説明

燃料電池を搭載した移動体

【課題】燃料電池を搭載した移動体において、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池の冷却を効果的に行う。
【解決手段】車両100は、外板110におけるラジエーター20の放熱部と対向する部位に、ラジエーター20の放熱部に外気を導入するための開口を形成するスライド部材120を備える。車両100が停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときには、スライド部材120は、開状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を搭載した移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を搭載した車両が注目されている。燃料電池は発電によって発熱するため、この車両には、発電時の燃料電池の温度を適正な範囲内に維持するために、ラジエーターも搭載される。そして、従来、燃料電池を搭載した車両において、車両が走行するときの走行風を利用して、ラジエーターからの放熱を効果的に行う技術が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−044551号公報
【特許文献2】特開2008−207569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、車両に搭載された燃料電池を、例えば、停電時の家庭用電源として利用する等、車両に搭載された燃料電池によって発電された電力を、車両の外部に設置された他の装置に供給することが求められている。しかし、車両に搭載された燃料電池によって発電された電力を、車両の外部に設置された他の装置に供給するときには、車両は停止しているため、走行風を得ることができない。このため、ラジエーターからの放熱を効果的に行うことができず、ラジエーターの冷却効率が低下し、燃料電池の冷却を効果的に行うことができなくなるおそれがある。このような課題は、燃料電池を搭載した車両に限られず、燃料電池を搭載した移動体に共通する。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池を搭載した移動体において、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池の冷却を効果的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池を搭載した移動体であって、
前記移動体の外板の内側に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するためのラジエーターと、
前記外板における前記ラジエーターの放熱部と対向する部位に設けられた開閉部材と、
を備え、
前記開閉部材は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、開状態とされる、
移動体。
【0008】
適用例1の移動体では、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、開閉部材を開状態とすることによって、その開口からラジエーターの放熱部に外気を取り込み、ラジエーターからの放熱を効果的に行うことができる。したがって、燃料電池の冷却を効果的に行うことができる。
【0009】
なお、「ラジエーターの放熱部と対向する部位に設けられた開閉部材」とは、ラジエーターの放熱部と開閉部材とが重なる方向から見たときに、閉状態の開閉部材、換言すれば、開閉部材が開状態とされることによって形成される開口とラジエーターの放熱部とが、少なくとも一部で重なる状態であればよい。また、開閉部材は、アクチュエーターを用いて開閉するようにしてもよいし、手動で開閉するようにしてもよい。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の移動体であって、さらに、
前記開閉部材が開状態とされたときに形成される開口から前記ラジエーターの放熱部への外気の導入を促すためのガイド部材を備える、
移動体。
【0011】
適用例2の移動体では、ガイド部材によって、ラジエーターの放熱部への外気の取り込みを効果的に行うことができるので、燃料電池の冷却をさらに効果的に行うことができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1記載の移動体であって、
前記ラジエーターは、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記ラジエーターの放熱部が、前記開閉部材が開状態とされたときに形成される開口を通じて前記外板の外側に露出するように移動可能に構成されている、
移動体。
【0013】
適用例3の移動体では、ラジエーターの放熱部を移動体の外板の外側に露出させることによって、ラジエーターからの放熱をさらに効果的に行うことができる。
【0014】
なお、ラジエーターの移動は、アクチュエーターを用いて行うようにしてもよいし、手動で行うようにしてもよい。
【0015】
[適用例4]
適用例3記載の移動体であって、
前記ラジエーターは、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、さらに、前記ラジエーターの一部が前記移動体の他の構成から遠ざかるように、前記ラジエーターの姿勢を変更可能に構成されている、
移動体。
【0016】
適用例4の移動体では、ラジエーターの姿勢を変更することによって、ラジエーターの周囲に、ラジエーターからの放熱を妨げる遮蔽物が存在する確率を低下させ、ラジエーターからの放熱をさらに効果的に行うことができる。
【0017】
なお、ラジエーターの姿勢の変更は、アクチュエーターを用いて行うようにしてもよいし、手動で行うようにしてもよい。
【0018】
[適用例5]
