説明

燃料電池カソード触媒

【課題】微細構造担体の上にナノ構造体を含む触媒による、燃料電池カソード触媒を提供する。
【解決手段】ナノスコピック触媒粒子を担持した微細構造化担体ウィスカを含むナノ構造化要素を含む燃料電池カソード触媒が提供される。ナノスコピック触媒粒子は、第1および第2の層の交互適用によって製造され、第1の層は白金を含み、第2の層は、鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物あって、第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比が0〜10であり、第2の層に対する第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜5であり、第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが100Å未満である。白金の真空蒸着ステップと、鉄と第2の金属の合金または完全混合物の真空蒸着ステップとを交互に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造担体の上に白金と第2の層との交互層を堆積することによって形成されるナノ構造体を含む触媒に関する。この触媒は、燃料電池カソード触媒として有用である。
【0002】
本発明は、DOEによって授与された協同契約DE−FC02−99EE50582に基づき政府の助成を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,879,827号明細書は、針状ナノスコピック触媒粒子を担持した針状微細構造化担体ウィスカを含むナノ構造化要素を開示している。触媒粒子は、異なる触媒材料の交互層を含むことができ、当該触媒材料は、組成、合金化の程度または結晶化度の点で異なっていてもよい。
【0004】
米国特許出願公開第2002/0004453 A1号明細書は、燃料電池電極触媒を開示しており、これは、白金含有層と、CO酸化の早期開始を示す第2の金属の亜酸化物を含む層とが交互になったものを含む。
【0005】
米国特許第5,338,430号明細書、米国特許第5,879,828号明細書、米国特許第6,040,077号明細書、および米国特許第6,319,293号明細書もナノ構造化触媒に関する。
【0006】
米国特許第4,812,352号明細書、米国特許第5,039,561号明細書、米国特許第5,176,786号明細書、および米国特許第5,336,558号明細書は、微細構造に関する。
【0007】
米国特許第5,079,107号明細書は、Pt−Ni−Co、Pt−Cr−C、またはPt−Cr−Ceの3成分系合金を含むリン酸電解質燃料電池用の触媒を開示している。
【0008】
米国特許第4,985,386号明細書は、炭素担体上の触媒を開示しており、この触媒は、Ptの炭化物、Ni、Co、CrおよびFeから選択される第2の金属の炭化物、並びに、必要に応じてMnの炭化物を含む。この引用文献は、炭素に担持された触媒を製造する方法も開示しており、それは、炭素担体上への金属イオンの還元的堆積、次いで、合金化、並びに、加熱および炭素含有ガスの適用による金属の少なくとも部分的な浸炭による。
【0009】
米国特許第5,593,934号明細書は、炭素担体上の触媒を開示しており、この触媒は、40〜90原子%のPt、30〜5原子%のMn、および30〜5原子%のFeを含む。この引用文献には、その称するところによれば、50原子%のPt、25原子%のNi、および25原子%のCo;50原子%のPtおよび50原子%のMn;並びにPt単独を含む炭素担持触媒を実証する比較例が含まれている。
【0010】
米国特許第5,872,074号明細書は、最初に100nm以下の粒径を有する結晶子を含む準安定な複合材料または合金を調製し、次いでその合金成分のうちの1つを浸出させることによって製造される触媒を開示している。
【0011】
マルコビック(Markovic)らの「PtおよびPtバイメタル表面における酸素還元反応:精選総説(Oxygen Reduction Reaction on Pt and Pt Bimetallic Surfaces: A Selective Review)」、燃料電池(Fuel Cells)(2001、第1巻、No.2(pp.105〜116))では、アンダーポテンシャル析出法、典型的な冶金法、および擬似形態(pseudomorphic)の金属フィルムの堆積によって製造されたバイメタルPt−NiおよびPt−Co触媒の結晶表面での反応を調べている。
【0012】
パウルス(Paulus)らの「炭素担持Pt−NiおよびPt−Co合金触媒の酸素還元(Oxygen Reduction on Carbon−Supported Pt−Ni and Pt−Co Alloy Catalysts)」(ジャーナルオブフィジカルケミストリ(J.Phys.Chem.)B、2002、No.106(pp.4181〜4191))では、商業的に入手可能なPt−NiおよびPt−Co合金を含む炭素担持触媒を調べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔に述べると、本発明は、ナノ構造化要素を含むカソード触媒を提供し、このカソード触媒は、ナノスコピック触媒粒子を担持した微細構造化担体ウィスカを含む。ナノスコピック触媒粒子は、第1および第2の層の交互適用によって製造され、第1の層は、白金を含み、第2の層は、鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物であり、ここで、第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比は0〜10であり、第2の層に対する第1の層の平面相当厚さの比は0.3〜5であり、第1および第2の層の平均二層平面相当厚さは100Å未満である。典型的には、第2の層に対する第1の層の平面相当厚さの比は0.3〜2.5であり、平均二層平面相当厚さは8Åより大きい。典型的には、第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比は0.01〜10である。典型的には、第2の金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガン、最も典型的にはニッケルまたはコバルトよりなる群から選択される。
