説明

燃料電池システム

【課題】昇圧コンバータにおいて最適な構成の可飽和特性を備える共振用リアクトルを有する燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】このような燃料電池システムに用いられる可飽和特性を備える共振用リアクトルとしてのコイルLaは、磁性体によって形成されるコア5のセンターコア18に巻線20を巻きつけて形成されるものであって、センターコア18には非磁性体によって形成されるギャップ31,32,33が形成され、ギャップ31,32,33と巻線20との間には磁性体によって形成されるコア領域181a,181b,182a,182b,183a,183bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転効率および環境性に優れる電源として燃料電池が注目されている。燃料電池は、燃料ガスの供給量を制御して負荷の要求に応じた電力を出力可能であるが、燃料電池の出力電圧が負荷の要求する電圧に一致しない場合がある。そこで、燃料電池の出力電圧をDC/DCコンバータで変換することにより、燃料電池の出力電圧と負荷の要求する電圧とを一致させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
DC/DCコンバータは、電子スイッチ、ダイオード、及びインダクタンスを基本素子とし、電子スイッチのスイッチング動作によって電圧を変換する。DC/DCコンバータは、電子スイッチのスイッチング動作によりリップルが生ずるため、これを吸収するスナバ回路を備える。スナバ回路は、リップルをコンデンサで吸収する。このコンデンサに蓄えられた電荷が有効活用されないとDC/DCコンバータのエネルギー変換効率が低下するため、このコンデンサに蓄えられた電荷を回生させたりして有効活用する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
DC−DCコンバータは、ソフトスイッチングさせることでスイッチング損失を低減可能であることが知られているが、これを燃料電池の昇圧に用いるとソフトスイッチングのために蓄えられた電力が燃料電池に入力される虞があり、適用が困難である。そこで、燃料電池の出力電圧をソフトスイッチングで昇圧可能にする燃料電池システムとして、下記特許文献3に記載の技術が提案されている。
【0005】
上記特許文献3に記載されている燃料電池システムは、昇圧コンバータを備えており、その昇圧コンバータは、第一スイッチ(スイッチ素子とダイオードによって構成される)と第一コイルとを有し、第一スイッチが第一コイルに対してスイッチング動作することにより生ずる第一コイルの逆起電力で燃料電池の出力電圧を昇圧する主昇圧部と、第一スイッチの両極間の電位差を蓄電量で調整するコンデンサを有し、スイッチング動作時にコンデンサの蓄電量を調整することで第一スイッチのスイッチング損失を減らすものであって、第二スイッチ(スイッチ素子とダイオードによって構成される)と第二コイルを含む副昇圧部と、を有しているものである。
【0006】
ところで、このような昇圧コンバータにおいて、第一スイッチと第二スイッチとを共にターンオフすると、第二スイッチを構成するダイオードに逆電流が瞬間的に流れ、瞬間的に止まり、この減少によってサージ電圧が発生する。この現象に対応するため本発明者らは、副昇圧部にダイオードを追加し、カソードを第二スイッチと第二コイルとの間に接続して実験を行ったが、やはりサージ電圧が発生し追加したダイオードが耐圧破壊してしまう現象が発生した。
【0007】
このような現象に対しては、可飽和リアクトルとしての第三コイルを追加することが有用であると考えられ、またその追加する可飽和リアクトルの役割を共振リアクトルとしての第二コイルに担わせることが考えられる。このように、共振リアクトルに可飽和リアクトル特性を担わせた技術も提案されている(例えば、下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−217625号公報
【特許文献2】特開2005−143259号公報
【特許文献3】特開2009−165246号公報
【特許文献4】特開2003−018833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献4には、共振用リアクトルについて次のように記載されている。具体的には、共振用リアクトルは、巻線がリッツ線(より線)であり、コアがトロイダル形状を有している。共振用リアクトルのコアは、外径および内径がフライバックトランスのコアと同等であり、厚みがフライバックトランスのコアと同等または小さく形成されている。また、共振用リアクトルのコアの磁化特性は、共振用リアクトルに流れる電流が所定の範囲内にあるときコアは不飽和であり、この領域ではほぼ一定のインダクタンス値を有し、所定の範囲を超える領域ではコアが飽和してインダクタンス値が減少するものと記載されている。
