燃料電池システム
【課題】原料ガスの露点の変化に対応でき、加えて、原料ガスの流量を計測する流量計の保護性を高めた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池と、カソードガス通路70と、改質器2Aと、ガス搬送源60を有する原料ガス通路6とを有する。原料ガス通路6は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する第1脱硫器100と、第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させる第2脱硫器200と、流量計300とを有する。原料ガス通路6は上流から下流にかけて第1脱硫器100、第2脱硫器200および流量計300をこの順に有する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池と、カソードガス通路70と、改質器2Aと、ガス搬送源60を有する原料ガス通路6とを有する。原料ガス通路6は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する第1脱硫器100と、第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させる第2脱硫器200と、流量計300とを有する。原料ガス通路6は上流から下流にかけて第1脱硫器100、第2脱硫器200および流量計300をこの順に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原料ガスを脱硫させる脱硫器を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はLPG用脱硫器を開示する。この脱硫器は常温用脱硫器と高温用(>100℃)脱硫器とに2つに分割されている。また、常温用脱硫器は上流側に配置されており、原料ガスに使用されている付臭剤で比較的脱硫させ易いイオウ化合物(TBMやDMS)用とされている。高温用脱硫器は、常温用脱硫器よりも下流側に配置されており、LPG特有のイオウ化合物(COS等)を吸着するためのものであり、Ni等の金属酸化物を使用している。
【0003】
特許文献2によれば、特許文献1と基本的には同じ構成であり、常温用脱硫器と高温用脱硫器とに2つに分割されている。高温用脱硫器は50℃以上の運転温度とされている。高温用脱硫器の脱硫剤はLPG用と考えられる。特許文献3によれば、常温脱硫器と水素添加型の脱硫器(高温)との2つの脱硫方法(脱硫器)を組み合わせたものであり、起動時に水素添加による脱硫効果が不足することを、常温脱硫器で補うことを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-111766号公報
【特許文献2】特開2006-265480号公報
【特許文献3】特開平5-114414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、高温の脱硫部はLPG特有の硫黄化合物を金属酸化物等により、LPG特有の硫黄化合物を吸着除去するものであって、原料ガスに含まれる水蒸気による脱硫剤のダメージの問題を解決するものではない。特許文献3によれば、高温の脱硫器は水素添加脱硫を目的とするものであって、脱硫には水素を必須とする。
【0006】
ところで、ガス会社から供給される原料ガス(都市ガス)には、水分が含まれる場合がある。脱硫剤は一般的にはゼオライトや活性炭等の多孔質物質を使用し、常温の温度環境で使用され、硫黄化合物を吸着させて脱硫する。しかし、多孔質物質を基材とする脱硫剤は低コストである利点を有するものの、水蒸気が相対的に多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気を硫黄化合物よりも優先的に吸着させる性質を有する。結果として、高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫効果が過剰に低下してしまうおそれがある(図12参照)。
【0007】
一般的には、水蒸気が少ない低露点の原料ガスが産業界では供給されている。しかし、ガス工事や配管の影響等で、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加し、原料ガスが高露点となることが間々ある。ここで、露点が高い原料ガスに含まれる水蒸気によって、脱硫剤は原料ガスの硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫剤の脱硫効果が低下してしまうおそれがある。この問題を回避するために、脱硫剤の使用量を必要以上に増加させることが必要であり、コストが莫大になり、燃料電池システムのサイズが大型化されるので非実用的である。更に、上記した特許文献では、流量計の位置や長寿命化については言及されていない。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫でき、これにより原料ガスの露点の変化に対応でき、加えて、原料ガスの流量を計測する流量計の保護性を高め、流量計の長寿命化に貢献できる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は燃料電池システム用脱硫装置について鋭意開発を進めている。そして本発明者は、(i)(ii)に着目した。
(i)産業界では、一般的には、相対的に低露点(例えば−20℃露点以下)の原料ガスが供給されている。しかしガス工事や配管等の様々な事情で、相対的に高露点の原料ガスが供給されることが間々あること。
(ii)一般的な脱硫剤は、原料ガスに含まれる水蒸気を吸着させ易く、そのため脱硫剤に存在する吸着サイトが水蒸気に奪われ、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着が困難になる。しかし、上記したように水蒸気ダメージがある脱硫剤といえども、高温の温度環境(例えば40℃以上、50℃以上)では、水蒸気を吸着しにくくなるため、水蒸気の影響が少なくなり、脱硫能力が維持され易い。本発明はかかる着目に基づいて完成されたものである。
【0010】
(1)すなわち、様相1に係る燃料電池システムは、アノードおよびカソードを有する燃料電池と、燃料電池のカソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、原料ガスを脱硫させた状態で改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、改質器で生成されたアノードガスを燃料電池のアノードに供給させるアノードガス通路とを具備しており、原料ガス通路は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器と、第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させる低温設置型の第2脱硫器と、原料ガスの流量を計測する流量計とを具備しており、原料ガス通路は、上流から下流にかけて、第1脱硫器、第2脱硫器および流量計をこの順に配置させている。
【0011】
原料ガスは、通常、低露点のガス(例えば−20℃露点以下)として供給される。しかしガス工事や配管等の影響で高露点のガスとして(例えば+20℃露点以上)供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤は短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器等に流入し、改質器等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつものであるため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ低温設置型の第2脱硫器が第1脱硫器と併設されているため、第1脱硫器での不足分については第2脱硫器を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。
【0012】
ここで、高温設置型の高温、低温設置型の低温は、相対的な温度の高低を意味するものである。高温設置型の第1脱硫器は、燃料電池システムの筐体の内部において、一般的には50℃以上〜230℃の温度領域に配置される。低温設置型の第2脱硫器は、燃料電池システムの筐体の内部において、第1脱硫器よりも低温の環境に設置され、一般的には0℃以上〜50℃未満の温度領域に配置される。
【0013】
なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、次の不具合があるため、不具合を解消させるため、第1脱硫器の他に、低温設置型の第2脱硫器を設けることが好ましい。低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には脱硫剤の温度が低温ほど、脱硫効率が良い。従って低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が必ずしも充分ではなく、第1脱硫器の脱硫剤の使用量を増加させる必要がある不具合が生じる。この場合、第1脱硫器からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。更に、高温設置型の第1脱硫器に使用される第1脱硫剤は、一般市場には、低温設置型の第2脱硫器に使用される第2脱硫剤に対して高価であることが多い。
【0014】
しかし様相1の燃料電池システムによれば、第1脱硫器および第2脱硫器の双方を設けている。そして、高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)については高温設置型の第1脱硫器で主として分担し、低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)については低温設置型の第2脱硫器で主として分担することで、コストが高い第1脱硫剤の使用量をできるだけ低減でき、コスト低減が図れる。更に、第1脱硫剤および第2脱硫剤の全体としての使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。
【0015】
また、脱硫剤は、一般的には、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性をもつ。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、脱硫剤温度の変化に伴い、原料ガスの主要成分である炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。殊に、第1脱硫器のように高温域に設置される場合には、その影響が更に大きい。このため、従来技術のように流量計が脱硫器よりも上流にあるときには、流量計で原料ガスの流量を計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生し、結果として、改質器に供給される原料ガスの実流量が変動するおそれがある。すなわち、脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの実流量の過剰または不足が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、改質器において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、異常高温が発生し、劣化が促進させるおそれがある。そのため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器よりも下流に流量計を設置することが好ましい。
【0016】
しかし、高温設置型の第1脱硫器よりも下流に流量計が設置されている場合には、第1脱硫器を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスの温度は流量計の耐熱温度以上となり易いため、流量計の長寿命化には好ましない。そこで様相1に係る燃料電池システムによれば、第1脱硫器および第2脱硫器の双方よりも下流に流量計を設置させる。このように原料ガスを高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器→流量計の順に流す。これにより高温の第1脱硫器を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器で授受し,第2脱硫器において放熱させる。このため流量計へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができ、流量計の耐熱の問題も解消することが可能となり、流量計の長寿命化に有利である。また、第1脱硫器を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。
【0017】
前述したように、脱硫剤は、水蒸気を吸着させ易く、そのため吸着サイトが水蒸気に奪われて硫黄化合物の吸着が困難になるという水蒸気ダメージを受け易い性質をもつ。しかし、このような脱硫剤といえども、高温領域(例えば50℃以上)では、水蒸気を吸着しにくくなるため、水蒸気ダメージを少なくでき、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に吸着できる。このため脱硫剤の使用量の増加を抑えることができる。上記したように様相1に係る燃料電池システムによれば、水蒸気が少なめの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、良好に脱硫を行うことができる。このように原料ガスの露点が変化するときであっても、高温設置型の第1脱硫器は、原料ガスの脱硫を良好に行うことができる。更に、高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器の順に直列に配置されているため、原料ガスに含まれる水蒸気を第1脱硫器で吸着でき、第2脱硫器への影響を低減できる。なお第1脱硫器は水素添加型でも良い。
【0018】
(2)様相2に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、原料ガス通路は、バッファ室をもつバッファをもち、上流から下流にかけて、第1脱硫器と、第2脱硫器と、流量計と、バッファと、ガス搬送源とをこの順に配置させている。ポンプ等のガス搬送源は、原料ガス通路において原料ガスを改質器に向けて搬送させるものであるが、作動条件によっては、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで、第1脱硫器、第2脱硫器、流量計、バッファ、ガス搬送源をこの順に直列に配置すれば、流量計とガス搬送源との間に、脈動緩衝用のバッファが介在する。このため、流量計は、ガス搬送源の脈動の影響を受けにくくなり、システムの安定運転に有利である。バッファは中空室であるバッファ室を有する。
