説明

燃料電池システム

【課題】脱硫器の交換の判定処理における判定エラーによる脱硫器の過誤交換を回避させるのに貢献できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池1と、改質器2Aと、原料ガス通路6と、ガス搬送源60と、原料ガスを脱硫させる脱硫器100とを有する。制御部100Xは、脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理を実行する。しかし制御部100Xは、脱硫器100の温度が第1規定温度よりも低いとき、判定処理を実行しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱硫器を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、原料ガスを改質させて前記アノードガスを生成させる改質器と、原料ガスを改質器に供給させる原料ガス通路と、原料ガス通路に設けられ原料ガスを原料ガスを介して改質器に供給させるガス搬送源と、原料ガス通路に設けられ原料ガスを脱硫させる脱硫器とを有する。
【0003】
特許文献1は、脱硫器1(常温 吸着脱硫剤充填)と脱硫器2(水添脱硫器)を直列に並設させた燃料電池システムを開示する。改質器のシフト部の後で分岐された配管が脱硫器1,2間に接続され、原料ガスと水素とを混合した混合ガスが脱硫器2に供給される。この場合、原料ガス累積通過流量に基づいて脱硫器の交換時期を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-008459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原料ガスに含まれる水蒸気量に関する代表的な物理量である露点は、脱硫器の脱硫剤の性能に大きく影響を与える。原料ガスの露点が高いほど、原料ガスの湿度および水蒸気量が高いため、脱硫剤の性能を低下させる。ここで、ガス配管の老朽化、工事に起因してガス配管へ浸水するおそれがある。更に雪溶け時期や雨期等においてガス配管へ一時的に浸水するおそれがある。雪溶け時期や雨期が終了すれば、一般的には、原料ガスは元の低露点に戻る。このようにガス配管および原料ガス通路を介して脱硫器に流れる原料ガスの露点が一時的に上昇する可能性がある。この場合、脱硫器はこれの本来の残寿命に達する前に破過してしまうおそれがある。この場合、原料ガスに付臭剤として含まれる硫黄成分が改質部やスタックに流入し、改質器やスタックを変質させる可能性がある。
【0006】
このため燃料電池システムでは、原料ガスの露点、基準時刻からの累積運転時間、基準時刻からの原料ガスの累積流量等に基づいて、脱硫器を交換させるか否かの判定処理を実行する。しかしながら、ガス工事等に起因して実際の原料ガスでは一時的で且つ急激な露点上昇等があり、更に、水蒸気改質する改質器等からの一時的な逆流等の影響がある。従ってシステムの実際の運転では、脱硫器の交換の判定処理において判定エラーが発生するおそれがある。更に、判定エラーに起因する脱硫器の過誤交換されることが間々ある。この場合、脱硫器はまだ寿命が充分にありながらも、交換されることになり、メンテナンスコストを必要以上に高騰させる要因となる。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、脱硫器の寿命および脱硫能が充分に存在するにも拘わらず、判定エラーに起因して脱硫器の過誤交換してしまう不具合を回避させ、メンテナンスコストの無用な高騰を抑制させるのに貢献できる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池システムは、アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、原料ガスを改質器に供給させる原料ガス通路と、原料ガス通路に設けられ原料ガスを原料ガス通路を介して改質器に供給させるガス搬送源と、原料ガス通路に設けられ原料ガスを脱硫させる脱硫器と、原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量を直接的にまたは間接的に検知する水蒸気センサと、燃料電池システムの発電運転中において少なくとも原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量に基づいて脱硫器の交換の有無を判定する判定処理を実行する制御部とを具備する燃料電池システムにおいて、制御部は、脱硫器の温度が第1規定温度よりも低いとき、判定処理を実行しないことを特徴とする。
【0009】
本様相によれば、制御部は、燃料電池システムの発電運転中において、原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量に基づいて脱硫器の交換の有無を判定する判定処理を実行する。しかしシステムの発電運転の有無に拘わらず、脱硫器の温度が第1規定温度よりも低いとき、制御部は判定処理を実行しない。この場合には、脱硫器の温度が第1規定温度よりも低いため、脱硫器の脱硫剤は、硫黄分およびHO分を吸着させる高い能力をもち、脱硫剤の能力を増大させている。従って、脱硫剤における能力増大分がHO吸着で飽和されるまでの間には、万一、高露点の原料ガスが脱硫器に供給されたとしても、硫黄分およびHO分が脱硫器の脱硫剤に良好に吸着できる。よって脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられる。このため、判定処理において判定エラーによる脱硫器の過誤交換をできるだけ回避するため、制御部は判定処理を実行しない。これにより過誤交換に起因するメンテナンスコストの無用な高騰が抑制される。第1規定温度はシステムの種類、脱硫剤の材質または量、原料ガスの組成等に応じて適宜設定され、例えば50℃以下の任意の温度にできる。制御部は、脱硫器の温度が第1規定温度以上のとき、判定処理の実行を許容できる。
【0010】
なお、低温状態の脱硫器においても、脱硫器に供給される原料ガスの露点が継続的に高露点であるときには、原料ガスの露点が低露点の場合よりも、脱硫器が早期に破過する。但し、脱硫器が高温で使用されていた状態から低温になったときには、高温から低温への移行に基づく吸着量の増大分(図4参照)が期待され、脱硫能力は向上する。
【0011】
水蒸気検知要素である水蒸気センサは、原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量を直接的にまたは間接的に検知する。間接的に検知とは、他のパラメータを介して水蒸気に関する物理量を検知するという意味である。水蒸気に関する物理量としては、原料ガスに含まれる水蒸気量、原料ガスの湿度、原料ガスの露点を例示できる。脱硫器の温度が第1規定温度よりも低いときか否かについては、温度センサ等の温度検知要素で検知志手も良いし、他の手段で検知しても良い。
【0012】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、更に、下記の(i)および(ii)のうちの少なくとも一つに該当するとき、制御部は判定処理を実行しないことを特徴とする。
(i)燃料電池システムが発電運転しないものの、発電運転前に改質器および/または燃料電池を昇温させる暖機モードのとき
(ii)原料ガスが原料ガス通路に流れていないとき
【0013】
(i)燃料電池システムが発電運転しないものの、発電運転前に改質器および/または燃料電池を昇温させる暖機モードのとき。この場合、システムは発電運転しておらず、脱硫器の温度が低いため、脱硫器の脱硫剤に硫黄分およびHO分を吸着させる能力が大きい。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫器に供給されたとしても、脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられる。この場合、脱硫器よりも下流に位置する改質器および燃料電池に影響を与えることが抑制される。
【0014】
(ii)原料ガスが原料ガス通路に流れていないとき。露点の高低に拘わらず、原料ガスが流れていないため、脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられる。原料ガスが原料ガス通路に流れていないときには、システムは発電運転されておらず、脱硫器の温度は低い。このため、万一、改質器の水蒸気が脱硫器側に一時的に逆流するときであっても、その水蒸気を脱硫器に吸着できる。このため脱硫器に吸着している硫黄分の脱離が抑えられる。この場合、脱硫器よりも下流に位置する改質器および燃料電池に影響を与えることが抑制される。
【0015】
(3)本発明の様相3に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、制御部は、燃料電池システムを一旦停止させ、停止処理後に再起動をさせ、判定処理を再実行し、再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする。