【0010】
このように上記特許文献4には、可飽和特性を備える共振用リアクトルについて機能的な記載はあるものの、構成を明示する記載がなく、燃料電池システムの昇圧コンバータにおいてどのような可飽和リアクトルが適しているかは不明である。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、昇圧コンバータにおいて最適な構成の可飽和特性を備える共振用リアクトルを有する燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、直流電源である燃料電池、及び前記燃料電池の出力電圧を昇圧して負荷へ給電する昇圧コンバータを備える燃料電池システムであって、前記昇圧コンバータは、第一スイッチと第一コイルとを有し、前記第一スイッチが前記第一コイルに対してスイッチング動作することにより生ずる前記第一コイルの逆起電力で前記燃料電池の出力電圧を昇圧する主昇圧部と、前記第一スイッチの両極間の電位差を蓄電量で調整するコンデンサを有し、前記スイッチング動作時に前記コンデンサの蓄電量を調整することで前記第一スイッチのスイッチング損失を減らす副昇圧部と、を有し、前記副昇圧部は、第二スイッチと第二コイルとを有しており、前記第二コイルは、磁性体によって形成されるコアの少なくとも一部に巻線を巻きつけて形成されるものであって、前記コアの前記巻線が巻きつけられている部分には非磁性体によって形成されるギャップが形成され、前記ギャップと前記巻線との間には磁性体によって形成されるコア領域が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、昇圧コンバータにおいて副昇圧部の共振リアクトルとして機能する第二コイルを、磁性体によって形成されるコアの少なくとも一部に巻線を巻きつけ、更に巻線が巻きつけられている部分のコアにギャップを設け、そのギャップと巻線との間にコア領域を設けることで形成しているので、可飽和特性を有する可飽和リアクトルとして機能させることができる。より具体的には、ギャップが形成されている部分に隣接させて磁性体によって形成されるコア領域を形成することで、そのコア領域が磁気抵抗の小さい経路となり、低電流側でインダクタンス値を高くすることができる。そのコア領域はギャップに隣接していることで、他のコア部分とは異なり磁気が通る経路としては容量が少ないため、高電流側ではコア領域が飽和しギャップが全て形成されている場合と同様にインダクタンス値を低くすることができる。従って、第一スイッチと第二スイッチとを共にターンオフした場合に、サージ電圧を抑制するリアクトルとして機能することができ、副昇圧部を構成する他の素子の耐圧破壊を防止することができる。更に本発明では、巻線が巻きつけられているコアの部分にギャップを形成しているので、巻線に電流が流れることによる磁束閉じ込め効果を利用し、外部への磁束の漏れを防止することができる。具体的には、ギャップは非磁性材料によって構成され、磁気抵抗が空気と略等しくなり、ギャップが形成されている部分では磁束が外に漏れだそうとする。そこで、本発明では巻線に電流が流れることによる磁束閉じ込め効果を活用して外部への磁束の漏れを防止している。更に、ギャップと巻線との間には磁性体によって形成されるコア領域を設けているので、このコア領域による磁束閉じ込め効果によって、巻線への磁束漏れも低減することができ、渦電流の発生による損失も低減することができる。
【0014】
また本発明では、前記コア領域は、前記ギャップを囲むように前記巻線との間に設けられていることも好ましい。この好ましい態様では、コア領域によってギャップを囲繞しているので、コア領域による磁束閉じ込め効果をより発揮させることができ、巻線における渦電流の発生による損失をより効果的に低減することができる。
【0015】
また本発明では、前記ギャップは、複数のギャップ部分によって構成されており、それぞれのギャップ部分は、前記巻線との間に設けられている前記コア領域によって囲まれていることも好ましい。この好ましい態様では、ギャップを複数のギャップ部分に分割することで、一つのギャップ部分におけるギャップ長さを短くし、磁束漏れを低減することができる。更に、それぞれのギャップ部分をコア領域によって囲んでいるので、コア領域による磁束閉じ込め効果との相乗効果によって、巻線における渦電流の発生による損失をより効果的に低減することができる。
【0016】