【0019】
(3)様相3に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、原料ガス通路は、上流から下流にかけて、ガス搬送源と、第1脱硫器と、第2脱硫器と、流量計とをこの順に配置させている。ポンプ等のガス搬送源と流量計との間には、ガス搬送源による原料ガスの脈動の影響を防止するためにバッファが設けられていることが好ましい。そこで、ポンプ等のガス搬送源を第1脱硫器の上流に設置する。この場合、ガス搬送源と流量計との間に配置された第1脱硫器および第2脱硫器が脱硫作用とバッファ作用と果たすことができる。このように第1脱硫器および第2脱硫器がバッファを兼用するため、専用のバッファを設けることが不要であり、システムの小型化、低コスト化が図れる。なお、ポンプ等のガス搬送源に起因する脈動で流量計の計測値が変動した場合には、システムの制御性が低下することに加えて、流量計の絶対値が真値からずれ、改質器へ供給される原料ガスの流量が過剰または不足したりする可能性があり、システムの劣化要因となり、好ましくない。
【0020】
(4)様相4に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、第1脱硫器は、改質器および/または燃料電池を覆う断熱壁、または、改質器から排出される排ガス通路の熱を受熱する温度環境に設置されている。システムとして熱回収できない放熱分を利用して第1脱硫器を暖める。これにより熱回収効率の過剰低下等を発生させることなく、高温設置型の第1脱硫器を適当な高温環境(例えば50〜230℃)に保持できる。従って、第1脱硫器の機能(高露点の原料ガスに対して良好な脱硫能を有する機能)を良好に果たすことができる。
【0021】
(5)様相5に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、燃料電池システムの発電運転で加熱された温水が通過する貯湯通路と、貯湯通路に連通し貯湯通路から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられており、第1脱硫器は、貯湯通路および貯湯槽のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている。温水(一般的には70〜80℃)と熱交換することにより、第1脱硫器の温度を適温に維持しやすい。更に貯湯通路の水は熱容量が大きいため、第1脱硫器内の温度分布を低減させることが可能となる。これにより第1脱硫器の使用量の低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫でき、これにより原料ガスの露点の変化に対応できる。
【0023】
加えて、高温設置型の第1脱硫器を通過した原料ガスの熱を低温設置型の第2脱硫器で授受し,第2脱硫器において放熱させる。このため第2脱硫器よりも下流に配置されている流量計へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができ、流量計の耐熱の問題も抑制させることができ、流量計の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図2】実施形態2に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図3】実施形態3に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図4】実施形態4に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図5】実施形態5に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図6】参考形態1に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図7】実施形態6に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図8】実施形態7に係り、発電モジュールに付設されている第1脱硫器を示す概念図である。
【図9】実施形態8に係り、第1脱硫器を示す概念図である。
【図10】実施形態9に係り、第1脱硫器を示す概念図である。
【図11】適用形態に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図12】脱硫剤で形成された脱硫剤の温度と硫黄吸着能力と原料ガスの露点との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器に収容される脱硫剤の基材として、ゼオライト、遷移金属等の金属を担持したゼオライト、活性炭、アルミナやセリアなどの金属酸化物等の多孔性物質が挙げられる。このよう脱硫剤の吸着原理は物理的吸着であると考えられているが、遷移金属等の金属を含む場合には、物理的吸着の他に化学的吸着も併有する形態でも良い。上記した金属としては、銀、銅、金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、鉄、クロム、モリブデンのうちの少なくとも1種が例示され、更に、これらを2種以上含む合金が例示される。第1脱硫剤は上記した金属を含むことが好ましい。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に空隙を持つものの総称であり、天然ゼオライトでも人工ゼオライトでも良い。脱硫剤は、原料ガスに含まれる硫黄化合物(例えばメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルフィド)だけでなく、原料ガスに含まれる水蒸気やHC等を物理吸着させる。脱硫剤はその吸着能力は水蒸気等の吸着物の種類や脱硫剤の温度により変化し、殊に常温領域では水蒸気によりダメージを受け易い。ここで、脱硫剤において、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着を妨害する物質のうち、最も影響が大きいのが原料ガスに含まれる水蒸気と考えられている。よって、低露点(例えば0℃以下、−10℃以下)の原料ガスを脱硫剤で脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の含有量が少なく、水蒸気の影響が少ないため、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる能力が効果的に発揮される。しかし、高露点の原料ガスを常温領域の脱硫剤に通過させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加しているため、脱硫剤は水蒸気の影響を受け易く、脱硫剤が硫黄化合物を吸着させる能力を激減させる。このような性質を有する脱硫剤といえども、温度環境が高温(例えば、40℃以上、50℃以上、200℃以下)になれば、水蒸気が脱硫剤に吸着されにくくなり、脱硫剤における水蒸気ダメージが激減し、結果として、脱硫剤が硫黄化合物を吸着させる量が良好に確保される。従って高温設置型の第1脱硫器は、高露点の原料ガスに対して有意義である。
【0026】
図12は、ゼオライト系の脱硫剤の温度と、脱硫剤の硫黄吸着能力と、脱硫剤で脱硫される原料ガスの露点との関係を示す。図12において、特性線W1は、原料ガスの露点が−18℃の場合を示す。特性線W2は、原料ガスの露点が−5℃の場合を示す。特性線W3は、原料ガスの露点が+20℃の場合を示す。原料ガスの露点温度が−5℃および−18℃と低い場合には、原料ガスに含まれる水蒸気量が少ないため、特性線W1,W2として示すように、脱硫剤の温度が20℃以上120℃の領域において変化したとしても、硫黄吸着能力は基本的には良好に維持される。これに対して、特性線W3として示すように、原料ガスの露点温度が+20℃と高温の場合には、原料ガスに含まれる水蒸気量が多いため、水蒸気の影響を受け、脱硫剤の硫黄吸着能力は低めとなる。特性線W3として示すように、脱硫剤の温度が20℃以上50℃未満の温度領域に低下すると、脱硫剤の硫黄吸着能力は急激に低下してしまう。このような特性をもつ多孔質物質を基材とする脱硫剤といえども、図12から理解できるように、脱硫剤の温度が50℃〜120℃と高温領域であれば、原料ガスの露点が+20℃の場合であっても、特性線W3の線部分WAとして示すように、脱硫剤の硫黄吸着能力は、原料ガスの露点が低い場合比較して若干低下するものの、良好に確保される。70120℃〜200℃であっても同様と考えられる。このように露点が高くて水蒸気が多い原料ガスの場合には、硫黄吸着能力が著しく低下するという特性をもつ脱硫剤といえども、高温の温度環境に設置すれば、高露点で水蒸気量が多い原料ガスに対しても、硫黄吸着能力を良好に確保でき、勿論、低露点で水蒸気が少ない原料ガスに対しても、硫黄吸着能力を良好に確保できる。
【0027】
(実施形態1)
図1は実施形態1を示し、燃料電池システムは、アノード10およびカソード11を有する燃料電池1と、燃料電池1のカソード11にカソードガス(空気等の酸素含有ガス)を供給するカソードガス通路70と、原料ガスを改質させてアノードガス(水素含有ガスまたは水素ガス)を生成させる改質器2Aと、原料ガスを脱硫させた状態で改質器2Aに供給させるガス搬送源として機能するポンプ60を有する原料ガス通路6と、改質器2Aで生成されたアノードガスを燃料電池1のアノード10に供給させるアノードガス通路73と、アノードガス通路73、改質器2Aおよび燃料電池1を収容する断熱壁19とを有する。発電モジュール18は、改質器2A、燃料電池1、断熱壁19で形成されている。改質用の水または水蒸気が供給させる給水通路8が改質器2Aに接続されている。
【0028】
図1に示すように、原料ガス通路6は、遮断弁69、第1脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器100と、第2脱硫剤を収容する低温設置型の第2脱硫器200と、第1脱硫器100および第2脱硫器200を経た原料ガスの流量を計測する流量計300とを有する。原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、即ち、遮断弁69から発電モジュール18にかけて、第1脱硫器100、第2脱硫器200および流量計300をこの順に直列に配置している。具体的には、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、露点計510、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300をこの順に配置している。第1脱硫器100は、相対的に高温の第1環境(50℃以上、200℃以下の温度環境)に設置されており、具体的には、発電モジュール18の断熱壁19から受熱(熱伝導、輻射熱の受熱)できるように、断熱壁19の外壁面に接触または接近状態で隣設されて配置されている。第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する。第1脱硫剤としては、ゼオライトが挙げられるが、銀や銅等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔質材料でも良い。この第1脱硫剤の平均粒径は特に限定されないが、1〜2mmが例示される。但しこれに限定されるものではない。
【0029】
第2脱硫器200は、第1環境よりも相対的に低温(一般的には0〜50℃未満)の第2環境に設置されており、高温の発電モジュール18から離間して配置されている。第2脱硫器200の第2脱硫剤は、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつ。第2脱硫器200では、相対的に高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)に対して、相対的に低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)よりも脱硫性能を低下させる(図12参照)。このような第2脱硫剤としてはゼオライトが挙げられる。この第2脱硫剤の平均粒径は特に限定されないが、1〜2mmが例示される。但しこれに限定されるものではない。原料ガスとしては炭化水素系が例示される。
【0030】
一般的には、原料ガス(例えば都市ガス(13A))は低露点(例えば0℃以下、−10℃以下、−20℃以下)であり、原料ガスに含有されている水蒸気は微小量である。しかしガス配管工事、配管等の事情により、原料ガスに含まれる水蒸気量が増加し、高露点(例えば+20℃露点以上)の原料ガスが供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤は短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器2A等に流入し、改質器2A等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつものであるため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが原料ガス通路6に供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ第2脱硫器200が第1脱硫器100の他に設けられている。このため、第1脱硫器100での不足分については第2脱硫器200を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、次の不具合がある。このような不具合を解消させるため、高温設置型の第1脱硫器100と低温設置型の第2脱硫器200との双方を設けることが好ましい。すなわち、低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には、脱硫剤の温度が低温ほど脱硫効率が良いため、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が充分ではなく、第1脱硫器100の第1脱硫剤の使用量を過剰に増加させる必要がある不具合がある。しかし第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方を設けることにより、低露点の原料ガスについては第1脱硫器100で主として分担し、高露点の原料ガスについては第2脱硫器200で分担することで、全体としての第1脱硫剤および第2脱硫剤の合計の使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。
