説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の発電性能を適切に維持する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】反応ガス供給流路に設置され、反応ガス流路に流入する反応ガスを含む気体の状態値を検出する第1状態値検出手段23、32と、燃料電池10からの電流を検出する電流検出手段51と、オフガス排出流路に設置され、反応ガス流路から排出されるオフガスの状態値を検出する第2状態値検出手段24、33と、反応ガス流路内における流動様式と、反応ガス流路内での水の増加率及び反応ガス流路内でのガス流速と、の対応関係を示すマップが記憶されている記憶手段60と、記憶手段の前記マップを参照して前記流動様式を判定し、前記流動様式の判定結果がスラグ流又はプラグ流であった場合に、調整手段を制御することによって、前記流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させる制御手段60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素(燃料ガス)と、酸素(酸化剤ガス)を含む空気とを、それぞれアノード及びカソードに供給して電気化学的に反応させることにより、直流の電気エネルギを得る構造体である。燃料電池を良好に発電させるためには、その内部で不具合が生じないように燃料電池の状態を監視し、適切な状態となるように制御する必要がある。
【0003】
前記不具合の例として、燃料電池を構成する膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の電解質膜(Proton Exchange Membrane:PEM)が乾燥し、適切な湿潤状態とならない場合がある。また、前記不具合の他の例として、電極反応が起こることによって燃料電池内の流路(アノード流路又はカソード流路)に流れ出た水で、燃料電池内の流路が閉塞されて、反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)が燃料電池に適切に供給されない場合がある。
【0004】
特許文献1には、燃料電池を構成する複数の発電体(単セル)の各抵抗値を、燃料電池内部の湿潤状態の指標値として検出する湿潤状態検出部と、検出された前記各抵抗値のうち少なくとも1つの抵抗値が所定閾値よりも高くなった場合には、電圧回復処理を行う制御部と、を備えた燃料電池システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−158383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、前記発電体の抵抗値の上昇を、燃料電池内部の水分量の減少(つまり、燃料電池内が乾燥していること)と対応させることによって、燃料電池内の湿潤状態を判定している。
しかしながら、前記したように、燃料電池内の流路に流れ出た水により、燃料電池内の流路が閉塞されて、反応ガスが適切に供給されない場合もある。また、燃料電池内の気体(水素、酸素、窒素、水蒸気など)及び液体(水)の流動様式は、さまざまな因子によって多様に変化する。つまり、特許文献1に記載の技術では、前記したように、燃料電池内の流路が閉塞されて反応ガスが適切に供給されないという事態に対処することができないという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、燃料電池を構成する複数の発電体の抵抗値を検出するために、燃料電池に対して電流を供給する電源部(交流電源部)を備える必要があり、製作コストの増大を招くという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、燃料電池の発電性能を適切に維持する燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、反応ガス流路及び冷媒流路を有し、前記反応ガス流路に反応ガスが供給されることで発電する燃料電池と、前記反応ガス流路に向かう反応ガスが通流する反応ガス供給流路と、前記反応ガス流路から排出されるオフガスが通流するオフガス排出流路と、前記反応ガス供給流路に設置され、前記反応ガス流路に流入する反応ガスを含む気体の単位時間当たりの流量と、前記気体の圧力と、前記気体の温度と、前記気体の露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する第1状態値検出手段と、前記燃料電池からの電流を検出する電流検出手段と、前記オフガス排出流路に設置され、前記反応ガス流路から排出されるオフガスの単位時間当たりの流量と、前記オフガスの温度と、前記オフガスの露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する第2状態値検出手段と、前記反応ガス流路内における流動様式と、前記反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速と、の対応関係を示すマップが記憶されている記憶手段と、制御手段と、前記制御手段による制御に従って動作することにより、前記反応ガス流路に流入する前記気体の単位時間当たりの流量、前記反応ガス流路内の圧力、前記冷媒流路を通流する冷媒の温度、からなる群から選択されるいずれか一つを調整する調整手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1状態検出手段によって検出される前記気体の各状態値と、前記電流検出手段によって検出される電流値と、前記第2状態検出手段によって検出されるオフガスの各状態値と、から前記反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速を求め、前記記憶手段の前記マップを参照して前記流動様式を判定し、前記流動様式の判定結果がスラグ流又はプラグ流であった場合に、前記調整手段を制御することによって、前記流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、燃料電池の反応ガス供給流路に設置された第1状態値検出手段によって、反応ガス流路に流入する反応ガスを含む気体の各状態値(単位時間当たりの流量、圧力、温度、露点)を検出する。また、電流検出手段によって、燃料電池からの電流を検出する。さらに、燃料電池のオフガス排出流路に設置された第2状態値検出手段によって、反応ガス流路から排出されるオフガスの各状態値(単位時間当たりの流量、温度、露点)を検出する。
【0011】
また、記憶手段には、反応ガス流路内における流動様式と、反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速と、の対応関係を示すマップが記憶されている。
【0012】
そして、制御手段が、第1状態検出手段及び第2状態検出手段によって検出される各状態値と、電流検出手段によって検出される電流値とから、反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速を求める。さらに、制御手段は記憶手段の前記マップを参照して、前記処理で求めた反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速から、燃料電池内の反応ガス流路内における流動様式を判定する。
【0013】
そして、制御手段は、前記流動様式の判定結果がスラグ流又はプラグ流であった場合に、反応ガス流路に流入する前記気体の単位時間当たりの流量、反応ガス流路内の圧力、冷媒流路を通流する冷媒の温度、からなる群から選択されるいずれか一つを調整する調整手段を制御することによって、前記流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させる。
【0014】
これにより、燃料電池の反応ガス流路内における流動様式を適切に判定することができる。また、後記するように、流動様式がスラグ流又はプラグ流であった場合には、反応ガス流路が閉塞するため、燃料電池の発電性能が低下することとなる。本発明は、前記判定結果がスラグ流又はプラグ流であった場合には、反応ガス流路内における流動様式を、スラグ流又はプラグ流から離脱させる(つまり、他の流動様式に変化させる)ことにより、燃料電池の発電性能の低下を防止することができる。
