説明

燃料電池システム

【課題】 加湿タンクの省スペース化と、加湿タンク内の水温制御を応答性良く行うこと。
【解決手段】 固体高分子形燃料電池2と、水素をバブリングにより加湿して燃料電池2へ供給する加湿タンク9とを備える燃料電池システムにおいて、加湿タンク9への給水を加熱するヒータ14を有する給水タンク10と、給水タンク10内の給水を加湿タンク9へ循環させながら供給する加湿水循環路11と、燃料電池2の冷却部7で得た熱で給水タンク10内の給水を加熱する冷却水循環路12と、燃料電池2の起動時、ヒータ14に通電するとともに加湿水循環路11の第一循環ポンプ17を駆動し、燃料電池2の起動後、冷却水循環路12の第二循環ポンプ18を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体高分子形燃料電池を用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素の化学反応を利用して電気を取り出す固体高分子形燃料電池と、水素をバブリングして加湿して前記燃料電池へ供給する加湿タンクとを備える燃料電池システムは、特許文献1などで知られている。
【0003】
この特許文献1においては、起動時に加湿タンク内に設けたヒータに通電して、加湿タンク内の水を加温することにより、水素ガスを加温するように構成している。また、特許文献1においては、燃料電池の冷却部で得た熱で加湿タンク内の水を加温する熱交換器を加湿タンク内に設けている。
【0004】
この特許文献1の構成では、容量の大きいヒータと熱交換器を加湿タンクに内蔵させる必要があるので、加湿タンクが大型化してしまい、省スペース化ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−250326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、加湿タンクを小型化して省スペース化を可能とするとともに、加湿タンク内の水温制御を応答性良く行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、水素と酸素の化学反応を利用して電気を取り出す固体高分子形燃料電池と、水素をバブリングにより加湿して前記燃料電池へ供給する加湿タンクとを備える燃料電池システムにおいて、前記加湿タンクへの給水を貯留し、この給水を加熱するヒータを備える給水タンクと、第一循環ポンプを備え、前記給水タンク内の給水を前記加湿タンクへ循環させながら供給する加湿水循環路と、第二循環ポンプを備え、前記燃料電池の冷却部で得た熱で前記給水タンク内の給水を加熱する冷却水循環路と、前記燃料電池の起動時、前記ヒータに通電するとともに前記第一循環ポンプを駆動することにより、前記給水タンク内の給水を加温し、前記燃料電池の起動後、前記第二循環ポンプを駆動することにより、前記燃料電池を冷却するとともに前記給水タンク内の給水を加温する制御器とを備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、特許文献1の従来技術と比較して、前記加湿タンク内に前記ヒータおよび熱交換器を設けることなく、前記燃料電池の起動時および起動後において前記加湿タンク内の水を加温することができるので、前記加湿タンクを小型化して省スペース化を実現できる。また、前記給水タンクと前記加湿タンクとを前記加湿水循環路で接続しているので、前記給水タンク内の水温変化を速やかに前記加湿タンクに伝えることができ、前記加湿タンク内の水温制御を応答性良く行うことができるという効果を奏する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記冷却水循環路に放熱量調整手段を有
する放熱器を備え、前記制御器は、前記燃料電池の起動後、前記第二循環ポンプの回転数制御および/または前記放熱量調整手段の制御により前記冷却部出口の冷却水の温度を制御することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記冷却部出口の冷却水の温度を制御するので、前記燃料電池の冷却を効果的に行うことができるという効果を奏する。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記給水タンクへの給水手段と、前記給水タンクの水位を検出する水位検出手段とを備え、前記制御器は、前記水位検出手段により前記給水手段を制御し、前記給水タンク内の水位を設定水位に制御することで、前記加湿タンク内の水位を設定水位に制御することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記給水タンクに設けた水位制御手段により、前記加湿タンク内の水位を適切に制御でき、安定した加湿を行うことができるとともに、新たに水位検出手段を設ける必要が無いので、システム構成の簡素化と前記加湿タンクを一層小型化できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、加湿タンクを小型化して省スペース化を可能とするとともに、加湿タンク内の水温制御を応答性良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態の概略構成を説明する説明図である。
