説明

燃料電池システム

【課題】アニオン交換電解質の中和を抑制できるアルカリ形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アニオン交換電解質膜を用いたアルカリ形燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料のpHを測定または推定するpH測定手段と、前記pH測定手段の測定結果または推定結果に基づき、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料にアルカリ性溶液を添加し、燃料のpHを制御するpH制御手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発電効率が高く、環境性に優れており、現在、大きな課題となっている環境問題、エネルギ問題の解決に貢献可能な次世代の発電装置として期待されている。
【0003】
こうした燃料電池の中で、アニオン交換電解膜を用いるアルカリ形燃料電池は、カチオン交換電解質膜を用いる酸形燃料電池のように燃料電池内部が強酸性雰囲気にならないため、触媒に貴金属以外の金属を使用できることで注目されている。
【0004】
アルカリ形燃料電池では、アノードに水素や、メタノール、アンモニア等が燃料として供給され、カソードに酸素や空気が酸化剤として供給される。ここで、カソードに供給される空気には二酸化炭素が含まれおり、(1)式に示すように、アルカリ性のアニオン交換電解質が中和されて、イオン伝導度が低下することが問題となっている。
2OH-+CO2→CO32-+H2O …(1)
【0005】
また、メタノール等のアルコールを燃料として用いた場合にも、(2)式に示した反応のように、発電中に二酸化炭素が生成するため、同様にアルカリ性のアニオン交換電解質が中和されて、イオン伝導度が低下することが問題となっている。
CH3OH+6OH-→CO3+5H2O+6e- …(2)
【0006】
このようなアニオン交換電解質の中和を抑制する手法としては、例えば特許文献1に記載のように、燃料電池に電圧を印加し、水酸化物イオンを生成させる方法がある。また特許文献2では、アルカリ形燃料電池の燃料であるエタノールにアルカリ性溶液である水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのイオン伝導性を有する材料を混合する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−182589号公報
【特許文献2】特開2008−218397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電圧を印加する方法では、電圧を印加して水酸化物イオンを生成させるためには1.5V以上の電圧を印加する必要があり、その結果、電解質や電極の劣化が進行することが想定される。
【0009】
また、アルカリ性溶液である水酸化カリウムを添加した燃料を用いる場合、燃料が酸性にならないように燃料のpHを高くする必要がある。その結果、燃料の取り扱いに注意を要する必要があり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を踏まえ、アニオン交換電解質の中和を抑制できるアルカリ形燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る実施態様の1つであるアニオン交換電解質膜を用いたアルカリ形燃料電池を備える燃料電池システムは、アルカリ形燃料電池に供給する燃料のpHを測定または推定するpH測定手段と、pH測定手段の測定結果または推定結果に基づき、アルカリ形燃料電池に供給する燃料にアルカリ性溶液を添加し、燃料のpHを制御するpH制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、アニオン交換電解質の中和を抑制できるアルカリ形燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る燃料電池セルの断面模式図。
【図2】本発明に係る燃料電池システムの模式図。
【図3】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図4】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図5】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図6】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図7】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図8】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図9】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図10】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図11】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【図12】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
【0015】
本発明の燃料電池システムの構成を更に詳細に説明する。
【0016】
本発明はアニオン交換電解質膜と、前記アニオン交換電解質膜の一方の面上に設けられた触媒とアニオン交換電解質を含むアノードと、前記アニオン交換電解質膜の他方の面上に設けられた触媒とアニオン交換電解質を含むカソードと、燃料を供給する部材と、空気を供給する部材と、集電用部材と、を備える燃料電池システムにおいて、アルカリ形燃料電池に供給する燃料のpHを測定または推定するpH測定手段と、pH測定手段の測定結果または推定結果に基づき、アルカリ形燃料電池に供給する燃料にアルカリ性溶液を添加し、燃料のpHを制御するpH制御手段を有する燃料電池システムである。燃料のpHを測定または推定しながらpHを調整するため、燃料タンク内の燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなり、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。
【0017】
本発明の燃料電池システムで用いられるアニオン交換電解質膜は、アニオンを伝導する特性を有していれば特に限定されず、公知の如何なるものでもよい。このようなアニオン交換電解質膜としては、一般にアニオン交換電解質のみからなる膜と基材となる多孔質膜にアニオン交換樹脂を含浸させたものがある。このようなアニオン交換電解質としては1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、4級ピリジニウム基、ピリジル基、ホスファゼン基などのアニオン交換基を有する高分子材料を用いることが好ましい。また、アノードとカソードに含まれるアニオン交換電解質と、アニオン交換電解質膜は、同一の材料を用いても良いし、異なる材料であっても良い。
【0018】
本発明の燃料電池システムで用いられるアノードの触媒は、燃料を酸化する触媒活性を有していれば特に限定されるものではないが、水素、メタノール、およびエタノールを燃料として用いる場合には白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケルやこれらの合金などを用いることができる。また、これらの触媒はカーボンブラック、活性炭等のカーボン担体に担持されていても良い。また、カソードは酸素を還元する触媒とアニオン交換電解質を含む電極である。カソードの触媒は、酸素を還元する触媒活性を有していれば特に限定されるものではないが、白金、金、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケルやこれらの合金などを用いることができ、アノードと同様にカーボン担体に担持されていても良い。
【0019】