【0016】
本様相によれば、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合でも、脱硫器を交換させる警報はユーザ等に直ちに出力されない。ガス工事等による原料ガスの高露点化、改質器からの脱硫器側への蒸気戻りは一時的なものである可能性があり、判定エラーが発生する可能性がある。判定エラーを抑え、判定エラーに起因する脱硫器の過誤交換を抑えるためである。システムが停止された後に再起動されれば、原料ガスに含まれる水蒸気量が低めに戻っている可能性が高く、更に、改質器からの蒸気戻りが終了している可能性がある。
【0017】
そこで本様相によれば、制御部は判定処理を再実行する。再実行された判定処理において、脱硫器を交換させる条件が満たされないと判定されるときには、制御部は脱硫器を交換させず、システムの運転を継続させることができる。これに対して、再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされたときには、制御部は、脱硫器を交換させる警報をユーザ等に出力させる。警報は、単なる警報の他に、システムの再起動禁止を含むことができる。脱硫器を交換させる条件としては、基準時期からの運転累積時間、基準時期からシステムに供給された原料ガスの累積流量、所定の露点以上の原料ガスが基準時期からシステムに供給された累積流量等を例示できる。基準時期は、システムの設置時期、脱硫器を交換させた時期、脱硫器を再生させた時期を例示できる。
【0018】
(4)本発明の様相4に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、制御部は、燃料電池システムを一旦停止させ、停止させた停止時刻から既定時間M経過した後に再起動をさせるともに、判定処理を再実行し、再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする。
【0019】
本様相によれば、脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合でも、脱硫器を交換させる警報は、ユーザ等に直ちに出力されない。ガス工事等による原料ガスの高露点化、改質器からの蒸気戻りは一時的なものであり、判定エラーが発生する可能性がある。この場合、判定エラーに起因する脱硫器の過誤交換の可能性があるためである。そこで停止させた後に規定時間M経過すれば、ガス配管工事等が終了し、原料ガスの露点が低露点に戻っている可能性がある。更に、改質器からの蒸気戻りが終了している可能性がある。
【0020】
そこで本様相によれば、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされているときであっても、燃料電池システムの発電運転が一旦停止され、停止された後に規定時間M経過した後に燃料電池システムが再起動されるとき、制御部は、判定処理を再実行する。再実行された判定処理において脱硫器を交換させる判定が出力されないときには、制御部は脱硫器を交換させず、システムの運転を継続させることができる。しかし、再実行の判定処理において脱硫器を交換させる判定が出力されたときには、制御部は、脱硫器を交換させる警報をユーザやメンテナンス者等に出力させることが好ましい。警報は、単なる警報の他に、システムの再起動禁止を含むことができる。既定時間Mは、原料ガスの組成、システムの種類、脱硫剤の材質および量等に応じて適宜設定できる。
【0021】
(5)本発明の様相5に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、制御部は、燃料電池システムを一旦停止させ、停止させた後に再起動をさせるとともに、燃料電池システムが暖機モードのとき判定処理を実行せず、暖機モードから発電モードに移行した状態において判定処理を再実行し、再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする。
【0022】
判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合でも、脱硫器を交換させる警報は、ユーザ側に直ちに出力されない。ガス工事等による原料ガスの高露点化、改質器からの蒸気戻りは一時的なものであり、判定エラーが発生する可能性がある。そこで、制御部は、燃料電池システムを一旦停止させ、停止させた後に燃料電池システムを再起動させる。燃料電池システムが暖機モードのときには、脱硫器の温度は規定温度未満であり低いため、脱硫器における水蒸気吸着能および硫黄吸着能は有る。この場合、脱硫器の下流側への硫黄分の流出は抑えられる。このため燃料電池システムが再起動されたときでも、脱硫器の温度が低い暖機モードのときには、仮に高露点の原料ガスが脱硫器に供給されても、脱硫器は良好に脱硫できるため、制御部は判定処理を実行しない。
【0023】
しかし暖機モードから発電モードに移行した状態において、制御部は判定処理を再実行する。再実行された判定処理において、脱硫器を交換させる条件が満たされないと判定されるときには、制御部は脱硫器を交換させず、システムの運転を継続させる。これに対して、再実行した判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされたときには、制御部は、脱硫器を交換させる警報をユーザやメンテナンス者等に出力させる。警報は、単なる警報の他に、システムの再起動禁止を含むことができる。
【0024】
(6)本発明の様相6に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、制御部は、燃料電池システムを一旦停止させ、停止させた後に再起動をさせるとともに、脱硫器の温度が第1規定温度未満のとき判定処理を実行せず、脱硫器の温度が第1規定温度以上のとき判定処理を再実行し、再実行された判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする。
【0025】
判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合には、制御部は、燃料電池システムの発電運転を一旦停止させる。停止された後に、制御部は、燃料電池システムを再起動させる。このとき、脱硫器の温度が第1規定温度未満のとき、制御部は判定処理を実行しない。脱硫器の温度が第1規定温度以上のとき、制御部は判定処理を再実行する。再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合には、制御部は脱硫器の交換を促す警報を出力する。
【0026】
判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合でも、脱硫器を交換させる警報は、ユーザ等に直ちに出力されない。ガス工事等による原料ガスの高露点化、改質器からの蒸気戻りは一時的なものであり、判定エラーが発生する可能性があるためである。そこで、制御部は、燃料電池システムの発電運転を一旦停止させ、停止された後に、燃料電池システムを再起動させる。燃料電池システムの停止後の再起動直後においては、脱硫器の温度は低く、脱硫器における水蒸気吸着能および硫黄吸着能は有るため、仮に高露点の原料ガスが脱硫器に供給されても脱硫器は良好に脱硫でき、脱硫器の下流側への硫黄分の流出は抑えられる。このため脱硫器の温度が第1規定温度未満のとき、制御部は判定処理を実行しない。
【0027】
しかし脱硫器の温度が昇温されて第1規定温度以上のときには、制御部は判定処理を再実行する。再実行された判定処理において、脱硫器を交換させる条件が満たされないと判定される場合には、制御部は脱硫器を交換させず、システムの運転を継続させることができる。再実行された判定処理において脱硫器を交換させる条件が満たされると判定されるときには、制御部は、脱硫器を交換させる警報をユーザやメンテナンス者に出力させる。警報は、単なる警報の他にシステムの再起動禁止を含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、脱硫器が第1規定温度よりも低いときには、脱硫器においては、脱硫器の脱硫剤に硫黄分およびHO分を吸着させる能力が大きい。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫器に供給されたとしても、原料ガスに含まれる硫黄分およびHO分を脱硫器の脱硫剤に吸着でき、脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられる。このため、判定処理において判定エラーによる脱硫器の過誤交換をできるだけ回避するため、制御部は判定処理を実行しない。
【0029】
従って、脱硫器の交換の判定処理における判定エラーによる脱硫器の過誤交換を回避させるのに貢献できる。このため脱硫器の寿命および脱硫能が充分に存在するにも拘わらず、判定エラーに起因して脱硫器の過誤交換してしまう不具合が抑えられる。従って、メンテナンスコストの無用な高騰を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係り、システムの概要図である。