【0015】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、前記流動様式を単相流とするように制御することが好ましい。
【0016】
燃料電池の反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流である場合には、前記したように、燃料電池内の反応ガス流路が閉塞状態となり、燃料電池に反応ガスが適切に供給されなくなってしまう。
前記構成によれば、反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、制御手段が単相流とするように制御するため、反応ガス流路内の状態を閉塞状態から離脱させ、燃料電池の発電性能の低下を防止することができる。
また、流動様式を単層流に移行させる場合には、反応ガスの単位時間当たりの流量を増加させる必要がないため、燃料電池システム全体における消費電力を抑えることができる。
【0017】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、前記流動様式を環状流とするように制御することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、制御手段を環状流とするように制御するため、反応ガス流路内の状態を閉塞状態から離脱させ、燃料電池の発電性能の低下を防止することができる。
また、流動様式が環状流である場合には、燃料電池に反応ガスが十分に供給されるとともに、燃料電池内を適度な湿潤状態とすることができる。したがって、燃料電池からの出力を安定して確保することができる。
【0019】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式を単相流とした後に、前記電圧検出手段によって検出された前記燃料電池の出力電圧が所定値以下である場合には、前記流動様式を環状流とするように制御することが好ましい。
【0020】
燃料電池の反応ガス流路内における流動様式が単相流である場合、反応ガスを安定して供給することができるものの、燃料電池内が乾燥状態となって出力電圧が低下する可能性がある。
前記構成によれば、反応ガス流路内における流動様式を単相流とした後に、電圧検出手段によって検出された燃料電池の出力電圧が所定値以下である場合には、制御手段が、流動様式を環状流とするように制御する。したがって、前記したように、燃料電池内を適度な湿潤状態とすることができ、燃料電池からの出力を安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、燃料電池の発電性能を適切に維持する燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】燃料電池の反応ガス流路内での流動様式を説明するための断面図であり、(a)は単相流の場合の断面図であり、(b)は環状流の場合の断面図であり、(c)はスラグ流の場合の断面図であり、(d)はプラグ流の場合の断面図である。
【図3】燃料電池の反応ガス流路内におけるガス流速及び水流速と、流動様式との対応関係を示すマップである。
【図4】(a)は反応ガス流路の配管の各形状における相当直径とガス流速との関係を示すグラフであり、(b)〜(e)は、反応ガス流路の各形状を示す断面図である。
【図5】カソード流路内の流動様式を判定し、その判定結果に基づいた制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】アノード流路内の流動様式を判定し、その判定結果に基づいた制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】カソード流路内及びアノード流路内の流動様式を単相流又は環状流とした後の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】(a)は、流動様式がスラグ流/プラグ流である状態から単相流又は環状流に変化させた場合のガス流速と、水の増加率との関係を示す説明図であり、(b)は、(a)の説明図に対応したFC内の温度と水蒸気圧との関係を示す説明図である。
【図9】(a)は、流動様式が単相流である状態から環状流に変化させた場合のガス流速と、水の増加率との関係を示す説明図であり、(b)は、(a)の説明図に対応したFC内の温度と水蒸気圧との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の記載において、燃料電池10に供給される燃料ガス(水素)、及び/又は、酸化剤ガス(酸素)を含む空気を総称して、「反応ガス」と記すことがあるものとする。
また、燃料電池10から排出されるアノードオフガス及び/又はカソードオフガスを総称して、「オフガス」と記すことがあるものとする。また、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示すように、燃料電池システム1は、例えば、図示しない燃料電池四輪車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池10と、燃料電池10のアノードに対して燃料ガス(水素)を供給するアノード系と、燃料電池10のカソードに対して酸化剤ガス(酸素)を含む空気を供給するカソード系と、燃料電池10を経由するように冷媒を循環させて燃料電池10を適温に保つ冷媒系と、燃料電池10の発電電力を消費する電力消費系と、これらを制御する制御系と、を備えている。
【0025】
<燃料電池>
燃料電池10は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、図示しない膜/電極接合体(MEA)を一対の導電性のセパレータ(図示せず)で挟持してなる単セル(図示せず)が複数積層されて構成されている。
【0026】
また、燃料電池10の各セパレータには、各膜/電極接合体の全面に水素又は酸素を供給するための溝及び貫通孔が形成されており、これらの溝及び貫通孔がアノード流路11、カソード流路12として機能している。すなわち、燃料電池10に対して反応ガスが供給される「反応ガス流路」は、燃料電池10に対して燃料ガスを供給するアノード流路11、及び/又は、燃料電池10に対して酸化剤ガスを供給するカソード流路12を備えて構成される。
【0027】
また、セパレータには、燃料電池10を冷却する冷媒(例えば、エチレングリコールを含む水)が通流する冷媒流路13が形成されている。
【0028】
燃料電池10では、アノード流路11を介して燃料ガス(水素)が供給されると、(式1)の電極反応が起こり、カソード流路12を介して酸化剤ガス(酸素)を含む空気が供給されると、(式2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage):開回路電圧)が発生するようになっている。
【0029】
2H→4H+4e・・・(式1)
+4H+4e→2HO・・・(式2)
【0030】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク21と、圧力調整弁22と、エゼクタ23と、気液分離器24と、ドレン弁25と、パージ弁26と、各種センサ23q,23p,23d,23t,24q,24d,24tと、を備えている。
【0031】
水素タンク21は、配管21aを介して圧力調整弁22と接続され、高純度の水素が高圧で圧縮充填されている。圧力調整弁22は、配管22aを介してエゼクタ23と接続され、その開閉により、水素タンク21から配管21aを介して供給される水素の圧力を調整する。エゼクタ23は、配管23aを介してアノード流路11の入口と接続され、水素タンク21から供給された水素をノズルから噴射することによりノズルの周囲に負圧を発生させ、アノード流路11の出口から排出された未反応の水素を、配管24a,24bを介して吸引する。
【0032】
