説明

燃料電池セルの構造

【課題】防水性、絶縁性、および、体衝突性を容易に確保することが可能な燃料電池のターミナルの取り出し構造を提供する。
【解決手段】各燃料電池セルと、第1極側のターミナルプレートと、エンドプレートには、第2極側のターミナルプレートからの第2極のターミナルを、第1極側のエンドプレートから取り出すための第2極ターミナル用貫通孔が設けられており、第2極側のターミナルプレートには、第2極ターミナル用貫通孔を介して第2極のターミナルが第1極側のエンドプレートから出るように形成されている。第1極側のエンドプレートには、第1極のターミナルを、第2極のターミナルと共に取り出すための第1極ターミナル用貫通孔が設けられており、第1極側のターミナルプレートには、第1極ターミナル用貫通孔を介して第1極のターミナルが第1極側のエンドプレートから出るように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタック構造の燃料電池における一対のターミナルの取り出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常、1つの発電体となる燃料電池セルを複数個直列にスタックした燃料電池セルスタックの両端にそれぞれ設けられた、ターミナルプレート、インシュレータ、および、エンドプレートで挟持して構成される構造が一般的である。これら両端のターミナルプレートからそれぞれターミナルを取り出す構造としては、例えば、それぞれのターミナルプレートの外周部から取り出す構造や、それぞれのエンドプレートに設けられた取り出し孔を介して取り出す構造が一般的である。
【0003】
両端のエンドプレートよりターミナルを取り出す場合には、燃料電池の両端側および周辺部全体に、高圧ケーブルを取り回し配線するためのスペースが多く必要となるという問題がある。
【0004】
また、ターミナルプレートの外周部からターミナルを取り出す場合には、そのターミナル取り出し部の防水が困難であるため、一般に、燃料電池全体を、ターミナルからの配線も含めて、防水ケースに収納する構成として対応している。
【0005】
また、燃料電池の周辺部に配線される高圧ケーブル取り回し配線が長い場合には、この配線に外部からの力、例えば、搭載した自動車の衝突時に加わる力(以下、「衝突入力」とも呼ぶ)に対して弱く、短絡の防止に対して不十分となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−087766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、防水性、絶縁性、および、体衝突性を容易に確保することが可能な燃料電池のターミナルの取り出し構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
燃料電池スタックから一対のターミナルを取り出すための燃料電池スタックの構造であって、
前記燃料電池スタックは、
複数の燃料電池セルがスタックされた燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックの第1極側および第2極側の両端において、それぞれ内側から順に配列されたターミナルプレートおよびエンドプレートと、
を備えており、
前記燃料電池セルスタックの各燃料電池セルと、前記第1極側のターミナルプレートおよびエンドプレートには、それぞれ、前記第2極側のターミナルプレートからの前記第2極のターミナルを、前記第1極側のエンドプレートから取り出すための第2極ターミナル用貫通孔が設けられており、
前記第2極側のターミナルプレートには、前記第2極ターミナル用貫通孔を介して、前記第2極のターミナルが前記第1極側のエンドプレートから突出するように形成されており、
前記第1極側のエンドプレートには、前記第1極のターミナルを、前記第2極のターミナルと並んで取り出すための第1極ターミナル用貫通孔が設けられており、
前記第1極側のターミナルプレートには、前記第1極ターミナル用貫通孔を介して、前記第1極のターミナルが前記第1極側のエンドプレートから突出するように形成されている
ことを特徴とする燃料電池スタックの構造。
この燃料電池スタックの構造によれば、第1極側のエンドプレートから第1極および第2極のターミナルが並んで突出するように形成されているので、第1極側のエンドプレートに集約して第1極と第2極のターミナルを取り出すことができ、これにより、高圧配線を集約することができ、高圧ケーブルの取り回し配線が容易で省スペース化が可能である。また、これにより、防水性、絶縁性、および、体衝突性を容易に確保することが可能な燃料電池のターミナルの取り出し構造を提供することが可能となる。
【0010】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池スタックの構造、この構造を用いた燃料電池スタックなどの種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例としての燃料電池スタックを構成するための燃料電池セルの概略上面図である。
【図2】燃料電池スタックの図1に示したA−A線における概略断面図である。
【図3】負極側のターミナルプレート30を示す説明図である。
【図4】正極側のターミナルプレート40を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0013】
A.実施例:
本発明の実施例としての燃料電池スタックは、従来の燃料電池スタックと同様に、1つの発電体である燃料電池セルを複数個直列にスタックして燃料電池セルスタックを構成する。そして、この燃料電池セルスタックを、燃料電池セルスタックの正極側に配列した正極側のターミナルプレートおよびエンドプレートと、燃料電池セルスタックの負極側に配列した負極側のターミナルプレートおよびエンドプレートと、で挟持することにより構成される。
