説明

燃料電池システム

【課題】特に高電位側のセパレータ等が腐食するのを効果的に抑制する。
【解決手段】セパレータ20には、セル2が複数積層されたときに積層方向に連なる流体流路15が形成されているとともに、該流体流路15に連通する部分には、発電時におけるセル積層体3のうち最も高電位のセパレータ20の電位より少なくとも一部が高い電位となっている高電位部材9が設けられている。流体流路15は例えば当該燃料電池1の反応ガスまたは冷媒を流通させるマニホールドであり、高電位部材9は該マニホールド内においてセル2のいずれとも直接接しない状態で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、燃料電池を構成する部材が腐食するのを抑制するための技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池(例えば固体高分子形燃料電池)は電解質をセパレータで挟んだセルを複数積層することによって構成されている。このようにセルが積層されることによって構成されるセル積層体は、発電時、およそ各セルの合計分の電圧を生じさせる。
【0003】
一方、発電時には、金属の表面等における電位差に起因し、電流が流れる際に燃料電池構成部品(例えばセパレータの表面など)の一部において腐食が生じることがある。従来、このように燃料電池構成部品が腐食するのを回避するための技術としては、例えば冷媒流路にイオン吸着材を配置するといったものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−297784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような技術によっても依然として高電位側の部材が腐食するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、特に高電位側のセパレータ等が腐食するのを効果的に抑制することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。例えば、セパレータにおけるマニホールド孔周辺部の腐食を抑えるための技術のひとつとして、犠牲陽極となるカーボンの棒状電極を設置するというものがある。ところが、これはセパレータに比較して酸化しやすい材を犠牲陽極材として設置するものであり、セパレータのマニホールド孔周辺部のみしか効果が及ばないことがある。この点につきさらに検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く着想、すなわちセパレータの発電面の腐食を効果的に低減させることに関する着想を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる着想に基づくものであり、膜−電極アッセンブリをセパレータで挟持してなるセルが複数積層されてなるセル積層体と、該セル積層体の積層方向両端に設けられるエンドプレートと、を含む燃料電池を備えた燃料電池システムであって、前記セパレータには、前記セルが複数積層されたときに積層方向に連なる流体流路が形成されているとともに、該流体流路に連通する部分には、発電時における前記セル積層体のうち最も高電位のセパレータの電位より少なくとも一部が高い電位となっている高電位部材が設けられていることを特徴としている。
【0008】
セパレータが金属製である場合、高電圧側(+側)の数セルで腐食が発生する場合がある。この点、本発明にかかる燃料電池システムにおいては、高電位部材が、セパレータの電位(セル積層体のうち最も高電位のセパレータの電位)よりも高い電位となる。これにより、高電位部材からセパレータに電流が流れ、分極効果により、セパレータの電位が低くなり、腐食電流を消滅させることができる。このような構造の燃料電池システムにおいては、燃料電池の構成部品(特にセパレータ)の腐食を効果的に抑制することが可能である。
【0009】
また、本発明において用いる高電位部材は、発電時におけるセル積層体のうち最も高電位のセル電位よりも高い電位となっている。したがって、例えば従来におけるような依然として高電位側の部材が腐食するおそれのあったシステムとは異なり、これら高電位側の部材についても腐食を効果的に抑制することができる。
【0010】
ここで、例えばセパレータの発電面における腐食は、酸化ガス(例えば空気)の出口あるいは燃料ガス(例えば水素)の出口にて顕著に発生する場合が多い。この点、本発明の場合、前記流体流路は当該燃料電池の反応ガスまたは冷媒を流通させるマニホールドであり、前記高電位部材は該マニホールド内において前記セルのいずれとも直接接しない状態で配置されているから、このようにガス出口にて顕著に発生しやすい腐食を効果的に抑制することが可能となっている。また、本発明にかかる高電位部材はセルのいずれとも直接接しない状態で配置されており、生成水を介して各セル(セパレータ)と電気的に接続されるようになっている。このように生成水を介して接続した状態になると、当該高電位部材とセパレータとの間に電流が流れ、電気防食法の原理に従いセパレータの電位が低下する結果、腐食を抑制することができる。
【0011】
なお、マニホールド内における生成水の水量は燃料電池の運転状況などに応じて様々であり、場合によっては生成水がない状況もあり得るが、水がない状況下ではそもそも腐食が生じ難い。この点、本発明の場合には腐食が生じるおそれのある状況、つまり生成水が生じている状況にて高電位部材とセル(セパレータ)とが電気的に接続されるから腐食を効果的に抑制することができる。