気液分離器24は、配管24aを介してアノード流路11の出口と接続され、アノード流路11から排出されるアノードオフガスに含まれる水分を分離して一時的に貯留する。ドレン弁25は、配管25aを介して気液分離器24の下部と接続され、配管25bを介して希釈器35と接続されている。ドレン弁25は、開弁することにより、気液分離器24に貯留された水を希釈器35に排出する機能を有する。
【0033】
パージ弁26は、配管24bから分岐した配管26aに接続され、配管26bを介して希釈器35と接続されている。パージ弁26は、開弁することにより、循環経路(配管23a、アノード流路11、配管24a,24b)に蓄積した不純物(窒素や水分など)を、希釈器35に排出する機能を有する。
【0034】
流量センサ23qは、配管23aを通流する水素(反応ガス)を含む気体の体積流量を測定し、ECU(Electric Control Unit)60に出力する。流量センサ23qとして、例えば、ベンチュリ流量計やオリフィス流量計などを用いる。
圧力センサ23pは、配管23aを通流する水素を含む気体の圧力を測定し、ECU60に出力する。圧力センサ23pとして、例えば、ダイアフラム気圧計などを用いる。
【0035】
露点センサ23dは、配管23aを通流する水素を含む気体の露点を測定し、ECU60に出力する。露点センサ23dとして、例えば、静電容量式の露点計などを用いる。
温度センサ23tは、配管23aを通流する水素を含む気体の温度を測定し、ECU60に出力する。温度センサ23tとして、例えば、サーミスタなどを用いる。
【0036】
なお、配管24aを通流するオフガスの各状態値を検出する流量センサ24q、露点センサ24d、温度センサ24tについては、前記と同様であるから説明を省略する。また、図1に記載の各センサ及び出力検出器51からECU60に検出信号が出力されるが、簡単のため、図1では図示を省略している。
【0037】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ31と、加湿器32と、背圧弁34と、希釈器35と、各種センサ32q,32p,32d,32t,33q,33d,33tと、を備えている。
【0038】
コンプレッサ31は、車外と連通している配管31aと接続され、内部の羽根車(図示せず)が回転することによって車外から空気を吸引・圧縮し、燃料電池10に向けて圧送する。加湿器32は、配管31bを介してコンプレッサ31と接続され、配管31bを通流してくる低湿潤の空気と、配管33bを通流してくる高湿潤のオフガスとの間で、中空糸膜32cを介して水分交換を行い、カソード流路12に向かう空気を加湿する。
【0039】
背圧弁34は、配管34aを介して加湿器32と接続され、配管31b,32a、カソード流路12、配管33b,34aを通流する気体(反応ガス又はオフガス)の圧力を調整する。希釈器35は、配管35aを介して背圧弁34と接続され、配管26bからのアノードオフガスと、配管35aからのカソードオフガスとを混合し、燃料オフガスに含まれる水素をカソードオフガスで希釈する。ちなみに、希釈器35内のオフガスなどは、配管36aを介して車外に排出される。
【0040】
流量センサ32q、圧力センサ32p、露点センサ32d、温度センサ32tは、それぞれ、配管32aを通流する空気の流量、圧力、露点、温度を検出し、ECU60に出力する。
また、流量センサ33q、露点センサ33d、温度センサ33tは、それぞれ、配管33bを通流するオフガスの流量、露点、温度を検出し、ECU60に出力する。
なお、前記各種センサについては、アノード側に設置された各種センサと同様であるから、説明を省略する。
【0041】
なお、前記で説明した反応ガス流路に向かう反応ガスが通流する「反応ガス供給流路」は、配管21a,22a,23a,24a,24bを含んで構成される燃料ガス供給流路、及び/又は、配管31a,31b,32aを含んで構成される酸化剤ガス供給流路を示すものとする。
また、燃料電池10から排出されるオフガスが通流する「オフガス排出流路」は、配管24a,24b,26a、26bを含んで構成されるアノードオフガス排出流路、及び/又は、配管33b,34a,35a,36aを含んで構成されるカソードオフガス排出流路を示すものとする。
【0042】
また、反応ガス流路に流入する反応ガスを含む気体の単位時間当たりの流量と、前記気体の圧力と、前記気体の温度と、前記気体の露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する「第1状態値検出手段」は、燃料ガス供給流路に設置される各種センサ23q,23p,23d,23t、及び/又は、酸化剤ガス供給流路に設置される各種センサ32q,32p,32d,32tを示すものとする。
【0043】
また、反応ガス流路から排出されるオフガスの単位時間当たりの流量と、前記オフガスの温度と、前記オフガスの露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する「第2状態値検出手段」は、アノードオフガス排出流路に設置される各種センサ24q,24d,24t、及び/又は、カソードオフガス排出流路に設置される各種センサ32q,32d,32tを示すものとする。
【0044】
また、ECU60による制御に従って動作することにより、反応ガス流路11,12に流入する気体の単位時間当たりの流量、反応ガス流路11,12内の圧力、冷媒流路13を通流する冷媒の温度、からなる群から選択されるいずれか一つを調整する「調整手段」は、図1に示す圧力調整弁22、パージ弁26、コンプレッサ31、背圧弁34、後記する冷媒ポンプ41を示すものとする。
【0045】
<冷媒系>
冷媒系は、冷媒ポンプ41と、ラジエータ42と、を備えている。冷媒ポンプ41は、配管41aを介して燃料電池10の冷媒流路13の入口と接続され、所定の圧力をかけることによって、配管41a,冷媒流路13、配管42a,42b中の冷媒を循環させる。ラジエータ42は、配管42aを介して冷媒流路13の出口と接続され、配管42bを介して冷媒ポンプ41と接続されている。ラジエータ42は、外気との間で熱交換を行うものであり、冷媒を介して燃料電池10を放熱させる。
【0046】
<電力消費系>
電力消費系は、出力検出器51と、電力制御器52と、モータ53と、を備えている。
出力検出器51は、電流センサ及び電圧センサを備えており、燃料電池10の現在(検出時)の電流値、電圧値をそれぞれ検出してECU60に出力する。電力制御器52は、ECU60からの指令に従って燃料電池10の発電電力などを制御するものであり、DC/DCチョッパ、DC/DC/コンバータなどの電子回路を内蔵している。モータ53は、電力制御器52から入力される電力に従って回転する電動モータであり、燃料電池10が搭載された移動体の動力源となる。
【0047】
なお、燃料電池10からの電流を検出する「電流検出手段」、及び、燃料電池10の出力電圧を検出する「電圧検出手段」は、前記した出力検出器51を示すものとする。
また、出力検出器51として、燃料電池10を構成する各単セル(又は複数の単セル)の出力電圧をそれぞれ検出するセル電圧モニタを含むものとする。
【0048】
<制御系>
ECU60(制御手段)は、CPU、RAM、ROM、各種インタフェース、電子回路などを備えて構成されている。ECU60は、その内部に記憶したプログラムに従って各種機能を発揮する。
また、ECU60には、図1に示す各センサ(出力検出器51を含む。)からの検出信号が入力され、当該検出信号に応じて圧力調整弁22、ドレン弁25、パージ弁26、コンプレッサ31、背圧弁34、冷媒ポンプ41、電力制御器52などの動作を制御する。
【0049】
なお、ECU60は、反応ガス流路内における流動様式と、当該反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速と、の対応関係を示すマップが記憶されている「記憶手段」(図示せず)を備えている。
【0050】
≪反応ガス流路内における流動様式≫
燃料電池10内では、アノード流路11に水素が供給され、カソード流路12に酸素を含む空気が供給されることによって、前記の(式1)、(式2)で示した電極反応が起こる。
したがって、カソード流路12内には、(式2)で示した電極反応によって生成された水(水蒸気)が流入する。また、燃料電池10の電解質膜の膜中において水分子がイオンの動きに伴って移動する電気浸透現象によって、電解質膜を越えてカソード流路12内に水が流入する。