【0031】
また、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が充分ではないため、高温の第1脱硫器100に収容する第1脱硫剤の使用量を増大させる必要がある不具合がある。更に、この場合には、第1脱硫器100からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。ここで、高温設置型の第1脱硫器100に使用される第1脱硫剤は、一般市場に流れている低温設置型の脱硫剤に対し高価である。しかし本実施形態によれば、高温設置型の第1脱硫器100および低温設置型の第2脱硫器200の双方を設けている。そして、低露点の原料ガスについては主として第1脱硫器100で分担し、高露点の原料ガスについては主として第2脱硫器200で分担することで、高温設置型の第1脱硫器100に使用されるコスト高の脱硫剤の使用量を低減でき、コスト低減が図れる。
【0032】
さて、上記構成とした場合には、脱硫剤は、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性を持っている。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、脱硫剤温度の変化に伴い、炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。高温設置型の第1脱硫器100のように高温域に第1脱硫剤を設置する場合には、その度合が更に大きい。このため、従来技術のように流量計300が脱硫器よりも上流にあるときには、流量計300で原料ガスの流量を正確に計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生すると、改質器2Aに供給される原料ガスの流量が変動するおそれがある。すなわち、脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの流量の過剰または不足が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、燃料電池において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、異常高温による劣化が促進させるおそれがある。そのため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器100よりも下流に流量計300を設置することが好ましい。しかし、第1脱硫器100よりも下流に流量計300が設置されている場合には、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスは、流量計300の耐熱温度以上となり易いため、流量計300の故障を誘発させるおそれがある。
【0033】
そこで本実施形態によれば、図1に示すように、原料ガス通路6において第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方よりも下流に流量計300を設置し、改質器2A等に安定的に原料ガスを供給可能となる。さらに原料ガスを、高温設置型の第1脱硫器100→低温設置型の第2脱硫器200の順に流すことで、第1脱硫器100を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器200で授受し,第2脱硫器200において放熱させることができる。このため、熱の影響を受け易い流量計300へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができる。この場合、流量計300の耐熱の問題も解消することが可能となる。なお、第1脱硫器100を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器200における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。なおポンプ60は圧力の脈動を発生させにくいものが好ましい。
【0034】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図2に示すように、原料ガス通路6には、バッファ室401をもつバッファ400が設けられている。原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400と、ポンプ60とをこの順に直列に配置している。バッファ400は中空室であるバッファ室401を有する。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを発電モジュール18の改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図2に示すように、原料ガス通路6において、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60をこの順に直列に配置している。この場合、図2に示すように、バッファ400は、流量計300の下流、且つ、ポンプ60の上流に配置されている。流量計300は第2脱硫器200に対して直後の下流に配置されている。すなわち、脈動原因となるポンプ60と、脈動を受けたくない流量計300との間には、バッファ400が介在する。このため流量計300はポンプ60の脈動の影響を受けにくくなる。この場合、システムの安定運転に有利である。換言すると、図2に示すように、第1脱硫器100→第2脱硫器200→流量計300→バッファ400→ポンプ60の配列が設けられているため、ポンプ60の脈動をバッファ400により吸収することができる。このため流量計300の流量脈動を抑止することができる。これにより流量計300の出力値が安定し、制御上の安定性が確保されるとともに、脈動による流量計300の出力値が真値から外れる挙動も抑えることが可能となる。
【0035】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図3に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、第1脱硫器100と、第2脱硫器200と、流量計300と、バッファ400と、ポンプ60と、逆止弁として機能するチャッキ弁500とをこの順に配置している。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。チャッキ弁500は作動により原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図3に示すように、原料ガス通路6は、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60、チャッキ弁500をこの順に配置している。すなわち、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にはバッファ400が介在している。このため、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にバッファ400が介在するため、流量計300は、ポンプ60およびチャッキ弁500に起因する脈動の影響を受けにくくなる。この場合、流量計300が原料ガスの流量を計測させる精度が確保され、システムの安定運転に有利である。
【0036】
図3に示すように、原料ガス通路6において、第1脱硫器100→第2脱硫器200→流量計300→バッファ400→昇圧用のポンプ60→チャッキ弁500の順に配置されている。第1脱硫器100は発電モジュール18の断熱壁19の外壁面側に接触または近接するように設置されており、規定温度範囲(例えば、60〜200℃、または、60〜150℃)に維持されるように設置されている。第2脱硫器200は、システムの筐体の内部において、発電モジュール18から離間する相対的に低温の環境(0℃以上、50℃未満)に設置されている。ここで、原料ガスが第1脱硫器100を流通することで、原料ガスは昇温され、第2脱硫器200に供給される。原料ガスの持っている熱量は数Wのため、第2脱硫器200のうちの上流側の温度が若干上昇する。ここで、原料ガスは第2脱硫器200における放熱にてシステムの筐体の内部温度(例えば、20〜50℃)まで低下し、流量計300、バッファ400、チャッキ弁500、発電モジュール18の改質器2Aに送られる。これにより、流量計300に入る原料ガスの温度は50℃未満または40℃未満となり、流量計300の耐熱温度以下となり、流量計300の故障を招くことなくシステムを運転可能である。
【0037】
また、システムの起動〜停止までにおける第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度変化に起因して、第1脱硫器100において炭化水素基の吸着または脱着が起こり得る。この点について本実施形態によれば、流量計300が脱硫器100,200よりも下流に配置されていることで、発電モジュール18へ流入する原料ガス(吸着または脱着後の原料ガス)の単位時間あたり流量を正確に把握することができる。この場合、発電モジュール18におけるガス欠による劣化を抑止することができる。
【0038】
(実施形態4)
図4は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図4に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、ポンプ60と、第1脱硫器100と、第2脱硫器200と、流量計300とをこの順に具備する。すなわち、第1脱硫器100および第2脱硫器200よりも上流にポンプ60が配置されている。ポンプ60は、原料ガスの脈動を発生させるおそれがある。そこで、ポンプ60を第1脱硫器100よりも上流に設置する。この場合、ポンプ60と流量計300との間に配置された第1脱硫器100および第2脱硫器200が、脈動抑制用のバッファとして機能することができる。このように第1脱硫器100および第2脱硫器200が脱硫能を発揮しつつバッファを兼用するため、専用のバッファを設けることが不要であり、システムの小型化、低コスト化が図れる。なお、ポンプ60に起因する脈動で流量計300の流量値が脈動した場合には、システムの制御性が低下することに加えて、流量計300の絶対値が真値からずれ、改質器2Aへ供給される原料ガスの流量が過剰または不足したりする可能性があり、システムの劣化要因となるおそれがある。
【0039】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態4と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図5に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、ポンプ60、第1脱硫器100、第2脱硫器200、冷却部600、流量計300をこの順に直列に配置している。ポンプ60は、原料ガスの脈動を発生させるおそれがある。そこで、ポンプ60を流量計300から離間させるべく、第1脱硫器100よりも上流に設置する。この場合、ポンプ60と流量計300との間に配置された第1脱硫器100および第2脱硫器200が、脈動抑制用のバッファとして機能することができ、専用のバッファを設けることが不要である。また、流量計300は熱に弱いが、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスを第2脱硫器200および冷却部600で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため低温の原料ガスが流量計300に供給され、流量計300が熱から保護される。チャッキ弁500と流量計300との間にはバッファ400が設けられているため、チャッキ弁500の作動の影響を流量計300が受けることが抑制される。冷却部600としては、放熱フィン方式、冷却風が当たる方式、冷却水と熱交換する方式が例示される。
【0040】
(参考形態1)
図6は参考形態1を示す。本実施形態は前記した実施形態5と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図6に示すように、高温設置型の第1脱硫器100が設けられているものの、常温設置型の第2脱硫器200が設けられていない。図6に示すように、原料ガス通路6は、遮断弁69、ポンプ60、第1脱硫器100、冷却部600、流量計300をこの順に直列に配置させている。第1脱硫器100と流量計300との間には冷却部600が配置されている。冷却部600としては、放熱フィン方式、冷却風が当たる方式、冷却水と熱交換する方式が例示される。流量計300は熱に弱いが、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスを冷却部600で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため流量計300を熱から保護させ易い。また図6に示すように、原料ガス通路6において、流量計300、バッファ400、チャッキ弁500の順に配置されているため、ポンプ60が脈動を発生させたとしても、流量計300は脈動に影響され難い。
【0041】
(実施形態6)