【0012】
前記高電位部材は例えば棒状に形成されているものである。棒状に形成された高電位部材はその長手方向をセル積層方向に一致させた状態で例えば酸化ガス用のマニホールド等に設置される。この場合、単一の部材を所定位置に配置すれば済むことから、比較的簡素な構成で防食を実現することが可能だという利点がある。なお、このように棒状に形成された高電位部材は例えば透水性絶縁膜で覆われる等して絶縁されていることが好ましい。また、ねじ等によって燃料電池に対し着脱可能に取り付けられていることも好ましい。
【0013】
また、前記高電位部材はセル積層方向に並ぶ複数の電極によって構成されていることも好ましい。このように複数の電極をいわば分割した形で配置した燃料電池システムにおいては、各電極における電位を段階的に変化させることも可能である。例えば300〜400枚といったような多数のセルが積層されている場合、積層体の両端における電位差はその分だけ大きくなるが、この燃料電池システムによれば各セパレータの電位に対応して各電極の電位を変化させることが可能であり、こうすることによってセルと電極との間の電位差が大きくなりすぎるのを回避することができる。したがって、電位差が大きい場合に生じうる電気分解を抑えることが可能である。また、各セルと各電極との間の電位差が一定となるように設定すれば、流体流路の連通部分と各セルとの間における電位差を一律になくし、セル積層方向の全体において腐食電流を同様に消滅させうる点で好ましい。
【0014】
この場合、前記複数の電極のそれぞれが、当該電極が有する電位よりも低い電位である前記セパレータの直近に配置されていることが好ましい。さらには、前記複数の電極のそれぞれが、当該電極よりも高電位寄りに位置するセルのセパレータ、あるいは当該電極よりも高電位に設定された端子と電気的に接続されていることが好ましい。上述のように分割した形の電極のそれぞれを当該電極よりも高電位寄りのセルに接続することとすれば、各電極の電位が、それよりも高電位寄りのセパレータの電位と等しくなる。こうした場合には、セル積層方向に沿って順次変化するセル電位に応じるようにして各電極の電位をセル積層方向に沿って順次変化させることができる。
【0015】
さらに、本発明の燃料電池システムは、前記高電位部材の少なくとも一部に電圧を印加する外部電源を備えており、該外部電源は、その負極が前記セル積層体のうち最も電位が高い部位に接続されるとともに、その正極が前記高電位部材に接続されているものとなっている。外部電源からの防食電流は主として陰極部(本発明の場合、セルのセパレータ)に流入し、各セパレータの電位を低下させて陽極(本発明の場合、高電位部材)の電位に近付ける(分極効果)。
【0016】
また、前記高電位部材が、前記流体流路のうち鉛直方向下方寄りに配置されていることがさらに好ましい。こうした場合、高電位部材が各流体の流れを妨げるのを抑えやすい。また、このように鉛直方向下方寄りに配置された高電位部材は流体流路中の生成水と接触しやすいから、その分だけ電気的に導通した状態を形成しやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特に高電位側のセパレータ等が腐食するのを効果的に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図6に本発明にかかる燃料電池システムの実施形態を示す。燃料電池システム100は、膜−電極アッセンブリ30をセパレータ20で挟持してなるセル2が複数積層されてなるセル積層体3と、該セル積層体3の積層方向両端に設けられるエンドプレート8と、を含む燃料電池1を備えたシステムである。本実施形態の場合、セパレータ20にはセル2が複数積層されたときに積層方向に連なる流体流路が形成されているとともに、該流体流路に連通する部分には、発電時におけるセル積層体3のうち最も高電位のセパレータ20の電位より少なくとも一部が高い電位となっている高電位部材9が設けられており、セパレータ20等の燃料電池構成部材が腐食するのを効果的に抑制できるようにしている。
【0020】
以下においては、まず燃料電池システム100の全体構成、ならびに燃料電池1を構成するセル2の構成について説明し、その後、セパレータ20等が腐食するのを抑制するための構成について説明する。
【0021】
図1に本実施形態における燃料電池システム100の概略構成を示す。図示するように、燃料電池システム100は、燃料電池1と、酸化ガスとしての空気(酸素)を燃料電池1に供給する酸化ガス給排系(以下、酸化ガス配管系ともいう)300と、燃料ガスとしての水素を燃料電池1に供給する燃料ガス給排系(以下、燃料ガス配管系ともいう)400と、燃料電池1に冷媒を供給して燃料電池1を冷却する冷媒配管系500と、システムの電力を充放電する電力系600と、システム全体を統括制御する制御部700と、を備えている。
【0022】
燃料電池1は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数のセル(単セル)2を積層したスタック構造となっている。各セル2は、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極および燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータ20を有している。一方のセパレータ20の燃料ガス流路に燃料ガスが供給され、他方のセパレータ20の酸化ガス流路に酸化ガスが供給され、このガス供給により燃料電池1は電力を発生する。