【0051】
また、前記電極反応による水分子の移動と、前記電気浸透現象による水分子の移動により、電解質膜内の水分子がアノード側に移動する逆拡散が起こる。これによって、電解質膜を越えてアノード流路11内に水が流入する。
【0052】
また、反応ガス流路(アノード流路11及び/又はカソード流路12)内に流入した水蒸気の一部は、各流路内における温度及び水蒸気の分圧に応じて結露し、凝縮水となる。つまり、燃料電池10の反応ガス流路内においては、水(液体)と、水蒸気を含む気体とが混在した状態となる。
ちなみに、反応ガス流路内に流入した水蒸気が結露しない場合には、反応ガス流路内は気体のみが存在する状態となる。
【0053】
ここで、前記の液体と気体とが混在した流動様式は、流路の断面形状、流路内の圧力、流路内の温度、単位時間当たりの流量(気体流量及び液体流量)などの因子によって多様に変化する。このような、気体(相)と液体(相)の混合体流れを、気液二相流と称する。気液二相流の流動様式として、例えば、後記する環状流、スラグ流、プラグ流などがある。
【0054】
これに対して、気体又は液体だけの単一の流れを単相流(気体単相流又は液体単相流)という。なお、以下の記載においては説明の便宜上、気体単相流を単に「単相流」と称する。
ちなみに、単相流として、一成分の気体(例えば、水素)のみが流路内を通流する場合の他、複数成分(水素、酸素、窒素、水蒸気など)の気体が混在して流路内を通流する場合も含むものとする。
【0055】
図2(a)に示すように、単相流は、配管内を気体のみが流動する流動様式である。また、図2(b)に示すように、環状流は、液体が配管の内壁面に分布し、気体及び液体が流動する流動様式である。
【0056】
また、図2(c)に示すように、スラグ流は、配管内に満たされた液体(水)の中で所定の大きさの気体が集まってできた気体領域が、配管の内壁面に接することなく複数存在し、気体及び液体がそれぞれ流動する流動様式である。
【0057】
また、図2(d)に示すように、プラグ流は、配管内に満たされた液体(水)の中で所定の大きさの気体がさらに集まってできた大きな気体領域が複数存在し、気体及び液体がそれぞれ流動する流動様式である。
【0058】
図2(a),(b)に示すように、単層流又は環状流の場合には、配管内を気体が連続して通流する流路が形成される。したがって、反応ガス流路における流動様式が単相流又は環状流である場合には、燃料電池10の電解質膜に反応ガスが安定して供給される。
【0059】
一方、図2(c),(d)に示すように、スラグ流又はプラグ流の場合には、配管内を気体が連続して通流する流路が形成されず、気体の流動が閉塞されることとなる。したがって、反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流である場合には、燃料電池10の電解質膜に反応ガスを安定して供給することができず、燃料電池10の発電性能が著しく低下する虞がある。
【0060】
ちなみに、燃料電池10の反応ガス流路内において、水の量が除々に増加していった場合、まず、反応ガス流路の下流側の流動様式がスラグ流又はプラグ流となる可能性が高い。
これは、気体である反応ガスが電解質膜内での発電によって消費され、下流側にいくほど反応ガスの量が減っていくとともに、前記した電極反応などによって発生した水が反応ガス流路の出口に向けて圧送されるためである。
【0061】
そして、反応ガス流路の下流側でスラグ流又はプラグ流が発生すると、前記したように、気体の流路が閉塞されるため、スラグ流又はプラグ流の領域が上流側に向けて広がっていくこととなる。
【0062】
また、図3に示すように、気液混合体のうちの気体の流速である「ガス流速」と、液体である水の流速である「水流速」とによって、前記した各流動様式を特定することができる。ちなみに、図3は、流路内の所定箇所における水流速及びガス流速と、当該箇所での流動様式を示している。
【0063】
図3に示すように、気液二相流はプラグ流、スラグ流、環状流の順にガス流速が大きくなる。また、スラグ流と環状流との間には、これらの混合状態である遷移領域Fが存在する。ちなみに、遷移領域Fの流動様式は、具体的には、環状−スラグ流であり、スラグ流から環状流(又はその逆)に変化する際の過渡的な流動状態である。
また、図示は省略したが、単層流と環状流との境界領域にも、噴霧流や液滴流といった流動様式が存在する。
【0064】
ここで、燃料電池10の反応ガス流路内における流動様式を判定する際には、後記するように、スラグ流と環状流とを区別する際の閾値となるガス流速(図3の領域Fでのガス流速)を求める必要がある。
そこで、図4(a)に示すように、流路の断面形状(台形)の寸法を変えて、それぞれの断面形状(形状1〜形状4)の流路について前記遷移領域Fに対応するガス流速(遷移流速)の範囲を調べた。
【0065】
図4(b)〜図4(e)に示す形状1〜形状4を比較すると、いずれも流路断面が台形であるものの、上底長さ(U1〜U4)、下底長さ(L1〜L4)、及び高さ(H1〜H4)が、いずれも図4(b)に示す形状1が最も小さく、記載順に大きくなり、図4(e)に示す形状4が最も大きくなるように設定されている。
【0066】
そして、流路の断面が形状1〜形状4の直線状の配管を同じ方向、例えば水平となるように載置し、前記流路に供給する気体及び液体の流量を徐々に変えながら高速度カメラで管路内を撮影して、遷移流速を求めた。
【0067】
図4(a)に示す横軸は、前記した各流路の相当直径である。ここで、相当直径とは、断面形状が円形でない流路について、圧力損失や伝熱などについて等価な断面円形の流路を想定した場合での、前記円の直径である。また、図4(a)に示す縦軸は、流路内を流れる気体の流速(ガス流速)である。
【0068】
図4(a)に示すように、混合流(環状−スラグ流)から環状流に遷移する際のガス流速を■印で示し、スラグ流から前記混合流に遷移する際のガス流速を●印でプロットした。図4(a)を参照すると、形状1〜形状4の流路においては、スラグ流から環状流に遷移する際の遷移領域F(図3参照)におけるガス流速(遷移流速)は、0.5m/s〜9.0m/sであることが確認された。
【0069】
なお、遷移流速の範囲は、前記範囲に限定されるものではない。すなわち、流路の断面形状が異なる場合(例えば、長方形)や、流路が水平面となす角度によって、遷移流速の範囲は異なる。前記のような実験結果に基づいて、燃料電池10内のアノード流路11及びカソード流路12における流動様式を判定する際の閾値(遷移流速)を設定することができる。
【0070】
≪流動様式の判定及び制御処理≫
次に、図5〜図7を参照しつつ、反応ガス流路内の流動様式を判定し、その判定結果に基づいた制御について説明する。
【0071】
図5のステップS101において、ECU60は、カソード流路12の流動様式の判定処理を開始する。ステップS102において、ECU60は、カソード流路12内における水の増加率ΔQが0未満であるか否か判定する。
【0072】
ここで、カソード流路12内における水の増加率ΔQ[L/min]は、以下の(式3)で求められる。なお、(式3)においてQVB[L/min]は、燃料電池10内において生成される水(水蒸気)の体積流量であり、QVI[L/min]は、カソード流路12の入口側の配管32a(図1参照)を通流する空気に含まれる水蒸気の体積流量であり、QVO[L/min]は、カソード流路12の出口側の配管33bを通流する空気に含まれる水蒸気の体積流量である。また、αはカソード側からアノード側への水移動の割合を決める係数であり、予め実験により計測することで設定することができる。
【0073】
【数1】

【0074】
ちなみに、前記(式3)において、燃料電池10内において生成される水の体積流量QVB[L/min]は、出力検出器51(図1参照)から入力される電流値に基づいて、ECU60が算出する。
【0075】
また、前記(式3)において、配管32a(図1参照)を通流する空気中に含まれる水蒸気の体積流量QVI[L/min]は、以下の(式4)で求められる。なお、(式4)においてQGI[L/min]は、配管32aを通流する空気の体積流量であり、P[kPa]は、配管32aを通流する空気に含まれる水蒸気の分圧であり、P[kPa]は、配管32aを通流する空気の圧力である。