【図2】同実施の形態の制御手順を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の燃料電池システムの実施の形態を図面に従い説明する。
<実施の形態の構成>
この実施の形態の燃料電池システム1は、水素と酸素の化学反応を利用して電気を取り出す固体高分子形燃料電池(以下、単に燃料電池という。)2と、燃料電池2へ水素を供給する水素供給路3と、燃料電池2へ酸素を供給する酸素供給路4とを備えている。
【0016】
燃料電池2は、公知のもので、イオン交換膜(図示省略)を挟んで、酸素極5と、水素極6と、燃料電池の冷却部7とを備え、酸素極5に酸化剤としての酸素を、水素極6に還元剤としての水素を供給することにより発電するように構成されている。
【0017】
水素供給路3には、水素を吹出部8からバブリングにより加湿して燃料電池2へ供給する加湿タンク9を備えている。
【0018】
さらに、燃料電池システム1には、給水タンク10と、加湿水循環路11と、冷却水循環路12と、制御器13とを主要部として備えている。
【0019】
給水タンク10は、加湿タンク9への給水を貯留し、この給水を加熱するヒータ14と、給水タンク10の水位を検出する水位検出手段としての水位センサ15と、給水タンク10への給水手段としての逆浸透膜濾過装置からなる純水製造器16とを備えている。純水製造器16は、原水を純水化して給水タンク10内へ供給する機能を有する。
【0020】
加湿水循環路11は、第一循環ポンプ17を備え、給水タンク10内の給水を加湿タン
ク9へ循環させながら供給するように構成されている。
【0021】
冷却水循環路12は、第二循環ポンプ18を備え、燃料電池2の冷却部7で燃料電池2を冷却するとともに、冷却部7で得た熱で給水タンク10内の水を加熱するように構成されている。また、この冷却水循環路12には、放熱量調整手段としてのファン19を有する放熱器20を備えている。
【0022】
制御器13は、水位センサ15および冷却水循環路12の冷却部7出口の水温を検出する水温センサ21などの信号を入力して、予め記憶した制御手順に基づき、ヒータ14,純水製造器16,第一循環ポンプ17,第二循環ポンプ18,ファン19などを制御するように構成されている。
【0023】
制御器13の制御手順には、燃料電池2の起動時の給水温度制御手順と、起動後の電池冷却・給水加温制御手順と、給水タンク10および加湿タンク9の水位制御手順を含んでいる。給水温度制御手順および電池冷却・給水加温制御手順の一例を図2に示しているが、これに限定されるものではない。
【0024】
給水温度制御手順は、燃料電池2の起動時、ヒータ14に通電するとともに第一循環ポンプ17を駆動することにより、給水タンク10内の給水を加温する手順である。
【0025】
また、電池冷却・給水加温制御手順は、燃料電池2の起動後、第二循環ポンプ18を駆動することにより、燃料電池2を冷却するとともに、給水タンク10内の給水を加温する手順である。第二循環ポンプ18は、燃料電池2の起動時から駆動することができる。この電池冷却・給水加温制御手順には、燃料電池2の冷却を給水タンク10の給水加温よりも優先するように、燃料電池2の起動後、ファン19の制御により冷却部7出口の冷却水の温度を一定範囲に制御する冷却調整手順を含んでいる。この冷却調整手順は、ファン19の制御に代わる第二循環ポンプ18の回転数制御によって、またはファン19の制御と第二循環ポンプ18の回転数制御との組合せにより、冷却部7出口の冷却水の温度を一定範囲に制御するように構成できる。
【0026】
なお、水位制御手順は、図示しないが、水位センサ15により純水製造器16を制御(ONすると給水開始、OFFすると給水停止)し、給水タンク10内の水位H1を第一設定水位H10に制御するとともに、給水タンク10内の水位制御により、間接的に加湿タンク9内の水位H2を第二設定水位H20に制御するように構成されている。この加湿タンク9の間接的な水位制御の原理はつぎの通りである。給水タンク10と加湿タンク9の水位差ΔHは、次式で求めることができる。
ΔH(=H1−H2)∝P1
但し、P1は、加湿タンク9内の圧力で、加湿タンク9以降の水素供給路3の圧損と水素極6での圧損の和により算出できる。
【0027】
<実施の形態の動作>
以上の構成を備える実施の形態の動作を図面に基づき説明する。
(燃料電池の起動時)
図2を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、運転開始スイッチ(図示省略)が操作されたかどうかを判定する。YESが判定されると、S2へ移行して、第一循環ポンプ17,第二循環ポンプ18およびヒータ14をONする。なお、S2の前に、給水タンク10内の水位を設定水位とする制御が行われる。S2では、給水タンク10内の給水をヒータ14により加温しつつ、給水タンク10内の給水が加湿水循環路11および冷却水循環路12を並列的に循環する。
【0028】
(燃料電池の運転)
S3において、水温センサ21の検出温度が設定温度T1となると、S4へ移行して水素供給路3を通しての水素供給と、酸素供給路4を通しての酸素供給とが行われ、燃料電池2の発電(運転)が開始される。