【0023】
酸化ガス配管系300は、燃料電池1に供給される酸化ガスが流れる供給路111と、燃料電池1から排出された酸化オフガスが流れる排出路112と、を有している。供給路111には、フィルタ113を介して酸化ガスを取り込むコンプレッサ114と、コンプレッサ114により圧送される酸化ガスを加湿する加湿器115と、が設けられている。排出路112を流れる酸化オフガスは、背圧調整弁116を通って加湿器115で水分交換に供された後、最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。コンプレッサ114は、モータ114aの駆動により大気中の酸化ガスを取り込む。
【0024】
燃料ガス配管系400は、水素供給源121と、水素供給源121から燃料電池1に供給される水素ガスが流れる供給路122と、燃料電池1から排出された水素オフガス(燃料オフガス)を供給路122の合流点Aに戻すための循環路123と、循環路123内の水素オフガスを供給路122に圧送するポンプ124と、循環路123に分岐接続された排出路125と、を有している。
【0025】
水素供給源121は、例えば高圧タンクや水素吸蔵合金などで構成され、例えば35MPa又は70MPaの水素ガスを貯留可能に構成されている。水素供給源121の元弁126を開くと、供給路122に水素ガスが流出する。水素ガスは、調圧弁127その他の減圧弁により、最終的に例えば200kPa程度まで減圧されて、燃料電池1に供給される。
【0026】
供給路122の合流点Aの上流側には、遮断弁128が設けられている。水素ガスの循環系は、供給路122の合流点Aの下流側流路と、燃料電池1のセパレータに形成される燃料ガス流路と、循環路123とを順番に連通することで構成されている。水素ポンプ124は、モータ124aの駆動により、循環系内の水素ガスを燃料電池1に循環供給する。
【0027】
排出路125には、遮断弁であるパージ弁133が設けられている。パージ弁133が燃料電池システム100の稼動時に適宜開弁することで、水素オフガス中の不純物が水素オフガスと共に図示省略した水素希釈器に排出される。パージ弁133の開弁により、循環路123内の水素オフガス中の不純物の濃度が下がり、循環供給される水素オフガス中の水素濃度が上がる。
【0028】
冷媒配管系500は、燃料電池1内の冷却流路に連通する冷媒循環流路141と、冷媒循環流路141に設けられた冷却ポンプ142と、燃料電池1から排出される冷媒を冷却するラジエータ143と、ラジエータ143をバイパスするバイパス流路144と、ラジエータ143及びバイパス流路144への冷却水の通流を設定する三方弁(切替え弁)145と、を有している。冷却ポンプ142は、モータ142aの駆動により、冷媒循環流路141内の冷媒を燃料電池1に循環供給する。
【0029】
電力系600は、高圧DC/DCコンバータ161、バッテリ162、トラクションインバータ163、トラクションモータ164、及び各種の補機インバータ165,166,167を備えている。高圧DC/DCコンバータ161は、直流の電圧変換器であり、バッテリ162から入力された直流電圧を調整してトラクションインバータ163側に出力する機能と、燃料電池1又はトラクションモータ164から入力された直流電圧を調整してバッテリ162に出力する機能と、を有する。高圧DC/DCコンバータ161のこれらの機能により、バッテリ162の充放電が実現される。また、高圧DC/DCコンバータ161により、燃料電池1の出力電圧が制御される。
【0030】
バッテリ162は、バッテリセルが積層されて一定の高電圧を端子電圧とし、図示しないバッテリコンピュータの制御によって余剰電力を充電したり補助的に電力を供給したりすることが可能になっている。トラクションインバータ163は、直流電流を三相交流に変換し、トラクションモータ164に供給する。トラクションモータ164は、例えば三相交流モータであり、燃料電池システム100が搭載される例えば車両の主動力源を構成する。
【0031】
補機インバータ165,166,167は、それぞれ、対応するモータ114a,124a,142aの駆動を制御する電動機制御装置である。補機インバータ165,166,167は、直流電流を三相交流に変換して、それぞれ、モータ114a,124a,142aに供給する。補機インバータ165,166,167は、例えばパルス幅変調方式のPWMインバータであり、制御部700からの制御指令に従って燃料電池1又はバッテリ162から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換して、各モータ114a,124a,142aで発生する回転トルクを制御する。
【0032】
制御部700は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プラグラムに従って所望の演算を実行して、後述するポンプ124の解凍制御など、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶する。RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。制御部700は、ガス系統(300,400)や冷媒配管系500に用いられる各種の圧力センサや温度センサ、外気温センサなどの検出信号を入力し、各構成要素に制御信号を出力する。
