技術に係る燃料電池1では、負極13と正極14との間を、プロトンが透過できるようにする必要がある。プロトンを透過させるために、負極13と正極14との間にプロトン透過膜18を配置することも可能であるが、本技術においては、前記非導電性シート11の液体透過性を利用して、水を媒体としてプロトンを透過させることができる。この際、pHを維持するために、緩衝物質を併用する。なお、この緩衝物質は、予め燃料Fに入れておく方法、燃料タンク15や後述する燃料拡散層19などに入れておく方法、前記非導電性シート11に浸透させておく方法などを用いて、負極13と正極14との間のプロトン伝導に用いることができる。
【0109】
本技術に係る燃料電池1に用いることができる緩衝物質は、本技術の効果を損なわない限り、あらゆる緩衝物質を自由に選択して用いることができる。例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)やリン酸二水素カリウム(KH2PO4)などが生成するリン酸二水素イオン(H2PO4−)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(略称トリス)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸(H2CO3)、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略称トリシン)、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略称ビシン)、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、イミダゾール誘導体(ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール−2−カルボン酸エチル、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、イミダゾール−1−イル−酢酸、2−アセチルベンズイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、N−(3−アミノプロピル) イミダゾール、5−アミノ−2−(トリフルオロメチル) ベンズイミダゾール、4−アザベンズイミダゾール、4−アザ−2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール)などのイミダゾール環を含む化合物などを挙げることができる。
【0110】
(8)燃料拡散層19
本技術に係る燃料電池1には、燃料拡散層19を備えることもできる。この燃料拡散層19は、本技術に係る燃料電池1には必須の構成ではないが、負極13に確実かつ正確に燃料を供給するためや、燃料供給の速度や量を調整可能にするためには、備えることが好ましい。
【0111】
燃料拡散層19は、燃料を拡散させて負極13に燃料を供給することができれば、その構成は特に限定されない。例えば、紙、布、流路、ポリマー、親水性コーティング材などの材料を用いて構成することが可能である。より具体的には、例えば、綿、麻、毛、絹、テンセル、キュプラ、レーヨン、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の布、親水化処理した炭素繊維材料、ゼラチン、コラーゲンゲル、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン等の親水性ポリマー、酸化チタン被膜等の親水性コーティング剤などの材料を用いて構成することが可能である。
【0112】
(9)気液分離膜20
本技術に係る燃料電池1には、気液分離膜20を備えることもできる。この気液分離膜20は、本技術に係る燃料電池1には必須の構成ではないが、正極14に空気中からの酸素を確実に供給し、正極14における還元反応をスムーズに進行させるためには、備えることが好ましい。
【0113】
気液分離膜20は、正極14に空気中からの酸素を供給することができれば、その構成は特に限定されない。例えば、、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの材料を用いて構成することが可能である。
【0114】
以上説明した本技術に係る燃料電池1に供給する燃料Fの種類は特に限定されず、燃料電池の燃料として公知のあらゆるものを供給することができる。例えば、蛋白質、脂肪酸、糖質、又はその他の化合物を利用することができる。この中でも特に糖質は、食品、その残渣、発酵産物、又はバイオマスなどからの入手の容易性、価格面、汎用性、安全性、及び扱いの容易性などの観点から、より好適である。
【0115】
また、人体が飲食又は接触可能な燃料を用いることも可能である。例えば、ジュース、スポーツ飲料、砂糖水、アルコール類などの飲料、化粧水などの化粧料等を用いることができる。即ち、日常生活において摂取する飲料や化粧料等を、本技術に係る燃料電池1の燃料として用いることが可能である。このように人体が飲食又は接触可能な燃料を用いれば、安全性のみでなく、任意の場所で、任意の燃料を補給することが可能となるといったメリットも生じる。
【0116】
本技術に係る燃料電池1は、前述したように、印刷技術を用いることだけで、電池を製造することができるため、電池の小型化や設計変更の容易化を実現することが可能である。特に、本技術に係る燃料電池1は、シート状の形態をしているため、例えば、図12に示すように、非使用時には巻回して保管し、目的の電力量や形状に合わせて使用時に必要な分だけ切断して用いることも可能である。
【0117】
また、これまでに市販されている電池は、全て、予め電池の大きさ、形態、性能などが決まっており、ユーザーが電池の大きさ、形態、性能などを目的に応じて設計変更することは不可能であった。しかし、本技術に係る燃料電池1は、家庭のインクジェットプリンタなどを用いても製造することができるため、例えば、パーソナルコンピューター上で、ユーザー自身が目的に応じたデザイン・設計を行い、所望の大きさ、形態、性能の燃料電池1を作製することが可能である。
【0118】
このように、本技術に係る燃料電池1は、ユーザー自身が自由に電池を作製できるというエンターテイメント性を付加することができる。また、実験教材や電池作製キットとすることで、教育現場への貢献も期待できる。
【0119】
更に、本技術に係る燃料電池1は、金属を用いることなく必須の構成を製造することができる。そのため、従来の電池に比べ、環境に与える負荷が小さく、使用後には、分別することなく、可燃物として廃棄することが可能である。
【0120】
<3.電子機器>
本技術に係る燃料電池1は、その製造方法および廃棄方法の簡便性、小型化などの設計変更の容易性などを利用して、公知のあらゆる電子機器に好適に用いることができる。
【0121】
該電子機器は、本技術に係る燃料電池を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能等は特に限定されず、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0122】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法。