【0076】
【数2】

【0077】
ちなみに、前記(式4)において、配管32aを通流する空気の体積流量QGI[L/min]は、流量センサ32q(図1参照)によって検出され、ECU60に出力される。
【0078】
また、前記(式4)において、配管32aを通流する空気に含まれる水蒸気の分圧P[kPa]は、露点計32dの検出値に基づいてECU60が求める。なお、ECU60には、図8(b)に示す飽和水蒸気圧曲線のデータが格納されている。
例えば、配管32a(図1参照)中の温度及び水蒸気圧が、状態B3(図8(b)参照)であった場合、ECU60は、露点センサ32dの検出値である温度T4から、配管32a中の水蒸気の分圧P1を求めることができる。
【0079】
また、前記(式4)において、配管32aを通流する空気の圧力P[kPa]は、圧力センサ32p(図1参照)によって検出され、ECU60に出力される。
【0080】
また、前記(式4)において、配管33bを通流する空気中に含まれる水蒸気の体積流量QVO[L/min]も、前記でQVI[L/min]を求めたのと同様の方法で、配管33bに設置された各検出器から入力される検出値に基づいて、ECU60が算出する。
【0081】
ステップS102において、カソード流路12内における水の増加率ΔQが0未満である(つまり、カソード流路12内が乾燥しつつある)と判定した場合(S102→Yes)、ECU60の処理はステップS103に進む。一方、カソード流路12内における水の増加率ΔQが0以上である(つまり、カソード流路12内が湿潤しつつある)と判定した場合(S102→No)、ECU60の処理はステップS104に進む。
【0082】
ステップS103において、ECU60は、カソード流路12内の流動様式が単相流であると判定し、当該判定結果を記憶する。
【0083】
前記のように判定する理由は、「カソード流路12内が乾燥しつつあるならば、単相流である」の対偶(「単相流でないならば、カソード流路12内が湿潤しつつある」)をとって、次のように説明することができる。すなわち、単相流でないならば、カソード流路12中に液体(水)が存在する。この場合、カソード流路12内の水蒸気の分圧は飽和蒸気圧に達している(つまり、それ以上水が蒸発できない状態となっている)。したがって、流入してくる空気中の水蒸気の少なくとも一部が凝縮するため、カソード流路12内が湿潤しつつある状態となる。
【0084】
ステップS104において、ECU60は、カソード流路12内でのガス流速vが、遷移流速v1より大きいか否か判定する。遷移流速v1は、前記したように、例えば0.5m/s〜9.0m/sの範囲内における特定の値として、予めECU60に記憶されている。
【0085】
ここで、カソード流路12内でのガス流速vは、以下の(式5)で求められる。なお、(式5)において、QGO[L/min]は、配管33b(図1参照)を通流するカソードオフガスの体積流量であり、nは燃料電池10の単セルの積層数であり、S[m]は、カソード流路12の断面積である。
【0086】
【数3】

【0087】
ここで、前記(式5)において、配管33bを通流するカソードオフガスの体積流量QGO[L/min]は、以下の(式6)で求められる。
なお、(式6)においてQGI[L/min]は、配管32a(図1参照)を通流する空気の体積流量であり、QGC[L/min]は、燃料電池10内で消費される酸化剤ガス(酸素)の体積流量であり、P[kPa]は、配管33bを通流するオフガスに含まれる水蒸気の分圧であり、P[kPa]は、配管32bを通流する空気の圧力であり、Pδ[kPa]は、カソード流路12内の気体が受ける圧損である。
【0088】
【数4】

【0089】
ちなみに、前記(式6)において、配管32aを通流する空気の体積流量QGI[L/min]は、流量センサ32q(図1参照)によって検出され、ECU60に出力される。また、燃料電池10内で消費される酸化剤ガス(酸素)の体積流量QGC[L/min]は、出力検出器51(図1参照)から入力される電流値に基づいて、ECU60が算出する。
【0090】
また、配管33bを通流するオフガスに含まれる水蒸気の分圧P[kPa]は、露点センサ33dの検出値に基づいてECU60が算出する。
また、配管32bを通流する空気の圧力P[kPa]は、圧力センサ32p(図1参照)によって検出され、ECU60に出力される。また、燃料電池10内において気体が受ける圧損Pδ[kPa]は、実験やシミュレーションによって求められ、予めECU60に記憶されている。
【0091】
ちなみに、前記(式6)に記載の(P−Pδ)は、カソード流路12の出口側の配管33bにおける圧力を示している。したがって、配管33bに圧力センサを設け、当該圧力センサの検出値に基づいて、配管33bを通流するカソードオフガスの体積流量QGO[L/min]を求めてもよい。
この場合、カソード流路12内の気体が受ける圧損Pδ[kPa]を、事前に求めておく必要はない。
【0092】
ところで、前記(式5)を参照すると、カソード流路12内でのガス流速vを求めるのに際して、カソード流路12から流出するカソードオフガスの体積流量QGOを用いている。
これは、前記したように、カソード流路12内において下流側のほうが上流側よりも、流動様式がスラグ流又はプラグ流となりやすいからである。この場合、下流側でガスの流路が閉塞するため、カソードオフガスの体積流量QGOが小さくなり、その流速も小さくなる。
【0093】
つまり、カソード流路12の出口(配管33b)におけるカソードオフガスの体積流量QGO基づいてカソード流路12内でのガス流速vを算出(推定)し、当該ガス流速vが遷移流速v1よりも大きい場合には(ステップS104→Yes)、カソード流路12内での流動様式を環状流として判定すればよいということである。
【0094】
ステップS104において、カソード流路12内でのガス流速vが0より遷移流速v1より大きいと判定した場合(S104→Yes)、ECU60の処理はステップS105に進む。一方、カソード流路12内でのガス流速vが遷移流速v1未満であると判定した場合(S104→No)、ECU60の処理はステップS106に進む。
【0095】
ステップS105において、ECU60は、カソード流路12内の流動様式が環状流であると判定し、当該判定結果を記憶する。
また、ステップS106において、ECU60は、カソード流路12内の流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定する。ステップS107において、ECU60は、カソード流路12内を乾燥させる(つまり、カソード流路12内の水を蒸発させる)ように制御する。
なお、当該制御の具体的な処理内容については、後記する。
【0096】
ステップS108において、ECU60は、ステップS107の制御を開始してから所定時間Δt1が経過したか否か判定する。所定時間Δt1が経過したと判定した場合(S108→Yes)、ECU60の処理はステップS102に戻る。所定時間Δt1が経過していないと判定した場合(S108→No)、ECU60は、ステップS108の処理を繰り返す。
【0097】
つまり、図5に示すステップS101〜S108の処理は、ECU60が、カソード流路12内における流動様式を判定し、スラグ流又はプラグ流であると判定した場合には、単相流又は環状流に移行させるように制御を行うことを意味している(図8(a)参照)。
【0098】
このような処理を行うことによって、カソード流路12内の流動様式をスラグ流又はプラグ流から離脱させ、カソード流路12において空気が通る流路を形成するようにすることができる(図2(a),(b)参照)。つまり、燃料電池10に酸化剤ガス(酸素)を安定して供給することができる。
【0099】
次に、ECU60は、アノード側に対して、前記したカソード側に対する処理と同様に、図6に示すステップS201〜S208の処理を実行する。なお、ステップS201〜S208の各処理は、図5に示すステップS101〜S108の処理と同様であるから、説明を省略する。
ちなみに、ステップS202における、アノード流路11内における水の増加率ΔQの計算式は前記(式3)と異なり、以下の(式7)で求められる。