本発明の燃料電池システムで用いられる燃料としては、特に制限はないが、一般にはメタノール、エタノール等のアルコール、アンモニア、ヒドラジンやこれらの水溶液のほかに、水素が挙げられる。
【0020】
本発明の燃料電池システムでPH制御のために用いられるアルカリ性溶液としては、アルカリ性の水溶液であれば特に制限はないが、アルカリ金属の水酸化物もしくはアルカリ土類金属の水酸化物のうち少なくとも1つの化合物を含む水溶液であることが好ましい。
例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる少なくとも1つの化合物を含む水溶液であることが好ましい。
【0021】
本発明の燃料電池システムにおける燃料のpH測定手段としては、電位差測定によるpH測定、半導体センサによるpH測定、ブロムチモールブルー(BTB)溶液もしくはフェノールフタレイン溶液等のpHにより色が変化する溶液を添加することで吸光度変化を利用したpH測定、アニオン交換膜の抵抗変化によるPH測定によって燃料のpHを測定または推定する手段である。
【0022】
本発明の燃料電池システムにおいて、燃料のpH制御手段の一つとしては、pH測定手段で測定されたpHを基にアルカリ性溶液の添加量を制御し、pHを調整する手段が挙げられる。また、pHを基にしないでも、燃料のpHを推定できる電位差測定での電位差、半導体センサの測定値、溶液の吸光度測定での吸光度、アニオン交換膜の抵抗、燃料電池の発電性能、燃料電池スタックまたは燃料電池セルの抵抗を基にアルカリ性溶液の添加量を制御し、PHを制御する手段が挙げられる。
【0023】
また、燃料溶液へアルカリ性溶液を添加する方法としては、アルカリ性溶液が、酸性溶液で破壊される膜により燃料溶液と分離されており、燃料が二酸化炭素により酸性になった場合に、膜が破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることでPHを制御することも可能である。また、アルカリ性溶液を燃料溶液と分離している蓋が酸により収縮もしくは破壊される高分子により抑えられており、燃料が二酸化炭素により酸性になった場合に、高分子が収縮もしくは破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることでpHを制御することも可能である。
【0024】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、燃料タンク内の燃料のpHは7〜14に制御することが好ましい。
【0025】
図1に本発明に係る燃料電池セルの断面模式図を示す。燃料電池セルとは燃料電池システムの一部である。アニオン交換電解質膜1の両面にアノード2とカソード3が配置された膜/電極接合体をアノード集電体4とカソード集電体5で挟み、ガスケット6によりシールされる。また、アノード集電体4とカソード集電体5は、外部回路7を介して接続される。ここで、アノード2は燃料を酸化する触媒とアニオン交換電解質を含む電極である。また、カソード3は酸素を還元する触媒とアニオン交換電解質を含む電極である。また、図示していないが、アノード2とアノード集電体4の間、カソード3とカソード集電体5の間に拡散層を配置しても良い。ここで、拡散層はカーボンペーパー、カーボンクロスなどを用いることができる。
【0026】
図2に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9にアルカリ性溶液を投入可能な部位10を有しており、この部分からアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料タンク9内にある燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有する。燃料タンク9においてアルカリ性溶液の投入が可能であるため、燃料のpH調整が可能である。pHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、タンク内にアルカリ性溶液を入れると、タンク内の燃料のpHを均一に保つことが可能であり、燃料のpHを常に均一に保つことで、性能も一定に保つことが可能である。
【0027】
図3に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料を燃料電池セルに供給する配管11にアルカリ性溶液を投入可能な部位12を有しており、この部分からアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料電池セル8に投入する燃料のpHを調整するために、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。配管部12でアルカリ性溶液の投入が可能であるため、燃料のpH調整が可能である。pHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、燃料配管内にアルカリ性溶液を入れると、燃料配管を通る燃料のpHを調整することができ、必要以上のアルカリ性溶液を入れる必要がない。また、アルカリ性溶液を添加することで、性能を一定に保つことが可能である。
【0028】
図4に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、この部分からアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料電池セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9にアルカリ性溶液を投入する部位10を有し、かつ配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。燃料のpHを調整するために、燃料タンク内の燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。燃料タンクにアルカリ性溶液の投入が可能であるため、燃料のpH調整が可能である。燃料タンク9や配管部12においてアルカリ性溶液の投入が可能であるため、燃料電池セル8に投入する燃料のpH調整が可能である。pHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、タンク内と、燃料配管内の両方でアルカリ性溶液を入れることが可能である。そのため、タンク内で燃料のpH調整が可能であるが、さらに燃料配管を通る燃料のpHを調整することができ、必要以上のアルカリ性溶液を入れる必要がない。また、アルカリ性溶液を添加することで、pHを均一に保つことが可能であり、性能を一定に保つことが可能である。
【0029】
図5に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、電位差測定器13による測定値に基づいてアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料タンク9において電位差測定器13を有しているためpHの測定結果に基づきpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、タンク内のpHを電位差測定器により正確に測定することが可能であることが特徴である。
【0030】
図6に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、電位差測定器14による測定値に基づいてアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料セル8において電位差測定器14を有しているため、pHの測定結果に基づきpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、電位差測定器を燃料電池セル8に配置しており、電池セルそのものに投入される燃料のpHを連続的に正確に測定することが可能であり、必要以上のアルカリ性溶液を入れることがなくなる。その結果、燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。
【0031】
