説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、より好適な構成で燃料電池の正極母線あるいは負極母線からの漏電を検出することである。
【解決手段】燃料電池システム1において、FCスタック10と、正極側電流センサ42と、負極側電流センサ52と、制御部100とを備え、制御部100は、FCスタック10の正極母線7に流れる電流値とFCスタック10の負極母線8に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合には、正極母線7あるいは負極母線8から漏電していると判断し、正極母線7に流れる電流値と負極母線8に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも小さい場合には、正極母線7および負極母線8から漏電していないと判断することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに係り、特に、負荷回路に電力を供給するための燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハイブリッド車両等において燃料電池システムが利用されている。燃料電池システムは、燃料電池と負荷回路との間を正極母線および負極母線によって電気的に接続している。そして、燃料電池システムにおいて、正極母線あるいは負極母線がハイブリッド車両のボデー等に接触することにより、正極母線あるいは負極母線から漏電する可能性があるため、その漏電を検出することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、漏電検出装置として、高圧電源の両端と負荷の両端とが送電路を介して接続されるとともに高圧電源の一端及び負荷の一端がグランドから分離された高圧回路において漏電を検出する構成が開示されている。そして、高圧回路には、高圧電源の他端と負荷の他端とを接続する送電路に一端が接続されるとともにグランドに他端が接続された漏電検出用線路が設けられていることが開示されている。また、漏電検出用線路を流れる電流を検出する電流検出器と、電流検出器による電流検出値に基づいて漏電の発生を検出する漏電検出部とを備える構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、燃料電池発電システムとして、複数個発電セルを上下方向に積層して発電部とし、この発電部の上下端部を絶縁部材を介して締付金具により締付けると共に、発電部の上下端部から出力端子をそれぞれ引き出し、発電部の側面には配管部分を有する燃料及び酸化ガス供排用のマニホールドを配設する構成が開示されている。さらに、その周囲を圧力容器で覆って燃料電池本体を形成してなる燃料電池発電システムにおいて、出力端子のうちいずれか一方の出力端子とマニホールドとを電気的に接続して同電位とすると共に、この電気的接続部の電流または電圧を検出する検出する検出手段と、この検出手段による検出値と許容値とを比較処理する演算処理手段とを備えたものが開示されている。
【0005】
そして、特許文献3には、漏電検出装置として、燃料電池の冷却液にかかる電圧を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段により検出された電圧が電圧閾値以上であるときに漏電が生じていると検出する漏電検出手段とを備えた構成が開示されている。そして、燃料電池の冷却液の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、抵抗値検出手段により検出された抵抗値が大きいほど電圧閾値が大きくなるように電圧閾値を補正する補正手段とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226763号公報
【特許文献2】特開平4−301376号公報
【特許文献3】特開2006−100005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成によれば、漏電を検出することもできる。しかし、特許文献1の構成は、上記のように漏電検出用線路と電流検出器と漏電検出部とを別に設ける必要がある。
【0008】
特許文献2の構成によれば、燃料電池発電システムの発電部とマニホールドとの間に絶縁不良が生じてリーク電流が流れるような異常状態を検出することは記載されているが、燃料電池の正極母線あるいは負極母線から漏電する構成は記載されていない。
【0009】
特許文献3の構成によれば、燃料電池における漏電を検出することができる。しかし、特許文献3の構成は、上記のように電圧検出手段と漏電検出手段と抵抗検出手段と補正手段とを別に設ける必要がある。
【0010】