【0014】
別の態様では、本発明は、ナノスコピック触媒粒子の製造方法を提供し、この方法は、白金を含む層の真空堆積ステップと、鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物の真空堆積ステップとを交互に行うことを含み、ここで、第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比は0〜10であり、堆積された白金と、2種の金属の堆積された合金または均質混合物とが、100Å未満の平均平面相当厚さを有する二層を形成し、2種の金属の堆積された合金または均質混合物に対する堆積された白金の平面相当厚さの比は0.3〜5である。典型的には、真空堆積ステップは、酸素の不在下でまたは実質的に酸素の不在下で行われる。典型的には、第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比は0.01〜10である。典型的には、第2の金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガンよりなる群から選択され、最も典型的にはニッケルである。一実施形態では、本方法は、前記堆積ステップの後、2種の金属の前記合金または均質混合物の少なくとも一部を除去または「浸出」させるステップをさらに含んでも良い。本発明はさらに、前記浸出過程から得られるナノスコピック触媒粒子を提供する。
【0015】
当技術分野において説明されたことがなく、本発明によって提供されるものは、燃料電池カソード触媒としての使用時、改善された特性を示す本明細書に記載した触媒である。
【0016】
本出願では:
「膜電極組立体」は、電解質、典型的には高分子電解質を含む膜、および、この膜に隣接する少なくとも1つの、しかしより典型的には2つ以上の電極を含む構造体を意味する。
「ナノ構造化要素」は、その表面上の少なくとも一部に触媒材料を含む針状の離散的なミクロスコピック構造体を意味する。
「ナノスコピック触媒粒子」は、標準の2−シータX線回折走査の回折ピーク半値幅で測定したとき、1つの寸法が約15nm以下であるか、または、約15nm以下の結晶子サイズを有する触媒材料の粒子を意味する。
「針状」は、平均断面幅に対する長さの比が3以上であることを意味する。
「離散的」は、別々の識別性を有するが、しかし要素が互いに接触するのを排除しない、区別できる構成要素を指す。
「ミクロスコピック」は、少なくとも1つの寸法が約1マイクロメートル以下であることを意味する。
「平面相当厚さ」は、表面に分布した層に関して、それは不規則に分布している場合があり、その表面が、平坦でない表面(風景全域に分布した雪の層のように、または、真空堆積プロセスにおいて分布した原子層のように)である場合があるが、層の全質量が、表面として同じ投影面積を覆う平面にわたり均一に分散したと仮定して算出される厚さを意味する(平坦でない機構や渦巻きが無視された場合、表面によって覆われる投影面積が、表面の全表面積以下であることに注意)。
「二層平面相当厚さ」は、(本明細書に記載したような)第1の層と(本明細書に記載したような)次に出現する第2の層の合計の平面相当厚さを意味する。
記号「Å」は、いかなる印刷上またはコンピューター上の間違いがあったとしても、オングストロームを表す。
【発明の効果】
【0017】
燃料電池に用いるカソード触媒を提供することが本発明の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、燃料電池カソード触媒として使用されるとき、予想外の活性改善を示す触媒に関する。
本発明による燃料電池カソード触媒は、燃料電池に用いる膜電極組立体(MEA)の製造に使用できる。MEAは、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心的な構成要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などのオキシダントとの触媒反応に預かる化合によって有用な電気を発生する電気化学電池である。代表的MEAは、高分子電解質膜(PEM)(イオン伝導性膜(ICM)としても知られる)を含み、それは、固体電解質として機能する。PEMの一面はアノード電極層と接触しており、反対側の面はカソード電極層と接触している。典型的な使用方法では、アノードでの水素酸化を介してプロトンが形成され、PEM両端間をカソードまで輸送され、酸素と反応し、電極に接続している外部回路に電流が流れるのを引き起こす。各電極層は、電気化学触媒を含み、典型的には白金金属を含む。ガス拡散層(GDL)は、アノードおよびカソード電極材料への、並びにそこからのガス輸送および電流の通電に役立つ。GDLは、多孔質および導電性であり、典型的には炭素繊維から構成される。GDLは、流体輸送層(FTL)またはディフューザ/集電極(DCC)と呼ばれることもある。実施形態によっては、アノードおよびカソード電極層がGDLに塗布され、得られた触媒被覆GDLは、PEMでサンドイッチ状にされ、5層MEAが形成される。5層MEAの5つの層は、順番に、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、およびカソードGDLである。他の実施形態では、アノードおよびカソード電極層がPEMの両面に塗布され、得られた触媒被覆膜(CCM)は、2つのGDLの間でサンドイッチにされ、5層MEAが形成される。