【図2】脱硫器の交換の考え方を示すグラフである。
【図3】脱硫器の温度と脱硫器の水蒸気吸着能力との関係を概念的に示すグラフである。
【図4】脱硫器の温度と脱硫器の吸着能力との関係を概念的に示すグラフである。
【図5】脱硫器の破過によりシステムを停止させて脱硫器の温度を低下させたとき、脱硫器の吸着能力の変化を概念的に示すグラフである。
【図6】脱硫器の破過によりシステムを停止させた後に再起動(リトライ)させたとき、脱硫器の吸着能力の変化を概念的に示すグラフである。
【図7】実施形態3に係り、システムの概要図である。
【図8】制御部が実行する制御則のフローチャートである。
【図9】制御部が実行する制御則のフローチャートである。
【図10】制御部が実行する制御則のフローチャートである。
【図11】適用形態に係るシステムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
燃料電池は、アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する。改質器は、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる。原料ガス通路は、原料ガスを改質器に供給させる。ガス搬送源は、原料ガス通路に設けられており、原料ガスを原料ガス通路を介して改質器に供給させるものであり、ポンプ、コンプレッサ、ファン等を例示できる。ポンプは回転式、往復式、ダイヤフラム式でも良い。脱硫器は原料ガス通路に設けられており、原料ガスを脱硫させる。原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量を検知する水蒸気センサとしては、脱硫器に供給される原料ガスの露点を検知する露点計、湿度センサが例示される。
【0032】
脱硫器に収容される脱硫剤の基材として、ゼオライト、遷移金属等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔性物質が挙げられる。脱硫剤は、遷移金属等の金属を含むことが多い。この場合、物理的吸着の他に化学的吸着も併有する形態でも良い。上記した金属としては、銀、銅、金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、鉄、クロム、モリブデンのうちの少なくとも1種が例示され、更に、これらを2種以上含む合金が例示される。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に空隙を持つものの総称であり、天然ゼオライトでも人工ゼオライトでも良い。脱硫剤は、原料ガスに含まれる硫黄化合物(例えばメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルフィド)を除去させる。
【0033】
制御部は、燃料電池システムの発電運転中において、原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量に基づいて脱硫器の交換の有無を判定する判定処理を実行する。この場合、露点が高い原料ガスが基準時期から流れた累積時間、露点が高い原料ガスが基準時期から流れた累積流量(体積流量または質量流量)を考慮することが好ましい。上記した基準時期とは、一般的には、燃料電池システムを設置した時期、または、原料ガス通路を流れる原料ガスの累積流量の起算開始時期、または、起算開始時期と実質的に推定できる時期をいう。この場合、新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器を搭載する燃料電池システムを新しく設置した時期、あるいは、原料ガスを新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器に流通させた開始時期、あるいは、脱硫器が交換(再生を含む)された場合には交換時期(再生時期)が例示される。
【0034】
更に説明を加える。上記したようにガス配管の老朽化、工事に起因するガス配管への浸水の影響がある。春期における雪溶け水、梅雨時の雨期における雨水の地面ひいてはガス配管等への浸水の影響がある。これらの影響を受けて、原料ガスに含まれる露点および水蒸気量は変化する。しかし上記したガス配管工事、季節的な浸水による原料ガスの水蒸気量増加は永久的に継続されるものではなく、一時的なものが多く、従って原料ガスに含まれる水蒸気量は元に戻り、低くなることが多い。脱硫器の脱硫能力が充分にありながらも、一時的な浸水等に起因する判定エラーに基づいて、脱硫器を交換させてしまう過誤判定を抑制させることが好ましい。
【0035】
(実施形態1)
図1〜図4は実施形態1を示す。図1に示すように、燃料電池システムは、アノード10およびカソード11を有する燃料電池1と、燃料電池1のカソード11にカソードガス(空気等の酸素含有ガス)を供給するカソードガス通路70と、原料ガスを改質させてアノードガス(水素含有ガスまたは水素ガス)を生成させる改質器2Aと、原料ガスを脱硫させた状態で改質器2Aに供給させるガス搬送源として機能するポンプ60を有する原料ガス通路6と、改質器2Aで生成されたアノードガスを燃料電池1のアノード10に供給させるアノードガス通路73と、アノードガス通路73、改質器2Aおよび燃料電池1を収容する断熱壁19とを有する。発電モジュール18は、改質器2A、燃料電池1、断熱壁19で形成されている。改質用の水または水蒸気が供給させる給水通路8が改質器2Aに接続されている。改質器2Aは、水蒸気を生成させる蒸発部と、水蒸気を用いて燃料を改質させる改質部とを含む。
【0036】
図1に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、脱硫剤を収容する脱硫器100と、脱硫器100を経た原料ガスの流量を計測する流量計300とをこの順に直列に有する。脱硫器100は、相対的に高温の環境(例えば50℃以上、220℃以下の温度環境)に設置されており、具体的には、発電モジュール18の断熱壁19から受熱(熱伝導、輻射熱の受熱)できるように、断熱壁19の外壁面に接触または接近状態で隣設されて配置されている。なお、脱硫器100の加熱させる形態としては、発電モジュール18からの受熱によるものでなくともよく、例えば、改質器2Aや燃料電池1から排出された高温の排ガスによって脱硫器100を加熱させたり、貯湯槽の湯やヒーターやシステム内発熱部品(パワコン等)により脱硫器100の温度を保つようにしても良い。脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ脱硫剤を収容する。脱硫剤としては、ゼオライトが挙げられるが、銀や銅等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔質材料でも良い。脱硫器100には、脱硫剤の温度を検知する温度センサ150が設けられている。
【0037】
一般的には、原料ガス(例えば都市ガス(13A))は低露点(例えば0℃以下、−10℃以下、−20℃以下)であり、原料ガスに含有されている水蒸気は微小量である。しかしガス配管の老朽化、工事、配管等の事情により、原料ガスに含まれる水蒸気量が増加し、高露点(例えば+20℃露点以上)の原料ガスが一時的に供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤の劣化が促進され、原料ガスに付臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器2A等に流入し、改質器2A等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても劣化率が低く良好な脱硫性能をもつものである。このため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。
【0038】
図1に示すように、原料ガス通路6には、バッファ室をもつバッファ400が設けられている。従って、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、露点計510(水蒸気センサ)、脱硫器100、流量計300、バッファ400と、ガス搬送源として機能するポンプ60とをこの順に直列に配置している。バッファ400は中空室であるバッファ室を有する。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを発電モジュール18の改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図1に示すように、原料ガス通路6において、脱硫器100、流量計300、バッファ400、ポンプ60をこの順に直列に配置している。この場合、図1に示すように、バッファ400は、流量計300の下流、且つ、ポンプ60の上流に配置されている。すなわち、脈動原因となるポンプ60と、脈動を受けたくない流量計300との間には、バッファ400が介在する。このため流量計300はポンプ60の脈動の影響を受けにくくなる。この場合、システムの安定運転に有利である。このため流量計300の流量脈動を抑止することができる。これにより流量計300の出力値が安定し、制御上の安定性が確保されるとともに、脈動による流量計300の出力値が真値から外れる挙動も抑えることが可能となる。なお、チャッキ弁500は作動により原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図1に示すように、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にバッファ400が介在するため、流量計300は、ポンプ60およびチャッキ弁500に起因する脈動の影響を受けにくくなる。この場合、流量計300が原料ガスの流量を計測させる精度が確保され、システムの安定運転に有利である。但し配置順はこれに限定されない。
