説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、プレッシャプレートの剛性を維持しつつ軽量化する。
【解決手段】燃料電池システムは、セルスタック及びプレッシャプレート100を備え、プレッシャプレート100で締結荷重を付与する。プレッシャプレート100セル側の面には凹部(肉盗み)102が形成され、剛性を維持しつつ軽量化される。プレッシャプレート100の厚さは下方にいくほど厚くなるように形成され、下方に移動した水分によるセルスタックの膨潤に伴う変形が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関し、特にプレッシャプレートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池において、燃料電池スタックのセル積層方向の両端にエンドプレートを設けるとともに、セルとエンドプレートとの間にプレッシャプレートを設けて締結荷重を付与する構成が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、セルスタックとエンドプレートとの間に、プレッシャプレートを配置する構成が開示されている。図7に、この従来技術の構成を示す。燃料電池は、セル積層体10と、第1のターミナル30と、第2のターミナル31と、第1のインシュレータ40と、第2のインシュレータ41と、第1のエンドプレート50と、第2のエンドプレート51と、プレッシャプレート60と、弾性部材70と、テンションプレート80と、ボルト81と、ナット82を有する。第1のターミナル30は、セル11の積層方向における一端と電気的に直接接続し、第2のターミナル31は、セル11の積層方向における他端と電気的に直接接続する。第1のインシュレータ40は、第1のターミナル30と第1のエンドプレート50との間を絶縁し、第2のインシュレータ41は、第2のターミナル31とプレッシャプレート60との間を電気的に絶縁する。第1のエンドプレート50は、セル積層体10側からの押付圧力を受けるプレートであり、第2のエンドプレート51は、プレッシャプレート60と間隔をおいて配置されたプレートであり、弾性部材70の押付圧力を受ける。プレッシャプレート60は、弾性部材70の押し付けによりセル積層体10を第1のエンドプレート50側に押し付ける。テンションプレート80は、第1のエンドプレート50と第2のエンドプレート51を締結するための平板状のプレートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−251667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレッシャプレートによりセルスタックに荷重を付与することは有効であるが、同時に、プレッシャプレートにより燃料電池システム全体の重量が増大してしまう問題がある。一方、プレッシャプレートを徒に軽量化してしまうと、プレッシャプレートの剛性が低下し、プレッシャプレートの許容量以上の変形、プレッシャプレートの応力集中、あるいは破損等の懸念が生じ得る。すなわち、プレッシャプレートの軽量化を図るためには、剛性とのトレードオフを考慮する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、プレッシャプレートを備える燃料電池システムにおいて、プレッシャプレートの剛性を維持しつつその軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルスタックと、前記セルスタックとエンドプレートとの間、または前記セルスタックとスタックケースとの間に配置されたプレッシャプレートとを備え、前記プレッシャプレートの前記セルスタック側の面に複数の凹部が形成されることを特徴とする。
本発明の1つの実施形態では、前記凹部の開口面積は、前記プレッシャプレートの中央部において周縁部よりも相対的に小さく設定される。
また、本発明の他の実施形態では、前記プレッシャプレートは、前記セルスタックの鉛直下方に当接する部位において前記セルスタックの鉛直上方に当接する部位よりも相対的に厚くなるように設定される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレッシャプレートの剛性を維持し、セルスタックに締結荷重を付与するプレッシャプレートの機能を達成しつつ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のプレッシャプレートの外観斜視図である。
【図2】実施形態のプレッシャプレートの外観斜視図である。
【図3】実施形態のプレッシャプレートの平面図である。
【図4】実施形態のプレッシャプレートの側面図である。
【図5】他の実施形態のプレッシャプレートの平面図である。
【図6】他の実施形態の燃料電池システムの構成図である。
【図7】従来の燃料電池システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態における燃料電池システムの全体構成は、図7に示された従来の燃料電池システムと略同一である。すなわち、単セルを複数積層し、セルの積層方向の両端にエンドプレートを配置するとともに、一方のエンドプレートと端部セルとの間にプレッシャプレートを配置して燃料電池スタックを構成する。プレッシャプレートによってセルスタックに締結荷重を付与する。