【0100】
【数5】

【0101】
これは、燃料電池10の電極反応によってカソード側で生成される水の体積流量(QVI−QVO)に、アノードとカソードとの間で移動する水の体積流量(αQVB)を加えることによって、水の増加率ΔQが求められることを示している。
【0102】
このように、ECU60は、まず、カソード流路12の流動様式を単相流又は環状流とするよう制御を行った後に、アノード流路11の流動様式を単相流又は環状流とするよう制御を行う。
これは、燃料電池10においてカソード側で水が生成されるため、アノード流路11よりもカソード流路12のほうが、スラグ流又はプラグ流が生じやすいためである。
【0103】
次に、図7のステップS301において、ECU60は、カソード流路12内の流動様式が環状流であるか否か判定する。カソード流路12内が環状流であると判定した場合(S301→Yes)、ECU60の処理はステップS302に進む。カソード流路12内が環状流でない(つまり、単相流である)と判定した場合(S301→No)、ECU60の処理はステップS306に進む。
【0104】
ステップS302において、ECU60は、燃料電池システム1(又はコンプレッサ31)での消費電力Wが所定電力W1以上であるか否か判定する。ここで、所定電力W1は、燃料電池10に対する発電要求量(例えば、燃料電池10が燃料電池四輪車に搭載されている場合には、アクセル開度に応じた発電要求量)に対応して、変動する値である。つまり、燃料電池10に対する発電要求量が大きくなるにしたがって、所定電力W1も大きくなるように設定されている。
【0105】
アノード側における反応ガス(水素)の供給が、圧力調整弁22(図1参照)の開度によって調整されるのに対して、カソード側における反応ガス(酸素)の供給は、コンプレッサ31内の羽根車を回転させるためのモータ(図示せず)の回転速度を変化させることによって調整される。
【0106】
したがって、ガス流速が高い環状流の状態を維持するためには、それに対応して前記モータの回転数を高くする必要がある。つまり、カソード流路12内が環状流である場合には、反応ガス(酸素)を十分に供給できるとともに、燃料電池10の電解質膜の湿潤状態を適度に保つことができる一方、環状流の状態を維持するために消費電力が大きくなる可能性がある。
【0107】
ステップS302において、消費電力Wが所定電力W1以上であると判定した場合(S302→Yes)、ECU60の処理はステップS303に進む。一方、消費電力Wが所定電力W1未満であると判定した場合(S303→No)、ECU60の処理はステップS305に進む。
【0108】
ステップS303において、ECU60は、コンプレッサ31(図1参照)の出力を所定量だけ下げるように制御する。つまり、ECU60は、コンプレッサ31内の羽根車に接続されたモータ(図示せず)の回転速度を、所定値だけ下げるように制御する。
なお、前記所定値は、燃料電池10に対する発電要求量などに対応して、予め設定される値である。
【0109】
ステップS304において、ECU60は、ステップS303の制御処理を開始してから所定時間Δt3が経過したか否か判定する。所定時間Δt3が経過した場合(S304→Yes)、ECU60の処理はステップS302に戻る。一方、所定時間Δt3が経過していない場合(S304→No)、ECU60は、ステップS304の処理を繰り返す。
【0110】
ステップS305において、ECU60は、所定時間Δt4が経過したか否か判定する。なお、当該判定処理を開始する段階では、アノード流路11内は単相流又は環状流であり、カソード流路12内は環状流であるため、反応ガス(水素及び酸素)は十分に供給されている。また、この場合、環状流によって燃料電池10の電解質膜に水分が供給されている。
【0111】
ただし、前記モータの回転速度を下げると、それに応じてカソード流路12に流入する空気の流量も減少する。この場合、カソード流路12内におけるガス流速は前記した遷移流速v1に近づいていく(図3参照)。
このように、所定時間Δt4が経過した後にカソード流路12内の流動状態を再度判定することが好ましい。
【0112】
ステップS305において所定時間Δt4が経過したと判定した場合(S305→Yes)、ECU60の処理はステップS101(図5参照)にリターンする。ステップS305において所定時間Δt4が経過していないと判定した場合(S305→No)、ECU60は、ステップS305の処理を繰り返す。
【0113】
ステップS306において、ECU60は、アノード流路11内が単相流であるか否か判定する。アノード流路11内が単相流であると判定した場合(S306→Yes)、ECU60の処理はステップS307に進む。アノード流路11内が単相流でない(つまり、環状流である)と判定した場合(S306→No)、ECU60の処理はステップS311に進む。
【0114】
ステップS307において、ECU60は、燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1以下であるか否か判定する。
なお、ステップS307の段階では、アノード流路11内及びカソード流路12内が単相流となっている。このような場合、反応ガスは十分に供給されるが、単相流に含まれる水蒸気の割合が少ない状態が継続すると、燃料電池10の電解質膜が乾燥して発電性能が低下する可能性がある。つまり、燃料電池10の出力電圧Vが低くなる可能性がある。
【0115】
燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1以下であると判定した場合(S307→Yes)、ECU60の処理はステップS308に進む。一方、燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1より高いと判定した場合(S307→No)、ECU60の処理はステップS310に進む。
【0116】
ステップS308において、ECU60は、アノード流路11内及び/又はカソード流路12内を湿潤させるよう制御する。なお、当該制御処理の詳細については、後記する。
【0117】
ステップS309において、ECU60は、所定時間Δt5が経過したか否か判定する。所定時間Δt5が経過したと判定した場合(S309→Yes)、ECU60の処理はステップS307に戻る。一方、所定時間Δt5が経過していないと判定した場合(S309→No)、ECU60は、ステップS309の処理を繰り返す。
【0118】
ステップS310において、ECU60は、所定時間Δt6が経過したか否か判定する。なお、当該判定処理を開始する段階では、アノード流路11内及びカソード流路12内は単相流であるため、反応ガス(水素及び酸素)が十分に供給されている。また、この場合、出力電圧Vは所定電圧V1より高いので、燃料電池10の電解質膜の湿潤状態も適切に保たれている。
【0119】
ステップS310において所定時間Δt6が経過したと判定した場合(S310→Yes)、ECU60の処理はステップS101(図5参照)にリターンする。ステップS310において所定時間Δt6が経過していないと判定した場合(S310→No)、ECU60は、ステップS310の処理を繰り返す。
なお、所定時間Δt6は、アノード流路11及びカソード流路12の流動様式(単相流)が安定して継続すると推定される時間であり、実験などに基づいて適宜設定すればよい。
【0120】
ステップS311において、ECU60は、所定時間Δt7が経過したか否か判定する。なお、当該判定処理を開始する段階では、アノード流路11内は環状流であり、カソード流路12内は単相流であるため、反応ガス(水素及び酸素)は十分に供給されている。また、この場合、環状流によって燃料電池10の電解質膜に水分が十分に供給されている。
【0121】
ステップS311において所定時間Δt7が経過したと判定した場合(S311→Yes)、ECU60の処理はステップS101(図5参照)にリターンする。ステップS311において所定時間Δt7が経過していないと判定した場合(S311→No)、ECU60は、ステップS311の処理を繰り返す。