図7は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図7に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、すなわち、遮断弁69から発電モジュール18に向かうにつれて、高温設置型の第1脱硫器100、低温設置型の第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60、チャッキ弁500とをこの順に配置している。燃料電池システムの発電運転で発生した排ガスとの熱交換で加熱された温水が通過する貯湯通路78と、貯湯通路78に連通し貯湯通路78から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられている。貯湯通路78には貯湯ポンプ79が設けられている。発電モジュール18における改質器2Aや燃料電池1から排出された排気ガスは、排ガス通路75から、排気用の熱交換器76の通路75aを介して外部に排気される。貯湯ポンプ79が作動すると、貯湯槽77の水は貯湯槽77の吐出ポート77pから熱交換器76の通路78aを流れ、排ガス通路75の高温の排気ガスと熱交換して受熱されて昇温し、更に、第1脱硫器100の通路100aを流れ、帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このように貯湯槽77の水は温水となる。このように温水は第1脱硫器100の通路100aを流れるため、第1脱硫器100は50〜95℃の温度領域に昇温される。このように第1脱硫器100は、貯湯通路78および貯湯槽77のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている。温水(一般的には70〜95℃)と熱交換することにより、第1脱硫器100の温度を適温に維持しやすい。更に貯湯通路78の水は熱容量が大きいため、第1脱硫器100内の温度分布を低減させることができる。これにより第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の使用量の低減させることができる。
【0042】
(実施形態7)
図8は実施形態7を示す。図8に示すように、上記した発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19の側面19s(表面)には、高温設置型の第1脱硫器100が伝熱可能に接触させつつ、図略の取付具により取り付けられている。断面壁19の上面または下面に取り付けても良い。第1脱硫器100の脱硫室101には、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする粒状の第1脱硫剤が収容されている。発電モジュール18の熱は高温設置型の第1脱硫器100に伝熱および輻射熱により伝達される。図8に示すように、第1脱硫器100の脱硫室101は、Uターン用の複数の開口103を形成する複数の仕切板104により仕切られて複数回曲成されている。入口101iから流入した原料ガスは蛇行するように複数回Uターンを繰り返し、脱硫距離を確保し、出口101pから改質器2Aに向けて吐出される。第1脱硫器100の厚みtxは発電モジュール18の幅tyよりも薄く、偏平箱形状をなすことが好ましい。この場合、発電モジュール18の断熱壁19の側面19s(表面)からの受熱面積を増加でき、第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度ばらつきの低減に有利である。システムを長期間停止していた場合等のように、システムの起動時に発電モジュール18の断熱壁19が高温ではないことがある。そこで、図8に示すように、高温設置型の第1脱硫器100の外壁面に電気ヒータ109を設けることが好ましい。システムの起動時には、電気ヒータ109により高温設置型の第1脱硫器100の第1脱硫剤を暖め、50℃以上の温度環境に設定する。発電モジュール18の断熱壁19が高温になったら、電気ヒータ109をオフさせれば良い。場合によっては、電気ヒータ109を廃止させても良い。なお、各実施形態について、高温設置型の第1脱硫器100に電気ヒータを設けることが好ましい。
【0043】
(実施形態8)
図9は実施形態8を示す。図9に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xに対して、多孔質物質を基材とする第1脱硫剤が収容された高温設置型の第1脱硫器100は、接合部120(例えば溶接部またはろう付け部)で接触されつつ並走されている。貯湯通路78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は、加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0044】
(実施形態9)
図10は実施形態9を示す。図10に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xは、第1脱硫剤が収容された高温用の第1脱硫器100にスパイラル状に巻回されている。貯湯通路78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0045】
(適用形態1)
図11は適用形態1の概念を示す。図11に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜めるタンク4と、これらを収容する筐体5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(運転温度:例えば400℃以上)を適用できる。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。改質部3の内部には、改質部3の温度を検知する温度センサと、燃料を着火させるヒータである着火部が設けられている。着火部は改質部3の燃料に着火できるものであれば何でも良い。温度センサの信号は制御部100Xに入力される。
【0046】
システムの発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、アノード10側から排出されたアノード排ガスとカソード11側から排出されたカソード排ガスが燃焼部105で燃焼するため、改質部3および蒸発部2は、発電モジュール18の内部において同時に加熱される。図11に示すように、原料ガス通路6は、ガス源63から原料ガスを改質器2Aに供給させるものであり、ポンプ60、高温設置型の第1脱硫器100、低温設置型の第2脱硫器200、流量計300、チャッキ弁500をもつ。
【0047】
図11は、あくまでも燃料電池システムの一例の概念的なレイアウトを示すものである。実際には、第1脱硫器100は、銀等の金属を有するゼオライト系の多孔質物質を基材とする第1脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19に伝熱可能に接触されている。システムの運転時には、第1脱硫器100は、発電モジュール18の断熱壁19から受熱して50℃以上230℃以下の高温領域に加熱される。第2脱硫器200は、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする第2脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19から離間しており、常温領域(0℃〜50℃未満の温度領域)に設置されている。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用の搬送源として機能するカソードポンプ71が設けられている。
【0048】
図11に示すように、筐体5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3および蒸発部2と蒸発部2と改質部3を加熱する燃焼部105と、共に、筐体5の上側つまり上室空間52に収容されている。筐体5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜めるタンク4が収容されている。タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100Xからの指令に基づいて、タンク4の水は加熱部40により所定温度(例えば5℃、10℃、20℃)以上に加熱され、凍結が抑制される。図11に示すように、下室空間53側のタンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管として筐体5内に設けられている。図11に示すように、筐体5内において、タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は基本的には縦方向に沿って延びる。給水通路8は、タンク4内に溜められている水をタンク4から蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。ポンプ80を制御するための制御部100Xが設けられている。更に、制御部100Xはポンプ71,79,60を制御する。
【0049】
システムの運転時において、ポンプ80が駆動すると、タンク4内の水は、タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。なお燃料がメタン系である場合には、水蒸気改質によるアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。但し燃料はメタン系に限定されるものではない。
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
生成されたアノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。燃料電池1で排出された高温の排ガスは、排ガス通路75を介して筐体5の外方に排出される。
【0050】
排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱交換作用により加熱される。熱交換器76で加熱された温水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製器43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。
【0051】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態および適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池に限定されず、場合によっては、固体高分子電解質形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、溶融炭酸塩形燃料電池でも良い。要するに、原料ガスを脱硫させる高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器を直列に有する燃料電池システムであれば良い。原料ガスも特に制限されず、硫黄化合物を含むガスが挙げられ、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPGガス、CNGガス等を例示できる。第1脱硫器は水素添加により硫黄化合物を脱硫させる脱硫器でも良い。要するには、原料ガス通路は上流から下流にかけて第1脱硫器、第2脱硫器および流量計をこの順に配置させていれば良い。本明細書の記載から次の技術的思想が把握される。
【0052】
(付記項1)アノードおよびカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池の前記カソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを脱硫させた状態で前記改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、前記改質器で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の前記アノードに供給させる前記アノードガス通路とを具備しており、前記原料ガス通路は、相対的に高温の環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器を具備する燃料電池システム。高露点の原料ガスに対してダメージを受けにくいため、高露点の原料ガスに対して有効である。
【0053】
(付記項2)付記項1において、原料ガス通路は、遮断弁、ポンプ、第1脱硫器、冷却部、流量計をこの順に直列に配置させている燃料電池システム。第1脱硫器と流量計との間には冷却部が配置されている。流量計は熱に弱い。高温設置型の第1脱硫器を通過した原料ガスを冷却部で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため流量計を熱から保護させ易い。
【符号の説明】
【0054】
1は燃料電池、10はアノード、11はカソード、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、18は発電モジュール、19は断熱壁、60はポンプ(ガス搬送源)、70はカソードガス通路、73はアノードガス通路、75は排ガス通路、76は熱交換器、77は貯湯槽、78は貯湯通路、79は貯湯ポンプ、100は第1脱硫器、200は第2脱硫器、6,500は原料ガス通路、510は露点計を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は原料ガスを脱硫させる脱硫器を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はLPG用脱硫器を開示する。この脱硫器は常温用脱硫器と高温用(>100℃)脱硫器とに2つに分割されている。また、常温用脱硫器は上流側に配置されており、原料ガスに使用されている付臭剤で比較的脱硫させ易いイオウ化合物(TBMやDMS)用とされている。高温用脱硫器は、常温用脱硫器よりも下流側に配置されており、LPG特有のイオウ化合物(COS等)を吸着するためのものであり、Ni等の金属酸化物を使用している。
【0003】
特許文献2によれば、特許文献1と基本的には同じ構成であり、常温用脱硫器と高温用脱硫器とに2つに分割されている。高温用脱硫器は50℃以上の運転温度とされている。高温用脱硫器の脱硫剤はLPG用と考えられる。特許文献3によれば、常温脱硫器と水素添加型の脱硫器(高温)との2つの脱硫方法(脱硫器)を組み合わせたものであり、起動時に水素添加による脱硫効果が不足することを、常温脱硫器で補うことを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-111766号公報
【特許文献2】特開2006-265480号公報
【特許文献3】特開平5-114414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、高温の脱硫部はLPG特有の硫黄化合物を金属酸化物等により、LPG特有の硫黄化合物を吸着除去するものであって、原料ガスに含まれる水蒸気による脱硫剤のダメージの問題を解決するものではない。特許文献3によれば、高温の脱硫器は水素添加脱硫を目的とするものであって、脱硫には水素を必須とする。
【0006】