本発明の目的は、より好適な構成で燃料電池の正極母線あるいは負極母線からの漏電を検出することを可能とする燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料電池システムは、負荷回路に電力を供給するための燃料電池と、燃料電池の正極母線に流れる電流を検出可能な正極側電流センサと、燃料電池の負極母線に流れる電流を検出可能な負極側電流センサと、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線から漏電しているか否かを判断する制御部と、を備え、制御部は、燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合には、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線から漏電していると判断し、燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも小さい場合には、燃料電池の正極母線および燃料電池の負極母線から漏電していないと判断することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、燃料電池と負荷回路との間に設けられ、燃料電池の正極母線に流れる電流を遮断可能な正極側リレー回路部と、燃料電池と負荷回路との間に設けられ、燃料電池の負極母線に流れる電流を遮断可能な負極側リレー回路部と、を備え、制御部は、燃料電池の正極母線に流れる電流値が燃料電池の負極母線に流れる電流値よりも大きいときは、正極側リレー回路部を遮断させ、燃料電池の正極母線に流れる電流値が燃料電池の負極母線に流れる電流値よりも小さいときは、負極側リレー回路部を遮断させることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御部は、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部を遮断した後に、さらに燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線に電流が流れている場合には、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも燃料電池側において漏電していると判断し、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部を遮断した後に、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線に電流が流れていない場合には、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも負荷回路側において漏電していると判断することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、燃料電池に対して冷却液を供給するための冷却液配管と、冷却液配管内に流れる冷却液の流量を減少させることが可能な弁体部と、を備え、制御部は、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも燃料電池側において漏電していると判断した場合に、冷却液配管内に流れる冷却液の流量を減少させるように弁体部を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の燃料電池システムによれば、燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合には、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線から漏電していると判断することができる。そして、燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも小さい場合には、燃料電池の正極母線および燃料電池の負極母線から漏電していないと判断することができる。これにより、燃料電池の正極母線あるいは負極母線からの漏電を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態において、燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、FCスタック及び冷却液循環路等により形成される電気回路とそれに接続される負荷側の電気回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、弁体部の弁体が作動する前後の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、弁体部の弁体が作動する前後の様子を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、制御部の各要素を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、燃料電池システムの正極母線あるいは負極母線からの漏電の検出の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態の変形例において、FCスタック及び冷却液循環路等により形成される電気回路とそれに接続される負荷側の電気回路を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例において、燃料電池システムの正極母線あるいは負極母線からの漏電の検出の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0018】