【0039】
脱硫器100は発電モジュール18の断熱壁19から受熱できるように、断面壁19の外壁面側に接触または近接するように設置されており、規定温度範囲(例えば、40〜220℃、または、40〜150℃)に維持される。システムの発電運転の累積運転時間が長くなると、あるいは、原料ガス通路6を流れる原料ガスの累積流量が増加すると、脱硫器100の劣化が次第に進行する。更に、原料ガスの露点が高いと、原料ガスに含まれる水蒸気量や水分が多いため、脱硫器100の残寿命が短い。脱硫器100が交換されると、リセットスイッチ106がオンされ、その信号が制御部100Xに入力され、メモリ100mに格納される。
【0040】
ここで、図2を用いて脱硫剤の交換の考え方を説明する。図2は、原料ガスの露点に対する残寿命特性を示す。図2の横軸は脱硫剤に流れる原料ガスの露点(湿度に関する情報値)を示す。縦軸は脱硫剤の残寿命を示す。図2の特性線Mに示すように、脱硫剤は、露点が高いほど残寿命を低下させる。これは、脱硫剤の付臭剤の吸着(除去)サイトにHO(水蒸気)が吸着することで付臭剤の吸着サイトが減少することによると考えられる。水蒸気の吸着は吸着平衡で決定すると考えられ、原料ガスの露点が低化すると、脱硫剤の残寿命はほぼ元に戻ることが分かっている。一例でいうと、特性線Mとして示すように、常時20℃の露点の原料ガスが流入すると、脱硫剤はT0年分の残寿命しかないが、システムの使用初期に20℃の露点の原料ガスが流入したとしても、その後、露点が−20℃に戻るとT3年分の残寿命を有する。T0年、T1年、T2年、T3年は時間の相対値を示し、制御部100Xのメモリ100mのエリアに格納されている。
【0041】
図2において、累積運転時間が図2のマップを上回る場合には、硫黄が脱硫器よりも下流に流出する可能性があると制御部は判断し、システムを停止させる。例えば、累積運転時間がT0以上で露点20℃以上が検知された場合には、制御部は脱硫器寿命を超えると判断し、システムを停止させる。
【0042】
本実施形態によれば、制御部100Xは、燃料電池システムの発電運転中において判定処理を実行し、脱硫器100の交換の有無を判定する。しかしながら制御部100Xは、脱硫器100の温度が第1規定温度Txよりも低いとき、判定処理において判定エラーによる脱硫器の過誤交換をできるだけ回避するため、判定処理を実行しない。従って、メンテナンスコストの無用な高騰を抑制できる。
【0043】
上記したように脱硫器100の温度が第1規定温度よりも低いとき。この場合、脱硫器100の脱硫能が充分に得られると考えられる。第1規定温度Txは、例えば50℃以下(例えば室温)の範囲内、殊に40℃以下の範囲内の任意値である。この場合、原料ガスが原料ガス通路に流れているか否かに拘わらず、システムの運転の如何に拘わらず、脱硫器100の温度が第1規定温度Tx未満と低温であるため、脱硫器100の脱硫剤は硫黄分およびHO分を吸着させる高い能力をもつ。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫器100に供給されたとしても、脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられ、改質器2Aおよび燃料電池1に影響を与えない。このため判定処理における判定エラーによる脱硫器の過誤交換をできるだけ回避するため、脱硫器100の温度が第1規定温度Tx未満と低温であるときには制御部100Xは判定処理を実行しない。
【0044】
ところで、図3の特性線K1は、脱硫器100の温度と脱硫器100の水蒸気吸着能力との関係を概念的に示す。ひいては、図3の特性線K1は、水蒸気がない状態において、脱硫器100の温度と硫黄吸着能力との関係を概念的に示す。図3によれば、脱硫器100の温度が低くなると、脱硫器100における水蒸気の吸着能力は増加する。硫黄についても、水蒸気がない状態では、脱硫器100の温度が低くなると、脱硫器100における硫黄吸着能力が増加する。
【0045】
図4は、図3の特性から図2の相関に関して、高露点(例えば20℃露点)の場合において、脱硫器100の温度と脱硫器100の吸着能力との関係を概念的に示す。DHは水蒸気吸着能力を示す。DSは硫黄吸着能力を示す。図4において(DH+DS)は、水蒸気がない状態において、硫黄を吸着できる能力を示す。図3の結果と同様に脱硫器温度100が低いほど、図4に示すように、(DH+DS)は増大する。しかし、硫黄分よりも水蒸気が優先的に吸着される。そのため、水蒸気吸着能力DHは、図3の特性に基づき、脱硫器温度100が低いほど増大する。結果として、脱硫器温度が低温ほど、(DH+DS)は増大するものの、硫黄吸着能力DSそれ自体は減少する。つまり、原料ガスの露点が高露点ときにおいては、脱硫器温度が高温ほど、脱硫器の脱硫能力が高いことを示し、脱硫器温度が低温ほど、脱硫器の脱硫能力が低いことを示している。
【0046】
また図5は燃料電池システムの発電運転時において脱硫器100が破過した後、燃料電池システムを停止させて脱硫器100の温度を低下させた場合を示す。図5の(A)は脱硫器100が破過した場合を示す。図5の(B)は、脱硫器100が破過した後、燃料電池システムを停止させて脱硫器100の温度を低下させた場合を示す、脱硫器100の破過時には、図5の(A)に示すように、水蒸気吸着KHとして、硫黄分吸着KSとして、水蒸気および硫黄分は脱硫剤にそれぞれ吸着していると仮定される。システムの停止により脱硫器100の温度は低下する。このため図5の(B)に示すように、脱硫器100の温度の低下に伴い、脱硫剤において水蒸気または硫黄分を吸着できる吸着可能領域E1が飛躍的に増加する。従って、システムの停止により脱硫器100の温度が低くなると、脱硫剤において水蒸気吸着可能量および硫黄分吸着可能量を飛躍的に増加させることができる。この場合、高露点の原料ガスが脱硫器100に供給されるときであっても、脱硫器の温度が再び上昇して図5の(B)の状態から図5の(A)の状態に至る過程において、吸着可能領域E1に水蒸気が吸着できる。よって、吸着可能領域E1が水蒸気吸着KHとなるまでは、多くの水蒸気を脱硫剤に良好に吸着できる。この場合、既に吸着されていた硫黄分が脱硫剤から脱離されることを抑制できる。
【0047】
図6は、原料ガスの高露点が継続しているため脱硫器100が破過した場合において、燃料電池システムを停止させ、その後、再起動(リトライ)させて、再び暖機モードひいては発電モードに移行させる場合を示す。図6の(A)に示すように、システム停止後に再起動(リトライ)させるときには、脱硫器100の温度は低下しているため、脱硫剤において水蒸気および硫黄分を吸着できる吸着可能領域E1を飛躍的に増加させることができる。すなわち、再起動(リトライ)時には、脱硫器100は低温であるため、脱硫剤における水蒸気吸着可能量および硫黄分吸着可能量が吸着可能領域E1として増加する。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫剤に供給されたとしても、高露点の原料ガスの水蒸気を脱硫剤において吸着でき、且つ、硫黄分も脱硫剤に吸着でき、従って、脱硫器100よりも下流への硫黄分の流出を抑制できる。但し、発電運転の時間が経過するにつれて、脱硫器100の温度は次第に高くなる、かつ高露点ガスが供給されることにより吸着平衡に向かい、水蒸気が脱硫剤に吸着するため、図6において(A)(B)(C)(D)の順に変遷し、結果として、吸着可能領域E1は次第に小さくなる。このような場合には判定処理を実行する必要がある。なお、原料ガスの露点が高露点から低露点に戻った場合には、脱硫剤における水蒸気吸着部(KH)からの水蒸気の脱離が促進されるため、脱硫剤において硫黄吸着可能な量が復帰する。
【0048】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。本実施形態によれば、制御部100Xは、燃料電池システムの発電運転中において判定処理を実行し、脱硫器100の交換の有無を判定する。しかしながら脱硫器100の温度が第1規定温度Txよりも低いとき、制御部100Xは判定処理を実行しない。脱硫剤の材質や原料ガスの組成等に応じて、第1規定温度Txは例えば50℃以下の範囲から適宜設定される。
【0049】