ところで、ガス会社から供給される原料ガス(都市ガス)には、水分が含まれる場合がある。脱硫剤は一般的にはゼオライトや活性炭等の多孔質物質を使用し、常温の温度環境で使用され、硫黄化合物を吸着させて脱硫する。しかし、多孔質物質を基材とする脱硫剤は低コストである利点を有するものの、水蒸気が相対的に多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気を硫黄化合物よりも優先的に吸着させる性質を有する。結果として、高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫効果が過剰に低下してしまうおそれがある(図12参照)。
【0007】
一般的には、水蒸気が少ない低露点の原料ガスが産業界では供給されている。しかし、ガス工事や配管の影響等で、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加し、原料ガスが高露点となることが間々ある。ここで、露点が高い原料ガスに含まれる水蒸気によって、脱硫剤は原料ガスの硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫剤の脱硫効果が低下してしまうおそれがある。この問題を回避するために、脱硫剤の使用量を必要以上に増加させることが必要であり、コストが莫大になり、燃料電池システムのサイズが大型化されるので非実用的である。更に、上記した特許文献では、流量計の位置や長寿命化については言及されていない。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫でき、これにより原料ガスの露点の変化に対応でき、加えて、原料ガスの流量を計測する流量計の保護性を高め、流量計の長寿命化に貢献できる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は燃料電池システム用脱硫装置について鋭意開発を進めている。そして本発明者は、(i)(ii)に着目した。
(i)産業界では、一般的には、相対的に低露点(例えば−20℃露点以下)の原料ガスが供給されている。しかしガス工事や配管等の様々な事情で、相対的に高露点の原料ガスが供給されることが間々あること。
(ii)一般的な脱硫剤は、原料ガスに含まれる水蒸気を吸着させ易く、そのため脱硫剤に存在する吸着サイトが水蒸気に奪われ、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着が困難になる。しかし、上記したように水蒸気ダメージがある脱硫剤といえども、高温の温度環境(例えば40℃以上、50℃以上)では、水蒸気を吸着しにくくなるため、水蒸気の影響が少なくなり、脱硫能力が維持され易い。本発明はかかる着目に基づいて完成されたものである。
【0010】
(1)すなわち、様相1に係る燃料電池システムは、アノードおよびカソードを有する燃料電池と、燃料電池のカソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、原料ガスを脱硫させた状態で改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、改質器で生成されたアノードガスを燃料電池のアノードに供給させるアノードガス通路とを具備しており、原料ガス通路は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器と、第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させる低温設置型の第2脱硫器と、原料ガスの流量を計測する流量計とを具備しており、原料ガス通路は、上流から下流にかけて、第1脱硫器、第2脱硫器および流量計をこの順に配置させている。
【0011】
原料ガスは、通常、低露点のガス(例えば−20℃露点以下)として供給される。しかしガス工事や配管等の影響で高露点のガスとして(例えば+20℃露点以上)供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤は短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器等に流入し、改質器等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつものであるため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ低温設置型の第2脱硫器が第1脱硫器と併設されているため、第1脱硫器での不足分については第2脱硫器を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。
【0012】
ここで、高温設置型の高温、低温設置型の低温は、相対的な温度の高低を意味するものである。高温設置型の第1脱硫器は、燃料電池システムの筐体の内部において、一般的には50℃以上〜230℃の温度領域に配置される。低温設置型の第2脱硫器は、燃料電池システムの筐体の内部において、第1脱硫器よりも低温の環境に設置され、一般的には0℃以上〜50℃未満の温度領域に配置される。
【0013】
なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、次の不具合があるため、不具合を解消させるため、第1脱硫器の他に、低温設置型の第2脱硫器を設けることが好ましい。低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には脱硫剤の温度が低温ほど、脱硫効率が良い。従って低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が必ずしも充分ではなく、第1脱硫器の脱硫剤の使用量を増加させる必要がある不具合が生じる。この場合、第1脱硫器からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。更に、高温設置型の第1脱硫器に使用される第1脱硫剤は、一般市場には、低温設置型の第2脱硫器に使用される第2脱硫剤に対して高価であることが多い。
【0014】
しかし様相1の燃料電池システムによれば、第1脱硫器および第2脱硫器の双方を設けている。そして、高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)については高温設置型の第1脱硫器で主として分担し、低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)については低温設置型の第2脱硫器で主として分担することで、コストが高い第1脱硫剤の使用量をできるだけ低減でき、コスト低減が図れる。更に、第1脱硫剤および第2脱硫剤の全体としての使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。
【0015】
また、脱硫剤は、一般的には、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性をもつ。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、脱硫剤温度の変化に伴い、原料ガスの主要成分である炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。殊に、第1脱硫器のように高温域に設置される場合には、その影響が更に大きい。このため、従来技術のように流量計が脱硫器よりも上流にあるときには、流量計で原料ガスの流量を計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生し、結果として、改質器に供給される原料ガスの実流量が変動するおそれがある。すなわち、脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの実流量の過剰または不足が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、改質器において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、異常高温が発生し、劣化が促進させるおそれがある。そのため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器よりも下流に流量計を設置することが好ましい。
【0016】
しかし、高温設置型の第1脱硫器よりも下流に流量計が設置されている場合には、第1脱硫器を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスの温度は流量計の耐熱温度以上となり易いため、流量計の長寿命化には好ましない。そこで様相1に係る燃料電池システムによれば、第1脱硫器および第2脱硫器の双方よりも下流に流量計を設置させる。このように原料ガスを高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器→流量計の順に流す。これにより高温の第1脱硫器を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器で授受し,第2脱硫器において放熱させる。このため流量計へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができ、流量計の耐熱の問題も解消することが可能となり、流量計の長寿命化に有利である。また、第1脱硫器を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。
【0017】
前述したように、脱硫剤は、水蒸気を吸着させ易く、そのため吸着サイトが水蒸気に奪われて硫黄化合物の吸着が困難になるという水蒸気ダメージを受け易い性質をもつ。しかし、このような脱硫剤といえども、高温領域(例えば50℃以上)では、水蒸気を吸着しにくくなるため、水蒸気ダメージを少なくでき、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に吸着できる。このため脱硫剤の使用量の増加を抑えることができる。上記したように様相1に係る燃料電池システムによれば、水蒸気が少なめの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、良好に脱硫を行うことができる。このように原料ガスの露点が変化するときであっても、高温設置型の第1脱硫器は、原料ガスの脱硫を良好に行うことができる。更に、高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器の順に直列に配置されているため、原料ガスに含まれる水蒸気を第1脱硫器で吸着でき、第2脱硫器への影響を低減できる。なお第1脱硫器は水素添加型でも良い。
【0018】
(2)様相2に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、原料ガス通路は、バッファ室をもつバッファをもち、上流から下流にかけて、第1脱硫器と、第2脱硫器と、流量計と、バッファと、ガス搬送源とをこの順に配置させている。ポンプ等のガス搬送源は、原料ガス通路において原料ガスを改質器に向けて搬送させるものであるが、作動条件によっては、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで、第1脱硫器、第2脱硫器、流量計、バッファ、ガス搬送源をこの順に直列に配置すれば、流量計とガス搬送源との間に、脈動緩衝用のバッファが介在する。このため、流量計は、ガス搬送源の脈動の影響を受けにくくなり、システムの安定運転に有利である。バッファは中空室であるバッファ室を有する。
【0019】
(3)様相3に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、原料ガス通路は、上流から下流にかけて、ガス搬送源と、第1脱硫器と、第2脱硫器と、流量計とをこの順に配置させている。ポンプ等のガス搬送源と流量計との間には、ガス搬送源による原料ガスの脈動の影響を防止するためにバッファが設けられていることが好ましい。そこで、ポンプ等のガス搬送源を第1脱硫器の上流に設置する。この場合、ガス搬送源と流量計との間に配置された第1脱硫器および第2脱硫器が脱硫作用とバッファ作用と果たすことができる。このように第1脱硫器および第2脱硫器がバッファを兼用するため、専用のバッファを設けることが不要であり、システムの小型化、低コスト化が図れる。なお、ポンプ等のガス搬送源に起因する脈動で流量計の計測値が変動した場合には、システムの制御性が低下することに加えて、流量計の絶対値が真値からずれ、改質器へ供給される原料ガスの流量が過剰または不足したりする可能性があり、システムの劣化要因となり、好ましくない。
【0020】
(4)様相4に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、第1脱硫器は、改質器および/または燃料電池を覆う断熱壁、または、改質器から排出される排ガス通路の熱を受熱する温度環境に設置されている。システムとして熱回収できない放熱分を利用して第1脱硫器を暖める。これにより熱回収効率の過剰低下等を発生させることなく、高温設置型の第1脱硫器を適当な高温環境(例えば50〜230℃)に保持できる。従って、第1脱硫器の機能(高露点の原料ガスに対して良好な脱硫能を有する機能)を良好に果たすことができる。
【0021】
(5)様相5に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、燃料電池システムの発電運転で加熱された温水が通過する貯湯通路と、貯湯通路に連通し貯湯通路から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられており、第1脱硫器は、貯湯通路および貯湯槽のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている。温水(一般的には70〜80℃)と熱交換することにより、第1脱硫器の温度を適温に維持しやすい。更に貯湯通路の水は熱容量が大きいため、第1脱硫器内の温度分布を低減させることが可能となる。これにより第1脱硫器の使用量の低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫でき、これにより原料ガスの露点の変化に対応できる。
【0023】