図7に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、半導体センサ15による測定値に基づいてアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料タンク9において半導体センサ15を有しているためpHの測定結果に基づきpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、タンク内のpHを半導体センサにより正確に測定することが可能であり、半導体センサは小型であるため、燃料タンク内の容積を小さくすることができる。
【0032】
図8に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、半導体センサ16による測定値に基づいてアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料セル8において半導体センサ16を有しているため、pHの測定結果に基づきpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、半導体センサを燃料電池セル8に配置しており、電池セルそのものに投入される燃料のpHを連続的に正確に測定することが可能であり、必要以上のアルカリ性溶液を入れることがなくなる。その結果、燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。また半導体センサは小型であるため、燃料電池セルへの影響は小さい。
【0033】
図9に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、また燃料中にBTB溶液もしくはフェノールフタレイン溶液を含み、吸光度測定器17による燃料の吸光度測定値に基づいてアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料タンク9において吸光度測定器17による燃料の吸光度測定値に基づいてpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。
【0034】
図10に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、燃料タンク9と燃料を燃料電池セルに供給する配管11のいずれかまたは両方にアルカリ性溶液を投入可能な部位10、12を有しており、アニオン交換膜およびその抵抗測定器18の抵抗値に基づきアルカリ性溶液を投入することで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料タンク9においてアニオン交換膜およびその抵抗測定器18の抵抗値に基づきpHの調整が可能であるため、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。
【0035】
図11に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、アルカリ性溶液が、酸性溶液で破壊される膜により燃料溶液と分離されているアルカリ性溶液を添加する添加機構19を有しており、燃料が酸性になった場合に、膜が破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、燃料タンク9において燃料が酸性になった場合に、アルカリ性溶液が燃料中に混合されるため、pHの調整が可能であり、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、センサや測定器を用いないため、電源を用意する必要がないことが特徴である。
【0036】
図12に本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。本発明に係る燃料電池システムにおいて燃料電池セル8のアノードには燃料タンク9から配管11を通して燃料が供給されるが、アルカリ性溶液が、酸性溶液で破壊される膜により燃料溶液と分離されているアルカリ性溶液を添加する添加機構20を有しており、燃料が酸性になった場合に、膜が破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることで、燃料のpHを調整可能である。本システムにおいては、燃料セル8に投入する燃料のpHを調整するために、燃料タンク9に燃料へアルカリ性溶液する部位10を有するか、もしくは、配管部12で燃料へアルカリ性溶液を添加する機能を有する。また、配管部11において燃料が酸性になった場合に、アルカリ性溶液が燃料中に混合されるため、pHの調整が可能であり、燃料を必要以上に高いpHにする必要がなくなる。その結果、燃料の取り扱いが容易になり、また燃料電池システムで用いる燃料タンクや配管の種類が限られ、さらに燃料タンクや配管の寿命が短くなるという問題は起こらなくなる。ここで、本システムにおいては、センサや測定器を用いないため、電源を用意する必要がないことが特徴である。
【0037】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
アニオン交換電解質膜の両面に、白金がカーボンに担持された触媒と、アニオン交換電解質と、溶媒とを混合したスラリーを塗布することで膜/電極接合体を作製した。次に、得られた膜/電極接合体を拡散層であるカーボンクロスを介して、集電体で挟みこみ、本実施例に係る燃料電池セルを作製した。
【0039】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図5、図7に示すように燃料タンク中の燃料のPHを電位差測定器と半導体センサを用いて測定しながらアルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のpHを7〜10に制御した。その後、PHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は300%であった。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0041】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図9に示すように燃料タンク中の燃料にフェノールフタレイン溶液を添加し、吸光度測定をしながら、アルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のpHを制御した。燃料のPHは電位差測定器の測定値から、7〜10であった。その後、pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度50mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は300%であった。
【0042】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0043】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図9に示すように燃料タンク中の燃料にBTB溶液を添加し、吸光度測定をしながら、アルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のPHを制御した。燃料のPHは電位差測定器の測定値から、7〜10であった。その後、pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は300%であった。
【0044】
〔実施例4〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0045】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図10に示すように燃料タンク中にアニオン交換膜とその抵抗測定器を配置し、アニオン交換膜の抵抗値を基に、アルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のPHを制御した。燃料のPHは電位差測定器の測定値から、7〜10であった。その後、pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は310%であった。