また本発明では、前記ギャップが、前記コアに空洞を形成することで設けられていることも好ましい。上述したように、ギャップはコア領域に囲繞されているので、ギャップを空洞にしても特段の補強手段を要することなく形成することができる。そのため、ギャップを形成するためにセラミックスといった部材を用いる必要が無くなり、低コスト化を図りつつ巻線における渦電流の発生による損失をより効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、昇圧コンバータにおいて最適な構成の可飽和特性を備える共振用リアクトルを有する燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である昇圧コンバータが用いられる燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムに用いられる昇圧コンバータの回路構成を示す図である。
【図3】図2に示す昇圧コンバータに用いられる可飽和特性を有する共振リアクトルの特性を示す図である。
【図4】図2に示す昇圧コンバータに用いられる可飽和特性を有する共振リアクトルの外観を示す斜視図である。
【図5】図2に示す可飽和特性を有する共振リアクトルの中央近傍の縦断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
最初に、本発明の実施形態である燃料電池車両に搭載される燃料電池システムFCSについて図1を参照しながら説明する。図1は燃料電池車両の車載電源システムとして機能する燃料電池システムFCSのシステム構成を示す図である。燃料電池システムFCSは、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができる。
【0021】
燃料電池システムFCSは、燃料電池FCと、酸化ガス供給系ASSと、燃料ガス供給系FSSと、電力系ESと、冷却系CSと、コントローラECとを備えている。燃料電池FCは、反応ガス(燃料ガス、酸化ガス)の供給を受けて発電するものである。酸化ガス供給系ASSは、酸化ガスとしての空気を燃料電池FCに供給するための系である。燃料ガス供給系FSSは、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池FCに供給するための系である。電力系ESは、電力の充放電を制御するための系である。冷却系CSは、燃料電池FCを冷却するための系である。コントローラEC(制御部)は、燃料電池システムFCS全体を統括制御するコントローラである。
【0022】
燃料電池FCは、多数のセル(アノード、カソード、及び電解質を備える単一の電池(発電体))を直列に積層してなる固体高分子電解質形のセルスタックとして構成されている。燃料電池FCでは、通常の運転において、アノードにおいて(1)式の酸化反応が生じ、カソードにおいて(2)式の還元反応が生じる。燃料電池FC全体としては(3)式の起電反応が生じる。
【0023】
2→2H++2e- (1)
(1/2)O2+2H++2e-→H2O (2)
2+(1/2)O2→H2O (3)
【0024】
酸化ガス供給系ASSは、酸化ガス流路AS3と酸化オフガス流路AS4とを有している。酸化ガス流路AS3は、燃料電池FCのカソードに供給される酸化ガスが流れる流路である。酸化オフガス流路AS4は、燃料電池FCから排出される酸化オフガスが流れる流路である。
【0025】
酸化ガス流路AS3には、エアコンプレッサAS2と、加湿器AS5とが設けられている。エアコンプレッサAS2は、フィルタAS1を介して大気中から酸化ガスを取り込むためのコンプレッサである。加湿器AS5は、エアコンプレッサAS2により加圧される酸化ガスを加湿するための加湿器である。
【0026】
酸化オフガス流路AS4には、圧力センサS6と、背圧調整弁A3と、加湿器AS5とが設けられている。背圧調整弁A3は、酸化ガス供給圧を調整するための弁である。加湿器AS5は、酸化ガス(ドライガス)と酸化オフガス(ウェットガス)との間で水分交換するためのものとして設けられている。
【0027】
燃料ガス供給系FSSは、燃料ガス供給源FS1と、燃料ガス流路FS3と、循環流路FS4と、循環ポンプFS5と、排気排水流路FS6とを有している。燃料ガス流路FS3は、燃料ガス供給源FS1から燃料電池FCのアノードに供給される燃料ガスが流れる流路である。循環流路FS4は、燃料電池FCから排出される燃料オフガスを燃料ガス流路FS3に帰還させるための流路である。循環ポンプFS5は、循環流路FS4内の燃料オフガスを燃料ガス流路FS3に圧送するポンプである。排気排水流路FS6は、循環流路FS4に分岐接続される流路である。
【0028】
燃料ガス供給源FS1は、例えば、高圧水素タンクや水素吸蔵合金などで構成され、高圧(例えば、35MPa〜70MPa)の水素ガスを貯蔵するものである。遮断弁H1を開くと、燃料ガス供給源FS1から燃料ガス流路FS3に燃料ガスが流出する。燃料ガスは、レギュレータH2やインジェクタFS2により、例えば、200kPa程度まで減圧されて、燃料電池FCに供給される。
【0029】