【0020】
本発明は、カソード触媒を含む燃料電池膜電極組立体(MEA)を提供し、このカソード触媒は、ナノスコピック触媒粒子を担持した微細構造担体ウィスカを含むナノ構造化要素を含むものである。米国特許第4,812,352号明細書、米国特許第5,039,561号明細書、米国特許第5,176,786号明細書、および米国特許第5,336,558号明細書は、本発明の実施において使用できる微細構造に関する。米国特許第5,338,430号明細書、米国特許第5,879,827号明細書、米国特許第6,040,077号明細書、および米国特許第6,319,293号明細書、並びに米国特許出願公開第2002/0004453 A1号明細書は、ナノスコピック触媒粒子を担持した微細構造担体ウィスカを含むナノ構造化要素を記載している。米国特許第5,879,827号明細書および米国特許出願公開第2002/0004453 A1号明細書は、交互層を含むナノスケールの触媒微粒子を記載している。
【0021】
本発明によるナノスコピック触媒粒子は、第1および第2の層の交互適用によって製造され、第1の層は、白金を含む、または、実質的に白金からなり、第2の層は、鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物である。典型的には、第2の金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガンよりなる群から選択され、最も典型的にはニッケルまたはコバルトである。第2の層における第2の金属に対する鉄の原子数比は0〜10であり、典型的には少なくとも0.01であり、典型的には1未満、より典型的には0.4未満、より典型的には0.15未満である。第2の層に対する第1の層の質量比は0.3〜5であり、典型的には2.5未満である。第1および第2の層の平均二層平面相当厚さは100Å未満である。平均二層平面相当厚さは、典型的には3Åより大きく、より典型的には8Åより大きい。第1および第2の層の交互適用は、第1および第2の層に加えて他の層を適用することを排除しない。
【0022】
本発明による層状化された燃料電池カソード触媒は、任意の適切な方法によって製造できる。典型的には、本発明による層状化された触媒は、微細構造のフィルム上へ、白金を含むかまたは実質的に白金からなる層と、第2の層との交互の真空堆積ステップによって製造される。典型的には、真空堆積ステップは、酸素の不在下でまたは実質的に酸素の不在下で行われる。典型的には、スパッタ堆積が使用される。典型的な微細構造は、米国特許第4,812,352号明細書、米国特許第5,039,561号明細書、米国特許第5,176,786号明細書、米国特許第5,336,558号明細書、米国特許第5,338,430号明細書、米国特許第5,879,827号明細書、米国特許第6,040,077号明細書、および米国特許第6,319,293号明細書、並びに米国特許出願公開第2002/0004453 A1号明細書に記載されている。典型的な微細構造は、有機顔料のC.I.ピグメントレッド(Pigment Red)149、すなわち、N,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)の加熱昇華および真空アニーリングによって製造される。
【0023】
真空堆積は、例えば、米国特許第5,338,430号明細書、米国特許第5,879,827号明細書、米国特許第5,879,828号明細書、米国特許第6,040,077号明細書、および米国特許第6,319,293号明細書、並びに米国特許出願公開第2002/0004453 A1号明細書に記載されている任意の適切な装置で行うことができる。図1にそのような装置が概略的に示されており、ここでは、基板がドラム(20)上に載置され、次いで、順番に配列した複数のDCマグネトロンスパッタリング発生源(10、11、12)の下にドラムが回転される。得られる構造は、層状化または実質的に層状化され、あるいは、堆積された材料の厚さおよびその上に材料が堆積される基板の表面積に依存して、より複雑な混合構造体を含み得る。
【0024】
一実施形態では、本方法は、該堆積ステップの後、2種の金属の該合金または均質混合物の少なくとも一部を除去するステップをさらに含むことができる。鉄および/または第2の金属は、水性溶媒、これはさらに酸を含むことができるが、これを用いる浸出を含めて、任意の適切な手段によって除去できる。ある程度の量の鉄および/または第2の金属が、通常の燃料電池運転の条件下で触媒から浸出する可能性があることが理解されよう。
【0025】
本発明の触媒を使用して、米国特許第5,879,827号明細書および米国特許第5,879,828号明細書に記載されているものなどの燃料電池に組み込まれる膜電極組立体(MEA)を製造できる。
【0026】
本発明は、燃料電池の製造および運転に有用である。
【0027】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに例示されるが、しかし、この実施例で詳述される特定の材料およびその量、並びに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0028】