【0046】
〔実施例5〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0047】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図5に示すようにアノードに燃料タンクから10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で数秒間発電を行った。その結果、発電時の平均電圧は30%であった。そこで、発電電圧を基にアルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のPHを制御した。発電電圧が安定した際の燃料のpHは電位差測定器の測定値から、7〜10であった。その際の平均電圧は290%であった。
【0048】
〔実施例6〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0049】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図6、図8示すように燃料電池セルのアノードのPHを電位差測定器と半導体センサを用いて測定しながらアルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて添加し、燃料のpHが7〜10に制御した。その後、pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は270%であった。
【0050】
〔実施例7〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0051】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、2か月間放置した。図11に示すように放置する際に燃料タンクの燃料中にポリアミド樹脂でアルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)を分離したものを添加した。24時間後、燃料電池セルのアノードのpHを電位差測定器で測定したところ、pHが7〜10に制御されていた。pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は300%であった。
【0052】
〔実施例8〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0053】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、図9に示すように燃料タンク中の燃料にフェノールフタレイン溶液を添加し、吸光度測定をしながら、アルカリ性溶液(0.1mol/L水酸化カリウム)をポンプを用いて図1のアルカリ性溶液投入部12から添加し、燃料のpHを制御した。燃料のアノードでのpHは半導体センサの測定値から、7〜10であった。その後、pHを制御した10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は300%であった。
【0054】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして作製した燃料電池セルを用いた。
【0055】
次に、燃料電池のアノードに、燃料タンクから10%メタノール水溶液を供給し、カソードに露点60℃の空気を供給して、電池温度60℃にて電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。この5分間発電時の平均電圧を100%とする。その後、発電を停止し、24時間放置した。24時間後、アノードに燃料タンクから10%メタノール水溶液、カソードに空気を供給して、再び、電流密度10mA/cm2で5分間発電を行った。その結果、この5分間発電時の平均電圧は70%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換電解質膜を用いたアルカリ形燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、
前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料のpHを測定または推定するpH測定手段と、
前記pH測定手段の測定結果または推定結果に基づき、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料にアルカリ性溶液を添加し、燃料のpHを制御するpH制御手段を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記pH測定手段が燃料のpHを電位差測定により計測する手段であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記pH測定手段が燃料のpHを半導体センサにより計測する手段であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、燃料がブロムチモールブルー(BTB)もしくはフェノールフタレイン溶液の少なくとも1つを含み、前記pH測定手段が燃料溶液の色による吸光度変化により燃料のpHを計測する手段であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記pH測定手段は、燃料中に浸漬されたアニオン交換膜と、前記アニオン交換膜の抵抗を測定する抵抗測定装置を有し、アニオン交換膜の抵抗値変化により、燃料のpHを計測することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記pH測定手段がアノード表面のpHを半導体センサにより計測する手段であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、アルカリ性溶液が、酸性溶液で破壊される膜により燃料溶液と分離されており、燃料が酸性になった場合に、膜が破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることで燃料のpHを制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、アルカリ性溶液を燃料溶液と分離している蓋が酸により収縮もしくは破壊される高分子により抑えられており、燃料が二酸化炭素により酸性になった場合に、高分子が収縮もしくは破壊され、アルカリ性溶液が燃料中に混合されることで燃料のpHを制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料を貯蔵する燃料タンクを備え、前記pH制御手段により前記燃料タンク内の燃料のpHを7〜14に制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料を貯蔵する燃料タンクを備え、前記燃料タンクの燃料溶液中にブロムチモールブルー(BTB)溶液を含み、前記BTB溶液の色による吸光度変化を基に、アルカリ性溶液の添加量を制御する燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記アルカリ形燃料電池に供給する燃料を貯蔵する燃料タンクと、前記燃料タンク内にアニオン交換膜および前記アニオン交換膜の抵抗値を測定する抵抗測定装置を有し、前記燃料タンク内のアニオン交換膜の抵抗値を基に、アルカリ性溶液の添加量を制御する燃料電池システム。
【請求項12】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、燃料電池セルの発電電圧または抵抗値を基に、アルカリ性溶液の添加量を制御する燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97937(P2013−97937A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238161(P2011−238161)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】