【0012】
プレッシャプレートと端部セルとの間には、セルで生じた電力を集電する集電板もしくはターミナルプレートが配置され、さらにプレッシャプレートとターミナルプレートとの間にはターミナルインシュレータ(絶縁体)が配置される。ターミナルプレートは金属製であり、ターミナルインシュレータはPET等の樹脂製である。セルスタック、プレッシャプレート及びエンドプレートはスタックケースに収納される。
【0013】
なお、エンドプレートとスタックケースとを別個に設けるのではなく、エンドプレートをスタックケースと一体化してもよく、この場合にはスタックケースと端部セル(あるいはセルスタック)との間にプレッシャプレートが配置されることになる。
【0014】
図1〜図3に、本実施形態におけるプレッシャプレート100を示す。図1は、プレッシャプレート100を裏面側、すなわちセル側から見た外観斜視図であり、図2は表側、すなわちエンドプレートまたはスタックケース側から見た外観斜視図である。さらに、図3は、プレッシャプレート100をセル側から見た平面図である。
【0015】
プレッシャプレート100は、鋳物用のアルミニウム材から構成され、ダイカスト成形された後に細部を機械加工で成形されて構成される。プレッシャプレート100は、その外観形状は矩形状をなし、セル側の面に複数の凹部(あるいは肉盗み)102が形成される。凹部102は、プレッシャプレート102の全体に形成されるが、その大きさはプレッシャプレート102の位置に応じて異なっている。すなわち、プレッシャプレート102の周縁部と中央部とで比較すると、周縁部における凹部102の開口面積は、中央部における凹部102の開口面積よりも相対的に大きく設定される。言い換えれば、中央部における凹部102の開口面積は、周縁部よりも相対的に小さく設定される。
【0016】
より具体的に説明すると以下の通りである。すなわち、図3に示すように、左右方向をx方向、上下方向をz方向とすると、プレッシャプレート100のセル側の面に形成される凹部102は、プレッシャプレート100の中心に対してほぼ左右対称に形成され、中心から端部に向けて順に、凹部列102a、102b、102c、102d、102e、102fが形成される。
【0017】
凹部列102aは、上下方向に配列した4個の凹部からなり、それぞれ所定の開口面積を有する。凹部列102aを構成する4個の凹部のうち、中央の2個の凹部の開口面積は互いに等しい。また、上方及び下方の2個の凹部の開口面積は、中央の2個の凹部の開口面積よりも上下方向に長く延在している分だけ相対的に大きい。
【0018】
凹部列102bは、上下方向に配列した5個の凹部からなり、中央の3個の凹部の開口面積は互いに等しい。上方の凹部の開口面積は、中央の3個の開口面積より小さいが、下方向の凹部の開口面積は、中央の3個の開口面積よりも大きい。
【0019】
凹部列102cは、上下方向に配列した5個の凹部からなり、中央の3個の凹部の開口面積は互いに等しい。また、上方及び下方の2個の凹部の開口面積の方が中央の3個の開口面積よりも上下方向に長く延在している分だけ相対的に大きい。
【0020】
凹部列102dは、上下方向に配列した5個の凹部からなり、中央の3個の凹部の開口面積は互いに等しい。また、上方及び下方の2個の凹部の開口面積は、中央の3個の凹部の開口面積よりも上下方向に長く延在している分だけ相対的に大きい。凹部列102dのそれぞれの開口面積は、凹部列102b、102cのそれぞれの開口面積よりも左右方向に長く延在している分だけ相対的に大きい。
【0021】
凹部列102eは、上下方向に配列した5個の凹部からなり、中央の3個の凹部の開口面積は互いに等しい。上方及び下方の2個の凹部の開口面積は、中央の3個の開口面積よりも上下方向に長く延在している分だけ相対的に大きい。
【0022】
凹部列102fは、上下方向に配列した5個の凹部からなり、中央の3個の凹部の開口面積は互いに等しく、凹部列102d、102eの中央の3個の凹部よりも左右方向に長く延在している分だけ相対的に開口面積が大きい。
【0023】
このように、プレッシャプレート100のセル側の面に複数の凹部102を形成することで、その分だけプレッシャプレート100の重量が軽減されることになる。また、発電時には燃料電池スタックは膨潤し、このためプレッシャプレート100もエンドプレートの方向に変形するが、プレッシャプレート100のセル側の面に凹部102を形成することで、エンドプレート側の面における剛性を維持し、プレッシャプレート100がエンドプレート方向に変形した場合のエンドプレート側の引張応力に抗することができる。さらに、本実施形態では、例えば凹部列102b、102cよりも凹部列102d、102e、102fの方が開口面積が大きく、あるいは凹部列102a、102b、102cに着目しても中央よりも上下方向の方が開口面積が大きく設定されているように、プレッシャプレート100の中央部の凹部102は周縁部よりも相対的に開口面積が小さく、このため中央部の方が周縁部よりも剛性が高い。プレッシャプレート100の中央部は発電領域に当接する部位であり、発電領域は変形量が相対的に大きくなる部位であるため、中央部の剛性を周縁部に比べて高く設定することで、発電時の変形に対応し得る。言い換えれば、プレッシャプレート100の軽量化を図りつつ、変形量が大きい部位の剛性を相対的に高めることで剛性を効率的に維持できる。