燃料ガス流路FS3には、遮断弁H1と、レギュレータH2と、インジェクタFS2と、遮断弁H3と、圧力センサS4とが設けられている。遮断弁H1は、燃料ガス供給源FS1からの燃料ガスの供給を遮断又は許容するための弁である。レギュレータH2は、燃料ガスの圧力を調整するものである。インジェクタFS2は、燃料電池FCへの燃料ガス供給量を制御するものである。遮断弁H3は、燃料電池FCへの燃料ガス供給を遮断するための弁である。
【0030】
レギュレータH2は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置であり、例えば、一次圧を減圧する機械式の減圧弁などで構成される。機械式の減圧弁は、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする構成を有する。インジェクタFS2の上流側にレギュレータH2を配置することにより、インジェクタFS2の上流側圧力を効果的に低減させることができる。
【0031】
インジェクタFS2は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタFS2は、燃料ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座と、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に格納保持され噴射孔を開閉する弁体とを備えている。
【0032】
インジェクタFS2の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、コントローラECから出力される制御信号によってインジェクタFS2のガス噴射時間及びガス噴射時期を制御することが可能なように構成されている。インジェクタFS2は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタFS2のガス流路に設けられた弁体の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。
【0033】
循環流路FS4には、遮断弁H4が設けられ、排気排水流路FS6が接続されている。排気排水流路FS6には、排気排水弁H5が設けられている。排気排水弁H5は、コントローラECからの指令によって作動することにより、循環流路FS4内の不純物を含む燃料オフガスと水分とを外部に排出するための弁である。排気排水弁H5の開弁により、循環流路FS4内の燃料オフガス中の不純物の濃度が下がり、循環系内を循環する燃料オフガス中の水素濃度を上げることができる。
【0034】
排気排水弁H5を介して排出される燃料オフガスは、酸化オフガス流路AS4を流れる酸化オフガスと混合され、希釈器(図示せず)によって希釈される。循環ポンプFS5は、循環系内の燃料オフガスをモータ駆動により燃料電池FCに循環供給する。
【0035】
電力系ESは、DC/DCコンバータES1と、バッテリES2と、トラクションインバータES3と、トラクションモータES4と、補機類ES5と、FC昇圧コンバータES6とを備えている。燃料電池システムFCSは、DC/DCコンバータES1とトラクションインバータES3とが並列に燃料電池FCに接続するパラレルハイブリッドシステムとして構成されている。DC/DCコンバータES1とトラクションインバータES3とはPCU(Power Control Unit)を構成している。
【0036】
FC昇圧コンバータES6は、燃料電池FCの出力電圧を昇圧してトラクションインバータES3及びトラクションモータES4に向けて出力する機能を有するDC/DCコンバータである。DC/DCコンバータES1は、バッテリES2から供給される直流電圧を昇圧してトラクションインバータES3に出力する機能と、燃料電池FCが発電した直流電力、又は回生制動によりトラクションモータES4が回収した回生電力を降圧してバッテリES2に充電する機能とを有する。DC/DCコンバータES1のこれらの機能により、バッテリES2の充放電が制御される。また、DC/DCコンバータES1による電圧変換制御により、燃料電池FCの運転ポイント(出力端子電圧、出力電流)が制御される。燃料電池FCには、電圧センサS1と電流センサS2とが取り付けられている。電圧センサS1は、燃料電池FCの出力端子電圧をFC昇圧コンバータES6が昇圧した電圧を検出するためのセンサである。電流センサS2は、燃料電池FCの出力電流を検出するためのセンサである。また、昇圧コンバータES6とトラクションインバータES3との間には温度センサS7が取り付けられている。
【0037】
バッテリES2は、余剰電力の貯蔵源、回生制動時の回生エネルギー貯蔵源、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギーバッファとして機能する。バッテリES2としては、例えば、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池等の二次電池が好適である。バッテリES2には、SOC(State of charge)を検出するためのSOCセンサS3が取り付けられている。