更に本実施形態によれば、下記の(i)および(ii)のうちの少なくとも一つにおいて、制御部100Xは判定処理を実行しない。下記の(i)および(ii)に示す場合には、脱硫器100の温度が低温(一般的には第1規定温度Tx未満)であると考えられ、図3〜図4の説明から理解できるように、脱硫器100の脱硫剤は硫黄分およびHO分を吸着させる能力が大きい。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫器100に供給されたとしても、脱硫剤から下流側への硫黄分の流出は抑えられ、脱硫器100よりも下流に位置する改質器2Aおよび燃料電池1に影響を与えない。このため判定処理における判定エラーによる脱硫器の過誤交換をできるだけ回避するため、脱硫器100の温度が第1規定温度Tx未満と低温であるときには、制御部100Xは判定処理を実行しない。
【0050】
(i)燃料電池システムが発電運転しないものの改質器2Aおよび燃料電池1を発電運転温度まで昇温させる暖機モードのとき。この場合、脱硫器100の温度が低いため、脱硫器100の脱硫能が充分に得られると考えられる。暖機モードでは、原料ガスが原料ガス通路6に流れているか否かに拘わらず、脱硫器100の温度がまだ低いため、脱硫器100の脱硫剤は硫黄分およびHO分を吸着させる能力が大きい。従って、万一、高露点の原料ガスが脱硫器100に供給されたとしても、脱硫器100から下流側への硫黄分の流出は抑えられる。
【0051】
(ii)原料ガスが原料ガス通路6に流れていないとき。この場合、原料ガスの露点の如何に拘わらず、原料ガス自体がそもそも原料ガス通路6および脱硫器100に流れていないため、原料ガスを脱硫器100で脱硫させる必要性がない。例えば、アノードガスおよびカソードガスが燃料電池に供給されていないため発電しない燃料電池システムの待機モードや暖機中においても着火にいくまで等の原料ガスを流さないモードについては、原料ガスが原料ガス通路6に流れていないため、(ii)に該当する。
【0052】
(実施形態3)
図7は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図7に示すように、第1脱硫器100は、相対的に高温の環境(例えば50℃以上、220℃以下の温度環境)に設置されており、具体的には、発電モジュール18の断熱壁19から受熱(熱伝導、輻射熱の受熱)できるように、断熱壁19の外壁面に接触または接近状態で隣設されて配置されている。第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する。第1脱硫剤としては、ゼオライトが挙げられるが、銀や銅等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔質材料でも良い。第2脱硫器200は、第1環境よりも相対的に低温(例えば0〜50℃未満)の第2環境に設置されており、高温の発電モジュール18から離間して配置されている。第2脱硫器200の第2脱硫剤は、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつ。第2脱硫器200では、相対的に高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)に対して、相対的に低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)よりも脱硫性能を低下させる。このような第2脱硫剤としてはゼオライトが挙げられる。
【0053】
本実施形態によれば、原料ガスを、高温設置型の第1脱硫器100→低温設置型の第2脱硫器200の順に流す。これにより第1脱硫器100を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器200で授受し,第2脱硫器200において放熱させることができる。このため、熱の影響を受け易い流量計300へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができる。この場合、流量計300の耐熱の問題も解消することが可能となる。このように第1脱硫器100を通過した原料ガスの保有熱量があったとしても、第2脱硫器200における放熱で充分に原料ガスは低温化される。
【0054】
(実施形態4)
図8は実施形態4を示す。本実施形態は上記実施形態1、2と基本的には同様の構成および作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。本実施形態によれば、判定処理において脱硫器100を交換させる判定が出力されたとき、制御部100Xは、判定に基づいて燃料電池システムの発電運転を停止させ、停止させた後に燃料電池システムを再起動させるとき、再起動時の暖機モードにおいて、更に、暖機モードから発電モードに移行するまでの間において、制御部100Xは判定処理を実行しない。暖機モードから発電モードに移行してから、制御部100Xは判定処理を再実行し、本判定する。
【0055】
本実施形態によれば、まず、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積運転時間、原料ガスの累積流量等の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS102)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を実行する(ステップS104)。脱硫器100の交換必要ありと判定されても、現段階では、脱硫器100を直ちに交換させるメッセージや警報は、ユーザ側に出力されない。原料ガスの一時的な高露点化、改質器2Aからの水蒸気の一時的な逆流等に起因する判定エラーの可能性があり、判定エラーによる脱硫器100の過誤交換を避けるためである。判定の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS106のNO)、システムの発電運転を継続させる指示を出力する(ステップS108)。脱硫器100の寿命であり、脱硫器100の交換の必要が有れば(ステップS106のYES)、システムは発電モードから停止モードに移行する(ステップS110)。脱硫器100の下流に存在する改質器2Aや燃料電池1の触媒の硫黄被毒を避けるためである。
【0056】
上記した停止モードでは、カソードガスである空気の改質器2Aへの供給を継続させ、発電モジュール18を冷却させると共に、原料ガスをその流量を低減させつつ改質器2Aに供給させると共に、改質用の水をその流量を低減させつつ改質器2Aに供給させる。これにより改質器2Aにおいて水蒸気を形成し、水蒸気改質により原料ガスを水素ガスとさせる。大気とは異なり、水素ガスは還元性をもつため、発電モジュール18等の配管部品の高温酸化を抑制できる。高温酸化しないように発電モジュール18の温度が低温になったら、遮断弁69を閉鎖して原料ガスの供給を停止させ、改質用の水の供給も停止させ、還元性をもつ水素ガスの生成を停止させる。但し、カソードガスである空気の改質器2Aへの供給を継続させ、発電モジュール18を更に冷却させる。このような停止モードにおいては、上記した脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理は実行されない。祖の理由としては以下のようである。即ち、脱硫器100の温度が低く、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高いため、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられためである。この場合、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できる。このように判定処理が行われないため、停止モードにおける判定過誤が抑えられる。
【0057】
発電モジュール18が第1既定温度未満(以下)になったら、停止モードが終了する。停止モードの終了か判定し、終了であれば(ステップS112のYES)、システムを再起動させるか否か判定する(ステップS114)。制御部100Xまたはユーザにより再起動指令が出力されていないときには、再起動されない。制御部100Xまたはユーザにより再起動指令が出力されていれば(ステップS114のYES)、システムは再起動される(ステップS116)。再起動されると、システムは暖機モードとなり、発電モジュール18に供給された原料ガスをカソードガス通路70からの空気により燃焼させ、発電モジュール18の改質器2Aおよび燃料電池1をこれの改質反応に適するように昇温させる。
【0058】
暖機モードにおいては、脱硫器100の温度が第1規定温度よりも低いため、上記した脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理は実行されない。暖機モードによれば、脱硫器100の温度が低いため、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高い。この場合、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられ、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できる。