【0024】
なお、プレッシャプレート100のセル側の面に形成された凹部102は、プレッシャプレート100の軽量化と剛性を両立させるだけでなく、凹部102は断熱部としても機能し得るので、断熱性が向上する効果もある。
【0025】
図4に、プレッシャプレート100の側面図を示す。図中z方向は上下方向である。プレッシャプレート100の厚さは、下方向ほど厚くなる台形形状をなす。すなわち、セルスタックの鉛直下方に当接するプレッシャプレート100の部位の厚さは、セルスタックの鉛直上方に当接する部位よりも相対的に厚い。このように、下方に行くほど厚く設定することで、セル内の水分が重力の作用で下方に移動し、水分の下方への移動によりセルの膜電極接合体(MEA)が膨潤しても、プレッシャプレート100の下方の変形を抑制できる。すなわち、セルが特に膨潤する下方においてプレッシャプレート100の剛性を高めることで、軽量化を図りつつ剛性を効率的に高めることができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず種々の変形が可能である。
【0027】
例えば、本実施形態において、プレッシャプレート100のセル側の面のほぼ全域に凹部102を形成しているが、偏在させて形成してもよい。例えば、プレッシャプレート100の中央には凹部102を形成せず、周縁部に凹部102を局所的に形成する等である。
【0028】
また、複数の凹部102を形成する場合にも、必ずしも上下あるいは左右方向に配列している必要はなく、同心円状に配列していてもよく、あるいは散在していてもよい。要するに、凹部102の配列方法を問わず、プレッシャプレート100のセル側の面のみに複数の凹部を形成すればよい。
【0029】
また、本実施形態においては、凹部102の開口面積を変化させているが、凹部102の開口面積を均一に設定してもよい。図5に、凹部102の開口面積が均一な場合のプレッシャプレート100のセル側から見た平面図を示す。この場合において、プレッシャプレート100のセル側の面のみに凹部102が形成されているので、軽量化を図りつつ剛性を維持することができる。また、凹部102によりプレッシャプレート100の断熱性も向上する。
【0030】
また、本実施形態におけるプレッシャプレート100と端部セルとの間には、ターミナルプレートとターミナルインシュレータが配置されるが、プレッシャプレート100を利用してターミナルインシュレータを巧みに組み付けることも可能である。
【0031】
図6に、燃料電池システムの構成を示す。セルスタック110の端部にターミナルプレート112が配置される。ターミナルプレート112に隣接してシート状のターミナルインシュレータ114が配置され、このターミナルインシュレータ114を介してプレッシャプレート100が配置される。シート状のターミナルインシュレータ114は、例えば厚さが3mm程度であり、PET等の樹脂から真空成形される。
【0032】
プレッシャプレート100のセル側の面には凹部102が形成されるが、同時に、プレッシャプレート100のセル積層方向から見た面積はセルスタック110の面積よりも小さく設定される。そして、シート状のターミナルインシュレータ114の縁部を曲げ起こし、曲げ起こした縁部をプレッシャプレート100の外周に配置する。このような構成によれば、プレッシャプレート100の外周を用いてターミナルインシュレータの端部を逃がすことができ、組み付け性が向上する。
【符号の説明】
【0033】
100 プレッシャプレート、102 凹部、110 セルスタック、112 ターミナルプレート、114 ターミナルインシュレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタックと、
前記セルスタックとエンドプレートとの間、または前記セルスタックとスタックケースとの間に配置されたプレッシャプレートと、
を備え、前記プレッシャプレートの前記セルスタック側の面に複数の凹部が形成されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、
前記凹部の開口面積は、前記プレッシャプレートの中央部において周縁部よりも相対的に小さいことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載に燃料電池システムにおいて、
前記プレッシャプレートは、前記セルスタックの鉛直下方に当接する部位において前記セルスタックの鉛直上方に当接する部位よりも相対的に厚いことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4471(P2013−4471A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137587(P2011−137587)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】