(2)前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行う(1)記載の燃料電池製造方法。
(3)前記電極パターン作製工程で作製した電極パターン上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行う(1)または(2)に記載の燃料電池製造方法。
(4)前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、
前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極パターン上に所定の酸化還元酵素を印刷する(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(5)前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行う(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(6)前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする(5)記載の燃料電池製造方法。
(7)前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする(5)記載の燃料電池製造方法。
(8)前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行う(1)から(7)のいずれかに記載の燃料電池製造方法。
(9)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池。
(10)前記負極および前記正極は、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷された(9)記載の燃料電池。
(11)前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、
前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成された(9)記載の燃料電池。
(12)前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りされた(11)記載の燃料電池。
(13)前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りされた(11)記載の燃料電池。
(14)前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させて燃料タンクが形成された(9)から(13)のいずれかに記載の燃料電池。
(15)前記燃料タンクは、非使用時には折畳されており、使用時に拡開される(14)記載の燃料電池。
(16)前記負極に固定された前記酵素は、酸化酵素を少なくとも含む(9)から(15)のいずれかに記載の燃料電池。
(17)前記負極に固定された前記酵素は、酸化型補酵素を少なくとも含む(9)から(16)のいずれかに記載の燃料電池。
(18)前記負極に固定された前記酵素は、補酵素酸化酵素を少なくとも含む(17)記載の燃料電池。
(19)前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上に電子伝達メディエーターが固定化された(9)から(18)のいずれかに記載の燃料電池。
(20)負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、
印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本技術に係る燃料電池製造方法は、非常に簡便な方法であり、また、製造された燃料電池1は、簡便に廃棄することができ、また小型化などの設計変更も容易化である。そのため、あらゆる電子機器の動力源として実現することが可能である。
【0124】
また、日常生活において摂取する飲料や化粧料等を燃料として用いれば、任意の場所で必要に応じて燃料を供給することができる。従って、災害時などの電力供給がストップした場合の電力源として貢献できる。
【0125】
更に、燃料として人体が飲食又は接触可能な燃料を用いれば、燃料漏れ等を懸念せず、自由な構造に設計することができる。そのため、本技術に係る燃料電池を用いた電子機器には、エンターテイメント性を付加したり、視覚的美的効果を付加したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0126】
I 電極パターン作製工程
II 負極正極作製工程
III 撥水処理工程
IV 親水処理工程
V 裁断工程
VI 折曲工程
VII 燃料タンク形成工程
1 燃料電池
11、11’ 非導電性シート
12 電極材料
13 負極
14 正極
15 燃料タンク
16 負極端子
17 正極端子
18 プロトン透過膜
19 燃料拡散層
20 気液分離膜
F 燃料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法。
【請求項2】
前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項3】
前記電極パターン作製工程で作製した電極パターン上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項4】
前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、
前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極パターン上に所定の酸化還元酵素を印刷する請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項5】
前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項6】
前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする請求項5記載の燃料電池製造方法。
【請求項7】
前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする請求項5記載の燃料電池製造方法。
【請求項8】
前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項9】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池。
【請求項10】
前記負極および前記正極は、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷された請求項9記載の燃料電池。
【請求項11】