加えて、高温設置型の第1脱硫器を通過した原料ガスの熱を低温設置型の第2脱硫器で授受し,第2脱硫器において放熱させる。このため第2脱硫器よりも下流に配置されている流量計へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができ、流量計の耐熱の問題も抑制させることができ、流量計の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図2】実施形態2に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図3】実施形態3に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図4】実施形態4に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図5】実施形態5に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図6】参考形態1に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図7】実施形態6に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図8】実施形態7に係り、発電モジュールに付設されている第1脱硫器を示す概念図である。
【図9】実施形態8に係り、第1脱硫器を示す概念図である。
【図10】実施形態9に係り、第1脱硫器を示す概念図である。
【図11】適用形態に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【図12】脱硫剤で形成された脱硫剤の温度と硫黄吸着能力と原料ガスの露点との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器に収容される脱硫剤の基材として、ゼオライト、遷移金属等の金属を担持したゼオライト、活性炭、アルミナやセリアなどの金属酸化物等の多孔性物質が挙げられる。このよう脱硫剤の吸着原理は物理的吸着であると考えられているが、遷移金属等の金属を含む場合には、物理的吸着の他に化学的吸着も併有する形態でも良い。上記した金属としては、銀、銅、金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、鉄、クロム、モリブデンのうちの少なくとも1種が例示され、更に、これらを2種以上含む合金が例示される。第1脱硫剤は上記した金属を含むことが好ましい。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に空隙を持つものの総称であり、天然ゼオライトでも人工ゼオライトでも良い。脱硫剤は、原料ガスに含まれる硫黄化合物(例えばメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルフィド)だけでなく、原料ガスに含まれる水蒸気やHC等を物理吸着させる。脱硫剤はその吸着能力は水蒸気等の吸着物の種類や脱硫剤の温度により変化し、殊に常温領域では水蒸気によりダメージを受け易い。ここで、脱硫剤において、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着を妨害する物質のうち、最も影響が大きいのが原料ガスに含まれる水蒸気と考えられている。よって、低露点(例えば0℃以下、−10℃以下)の原料ガスを脱硫剤で脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の含有量が少なく、水蒸気の影響が少ないため、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる能力が効果的に発揮される。しかし、高露点の原料ガスを常温領域の脱硫剤に通過させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加しているため、脱硫剤は水蒸気の影響を受け易く、脱硫剤が硫黄化合物を吸着させる能力を激減させる。このような性質を有する脱硫剤といえども、温度環境が高温(例えば、40℃以上、50℃以上、200℃以下)になれば、水蒸気が脱硫剤に吸着されにくくなり、脱硫剤における水蒸気ダメージが激減し、結果として、脱硫剤が硫黄化合物を吸着させる量が良好に確保される。従って高温設置型の第1脱硫器は、高露点の原料ガスに対して有意義である。
【0026】
図12は、ゼオライト系の脱硫剤の温度と、脱硫剤の硫黄吸着能力と、脱硫剤で脱硫される原料ガスの露点との関係を示す。図12において、特性線W1は、原料ガスの露点が−18℃の場合を示す。特性線W2は、原料ガスの露点が−5℃の場合を示す。特性線W3は、原料ガスの露点が+20℃の場合を示す。原料ガスの露点温度が−5℃および−18℃と低い場合には、原料ガスに含まれる水蒸気量が少ないため、特性線W1,W2として示すように、脱硫剤の温度が20℃以上120℃の領域において変化したとしても、硫黄吸着能力は基本的には良好に維持される。これに対して、特性線W3として示すように、原料ガスの露点温度が+20℃と高温の場合には、原料ガスに含まれる水蒸気量が多いため、水蒸気の影響を受け、脱硫剤の硫黄吸着能力は低めとなる。特性線W3として示すように、脱硫剤の温度が20℃以上50℃未満の温度領域に低下すると、脱硫剤の硫黄吸着能力は急激に低下してしまう。このような特性をもつ多孔質物質を基材とする脱硫剤といえども、図12から理解できるように、脱硫剤の温度が50℃〜120℃と高温領域であれば、原料ガスの露点が+20℃の場合であっても、特性線W3の線部分WAとして示すように、脱硫剤の硫黄吸着能力は、原料ガスの露点が低い場合比較して若干低下するものの、良好に確保される。70120℃〜200℃であっても同様と考えられる。このように露点が高くて水蒸気が多い原料ガスの場合には、硫黄吸着能力が著しく低下するという特性をもつ脱硫剤といえども、高温の温度環境に設置すれば、高露点で水蒸気量が多い原料ガスに対しても、硫黄吸着能力を良好に確保でき、勿論、低露点で水蒸気が少ない原料ガスに対しても、硫黄吸着能力を良好に確保できる。
【0027】
(実施形態1)
図1は実施形態1を示し、燃料電池システムは、アノード10およびカソード11を有する燃料電池1と、燃料電池1のカソード11にカソードガス(空気等の酸素含有ガス)を供給するカソードガス通路70と、原料ガスを改質させてアノードガス(水素含有ガスまたは水素ガス)を生成させる改質器2Aと、原料ガスを脱硫させた状態で改質器2Aに供給させるガス搬送源として機能するポンプ60を有する原料ガス通路6と、改質器2Aで生成されたアノードガスを燃料電池1のアノード10に供給させるアノードガス通路73と、アノードガス通路73、改質器2Aおよび燃料電池1を収容する断熱壁19とを有する。発電モジュール18は、改質器2A、燃料電池1、断熱壁19で形成されている。改質用の水または水蒸気が供給させる給水通路8が改質器2Aに接続されている。
【0028】
図1に示すように、原料ガス通路6は、遮断弁69、第1脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器100と、第2脱硫剤を収容する低温設置型の第2脱硫器200と、第1脱硫器100および第2脱硫器200を経た原料ガスの流量を計測する流量計300とを有する。原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、即ち、遮断弁69から発電モジュール18にかけて、第1脱硫器100、第2脱硫器200および流量計300をこの順に直列に配置している。具体的には、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、露点計510、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300をこの順に配置している。第1脱硫器100は、相対的に高温の第1環境(50℃以上、200℃以下の温度環境)に設置されており、具体的には、発電モジュール18の断熱壁19から受熱(熱伝導、輻射熱の受熱)できるように、断熱壁19の外壁面に接触または接近状態で隣設されて配置されている。第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する。第1脱硫剤としては、ゼオライトが挙げられるが、銀や銅等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔質材料でも良い。この第1脱硫剤の平均粒径は特に限定されないが、1〜2mmが例示される。但しこれに限定されるものではない。
【0029】
第2脱硫器200は、第1環境よりも相対的に低温(一般的には0〜50℃未満)の第2環境に設置されており、高温の発電モジュール18から離間して配置されている。第2脱硫器200の第2脱硫剤は、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつ。第2脱硫器200では、相対的に高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)に対して、相対的に低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)よりも脱硫性能を低下させる(図12参照)。このような第2脱硫剤としてはゼオライトが挙げられる。この第2脱硫剤の平均粒径は特に限定されないが、1〜2mmが例示される。但しこれに限定されるものではない。原料ガスとしては炭化水素系が例示される。
【0030】
一般的には、原料ガス(例えば都市ガス(13A))は低露点(例えば0℃以下、−10℃以下、−20℃以下)であり、原料ガスに含有されている水蒸気は微小量である。しかしガス配管工事、配管等の事情により、原料ガスに含まれる水蒸気量が増加し、高露点(例えば+20℃露点以上)の原料ガスが供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤は短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器2A等に流入し、改質器2A等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつものであるため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが原料ガス通路6に供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ第2脱硫器200が第1脱硫器100の他に設けられている。このため、第1脱硫器100での不足分については第2脱硫器200を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、次の不具合がある。このような不具合を解消させるため、高温設置型の第1脱硫器100と低温設置型の第2脱硫器200との双方を設けることが好ましい。すなわち、低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には、脱硫剤の温度が低温ほど脱硫効率が良いため、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が充分ではなく、第1脱硫器100の第1脱硫剤の使用量を過剰に増加させる必要がある不具合がある。しかし第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方を設けることにより、低露点の原料ガスについては第1脱硫器100で主として分担し、高露点の原料ガスについては第2脱硫器200で分担することで、全体としての第1脱硫剤および第2脱硫剤の合計の使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。
【0031】
また、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が充分ではないため、高温の第1脱硫器100に収容する第1脱硫剤の使用量を増大させる必要がある不具合がある。更に、この場合には、第1脱硫器100からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。ここで、高温設置型の第1脱硫器100に使用される第1脱硫剤は、一般市場に流れている低温設置型の脱硫剤に対し高価である。しかし本実施形態によれば、高温設置型の第1脱硫器100および低温設置型の第2脱硫器200の双方を設けている。そして、低露点の原料ガスについては主として第1脱硫器100で分担し、高露点の原料ガスについては主として第2脱硫器200で分担することで、高温設置型の第1脱硫器100に使用されるコスト高の脱硫剤の使用量を低減でき、コスト低減が図れる。
【0032】
さて、上記構成とした場合には、脱硫剤は、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性を持っている。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、脱硫剤温度の変化に伴い、炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。高温設置型の第1脱硫器100のように高温域に第1脱硫剤を設置する場合には、その度合が更に大きい。このため、従来技術のように流量計300が脱硫器よりも上流にあるときには、流量計300で原料ガスの流量を正確に計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生すると、改質器2Aに供給される原料ガスの流量が変動するおそれがある。すなわち、脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの流量の過剰または不足が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、燃料電池において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、異常高温による劣化が促進させるおそれがある。そのため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器100よりも下流に流量計300を設置することが好ましい。しかし、第1脱硫器100よりも下流に流量計300が設置されている場合には、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスは、流量計300の耐熱温度以上となり易いため、流量計300の故障を誘発させるおそれがある。
【0033】