【0038】
トラクションインバータES3は、例えば、パルス幅変調方式で駆動されるPWMインバータである。トラクションインバータES3は、コントローラECからの制御指令に従って、燃料電池FC又はバッテリES2から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換して、トラクションモータES4の回転トルクを制御する。トラクションモータES4は、例えば、三相交流モータであり、燃料電池車両の動力源を構成する。
【0039】
補機類ES5は、燃料電池システムFCS内の各部に配置されている各モータ(例えば、ポンプ類などの動力源)、これらのモータを駆動するためのインバータ類、及び各種の車載補機類(例えば、エアコンプレッサ、インジェクタ、冷却水循環ポンプ、ラジエータなど)を総称するものである。
【0040】
冷却系CSは、ラジエータCS1と、冷却液ポンプCS2と、冷却液往路CS3と、冷却液復路CS4とを有している。ラジエータCS1は、燃料電池FCを冷却するための冷却液を放熱して冷却するものである。冷却液ポンプCS2は、冷却液を燃料電池FCとラジエータCS1との間で循環させるためのポンプである。冷却液往路CS3は、ラジエータCS1と燃料電池FCとを繋ぐ流路であって、冷却液ポンプCS2が設けられている。冷却液ポンプCS2が駆動することで、冷却液はラジエータCS1から燃料電池FCへと冷却液往路CS3を通って流れる。冷却液復路CS4は、燃料電池FCとラジエータCS1とを繋ぐ流路であって、水温センサS5が設けられている。冷却液ポンプCS2が駆動することで、燃料電池FCを冷却した冷却液はラジエータCS1へと還流する。
【0041】
コントローラEC(制御部)は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インタフェースを備えるコンピュータシステムであり、燃料電池システムFCSの各部を制御するものである。例えば、コントローラECは、イグニッションスイッチから出力される起動信号IGを受信すると、燃料電池システムFCSの運転を開始する。その後、コントローラECは、アクセルセンサから出力されるアクセル開度信号ACCや、車速センサから出力される車速信号VCなどを基に、燃料電池システムFCS全体の要求電力を求める。燃料電池システムFCS全体の要求電力は、車両走行電力と補機電力との合計値である。
【0042】
ここで、補機電力には、車載補機類(加湿器、エアコンプレッサ、水素ポンプ、及び冷却水循環ポンプ等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、及び懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配設される装置(空調装置、照明器具、及びオーディオ等)で消費される電力などが含まれる。
【0043】
そして、コントローラECは、燃料電池FCとバッテリES2とのそれぞれの出力電力の配分を決定する。コントローラECは、燃料電池FCの発電量が目標電力に一致するように、酸化ガス供給系ASS及び燃料ガス供給系FSSを制御する。また、コントローラECは、DC/DCコンバータES1に指示信号を出力し、DC/DCコンバータES1によるコンバータ制御を実行させ、燃料電池FCの運転ポイント(出力端子電圧、出力電流)を制御する。更に、コントローラECは、アクセル開度に応じた目標トルクが得られるように、例えば、スイッチング指令として、U相、V相、及びW相の各交流電圧指令値をトラクションインバータES3に出力し、トラクションモータES4の出力トルク、及び回転数を制御する。更に、コントローラECは、冷却系CSを制御して燃料電池FCが適切な温度になるように制御する。
【0044】
ここで、図2に基づいて、FC昇圧コンバータES6の電気回路の特徴について説明する。図2は、FC昇圧コンバータES6を中心として、燃料電池システムFCSの電気的構成を示す図であるが、説明を簡便にするためにバッテリES2やバッテリ昇圧コンバータとしてのDC/DCコンバータES1等の記載は省略している。
【0045】
FC昇圧コンバータES6は、DC/DCコンバータとしての昇圧動作を行うための主昇圧回路LN1と、ソフトスイッチング動作を行うための副昇圧回路LN2とで構成されている。
【0046】