【0033】
続いて、図2に本実施形態における燃料電池1のセル2の概略構成を示す。図示するように構成されるセル2は順次積層されてセル積層体3を構成している(図3参照)。また、このように形成されたセル積層体3は、例えばその両端を一対のエンドプレート8で挟まれ、さらにこれらエンドプレート8どうしを繋ぐようにテンションプレート(図示省略)が配置された状態で積層方向への荷重がかけられて締結されている。
【0034】
なお、このようなセル2等で構成される燃料電池1は、例えば燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムとして利用可能なものであるがこれに限られることはなく、各種移動体(例えば船舶や飛行機など)やロボットなどといった自走可能なものに搭載される発電システム、さらには定置の発電システムとしても用いることが可能である。
【0035】
セル2は、電解質、具体例として膜−電極アッセンブリ(以下MEA;Membrane Electrode Assemblyと呼ぶ)30、該MEA30を挟持する一対のセパレータ20(図2と図4においてはそれぞれ符号20a,20bを付して示している)等で構成されている(図2参照)。MEA30および各セパレータ20a,20bはおよそ矩形の板状に形成されている。また、MEA30はその外形が各セパレータ20a,20bの外形よりも小さくなるように形成されている。
【0036】
MEA30は、高分子材料のイオン交換膜からなる高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)31と、電解質膜31を両面から挟んだ一対の電極(アノード側拡散電極およびカソード側拡散電極)32a,32bとで構成されている(図2参照)。電解質膜31は、各電極32a,32bよりも大きく形成されている。この電解質膜31には、その周縁部33を残した状態で各電極32a,32bが例えばホットプレス法により接合されている。
【0037】
MEA30を構成する電極32a,32bは、その表面に付着された白金などの触媒を担持した例えば多孔質のカーボン素材(拡散層)で構成されている。一方の電極(アノード)32aには燃料ガス(反応ガス)としての水素ガス、他方の電極(カソード)32bには空気や酸化剤などの酸化ガス(反応ガス)が供給され、これら2種類の反応ガスによりMEA30内で電気化学反応が生じてセル2の起電力が得られるようになっている。
【0038】
セパレータ20(20a,20b)はガス不透過性の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。本実施形態のセパレータ20(20a,20b)の基材は板状のメタルで形成されたいわゆるメタルセパレータである。この基材の電極32a,32b側の面には耐食性に優れた膜(例えば金メッキで形成された皮膜)が形成されていることが好ましい。
【0039】
また、セパレータ20a,20bの両面には、複数の凹部によって構成される溝状の流路が形成されている。これら流路は、例えば板状のメタルによって基材が形成されている本実施形態のセパレータ20a,20bの場合であればプレス成形によって形成することができる。このようにして形成される溝状の流路は、酸化ガスのガス流路34や水素ガスのガス流路35、あるいは冷却水流路36を構成している。より具体的に説明すると、セパレータ20aの電極32a側となる内側の面には水素ガスのガス流路35が複数形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路36が複数形成されている(図2参照)。同様に、セパレータ20bの電極32b側となる内側の面には酸化ガスのガス流路34が複数形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路36が複数形成されている(図2参照)。さらに、本実施形態においては、隣接する2つのセル2,2に関し、一方のセル2のセパレータ20aの外面と、これに隣接するセル2のセパレータ20bの外面とを付き合わせた場合に両者の冷却水流路36が一体となり断面が例えば矩形あるいはハニカム形の流路が形成される構造となっている(図2参照)。
【0040】
さらに、上述したように各セパレータ20a,20bは、少なくとも流体の流路をなすための凹凸形状が表面と裏面とで反転した関係になっている。より具体的に説明すると、セパレータ20aにおいては、水素ガスのガス流路35を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路36を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路35を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路36を形成する凸形状(凸リブ)である。さらに、セパレータ20bにおいては、酸化ガスのガス流路34を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路36を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路34を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路36を形成する凸形状(凸リブ)である。
【0041】