適用例4記載の移動体であって、さらに、
前記移動体の外部における風向を検出する風向センサを備え、
前記ラジエーターは、さらに、前記風向センサによって検出された前記風向に基づいて、前記ラジエーターの放熱面が前記風向に対して略垂直になるように、前記ラジエーターの向きを変更可能に構成されている、
移動体。
【0019】
適用例5の移動体では、移動体の外部において風の流れがあるときに、この風の流れを効果的に利用して、ラジエーターからの放熱をさらに効果的に行うことができる。
【0020】
なお、「略垂直」とは、厳密に垂直(90度)でなくてもよいことを意味している。ラジエーターの放熱面を風向に対して、例えば、90±30度となるように、ラジエーターの向きを変更するようにしてもよい。また、ラジエーターの向きの変更は、アクチュエーターを用いて行うようにしてもよいし、手動で行うようにしてもよい。
【0021】
[適用例6]
燃料電池を搭載した移動体であって、
前記移動体の内部に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するための第1のラジエーターと、
前記移動体の外部に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するための第2のラジエーターが接続される接続部と、
前記冷却水を前記第2のラジエーターに流通させるか否かを切り換える切換部と、
前記切換部を制御する切換制御部と、
を備え、
前記切換制御部は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記冷却水を前記第2のラジエーターに流通させるように、前記切換部を制御する、
移動体。
【0022】
適用例6の移動体では、例えば、走行風を利用できる走行時には、移動体の内部に設けられた第1のラジエーターを用いて燃料電池の冷却を行うことができる。一方、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときには、移動体の外部の遮蔽物が存在しない場所に第2のラジエーターを設置して移動体に接続し、この第2のラジエーターを用いて燃料電池の冷却を行うことができる。したがって、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池の冷却を効果的に行うことができる。
【0023】
[適用例7]
適用例6記載の移動体であって、
前記切換部は、さらに、前記冷却水を前記第1のラジエーターに流通させるか否かを切り換えることが可能であり、
前記切換制御部は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記冷却水を、前記第1のラジエーターに流通させずに、前記第2のラジエーターに流通させるように、前記切換部を制御する、
移動体。
【0024】
適用例7の移動体では、移動体が停止した状態で燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、冷却効率が低下する第1のラジエーターを用いずに、移動体の外部に設けられた第2のラジエーターのみを用いて、効果的に燃料電池の冷却を行うことができる。
【0025】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の移動体としての構成の他、移動体の制御方法の発明として構成することもできる。また、これらを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【0026】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、移動体の動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例としての車両100の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例の車両100における冷却システムの動作を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての車両100Aの概略構成、および、第2実施例の車両100Aにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【図4】本発明の第3実施例としての車両100Bの概略構成、および、第3実施例の車両100Bにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【図5】本発明の第4実施例としての車両100Cの概略構成、および、第4実施例の車両100Cにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第5実施例としての車両100Dの概略構成、および、第5実施例の車両100Dにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【図7】本発明の第6実施例としての車両100Eの概略構成、および、第6実施例の車両100Eにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【図8】本発明の第7実施例としての車両100Fの概略構成、および、第7実施例の車両100Fにおける冷却システムの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての車両100の概略構成を示す説明図である。この車両100は、いわゆる燃料電池車両であり、動力源として、燃料電池スタック10を含む燃料電池システムを搭載している。燃料電池スタック10によって発電された電力は、バッテリに蓄電することもできる。また、この車両100は、駐車(停止)した状態で燃料電池システムを動作させて、燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両100の外部に設置された他の装置に供給することもできる。車両100は、いわゆる電源車として利用可能である。