主昇圧回路LN1は、スイッチ素子S1(第一スイッチ)とダイオードD4で構成されるスイッチング回路のスイッチ動作によって、コイルL1(第一コイル)に蓄えられたエネルギーをトラクションモータES4側(トラクションインバータES3側)にダイオードD3を介して解放することで燃料電池FCの出力電圧を昇圧する。具体的には、コイルL1の一端が燃料電池FCの高電位側の端子に接続される。そして、スイッチ素子S1の一端の極が、コイルL1の他端に接続されるとともに、そのスイッチ素子S1の他端の極が、燃料電池FCの低電位側の端子に接続されている。また、ダイオードD6のカソード端子がコイルL1の他端に接続され、更に、コンデンサC3が、ダイオードD5のアノード端子とスイッチ素子S1の他端との間に接続されている。尚、この主昇圧回路LN1において、コンデンサC3は、昇圧電圧の平滑コンデンサとして機能する。尚、主昇圧回路LN1には、燃料電池FC側に平滑コンデンサC1も設けられ、これにより燃料電池FCの出力電流のリップルを低減することが可能となる。この平滑コンデンサC3にかかる電圧は、FC昇圧コンバータES6の出口電圧となる。また、燃料電池FCの電源電圧は、平滑コンデンサC1にかかる電圧であって、且つFC昇圧コンバータES6の入口電圧となる。
【0047】
次に、副昇圧回路LN2には、先ずスイッチ素子S1に並列に接続された、ダイオードD2と、それに直列に接続されたスナバコンデンサC2とを含む第一直列接続体が含まれる。この第一直列接続体では、ダイオードD2のカソード端子がコイルL1の他端に接続され、そのアノード端子がスナバコンデンサC2の一端に接続されている。更に、スナバコンデンサC2の他端は、燃料電池FCの低電位側の端子に接続されている。更に、副昇圧回路LN2には、誘導素子であるコイルL2(第二コイル)と、ダイオードD1と、スイッチ素子S2(第二スイッチ)及びダイオードD5で構成されるスイッチング回路とが直列に接続された第二直列接続体が含まれる。この第二直列接続体では、スイッチ素子S2の一端が、第一直列接続体のダイオードD2とスナバコンデンサC2との接続部位に接続される。更に、ダイオードD1のカソード端子が、コイルL2の一端に接続されるとともに、そのアノード端子が、スイッチ素子S2の他端の極に接続される。また、コイルL2の他端は、コイルL1の一端側に接続される。また、副昇圧回路LN2には、ダイオードD6が設けられており、そのアノード端子が第二直列接続体のコイルL2とダイオードD1との接続部位に接続され、そのカソード端子が燃料電池FCの低電位側の端子に接続されている。
【0048】
このように構成されるFC昇圧コンバータES6は、スイッチ素子S1のスイッチングデューティ比を調整することで、FC昇圧コンバータES6による昇圧比、即ちFC昇圧コンバータES6に入力される燃料電池FCの出力電圧に対する、トラクションインバータES3にかけられるFC昇圧コンバータES6の出力電圧の比が制御される。また、このスイッチ素子S1のスイッチング動作において副昇圧回路LN2のスイッチ素子S2のスイッチング動作を介在させることで、いわゆるソフトスイッチングが実現され、FC昇圧コンバータES6でのスイッチングロスを大きく低減させることが可能となる。
【0049】
続いて、コイルL2として用いられる可飽和特性を有する共振リアクトルについて説明する。図3は、そのような可飽和特性を有する共振リアクトルのインダクタンス特性を示す図である。図3に示すように、低電流域では30μHのインダクタンス値を有し、高電流域では0.9μHのインダクタンス値を有するように構成する。一般的には、低電流域で30μHのインダクタンス値を有するコイルと、高電流域で0.9μHのインダクタンス値を有するコイルとを直列に配置するけれども、本実施形態では共振リアクトルに可飽和特性を持たせることで、一つのコイルによって実現するものである。
【0050】
コイルL2として用いられるコイルであって、可飽和特性を有する共振リアクトルとしてのコイルLaの構成を図4に示す。図4に示すように、コイルLaは、磁性材料によって構成されるコア5と銅線を卷回することで形成される巻線20とによって構成されている。コア5は、上コア10と下コア12とを備えている。上コア10及び下コア12は、それぞれ直方体形状を成すように板状に形成されている。上コア10の一辺近傍と、この一辺に対向する下コア12の一辺近傍を繋ぐようにサイドコア14が設けられている。また、上コア10の一辺とは反対側の他辺近傍と、この他辺に対向する下コア12の他辺近傍を繋ぐようにサイドコア16が設けられている。従って、サイドコア14とサイドコア16とは互いに対向するように立設されている。
【0051】
サイドコア14とサイドコア16との間にはセンターコア18が設けられている。センターコア18は、上コア10の中央近傍と下コア12の中央近傍とを繋ぐように立設されている。巻線20は、センターコア18に巻きつけられている。
【0052】