特に明記しない限り、全ての試薬は、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)から入手し、またはそこから市販されており、あるいは、周知の方法によって合成することができる。
【0029】
PR149微細構造体
触媒担体として使用するナノ構造化担体フィルムを、米国特許第5,338,430号明細書、米国特許第4,812,352号明細書、および米国特許第5,039,561号明細書に記載されている方法に準拠して、米国特許第6,136,412号明細書に記載されている微細構造化触媒転写基板(またはMCTS)を基板として使用して、製造した。微細構造化基板上にナノ構造化ペリレン赤(PR149、アメリカンヘキスト社(American Hoechst Corp.)、サマセット(Somerset)、ニュージャージー州)フィルムを、有機顔料のC.I.ピグメントレッド149、すなわちN,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)の加熱昇華および真空アニーリングによって製造した。堆積およびアニーリングの後、大きいアスペクト比、制御可能な約0.5〜2マイクロメートルの長さ、約0.03〜0.05マイクロメートルの幅、および1平方マイクロメートルあたり約30個のウィスカの面積数密度を有して、高度に配向した結晶構造が形成され、下にある基板に対して実質的に垂直に配向していた。
【0030】
ナノ構造化触媒
米国特許第5,879,827号明細書および米国特許第6,040,077号明細書に開示されている方法に準拠して触媒を調製した。図1に概略的に示す真空システムを使用し、スパッタ堆積によってPR149微細構造体の上に触媒材料を堆積させ、この場合、ドラム(20)上に載置した基板を、順番に配列した複数のDCマグネトロンスパッタリング発生源(10、11、12)の下で回転させ、実質的に層状化された構造体が製造された。触媒材料は、交互に2つの標的物質、すなわちPt標的物質、並びに、Ni、Co、Mn、Ni80Fe20、Ni90Fe10、Ni95Fe5、Co80Fe20、およびMn80Fe20(添字は、原子比基準である)から選択される単一の金属または2種の金属合金からなる第2の標的物質から、堆積させた。全ての場合、材料の交互堆積後、1.5nmの平面相当厚さを有するPtの仕上げ堆積を続けた。
【0031】
使用した装置は、米国特許第6,040,077号明細書「膜電極組立体用の触媒および製造方法」に記載されているものであった。ただし、PtNiFe触媒の場合、以下に記載する類似のシステムを使用して製造したことを除く。この堆積システムは、24インチ(61cm)のドラムおよびウェブ制御システムを備えていた。主チャンバは、一晩の真空排気後、7×10-5パスカル未満まで圧力を下げることができる3個のクライオポンプ(CTIクライオジェニクス(Cryogenics)からの2個の6インチ(15cm)ポンプおよび1個の16インチ(41cm)ポンプ)を備えていた。かかる低圧力は、酸化物含量の少ない触媒材料の製造に役立つ。主チャンバには、3個の小さな2×10インチ(5×25cm)平面DCマグネトロン(シエラアプライドサイエンス(Sierra Applied Sciences)から)が取り付けられ、それぞれは、幅6インチ(15cm)のウェブにわたり一様な堆積領域を作り出すことができる。マグネトロンは、触媒堆積の際原材料が混合しないように、ステンレス鋼面遮へい体を備えていた。遮へい体を頻繁に洗浄して、運転中、標的物質の上に落下する材料の小片によって引き起こされる標的物質による汚染の可能性を下げた。マグネトロンは、120sccmの流速で導入される0.7Paのアルゴン中で運転した。マグネトロンには、MDX−10K AE電力供給装置によって電力を供給した。
【0032】
第2の層に対するPtの平面相当厚さの平面相当厚さの比は、既知の材料密度、並びに、測定されたPtおよび第2の標的物質検量線に基づいて算出した。触媒負荷の測定値は、代表的試料を使用して単純な重量法によって行った。これらの試料は、上記したようなナノ構造化担体で被覆された平面基板上に堆積した。堆積の後、平面ポリイミドに担持されたナノ構造化フィルム層の試料を、約1マイクログラムまで正確なデジタル天秤を使用して秤量した。その後、ナノ構造化層を、リネン布で拭き取ることによってポリイミド基板から除去し、基板を再秤量した。堆積金属のないナノ構造化ペリレン赤フィルムの単位面積当たりの質量もこのようにして測定した。全ての実施例における合計のPt負荷は、比較例を含めて、他の任意の構成要素の量に関係なく、0.1mg/cm2の一定に保持した。
【0033】
触媒特性評価
若干の触媒は、概ね、米国特許第6,136,412号明細書、米国特許第5,879,827号明細書、および米国特許第6,040,077号明細書に記載されている方法に準拠して、燃料電池の試験のために膜電極組立体(MEA)に製造した。MEAは、上記ナノ構造化触媒、米国特許出願公開第2001/0,031,388号明細書に記載されているような、約30ミクロンの厚さおよび約1000の当量を有するキャストナフィオン(NAFION)(デュポンケミカルズ(DuPont Chemicals)、ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州)イオン伝導性膜(ICM)、および、米国特許第6,465,041号明細書に記載されているような炭素分散コーティングで被覆した炭素布電極バッキング材料から製造した。本発明による触媒を、カソード触媒として使用した。Ptのみのナノ構造化触媒を、アノード触媒として使用した。