【0029】
図1(a)に、車両100を側方から見た様子を模式的に示した。また、図1(b)に、車両100を後方から見た様子を模式的に示した。なお、車両100における燃料電池スタック10の冷却システムについて図示および説明し、燃料電池スタック10による発電に用いられる燃料ガスや酸化剤ガスの給排気系についての図示および説明は省略する。これは、後述する他の実施例についても同様である。
【0030】
図示するように、車両100は、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10に循環させる冷却水を冷却するためのラジエーター20と、を備えている。燃料電池スタック10と、ラジエーター20とは、冷却水循環配管30によって接続されている。冷却水循環配管30には、冷却水を循環させるためのウォーターポンプ40が設けられている。なお、本実施例の車両100では、ラジエーター20は、車両100の後方の上側の外板110の内側に、放熱面が水平となるように設けられているものとした。そして、外板110におけるラジエーター20の放熱部と対向する部位には、アクチュエーター122によって前後にスライドして開閉するスライド部材120が設けられている。スライド部材120は、[課題を解決するための手段]における開閉部材に相当する。外板110には、車両100の走行中に、ラジエーター20の周囲に走行風を導入するための図示しない走行風導入口が設けられている。
【0031】
燃料電池システムの運転は、制御ユニット50によって制御される。制御ユニット50は、内部にCPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、冷却水循環系やスライド部材120等の冷却システムの動作を含むシステム全体の運転を制御する。
【0032】
図2は、第1実施例の車両100における冷却システムの動作を示す説明図である。図1(a)と同様に、車両100を側方から見た様子を模式的に示した。
【0033】
車両100の走行時には、外板110に設けられた走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができる。したがって、制御ユニット50は、車両100の走行時には、図2(a)に示したように、スライド部材120を閉状態とする。こうすることによって、車両100の走行時に、スライド部材120を介してゴミや落下物が浸入することを防止することができる。
【0034】
一方、車両100が停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。したがって、制御ユニット50は、車両100の停止時には、図2(b)に示したように、アクチュエーター122を制御して、スライド部材120を開状態とし、その開口からラジエーター20の放熱部に外気を取り込む。
【0035】
なお、「車両100が停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき」としては、燃料電池システムの運転制御モードが、例えば、車両100が停止した状態で燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両100の外部に設置された他の装置(以下、単に「他の装置」とも言う)に供給する運転制御モードに切り換えられたときが挙げられる。この運転制御モードの切り換えは、例えば、他の装置に電力を供給するための電力供給端子にプラグが接続されたときや、他の装置への電力の供給指示が入力されたときや、他の装置への電力の供給が開始されたとき等に行われる。これは、後述する他の実施例においても同様である。
【0036】
以上説明した第1実施例の車両100によれば、車両100が停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときに、スライド部材120を開状態とすることによって、その開口からラジエーター20の放熱部に外気を取り込み、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができる。したがって、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。
【0037】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての車両100Aの概略構成、および、第2実施例の車両100Aにおける冷却システムの動作を示す説明図である。図3では、図1(b)と同様に、車両100Aを後方から見た様子を模式的に示した。第2実施例の車両100Aは、第1実施例の車両100の構成に加えて、車両100Aを上方から見たときの外板110におけるラジエーター20の右側、および、左側に、翼状に開閉して開口を形成するウイング部材130R,130Lを備えている。ウイング部材130R,130Lは、図示しないアクチュエーターによって開閉される。また、第2実施例の車両100Aは、第1実施例の車両100における制御ユニット50の代わりに、制御ユニット50Aを備えている。この制御ユニット50Aは、制御ユニット50の機能の他に、ウイング部材130R,130Lの開閉動作を制御する機能も有している。
【0038】
車両100Aの走行時には、外板110に設けられた走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができる。したがって、制御ユニット50Aは、車両100Aの走行時には、ウイング部材130R,130Lを閉状態とする。こうすることによって、車両100Aの走行時に、ウイング部材130R,130Lを介して、ゴミや落下物が浸入することを防止することができる。
【0039】