また、セパレータ20a,20bの長手方向の端部付近(本実施形態の場合であれば、図2中向かって左側に示す一端部の近傍)には、酸化ガスの入口側のマニホールド15a、水素ガスの出口側のマニホールド16b、および冷却水の出口側のマニホールド17bが形成されている。例えば本実施形態の場合、これらマニホールド15a,16b,17bは各セパレータ20a,20bに設けられた略矩形ないしは台形の透孔によって形成されている(図2参照)。さらに、セパレータ20a,20bのうち反対側の端部には、酸化ガスの出口側のマニホールド15b、水素ガスの入口側のマニホールド16a、および冷却水の入口側のマニホールド17aが形成されている。本実施形態の場合、これらマニホールド15b,16a,17aも略矩形ないしは台形の透孔によって形成されている(図2参照)。
【0042】
上述のような各マニホールドのうち、セパレータ20aにおける水素ガス用の入口側マニホールド16aと出口側マニホールド16bは、セパレータ20aに溝状に形成されている入口側の連絡通路61および出口側の連絡通路62を介してそれぞれが水素ガスのガス流路35に連通している。同様に、セパレータ20bにおける酸化ガス用の入口側マニホールド15aと出口側マニホールド15bは、セパレータ20bに溝状に形成されている入口側の連絡通路63および出口側の連絡通路64を介してそれぞれが酸化ガスのガス流路34に連通している(図2参照)。さらに、各セパレータ20a,20bにおける冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bは、各セパレータ20a,20bに溝状に形成されている入口側の連絡通路65および出口側の連絡通路66を介してそれぞれが冷却水流路36に連通している。ここまで説明したような各セパレータ20a,20bの構成により、セル2には、酸化ガス、水素ガスおよび冷却水が供給されるようになっている。ここで具体例を挙げておくと、セル2が積層された場合、例えば水素ガスは、セパレータ20aの入口側マニホールド16aから連絡通路61を通り抜けてガス流路35に流入し、MEA30の発電に供された後、連絡通路62を通り抜けて出口側マニホールド16bに流出することになる。
【0043】
第1シール部材13a、第2シール部材13bは、ともに複数の部材(例えば小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成されているものである(図2参照)。これらのうち、第1シール部材13aはMEA30とセパレータ20aとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部33と、セパレータ20aのうちガス流路35の周囲の部分との間に介在するように設けられる。また、第2シール部材13bは、MEA30とセパレータ20bとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部33と、セパレータ20bのうちガス流路34の周囲の部分との間に介在するように設けられる。
【0044】
さらに、隣接するセル2,2のセパレータ20bとセパレータ20aとの間には、複数の部材(例えば小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成された第3シール部材13cが設けられている(図2参照)。この第3シール部材13cは、セパレータ20bにおける冷却水流路36の周囲の部分と、セパレータ20aにおける冷却水流路36の周囲の部分との間に介在するように設けられてこれらの間をシールする部材である。
【0045】
なお、第1〜第3シール部材13a〜13cとしては、隣接する部材との物理的な密着により流体を封止する弾性体(ガスケット)や、隣接する部材との化学的な結合により接着する接着剤などを用いることができる。例えば本実施形態では各シール部材13a〜13cとして弾性によって物理的にシールする部材を採用しているが、この代わりに上述した接着剤のような化学結合によってシールする部材を採用することもできる。
【0046】
枠状部材40は、MEA30とともにセパレータ20a,20b間に挟持される例えば樹脂からなる部材(以下、樹脂フレームともいう)である。例えば本実施形態では、薄い枠形状の樹脂フレーム40をセパレータ20a,20b間に介在させ、当該樹脂フレーム40によってMEA30の少なくとも一部、例えば周縁部33に沿った部分を表側と裏側から挟持するようにしている。このように設けられる樹脂フレーム40は、締結力を支持するセパレータ20(20a,20b)間のスペーサとしての機能、絶縁部材としての機能、セパレータ20(20a,20b)の剛性を補強する補強部材としての機能を発揮する。
【0047】
燃料電池1の構成について簡単に説明すると以下のとおりである(図3等参照)。本実施形態における燃料電池1は、複数の単セル2を積層したセル積層体3を有し、セル積層体3の両端に位置する単セル2,2の外側に順次、出力端子5付きの集電板6、絶縁板7およびエンドプレート8が各々配置された構造となっている(図3参照)。このようなセル積層体3は図示していないテンションプレートによって積層状態で拘束されている。テンションプレートは両エンドプレート8,8間を架け渡すようにして設けられているもので、例えば一対がセル積層体3の両側に対向するように配置される。
【0048】
続いて、本実施形態の燃料電池システム100のうち特に電気防食に関する構造について説明する(図3等参照)。
【0049】