そこで本実施形態によれば、図1に示すように、原料ガス通路6において第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方よりも下流に流量計300を設置し、改質器2A等に安定的に原料ガスを供給可能となる。さらに原料ガスを、高温設置型の第1脱硫器100→低温設置型の第2脱硫器200の順に流すことで、第1脱硫器100を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器200で授受し,第2脱硫器200において放熱させることができる。このため、熱の影響を受け易い流量計300へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができる。この場合、流量計300の耐熱の問題も解消することが可能となる。なお、第1脱硫器100を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器200における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。なおポンプ60は圧力の脈動を発生させにくいものが好ましい。
【0034】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図2に示すように、原料ガス通路6には、バッファ室401をもつバッファ400が設けられている。原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400と、ポンプ60とをこの順に直列に配置している。バッファ400は中空室であるバッファ室401を有する。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを発電モジュール18の改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図2に示すように、原料ガス通路6において、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60をこの順に直列に配置している。この場合、図2に示すように、バッファ400は、流量計300の下流、且つ、ポンプ60の上流に配置されている。流量計300は第2脱硫器200に対して直後の下流に配置されている。すなわち、脈動原因となるポンプ60と、脈動を受けたくない流量計300との間には、バッファ400が介在する。このため流量計300はポンプ60の脈動の影響を受けにくくなる。この場合、システムの安定運転に有利である。換言すると、図2に示すように、第1脱硫器100→第2脱硫器200→流量計300→バッファ400→ポンプ60の配列が設けられているため、ポンプ60の脈動をバッファ400により吸収することができる。このため流量計300の流量脈動を抑止することができる。これにより流量計300の出力値が安定し、制御上の安定性が確保されるとともに、脈動による流量計300の出力値が真値から外れる挙動も抑えることが可能となる。
【0035】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図3に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、第1脱硫器100と、第2脱硫器200と、流量計300と、バッファ400と、ポンプ60と、逆止弁として機能するチャッキ弁500とをこの順に配置している。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。チャッキ弁500は作動により原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図3に示すように、原料ガス通路6は、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60、チャッキ弁500をこの順に配置している。すなわち、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にはバッファ400が介在している。このため、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にバッファ400が介在するため、流量計300は、ポンプ60およびチャッキ弁500に起因する脈動の影響を受けにくくなる。この場合、流量計300が原料ガスの流量を計測させる精度が確保され、システムの安定運転に有利である。
【0036】
図3に示すように、原料ガス通路6において、第1脱硫器100→第2脱硫器200→流量計300→バッファ400→昇圧用のポンプ60→チャッキ弁500の順に配置されている。第1脱硫器100は発電モジュール18の断熱壁19の外壁面側に接触または近接するように設置されており、規定温度範囲(例えば、60〜200℃、または、60〜150℃)に維持されるように設置されている。第2脱硫器200は、システムの筐体の内部において、発電モジュール18から離間する相対的に低温の環境(0℃以上、50℃未満)に設置されている。ここで、原料ガスが第1脱硫器100を流通することで、原料ガスは昇温され、第2脱硫器200に供給される。原料ガスの持っている熱量は数Wのため、第2脱硫器200のうちの上流側の温度が若干上昇する。ここで、原料ガスは第2脱硫器200における放熱にてシステムの筐体の内部温度(例えば、20〜50℃)まで低下し、流量計300、バッファ400、チャッキ弁500、発電モジュール18の改質器2Aに送られる。これにより、流量計300に入る原料ガスの温度は50℃未満または40℃未満となり、流量計300の耐熱温度以下となり、流量計300の故障を招くことなくシステムを運転可能である。
【0037】
また、システムの起動〜停止までにおける第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度変化に起因して、第1脱硫器100において炭化水素基の吸着または脱着が起こり得る。この点について本実施形態によれば、流量計300が脱硫器100,200よりも下流に配置されていることで、発電モジュール18へ流入する原料ガス(吸着または脱着後の原料ガス)の単位時間あたり流量を正確に把握することができる。この場合、発電モジュール18におけるガス欠による劣化を抑止することができる。
【0038】
(実施形態4)
図4は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図4に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、ポンプ60と、第1脱硫器100と、第2脱硫器200と、流量計300とをこの順に具備する。すなわち、第1脱硫器100および第2脱硫器200よりも上流にポンプ60が配置されている。ポンプ60は、原料ガスの脈動を発生させるおそれがある。そこで、ポンプ60を第1脱硫器100よりも上流に設置する。この場合、ポンプ60と流量計300との間に配置された第1脱硫器100および第2脱硫器200が、脈動抑制用のバッファとして機能することができる。このように第1脱硫器100および第2脱硫器200が脱硫能を発揮しつつバッファを兼用するため、専用のバッファを設けることが不要であり、システムの小型化、低コスト化が図れる。なお、ポンプ60に起因する脈動で流量計300の流量値が脈動した場合には、システムの制御性が低下することに加えて、流量計300の絶対値が真値からずれ、改質器2Aへ供給される原料ガスの流量が過剰または不足したりする可能性があり、システムの劣化要因となるおそれがある。
【0039】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態4と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図5に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、ポンプ60、第1脱硫器100、第2脱硫器200、冷却部600、流量計300をこの順に直列に配置している。ポンプ60は、原料ガスの脈動を発生させるおそれがある。そこで、ポンプ60を流量計300から離間させるべく、第1脱硫器100よりも上流に設置する。この場合、ポンプ60と流量計300との間に配置された第1脱硫器100および第2脱硫器200が、脈動抑制用のバッファとして機能することができ、専用のバッファを設けることが不要である。また、流量計300は熱に弱いが、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスを第2脱硫器200および冷却部600で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため低温の原料ガスが流量計300に供給され、流量計300が熱から保護される。チャッキ弁500と流量計300との間にはバッファ400が設けられているため、チャッキ弁500の作動の影響を流量計300が受けることが抑制される。冷却部600としては、放熱フィン方式、冷却風が当たる方式、冷却水と熱交換する方式が例示される。
【0040】
(参考形態1)
図6は参考形態1を示す。本実施形態は前記した実施形態5と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図6に示すように、高温設置型の第1脱硫器100が設けられているものの、常温設置型の第2脱硫器200が設けられていない。図6に示すように、原料ガス通路6は、遮断弁69、ポンプ60、第1脱硫器100、冷却部600、流量計300をこの順に直列に配置させている。第1脱硫器100と流量計300との間には冷却部600が配置されている。冷却部600としては、放熱フィン方式、冷却風が当たる方式、冷却水と熱交換する方式が例示される。流量計300は熱に弱いが、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスを冷却部600で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため流量計300を熱から保護させ易い。また図6に示すように、原料ガス通路6において、流量計300、バッファ400、チャッキ弁500の順に配置されているため、ポンプ60が脈動を発生させたとしても、流量計300は脈動に影響され難い。
【0041】
(実施形態6)
図7は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図7に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、すなわち、遮断弁69から発電モジュール18に向かうにつれて、高温設置型の第1脱硫器100、低温設置型の第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60、チャッキ弁500とをこの順に配置している。燃料電池システムの発電運転で発生した排ガスとの熱交換で加熱された温水が通過する貯湯通路78と、貯湯通路78に連通し貯湯通路78から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられている。貯湯通路78には貯湯ポンプ79が設けられている。発電モジュール18における改質器2Aや燃料電池1から排出された排気ガスは、排ガス通路75から、排気用の熱交換器76の通路75aを介して外部に排気される。貯湯ポンプ79が作動すると、貯湯槽77の水は貯湯槽77の吐出ポート77pから熱交換器76の通路78aを流れ、排ガス通路75の高温の排気ガスと熱交換して受熱されて昇温し、更に、第1脱硫器100の通路100aを流れ、帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このように貯湯槽77の水は温水となる。このように温水は第1脱硫器100の通路100aを流れるため、第1脱硫器100は50〜95℃の温度領域に昇温される。このように第1脱硫器100は、貯湯通路78および貯湯槽77のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている。温水(一般的には70〜95℃)と熱交換することにより、第1脱硫器100の温度を適温に維持しやすい。更に貯湯通路78の水は熱容量が大きいため、第1脱硫器100内の温度分布を低減させることができる。これにより第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の使用量の低減させることができる。
【0042】
(実施形態7)
図8は実施形態7を示す。図8に示すように、上記した発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19の側面19s(表面)には、高温設置型の第1脱硫器100が伝熱可能に接触させつつ、図略の取付具により取り付けられている。断面壁19の上面または下面に取り付けても良い。第1脱硫器100の脱硫室101には、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする粒状の第1脱硫剤が収容されている。発電モジュール18の熱は高温設置型の第1脱硫器100に伝熱および輻射熱により伝達される。図8に示すように、第1脱硫器100の脱硫室101は、Uターン用の複数の開口103を形成する複数の仕切板104により仕切られて複数回曲成されている。入口101iから流入した原料ガスは蛇行するように複数回Uターンを繰り返し、脱硫距離を確保し、出口101pから改質器2Aに向けて吐出される。第1脱硫器100の厚みtxは発電モジュール18の幅tyよりも薄く、偏平箱形状をなすことが好ましい。この場合、発電モジュール18の断熱壁19の側面19s(表面)からの受熱面積を増加でき、第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度ばらつきの低減に有利である。システムを長期間停止していた場合等のように、システムの起動時に発電モジュール18の断熱壁19が高温ではないことがある。そこで、図8に示すように、高温設置型の第1脱硫器100の外壁面に電気ヒータ109を設けることが好ましい。システムの起動時には、電気ヒータ109により高温設置型の第1脱硫器100の第1脱硫剤を暖め、50℃以上の温度環境に設定する。発電モジュール18の断熱壁19が高温になったら、電気ヒータ109をオフさせれば良い。場合によっては、電気ヒータ109を廃止させても良い。なお、各実施形態について、高温設置型の第1脱硫器100に電気ヒータを設けることが好ましい。
【0043】
(実施形態8)
図9は実施形態8を示す。図9に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xに対して、多孔質物質を基材とする第1脱硫剤が収容された高温設置型の第1脱硫器100は、接合部120(例えば溶接部またはろう付け部)で接触されつつ並走されている。貯湯通路78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は、加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0044】