続いて、センターコア18の中央近傍の縦断面を図5に示し、図5を参照しながら説明を続ける。図5に示すように、センターコア18には、ギャップ部分31,32,33が形成されており、全体としてギャップを形成している。ギャップ部分31,32,33は、それぞれ非磁性体によって形成されている。具体的には、セラミックス材料によって形成されていてもよく、空洞となっていてもよい。セラミックス材料によってギャップ部分31,32,33を形成すれば、寸法精度を高く保つことができる。また、空洞によってギャップ部分31,32,33を形成しても、本実施形態の場合は後述するようにコア領域によってギャップ部分31,32,33が挟まれているので、同様に寸法精度を高く保つことができる。
【0053】
ギャップ部分31は、磁性体によって構成されるコア領域181aとコア領域181bとによって両端を挟まれている。ギャップ部分32も、磁性体によって構成されるコア領域182aとコア領域182bとによって両端を挟まれている。ギャップ部分33も、磁性体によって構成されるコア領域183aとコア領域183bとによって両端を挟まれている。従って、ギャップ部分31,32,33からの磁束漏れを、コア領域181a,181b,182a,182b,183a,183bによって閉じ込めることができる。
【0054】
コア領域181aとコア領域181bとは、ギャップ部分31を挟むように独立して設けられてもよいけれども、ギャップ部分31を囲むように連続して設けられていても好ましいものである。ギャップ部分31を囲むように連続してコア領域181aとコア領域181bとを設ければ、ギャップ部分31からの磁束漏れをより効果的に抑制することができる。また、ギャップ部分32に対するコア領域182a,182bも、ギャップ部分33に対するコア領域183a,183bも同様である。
【符号の説明】
【0055】
FCS:燃料電池システム
EC:コントローラ
FC:燃料電池
FSS:燃料ガス供給系
FS1:燃料ガス供給源
FS2:インジェクタ
FS3:燃料ガス流路
FS4:循環流路
FS5:循環ポンプ
FS6:排気排水流路
H1:遮断弁
H2:レギュレータ
H3:遮断弁
H4:遮断弁
H5:排気排水弁
ASS:酸化ガス供給系
AS1:フィルタ
AS2:エアコンプレッサ
AS3:酸化ガス流路
AS4:酸化オフガス流路
AS5:加湿器
A3:背圧調整弁
CS:冷却系
CS1:ラジエータ
CS2:冷却液ポンプ
CS3:冷却液往路
CS4:冷却液復路
ES:電力系
ES1:コンバータ
ES2:バッテリ
ES3:トラクションインバータ
ES4:トラクションモータ
ES5:補機類
ES6:FC昇圧コンバータ
S1:電圧センサ
S2:電流センサ
S3:SOCセンサ
S4:圧力センサ
S5:水温センサ
S6:圧力センサ
S7:温度センサ
IG:起動信号
VC:車速信号
ACC:アクセル開度信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源である燃料電池、及び前記燃料電池の出力電圧を昇圧して負荷へ給電する昇圧コンバータを備える燃料電池システムであって、
前記昇圧コンバータは、
第一スイッチと第一コイルとを有し、前記第一スイッチが前記第一コイルに対してスイッチング動作することにより生ずる前記第一コイルの逆起電力で前記燃料電池の出力電圧を昇圧する主昇圧部と、
前記第一スイッチの両極間の電位差を蓄電量で調整するコンデンサを有し、前記スイッチング動作時に前記コンデンサの蓄電量を調整することで前記第一スイッチのスイッチング損失を減らす副昇圧部と、を有し、
前記副昇圧部は、第二スイッチと第二コイルとを有しており、
前記第二コイルは、磁性体によって形成されるコアの少なくとも一部に巻線を巻きつけて形成されるものであって、前記コアの前記巻線が巻きつけられている部分には非磁性体によって形成されるギャップが形成され、前記ギャップと前記巻線との間には磁性体によって形成されるコア領域が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記コア領域は、前記ギャップを囲むように前記巻線との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ギャップは、複数のギャップ部分によって構成されており、
それぞれのギャップ部分は、前記巻線との間に設けられている前記コア領域によって囲まれていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記ギャップが、前記コアに空洞を形成することで設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−130595(P2011−130595A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287097(P2009−287097)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】