セパレータ20には、セル2が順次積層されたときに積層方向に連なる流体流路が形成されるようになっている。具体例を示せば、上述した酸化ガスの出口側のマニホールド15bが連なることにより、酸化ガスを燃料電池1の外部に排出する流体流路(図3において符号15で示す)が形成されている。以下においては、この酸化ガスの出口側の流体流路9に高電位部材9を設ける場合を例示して説明する。
【0050】
高電位部材9は、発電時におけるセル積層体3のうち最も高電位のセパレータ20の電位より少なくとも一部が高い電位となるように設けられている。例えば図3の燃料電池1において例示すると、積層されたセル2のうち、カソード側(正極側)に位置するもの(図3中において符号21で示す)が最も高電位となり、隣接するセル22,23,24と順次電圧が低くなる構成となっている(図3参照)。高電位部材9は、この最も高電位のセル2(21)よりも電位が高くなるように設けられている。
【0051】
本実施形態の高電位部材9は、外部電源11と接続されることによって最も高電位のセル2(21)よりも電位が高くなるように設けられている。すなわち、外部電源11が、その正極が高電位部材9に接続され、尚かつその負極が正極側(セル21側)の集電板6の出力端子5に接続された状態で設けられており、高電位部材9の電位が集電板6の電位よりも当該外部電源11の出力電圧(起電力)の分だけ高くなるようにしている(図3参照)。この場合、最も高電位のセル2(21)と接触した状態にある集電板6は当該セル2(21)と同電位にあるから、結局、高電位部材9はこの最も高電位のセル2(21)よりも外部電源11の出力電圧の分だけ電位が高い状態となっている。
【0052】
なお、外部電源11の出力電圧の大きさは特に限定されるものではないが、例えば本実施形態では単セル2の出力電圧(起電力)とほぼ等しい1V程度の起電力の直流電源を用いることとしている。また、外部電源11は、例えば図示しないDC/DCコンバータを介してバッテリ162を接続する等によって構成することができる。
【0053】
また、高電位部材9の形状や大きさも特に限定されるものではないが例えば本実施形態では棒状に形成されており、その長手方向をセル積層方向に一致させた状態で流体流路15(酸化ガスの出口側マニホールド15bが連なって形成されている流路)に設置されている(図3参照)。この場合、単一の部材を所定位置に配置することによって防食を実現することができるという比較的簡素な構成となっている。このような高電位部材9は、例えば集電板6の透孔部に設けられた絶縁シール12等によって当該集電板6や各セル2と絶縁された状態で配置されている(図3参照)。なお、このような棒状の高電位部材9を例えば集電板6や絶縁板7等に対してねじ等によって着脱可能に取り付けることも好ましい。こうした場合、取外しが容易となる分だけ保守性を向上させることができる。
【0054】
さらに、このような高電位部材9の材質も特に限定されるものではないが、例えば金、白金、カーボン等のように導電性に優れ尚かつ酸化しにくいものが好適である。
【0055】
また、本実施形態ではこのような高電位部材9を透水性の絶縁膜14で覆うようにしている(図5参照)。このような絶縁膜14によれば、高電位部材9が各セル2のセパレータ20などに直接接するのを回避することができる。また、セル2から排出された生成水が流体流路15(酸化ガスの出口側マニホールド15bが連なって形成されている流路)の内部に流れている場合には、当該生成水を介してセル2と電気的に接触した状態となる。すなわち、本実施形態の高電位部材9はいわば液絡、つまり生成水によって短絡する構成になっており、このように生成水を介して接続した状態になると、当該高電位部材9とセパレータ20との間に電流が流れるようにし、電気防食法の原理に従いセパレータ20の電位を低下させて腐食を抑制するようになっている。このような透水性の絶縁膜14としては例えば繊維や多孔性の樹脂などが好適である。
【0056】
なお、流体流路15内における生成水の水量は燃料電池1の運転状況などに応じて様々であり場合によっては生成水がない状況もあり得るが、水がない状況下ではそもそも腐食が生じ難い。この点、本実施形態の燃料電池1の場合には腐食が生じるおそれのある状況、つまり生成水が生じている状況にて高電位部材9とセル2(セパレータ20)とが電気的に接続されるから腐食を効果的に抑制することが可能となっている。
【0057】
また、上述した高電位部材9は、流体流路15の内部において鉛直方向(図5においては符号gで示している)下方寄りに配置されていることが好ましい(図5参照)。このように鉛直方向下方寄りに配置された高電位部材9は、流体流路15中の生成水と接触しやすくなるからその分だけ電気的に導通した状態を形成しやすいという利点がある。また、このように配置されている場合には当該流体流路15を流れる流体(例えば本実施形態の場合には酸化ガス)の邪魔にならず、流れを妨げにくいという利点もある。
【0058】
なお、図5では断面形状が矩形の高電位部材9を示しているがこれは一例に過ぎず、断面形状さらには大きさが特に限定されることはない。ただし、生成水を介して液絡(電気的に導通)することからすれば、生成水との接触領域が大きくなるよう表面積が大きいものであることが好ましい。
【0059】