【0034】
触媒被覆ナノ構造要素の膜への転写よりなる積層法を使用して、高光沢ペーパー、2ミル(50ミクロン)のポリイミドシート、アノード触媒、キャストナフィオン膜、カソード触媒、2ミル(50ミクロン)のポリイミド、および最後のシートである高光沢ペーパーよりなるサンドイッチを組立てることによって、各50cm2のMEAを製造した。次いで、この組立体を、132℃(270°F)、1フィート/分のロール速度、および十分なニップ圧で高温2ロール積層装置を経由して送り、膜への触媒の転写を得た。次いで、光沢ペーパーおよびポリイミドを引き剥がし、3層50cm2のCCMを後に残した。
【0035】
PtNi、PtCo、PtMn、およびPtNi80Fe20試料についてのCCMを、50cm2のCCM寸法に合うように切り出した炭素含浸東レ(Toray)(登録商標)炭素ペーパーから製造したGDL層の間にサンドイッチした。試料の残りは、米国特許第6,465,041号明細書の3ページ13〜15行に記載されているような布DCCを用いて製造した。
【0036】
上記のように調製した5層MEAを、50cm2燃料電池の試験電池(フュアルセルテクノロジーズ社(Fuel Cell Technologies,Inc.)、アルバカーキ(Albuquerque)、ニューメキシコ州)に、圧縮制御止め具として作用する周縁部のまわりのテフロン(登録商標)(Teflon)被覆ファイバーグラス(フロン社(The Furon Co.)、CHR部門、ニューヘーヴン(New Haven)、コネチカット州)ガスケットを用いて取り付けた。ガスケット厚さは、電池のボルトに約110in−lbsまでトルクを与えたとき、MEA厚さの約30%の圧縮を与えるように選択した。
【0037】
酸素測定基準
50cm2の活性領域を有する試験電池を、フュアルセルテクノロジーズ社から購入した試験ステーションに取り付けた。電池温度、ガス(水素、および空気もしくは酸素)圧力、ガス流速、およびガス加湿(相対湿度または露点)は全て試験ステーションにより制御された。MEAは、典型的には、相当数の時間の間、65℃の電池温度、および70℃の露点を有する加湿されたガス流れの運転によって調節した。その後、電池の繰り返しの動電位分極および熱サイクルリングによって、MEA性能が最適化および安定化するまで、電池をさらに調節した。
【0038】
大部分が、最小限の物質移動効果を有する触媒領域に関係する分極曲線の領域において、50cm2電池の触媒調合を選別するための酸素測定基準またはO2測定基準が開発された。酸素測定基準は、定電流モードにおける手動走査によって測定し、どのような高電圧も持続時間を短くするために、測定値を迅速にとった。ガス流れは、両面の圧力を30psig、すなわち約303kPaにして、H2の場合1200sccm、O2の場合600sccmに設定した。各面とも、温度は75℃に設定し、ガスは100%の水飽和率で加湿した。電圧を電流密度の関数としてプロットする分極曲線を生成し、膜抵抗についておよび電気的短絡についてデータを補正し、電圧対電流密度の対数(log)としてプロットした。次いで、0.85ボルトでの電流密度を、その特定のカソード触媒の活性の尺度として抽出した。
【0039】
PtNi触媒の場合、大気圧、75℃、70パーセントの相対湿度のH2/空気運転の下で、酸素測定基準の測定というよりはむしろ空気測定基準の測定を行った。カソード活性度の尺度として、0.7ボルトでの電流密度をとった。
【0040】
結果は、以下の表に報告される。実施例の番号の後に続く「C」は比較用である。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
本発明の様々な修正形態および変更形態は、本発明の範囲および諸原理から逸脱することなく、当業者に明白になるだろう。本発明が上述した例示的な実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスコピック触媒粒子を担持した微細構造化担体ウィスカを含むナノ構造化要素を含んで成る燃料電池カソード触媒であって、
前記ナノスコピック触媒粒子が、第1および第2の層の交互適用によって製造され、
前記第1の層が白金を含み、
前記第2の層が、鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物であり、
前記第2の層における前記第2の金属に対する鉄の原子数比が0〜10であり、
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜5であり、
前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが100Å未満である、
燃料電池カソード触媒。
【請求項2】
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜2.5であり、前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが8Åより大きい、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項3】
前記第2の層における前記第2の金属に対する鉄の原子数比が0.01〜10である、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項4】
前記第2の金属が、ニッケル、コバルトおよびマンガンよりなる群から選択される、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項5】