【0059】
更に暖機モードから発電モードに移行したか判定する(ステップS120)。発電モードに移行すれば(ステップS120のYES)、脱硫器100が昇温されているため、判定処理を実行する必要がある。そこで、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積時間(原料ガスの累積流量)の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS122)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を実行する(ステップS124)。判定の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS126のNO)、システムの発電運転を継続させる指示を出力する(ステップS108)。脱硫器100が寿命であり、脱硫器100の交換の必要性があれば(ステップS126のYES)、交換を指示する警報を聴覚的または視覚的な警報器102に出力してユーザやメンテナンス者等に報知する(ステップS128)。更に、システムを停止させるか否かを判定し(ステップS130)、更に脱硫器100の残寿命が終期であり、システムを停止させる必要があれば(ステップS130のYES)、システムを停止モードまたは緊急停止モードにより停止させる(ステップS132)。この場合、脱硫器100を交換(再生、修理を含む)しない限り、システムの再起動を禁止させることが好ましい。ここで、停止モードでは還元性をもつ水素ガスを生成させるため、原料ガスおよび改質水の供給はしばらく継続される。緊急停止モードでは原料ガスの供給を直ちに停止させる。
【0060】
(実施形態5)
図9は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1、2と基本的には同様の構成および作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。本実施形態によれば、本実施形態によれば、判定処理において脱硫器100を交換させる必要がありと判定されたとき、判定に基づいて燃料電池システムの発電運転が停止され、停止された後に燃料電池システムが再起動される。このとき、制御部100Xは、脱硫器100の温度TH1が第1規定温度Tx未満のとき判定処理を実行せず、脱硫器100の温度TH1が第1規定温度Tx以上のとき判定処理を再実行する。
【0061】
まず、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積時間の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS102B)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を実行する(ステップS104B)。脱硫器100の交換必要ありと判定されても、現段階では、脱硫器100を直ちに交換させるメッセージや警報は、ユーザ側に出力されない。原料ガスの一時的な高露点化、改質器2Aからの水蒸気の一時的な逆流等に起因する判定エラーの可能性があり、判定エラーによる脱硫器100の過誤交換を避けるためである。判定の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS106BのNO)、システムの発電運転を継続させる指示を出力する(ステップS108B)。脱硫器100の寿命であり、脱硫器100の交換の必要が有れば(ステップS106BのYES)、システムは停止モードに移行する(ステップS110B)。
【0062】
停止モードは前述したように行われる。停止モードにおいては、脱硫器100の温度は第1規定温度よりも低いため、上記した脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理は実行されない。その理由としては、原料ガスの一時的な高露点化、改質器2Aからの水蒸気の一時的な逆流等に起因する判定エラーの可能性があり、判定エラーによる脱硫器100の過誤交換を避けるためである。更に、停止モードによれば、脱硫器100の温度が低く、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高いため、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられ、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できるためである。
【0063】
発電モジュール18が低温になったら、停止モードが終了する。停止モードの終了か判定し、終了であれば(ステップS112BのYES)、制御部100Xは、システムを再起動させるか否か判定する(ステップS114B)。制御部100Xまたはユーザにより再起動指令が出力されていれば(ステップS114BのYES)、システムが再起動される(ステップS116B)。再起動により、発電モジュール18は昇温する。このため脱硫器100も次第に昇温する。脱硫器100の温度TH1を読み込む(ステップS118B)。脱硫器100の温度TH1が第1規定温度Tx未満であれば(ステップS120BのNO)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理は実行されない。判定エラーによる脱硫器の過誤交換のおそれがあるためである。更に、脱硫器100の温度が低く、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高いため、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられ、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できるためである。このように脱硫器100の温度TH1に直接的に基づくため、判定精度を高め得る。
【0064】
更に、脱硫器100の温度TH1が第1規定温度Tx以上か否かを判定する(ステップS120B)。脱硫器100の温度TH1が第1規定温度Tx以上であれば(ステップS120BのYES)、制御部100Xは判定処理する必要がある。そこで、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積時間の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS122B)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を再実行する(ステップS124B)。このような本判定処理の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS126BのNO)、システムの発電運転を継続させる指示を出力する(ステップS108B)。脱硫器100の交換の必要性があれば(ステップS126BのYES)、交換を指示するユーザ側への警報を聴覚的または視覚的な警報器102に出力する(ステップS128B)。更にシステムを停止させるか判定し(ステップS130B)、脱硫器100の劣化が激しければ、システムを停止させる必要性がありとし(ステップS130BのYES)、システムを停止モードまたは緊急停止モードにより再停止させる(ステップS132B)。この場合、脱硫器100を交換(再生、修理を含む)しない限り、システムの再起動を禁止させることが好ましい。
【0065】
(実施形態6)
図10は実施形態6を示す。本実施形態は上記した実施形態1、2と基本的には同様の構成および作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。本実施形態によれば、判定処理において脱硫器100を交換させる判定が出力されると、燃料電池システムの発電運転が停止され、停止指令が出力された時刻から規定時間M以内であれば、ガス配管工事等に起因する原料ガスの一時的な高露点化が終了していないと予測される。この場合、ユーザから再起動指令が出力されたとしても、燃料電池システムは再起動されず、判定処理は実行されない。なお、既定時間Mを停止モードが完了するよりも長い時間に設定することで実施例4,5に比較し、一時的な高露点化に対し、より過誤交換防止が図られる。しかし停止指令が出力された時刻から規定時間M経過すれば、ユーザから再起動指令が出力されると、燃料電池システムは再起動され、判定処理が再実行される。
【0066】