ここまで説明したように、本実施形態においては、発電時におけるセル積層体3のうち最も高電位のセパレータ20の電位よりも高い電位となる高電位部材9を設け、特に高電位側のセパレータ20の発電面における腐食を効果的に抑制することを可能としている。上述したように、一般に金属の表面には局部的に無数の陽極部と陰極部とが入り組んでいて、これら陽極と陰極の電位差が要因となって腐食が生じる場合がある。これに対し、本実施形態の燃料電池システム100においては、高電位部材9からセパレータ20に電流を流すことにより当該セパレータ20の電位を低くし、これによって腐食の因子たる腐食電流を消滅させることが可能である。
【0060】
また、犠牲陽極となるカーボン電極を設置するといった従来技術と比べると、本実施形態では電気防食という電気化学的手法を採用しており、効果的かつ経済的な防食を実現できるという点で好適である。しかも、従来技術の場合には例えばセパレータのマニホールド孔周辺部のみしか効果が及ばないなど、高電位側の部材が依然として腐食するおそれがあったのに対し、本実施形態の燃料電池システム100においてはこれら高電位側の部材についても腐食を効果的に抑制することが可能となっている。
【0061】
なお、ここまでは高電位部材9を棒状に形成した場合を例示して説明したが、かかる高電位部材9を他の形態とすることもできる。以下においては、高電位部材9の他の形態とした場合について説明する(図6参照)。
【0062】
図6に示す燃料電池1において、高電位部材9はセル積層方向に並ぶ複数の電極によって構成されている。このように高電位部材9をいわば複数に分割した形で配置した燃料電池システム100においては、各電極における電位を段階的に変化させることが可能である。例えば、300〜400枚といった多数のセル2が積層されている場合、セル積層体3の両端における電位差はその分だけ大きくなるが、この燃料電池システム100によれば各セパレータ20の電位に対応して各電極の電位を変化させることが可能であり、こうすることによってセル2と電極との間の電位差が大きくなりすぎるのを回避することができる。したがって、電位差が大きい場合に生じうる電気分解を抑えることが可能となっている。また、各セル2と各電極との間の電位差が一定となるように設定すれば、流体流路15の連通部分と各セル2との間における電位差を一律になくし、セル積層方向の全体において腐食電流を同様に消滅させうる点で好ましい。
【0063】
例えば本実施形態においては、複数の電極(図6において正極側から順に符号91,92,93,・・・で示す)のそれぞれが、当該電極が有する電位よりも低い電位であるセパレータ20の直近に配置されている。また、複数の電極のそれぞれが、当該電極よりも高電位寄りに位置するセル2のセパレータ20、あるいは当該電極よりも高電位に設定された端子と電気的に接続されている。
【0064】
具体的に説明すると、例えば正極側から2番目の電極92は同じく正極側から2番目のセル22の直近に配置され、尚かつ導電性の支持部材18によって正極側から1番目のセル21に電気的に接続されている。また、正極側から3番目の電極93は正極側から3番目のセル23の直近に配置され、尚かつ導電性の支持部材18によって正極側から2番目のセル22に電気的に接続されている。このように、セル2と同数の電極が各セル2の直近に配置され、尚かつそれぞれが支持部材18によって支持されつつ1段正極寄りのセル2に電気的に接続されている。
【0065】
また、最も正極側に位置する電極21は、例えば貫通端子19に支持された状態で1番目のセル21の直近に配置されている(図6参照)。貫通端子19は、当該電極21を支持して所定位置に位置させるとともにこの電極21の電位を1番目のセル21よりも高くなるようにするもので、外部電源11の正極に接続されている。この外部電源11の負極は正極側の集電板6の出力端子5に接続されており、当該外部電源11の出力電圧たる起電力(例えばおよそ1V)の分だけ電極21の電位をセル21よりも高くする。なお、集電板6の透孔、絶縁板7の透孔およびエンドプレート8の透孔には絶縁シール12が設けられており、貫通端子19はこの絶縁シール12を貫通するように配意され、その先端部にて電極21を支持している(図6参照)。絶縁シール12は貫通端子19を絶縁するほか、当該集電板6等の孔からガス(この場合、酸化ガス)が漏れないようにするためのシール材としても機能する。
【0066】
ここで、上述した支持部材18は各セル2のカソード側のセパレータ20bに接続されているがこれは接続形態の一例に過ぎない。例えば、セパレータ20bと接触し合っている隣接するセルのアノード側セパレータ20aは当該カソード側セパレータ20bと同電位になっているから、支持部材18をこれらアノード側セパレータ20aに接続したとしても電気的には同等の構造となる。
【0067】
このような燃料電池1においては、上述の実施形態と同様、生成水を介して高電位部材(各電極)9と直近のセル2とが短絡した状態となり、各電極が酸化される方向に電流が流れることによってセパレータ20が腐食するのを抑制することができる。しかも、本実施形態においては複数の電極によって高電位部材9を構成し、各電極の電位がセル積層方向に沿って順次変化する段階的な電位差を設けている。この場合、各セル2(セパレータ20)とこれに対応して設けられた各電極との間の電位差はいずれも等しくなる(例えば本実施形態の場合はおよそ1V)ことから、電位差が大きくなりすぎた場合に生じうる水の電気分解を抑えることができる。このように、水(生成水)の電気分解といった副反応を抑えることが可能となる本実施形態の防食手法は、セル積層数の多い燃料電池1に適用して特に好適である。
【0068】