図1は、燃料電池システム1の概略構成を示す図である。図2は、燃料電池システム1においてFCスタック10及び冷却液循環路12等により形成される電気回路とそれに接続される負荷側の電気回路を示す図である。燃料電池システム1は、FCスタック10と、弁体部20と、冷却液循環路12と、冷却液ポンプ14と、ラジエータ16と、制御部100と、正極側電流センサ42と、負極側電流センサ52と、正極側リレー回路部44と、負極側リレー回路部54と、高圧負荷5とを含んで構成される。
【0019】
FCスタック10は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池である。FCスタック10は、図示しない空気供給装置及び水素供給装置のそれぞれから空気及び水素の供給を受けて電力を発生し、発生した電力を高圧負荷5に供給する。
【0020】
FCスタック10の作動中の温度を所定の温度範囲に保つため、FCスタック10は、冷却液循環路12と、冷却液ポンプ14と、ラジエータ16を含む冷却装置により冷却される。
【0021】
冷却液循環路12は、FCスタック10を冷却する冷却液が循環する経路である。また、冷却液循環路12は、適当な外力によって変形可能な材料から構成されている。冷却液循環路12には、冷却液ポンプ14及びラジエータ16が設けられる。冷却液ポンプ14は、冷却液を冷却液循環路12に循環させるためのポンプであり、後述の制御部100からの制御信号に従って作動あるいは停止する。ラジエータ16は、冷却液循環路12を通る冷却液の熱を放出させて冷却液を冷却する熱交換装置である。
【0022】
図1において、冷却液は、冷却液循環路12中に示す実線矢印の方向に循環する。FCスタック10から熱を奪って温められた冷却液は、冷却液ポンプ14によりラジエータ16に送られ、ラジエータ16で熱を放出して冷却された後、再びFCスタック10に送られてFCスタック10の熱を奪う。導電性の冷却液(例えば、エチレングリコールなどの不凍液)は、FCスタック10の作動中にFCスタック10を通ると帯電する。このとき、冷却液循環路12は、帯電した冷却液により電気回路を形成する。
【0023】
図2を参照し、FCスタック10は、弁体部20、冷却液抵抗R(冷却液抵抗60)、及び冷却系部品抵抗Y(冷却系部品抵抗70)を介して車両ボデーに接続されている。冷却液抵抗Rは、冷却液の導電率、冷却液循環路12を形成する配管の内径、及び当該配管の長さに基づいて定まる電気抵抗である。また、冷却系部品抵抗Yは、冷却液ポンプ14及びラジエータ16など、冷却装置が備える部品の電気抵抗である。
【0024】
高圧負荷5は、高電圧でスイッチング動作を行うインバータ回路(図示しない)等の負荷回路である。FCスタック10と高圧負荷5とは、正極母線7と負極母線8とを含んで構成される。正極母線7は、FCスタック10の正極側端子と高圧負荷5の正極側端子との間を接続する配線であり、燃料電池側正極母線7aと負荷回路側正極母線7bとを含んで構成される。負極母線8は、FCスタック10の負極側端子と高圧負荷5の負極側端子との間を接続する配線であり、燃料電池側負極母線8aと負荷回路側負極母線8bとを含んで構成される。
【0025】
正極側リレー回路部44は、燃料電池側正極母線7aと負荷回路側正極母線7bとの間に接続されるリレーであり、制御部100の制御指令によって接続あるいは遮断の制御が行われる。負極側リレー回路部54は、燃料電池側負極母線8aと負荷回路側負極母線8bとの間に接続されるリレーであり、制御部100の制御指令によって接続あるいは遮断の制御が行われる。
【0026】
正極側電流センサ42は、燃料電池側正極母線7a上に設けられ、FCスタック10の正極側に流れる電流値を検出する機能を有する。負極側電流センサ52は、燃料電池側負極母線8a上に設けられ、FCスタック10の負極側に流れる電流値を検出する機能を有する。
【0027】
FCスタックケース30は、FCスタック10及びFCスタック10に接続された電気回路などを収容する容器である。FCスタックケース30は、絶縁性を有する材料により形成される。図1では、FCスタックケース30内には、FCスタック10とともに、冷却液循環路12の一部及びそれに設けられた弁体部20が収容される。
【0028】
弁体部20は、冷却液循環路12を電気的に遮断可能な機構である。図1において、弁体部20は、冷却液循環路12のうちFCスタック10への冷却液の流入口付近と、冷却液循環路12のうちFCスタック10からの冷却液の流出口付近とに設けられる。弁体部20は、制御部100の制御によって冷却液循環路12に流れる冷却液の流量を減少させることができる。なお、弁体部20は、図2に示されるようにFCスタック10の正極側電位と負極側電位との間の電位である中間電位9となるようにFCスタック10に接続されている。
【0029】
図3は、弁体部20の具体的な構造を示す図である。弁体部20は、モータ202と冷却液循環路12の外周面に沿って巻回された紐状の弁体204とを含んで構成される。通常時は、図3(a)に示されるように、モータ202は作動していないため、冷却液循環路12に流れる冷却液の流量はある一定量となっている。そして、制御部100によって冷却液循環路12に流れる流量を減少させるように制御される場合には、図3(b)に示されるように、モータ202によって弁体204が矢印D方向に引き上げられる。これにより、冷却液循環路12の断面積が減少するため、冷却液循環路12に流れる冷却液の流量も減少する。