まず、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積時間の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS102C)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を実行する(ステップS104C)。脱硫器100の交換必要ありと判定されても、現段階では、脱硫器100を交換させるメッセージは、ユーザには出力されない。原料ガスの露点の一時的な高露点化、または、改質器2Aからの一時的な水蒸気逆流等の影響があるため、判定エラーの可能性があり、判定エラーに起因する脱硫器の過誤交換の可能性があるためである。判定処理の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS106CのNO)、システムの発電運転を継続させる指示を出力する(ステップS108C)。脱硫器100の寿命であり、脱硫器100の交換の必要が有れば(ステップS106CのYES)、システムは停止モードに移行する(ステップS110C)。停止モードは前述したように行われる。停止モードのときには、脱硫器100の温度は低いため、上記した脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理は実行されない。判定エラーによる脱硫器の過誤交換のおそれがあるためである。更に、脱硫器100の温度が低く、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高いため、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられ、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できるためである。
【0067】
制御部100Xは、停止モードに移行した時刻から規定時間M経過したか否か判定する(ステップS112C)。停止モードに移行した時刻から規定時間M経過していなければ(ステップS112CのNO)、判定処理を実行しない。ガス配管工事等による原料ガスの高露点化はしばらく継続し、過誤判定の要因となり得るものの、ある程度時間が経過すれば、ガス配管工事が終了して、元の低露点に原料ガスに復帰するためである。規定時間Mはシステムおよび脱硫器に応じて設定できる。例えば、3時間〜4日間の範囲、あるいは、4時間〜2日間の範囲の任意値として規定できる。
【0068】
停止モードに移行した時刻から規定時間M経過していないときには(ステップS112CのNO)、制御部100Xまたはユーザにより再起動指令が出力されていたとしても、システムは再起動されず、判定処理は実行されない。ガス配管工事が終了しておらず、原料ガスの高露点化による判定エラーがあり、判定エラーに起因する脱硫器100の過誤交換が発生するおそれがあるためである。停止モードに移行した時刻から規定時間M経過していれば(ステップS112CのYES)、システムを再起動させるか否か判定する(ステップS114C)。制御部100Xまたはユーザにより再起動指令が出力されていれば、システムを再起動させる(ステップS116CのYES)。再起動により暖機モードが実行され、発電モジュール18を昇温させる。暖機モードから発電モードに移行していない場合には(ステップS120CのNO)、暖機モードが継続されるため(ステップS118C)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理は実行されない。判定エラーによる脱硫器の過誤交換のおそれがあるためである。暖機モードでは脱硫器100の温度は低いため、上記した脱硫器100の交換の有無を判定する判定処理は実行されない。脱硫器100の温度が低く、脱硫剤の水蒸気および硫黄分の吸着能力が高いため、仮に、高露点の原料ガスが供給されたとしても、下流側への硫黄分の流出が抑えられ、下流側の改質器2Aおよび燃料電池1における被毒を回避できるためである。判定エラーによる脱硫器の過誤交換のおそれがあるためである。
【0069】
更に発電モードに移行している場合(ステップS120CのYES)、判定処理を実行する必要がある。そこで、制御部100Xは、基準時刻から現在までの原料ガスの露点状況、累積時間の情報をメモリ100mから読み込み(ステップS122C)、脱硫器100を交換する必要があるか否かについて判定処理を再実行する(ステップS124C)。再実行された本判定処理の結果、脱硫器100の交換の必要が無ければ(ステップS126CのNO)、システムの発電運転を継続させる指示が出力される(ステップS108C)。脱硫器100の交換の必要性があれば(ステップS126CのYES)、制御部100Xは、脱硫器100の交換を指示する警報を聴覚的または視覚的な警報器102に出力し、ユーザ側に報知する(ステップS128C)。更にシステムを停止させるか判定し(ステップS130C)、脱硫器100の寿命が短く、システムを停止させる必要性があれば(ステップS130CのYES)、システムを再停止させる(ステップS132C)。この場合、脱硫器100を交換(再生、修理を含む)しない限り、システムの再起動を禁止させることが好ましい。
【0070】
(適用形態)
図11は上記した実施形態を適用する適用形態の一例を示す。図11に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜めるタンク4と、これらを収容する筐体5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物タイプ(運転温度:例えば400℃以上)とされている。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。発電モジュール18内には、改質部3,蒸発部2を加熱する燃焼部105が設けられている。アノード10側から排出されたアノード排ガスは、流路103を介して燃焼部105に供給される。カソード11側から排出されたカソード排ガスは、流路104を介して燃焼部105に供給される。起動時には、燃焼部105は、アノード10から供給された燃料を、カソード11から供給されたカソードガスで燃焼させ、蒸発部2および改質部3を加熱させる。発電運転時には、燃焼部105はアノード10から排出されたアノード排ガスを、カソード11から排出されたカソード排ガスで燃焼させ、蒸発部2および改質部3を加熱させる。燃焼部105には燃焼排ガス路75が設けられ、燃焼部105における燃焼後のガス、未燃焼のガスを含む燃焼排ガスが燃焼排ガス路75を介して大気中に放出される。改質部3の温度を検知する温度センサ33が設けられている。着火させるヒータである着火部35が燃焼部105に設けられている。着火部35は燃料に着火できるものであれば何でも良い。外気の温度を検知する外気温度センサ57が設けられている。温度センサ33,57の信号は制御部100Xに入力される。制御部100Xは警報器102に警報を出力する。
【0071】
システムの発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、アノード10側から排出されたアノード排ガスとカソード11側から排出されたカソード排ガスが燃焼部105で燃焼するため、改質部3および蒸発部2は、発電モジュール18の内部において同時に加熱される。図11に示すように、原料ガス通路6は、ガス源63から原料ガスを改質器2Aに供給させるものであり、ポンプ60、高温設置型の第1脱硫器100、流量計300、チャッキ弁500をもつ。
【0072】
第1脱硫器100は、銀等の金属を有するゼオライト系の多孔質物質を基材とする第1脱硫剤を収容しており、脱硫剤の温度を検知する温度センサ150を有する。第2脱硫器200は、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする第2脱硫剤を収容する。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用の搬送源として機能するカソードポンプ71が設けられている。
【0073】
図11に示すように、筐体5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3および蒸発部2と共に、筐体5の上側つまり上室空間52に収容されている。筐体5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜めるタンク4が収容されている。タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100Xからの指令に基づいて、タンク4の水は加熱部40により規定温度(例えば5℃、10℃、20℃)以上に加熱され、凍結が抑制される。図11に示すように、下室空間53側のタンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管として筐体5内に設けられている。図4に示すように、筐体5内において、タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は基本的には縦方向に沿って延びる。給水通路8は、タンク4内に溜められている水をタンク4から蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。ポンプ80を制御するための制御部100Xが設けられている。更に、制御部100Xはポンプ80,71,79,60を制御する。