また、本実施形態では各電極をそれぞれ支持部材18を介して隣接するセル2のセパレータ20に接続したため、各セル2をいわば外部電源のように作用させることができる。なお、本実施形態では各セル2に対して各電極を1つずつずらして配置した態様を例示したがこれは好適な一例に過ぎず、これ以外として例えば2つずつ、あるいは3つずつといった形でずらして配置することも可能である。
【0069】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では酸化ガスの出口側のマニホールド15(15b)に高電位部材9を配置した例を示したがこれは好適な一例に過ぎず、酸化ガスの入口側のマニホールド15(15a)にも適用することができるし、燃料ガスの入口側・出口側のマニホールド16(16a,16b)にも適用できる。さらには、冷却水(冷媒)の入口側・出口側のマニホールド17(17a,17b)にも適用することができる。一般に、セパレータ20の発電面における腐食は、酸化ガス(例えば空気)の出口あるいは燃料ガス(例えば水素)の出口にて顕著に発生する場合が多く、この点からすれば上述した実施形態のように酸化ガスの出口側マニホールド15(15b)、さらには燃料ガスの出口側マニホールド16(16b)に高電位部材9を設けることが好ましいが、これら以外のマニホールドにおいて適用した場合であってもセパレータ20の防食を実現することが可能である。例えば酸化ガスや燃料ガスの入口側マニホールド15a,16aに高電位部材9を配置した場合であれば、これら入口側のマニホールド15a,16aに対して水を積極的に注入することも行い得る。さらには、高電位部材9を上述のようにマニホールド15〜17に配置するばかりでなく、各流体の流路に連通する部分に配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】セル積層体のセルを分解して示す分解斜視図である。
【図3】棒状の高電位部材が配置された本実施形態の燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図4】図3に示した燃料電池における単セルの端部のみを示す図である。
【図5】酸化ガスのガス流路側からみたセパレータを、流路面を鉛直方向に一致させた状態で示す概略図である。
【図6】複数の電極からなる高電位部材が配置された燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1…燃料電池、2…セル、3…セル積層体、8…エンドプレート、9…高電位部材、11…外部電源、15…酸化ガスのマニホールド(流体流路)、16…燃料ガスのマニホールド(流体流路)、17…冷却水のマニホールド(流体流路)、19…貫通端子(電極よりも高電位に設定された端子)、20(20a,20b)…セパレータ、21…発電時におけるセル積層体のうち最も高電位のセル、30…MEA(膜−電極アッセンブリ)、100…燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜−電極アッセンブリをセパレータで挟持してなるセルが複数積層されてなるセル積層体と、該セル積層体の積層方向両端に設けられるエンドプレートと、を含む燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
前記セパレータには、前記セルが複数積層されたときに積層方向に連なる流体流路が形成されているとともに、
該流体流路に連通する部分には、発電時における前記セル積層体のうち最も高電位のセパレータの電位より少なくとも一部が高い電位となっている高電位部材が設けられている
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記流体流路は当該燃料電池の反応ガスまたは冷媒を流通させるマニホールドであり、前記高電位部材は該マニホールド内において前記セルのいずれとも直接接しない状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記高電位部材は棒状に形成されているものであることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記高電位部材はセル積層方向に並ぶ複数の電極によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記複数の電極のそれぞれが、当該電極が有する電位よりも低い電位である前記セパレータの直近に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記複数の電極のそれぞれが、当該電極よりも高電位寄りに位置するセルのセパレータ、あるいは当該電極よりも高電位に設定された端子と電気的に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記高電位部材の少なくとも一部に電圧を印加する外部電源を備えており、該外部電源は、その負極が前記セル積層体のうち最も電位が高い部位に接続されるとともに、その正極が前記高電位部材に接続されていることを特徴とする1から6のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記高電位部材が、前記流体流路のうち鉛直方向下方寄りに配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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