なお、所定時間Δt7は、アノード流路11の流動様式(環状流)及びカソード流路12の流動様式(単相流)が安定して継続すると推定される時間であり、実験などに基づいて適宜設定すればよい。
【0122】
≪流動様式を変化させるための制御処理≫
(1.スラグ流/プラグ流からの離脱)
次に、流動様式を変化させる場合のECU60の具体的な処理内容と、反応ガス流路内での状態変化について説明する。
図8(a)は、流動様式がスラグ流/プラグ流である状態から単相流又は環状流に変化させた場合のガス流速と、水の増加率との関係を示す説明図である。
【0123】
ECU60には、反応ガス流路内における流動様式と、反応ガス流路内での水の増加率及び反応ガス流路内でのガス流速と、の対応関係を示すマップ(図8(a)参照)が記憶されている。
【0124】
例えば、反応ガス流路内の流動様式がスラグ流又はプラグ流である状態A1であった場合を考える。図5,図6に示した処理では、状態A1であると判定した場合、ECU60は、カソード流路12内又はアノード流路11内を乾燥させる制御を行うこととした(図5のS107、図6のS207参照)。
【0125】
これは、反応ガス流路内における水の増加率(図8(a)の縦軸参照)を小さくすることによって、反応ガス流路内の流動状態を、状態A1(スラグ流又はプラグ流)から状態B1(単相流)に変化させることに相当する。
【0126】
図8(b)は、図8(a)の説明図に対応した燃料電池内の温度と水蒸気圧との関係を示す説明図である。図8(b)に示す状態A2は図8(a)に示す状態A1に対応し、図8(b)に示す状態B2〜B4は、図8(a)に示す状態B1に対応している。
【0127】
例えば、反応ガス流路内がスラグ流又はプラグ流であった場合に、ECU60が、反応ガス流路内のガス圧力を下げる制御を行うと、図8(b)に示す状態A2は状態B2に変化する。ここで、状態B2での水蒸気圧P2は、温度T2における飽和蒸気圧より低い。したがって、状態B2では、反応ガス流路内の水が蒸発する(つまり、反応ガス流路内が乾燥する)こととなる。
【0128】
例えば、アノード流路11内のガス圧力を下げる場合、ECU60は、圧力調整弁22(図1参照)の開度を小さくする制御を行う。また、カソード流路12内のガス圧力を下げる場合、ECU60は、コンプレッサ31(図1参照)の羽根車を回すモータの回転速度を下げる制御を行う。
【0129】
また、反応ガス流路内がスラグ流又はプラグ流であった場合に、ECU60が、燃料電池10内の温度を上げる制御を行うと、図8(b)に示す状態A2は状態B3に変化する。ここで、状態B3での水蒸気圧P1は、温度T3における飽和蒸気圧より低い。したがって、状態B3では、反応ガス流路内の水が蒸発する(つまり、反応ガス流路内が乾燥する)こととなる。
【0130】
なお、反応ガス流路内の温度を上げる場合、ECU60は、冷媒流路13を循環する冷媒の温度を上げるために、冷媒ポンプ41の出力を上げて冷媒を圧縮する制御を行う。
ちなみに、前記の2つの制御(圧力制御及び温度制御)を組み合わせることによって、図8(b)に示す状態A2から状態B4に変化させ、反応ガス流路内を乾燥させることとしてもよい。
【0131】
また、前記ではECU60が、図8(a)に示す状態A1(スラグ流又はプラグ流)から状態B1(単相流)に変化させることとしたが、状態A1から状態C1(環状流)に変化させる制御を行ってもよい。
この場合、ECU60は、反応ガス流路内を通流する反応ガスの単位時間当たりの流量を増加させる制御を行う。
【0132】
アノード流路11を通流するガス流量を増加させる場合、例えばECU60は、パージ弁26(図1参照)を開状態とする頻度を上げる、及び/又は、1回当たりのパージ時間を長くする制御を行う。パージ弁26を開いた場合、ECU60は、所定のガス圧力を維持するために圧力調整弁22の開度を大きくする制御を行うため、アノード流路11に流入する反応ガスの流量が増加することとなる。
【0133】
ちなみに、流動様式が環状流となった場合、反応ガス流路内における水蒸気の分圧は、飽和蒸気圧に達している。
【0134】
(2.単相流と環状流との切り替え制御)
図9(a)は、流動様式が単相流である状態から環状流に変化させた場合のガス流速と、水の増加率との関係を示す説明図である。
【0135】
例えば、反応ガス流路内の流動様式が単相流である状態B1であった場合を考える。図7に示した処理では、燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1以下である場合にECU60は、カソード流路12内及び/又はアノード流路11内を湿潤させる制御を行うこととした(図7のS307,S308参照)。
【0136】
これは、反応ガス流路内における水の増加率(図9(a)の縦軸参照)を大きくすることによって、状態B1(単相流)から状態C1(環状流)に変化させることに相当する。
【0137】
図9(b)は、図9(a)の説明図に対応した燃料電池内の温度と水蒸気圧との関係を示す説明図である。図9(b)に示す状態B2は図9(a)に示す状態B1に対応し、図9(b)に示す状態C2〜C4は、図9(a)に示す状態C1に対応している。
ちなみに、状態B2(単相流)においては、反応ガス流路内の水蒸気圧P1が、その温度における飽和蒸気圧より低くなっている。
【0138】
例えば、反応ガス流路内が単相流であり、燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1以下であった場合に、ECU60が、反応ガス流路内のガス圧力を上げる制御を行うと、図9(b)に示す状態B2は状態C2に変化する。ここで、状態C2での水蒸気圧P2は、温度T2における飽和蒸気圧に達している。したがって、状態C2では、反応ガス流路内において水蒸気の一部が凝縮して水になる。
【0139】
また、ECU60が、燃料電池10内の温度を下げる制御を行うと、図9(b)に示す状態B2は状態C3に変化する。ここで、状態C3での水蒸気圧P1は、温度T3における飽和蒸気圧に達している。したがって、状態C3では、反応ガス流路内において水蒸気の一部が凝縮して水になる。
【0140】
ちなみに、前記の2つの制御(圧力制御及び温度制御)を組み合わせることによって、図9(b)に示す状態B2から状態C4に変化させ、反応ガス流路内を湿潤させることとしてもよい。
【0141】
≪効果≫
本実施形態に係る燃料電池システム1によれば、燃料電池10に流入する反応ガスの各状態値(温度、露点、圧力、流量)と、燃料電池10から流出するオフガスの各状態値(温度、露点、流量)をそれぞれ検出するセンサからの入力値に基づいて、ECU60が燃料電池10の反応ガス流路内の流動様式を適切に判定するこことができる。
【0142】
そして、前記流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合に、ECU60が反応ガス流路内を通流する反応ガスの圧力、温度、流量を制御することによって、その流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させる(つまり、単相流又は環状流に変化させる)ことができる。
【0143】
仮に、反応ガス流路における流動様式がスラグ流又はプラグ流となった場合には、反応ガス流路内において断続的に水が滞留することになり、燃料電池10の出力が不安定となる。このような状態が継続すると、燃料電池10の触媒及び電解質膜の劣化、構造部材の腐食が進行し、燃料電池10の耐久性が低下する。
【0144】
これに対して、本実施形態に係る燃料電池システム1によれば、前記したような制御を行うことによって、反応ガス流路内の流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させ、必要な量の反応ガスを安定的に燃料電池10に供給することができる。また、前記したような反応ガス流路内で水が滞留する事態を回避できるため、燃料電池10の耐久性を向上させることができる。
【0145】
また、アノード流路11内の流動様式と、カソード流路12内の流動様式と、をそれぞれ単相流又は環状流とする制御を行った後、ECU60は、その組み合わせや消費電力、出力電圧などの条件に応じて、流動様式を変化させるように制御する。