前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、
前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成された請求項9記載の燃料電池。
【請求項12】
前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りされた請求項11記載の燃料電池。
【請求項13】
前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りされた請求項11記載の燃料電池。
【請求項14】
前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させて燃料タンクが形成された請求項9記載の燃料電池。
【請求項15】
前記燃料タンクは、非使用時には折畳されており、使用時に拡開される請求項14記載の燃料電池。
【請求項16】
前記負極に固定された前記酵素は、酸化酵素を少なくとも含む請求項9記載の燃料電池。
【請求項17】
前記負極に固定された前記酵素は、酸化型補酵素を少なくとも含む請求項9記載の燃料電池。
【請求項18】
前記負極に固定された前記酵素は、補酵素酸化酵素を少なくとも含む請求項17記載の燃料電池。
【請求項19】
前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上に電子伝達メディエーターが固定化された請求項9記載の燃料電池。
【請求項20】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、
印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器。
【請求項1】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池の製造方法であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、導電性粒子を少なくとも含有する電極材料を用いて印刷を施すことにより電極パターンを作製する電極パターン作製工程と、
該電極パターン作製工程で作製した電極パターン上に、所定の酸化還元酵素を用いて印刷を施すことにより、負極および正極を作成する負極正極作製工程と、
を少なくとも行う燃料電池製造方法。
【請求項2】
前記負極および前記正極を形成しない部分に、撥水処理を施す撥水処理工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項3】
前記電極パターン作製工程で作製した電極パターン上の前記負極および前記正極を形成する部分に、親水処理を施す親水処理工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項4】
前記電極パターン作製工程では、前記非導電性シートの両面に、電極材料を印刷し、
前記負極正極作製工程では、前記負極と正極とが前記非導電性シートを介して対向するように、前記電極パターン上に所定の酸化還元酵素を印刷する請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項5】
前記電極パターン作製工程および前記負極正極作製工程を経て前記負極と前記正極が表面に作成された前記非導電性シートを、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させる折曲工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項6】
前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、山折りする請求項5記載の燃料電池製造方法。
【請求項7】
前記折曲工程では、前記非導電性シートを、前記負極と前記正極をシート上部側に印刷した状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りする請求項5記載の燃料電池製造方法。
【請求項8】
前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲して燃料タンクを形成する燃料タンク形成工程を更に行う請求項1記載の燃料電池製造方法。
【請求項9】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、印刷を施すことより、前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように形成された燃料電池。
【請求項10】
前記負極および前記正極は、前記非導電性シートを介して対向するように、該非導電性シート両面に印刷された請求項9記載の燃料電池。
【請求項11】
前記電極材料と前記酸化還元酵素が少なくとも表面に印刷された前記非導電性シートを、
前記負極と前記正極とが前記非導電性シートを介して対向するように折曲させて形成された請求項9記載の燃料電池。
【請求項12】
前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、山折りされた請求項11記載の燃料電池。
【請求項13】
前記非導電性シートは、前記負極と前記正極がシート上部側に印刷された状態で、前記印刷が施されていない非導電性シートを介して谷折りされた請求項11記載の燃料電池。
【請求項14】
前記印刷が施されていない非導電性シートを折曲させて燃料タンクが形成された請求項9記載の燃料電池。
【請求項15】
前記燃料タンクは、非使用時には折畳されており、使用時に拡開される請求項14記載の燃料電池。
【請求項16】
前記負極に固定された前記酵素は、酸化酵素を少なくとも含む請求項9記載の燃料電池。
【請求項17】
前記負極に固定された前記酵素は、酸化型補酵素を少なくとも含む請求項9記載の燃料電池。
【請求項18】
前記負極に固定された前記酵素は、補酵素酸化酵素を少なくとも含む請求項17記載の燃料電池。
【請求項19】
前記負極又は前記正極の少なくとも一方の電極上に電子伝達メディエーターが固定化された請求項9記載の燃料電池。
【請求項20】
負極又は正極の少なくとも一方の電極上に、触媒として酸化還元酵素が固定化された燃料電池を用いる電子機器であって、
曲折可能な非導電性シートの表面に、
導電性粒子を少なくとも含有する電極材料と、前記酸化還元酵素と、を少なくとも用いて、
印刷を施すことより前記電極が形成された燃料電池が用いられた電子機器。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−98077(P2013−98077A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241196(P2011−241196)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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