一方、車両100Aが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。したがって、制御ユニット50Aは、車両100Aの停止時には、図3(b)に示したように、制御ユニット50Aは、ウイング部材130R,130Lを開けて、その開口から外気を導入する。なお、ウイング部材130R,130Lは、図示したように、開状態としたときに、その開口部からの外気の導入を促すことができるように、ファンネル形状を有している。ウイング部材130R,130Lは、ウイング部材130R,130Lは、[課題を解決するための手段]における開閉部材、および、ガイド部材に相当する。
【0040】
以上説明した第2実施例の車両100Aによっても、第1実施例の車両100と同様に、車両100Aが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。さらに、第2実施例の車両100Aでは、ウイング部材130R,130Lを開けることによって、ラジエーター20の放熱部への外気の取り込みを効果的に行うことができるので、燃料電池スタック10の冷却を、第1実施例の車両100よりも効果的に行うことができる。
【0041】
C.第3実施例:
図4は、本発明の第3実施例としての車両100Bの概略構成、および、第3実施例の車両100Bにおける冷却システムの動作を示す説明図である。図4では、図1(a)と同様に、車両100Bを側方から見た様子を模式的に示した。第3実施例の車両100Bは、第1実施例の車両100の構成に加えて、ラジエーター20の位置を上下に移動させるためのアクチュエーター60を備えている。また、第3実施例の車両100Bは、第1実施例の車両100における制御ユニット50の代わりに、制御ユニット50Bを備えている。この制御ユニット50Bは、制御ユニット50の機能の他に、アクチュエーター60の動作を制御する機能も有している。
【0042】
車両100Bの走行時には、外板110に設けられた走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができる。したがって、制御ユニット50Bは、車両100Bの走行時には、図4(a)に示したように、スライド部材120を閉状態とする。こうすることによって、車両100Bの走行時に、スライド部材120を介してゴミや落下物が浸入することを防止することができる。
【0043】
一方、車両100Bが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。したがって、制御ユニット50Bは、車両100Bの停止時には、図4(b)に示したように、アクチュエーター122を制御して、スライド部材120を開状態とし、さらに、アクチュエーター60を制御して、ラジエーター20を、スライド部材120を開状態としたときの開口を通じて、外板110の外側に移動させる。
【0044】
以上説明した第3実施例の車両100Bによっても、第1実施例の車両100と同様に、車両100Bが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。さらに、第3実施例の車両100Bでは、ラジエーター20を外板110の外部に移動させることによって、ラジエーター20からの放熱を、第1実施例の車両100よりも効果的に行うことができる。
【0045】
D.第4実施例:
図5は、本発明の第4実施例としての車両100Cの概略構成、および、第4実施例の車両100Cにおける冷却システムの動作を示す説明図である。図5では、図1(b)と同様に、車両100Cを後方から見た様子を模式的に示した。第4実施例の車両100Cは、第1実施例の車両100の構成に加えて、ラジエーター20の位置を上下に移動させるとともに、ラジエーター20の姿勢を変更するためのアクチュエーター70を備えている。また、第4実施例の車両100Cは、第1実施例の車両100における制御ユニット50の代わりに、制御ユニット50Cを備えている。この制御ユニット50Cは、制御ユニット50の機能の他に、アクチュエーター70の動作を制御する機能も有している。
【0046】
車両100Cの走行時には、外板110に設けられた走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができる。したがって、制御ユニット50Cは、車両100Cの走行時には、図5(a)に示したように、スライド部材120を閉状態とする。こうすることによって、車両100Cの走行時に、スライド部材120を介してゴミや落下物が浸入することを防止することができる。
【0047】
一方、車両100Cが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。したがって、制御ユニット50Cは、車両100Cの停止時には、図5(b)に示したように、アクチュエーター122(図示省略、図2参照)を制御して、スライド部材120を開状態とし、さらに、アクチュエーター70を制御して、ラジエーター20を、スライド部材120を開状態としたときの開口を通じて、外板110の外側に移動させるとともに、ラジエーター20の姿勢を変更する。本実施例では、図示するように、ラジエーター20の姿勢を、90度傾けるものとした。こうすることによって、ラジエーター20の周囲に、ラジエーター20からの放熱を妨げる遮蔽物が存在する確率を下げることができる。
【0048】
以上説明した第4実施例の車両100Cによっても、第1実施例の車両100と同様に、車両100Cが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。さらに、第4実施例の車両100Cでは、ラジエーター20を外板110の外部に移動させるとともに、ラジエーター20の姿勢を変更することによって、ラジエーター20からの放熱を、第1実施例の車両100や、第3実施例の車両100Bよりも効果的に行うことができる。
【0049】
E.第5実施例:
図6は、本発明の第5実施例としての車両100Dの概略構成、および、第5実施例の車両100Dにおける冷却システムの動作を示す説明図である。図6では、車両100Dを上方から見た様子を模式的に示した。第5実施例の車両100Dは、第4実施例の車両100Cの構成に加えて、車両100Dの外部における風向を検出するための風向センサ80を備えている。また、第5実施例の車両100Dは、第4実施例の車両100Cにおける制御ユニット50Cの代わりに、制御ユニット50Dを備えている。この制御ユニット50Dは、制御ユニット50Cの機能の他に、風向センサ80によって検出された風向に基づいて、アクチュエーター70の動作を制御する機能も有している。
【0050】
車両100Dの走行時の冷却システムの動作は、第4実施例の車両100Cと同じである。一方、車両100Dが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき(停止時)には、制御ユニット50Dは、第4実施例の車両100Cにおけるアクチュエーター70の制御に加えて、風向センサ80によって検出された風向に基づいて、ラジエーター20の放熱面が風向に対して垂直になるように、アクチュエーター70を制御する。
【0051】
以上説明した第5実施例の車両100Dによっても、第4実施例の車両100Cと同様に、車両100Dが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。さらに、第5実施例の車両100Dでは、ラジエーター20の放熱面が風向に対して垂直になるように、ラジエーター20の向きを変更することができるので、ラジエーター20からの放熱を、第4実施例の車両100Cよりも効果的に行うことができる。
【0052】
F.第6実施例:
図7は、本発明の第6実施例としての車両100Eの概略構成、および、第6実施例の車両100Eにおける冷却システムの動作を示す説明図である。図7では、図1(b)と同様に、車両100Eを後方から見た様子を模式的に示した。
【0053】
図示するように、車両100Eは、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10に循環させる冷却水を冷却するためのラジエーター20と、を内部に備えている。燃料電池スタック10と、ラジエーター20とは、冷却水循環配管30によって接続されている。冷却水循環配管30には、冷却水を循環させるためのウォーターポンプ40が設けられている。また、冷却水循環配管30における冷却水の流れ方向についてのラジエーター20の上流側には、分岐配管(符号省略)および開閉弁32が設けられている。また、冷却水循環配管30における冷却水の流れ方向についてのラジエーター20の下流側には、分岐配管(符号省略)および開閉弁34が設けられている。そして、開閉弁32,34には、図7(b)に示したように、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eを追加して接続することができる。なお、ラジエーター20Eは、車両100Eの外部に設置される。開閉弁32,34は、[課題を解決するための手段]における接続部に相当する。
【0054】
制御ユニット50Eは、開閉弁32,34の動作を含む燃料電池システム全体の運転を制御する。制御ユニット50Eが開閉弁32,34の開閉状態を切り換えることによって、冷却水をラジエーター20Eに流通させるか否かを切り換えることができる。開閉弁32,34は、[課題を解決するための手段]における切換部に相当する。また、制御ユニット50Eは、[課題を解決するための手段]における切換制御部に相当する。
【0055】
車両100Eの外板110には、第1実施例の車両100と同様に、車両100Eの走行中に、ラジエーター20の周囲に走行風を導入するための図示しない走行風導入口が設けられており、車両100Eの走行時には、この走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行う。したがって、車両100Eの走行時には、図7(a)に示したように、開閉弁32,34には、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eは接続されない。そして、制御ユニット50Eは、開閉弁32,34を閉弁状態として、冷却水を、車両100Eの内部に設けられたラジエーター20に流通させる。
【0056】
一方、車両100Eが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行い、燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両100Eの外部に設置された他の装置に供給するとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。そこで、図7(b)に示したように、開閉弁32,34に、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eを追加して接続する。そして、制御ユニット50Eは、開閉弁32,34を開弁して、冷却水を、車両100Eの外部に設置されたラジエーター20Eに流通させる。
【0057】
以上説明した第6実施例の車両100Eでは、走行風を利用できる走行時には、車両100Eの内部に設けられたラジエーター20を用いて燃料電池スタック10の冷却を行うことができる。一方、車両100Eが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときには、車両100Eの外部の遮蔽物が存在しない場所にラジエーター20Eを設置し、このラジエーター20Eを用いて燃料電池スタック10の冷却を行うことができる。したがって、車両100Eが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。
【0058】
G.第7実施例:
図8は、本発明の第7実施例としての車両100Fの概略構成、および、第7実施例の車両100Fにおける冷却システムの動作を示す説明図である。第7実施例の車両100Fは、第6実施例の車両100Eとほぼ同じである。図8では、図7(b)と同様に、車両100Fを後方から見た様子を模式的に示した。以下では、第7実施例の100F車両100Fにおいて、第6実施例の車両100Eと異なる部分について説明する。
【0059】
図8と図7との比較から分かるように、車両100Fにおいて、冷却水循環配管30における冷却水の流れ方向についてのラジエーター20の上流側には、車両100Eにおける分岐配管および開閉弁32の代わりに、三方弁36が設けられている。また、冷却水循環配管30における冷却水の流れ方向についてのラジエーター20の下流側には、車両100Eにおける分岐配管および開閉弁34の代わりに、三方弁38が設けられている。そして、三方弁36,38には、図8(b)に示したように、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eを追加して接続することができる。なお、ラジエーター20Eは、第7実施例と同様に、車両100Eの外部に設置される。三方弁36,38は、[課題を解決するための手段]における接続部に相当する。
【0060】
また、車両100Fは、車両100Eにおける制御ユニット50Eの代わりに、制御ユニット50Fを備えている。制御ユニット50Fは、三方弁36,38の動作を含む燃料電池システム全体の運転を制御する。制御ユニット50Fが三方弁36,38を切り換えることによって、冷却水を、ラジエーター20Eに流通させずにラジエーター20に流通させるか、ラジエーター20に流通させずにラジエーター20Eに流通させるかを切り換えることができる。三方弁36,38は、[課題を解決するための手段]における切換部に相当する。また、制御ユニット50Fは、[課題を解決するための手段]における切換制御部に相当する。
【0061】
車両100Fの走行時には、車両100Eと同様に、車両100Fの外板110に設けられた走行風導入口から導入された走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行う。したがって、車両100Fの走行時には、図8(a)に示したように、三方弁36,38には、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eは接続されない。そして、制御ユニット50Fは、三方弁36,38を制御して、冷却水を、車両100Eの内部に設けられたラジエーター20に流通させる。
【0062】
一方、車両100Fが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行い、燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両100Fの外部に設置された他の装置に供給するとき(停止時)には、走行風を利用して、ラジエーター20からの放熱を効果的に行うことができない。そこで、図8(b)に示したように、三方弁36,38に、冷却水循環配管30E、および、ラジエーター20Eを追加して接続する。そして、制御ユニット50Fは、三方弁36,38を制御して、冷却水を、100F車両100Fの内部に設けられたラジエーター20に流通させずに、車両100Fの外部に設置されたラジエーター20Eに流通させる。
【0063】
以上説明した第7実施例の車両100Fによれば、第6実施例の車両100Eと同様に、車両100Fが停止した状態で燃料電池スタック10の発電電力を外部に給電するときであっても、燃料電池スタック10の冷却を効果的に行うことができる。
【0064】
H.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0065】
H1.変形例1:
例えば、上記第1実施例では、ラジエーター20を、車両100の後方の上側の外板110の内側に設けられているものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明では、ラジエーター20は、一般に、外板110の内側に設けられればよい。したがって、ラジエーター20を、車両100の前方に設けるようにしてもよいし、側方に設けるようにしてもよい。
【0066】
H2.変形例2:
例えば、上記第1実施例では、車両100の外板110に、スライド部材120を設けるものとしたが、本発明は、これに限られない。スライド部材120の代わりに、外板110に着脱可能な開閉部材や、外板110にヒンジ接続部された開閉部材等、開状態とされることによって、ラジエーター20の放熱部に外気を導入するための開口を形成する他の開閉部材を設けるようにしてもよい。
【0067】
H3.変形例3:
上記第2実施例では、ウイング部材130R,130Lを、ガイド部材として利用するものとしたが、本発明は、これに限られない。ガイド部材として、スライド部材120を開状態としたときの開口からの外気の導入を促すための他の部材を用いるようにしてもよい。このようなガイド部材は、ファンネル形状とすることが好ましい。また、このガイド部材は、着脱可能としてもよい。
【0068】
H4.変形例4:
上記第2実施例では、車両100Aは、スライド部材120を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。車両100Aにおいて、スライド部材120を省略するものとしてもよい。
【0069】
H5.変形例5:
上記第3実施例では、車両100Bが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき、詳しくは、ラジエーター20を、スライド部材120を開状態としたときの開口を通じて、外板110の外側に移動させるものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明では、一般に、ラジエーター20の放熱部が、スライド部材120を開状態としたときの開口を通じて外板110の外側に露出するように、ラジエーター20を移動させるようにすればよい。