【0074】
システムの起動時において、ポンプ60が駆動すると、燃料通路6から燃料が蒸発部2,改質部3,アノードガス通路73,燃料電池1のアノード10,流路103を介して燃焼部105に流れる。カソードポンプ71によりカソード流体(空気)がカソードガス通路70、カソード11,流路104を介して燃焼部105に流れる。この状態で着火部35が着火すると、燃焼部105において燃焼が発生し、改質部3および蒸発部2が加熱される。このように改質部3および蒸発部2が加熱された状態で、ポンプ80が正モードで駆動すると、タンク4内の水はタンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路6から供給される燃料(ガス状が好ましいが、場合によっては液相状としても良い)と共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は水蒸気で改質されてアノード流体(水素含有ガス)となる。アノード流体はアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソード流体(酸素含有ガス、ケース5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。アノード10から排出されたアノード流体のオフガス、カソード11から排出されたカソード流体のオフガスは、流路103,104を通過し、燃焼部105に至り、燃焼部105で燃焼される。高温の排ガスは、排ガス通路75を介してケース5の外方に排出される。
【0075】
システムの発電運転時において、ポンプ80が駆動すると、タンク4内の水は、タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。なお燃料がメタン系である場合には、水蒸気改質によるアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。但し燃料はメタン系に限定されるものではない。
(1)…CH+2HO→4H+CO
CH+HO→3H+CO
生成されたアノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。燃料電池1で排出された高温の排ガスは、排ガス通路75を介して筐体5の外方に排出される。
【0076】
排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱交換作用により加熱される。熱交換器76で加熱された温水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製器43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。
【0077】
制御部100Xは、燃料電池システムの発電運転中において原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量(露点)と累積運転時間(または原料ガスの累積流量)に基づいて、脱硫器100(200)の交換の有無を判定する判定処理を実行する。制御部100Xは、下記の(i)〜(iii)のうちの少なくとも一つに該当するとき、判定処理を実行しない。
(i)脱硫器の温度TH1が第1規定温度Txよりも低いとき
(ii)燃料電池システムが発電運転しないものの改質器2Aおよび燃料電池1を昇温させる暖機モードのとき
(iii)原料ガスが原料ガス通路6に流れていないとき
【0078】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態および適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池に限定されず、場合によっては、固体高分子電解質形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、溶融炭酸塩形燃料電池でも良い。要するに、原料ガスを脱硫させる脱硫器100を有する燃料電池システムであれば良い。原料ガスも特に制限されず、硫黄化合物を含むガスが挙げられ、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPGガス、CNGガス等を例示できる。露点計510が用いられているが、原料ガスの絶対湿度または相対湿度を検知する湿度センサを用いても良い。場合によっては、図1においてバッファ400、チャッキ弁500を廃止することもできる。警報は、単なる警報の他に、システムの運転停止、システムの再起動禁止を含むことができる。脱硫器100の加熱させる形態としては、発電モジュール18からの受熱によるものでなくともよく、例えば、改質器2Aや燃料電池1から排出された高温の排ガスによって脱硫器100を加熱させたり、貯湯槽の湯やヒーターやシステム内発熱部品(パワコン等)により脱硫器100の温度を保つようにしても良い。
【符号の説明】
【0079】
1は燃料電池、10はアノード、11はカソード、100Xは制御部、100は脱硫器、150は温度センサ、102は警報器、106はリセットスイッチ、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、18は発電モジュール、19は断熱壁、60はポンプ(ガス搬送源)、70はカソードガス通路、73はアノードガス通路、6は原料ガス通路、510は露点計(水蒸気センサ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、原料ガスを改質させて前記アノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを前記改質器に供給させる原料ガス通路と、前記原料ガス通路に設けられ前記原料ガスを前記原料ガス通路を介して前記改質器に供給させるガス搬送源と、前記原料ガス通路に設けられ前記原料ガスを脱硫させる脱硫器と、前記原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量を直接的または間接的に検知する水蒸気センサと、燃料電池システムの発電運転中において原料ガスに含まれる水蒸気に関する物理量に基づいて前記脱硫器の交換の有無を判定する判定処理を実行する制御部とを具備する燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記脱硫器の温度が第1規定温度よりも低いとき、前記判定処理を実行しないことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、更に、下記の(i)および(ii)のうちの少なくとも一つに該当するとき、前記制御部は前記判定処理を実行しないことを特徴とする燃料電池システム。
(i)前記燃料電池システムが発電運転しないものの発電運転前に前記改質器および/または前記燃料電池を昇温させる暖機モードのとき
(ii)前記原料ガスが前記原料ガス通路に流れていないとき
【請求項3】
請求項1または2において、前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記制御部は、前記燃料電池システムを一旦停止させ、停止処理後に再起動をさせ、前記判定処理を再実行し、再実行された前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記制御部は、前記燃料電池システムを一旦停止させ、停止された停止時刻から既定時間経過した後に再起動をさせるともに、前記判定処理を再実行し、再実行された前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記制御部は、前記燃料電池システムを一旦停止させ、停止された後に再起動をさせるとともに、前記燃料電池システムが暖機モードのとき前記判定処理を実行せず、前記暖機モードから発電モードに移行した状態において前記判定処理を再実行し、再実行された前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜3のうちの一項において、前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記制御部は、前記燃料電池システムを一旦停止させ、停止させた後に再起動をさせるともに、前記脱硫器の温度が前記第1規定温度未満のとき前記判定処理を実行せず、前記脱硫器の温度が第1規定温度以上のとき前記判定処理を再実行し、再実行された前記判定処理において前記脱硫器を交換させる条件が満たされていると判定される場合、前記脱硫器の交換を促す警報を出力することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−89402(P2013−89402A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227735(P2011−227735)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】