【0030】
なお、弁体部20は、上記において図3に示された構成であるものとして説明したが、図4に示された構成の弁体部20であってもよい。図4は、弁体部20の具体的な構造を示す図である。弁体部20は、モータ202と、冷却液循環路12の内部に設けられる略円盤形状の弁体206とを含んで構成される。通常時は、図4(a)に示されるように、略円盤形状の弁体206の円盤形状の厚み方向が冷却液の流れる方向に直交するように位置される。そして、制御部100によって冷却液循環路12に流れる流量を減少させるように制御される場合には、図4(b)に示されるように、弁体206の円盤形状の厚み方向が冷却液の流れる方向と平行となるように位置される。これにより、冷却液の流れが弁体206の円盤面によって抑制されるため、冷却液循環路12に流れる冷却液の流量も減少する。
【0031】
図5は、制御部100の各要素を示す図である。制御部100は、第1漏電電流判断処理部I/F114と、リレー制御処理部I/F116と、第2漏電電流判断処理部I/F118と、弁体制御処理部I/F120と、報知処理部I/F122と、記憶部112と、CPU101とを含んで構成される。各要素は、内部バスを通じて相互に接続される。かかる制御部100は、燃料電池システム1に適したコンピュータを用いることができる。
【0032】
第1漏電電流判断処理部I/F114は、正極側電流センサ42と負極側電流センサ52に接続されるインターフェース回路である。リレー制御処理部I/F116は、正極側リレー回路部44と負極側リレー回路部54と接続されるインターフェース回路である。第2漏電電流判断処理部I/F118は、正極側電流センサ42と負極側電流センサ52に接続されるインターフェース回路である。弁体制御処理部I/F120は、弁体部20と接続されるインターフェース回路である。報知処理部I/F122は、漏電の検出結果を報知するための報知部(図示しない)と接続されるインターフェース回路である。
【0033】
CPU101は、第1漏電電流判断処理部102と、リレー制御処理部104と、第2漏電電流判断処理部106と、弁体制御処理部108と、報知処理部110とを含んで構成される。これらの各機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には記憶部112に記憶された漏電検出プログラムを実行することにより実現できる。また、これらの各機能の一部をハードウェアとして実現するものとしてもよい。
【0034】
第1漏電電流判断処理部102は、正極側電流センサ42によって検出された電流値Ipと、負極側電流センサ52によって検出された電流値Imとを第1漏電電流判断処理部I/F114を介して取得し、電流値Ipと電流値Imの差分に基づいて、正極母線7あるいは負極母線8からの漏電電流を検出する機能を有する。そして、第1漏電電流判断処理部102は、電流値Ipと電流値Imの大きさを比較することで、正極母線7あるいは負極母線8のいずれから漏電しているかを判断する機能を有する。
【0035】
リレー制御処理部104は、正極側リレー回路部44と負極側リレー回路部54に対し、リレー制御処理部I/F116を介して遮断制御する機能を有する。具体的には、第1漏電電流判断処理部102により正極母線7から漏電していると判断された場合には、正極側リレー回路部44に対して遮断制御する。そして、第1漏電電流判断処理部102により負極母線8から漏電していると判断された場合には、負極側リレー回路部54に対して遮断制御する。
【0036】
第2漏電電流判断処理部106は、正極側電流センサ42によって検出された電流値Ipと、負極側電流センサ52によって検出された電流値Imとを第2漏電電流判断処理部I/F118を介して取得し、電流値Ipあるいは電流値Imの値に基づいて、正極母線7あるいは負極母線8のうち、FCスタック10側(燃料電池側)か高圧負荷5側(負荷回路側)のいずれから漏電しているかを判断する機能を有する。例えば、第1漏電電流判断処理部102により正極母線7から漏電していると判断され、リレー制御処理部104により、正極側リレー回路部52が遮断された後も電流が流れている場合には燃料電池側正極母線7aから漏電していると判断する。一方、正極側リレー回路部52が遮断された後に電流が流れていない場合には負荷回路側正極母線7bから漏電していると判断する。
【0037】
弁体制御処理部108は、第2漏電電流判断処理部106によって燃料電池側正極母線7aあるいは燃料電池側負極母線8aから漏電していると判断された場合には、弁体部20に対し、冷却液循環路12に流れる冷却液の流量を減少させるように制御する。
【0038】
報知処理部110は、第1漏電電流判断処理部102、第2漏電電流判断処理部106の判断により、正極母線7あるいは負極母線8から漏電していると判断された場合には、漏電している箇所等の情報を報知処理部I/F122を介して報知部(図示しない)に対して出力する機能を有する。
【0039】
続いて、上記構成の燃料電池システム1の動作について図1〜図6を参照して説明する。図6は、燃料電池システム1において、正極母線7あるいは負極母線8からの漏電の検出の手順を示すフローチャートである。まず、制御部100において記憶部112に記憶された漏電検出プログラムを実行する。
【0040】