【0014】
図1は、本発明の実施例としての燃料電池スタックを構成するための燃料電池セルの概略上面図である。この燃料電池セル10には、図1に示すように、その中心領域には、発電を行なうための発電部20が設けられている。そして、その外周領域25はシール用のガスケットゴムで形成されている。この外周領域25には、水素入力用マニホールド孔11、水素出力用マニホールド孔12、Air(空気)入力用マニホールド孔13a〜13c、Air出力用マニホールド孔14a〜14c、冷却媒体入力用マニホールド孔15a,15b、冷却媒体出力用マニホールド孔16a,16b、がそれぞれ設けられている。従って、複数の燃料電池セル10をスタックした燃料電池セルスタックを有する燃料電池スタックには、それぞれ、対応する、水素入力用マニホールド、水素出力用マニホールド、Air入力用マニホールド、Air出力用マニホールド、冷却媒体入力用マニホールド、冷却媒体出力用マニホールドが設けられることになる。なお、各マニホールド孔には、それぞれの周囲を覆うことにより、それぞれのマニホールドをシールするシールリップ26(破線で示す)が形成されている。
【0015】
さらに、本発明の実施例の特徴として、各燃料電池セル10には、図1に示すように、後述する負極ターミナルを取り出すための負極ターミナル用貫通孔17が設けられている。この負極ターミナル用貫通孔17の周囲にもシールリップ26が形成されている。また、同様に、後述する正極側のターミナルプレートおよびエンドプレートにも、負極ターミナル用貫通孔17に対応する位置に、それぞれ同様に負極ターミナル用貫通孔が設けられている。
【0016】
図2は、燃料電池スタックの図1に示したA−A線における概略断面図である。燃料電池セル10は、図2に示すように、膜電極接合体(MEGA)21を負極側(アノード側)の流路層(AN流路層)21および正極側(カソード側)の流路層(CA流路層)22で挟持した発電部20、および、内部に冷却媒体流路を有するセパレータ24を備えている。そして、発電部20およびセパレータ24の外周領域25は、図1でも示したようにシール用のガスケットゴムで覆われている。特に、負極ターミナル用貫通孔17の内壁もガスケットゴムで覆われているため、負極側のターミナルプレート30から延びる負極のターミナル32bの接触に対して絶縁されている。また、負極ターミナル用貫通孔17の周囲には上記したようにシールリップ26が形成されているので、負極ターミナル用貫通孔17、より具体的には、後述する負極のターミナルを他の領域から独立してシールすることになる。
【0017】
ここで、図3は、負極側のターミナルプレート30を示す説明図である。図3(A)は概略上面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B線における概略断面図である。負極側のターミナルプレート30は、その上部側で、かつ、燃料電池セル10の発電部20に対応する領域に電極部32aが露出し、その外周部全体がガスケットゴム35で覆われるように形成されている。そして、燃料電池セル10の負極ターミナル用貫通孔17に対応する位置に、図3(B)に示すように、上方へ延びるターミナル32bが形成されている。なお、図3への図示は、省略するが、このターミナルプレート30のガスケットゴム35においても、燃料電池セル10の外周領域25と同様に、各部をシールするためのシールリップが形成されている。なお、図2の断面図には、それぞれ対応する領域にシールリップ36が形成されている状態が示されている。特に、負極のターミナル32bの周囲にもシールリップ26が形成されているので、負極ターミナル用貫通孔17の周囲のシールリップ26とともに、負極のターミナル32bを他の領域から独立してシールすることになる。
【0018】
図4は、正極側のターミナルプレート40を示す説明図である。図4(A)は概略上面図であり、図4(B)は図4(A)のC−C線における概略断面図である。正極側のターミナルプレート40は、その下部側で、かつ、燃料電池セル10の発電部20に対応する領域に電極部48aが露出し、その外周部全体がガスケットゴム49で覆われるように形成されている。
【0019】
また、正極側のターミナルプレート40には、図4(A)に示すように、水素入力用マニホールド、水素出力用マニホールド、Air入力用マニホールド、Air出力用マニホールド、冷却媒体入力用マニホールド、冷却媒体出力用マニホールドに対応する位置に、水素入力用マニホールド孔41、水素出力用マニホールド孔42、Air(空気)入力用マニホールド孔43a〜43c、Air出力用マニホールド孔44a〜44c、冷却媒体入力用マニホールド孔45a,45b、冷却媒体出力用マニホールド孔46a,46b、が設けられている。なお、図示は省略するが、図1の燃料電池セル10と同様に、各マニホールド孔には、それぞれの周囲を覆うことにより、それぞれのマニホールドをシールするシールリップが形成されている。なお、図2の断面図には、対応する領域にシールリップ49sが形成されている状態が示されている。
【0020】
また、負極ターミナル用貫通孔17に対応する位置に同様に負極ターミナル用貫通孔47が設けられている。この負極ターミナル用貫通孔47の内壁はガスケットゴム49で覆われているため、負極側のターミナルプレート30から延びる負極のターミナル32bの接触に対して絶縁されている。また、負極ターミナル用貫通孔47の周囲に設けられたシールリップ49sにより、負極ターミナル用貫通孔47、より具体的には、負極のターミナル32bを他の領域から独立してシールすることになる。
【0021】
さらに、また、負極ターミナル用貫通孔47と水素入力用マニホールド孔41の間の位置には、図4(B)に示すように、上方へ延びる正極用のターミナル48bが形成されている。
【0022】