(実施形態9)
図10は実施形態9を示す。図10に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xは、第1脱硫剤が収容された高温用の第1脱硫器100にスパイラル状に巻回されている。貯湯通路78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0045】
(適用形態1)
図11は適用形態1の概念を示す。図11に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜めるタンク4と、これらを収容する筐体5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(運転温度:例えば400℃以上)を適用できる。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。改質部3の内部には、改質部3の温度を検知する温度センサと、燃料を着火させるヒータである着火部が設けられている。着火部は改質部3の燃料に着火できるものであれば何でも良い。温度センサの信号は制御部100Xに入力される。
【0046】
システムの発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、アノード10側から排出されたアノード排ガスとカソード11側から排出されたカソード排ガスが燃焼部105で燃焼するため、改質部3および蒸発部2は、発電モジュール18の内部において同時に加熱される。図11に示すように、原料ガス通路6は、ガス源63から原料ガスを改質器2Aに供給させるものであり、ポンプ60、高温設置型の第1脱硫器100、低温設置型の第2脱硫器200、流量計300、チャッキ弁500をもつ。
【0047】
図11は、あくまでも燃料電池システムの一例の概念的なレイアウトを示すものである。実際には、第1脱硫器100は、銀等の金属を有するゼオライト系の多孔質物質を基材とする第1脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19に伝熱可能に接触されている。システムの運転時には、第1脱硫器100は、発電モジュール18の断熱壁19から受熱して50℃以上230℃以下の高温領域に加熱される。第2脱硫器200は、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする第2脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19から離間しており、常温領域(0℃〜50℃未満の温度領域)に設置されている。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用の搬送源として機能するカソードポンプ71が設けられている。
【0048】
図11に示すように、筐体5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3および蒸発部2と蒸発部2と改質部3を加熱する燃焼部105と、共に、筐体5の上側つまり上室空間52に収容されている。筐体5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜めるタンク4が収容されている。タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100Xからの指令に基づいて、タンク4の水は加熱部40により所定温度(例えば5℃、10℃、20℃)以上に加熱され、凍結が抑制される。図11に示すように、下室空間53側のタンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管として筐体5内に設けられている。図11に示すように、筐体5内において、タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は基本的には縦方向に沿って延びる。給水通路8は、タンク4内に溜められている水をタンク4から蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。ポンプ80を制御するための制御部100Xが設けられている。更に、制御部100Xはポンプ71,79,60を制御する。
【0049】
システムの運転時において、ポンプ80が駆動すると、タンク4内の水は、タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。なお燃料がメタン系である場合には、水蒸気改質によるアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。但し燃料はメタン系に限定されるものではない。
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
生成されたアノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。燃料電池1で排出された高温の排ガスは、排ガス通路75を介して筐体5の外方に排出される。
【0050】
排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱交換作用により加熱される。熱交換器76で加熱された温水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製器43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。
【0051】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態および適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池に限定されず、場合によっては、固体高分子電解質形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、溶融炭酸塩形燃料電池でも良い。要するに、原料ガスを脱硫させる高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器を直列に有する燃料電池システムであれば良い。原料ガスも特に制限されず、硫黄化合物を含むガスが挙げられ、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPGガス、CNGガス等を例示できる。第1脱硫器は水素添加により硫黄化合物を脱硫させる脱硫器でも良い。要するには、原料ガス通路は上流から下流にかけて第1脱硫器、第2脱硫器および流量計をこの順に配置させていれば良い。本明細書の記載から次の技術的思想が把握される。
【0052】
(付記項1)アノードおよびカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池の前記カソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを脱硫させた状態で前記改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、前記改質器で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の前記アノードに供給させる前記アノードガス通路とを具備しており、前記原料ガス通路は、相対的に高温の環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器を具備する燃料電池システム。高露点の原料ガスに対してダメージを受けにくいため、高露点の原料ガスに対して有効である。
【0053】
(付記項2)付記項1において、原料ガス通路は、遮断弁、ポンプ、第1脱硫器、冷却部、流量計をこの順に直列に配置させている燃料電池システム。第1脱硫器と流量計との間には冷却部が配置されている。流量計は熱に弱い。高温設置型の第1脱硫器を通過した原料ガスを冷却部で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため流量計を熱から保護させ易い。
【符号の説明】
【0054】
1は燃料電池、10はアノード、11はカソード、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、18は発電モジュール、19は断熱壁、60はポンプ(ガス搬送源)、70はカソードガス通路、73はアノードガス通路、75は排ガス通路、76は熱交換器、77は貯湯槽、78は貯湯通路、79は貯湯ポンプ、100は第1脱硫器、200は第2脱硫器、6,500は原料ガス通路、510は露点計を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池の前記カソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを脱硫させた状態で前記改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、前記改質器で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の前記アノードに供給させる前記アノードガス通路とを具備しており、
前記原料ガス通路は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能が高い高温設置型の第1脱硫器と、前記第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能が高いと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させやすい低温設置型の第2脱硫器と、前記原料ガスの流量を計測する流量計とを具備しており、
前記原料ガス通路は、これの上流から下流にかけて、前記第1脱硫器、前記第2脱硫器および前記流量計とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記原料ガス通路は、バッファ室をもつバッファを有しており、上流から下流にかけて、前記第1脱硫器と、前記第2脱硫器と、前記流量計と、前記バッファと、前記ガス搬送源とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1において、前記原料ガス通路は、これの上流から下流にかけて、前記ガス搬送源と、前記第1脱硫器と、前記第2脱硫器と、前記流量計とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記第1脱硫器は、前記改質器および/または燃料電池を覆う断熱壁、または、前記改質器から排出される排ガス通路の熱を受熱する温度環境に設置されている燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、前記燃料電池システムの発電運転で加熱された温水が通過する貯湯通路と、前記貯湯通路に連通し前記貯湯通路から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられており、
前記第1脱硫器は、前記貯湯通路および前記貯湯槽のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている燃料電池システム。
【請求項1】
アノードおよびカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池の前記カソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを脱硫させた状態で前記改質器に供給させるガス搬送源を有する原料ガス通路と、前記改質器で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の前記アノードに供給させる前記アノードガス通路とを具備しており、
前記原料ガス通路は、相対的に高温の第1環境に設置され且つ相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能が高い高温設置型の第1脱硫器と、前記第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置され、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能が高いと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させやすい低温設置型の第2脱硫器と、前記原料ガスの流量を計測する流量計とを具備しており、
前記原料ガス通路は、これの上流から下流にかけて、前記第1脱硫器、前記第2脱硫器および前記流量計とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記原料ガス通路は、バッファ室をもつバッファを有しており、上流から下流にかけて、前記第1脱硫器と、前記第2脱硫器と、前記流量計と、前記バッファと、前記ガス搬送源とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1において、前記原料ガス通路は、これの上流から下流にかけて、前記ガス搬送源と、前記第1脱硫器と、前記第2脱硫器と、前記流量計とをこの順に配置させている燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記第1脱硫器は、前記改質器および/または燃料電池を覆う断熱壁、または、前記改質器から排出される排ガス通路の熱を受熱する温度環境に設置されている燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、前記燃料電池システムの発電運転で加熱された温水が通過する貯湯通路と、前記貯湯通路に連通し前記貯湯通路から供給された温水を溜める貯湯槽とが設けられており、
前記第1脱硫器は、前記貯湯通路および前記貯湯槽のうちの少なくとも一方から受熱する温度環境に設置されている燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−169045(P2012−169045A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26644(P2011−26644)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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