例えば、ECU60は、カソード流路12内が環状流であり、消費電力Wが所定電力W1以上である場合には、コンプレッサ31の出力を下げるように制御する。したがって、コンプレッサ31で過度に電力が消費されることを防止することができ、燃料電池システム1内において電力を有効に利用することができる。
【0146】
また、アノード流路11内及びカソード流路12内の流動様式が単相流であり、燃料電池10の出力電圧Vが所定電圧V1以下である場合、ECU10は、アノード流路11内及び/又はカソード流路12内を湿潤させるよう制御する。これによって、燃料電池10の電解質膜を適度な湿潤状態に保つことができるため、発電要求量に対応した電極反応を起こし、良好な発電性能を維持することができる。
【0147】
また、流動様式を単層流に移行させる場合には、反応ガスの単位時間当たりの流量を増加させる必要がないため、燃料電池システム1全体における消費電力を抑えることができ、燃費効率を向上させることができる。
【0148】
また、燃料電池システム1は、反応ガス供給流路及びオフガス排出流路に各種検出器を設けた簡単な構成であり(図1参照)、各検出器から入力される検出値に応じて流動様式を変化させる。したがって、製造コストを抑えることができるとともに、燃料電池10における発電に適した環境を整えることが可能となる。
【0149】
≪変形例≫
以上、本発明に係る燃料電池システム1について、前記実施形態により説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更などを行うことができる。
【0150】
例えば、図1においてカソード系の流量センサ32qは、加湿器32の上流位置にあってもよい。また、配管31bと配管32aとに両端が接続され、加湿器32をバイパスする加湿器バイパス管を設置する構成としてもよい。さらに、アノード系のエゼクタ23に接続される配管24bに、水素循環用のポンプを別途追加してもよい。
【0151】
前記実施形態では、アノード流路11及びカソード流路12の流動様式を判定し、その判定結果に基づいた制御を行うこととしたが、これに限らない。すなわち、アノード流路11とカソード流路12のいずれか一方のみの流動様式を判定し、その判定結果に基づいた制御を行うこととしてもよい。
【0152】
例えば、カソード流路12の流動様式のみについて判定・制御を行う場合、ECU60は、図5に示す処理を行った後、図5に示す「B」から図7に示す「D」に移って、ステップS301〜S305の処理を行えばよい。
また、アノード流路11の流動様式のみについて判定・制御を行う場合、ECU60は、図6に示す処理を行った後、図7に示すステップS306〜S311の処理を行えばよい。
【0153】
また、前記実施形態では、反応ガス流路を乾燥させる制御を行う場合に、反応ガス圧力を低下させる、及び/又は、反応ガス温度を上昇させる制御を行うこととした(図8(b)参照)が、これに限らない。
例えば、前記制御に併せて、反応ガス流量を増加させる制御を行ってもよい。
【0154】
また、前記実施形態では、反応ガス流路を湿潤させる制御を行う場合に、反応ガス圧力を上昇させる、及び/又は、反応ガス温度を低下させる制御を行うこととした(図9(b)参照)が、これに限らない。
例えば、前記制御に併せて、反応ガス流量を減少させる制御を行ってもよい。
【0155】
また、前記実施形態では、反応ガス流路内の流動様式がスラグ流又はプラグ流である状態から、環状流に変化させる制御を行う際に、反応ガス流路内のガス流量を増加させる制御を行うこととしたが、これに限らない。
例えば、前記制御に併せて、反応ガス流路を乾燥させる制御を行ってもよい。
【0156】
また、燃料電池システム1が搭載される移動体は、燃料電池四輪車に限定されるものではなく、例えば、二輪車、鉄道車両、船舶などでもよい。また、燃料電池システム1が搭載される対象は、前記に示した移動体に限定されるものではない。すなわち、燃料電池システム1は、工場や家庭などにおいて発電の際に利用される定置式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
11 アノード流路(反応ガス流路)
12 カソード流路(反応ガス流路)
13 冷媒流路
23q,32q 流量センサ(第1状態値検出手段)
23d,32d 露点センサ(第1状態値検出手段)
23t,32t 温度センサ(第1状態値検出手段)
23p,32p 圧力センサ(第1状態値検出手段)
24q,33q 流量センサ(第2状態値検出手段)
24d,33d 露点センサ(第2状態値検出手段)
24t,33t 温度センサ(第2状態値検出手段)
51 出力検出器(電流検出手段、電圧検出手段)
60 ECU(記憶手段、制御手段)
21a,22a,23a,24a,24b,31a,31b,32a 配管(反応ガス供給流路)
24a,24b,26a,26b,33b,34a,35a,36a 配管(オフガス排出流路)
22 圧力調整弁(調整手段)
26 パージ弁(調整手段)
31 コンプレッサ(調整手段)
34 背圧弁(調整手段)
41 冷媒ポンプ(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガス流路及び冷媒流路を有し、前記反応ガス流路に反応ガスが供給されることで発電する燃料電池と、
前記反応ガス流路に向かう反応ガスが通流する反応ガス供給流路と、
前記反応ガス流路から排出されるオフガスが通流するオフガス排出流路と、
前記反応ガス供給流路に設置され、前記反応ガス流路に流入する反応ガスを含む気体の単位時間当たりの流量と、前記気体の圧力と、前記気体の温度と、前記気体の露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する第1状態値検出手段と、
前記燃料電池からの電流を検出する電流検出手段と、
前記オフガス排出流路に設置され、前記反応ガス流路から排出されるオフガスの単位時間当たりの流量と、前記オフガスの温度と、前記オフガスの露点と、を含む状態値をそれぞれ検出する第2状態値検出手段と、
前記反応ガス流路内における流動様式と、前記反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速と、の対応関係を示すマップが記憶されている記憶手段と、
制御手段と、
前記制御手段による制御に従って動作することにより、前記反応ガス流路に流入する前記気体の単位時間当たりの流量、前記反応ガス流路内の圧力、前記冷媒流路を通流する冷媒の温度、からなる群から選択されるいずれか一つを調整する調整手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1状態検出手段によって検出される前記気体の各状態値と、前記電流検出手段によって検出される電流値と、前記第2状態検出手段によって検出されるオフガスの各状態値と、から前記反応ガス流路内での水の増加率及びガス流速を求め、前記記憶手段の前記マップを参照して前記流動様式を判定し、
前記流動様式の判定結果がスラグ流又はプラグ流であった場合に、前記調整手段を制御することによって、前記流動様式をプラグ流又はスラグ流から離脱させること
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、前記流動様式を単相流とするように制御すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式がスラグ流又はプラグ流であると判定した場合、前記流動様式を環状流とするように制御すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記制御手段は、前記反応ガス流路内における流動様式を単相流とした後に、前記電圧検出手段によって検出された前記燃料電池の出力電圧が所定値以下である場合には、
前記流動様式を環状流とするように制御すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89335(P2013−89335A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226418(P2011−226418)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】