図2に示すように、正極側のエンドプレート60には、燃料電池セル10の負極ターミナル用貫通孔17および正極側のターミナルプレート40の負極ターミナル用貫通孔47に対応する位置に、負極ターミナル用貫通孔67が形成されている。そして、この負極ターミナル用貫通孔67の内壁はシール用のガスケットゴム65で覆われているため、負極側のターミナルプレート30から延びる負極のターミナル32bの接触に対して絶縁されている。
【0023】
また、正極側のエンドプレート60には、正極側のターミナルプレート40から上方に延びる正極のターミナル48bを取り出すための正極ターミナル用貫通孔68が形成されている。この正極ターミナル用貫通孔68の内壁はシール用のガスケットゴム65で覆われているため、正極側のターミナルプレート40から延びる正極のターミナル48bの接触に対して絶縁されている。
【0024】
正極側のエンドプレート60から、並んで取り出された正極のターミナル48bおよび負極のターミナル32bは、配線用の高圧ケーブルと、ボルト等により締結して接続される。そして、正極側のエンドプレート60から突出した正極のターミナル48bおよび負極のターミナル32b、並びに、それぞれの締結部、および高圧ケーブルの一部を、防水グロメット80で覆うことにより、防水化することが可能となる。
【0025】
以上、説明した本実施例の燃料電池スタックの構造では、正極および負極の2つのターミナル48b,32bを、正極側のエンドプレート60から並んで取り出すことが可能である。そして、それぞれのターミナルと高圧ケーブルとを接続すれば、高圧ケーブルの配線の取りまわしが容易で、省スペース化が可能である。また、正極側のエンドプレート60から突出した正極のターミナル48bおよび負極のターミナル32b、並びに、それぞれの締結部、および高圧ケーブルの一部を、防水グロメット80で覆うことにより、防水化することが可能となる。この結果、防水ケースの省略化が可能となり得る。
【0026】
また、正極のターミナル48bが通過する正極ターミナル用貫通孔68、および、負極のターミナル32bが通過する負極ターミナル用貫通孔17,47,67は、いずれも、ガスケットゴムで覆われ、シールリップにより他の領域からシールされている。従って、例えば、図2の横方向から仮に衝撃が加わって、ターミナルが貫通孔の内壁に接触したとしても短絡を防止することが可能である。
【0027】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば次のような変形も可能である。
【0028】
上記実施例では、正極側のエンドプレート側から正極および負極のターミナルを取り出すように貫通孔を設けた場合を例に説明したが、負極側のエンドプレート側から正極および負極のターミナルを取り出すように貫通孔を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…燃料電池セル
11…水素入力用マニホールド孔
12…水素出力用マニホールド孔
13a〜13c…Air入力用マニホールド孔
14a〜14c…Air出力マニホールド孔
15a,15b…冷却媒体入力用マニホールド孔
16a,16b…冷却媒体出力用マニホールド孔
17…負極ターミナル用貫通孔
20…発電部
21…MEGA(膜電極接合体)
22…AN流路層
23…CA流路層
24…セパレータ
25…外周領域
26…シールリップ
30…ターミナルプレート
32a…電極部
32b…ターミナル
35…ガスケットゴム
36…シールリップ
40…ターミナルプレート
41…水素入力用マニホールド孔
42…水素出力用マニホールド孔
43a〜43c…Air入力用マニホールド孔
44a〜44c…Air出力用マニホールド孔
45a,45b…冷却媒体入力用マニホールド孔
46a,46b…冷却媒体出力用マニホールド孔
47…負極ターミナル用貫通孔
48a…電極部
48b…ターミナル
49…ガスケットゴム
49s…シールリップ
60…エンドプレート
65…ガスケットゴム
67…負極ターミナル用貫通孔
68…正極ターミナル用貫通孔
80…防水グロメット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックから一対のターミナルを取り出すための燃料電池スタックの構造であって、
前記燃料電池スタックは、
複数の燃料電池セルがスタックされた燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックの第1極側および第2極側の両端において、それぞれ内側から順に配列されたターミナルプレートおよびエンドプレートと、
を備えており、
前記燃料電池セルスタックの各燃料電池セルと、前記第1極側のターミナルプレートおよびエンドプレートには、それぞれ、前記第2極側のターミナルプレートからの前記第2極のターミナルを、前記第1極側のエンドプレートから取り出すための第2極ターミナル用貫通孔が設けられており、
前記第2極側のターミナルプレートには、前記第2極ターミナル用貫通孔を介して、前記第2極のターミナルが前記第1極側のエンドプレートから突出するように形成されており、
前記第1極側のエンドプレートには、前記第1極のターミナルを、前記第2極のターミナルと並んで取り出すための第1極ターミナル用貫通孔が設けられており、
前記第1極側のターミナルプレートには、前記第1極ターミナル用貫通孔を介して、前記第1極のターミナルが前記第1極側のエンドプレートから突出するように形成されている
ことを特徴とする燃料電池スタックの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−262893(P2010−262893A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114407(P2009−114407)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】