【0029】
加湿タンク9内では、吹出部8からバブリングにより水素が給水内に供給されて、水素が加湿される。この加湿は、加湿タンク9内の水位と水温に支配される。すなわち、水位が低いと加湿効果が悪くなり、水温が低いと加湿効果が悪くなる。この実施の形態では、給水タンク10内の水位を制御することで、加湿タンク9内の水位が設定範囲に制御されるとともに、加湿水循環路11による加湿水の循環により、加湿タンク9内の水が安定的に加温されるので、安定した加湿が行われる。
【0030】
S3でYESが判定されてから設定時間t1が経過すると、S5で、YESが判定され、ヒータ14をOFFするとともに、それまでOFFしていたファン19をONして、放熱量制御を開始する。
【0031】
この放熱量制御は、冷却部7出口の水温センサ21の検出温度が設定温度T1となるように、ファン19の回転数を制御して行われる。この放熱量制御によって、冷却部7を通過する冷却水により、燃料電池2を効果的に冷却することができ、冷却不良による燃料電池2の故障を防止することができる。
【0032】
(燃料電池の運転停止)
運転停止スイッチ(図示省略)が操作されると、S7で、YESが判定され、S8とS9の処理が実行される。S8では、水素供給および酸素供給が停止され、S9では、第一循環ポンプ17,第二循環ポンプ18およびファン19をOFFする。
【0033】
以上の実施の形態によれば、加湿タンク9内にヒータおよび加温用の熱交換器を設けることなく、燃料電池2の起動時および起動後において加湿タンク9内の水を加温することができる。このため、加湿タンク9を小型化して、省スペース化を実現できる。また、給水タンク10と加湿タンク9とを加湿水循環路11で接続しているので、給水タンク10内の水温変化を速やかに加湿タンク9に与えることができる。その結果、加湿タンク10内の水温制御を応答性良く行うことができる。
【0034】
この発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。例えば、前記実施の形態では、冷却水循環路12の循環水が直接給水タンク10を通過するように構成しているが、給水タンク10内に、冷却水循環路12の循環水と給水タンク10内の給水が間接的に熱交換する熱交換部(図示省略)を設けて、冷却部7で得た熱を給水タンク10内の給水へ伝えるように構成することができる。また、加湿タンク9内の水位を給水タンク10の水位で間接的に制御するように構成しているが、加湿タンク9に水位センサ(図示省略)を設けて、水位制御するように構成できる。さらに、放熱器20は、水冷式熱交換器とすることができ、その場合の放熱量調整手段は、放熱器20の冷却水量を調整するものとする。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料電池システム
2 固体高分子形燃料電池
3 水素供給手段
7 冷却部
9 加湿タンク
10 給水タンク
11 加湿水循環路
12 冷却水循環路
13 制御器
16 純水製造器(給水手段)
17 第一循環ポンプ
18 第二循環ポンプ
19 ファン(放熱量調整手段)
20 放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素の化学反応を利用して電気を取り出す固体高分子形燃料電池と、水素をバブリングにより加湿して前記燃料電池へ供給する加湿タンクとを備える燃料電池システムにおいて、
第一循環ポンプを備え、前記給水タンク内の給水を前記加湿タンクへ循環させながら供給する加湿水循環路と、
第二循環ポンプを備え、前記燃料電池の冷却部で得た熱で前記給水タンク内の給水を加熱する冷却水循環路と、
前記燃料電池の起動時、前記ヒータに通電するとともに前記第一循環ポンプを駆動することにより、前記給水タンク内の給水を加温し、前記燃料電池の起動後、前記第二循環ポンプを駆動することにより、前記燃料電池を冷却するとともに前記給水タンク内の給水を加温する制御器とを備える
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記冷却水循環路に放熱量調整手段を有する放熱器を備え、
前記制御器は、前記燃料電池の起動後、前記第二循環ポンプの回転数制御および/または前記放熱量調整手段の制御により前記冷却部出口の冷却水の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記給水タンクへの給水手段と、
前記給水タンクの水位を検出する水位検出手段とを備え、
前記制御器は、前記水位検出手段により前記給水手段を制御し、前記給水タンク内の水位を設定水位に制御することで、前記加湿タンク内の水位を設定水位に制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−105686(P2013−105686A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250215(P2011−250215)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】