最初に、制御部100において、電流値Ipと電流値Imの差分の絶対値が所定の閾値Aよりも大きいか否かを判断する(S10)。具体的には、正極側電流センサ42によって検出された電流値Ipと負極側電流センサ52によって検出された電流値Imとを第1漏電電流判断処理部I/F114を介して取得し、電流値Ipと電流値Imの差分の絶対値が閾値Aより大きいか否かを判断する。この工程は、CPU101の第1漏電電流判断処理部102の機能によって実行される。電流値Ipと電流値Imの差分の絶対値が閾値Aより小さいと判断された場合には、S20へと進む。
【0041】
電流値Ipと電流値Imの差分の絶対値が閾値Aより大きいと判断された場合には、電流値Ipが電流値Imよりも大きいか否かを判断する(S12)。この工程は、CPU101の第1漏電電流判断処理部102の機能によって実行される。
【0042】
S12において、電流値Ipが電流値Imよりも大きいと判断された場合には、正極側リレー回路部44を遮断させる(S14)。この工程は、CPU101のリレー制御処理部104の機能によって実行される。その後は、S16へと進む。
【0043】
S12において、電流値Ipが電流値Imよりも小さいと判断された場合には、負極側リレー回路部54を遮断させる(S15)。この工程は、CPU101のリレー制御処理部104の機能によって実行される。その後は、S16へと進む。
【0044】
S16では、電流値Ipあるいは電流値Imの絶対値が所定の閾値Bよりも大きいか否かを判断する(S16)。具体的には、正極側電流センサ42によって検出された電流値Ipと負極側電流センサ52によって検出された電流値Imとを第2漏電電流判断処理部I/F118を介して取得し、電流値Ipあるいは電流値Imの絶対値が閾値Bより大きいか否かを判断する。この工程は、CPU101の第2漏電電流判断処理部106の機能によって実行される。電流値Ipあるいは電流値Imの絶対値が閾値Bよりも小さいときは、S20へと進む。
【0045】
電流値Ipあるいは電流値Imの絶対値が閾値Bよりも大きいときは、弁体部20の制御を開始する(S18)。具体的には、弁体部20に対し冷却液循環路12に流れる冷却液の流量を減少させることができる。この工程は、CPU101の弁体制御処理部108の機能によって実行される。
【0046】
S20において、燃料電池システム1における漏電状態を報知させる(S20)。この工程は、CPU101の報知処理部110の機能によって実行される。具体的には、S10において、電流値Ipと電流値Imの差分の絶対値が閾値Aよりも大きいと判断された場合に燃料電池システム1に漏電があることを報知させるための情報を報知部に出力する。そして、S12において、電流値Ipが電流値Imよりも大きいときは、正極母線7から漏電していることを報知し、電流値Ipが電流値Imよりも小さいときは、負極母線8から漏電していることを報知する。さらに、S16において、電流値Ipの絶対値が閾値Bよりも大きいときは、燃料電池側正極母線7aから漏電していると報知し、電流値Ipの絶対値が閾値Bよりも小さいときは、負荷回路側正極母線7bから漏電していると報知する。そして、S16において、電流値Imの絶対値が閾値Bよりも大きいときは、燃料電池側負極母線8aから漏電していると報知し、電流値Imの絶対値が閾値Bよりも小さいときは、負荷回路側負極母線8bから漏電していると報知する。
【0047】
このように、燃料電池システム1によれば、正極母線7あるいは負極母線8から漏電しているか否かを判断することができるとともに、正極側リレー回路部44あるいは負極側リレー回路部54を遮断することで、負荷回路側正極母線7bあるいは負荷回路側負極母線8bからの漏電を防止することができる。さらに、正極母線7あるいは負極母線8から漏電している場合に、燃料電池側正極母線7a、負荷回路側正極母線7b、燃料電池側負極母線8a、負荷回路側負極母線8bのいずれから漏電しているかを識別することができるとともに、燃料電池側正極母線7a、燃料電池側負極母線8aから漏電している場合であっても、弁体部20を制御することで、漏電を抑制することができる。
【0048】
次に、燃料電池システム1の変形例である燃料電池システム2について説明する。燃料電池システム2と燃料電池システム1との相違は、弁体部20の接続だけであるため、その点を中心に説明する。図7は、燃料電池システム2においてFCスタック10及び冷却液循環路12等により形成される電気回路とそれに接続される負荷側の電気回路を示す図である。
【0049】
弁体部20は、FCスタック10の負極側端子に接続され、その電位が負極側電位と同電位(換言すれば、負極母線8と同電位)となっている。このため、燃料電池システム2においては、例えば、車両のボデー等と負極母線8とが接触した場合であっても負極母線8から漏電することはない。
【0050】
続いて、上記構成の燃料電池システム2の動作について図7,8を用いて説明する。図8は、燃料電池システム2において、正極母線7あるいは負極母線8からの漏電の検出の手順を示すフローチャートである。ここで、燃料電池システム2における漏電の検出の手順は、図6において示される燃料電池システム1における漏電の検出の手順とほぼ同じ手順であり、その相違点を中心に説明する。
【0051】