前記第2の金属が、ニッケル、コバルトおよびマンガンよりなる群から選択される、請求項3に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項6】
前記第2の金属がニッケルである、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項7】
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜2.5であり、前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが8Åより大きい、請求項6に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項8】
前記第2の金属がニッケルである、請求項3に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項9】
前記第2の層におけるニッケルに対する鉄の原子数比が0.01〜0.4である、請求項8に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項10】
前記第2の層におけるニッケルに対する鉄の原子数比が0.01〜0.15である、請求項8に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項11】
前記第2の金属がコバルトである、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項12】
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜2.5であり、前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが8Åより大きい、請求項11に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項13】
前記第2の金属がコバルトである、請求項3に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項14】
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が0.3〜2であり、前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが8Åより大きい、請求項13に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項15】
前記第2の金属がマンガンである、請求項1に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項16】
前記第1および第2の層の平均二層平面相当厚さが8Åより大きい、請求項15に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項17】
前記第2の金属がマンガンである、請求項3に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項18】
前記第2の層に対する前記第1の層の平面相当厚さの比が1.25〜5である、請求項17に記載の燃料電池カソード触媒。
【請求項19】
ナノスコピック触媒粒子を含む燃料電池カソード触媒の製造方法であって、
白金を含む第1の層の真空堆積ステップと、
鉄と、第VIb族金属、第VIIb族金属、並びに、白金および鉄以外の第VIIIb族金属よりなる群から選択された第2の金属との合金または均質混合物を含む第2の層の真空堆積ステップであって、前記第2の層における前記第2の金属に対する鉄の原子数比が、0〜10であるステップと、
を交互に行うことを含み、
前記堆積した白金と、2種の金属の堆積した前記合金または均質混合物とが、100Å未満の平均二層平面相当厚さを有する二層を形成し、
堆積した2種の金属の合金または均質混合物に対する堆積した白金の平面相当厚さの比が0.3〜5である、
方法。
【請求項20】
前記真空堆積ステップが、実質的に酸素の不在下で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記白金、並びに、鉄と第2の金属との前記合金または均質混合物が、微細構造化担体ウィスカ上に堆積される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の金属が、ニッケル、コバルトおよびマンガンよりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の金属がニッケルである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記堆積ステップの後、2種の金属の前記合金または均質混合物の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法に従って製造されるナノスコピック触媒粒子を含む、燃料電池カソード触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2012−164661(P2012−164661A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−33774(P2012−33774)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−528009(P2006−528009)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】