【0070】
H6.変形例6:
上記第4実施例では、車両100Cが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うとき、詳しくは、ラジエーター20の姿勢を変更するときに、ラジエーター20を90度傾けるものとしたが、本発明は、これに限られない。ラジエーター20の傾け角度は、任意に設定可能である。
【0071】
H7.変形例7:
上記第5実施例では、車両100Dが停止した状態で燃料電池スタック10による発電を行うに、風向センサ80によって検出された風向に基づいて、ラジエーター20の放熱面が風向に対して垂直になるように、アクチュエーター70を制御するものとしたが、本発明は、これに限られない。ラジエーター20の放熱面を風向に対して、例えば、90±30度となるように、アクチュエーター70を制御するようにしてもよい。
【0072】
H8.変形例8:
上記実施例では、スライド部材120の開閉や、ウイング部材130R,130Lの開閉や、ラジエーター20の位置の移動や、ラジエーター20の姿勢の変更や、ラジエーター20の向きの変更を、アクチュエーター122,60,70を用いて行うものとしたが、本発明は、これに限られない。スライド部材120の開閉や、ウイング部材130R,130Lの開閉や、ラジエーター20の位置の移動や、ラジエーター20の姿勢の変更や、ラジエーター20の向きの変更を、手動で行うようにしてもよい。
【0073】
H9.変形例9:
上記実施例では、本発明を車両に適用した場合について説明したが、本発明は、これに限られない。本発明は、燃料電池を搭載した種々の移動体に適用可能である。このような移動体としては、上述した車両の他に、例えば、航空機や、船舶等が挙げられる。本発明は、バスに適用されることで、いわゆる電源車としてより有用である。
【符号の説明】
【0074】
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F…車両
10…燃料電池スタック
20,20E…ラジエーター
30,30E…冷却水循環配管
32,34…開閉弁
36,38…三方弁
40…ウォーターポンプ
50,50A,50B,50C,50D,50E,50F…制御ユニット
60,70…アクチュエーター
80…風向センサ
110…外板
120…スライド部材
122…アクチュエーター
130R,130L…ウイング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を搭載した移動体であって、
前記移動体の外板の内側に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するためのラジエーターと、
前記外板における前記ラジエーターの放熱部と対向する部位に設けられた開閉部材と、
を備え、
前記開閉部材は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、開状態とされる、
移動体。
【請求項2】
請求項1記載の移動体であって、さらに、
前記開閉部材が開状態とされたときに形成される開口から前記ラジエーターの放熱部への外気の導入を促すためのガイド部材を備える、
移動体。
【請求項3】
請求項1記載の移動体であって、
前記ラジエーターは、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記ラジエーターの放熱部が、前記開閉部材が開状態とされたときに形成される開口を通じて前記外板の外側に露出するように移動可能に構成されている、
移動体。
【請求項4】
請求項3記載の移動体であって、
前記ラジエーターは、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、さらに、前記ラジエーターの一部が前記移動体の他の構成から遠ざかるように、前記ラジエーターの姿勢を変更可能に構成されている、
移動体。
【請求項5】
請求項4記載の移動体であって、さらに、
前記移動体の外部における風向を検出する風向センサを備え、
前記ラジエーターは、さらに、前記風向センサによって検出された前記風向に基づいて、前記ラジエーターの放熱面が前記風向に対して略垂直になるように、前記ラジエーターの向きを変更可能に構成されている、
移動体。
【請求項6】
燃料電池を搭載した移動体であって、
前記移動体の内部に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するための第1のラジエーターと、
前記移動体の外部に設けられ、前記燃料電池に循環させる冷却水を冷却するための第2のラジエーターが接続される接続部と、
前記冷却水を前記第2のラジエーターに流通させるか否かを切り換える切換部と、
前記切換部を制御する切換制御部と、
を備え、
前記切換制御部は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記冷却水を前記第2のラジエーターに流通させるように、前記切換部を制御する、
移動体。
【請求項7】
請求項6記載の移動体であって、
前記切換部は、さらに、前記冷却水を前記第1のラジエーターに流通させるか否かを切り換えることが可能であり、
前記切換制御部は、前記移動体が停止した状態で前記燃料電池の発電電力を外部に給電するときに、前記冷却水を、前記第1のラジエーターに流通させずに、前記第2のラジエーターに流通させるように、前記切換部を制御する、
移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49343(P2013−49343A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188095(P2011−188095)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】