S10の工程を終えた後、燃料電池システム2においては、負極母線8に電流が流れることはないため、図6において示されたS12の工程(電流値Ipと電流値Imの比較)については行なう必要がなく、正極母線7から漏電していると判断でき、S14以降の処理へと進むことができる。
【0052】
このように、燃料電池システム2によれば、正極母線7から漏電しているか否かを判断することができ、正極側リレー回路部44を遮断することで、負荷回路側正極母線7bからの漏電を防止することができる。さらに、正極母線7から漏電している場合に、燃料電池側正極母線7a、負荷回路側正極母線7bのいずれから漏電しているかを識別することができ、燃料電池側正極母線7aから漏電している場合であっても、弁体部20を制御することで、漏電を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2 燃料電池システム、5 高圧負荷、7 正極母線、7a 燃料電池側正極母線、7b 負荷回路側正極母線、8 負極母線、8a 燃料電池側負極母線、8b 負荷回路側負極母線、9 中間電位、10 FCスタック、12 冷却液循環路、14 冷却液ポンプ、16 ラジエータ、20 弁体部、30 FCスタックケース、42 正極側電流センサ、44 正極側リレー回路部、52 負極側電流センサ、54 負極側リレー回路部、60 冷却液抵抗、70 冷却系部品抵抗、100 制御部、101 CPU、102 第1漏電電流判断処理部、104 リレー制御処理部、106 第2漏電電流判断処理部、108 弁体制御処理部、110 報知処理部、112 記憶部、202 モータ、204,206 弁体、114 第1漏電電流判断処理部I/F、116 リレー制御処理部I/F、118 第2漏電電流判断処理部I/F、120 弁体制御処理部I/F、122 報知処理部I/F。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷回路に電力を供給するための燃料電池と、
燃料電池の正極母線に流れる電流を検出可能な正極側電流センサと、
燃料電池の負極母線に流れる電流を検出可能な負極側電流センサと、
燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線から漏電しているか否かを判断する制御部と、
を備え、
制御部は、
燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合には、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線から漏電していると判断し、
燃料電池の正極母線に流れる電流値と燃料電池の負極母線に流れる電流値の差分が予め定めた閾値よりも小さい場合には、燃料電池の正極母線および燃料電池の負極母線から漏電していないと判断することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池と負荷回路との間に設けられ、燃料電池の正極母線に流れる電流を遮断可能な正極側リレー回路部と、
燃料電池と負荷回路との間に設けられ、燃料電池の負極母線に流れる電流を遮断可能な負極側リレー回路部と、
を備え、
制御部は、
燃料電池の正極母線に流れる電流値が燃料電池の負極母線に流れる電流値よりも大きいときは、正極側リレー回路部を遮断させ、
燃料電池の正極母線に流れる電流値が燃料電池の負極母線に流れる電流値よりも小さいときは、負極側リレー回路部を遮断させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
制御部は、
正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部を遮断した後に、さらに燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線に電流が流れている場合には、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも燃料電池側において漏電していると判断し、
正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部を遮断した後に、燃料電池の正極母線あるいは燃料電池の負極母線に電流が流れていない場合には、正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも負荷回路側において漏電していると判断することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池に対して冷却液を供給するための冷却液配管と、
冷却液配管内に流れる冷却液の流量を減少させることが可能な弁体部と、
を備え、
制御部は、
正極側リレー回路部あるいは負極側リレー回路部よりも燃料電池側において漏電していると判断した場合に、冷却液配管内に流れる冷却液の流量を減少させるように弁体部を制御することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−3445(P2011−3445A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146516(P2009−146516)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】